JP3970369B2 - 直流油浸電力ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に長尺海底電力ケーブル等に好適に用いられ、高粘度の絶縁油を含浸して用いられる油浸絶縁用絶縁紙、およびこれを用いた非加圧タイプの直流油浸電力ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
超高圧直流送電ケーブルとして、現在油浸絶縁ケーブルが用いられている。また、直流送電ケーブルは長尺の海底ケーブルに適用されることが多い。このため、超高圧直流送電用の長尺海底ケーブルとしては、条長が極めて長くなることから、低粘度の絶縁油を含浸した油加圧タイプの油浸絶縁ケーブルでは油圧の伝播に限度があるため、高粘度の絶縁油を、クラフト紙を備えた絶縁紙に含浸した絶縁体を有する無加圧タイプの油浸絶縁ケーブル、いわゆるMIND(Mass Impregnated Non Draining)ケーブルが用いられることになる。
【0003】
このようなMINDケーブルにあっては、絶縁油が完全に含浸されている状態では良好な直流破壊特性を示す。
しかしながら、例えばヒートサイクルなどが加わったりすると、温度上昇時に絶縁層に含浸されている絶縁油が熱膨張により外部遮蔽層側に押し出され、温度下降時には押し出された絶縁油が非加圧のために完全に元に戻りきらず、冷却収縮に基づく脱油ボイド(気泡)が油浸絶縁体中に生成することになる。脱油ボイドが生成した油浸絶縁体では、特に300kV以上の高電圧送電時において、いわゆるボイド放電が生じやすくなり、絶縁特性が低下する。
【0004】
このヒートサイクルなどによる脱油ボイドの生成を抑制するためには、さらに粘度の高い絶縁油を使用し、温度上昇時においても絶縁油が油浸絶縁体中を移動しにくいようにすることが考えられる。
しかしながら、このような高粘度の絶縁油を使用すると、特に絶縁紙のクラフト紙が高気密度で高密度なものである場合において絶縁油が絶縁紙に含浸しにくくなり、ケーブル製造時の含浸工程において含浸時間が長くなり、ケーブル生産性が低下する問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、ケーブル製造時において絶縁油の含浸を速やかに行うことができ、しかも絶縁特性に優れた油浸絶縁用絶縁紙およびこれを用いた直流油浸電力ケーブルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、クラフト紙の厚みが50μm以上、80μm以下の範囲にあり、気密度が1000〜3000ガーレ秒、密度が0.75〜0.95g/cm3 であり、高粘度絶縁油の40℃における動粘度が5000〜40000センチストークス、100℃における動粘度が100〜1000センチストークスであるもの、またはクラフト紙の厚みが80μmを越え、150μm以下の範囲にあり、気密度が150〜2000ガーレ秒、密度が0.60〜0.90g/cm3 であり、高粘度絶縁油の40℃における動粘度が5000〜40000センチストークス、100℃における動粘度が100〜1000センチストークスであるものを用いることによって解決される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の油浸絶縁用絶縁紙(以下、単に絶縁紙という)としては、通常のクラフト紙が用いられ、中でも脱イオン水洗浄紙が絶縁性の点で好ましい。
上記クラフト紙としては、厚みが50〜150μmであるものが用いられる。この厚みが50μm未満であると、絶縁破壊強度が向上するものの、巻回回数が多くなり、ケーブル製造に手間がかかる。また、上記厚みが150μmを越えると、オイルギャップが大きくなり、脱油したときに大きなボイドを生じやすい。
【0008】
また、上記クラフト紙の厚みが、上記範囲の中でも比較的高い範囲にある場合には、絶縁油が完全に含浸するのに長時間を要すると考えられる。このため、上記ケーブル製造時の含浸工程を迅速に行わせるために、上記クラフト紙の厚みが比較的厚い場合には気密度、密度を低く設定する必要がある。すなわち、上記クラフト紙の厚みが50μm以上、80μm以下の範囲にあるときには、その気密度を1000〜3000ガーレ秒、密度を0.75〜0.95g/cm3とし、上記厚みが80μmを越え、150μm以下の範囲にあるときには、気密度を150〜2000ガーレ秒、密度を0.60〜0.90g/cm3とする。
【0009】
上記クラフト紙の厚みが50μm以上、80μm以下の範囲にあるときには、その気密度が1000ガーレ秒未満、または密度が0.75g/cm3未満であると、絶縁破壊強度、特にインパルス絶縁破壊強度が低下するため好ましくない。また、気密度が3000ガーレ秒を越える場合、または密度が0.95g/cm3を越える場合には、ケーブル製造時の含浸工程において含浸時間が長くなり、生産性の低下を招く。
上記クラフト紙の厚みが80μmを越え、150μm以下の範囲にあるときには、その気密度が150ガーレ秒未満、または密度が0.60g/cm3未満であると、絶縁破壊強度、特にインパルス絶縁破壊強度が低下するため好ましくない。また、使用される絶縁油が非常に高粘度であるため、気密度が2000ガーレ秒を越える場合、または密度が0.90g/cm3を越える場合には、ケーブル製造時の含浸工程において、絶縁油がクラフト紙内部まで含浸するのに時間がかかり、含浸時間が長くなり、生産性の低下を招く。
【0010】
また、上記絶縁紙としては、導体上に巻回した後の真空乾燥および絶縁油含浸を容易とし、その作業時間を短縮するために、絶縁紙の表面に微細な凹凸を形成するエンボス処理を施したものや、絶縁紙の表面の幅方向に微少な溝を多数形成したものなどを用いるのが好ましい。
【0011】
また、本発明で用いられる絶縁油としては、ナフテン系鉱油、またはナフテン系鉱油にポリイソブチレン、ブタジエンなどのゴムや、ポリエチレンなどのプラスチック等のポリマーを添加したものなどを使用してよい。好適な市販品の例としては、「T2015」(商品名、ダセックキャンベル社製)等を挙げることができる。
【0012】
上記絶縁油としては、40℃における動粘度が5000〜40000cstであり、100℃における動粘度が100〜1000cstであるものが好適である。
絶縁油の40℃における動粘度が5000cst未満ではヒートサイクルなどによる脱油ボイド生成を防止することが困難となり、40000cstを越えると、脱油しにくくなるものの、高温としても絶縁紙に含浸しにくくなる。
また、100℃における動粘度が100cst未満であるものでは、含浸工程が迅速化される点で好ましいが、低温、例えば40℃においても低粘度となるため脱油が起こりやすい。また、この動粘度が1000cstを越えるものでは、ケーブル製造時に絶縁体への含浸が迅速に行われない。
【0013】
本発明の直流油浸電力ケーブルは、上記絶縁紙を導体上に巻回し、これに上記高粘度絶縁油を含浸して形成した油浸絶縁体を有するものである。高粘度絶縁油の絶縁紙への含浸は、巻回状態にある絶縁紙を予め真空乾燥し、水分等を除去し、これに90〜110℃程度に加温した上記絶縁油を含浸させる方法などによって行われる。
上述のように、絶縁紙のクラフト紙の気密度および密度は十分に低く設定されているため、このクラフト紙繊維間の空隙部分は十分に大きい。従って、上記含浸工程の際には、絶縁油が絶縁紙内に浸透しやすく、含浸は速やかに進行する。
【0014】
本発明の直流油浸電力ケーブルは、上述のように絶縁油を常時加圧しないMINDケーブルとして使用され、主に長尺直流送電用海底ケーブルとして用いられる。
【0015】
上記構成の絶縁紙にあっては、気密度および密度が十分に低く設定されているので、ケーブルの製造の際に、高粘度の絶縁油を使用した場合でも、これを絶縁紙に含浸させる作業が速やかに行われる。従って、ケーブルの生産性を向上させることができる。また、絶縁油を確実に絶縁紙全体に含浸させ、高電圧送電時、例えば300kV以上の電圧での送電時にも優れた絶縁特性を有するケーブルを得ることができる。
【0016】
なお、上記油浸電力ケーブルは、交流送電用に用いることもできる。また、上記絶縁紙を、ケーブルの接続部に用いることも可能である。
【0017】
以下、具体例を示す。
(実施例)
厚み、気密度または密度の異なる6種のクラフト紙からなる絶縁紙を、それぞれ25×25cmの大きさに裁断し、これらをそれぞれ3枚ずつ積層して上下面に円形のカーボン紙(R=3cm)を配し、次いで真空乾燥処理(温度120℃、処理時間24時間)を施した後、これらに高粘度絶縁油を約100℃に加温した状態で24時間含浸し、油浸絶縁体とした(実施例1〜6)。この絶縁油としては、ナフテン系鉱油「T2015」(商品名、ダセックキャンベル社製)を用いた。
上記実施例1〜6の油浸絶縁体の正極性インパルス絶縁破壊電圧(Imp破壊強度)を測定した。また、上記絶縁油が、絶縁紙全体に完全に行き渡っているかどうか(絶縁紙への含浸度合い)を目視により確認し、完全に行き渡っている場合を○、不完全である場合を×と判定した。
【0018】
(比較例)
厚み、気密度または密度の異なる6種のクラフト紙からなる絶縁紙を、上記実施例1〜6と同様の操作で油浸絶縁体とした(比較例1〜6)。これら絶縁体の正極性インパルス絶縁破壊電圧を測定するとともに、絶縁油が完全に行き渡っているかどうかを目視により確認した。
【0019】
【表1】
【0020】
表1の結果から、本発明の気密度、密度条件を満たすクラフト紙を有する実施例1〜6の油浸絶縁体では、比較例1〜6のものに比べ、絶縁破壊強度が高く、しかも絶縁油の含浸が迅速に行われたことがわかる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、クラフト紙の気密度および密度が十分に低く設定されているので、ケーブルの製造の際に、高粘度の絶縁油を使用した場合でもこれを絶縁紙に含浸させる作業が速やかに行われる。従って、ケーブルの生産性を向上させることができる。また、絶縁油を確実に絶縁紙全体に含浸させ、絶縁特性に優れたケーブルを得ることができる。
Claims (2)
- クラフト紙を有する油浸絶縁用絶縁紙を導体上に巻回し、これに高粘度絶縁油を含浸した油浸絶縁体を有する直流油浸電力ケーブルであって、
前記クラフト紙の厚みが50μm以上、80μm以下の範囲にあり、気密度が1000〜3000ガーレ秒、密度が0.75〜0.95g/cm3 であり、前記高粘度絶縁油の40℃における動粘度が5000〜40000センチストークス、100℃における動粘度が100〜1000センチストークスであることを特徴とする直流油浸電力ケーブル。 - クラフト紙を有する油浸絶縁用絶縁紙を導体上に巻回し、これに高粘度絶縁油を含浸した油浸絶縁体を有する直流油浸電力ケーブルであって、
前記クラフト紙の厚みが80μmを越え、150μm以下の範囲にあり、気密度が150〜2000ガーレ秒、密度が0.60〜0.90g/cm3 であり、前記高粘度絶縁油の40℃における動粘度が5000〜40000センチストークス、100℃における動粘度が100〜1000センチストークスであることを特徴とする直流油浸電力ケーブル。
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- 1997-03-07 JP JP05372497A patent/JP3970369B2/ja not_active Expired - Fee Related
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