JP3976233B2 - プリント配線基板穿孔用シート及びかかるシートを用いたプリント配線基板の穿孔方法 - Google Patents

プリント配線基板穿孔用シート及びかかるシートを用いたプリント配線基板の穿孔方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線基板にスルーホールを形成させるための孔あけ(穿孔)加工に有用なプリント配線基板穿孔用シート及びかかるシートを用いたプリント配線基板の穿孔方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線基板にスルーホールを穿孔する場合は、孔径が大きい場合は基板に直接ドリルを当てて穿孔が行われるが、孔径の小さい汎用品の基板では、一般に上記基板上にアルミニウム箔等の金属薄膜と各種の水溶性化合物層を配置し、ドリル、錐、あるいはパンチャー等を用いて貫孔している。
上記方法において、水溶性化合物層の使用は、基板表面の凹凸が原因となるドリルビット部の逃げを防止して目的とするスルーホール部の位置にドリル先端部を正確に設定する、つまり加工位置精度の確保の目的で用いられ、更にアルミニウム箔の使用は基板の穿孔終了後、ドリルの引抜きの際に基板上の銅面の剥離防止、いわゆるバリ防止と共に穿孔時に発生するスルーホール部の発熱に帰因するスルーホール部の目づまりや切削クズの付着のトラブルを避けるためのもので、かかるアルミニウム箔/水溶性化合物層の積層利用によって穿孔加工を実施している。その上、水溶性化合物層は、穿孔終了後に基板を水洗することによって、基板からの除去が可能であるというメリットも持っている。
【0003】
かかる目的で使用する水溶性化合物を示す公知文献として、例えば、▲1▼特開平4−92488号公報、▲2▼特開平4−92494号公報には、基板の片面あるいは両面にポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコールを配置することが、▲3▼特開平7-96499号公報にはポリアルキレンオキシド化合物と多価カルボン酸及び又はジイソシアネート化合物よりなる水溶性高分子を、▲4▼特開平10-6298号公報ではかかる水溶性高分子と金属化合物よりなる組成物を配置すること等がいずれも記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、工業的にプリント配線基板にスルーホールを穿孔する場合、プリント配線基板を多数枚重ねて穿孔することが行われている現状において、上記従来の方法ではいずれの基板のどのスルーホールもすべてキズや、削りクズの付着等のない美麗な仕上がりの製品を得るには相当の熟練を必要とし、その品質にバラツキが生じることが多い。
特にドリル径が0.15mm以下のように細いドリルで連続して穿孔を実施する場合、近時のより高度な品質要求の一つであるめっき付きまわり性、つまりスルーホール内にめっきを施したときの、均一なめっき加工性を十分満足できないという欠陥が出易いので、加工位置精度を確保しつつ、すべての基板のどのスルーホールも美麗な仕上がりの製品を製造するためのシート及びそれを用いる穿孔方法の開発は極めて有用であると言わざるを得ない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)、重量平均分子量300以上10000未満のポリオキシアルキレン化合物(B)を含有してなる樹脂組成物層からなり、かつ該層が梨地加工されてなるプリント配線基板穿孔用シートが、かかる目的を達成しうることを見いだし本発明を完成した。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物層を構成する重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)、更に重量平均分子量300以上10000未満のポリオキシアルキレン化合物(B)について以下具体的に述べる。
【0007】
重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)としては、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールのモノエーテル化物、モノエーテルモノエステル化物、ジエーテル化物、モノエステル化物、ジエステル化物等が挙げられ、かかるポリアルキレングリコールとして具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が例示される。
【0008】
モノエーテル化物としては、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンモノオクチルフェニルエーテルが例示される。モノエーテルモノエステル化物としてはメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが例示される。ジエテール化物としては、ポリオキシエチレンジオレイルエーテル、ポリオキシエチレンジセチルエーテル、ポリオキシエチレンジステアリルエーテル、ポリオキシエチレンジラウリルエーテル、ポリオキシエチレンジドデシルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンジオクチルフェニルエーテル等が例示される。
【0009】
モノエステル化物としては、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノ牛脂肪酸エステル、ポリグルセリンモノステアレート等が例示され、ジエステル化物としては、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンジオレエート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジ牛脂肪酸エステル、ポリグルセリンジステアレート等がそれぞれ例示される。
【0010】
上記の水溶性ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量は、10000以上でなければならず、好ましくは15000〜300000、特に30000〜220000が有利である。
重量平均分子量が10000未満では、製膜性が悪くなり好ましくない。
【0011】
ポリオキシアルキレン化合物(B)の種類は前述した重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)の中で例示した化合物と同一で、重量平均分子量が異なるだけである。
本発明の樹脂組成物層において、(A)はフイルムの形成能を発揮させるために使用され、(B)は(A)の水溶性を向上させ、穿孔用シートのめっき付きまわり性等の改善効果機能を発揮させるために使用される。そのため、上記(B)の重量平均分子量としては、300以上10000未満、好ましくは350〜9000であることが必要である。重量平均分子量が300未満では、樹脂組成物層を長期間放置する場合に、ブリードアウトがおこる原因となったり、加工位置精度が低下したり、一方重量平均分子量が10000を越えると、穿孔用シートの水溶性低下によるめっき付きまわり性の低下の恐れが出る。
【0012】
本発明では樹脂組成物層が重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)を20〜90重量%、重量平均分子量300以上10000未満のポリオキシアルキレン化合物(B)を10〜80重量%含有してなることが望ましく、かかる配合割合により該組成物に可塑性が付与され、支持体と積層した時には層間接着性の向上あるいはフィルム状とした時のそりや割れが防止され、かかる効果はフィルム状としてそれを長期にわたって保存する時に顕著に発揮される。
【0013】
本発明における樹脂組成物層には、必要に応じて非イオン界面活性剤等の滑剤、防錆剤、リン酸エステル類等の安定剤の他、無機粉体等の公知の添加剤を添加されても差し支えない。
前記(A)及び(B)を含む樹脂組成物層は支持体との積層体としても使用される。
支持体としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、酢酸セルロースの疎水性プラスチツクが使用される。
支持体の厚みは、通常25〜300μmが好ましく、更には100〜250μmに設定される。
【0014】
かかる積層体を製造するには、支持体に例えば溶液流延法等の汎用の製膜手段で樹脂組成物を積層すれば良い。あるいは樹脂組成物の層を予め製造し、支持体とドライラミネートしても良い。
樹脂組成物層の厚みは25〜1000μmの範囲に設定することが好ましい。
【0015】
本発明のプリント配線基板穿孔用シートにおいては、その効果を発揮するためにフイルムに梨地加工を施すことが大きな特徴であり、水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)とポリオキシアルキレン化合物(B)との樹脂組成物のシートの場合は、フイルムに直接に梨地加工を行い、シート表面に凹凸模様を形成させる。凹凸模様としてはサンド梨地模様、亀甲模様、菱形模様等をあげることができる。
【0016】
梨地加工は100メッシュ以上、好ましくは200〜400メッシュで深さが1〜50μm程度、好ましくは1〜20μm程度(いずれもJIS B 0601で測定)の凹凸を設けるのが実用的である。
【0017】
上記梨地の形状が下限値以下ではいずれの場合にも本発明の効果が発揮されず、上限値以上ではフイルムにピンホール等が発生するので好ましくない。
梨地加工は凹凸模様が刻印されたエンボスロールとバックアップロールとの間にフイルムを通過させるという公知の方法が採用される。
加工時のエンボスロールの表面温度は100〜200℃、バックアップロールの表面温度は60〜100℃が、両ロール間の押圧力は10〜150kg/cm程度が実用的である。また梨地処理の施されたロールに樹脂溶液を流延させて、シートの製造と梨地加工を同時に行うこともできる。
【0018】
上記穿孔用シートを用いてプリント配線基板を穿孔する方法は、次の様にして行われる。
まず用いられるプリント配線基板は、通常は銅等の金属箔と電気絶縁体とが積層され一体化した基板であり、例えば外層に金属箔を配置したエポキシ基板等の金属箔張積層板,内層にプリント配線回路を有する多層積層板,プリント配線回路を有する金属箔張積層板,金属箔張プラスチックフィルム等が挙げられる。
【0019】
プリント配線基板の片面又は両面に本発明の穿孔用シートを配置し、このシートを介して基板の所定の位置に、ドリルあるいは錐等により所定の大きさのスルーホールを穿孔する。
穿孔用シートは、その梨地加工面がドリル側に向かう様にプリント配線基板面に配置するのが加工位置精度を上げる点で好ましい。穿孔用シートとプリント配線基板面の間に更にアルミニウム箔等の金属箔を介在させることもできる。
又、基板間にシートを介在させて複数枚のプリント配線基板を積層して同時に穿孔することも可能である。
【0020】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
なお、例中「%」、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。実施例1(穿孔用シートの製造)
シート1:
重量平均分子量20000のポリエチレングリコール〔キシダ化学社製「PEG20M」〕11部を水59部に溶解した。その水溶液に、重量平均分子量3100のポリエチレングリコール〔キシダ化学社製「PEG4000」〕30部を撹拌下に混合し樹脂組成物の水溶液(固形分27.5部)100部を得た。
【0021】
上記水溶液をポリエチレンテレフタレートシート〔東レ社製「T−70A」〕(厚さ25μm)からなる支持体上に、15ミルのアプリケーターを用いてコーティングして、80℃で2時間乾燥して膜厚50μmの塗膜を形成させ支持体から剥離して(A)及び(B)の組成物層からなるシートを得た。次いで、120℃に加熱されたエンボスロールと20℃に加熱されたバックアップロールとの間を押圧力60kg/cm、通過速度20m/minで、このシートを通過させ200メッシュ、深さ5μmのサンド模様を形成させた穿孔用シートを得た。
【0022】
実施例2(穿孔用シートの製造)
シート2:
上記シート1において、重量平均分子量3100のポリエチレングリコールを重量平均分子量2000のポリエチレングリコール〔キシダ化学社製「PEG2000」〕に変更した以外は同例と同じ操作で穿孔用シートを得た。
実施例3(穿孔用シートの製造)
シート3:
上記シート1において、重量平均分子量3100のポリエチレングリコールを重量平均分子量1500のポリエチレングリコール〔キシダ化学社製「PEG1540」〕に変更した以外は同例と同じ操作で穿孔用シートを得た。
【0023】
実施例4(穿孔用シートの製造)
シート4:
上記シート1において、重量平均分子量20000のポリエチレングリコールの使用量を22部に、重量平均分子量3100のポリエチレングリコールの使用量を19部にそれぞれ変更した以外は同例と同じ操作を行い穿孔用シートを得た。
【0024】
参考例1(穿孔用シートの製造)
シート5:
上記シート1において、予め200メッシュ、深さ5μmのサンド模様を形成させたポリエチレンテレフタレートシート支持体の裏面(サンド模様を形成していない面)に、15ミルのアプリケーターを用いて樹脂水溶液をコーティングして、80℃で2時間乾燥して膜厚50μmの塗膜を形成させ、剥離することなく穿孔用シートとした。
【0025】
参考例2(穿孔用シートの製造)
シート6:
上記シート5において、梨地形態を400メッシュで深さ5μmのサンド模様に変更した穿孔用シートを得た。
【0026】
比較例1(穿孔用シートの製造)
参考例1において、支持体の梨地加工を行わないで穿孔用シートを得た。
【0027】
比較例2(穿孔用シートの製造)
上記シート5における重量平均分子量20000のポリエチレングリコールに替えて、重量平均分子量2000のポリエチレングリコール〔キシダ化学社製「PEG2000」〕を使用した。
【0028】
比較例3(穿孔用シートの製造)
上記シート5における重量平均分子量3100のポリエチレングリコールに替えて、重量平均分子量200のポリエチレングリコール〔キシダ化学社製「PEG200」〕を使用した。
【0029】
比較例4(穿孔用シートの製造)
上記シート1における重量平均分子量3100のポリエチレングリコールに替えて、重量平均分子量20000のポリエチレングリコール〔キシダ化学社製「PEG20M」〕を使用した。
【0030】
上記の穿孔用シートを用いて下記の手順でプリント配線基板の穿孔を行い、シートの評価を行った。
厚さ18μmの銅箔が両面に積層された全厚0.4mmのプリント配線基板を2枚重ね、表1に示す如き穿孔用シートをその梨地加工面がドリル側になる様に基板最上部に配置して、室温、30%RHの条件下で直径0.15mmのドリルにて2枚の基板を貫通する1000穴のスルーホールを形成した。得られた穿孔基板についてスルーホールの加工位置精度、めっき付きまわり性を以下の様に評価した。
【0031】
(加工位置精度)
穴の中心部を実測し、予め決められた位置とのズレをデジタル測長機(大日本スクリーン社製「DR−555−D」)にて測定し1枚目、2枚目の1、500、750、1000穴目の平均値を算出して、標準偏差σを求め、(平均値+3σ)値を算出し以下の様に評価した。
◎・・・ドリル径の15%未満
○・・・ドリル径の15〜20%未満
△・・・ドリル径の20〜30%未満
×・・・ドリル径の30%以上
【0032】
(めっき付きまわり性)
穿孔基板に銅めっき(めっき浴:メルテックス社製「カパーグリーム125 」)を付け、1、2枚目の基板750穴、800穴、900穴、1000穴目の断面を確認し以下のように評価した。
○・・・すべての穴の銅めっきが均一に付いている
△・・・いずれか1つの穴の銅めっきの均一性が劣る
×・・・2つ以上の穴の銅めっきの均一性が劣る
【0033】
実施例、比較例の評価結果を表1に示した。
〔表1〕
Figure 0003976233
【0034】
【発明の効果】
本発明のプリント配線基板穿孔用シートは、重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)、重量平均分子量300以上10000未満のポリオキシアルキレン化合物(B)を含有してなる樹脂組成物層からなり、かつ該層が梨地加工されてなるのでプリント配線基板の穿孔を行う時、穿孔時の加工位置精度やめっき付きまわり性に優れる。

Claims (5)

  1. 重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)、重量平均分子量300以上10000未満のポリオキシアルキレン化合物(B)を含有してなる樹脂組成物層からなり、かつ該層が梨地加工されてなることを特徴とするプリント配線基板穿孔用シート。
  2. 樹脂組成物層が重量平均分子量10000以上の水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)を20〜90重量%、重量平均分子量300以上10000未満のポリオキシアルキレン化合物(B)を10〜80重量%含有してなることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板穿孔用シート。
  3. 請求項1又は2記載のシートが更に金属箔と積層されてなることを特徴とするプリント配線基板穿孔用シート。
  4. 請求項1〜3いずれか記載のシートをプリント配線基板上に配置して、ドリルで基板を穿孔することを特徴とするプリント配線基板の穿孔方法。
  5. 請求項〜4いずれか記載のシートをその梨地面がドリル側に向く様に配置して、ドリルで基板に穿孔することを特徴とするプリント配線基板の穿孔方法。
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