JP3975138B2 - 船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造 - Google Patents
船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンカー等液体貨物運搬船におけるカーゴタンクの、液体に浸かる桁の接水振動を防止する構造に係わる。
【0002】
【従来の技術】
液体貨物運搬船におけるカーゴタンク内構造で、共振が発生した場合、カーゴタンクに亀裂が生じることがあり、亀裂が生じるとカーゴタンクから液体貨物がリークすると云う重大事故を引き起こす危険性がある。
このため、対象構造部材を補強するなどして、共振を防止する対策がとられている。
【0003】
図8にカーゴタンクの断面構造を示している。1は船体、2は船体外板、3は船体内板、4は甲板、5は船底外板、6はタンクの縦通隔壁である。
7は各カーゴタンク内に、船体1の縦方向に幾重かに形成されたトランスリングであり、7−1はトランスリングの垂直桁、7−2はトランスリングの水平桁である。例えば、このトランスリングの垂直桁7−1が接水振動防止の対象構造部材となる。
【0004】
図9に示すように、垂直桁7−1は、縦通隔壁6に直角に固定されるウエブ板8と、該ウエブ板8の端部に固定されるフランジ部材9と、ウエブ板8の倒れ防止用に、ウエブ板8の面と縦通隔壁6の側との間に水平に配置されるブラケット10およびウエブ板8の縦方向の補強ブラケット11とより構成されている。
【0005】
12は縦通隔壁6の補剛材であるロンジ材であって、ウエブ板8を貫通して、船体1の縦方向に設けられている。
前記水平に配置されるブラケット10は、ロンジ材12に接続されるか、あるいは、縦通隔壁6に直接接続されることがある。
【0006】
一般に、液体に浸かる部材は空気中の部材に比べて、当該部材の固有振動数は低下する。これは、部材が振動する時にはその回りの空気または液体を伴って振動するが、このとき、空気と比べて液体の比重の方が大きいためである。
船体を設計するときには、推進装置などが起振源として存在することから、その低次の振動数との共振現象を避けるように考慮される。
その結果、共振を避けるべき対象構造部材の状態は、固有振動数が低下する液体に接する状態となる場合が多い。
【0007】
従来、共振の可能性があり、その対策が必要な場合には、液体との接触により固有振動数が低下する垂直桁7−1の固有振動数を上昇させている。そして、その手段としてロンジ材12およびブラケット10、11などの寸法を大きくすることが行われており、結果として構造部材の重量増加を来している。
また、船体が同じ大きさの船舶であっても、主機関の気筒数やプロペラの翼数の仕様変更に伴って、これら部材の寸法も大幅に変更されることになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液体に浸かる桁の重量を増加させることなく、あるいは増加を抑え、該液体に浸かる桁の接水振動を防止することができる船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造であって、カーゴタンクを構成するトランスリングのウエブ板に、フランジ部材、該ウエブ板の幅方向に延びる一対の第1ブラケット及び該ウエブ板の延在方向に延びる一対の第2ブラケットを設けると共に、一対の第1ブラケットと一対の第2ブラケットとによって囲まれる領域において表裏貫通する複数個の穴を設け、該複数個の穴に対応してトランスリングの強度を補強し、トランスリングの接水面積を低減して、トランスリングの固有振動数を船体内の起振源の固有振動数のゾーンより上位まで上昇させるようにした。
また、船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造であって、カーゴタンクを構成するトランスリングのウエブ板に、フランジ部材、該ウエブ板の幅方向に延びる一対の第1ブラケット及び該ウエブ板の延在方向に延びる第2ブラケットを設けると共に、フランジ部材と一対の第1ブラケットと第2ブラケットとによって囲まれる領域において表裏貫通する複数の穴を設け、該複数個の穴に対応してトランスリングの強度を補強し、トランスリングの接水面積を低減して、トランスリングの固有振動数を船体内の起振源の固有振動数のゾーンより上位まで上昇させるようにした。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明による桁構造の概略を示す図、図2は図1の部分拡大図、図3は図2のA−A矢視による断面図、図4は図2のB−B矢視による断面図、図5は図2の構造の変形例を示す図、図6は本発明の他の構造例を示す図、図7は図6の構造の変形例を示す図である。なお、図8、図9において説明した部分と同一の部分については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0011】
図1,図2において、13は垂直桁7−1のウエブ板8に設けられた表裏貫通する穴であって、垂直桁7−1のスパンの端部に設けられている。
該穴13を設けることによって、垂直桁7−1は液体との接水面積を低減され、その固有振動数は高められる。
したがって、この垂直桁7−1の固有振動数を、船体1内の起振源の固有振動数のゾーンより上位まで上昇させるだけの面積の穴13を設ければ、垂直桁7−1の起振源との共振を防止することができる。
【0012】
ところで、トランスリング7はカーゴタンクの構造部材であるから、穴13を設けることによって、垂直桁7−1の強度が低下することは防がねばならず、穴13の回りを補強し、垂直桁7−1の強度を保持する必要がある。
このため、共振を防止するに必要な面積を得るのに、一つの大きな穴を設けることは強度的に不利である。そこで、複数個の穴13を設け、トータルで必要な開口面積を確保するようにし、補強材を小さくしている。
【0013】
図1,図2においては、垂直桁7−1のスパン方向に斜めにクロスする十字形の補強リブ14−1、14−2を設け、該補強リブ14−1、14−2の間に略三角状の4つの穴13を設けている。
図5の例では、垂直桁7−1のスパン方向に斜めに配置した補強リブ14−1を設け、該補強リブ14−1の上下に、略三角状の2つの穴13を設けている。なお、14−3は垂直桁7−1のスパン方向に直角に取り付けられた補強リブである。
【0014】
図6において、15は垂直桁7−1のウエブ板8上、フランジ部材9に近づけて設けられた表裏貫通する穴である。この例の場合も、図6の(A)、(B)に示すように、穴15は複数個設けられており、トータルで共振を防止するに必要な開口面積になっている。
そして、この場合は穴15の側方において、部分的にフランジ部材9の寸法を大きくして、垂直桁7−1の補強に対応している。
【0015】
図7において、15は垂直桁7−1のウエブ板8の幅方向中央部に設けられた表裏貫通する穴であって、上記と同様にトータルで、共振を防止するに必要な開口面積になっている。
この場合も穴15の側方において、部分的にフランジ部材9の寸法を大きくして、あるいはウエブ板8の縦方向の補強フランジ11の寸法を大きくして垂直桁7−1の補強に対応している。
【0016】
なお、穴15をフランジ部材9に近づけて設ける場合(図6の例)は、同程度の振動数に上昇させるのに、穴15をフランジ部材9から離して設ける場合(図7の例)と比べて、穴のトータルの開口面積は相対的に小さくなる。
従って、図6の例の場合は、図7の例の場合と比較して穴15の個数は少な目に設けることができる。
【0017】
このように、本発明は液体に浸かる垂直桁7−1に、表裏貫通する穴13,15を設け、垂直桁7−1の液体との接水面積を低減するようにした。
そして、このように接水面積を低減することによって、垂直桁7−1の固有振動数を上昇させ、主機関などの起振源の固有振動数のゾーンより上位に固有振動数を設定するようにする。
【0018】
なお、起振源の固有振動数のゾーンとは、例えば、主機関の始動時、定格回転時、停止時の固有振動数の幅のことである。
また、同程度の大きさの船体で、主機関の気筒数やプロペラ翼数の仕様変更とは、同程度の大きさの船体で、機能アップしたような場合であって、これに対しては穴13,15の位置、あるいは大きさを変更することで対応できる。
【0019】
さらに、本発明では、補強ブラケット14を設けるか、あるいは部分的にフランジ部材9、11の寸法を大きくして補強するが、穴13、15を設けるので、垂直桁7−1の重量は殆ど増加しない。これは、単にロンジ材12やブラケット10の寸法を大きくし、構造材の剛性を増して、共振を防止していた従来の対応策と比較すると、構造材の重量増加は少なく、その重量差は極めて大きな差となる。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、液体に浸かる桁に、表裏貫通する複数個の穴を設け、該液体に浸かる桁の接水面積を低減して、該液体に浸かる桁の固有振動数を上昇させるようにしたので、当該桁構造部材の重量の増加を来すことなく、起振源との共振を防止することができるようになった。
【0021】
また、複数個の穴のトータル面積で、共振を防止するに必要な開口面積を得るようにしたので、強度的に有利であり、補強部材を軽量化できた。さらに、同程度の大きさの船体において、主機関の気筒数や、プロペラ翼数の仕様変更に対しても、液体に浸かる桁に設ける穴の位置や、大きさを変更することで、当該桁構造部材の重量の増加を来すことなく対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による桁構造の概略を示す図。
【図2】図1の部分拡大図。
【図3】図2のA−A矢視による断面図。
【図4】図2のB−B矢視による断面図。
【図5】図2の構造の変形例を示す図。
【図6】本発明の他の構造例を示す図。
【図7】図6の構造の変形例を示す図。
【図8】カーゴタンクの概略断面図。
【図9】図8の部分拡大図。
【符号の説明】
1 船体 2 船体外板
3 船体内板 4 甲板
5 船底外板 6 縦通隔壁
7 トランスリング 8 ウエブ板
9 フランジ部材 10 ブラケット
11 縦方向ブラケット 12 ロンジ材
13 穴 14 補強ブラケット
15 穴
Claims (6)
- カーゴタンクを構成するトランスリングのウエブ板に、フランジ部材、該ウエブ板の幅方向に延びる一対の第1ブラケット及び該ウエブ板の延在方向に延びる一対の第2ブラケットを設けると共に、前記一対の第1ブラケットと前記一対の第2ブラケットとによって囲まれる領域において表裏貫通する複数個の穴を設け、該複数個の穴に対応して前記トランスリングの強度を補強し、前記トランスリングの接水面積を低減して、前記トランスリングの固有振動数を船体内の起振源の固有振動数のゾーンより上位まで上昇させるようにしたことを特徴とする船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造。
- カーゴタンクを構成するトランスリングのウエブ板に、フランジ部材、該ウエブ板の幅方向に延びる一対の第1ブラケット及び該ウエブ板の延在方向に延びる第2ブラケットを設けると共に、前記フランジ部材と前記一対の第1ブラケットと前記第2ブラケットとによって囲まれる領域において表裏貫通する複数の穴を設け、該複数個の穴に対応して前記トランスリングの強度を補強し、前記トランスリングの接水面積を低減して、前記トランスリングの固有振動数を船体内の起振源の固有振動数のゾーンより上位まで上昇させるようにしたことを特徴とする船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造。
- 前記トランスリングの前記ウエブ板に設けた前記複数個の穴の近辺に、前記ウエブ板の幅方向に対して斜めに配置される補強ブラケットを設けて、前記ウエブ板の強度を補強するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造。
- 前記ウエブ板の幅方向に対して斜め十字形となるように前記補強ブラケットを設け、該斜め十字形に設けた補強ブラケット間に略三角状の穴を4個設けたことを特徴とする請求項3記載の船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造。
- 前記複数個の穴を設ける位置の側方において、部分的に前記ウエブ板の前記フランジ部材の寸法を大きくして、前記トランスリングの強度を補強するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造。
- 前記複数個の穴を設ける位置の側方において、部分的に前記ウエブ板の前記ブラケットの寸法を大きくして、前記トランスリングの強度を補強するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶におけるカーゴタンクの接水振動防止構造。
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