JP3973775B2 - ペースト樹脂組成物 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は減粘剤及びそれを含有する、減粘効果が大きく、粘度の経時安定性が良好なペースト樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
塩化ビニル系樹脂等のペースト樹脂組成物は塩化ビニル等のビニル系モノマーを主とするモノマーを乳化重合やミクロ懸濁重合して得られた樹脂ラテックスを噴霧乾燥した樹脂粉体と、炭酸カルシウム等のフィラー、可塑剤、希釈剤、顔料、難燃剤、安定剤等とを配合したもので、加工法は浸漬加工やコーティングが一般的とされる。しかし、このようなペースト樹脂組成物は高粘度のものが多く、また粘度の経時安定性も悪く、数日間の保存により粘度が上昇し、加工が困難又は不可能になることがある。
【0003】
このような粘度経時変化を改良する方法として、従来からミネラルスピリット、アルキルベンゼン、パラフィン等の希釈剤や陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール、ソルビタンエステル、グリセリンアルキルエステル等の減粘剤が、樹脂の重合後やペースト樹脂組成物を調製する時に加えられているが、減粘効果や粘度経時安定性は十分とはいえず、特に炭酸カルシウム等のフィラーが配合された場合は粘度低下が十分ではなく問題があった。
さらに可塑剤を多量添加して粘度を下げる方法もあるが、ペースト製品の柔軟性が大きすぎたり、添加剤のブリード等の問題がある。特に床材等の場合は下地からの汚れが問題視されている。
【0004】
従って、本発明の課題は、特に炭酸カルシウム等のフィラーが配合されたときの減粘効果が大きく、かつ粘度の経時変化が少なく、希釈剤配合量の低減可能な、加工性に優れたペースト樹脂組成物、及びそれに用いられる減粘剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル酢酸(A成分)と、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル(B成分)とを、A/B(重量比)=10/90〜 100/0の割合で配合してなる減粘剤、及びこの減粘剤、合成樹脂及びフィラーを含有するペースト樹脂組成物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の減粘剤のA成分は、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20であり、10〜18が好ましい。8未満では親水性が高すぎて、減粘効果が充分得られず、20を越えると融点が高くなり、ペースト樹脂組成物の分散が悪くなる。又、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基、オキシプロピレン基、それらの混合型等が挙げられ、減粘効果の観点からオキシエチレン基が好ましい。更に、好適な組み合わせは、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10〜18でオキシアルキレン基がオキシエチレン基であるもので、ポリオキシエチレンn−デシルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテル酢酸等が挙げられ、アルキレンオキサイド付加モル数は、凝固点の面から20以下が好ましい。A成分の中で特に好ましいものは、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜20のポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はポリオキシエチレンミリスチルエーテル酢酸である。
【0007】
このA成分は、炭素数8〜20のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のアルコラートとクロロ酢酸ナトリウムを反応させ、中和し酸型にすることで容易に合成できる。ここで用いられる炭素数8〜20のアルコールとしてはn−オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。又、A成分は塩型であってもよい。
【0008】
また、B成分は、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20であり、8未満では親水性が高すぎて、減粘効果が充分得られず、20を越えると融点が高くなり、ペースト樹脂組成物の分散が悪くなる。又、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基、オキシプロピレン基、それらの混合型等が挙げられ、減粘効果の観点からオキシエチレン基を含有するものが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンn−デシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等の他、一般式(I)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルエーテルが好ましく、特に一般式(I−1)で表されるトリブロック型のものが好ましい。
【0009】
RO-[(EO)x・(PO)y]-(EO)Z-H (I)
〔式中、 Rは炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。x及びzはそれぞれエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す1以上の数で、xとzの和は4〜100 、好ましくは5〜30である。yはプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す1以上の数で、xとzの和より小さい数、好ましくは 1.5〜29である。なお、[(EO)x・(PO)y] の付加形態はランダム付加、ブロック付加又はそれらの混合付加であり、[(EO)x・(PO)y] と(EO)z とはブロック結合している。〕
RO-(EO)X-(PO)y-(EO)z-H (I−1)
〔式中、R 、EO、PO、x、y、zは前記の意味を示し、(EO)X、(PO)y、(EO)zはこの順にブロック結合している。〕
B成分として特に好ましいものは、一般式(I−1)において、R が炭素数12〜18のアルキル基で、アルキレンオキサイドの付加モル数を、凝固点が20℃以下になるようにしたものである。
【0010】
このB成分は、炭素数8〜20のアルコールにアルキレンオキサイド、特にエチレンオキサイド又は(及び)プロピレンオキサイドを付加することで合成できる。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加する場合はブロックでもランダムでも良い。
【0011】
上記A成分及びB成分は単独でも混合して用いてもよく、本発明の減粘剤のA成分とB成分の配合重量比は10/90〜100/0であり、好ましくは20/80〜100/0である。この配合重量比が10/90未満であると十分な減粘効果が得られない。
【0012】
本発明の減粘剤の上記A成分及びB成分の凝固点はそれぞれ20℃以下が好ましく、10℃以下がさらに好ましい。凝固点が20℃以下では、特に冬期のペースト樹脂組成物の製造において溶解に長時間を要することなく、作業性の低下やツブの発生で品質が低下することがない。
【0013】
本発明のペースト樹脂組成物は、合成樹脂、フィラー及び上記のような減粘剤を含有する。本発明に用いられる合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂や、メタクリル樹脂、エチレン・アクリル共重合樹脂等のアクリル系樹脂等が挙げられ、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
塩化ビニル系樹脂は塩化ビニル単体又はこれと共重合可能なモノマーとの混合物を乳化重合やミクロ懸濁重合して得られた平均粒径 0.1〜50μm で平均重合度 700〜4000のものが好適である。塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0014】
本発明のペースト樹脂組成物中の上記減粘剤の含有量は、減粘効果、コストや最終製品の性能面から、合成樹脂 100重量部に対し0.05〜 5.0重量部が好ましく、 0.1〜 3.0重量部が更に好ましい。
本発明の減粘剤のペースト樹脂中への添加方法は予めA成分とB成分を配合したものをペースト調製時に可塑剤等と混合添加しても、あるいはA成分とB成分を別々に添加しても減粘効果は変わりはない。さらに、作業時に固体又はペースト状の減粘剤は融点以上に加熱して添加し、作業時に液体のものはそのまま他の配合剤と同様に合成樹脂の重合終了時や粉末樹脂を用いペーストを調製するときに添加してもよい。
【0015】
本発明に用いられるフィラーとしては炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、珪酸カルシウム、アルミナ等が挙げられる。これらは単独でも混合して用いてもよい。本発明の組成物中のフィラーの含有量は、減粘効果や性能面から、合成樹脂100 重量部に対し10〜 400重量部が好ましい。
【0016】
また、本発明の組成物には可塑剤を添加することが好ましく、その添加量は、減粘効果や性能面から、合成樹脂100 重量部に対し10〜 150重量部が好ましい。本発明に用いられる可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)の他、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジウンデシル等の炭素数1〜13のアルコールのフタル酸エステル系、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリデシル等の炭素数6〜10のアルコールのトリメリット酸エステル系、アジピン酸エステル系、アゼライン酸エステル系、セバチン酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ系、脂肪酸エステル系、ピロメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0017】
さらに本発明のペースト樹脂組成物には上記成分以外に、通常ペースト樹脂に添加される希釈剤、発泡剤、安定剤、滑剤、難燃剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤等を適宜添加することができる。
本発明のペースト樹脂組成物は、合成樹脂のペーストに上記添加剤を添加し、通常使用されるリボンブレンダー、スーパーミキサー、ディスパー、ディゾルバー等を用い攪拌分散させることにより調製できる。このようにして得られたペースト樹脂組成物は粘度の経時変化が少なく、良好な加工性が得られるものである。また、希釈剤を低減できるので環境面やコスト面からも優れた性能を与えるものである。
【0018】
【実施例】
例中の部は特記しない限り重量基準である。
【0019】
実施例1〜19及び比較例1〜8
表1及び表2に示す減粘剤を表1及び表2に示す割合で用い、塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)製,TK−1000,重合度1000) 、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP,ビニサイザー80(花王(株)製))、炭酸カルシウム(ホワイトンH:東洋ファインケミカル(株)製)、スズ系安定剤(アデカスタブFL44:旭電化工業(株)製)、発泡剤(ビニホールAC#1C:永和化成工業(株)製)、希釈剤(ミネラルスピリット)及び酸化チタンをラボミキサーで均一に撹拌分散した後、減圧下で脱泡して、下記組成の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製した。
【0020】
<塩化ビニル系ペースト樹脂組成物>
塩化ビニル樹脂 100.0部
DOP 65.0部
炭酸カルシウム 150.0部
酸化チタン 15.0部
スズ系安定剤 3.0部
発泡剤 3.0部
希釈剤 6.0 又は12.0部
減粘剤 0.0〜 2.0部
得られたペースト樹脂組成物について下記方法で粘度及び粘度変化率を測定し、また分散状態を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0021】
(a) ペースト樹脂組成物の粘度
23℃、相対湿度60%の恒温恒湿室でブルックフィールドBL型粘度計でNo.4ローターを用い、回転数60r/min で測定した。測定限界を越えた場合は、適宜回転数を変化させた。
【0022】
(b) 粘度変化率
ペースト調製2時間後の粘度と7日後のB型粘度を測定し、下記の式で算出した。
粘度変化率=7日後粘度/2時間後粘度
粘度の変化率が1.00に近い方が安定性が良いことを示す。
【0023】
(c) 分散状態
調製したペースト樹脂組成物を剥離紙に展開し、200 ℃で10分加熱融解させ、その表面状態を肉眼で観察し、下記基準で評価した。
○:凝集物が全く見られない
△:凝集物がやや見られる
×:凝集が激しい。
【0024】
【表1】
Figure 0003973775
【0025】
【表2】
Figure 0003973775
【0026】
なお、表1及び表2中の略号は以下の意味を示す。
A-1:ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸
A-2:ポリオキシエチレン(5) ラウリルエーテル酢酸
A-3:ポリオキシエチレン(20)ミリスチルエーテル酢酸
B-1:ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(2) ポリオキシエチレン(7)ステアリルエーテル
B-2:ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル
B-3:ポリオキシエチレン(9) ラウリルエーテル
C-1:ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル
C-2:ポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテル
実施例1〜19に示すように、本発明の減粘剤は減粘効果及び粘度安定性を満足させるものであり、加工性は著しく向上するものと期待できる。また、実施例13〜19では実施例1〜12に比べ希釈剤を12.0部から6.0 部にしているが、比較例2〜4とほぼ同等のペースト粘度を示していることが判る。これは現行レベルの粘度で希釈剤を半減できることを示している。希釈剤の低減は環境への悪影響が極めて少なくなるものである。これに対して、比較例7及び8に示すように希釈剤のミネラルスピリット量を低減させるとB型粘度が大きくなり、比較例の希釈剤を低減した系では減粘効果及び粘度安定性を満足するものは得られていない。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、減粘効果が大きく、かつ粘度の経時変化が少なく、希釈剤配合量の低減可能な加工性に優れた、ペースト樹脂組成物、及びそれに用いられる減粘剤が得られる。

Claims (5)

  1. アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル酢酸(A成分)と、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル(B成分)とを、A/B(重量比)=10/90〜 100/0の割合で配合してなる減粘剤。
  2. A成分、B成分それぞれの凝固点が20℃以下である請求項1記載の減粘剤。
  3. 合成樹脂、フィラー及び請求項1又は2記載の減粘剤を含有するペースト樹脂組成物。
  4. 合成樹脂100 重量部に対し、フィラーを10〜 400重量部、減粘剤を0.05〜 5.0重量部含有する請求項3記載のペースト樹脂組成物。
  5. 合成樹脂が塩化ビニル系樹脂である請求項3又は4記載のペースト樹脂組成物。
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