JP3976772B2 - 熱中性子束モニタ - Google Patents
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Description
本発明は熱中性子束モニタに関する。
【背景技術】
熱中性子束を精度良く測定する方法としては、金の放射化法が知られている。しかしながら、金の放射化法では、熱中性子による放射化、および、放射化した金の放射能測定が必要である。このため、この方法では、リアルタイムの測定が難しいという問題がある。
リアルタイムの測定を可能とするために、例えば半導体検出器を用いた方法が提案されている。しかしながら、半導体検出器を用いる方法は、遠隔地における測定やプリアンプを直近に配置できない場合、電気ノイズの影響により安定した測定が難しいという問題がある。
【発明の開示】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、安定した測定が可能な熱中性子束モニタを提供することである。
この発明に係る熱中性子束モニタは、第1シンチレータと、第2シンチレータと、光検出部とを備えている。前記第1シンチレータは、熱中性子と核反応を起こす核種を備えている。前記第2シンチレータは、前記熱中性子と核反応を起こす核種を第1シンチレータよりも少ない濃度で備えている。前記光検出部は、前記第1シンチレータと前記第2シンチレータの発光出力に基づいて熱中性子束を測定するものである。
この熱中性子束モニタは、さらに導光路(5)を備えている。前記導光路(5)は、第1導光部(51)と第2導光部(52)とを備えている。
前記第1シンチレータ(1)は、第1導光部(51)の先端に、これと隣接して配置されている。前記第2シンチレータ(2)は、第2導光部(52)の先端に、これと隣接して配置されている。
前記光検出部(3)は、光電子増倍管(31・36)と波形整形増幅器(32・37)と波高弁別器(33・38)とカウンタ(34・39)とコンピュータ(40)とを備えている。
前記光電子増倍管(31)と波形整形増幅器(32)と波高弁別器(33)とカウンタ(34)とは、前記第1シンチレータ(1)に対応しており、かつ、コンピュータ(40)への入力系統を構成している。
前記光電子増倍管(36)と波形整形増幅器(37)と波高弁別器(38)とカウンタ(39)とは、前記第2シンチレータ2に対応しており、かつ、コンピュータ(40)への入力系統を構成している。
前記光電子増倍管(31)は、第1シンチレータ(1)からの光を、前記第1導光部(51)を介して受光するようになっている。
前記光電子増倍管(36)は、第2シンチレータ(2)からの光を、前記第2導光部(52)を介して受光するようになっている。
前記コンピュータ(40)は、カウンタ34およびカウンタ39からの出力を受け取り、次の(a)及び(b)の動作、すなわち、
(a)各カウンタからの出力に基づいて、所定時間毎の発光回数を算出する動作;
(b)カウンタ(34)に基づく発光回数の合計出力から、カウンタ(39)に基づく発光回数の合計出力を減算し、算出された値に換算係数を乗じて、熱中性子束の値を得る動作、
を行う構成となっている。
前記コンピュータ(40)は、前記(b)の動作において、
(b1)カウンタ(39)に基づく合計出力を、これに対して感度補正のための補正係数を乗じたのちに、カウンタ(34)に基づく合計出力から減算する構成となっていてもよい。
前記コンピュータ(40)は、前記(b)の動作において、以下の算出式に基づいて、前記各シンチレータの合計出力から熱中性子束とγ線線量とを計算することができる。
ここで、 n :熱中性子束、 g :γ線線量、 a :熱中性子に対する第 1 シンチレータの感度、 c :熱中性子に対する第 2 シンチレータの感度、 b :γ線に対する第 1 シンチレータの感度、 d :γ線に対する第 2 シンチレータの感度、X:第1シンチレータの合計出力、Y:第2シンチレータの合計出力である。
本発明に係る熱中性子束モニタは、次の構成であってもよい。すなわち、このモニタは、第1シンチレータと、第2シンチレータと、光検出部とを備えている。前記第1シンチレータは、熱中性子と核反応を起こす核種を備えている。前記第2シンチレータは、前記核種を第1シンチレータよりも少ない濃度で備えているか、あるいは実質的に備えておらず、前記光検出部は、前記第1シンチレータと前記第2シンチレータの発光出力に基づいて熱中性子束を測定するものとなっている。
この熱中性子束モニタは、さらに導光路(5)を備えることができる。ここで、前記導光路(5)は、1本の第1導光部(51)を備えており、前記第1シンチレータ(1)と第2シンチレータ(2)とは、前記第1導光部(51)の先端に、縦列で配置されており、前記第1シンチレータ(1)は、前記第2シンチレータ(2)よりも先端側に配置されており、前記第1シンチレータ(1)の後ろ側には、波長シフトファイバ(517)が配置されており、前記波長シフトファイバ(517)の後ろ側には、アイソレータ(518)が配置されており、前記アイソレータ(518)における、前記第1シンチレータ(1)側の面は透過面となっており、前記アイソレータ(518)における、前記第2シンチレータ(2)側の面は反射面となっており、前記アイソレータ(518)の後方には、前記第2シンチレータ(2)が配置されている構成となっている。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱中性子束モニタの概略的構成を示すブロック図である。
図2は、図1のP部分を拡大した要部断面図である。
図3は、図1のQ部分を拡大した要部断面図である。
図4は、本発明の第2実施形態に係る熱中性子束モニタの要部拡大断面図である。
図5は、本発明の第2実施形態に係る熱中性子束モニタの概略的構成を示すブロック図である。
図6は、本発明の第2実施形態におけるチェレンコフ光対策を説明するための説明図である。
図7は、本発明の第3実施形態に係る熱中性子束モニタにおいて用いる第1シンチレータの拡大断面図である。
図8は、本発明の第4実施形態に係る熱中性子束モニタの要部拡大断面図である。
図9は、本発明の第5実施形態に係る熱中性子束モニタの要部拡大断面図である。
図10は、本発明の実験例における実験結果を示すグラフである。
図11は、比較例における実験結果を示すグラフである。
図12は、本発明の実験例における実験結果を示すグラフである。
図13は、本発明の実験例における実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の第1実施形態に係る熱中性子束モニタを、図1〜図3を参照して説明する。
(第1実施形態の構成)
この実施形態に係る熱中性子束モニタは、第1シンチレータ1(図2参照)と、第2シンチレータ2(図3参照)と、光検出部3(図1参照)と、導光路5とを主要な構成として備えている。
第1シンチレータ1は、熱中性子と核反応を起こす核種を備えている。本実施形態のシンチレータ1は、通常のシンチレータとして用いられる基材にこのような核種を混入することにより構成されている。核種が混入される、シンチレータ用の基材としては、有機物質を用いたもの(例えばプラスチックシンチレータ)であっても、無機物質を用いたもの(例えば少量のタリウムをドープしたNaIやCsIの結晶、ZnSの結晶、またはBGOなどの酸化物結晶を用いたシンチレータ)であってもよい。
本実施形態では、第1シンチレータ1に備えられた核種として、10Bが用いられている。ただし、核種としては、これに限らず、6Li、ウラン、プルトニウム、ガドリニウムなどを用いることができる。要するに、核種としては、熱中性子と核反応を起こすものであればよい。6Liを用いる例は別の実施形態として後述する。10Bは、シンチレータ基材の内部に取り入れることが可能であり、さらに、発光波長に対してほぼ透明な10B入りシンチレータを作成することが可能であるため、この実施形態では、核種を第1シンチレータ1の基材の内部に混ぜ込んでいる。
第2シンチレータ2は、前記したような核種を第1シンチレータよりも少ない濃度で備えているか、あるいは実質的に備えていないものとなっている。ここで、「核種を実質的に備えていない」とは、「熱中性子による核反応が核種に生じたとしても、それによる第2シンチレータ2の発光量が、ノイズとして区別できる発光量である」ことを意味する。このような発光量であれば、しきい値を設定することにより、第2シンチレータからの、熱中性子に起因する発光を除去しうるからである。また、熱中性子と核反応を起こす核種を第2シンチレータ2に微量に混入することは許容される。第2シンチレータ2の材質としては、第1シンチレータ1の基材と同様の材質(つまり有機または無機の物質を用いたシンチレータ)であることが好ましい。第1シンチレータ1と第2シンチレータ2との特性が一致するほうが、計測精度向上を図りやすいためである。しかしながら、第2シンチレータ2の材質として、第1シンチレータ1と異なるものを用いることは可能である。
光検出部3は、第1シンチレータ1と第2シンチレータ2の発光出力を検出する構成となっている。この実施形態における光検出部3は、光電子増倍管31・36と波形整形増幅器32・37と波高弁別器33・38とカウンタ34・39とコンピュータ40とから構成されている。この実施形態では、光電子増倍管31と波形整形増幅器32と波高弁別器33とカウンタ34とが、第1シンチレータ1に対応し、コンピュータ40への入力系統を構成している。同様に、この実施形態では、光電子増倍管36と波形整形増幅器37と波高弁別器38とカウンタ39とが、第2シンチレータ2に対応し、コンピュータ40への入力系統を構成している。
光電子増倍管31は、第1シンチレータ1からの光を、導光路5を介して受光するようになっている。光電子増倍管31は、光を高感度で電気信号に変換する部品である。波形整形増幅器32は、光電子増倍管31で得られた電気信号の波形を整形し、かつ増幅するものである。波高弁別器33は、整形された電気信号の出力値としきい値とを比較し、しきい値に満たない電気信号(つまりノイズ)を除去するものである。カウンタ34は、波高弁別器33で選別された信号を計数するものである。例えば、カウンタ34は、しきい値を超えた信号が一つ到来する毎に計数値を一つインクリメントしてコンピュータ40へ出力するようになっている。これらの構成要素は、従来から知られているので、これ以上詳しい説明は省略する。
光電子増倍管36は、第2シンチレータ2からの光を、導光路5を介して受光するようになっている。光電子増倍管36、波形整形増幅器37、波高弁別器38およびカウンタ39の構成は、光電子増倍管31、波形整形増幅器32、波高弁別器33およびカウンタ34と同様なので、これらについての詳しい説明は省略する。
コンピュータ40は、カウンタ34およびカウンタ39からの出力を受け取り、次のような動作を行う。
(1)各カウンタからの出力に基づいて、所定時間毎(例えば1秒毎)の発光回数(これを合計出力と称する。)を算出する。
(2)カウンタ34に基づく合計出力から、カウンタ39に基づく合計出力を減算する。ここで、本実施形態では、カウンタ39からの合計出力に対して、感度補正のための補正係数を乗じたのち、減算を行っている。第1シンチレータ1と第2シンチレータ2との間における感度の相違を補正するためである。減算後、算出された値に換算係数を乗じて、熱中性子束の値を得る。
(3)得られた熱中性子束をコンピュータ40の出力部(ディスプレイやプリンタなど)に出力する。なお、熱中性束を出力せずに、後の処理のために記憶装置に記憶しておくことも可能である。
コンピュータ40におけるこのような動作は、コンピュータプログラムにより容易に実行可能である。
導光路5は、第1導光部51と第2導光部52とを備えている。この実施形態では、これらの導光部は、光ファイバにより構成されている。
第1導光部51の先端部511は、着脱部512により、第1導光部51の基部(先端部以外の部分)に対して着脱可能となっている。第1シンチレータ1は、第1導光部51の先端に、これと隣接して配置されている(図2参照)。第1導光部51および第1シンチレータ1を覆う位置には、反射層513が形成されている。反射層513は、第1シンチレータ1からの光を内部へ反射し、かつ、熱中性子に対する感度を実質的に有しない材質により構成されている。ここで、「感度を実質的に有しない」とは、「無視できるまたは除去できる程度のノイズしか発生しない」という意味である。このような材質としては、例えばチタン酸化物(TiO2)である。第1シンチレータ1および第1導光部51の周囲には、外乱光を遮断し、かつ、熱中性子を透過させる光遮蔽層514が配置されている。つまり、第1シンチレータ1および第1導光部51は、光遮蔽層514により覆われている。
第2導光部52は、第1導光部51と同様の構成となっている。すなわち、第2導光部52の先端部521は、着脱部522により、第2導光部52の基部に対して着脱可能となっている。また、第2シンチレータ2は、第2導光部52の先端に、これと隣接して配置されている(図3参照)。第2導光部52および第2シンチレータ2を覆う位置には、反射層513と同様の反射層523が形成されている。第2シンチレータ2および第2導光部52の周囲には、外乱光を遮断し、かつ、熱中性子を透過させる光遮蔽層524が配置されている。
(第1実施形態の使用方法および動作)
つぎに、本実施形態に係る熱中性子束モニタの使用方法および動作について説明する。まず、第1シンチレータ1および第2シンチレータ2を、測定箇所に配置する。例えば、生体内の腫瘍を死滅させるために照射される中性子線の熱中性子束を測定する用途であれば、これらを腫瘍の近傍に配置する。ここで、本実施形態では、第1・第2導光部51・52の先端部511・521を着脱可能としたので、先端部511・521のみを持って各シンチレータの位置決めをすることができ、その作業が容易となる。また、各先端部をディスポーザブルとすることができるので衛生上の扱いが容易となる。
ついで、外部から測定箇所(例えば腫瘍)に対して熱中性子を照射する。このとき、熱中性子照射場では、γ線も測定箇所に対して照射される。照射された熱中性子およびγ線は、光遮蔽層514・524および反射層513・523を通過して、第1・第2シンチレータ1・2に到達する。
第1シンチレータ1では、これに混入されている「熱中性子と核反応を起こす核種」が熱中性子と反応して、エネルギーを発生する。これにより、第1シンチレータ1が発光する。さらに、第1シンチレータ1では、γ線と第1シンチレータ1の基材との反応によっても発光する。これらの光は、第1導光路51を介して、光検出部3の光電子増倍管31に送られる。本実施形態では、反射層513を設けているので、第1シンチレータ1から外部に漏れようとする光を内部に戻すことができる。このため、光を第1導光路51および光電子増倍管31に効率よく送り出すことができる。さらに、この実施形態では、光遮断層514を形成したので、外乱光によるノイズの混入を防止することができる。
光電子増倍管31に送られた光は、ここで電気信号に変換される。この電気信号は、波形整形増幅器32において波形整形および増幅され、波高弁別器33においてノイズが除去された後、カウンタ34で計数されて、計数の結果がコンピュータ40に送られる。
一方、第2シンチレータ2では、γ線との反応により発光が生じる。第2シンチレータ2では、前記した核種を第1シンチレータよりも少ない濃度で備えている、あるいは実質的に備えていないため、熱中性子との核反応回数は第1シンチレータよりも少なく、それに伴う発光回数も少ない。第2シンチレータ2で生じた光は、第1シンチレータ1の場合と同様に、第2導光路52を介して、光電子増倍管36により電気信号に変換される。この電気信号は、波形整形増幅器37、波高弁別器38を介してカウンタ39に送られ、ここで計数される。計数の結果はコンピュータ40に送られる。
コンピュータ40は、次の動作を行う。
(1)各カウンタからの出力に基づいて、所定時間毎(例えば1秒毎)の発光回数(合計出力)を算出する。つまり、第1および第2シンチレータ1および2における1秒間の発光回数をそれぞれカウントする。
(2)ついで、カウンタ34に基づく合計出力から、カウンタ39に基づく合計出力(補正係数を乗じたもの)を減算し、この減算値に換算係数を乗じることによって熱中性子束を得る。
(3)得られた熱中性子束をコンピュータ40の出力部(ディスプレイやプリンタなど)に出力する。
第1シンチレータ1からの出力は、γ線の影響を含んでいる。本実施形態の装置および方法では、前記した動作により、第1シンチレータ1の出力から、γ線による影響を考慮し、熱中性子の到来回数を得ることができる。したがって、この実施形態では、熱中性子束の計測結果がγ線に影響されにくく、測定結果が安定するという利点がある。
また、本実施形態では、導光路5を用いて、光の状態で信号を光検出部3に送っているので、経路中における電気的ノイズが信号に混入しにくいという利点もある。
さらに、第1および第2シンチレータを構成する基材をプラスチックシンチレータとすれば、発光の減衰時間が短くなる。プラスチックシンチレータにおける減衰時間は、例えば1ns程度である。このため、この実施形態によれば、高い計数率を得ることができる。すると、熱中性子の強い場(例えば治療用に熱中性子が使用される場)での、熱中性子の計測が可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るモニタおよびこれを用いた測定方法を、図4および図5に基づいて説明する。この実施形態では、第1実施形態と共通する構成については同一符号を用いて説明を省略する。
本実施形態のモニタでは、第1シンチレータ1と第2シンチレータ2とが、1本の第1導光部51の先端に、縦列で配置されている(図4参照)。また、本実施形態における第1シンチレータ1と第2シンチレータ2の発光波長は、互いに異なるものとなっている。例えば、第1シンチレータ1の発光波長は青色、第2シンチレータ2の発光波長は緑色の波長ととなっている。さらに、この実施形態では、第1シンチレータ1が、第2シンチレータ2よりも先端側に配置されている。ただし、第2シンチレータ2を、第1シンチレータ1よりも先端側に配置してもよい。この実施形態では、第1シンチレータ1、第2シンチレータ2および第1導光部51の先端部511によって、本発明における熱中性子束モニタ用検出素子の一例が構成されている。
第1導光部51の中間部には、色分光フィルタ53が配置されている(図5参照)。色分光フィルタ53は、波長に対応して光を分岐させるものである。第1導光部51は、色分光フィルタ53によって分光された青色の光(つまり第1シンチレータ1からの光)を光電子増倍管31に送るようになっている。第2導光部52は、色分光フィルタ53によって分光された緑色の光(つまり第2シンチレータ2からの光)を光電子増倍管36に送るようになっている。つまり、フィルタ53で分光された光は、それぞれ対応する導光部を通って、光電子増倍管31および36に送られる。
本実施形態のモニタによれば、第1シンチレータ1における発光と第2シンチレータ2における発光とを、それぞれ、カウンタ34とカウンタ39により計数して、コンピュータ40に送ることができる。したがって、第1実施形態の場合と同様に、熱中性子束の測定ができる。
また、第2実施形態のモニタによれば、一本の第1導光部51の先端に第1および第2シンチレータ1および2を配置しているので、測定箇所が狭い場合における測定器の取り付け作業が容易になるという利点がある。
なお、第2実施形態におけるチェレンコフ光対策は、例えば以下の手段で実施できる。チェレンコフ光とは、エネルギ−の高い荷電粒子が物質(誘電体)内を通過するとき、この粒子の速度が物質内の光速度より大きい場合に発する青い放射光である。
(1)第1シンチレータ1および第2シンチレータ2の発光色を青色以外とし、かつ、それぞれの発光色も異ならせる(例えば、赤色と緑色とする)。
(2)光検出部3の手前に、青色をカットするフィルタ514を設ける(図5中破線参照)。このフィルタ514を通過した赤色と緑色を色分光フィルタ53で分光して、それぞれの波長の光を検出する。これにより、熱中性子束測定へのチェレンコフ光の影響を除去できる。
ただし、シンチレータからの発光色は、一般に青色が多く、赤色や緑色は特殊である。そこで、波長シフトファイバを用いて、青色発光の波長を赤色や緑色にシフトさせる方法を、図6を用いて説明する。この例では、青色で発光する第1シンチレータ1の後に、波長シフトファイバ517が配置されている。
波長シフトファイバ517の後側には、アイソレータ518が配置される。アイソレータ518の一方の面(第1シンチレータ1側の面)は透過面、他方の面(第2シンチレータ2側の面)は、反射面となっている。これにより、第2シンチレータ2からの光が波長シフトファイバ517に進入することを防止する。
アイソレータ518の後方には、緑色又は赤色発光のシンチレータ2が配置される。
この方法によれば、第1シンチレータ1として、通常の青色発光のものを用いることができる。
第2実施形態における他の構成および利点は前記第1実施形態と同様なので詳細な説明を省略する。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るモニタを図7に基づいて説明する。この第3実施形態では、第1実施形態で説明した核種として、6Liが用いられている。具体的には、この実施形態では、6Liの化合物である6LiF粉末11を用いている。この6LiF粉末11は、この実施形態では、図7に示されているように、第1シンチレータ1の基材部分の外表面に付着させられている。6LiF粉末11は白色であり、第1シンチレータ1の内部にこれを混入すると、取り出せる光量が低下してしまう。6LiF粉末11を第1シンチレータ1の表面に付着させれば、反射材としても機能し得るので、その周囲に配置された反射材と共に第1シンチレータ1の内部から発せられた光を反射して内部に戻し、取り出せる光量を増加させることができる。もちろん、6Liの化合物には透明なものも存在する。さらに、6Li化合物が有色であっても、シンチレータの内部にこれを混入することは可能である。
その他の構成は第1実施形態または第2実施形態と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。なお、第1シンチレータ1において光を取り出す面(図7中下面)には6Li粉末11を付着させないことが好ましい。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る中性子サーベイメータを図8に基づいて説明する。この第4実施形態では、一つの光電子増倍管31における入力部のほぼ中央に第1シンチレータ1が配置されている。さらに第1シンチレータ1の外側に、第2シンチレータ2が配置されている。さらに、第2シンチレータ2の外側に、第3シンチレータ6が配置されている。第3シンチレータ6は、第2シンチレータ2と同様に、前記した核種を含まない構成となっている。
各シンチレータの間には、光を反射する反射層(図示せず)が配置されており、各シンチレータにおける発光を独立に取り出すことができるようになっている。各シンチレータには、それぞれ、光電子増倍管311、312および313が隣接して配置されている(図8参照)。すなわち、各光電子増倍管は、各シンチレータからの発光を受け取って電気信号に変換するようになっている。光電子増倍管311には、前記と同様の波形整形増幅器、波高弁別器、カウンタが接続されており(図示せず)、速中性子線による発光を含んだ計数値をコンピュータ40に出力することができるようになっている。光電子増倍管312は、前記した光電子増倍管36と同様の構成であり、主にγ線計数値をコンピュータ40に出力できるようになっている。光電子増倍管313は、光電子増倍管31と同様の構成であり、熱中性子束およびγ線の計数値をコンピュータ40に出力できるようになっている。
第4実施形態のサーベイメータにおいては、外部から到来した中性子は、第3シンチレータ6により減速され、熱中性子となって、第3シンチレータ6の内側にある第1シンチレータ1により計測される。また、外部から第3シンチレータ6に到来した速中性子線も、第3シンチレータ6により計測される。
さらに、γ線は、透過力が強いため、ほとんど減衰せずに、第2および第1シンチレータ2および1を通過する。これにより、第2シンチレータ2では、γ線補償のための計数を行うことができる。
この実施形態のサーベイメータでは、γ線および中性子線の線量を同時に計測することが可能になるという利点がある。
なお、この第4実施形態では、本発明のモニタを用いてサーベイメータを構成したが、これに限らず、例えば、エリアモニタやモニタリングポストなどの中性子線検出装置を構成することも可能である。この場合の構成としては、例えば、図8に示す構成が可能である。ただし、第3シンチレータ6に代えて、単なる減速材を用いることが可能である。また、この減速材からの出力を検出する必要はない。第1・第2シンチレータの周囲に減速材を配置することで、高速中性子を熱中性子に変換できる。さらに、熱中性子束を第1・第2シンチレータで計測し、その値を速中性子線量を算出することができる。なお、換算のためには、例えば、所定の検量線を作成しておけばよい。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係るモニタを図9に基づいて説明する。この第5実施形態では、光電子増倍管31の入力部前面に第1シンチレータ1が取り付けられている。また、光電子増倍管36の入力部前面に第2シンチレータ2が取り付けられている。この実施形態では、各シンチレータからの光を、導光路5を介さずに、光電子増倍管31および36により受光している。光電子増倍管31および36の出力は、波形整形増幅器32および37にそれぞれ送られる。他の構成および利点は前記第1実施形態と同様なので説明を省略する。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係るモニタを説明する。この第6実施形態では、第2シンチレータ2が、前記第1シンチレータ1に混入された核種を第1シンチレータよりも少ない濃度で備えている、あるいは第1シンチレータとは熱中性子に対する感度が異なる核種を備えている。この場合、以下のようにして、熱中性子束とγ線線量を計算できる。
第1シンチレータ1からの出力を、X
= an + bg (a,cは熱中性子に対する感度)、
第2シンチレータ2からの出力を、Y
= cn + dg (b,dはγ線に対する感度)、
とする。ここで、n:熱中性子束、g:γ線線量である。また、この例では、出力X,Yは、それぞれ、カウンタ34または39でのカウント数である。
これらをn, gについて解くと、
となる。このように、各シンチレータの出力X,Yから、熱中性子束とγ線線量を計算することができる。
(実験例)
第1実施形態の装置構成を用いて熱中性子束の測定を行った。測定条件は下記の通りである。
(測定条件)
第1シンチレータ:ホウ素入りプラスチックシンチレータ(サンゴバンCDJ社製BC−454)
第2シンチレータ:ホウ素なしプラスチックシンチレータ(サンゴバンCDJ社製BC−408)
第1導光部および第2導光部:光ファイバ(三菱レイヨン社製PM−3241−HD、長さ10m、直径1mm)
光電子増倍管:浜松フォトニクス社製H6780
水ファントム:直径18cm×高さ20cmのアクリル樹脂製筒の内部に水を充填
この条件化で、水ファントム中に配置した各シンチレータに、水ファントムの外側から熱中性子を照射した。測定の妥当性を検証するため、直径0.26mmの金線を用いて、従来の金の放射化法による測定も行った。
結果を図10に示す。図10の横軸は、水ファントムの表面から本熱中性子束モニタまでの距離である。本実施形態の方法は、金の放射化法とほぼ同じ測定結果を得ていることがわかる。すなわち、本実施形態の方法によれば、精度のよい測定が可能である。
比較のため、第1シンチレータのみでの計測を行った。結果を図11に示す。熱中性子束が低下するほど測定精度が悪くなることがわかる。
本実験例における、測定時間(横軸)と、1秒あたりの計数値(縦軸)との関係を図12に示す。第1シンチレータに基づく計数値をA、第2シンチレータに基づく計数値をBで示す。C=A−Bが熱中性子束を表すことになる。計数値Bはγ線による寄与を表していると考えられる。
図12の状況を別の形式で表した例を図13に示す。この図では、各シンチレータからの発光量をチャネルに分割して表し(横軸)、チャネル毎の計数値(縦軸)を表している。第1シンチレータに基づく計測値がD、第2シンチレータに基づく計測値がEで示される。F=D−Eが熱中性子束を表すことになる。
なお、本発明の熱中性子束モニタは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは当然である。例えば、導光路としては、光ファイバ以外の導光路を用いても良い。
また、前記実施形態を実現するための各部(機能ブロックを含む)の具体的手段は、ハードウエア、コンピュータソフトウエア、ネットワーク、これらの組み合わせ、その他の任意の手段を用いることができる。
さらに、機能ブロックどうしが複合して一つの機能ブロックに集約されても良い。また、一つの機能ブロックの機能が複数の機能ブロックの協働により実現されても良い。
【産業上の利用の可能性】
本発明の熱中性子束モニタによれば、熱中性子束を安定して測定することが可能となる。
Claims (2)
- 第1シンチレータと、第2シンチレータと、光検出部とを備えており、前記第1シンチレータは、熱中性子と核反応を起こす核種を備えており、前記第2シンチレータは、前記熱中性子と核反応を起こす核種を第1シンチレータよりも少ない濃度で備えており、前記光検出部は、前記第1シンチレータと前記第2シンチレータの発光出力に基づいて熱中性子束を測定する熱中性子束モニタであって、
さらに導光路(5)を備えており、
前記導光路(5)は、第1導光部(51)と第2導光部(52)とを備えており、
前記第1シンチレータ(1)は、第1導光部(51)の先端に、これと隣接して配置されており、
前記第2シンチレータ(2)は、第2導光部(52)の先端に、これと隣接して配置されており、
前記光検出部(3)は、光電子増倍管(31・36)と波形整形増幅器(32・37)と波高弁別器(33・38)とカウンタ(34・39)とコンピュータ(40)とを備えており、
前記光電子増倍管(31)と波形整形増幅器(32)と波高弁別器(33)とカウンタ(34)とは、前記第1シンチレータ(1)に対応しており、かつ、コンピュータ(40)への入力系統を構成しており、
前記光電子増倍管(36)と波形整形増幅器(37)と波高弁別器(38)とカウンタ(39)とは、前記第2シンチレータ2に対応しており、かつ、コンピュータ(40)への入力系統を構成しており、
前記光電子増倍管(31)は、第1シンチレータ(1)からの光を、前記第1導光部(51)を介して受光するようになっており、
前記光電子増倍管(36)は、第2シンチレータ(2)からの光を、前記第2導光部(52)を介して受光するようになっており、
前記コンピュータ(40)は、カウンタ34およびカウンタ39からの出力を受け取り、次の(a)及び(b)の動作、すなわち、
(a)各カウンタからの出力に基づいて、所定時間毎の発光回数を算出する動作;
(b)カウンタ(34)に基づく発光回数の合計出力から、カウンタ(39)に基づく発光回数の合計出力を減算し、算出された値に換算係数を乗じて、熱中性子束の値を得る動作、
を行う構成となっており、
前記コンピュータ(40)は、前記(b)の動作において、以下の算出式に基づいて、前記各シンチレータの合計出力から熱中性子束とγ線線量とを計算することを特徴とする熱中性子束モニタ。
ここで、 n :熱中性子束、 g :γ線線量、 a :熱中性子に対する第 1 シンチレータの感度、 c :熱中性子に対する第 2 シンチレータの感度、 b :γ線に対する第 1 シンチレータの感度、 d :γ線に対する第 2 シンチレータの感度、X:第1シンチレータの合計出力、Y:第2シンチレータの合計出力である。 - 第1シンチレータと、第2シンチレータと、光検出部とを備えており、前記第1シンチレータは、熱中性子と核反応を起こす核種を備えており、前記第2シンチレータは、前記核種を第1シンチレータよりも少ない濃度で備えているか、あるいは実質的に備えておらず、前記光検出部は、前記第1シンチレータと前記第2シンチレータの発光出力に基づいて熱中性子束を測定する熱中性子束モニタであって、
さらに導光路(5)を備えており、
前記導光路(5)は、1本の第1導光部(51)を備えており、
前記第1シンチレータ(1)と第2シンチレータ(2)とは、前記第1導光部(51)の先端に、縦列で配置されており、
前記第1シンチレータ(1)は、前記第2シンチレータ(2)よりも先端側に配置されており、
前記第1シンチレータ(1)の後ろ側には、波長シフトファイバ(517)が配置されており、
前記波長シフトファイバ(517)の後ろ側には、アイソレータ(518)が配置されており、
前記アイソレータ(518)における、前記第1シンチレータ(1)側の面は透過面となっており、
前記アイソレータ(518)における、前記第2シンチレータ(2)側の面は反射面となっており、
前記アイソレータ(518)の後方には、前記第2シンチレータ(2)が配置されていることを特徴とする熱中性子束モニタ。
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