JP3973722B2 - 直流油浸電力ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に長尺海底電力ケーブル等に好適に用いられ、高粘度の絶縁油を含浸した非加圧タイプの直流油浸電力ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
超高圧直流送電ケーブルとして、現在油浸絶縁ケーブルが用いられている。また、直流送電ケーブルは長尺の海底ケーブルに適用されることが多い。このため超高圧直流送電用の長尺海底ケーブルとしては、条長が極めて長くなることから、低粘度の絶縁油を含浸した油加圧タイプの油浸絶縁ケーブルでは油圧の伝播に限度があるため、高粘度の絶縁油を含浸した無加圧タイプの油浸絶縁ケーブル、いわゆるMIND(Mass Impregnated Non Draining)ケーブルが用いられることになる。
【0003】
このようなMINDケーブルにあっては、絶縁油が完全に含浸されている状態では良好な直流破壊特性を示す。
しかしながら、例えばヒートサイクルなどが加わったりすると、温度上昇時に絶縁層に含浸されている絶縁油が熱膨張により外部遮蔽層側に押し出され、温度下降時には押し出された絶縁油が非加圧のために完全に元に戻り切らず、冷却収縮に基づく脱油ポイド(気泡)が油浸絶縁体中に生成することになる。
また、このケーブルを高低差の激しい個所に布設した時にも重力による絶縁油の移動により脱油ボイドが形成される。
【0004】
このヒートサイクルなどによる脱油ボイドの生成を抑制するためには、さらに粘度の高い絶縁油を使用し、温度上昇時においても絶縁油が油浸絶縁体中を移動しにくいようにすることが考えられる。
しかしながら、このような高粘度の絶縁油を使用すると、ケーブル製造時の含浸工程において含浸時間が長くなり、生産性の点で難がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、直流油浸電力ケーブルにおいて、温度変動などによる脱油ボイドの生成を防止し、しかもケーブル製造時において絶縁油の含浸が速やかに行えるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題は、油浸絶縁体に含浸される高粘度絶縁油として、ポリブテンを主体とし、これにポリエチレンまたはポリイソブチレンを添加し、40℃における動粘度が25000〜40000センチストークス(以下、cstと表す。)であり、100℃における動粘度が600〜1000cstであるものを用いることによって解決できる。
また、前記絶縁紙が、クラフト紙とプラスチックフィルムを貼り合わせたラミネート紙であり、前記クラフト紙として気密度が5000ガーレ秒以上でかつ密度が0.70g/cm 3 以上の高気密度でかつ高密度の層と、気密度が100ガーレ秒以上でかつ密度が0.70g/cm 3 以下の低気密度でかつ低密度の層とからなる多層構造のクラフト紙を用い、その低気密度で低密度の層をプラスチックフィルムと接するように貼り合わせたものであることが好ましい。
【0007】
【作用】
ケーブルの常用温度領域である20〜60℃の範囲では、動粘度が非常に高く、この温度領域でのヒートサイクルでは、脱油ボイドが生成しにくい。一方、100℃付近では動粘度が急激に低下するのでケーブル製造の際の含浸工程に長時間を要することはない。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明で用いられる高粘度絶縁油は、ポリブテンを主体とするものである。ポリブテンは、下記一般式で示される構造のものであって、平均分子量が800〜1500程度のものが好適である。
ポリブテンは、一般式からも明らかなように、分子末端に二重結合を有し、この二重結合により放電時のガス吸収性に優れており、塩化アルミニウムなどの重合触媒の残渣を完全に除去することにより、優れた誘電特性を持つものとなる。
【0009】
【化1】
【0010】
本発明に用いられるポリブテンの具体的なものとしては、「日石ポリブテンHV−300」(商品名、日本石油化学(株)製)「出光ポリブテン300R」(商品名、出光石油化学(株)製)などが挙げられる。
【0011】
また、本発明では、絶縁油の40℃における動粘度が25000〜40000cstであり、100℃における動粘度が600〜1000cstであることが必要である。ポリブテンにポリイソブチレン、ポリエチレンを添加し、溶解することにより、上記粘度条件を満たすことができる。
絶縁油の40℃における動粘度が25000cst未満ではヒートサイクルなどによる脱油ボイドを防止することが困難であり、40000cstを越えると平均分子量が大きくなり、絶縁体への含浸時間が長くなる。また、100℃における動粘度が1000cstを越えると絶縁体への含浸が迅速に行われず、600cst未満になると脱油しやすくなる。
【0012】
本発明の直流油浸電力ケーブルは、導体上に絶縁紙を巻回し、これに上述の高粘度絶縁油を含浸して形成した油浸絶縁体を有するものである。
高粘度絶縁油の絶縁紙への含浸は、巻回状態にある絶縁紙を予め真空乾燥し、水分等を除去し、これに90〜110℃程度に加温した上記絶縁油を含浸させる方法などによって行われ、加温状態では絶縁油の粘度が十分に低下しているので、含浸は速やかに進行する。
【0013】
ここでの絶縁紙としては、特に限定されないが、通常のクラフト紙の他に直流特性の優れたプラスチックフィルムラミネート紙を用いることが好ましい。
プラスチックフィルムラミネート紙は、クラフト紙の両面にプラスチックフィルムを貼り合わせたものである。
【0014】
このプラスチックフィルムとしては、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルベンテン−1、ポリブテン−1、ポリエチレンなどの無極性ポリオレフィンやテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロポリプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素樹脂からなる厚さ20〜150μmのものが用いられる。これらのなかでもポリプロピレンホモポリマーからなるものが好ましい。
【0015】
また、クラフト紙として、気密度が5000ガーレ秒以上でかつ密度が0.70g/cm3 以上の高気密度でかつ高密度の層と、気密度が100ガーレ秒以上でかつ密度が0.70g/cm3 以下の低気密度でかつ低密度の層とからなる多層構造のクラフト紙を用い、その低気密度で低密度の層をプラスチックフィルムと接するように貼り合わせたものが、プラスチックフィルムとクラフト紙との接着強度を高めることができて好ましい。
【0016】
また、プラスチックラミネート紙として、巻回後の真空乾燥および絶縁油含浸を容易とし、その作業時間を短縮するために、ラミネート紙の表面に微細な凹凸を形成するエンボス処理を施したものやプラスチックラミネート紙の表面の幅方向に微小な溝を多数形成したものなどを用いてもよい。
【0017】
本発明の直流油浸電力ケーブルは、上述のように絶縁油を常時加圧しないMINDケーブルとして使用され、主に長尺直流送電用海底ケーブルとして用いられる。このため、海水の温度、布設ルートの高低差などによって、使用する高粘度絶縁油の動粘度の異なるものを選択することがよく、水温が高い場合、高低差の大きい場合には、40℃での動粘度が40000cstに近い高粘度のものが好ましい。
【0018】
このような直流油浸電力ケーブルにあっては、20〜60℃の常用温度領域では、絶縁油の動粘度が非常に高く、この温度領域内での温度変化によっても脱油ボイドが生成されることはほとんどなく、脱油ボイドに起因する直流絶縁破壊特性の低下が抑えられる。
また、このケーブルの製造に際しては、絶縁油を約100℃付近まで加熱することにより動粘度が極めて低くなるので、巻回状態の絶縁紙への絶縁油の含浸が速やかに行われ、生産性が低下することがない。
【0019】
以下、具体例を示す。
(実施例)
以下に示す4種(A〜D)の高粘度絶縁油を用意した。
A)「日石ポリブテンHV−300」単独 40℃の動粘度28000cst、100℃の動粘度590cst。
B)「日石ポリブテンHV−300」に低密度ポリエチレンを5重量%添加し、溶解したもの。40℃の動粘度2900cst、100℃の動粘度600cst。
C)「日石ポリブテンHV−300」に分子量150万のポリイソブチレンを5重量%添加し、溶解したもの。40℃の動粘度3500cst、100℃の動粘度700cst。
D)ポリブテン「LV−25E」(商品名、日本石油化学製)単独、40℃の動粘度52.5cst、100℃の動粘度6.4cst。
【0020】
径20mm2 の導体上に厚さ125μmのクラフト紙(密度1.0g/cm3)を巻回し、これに上記4種の高粘度絶縁油を約100℃に加熱して含浸し、厚さ5mmの油浸絶縁体を形成してモデルケーブルとした。
このモデルケーブルに25℃〜60℃のヒートサイクルを加えたのち、その直流破壊電圧を測定した。
結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1の結果から、本発明の動粘度条件を満すA、B、C、の高粘度絶縁油を使用したモデルケーブルでは、直流破壊電圧が高く脱油ボイドの生成が抑えられていることがわかる。
また、巻回状態の絶縁紙への含浸も速やかに行れたことが確認できた。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の直流油浸電力ケーブルによれば、ケーブルに温度変化が加わったりあるいはケーブルが高低差の大きな箇所に布設されたりしても、これらの要因によってその油浸絶縁体に脱油ボイドが生成されることが防止され、電気特性が低下することがない。
また、ケーブルの製造の際には、加熱状態の絶縁油が十分に低粘度となるので、絶縁紙への含浸作業が速やかに行われ、生産性が良いものとなる。
さらに、放電時に生成するガスを絶縁油が吸収し、これによる特性低下も防止できる。
Claims (2)
- 導体上に絶縁紙を巻回し、これに高粘度絶縁油を含浸した油浸絶縁体を有する直流油浸電力ケーブルであって、高粘度絶縁油が、ポリブテンを主体とし、これにポリエチレンまたはポリイソブチレンを添加し、40℃における動粘度が25000〜40000センチストークスであり、100℃における動粘度が600〜1000センチストークスであることを特徴とする直流油浸電力ケーブル。
- 前記絶縁紙が、クラフト紙とプラスチックフィルムを貼り合わせたラミネート紙であり、前記クラフト紙として気密度が5000ガーレ秒以上でかつ密度が0.70g/cm 3 以上の高気密度でかつ高密度の層と、気密度が100ガーレ秒以上でかつ密度が0.70g/cm 3 以下の低気密度でかつ低密度の層とからなる多層構造のクラフト紙を用い、その低気密度で低密度の層をプラスチックフィルムと接するように貼り合わせたものである請求項1記載の直流油浸電力ケーブル。
Priority Applications (1)
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JP01069797A JP3973722B2 (ja) | 1997-01-23 | 1997-01-23 | 直流油浸電力ケーブル |
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Publications (2)
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JPH10208553A JPH10208553A (ja) | 1998-08-07 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP01069797A Expired - Fee Related JP3973722B2 (ja) | 1997-01-23 | 1997-01-23 | 直流油浸電力ケーブル |
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SE0002019D0 (sv) * | 2000-05-31 | 2000-05-31 | Abb Ab | Insulated electric cable |
-
1997
- 1997-01-23 JP JP01069797A patent/JP3973722B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH10208553A (ja) | 1998-08-07 |
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