JP3973757B2 - 高粘度油浸ケーブルの接続方法および接続部 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高粘度の絶縁油を絶縁紙に含浸してなる油浸絶縁体を有し、絶縁油を加圧しないタイプの油浸電力ケーブル、いわゆるMIND(マス・インプレグネイテッド・ノン・ドレイニング)ケーブルの接続方法および接続部に関する。
【0002】
【従来の技術】
MINDケーブルの接続部は、導体接続管などによって導体を接続したのち、これの周囲に高粘度絶縁油を含浸した絶縁紙を多層に巻回して油浸絶縁体を構成することによって形成される。
この接続作業においては、油浸絶縁体中にボイドなどの欠陥が発生することを防止するために、以下のような作業が行われる。
まず、工場等内において、テープ状に裁断した絶縁紙を密閉容器に収め、真空乾燥したのち、この絶縁紙に高粘度の絶縁油を含浸しておく。ついで、現場あるいは工場での接続の際に、密閉容器から含浸済の絶縁紙を取り出し、巻回することになるが、その巻回の際に、空気等の巻き込みを避けるために、絶縁油を絶縁紙にかけながら(これは「かけ油」と呼ばれている。)、巻回する。
【0003】
ついで、この油浸絶縁体上に遮蔽層などを設け、鉛工を施し、ついで接続部を真空引きして油浸絶縁体中の気泡等を除去し、さらに高粘度絶縁油を注油し、防食層を形成する手順で行われる。
ここで、かけ油に使用される絶縁油は、原則としてMINDケーブルに使用されている絶縁油と同種の高粘度のものである。
このため、「かけ油」に使用される絶縁油は、流動性、浸透性を高める目的で、120〜150℃程度に加熱され、その動粘度ができるだけ低下した状態のものが用いられる。
しかしながら、絶縁油への引火の恐れや、高温の油を取扱う作業性などの観点からは、加熱温度を十分に高めることができず、絶縁油の粘度を必要な程度にまで低下させることができなかった。
【0004】
この問題点を解決するため、本出願人は、先に、70〜90℃の温度範囲での動粘度が70〜150センチストークスの絶縁油をかけ油に用いる方法を特許出願している(特願平9−264594号)。このような動粘度を有する絶縁油には、例えば、70〜90℃における動粘度が500〜1000センチストークスの高粘度絶縁油Aと、70〜90℃における動粘度が1〜2センチストークスの低粘度絶縁油Bとを容積比で6/4〜7/3の割合で混合したものがある。
しかし、この方法も二種の絶縁油を所定比率で混合しなければならず、また70〜90℃程度の加熱を必要とし、作業が面倒である不都合が残っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、絶縁油の加熱を一切必要とせず、また絶縁油の混合も不要であり、しかも気泡等の巻き込みを防止することができる接続方法を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題は、接続部に巻回される油浸絶縁紙に含浸した高粘度絶縁油よりも動粘度の低い絶縁油、例えば25℃での動粘度が30センチストークス以下の絶縁油をかけ油として使用する方法によって解決される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の接続方法は、通常のMINDケーブルの接続方法と基本的に同様であり、まず2本のケーブルの未端の導体を導体接続管で圧縮,接続して導体接続部を形成し、この上に油浸絶縁紙を巻回する。
この油浸絶縁紙は、ケーブル本体における絶縁紙と同様の絶縁紙を密閉容器内に収め、真空乾燥したのち、ケーブル本体で使用されている高粘度絶縁油と同一の高粘度絶縁油を加熱状態で含浸させたものである。
【0008】
上記絶縁紙としては、クラフト紙,プラスチックラミネート紙等が用いられる。上記高粘度絶縁油には70〜90℃での動粘度が500〜1000センチストークス、40℃での動粘度が5000〜4万センチストークスの範囲のものが好ましく、ナフテン系鉱油,パラフィン系鉱油,合成油や低粘度の絶縁油にポリブテン,ポリイソブチレン,ポリブタジエンなどのゴムを少量溶解して上記粘度範囲にしたものなどが用いられる。高粘度絶縁油の含浸は、これを100℃前後に加熱し、低粘度化した状態の絶縁油を真空乾燥した絶縁紙に含浸するなどの方法によって行われる。
【0009】
このような油浸絶縁紙の巻回の際に、絶縁油をかけ油しながら巻回することは従来と同様であるが、このかけ油に使われる絶縁油として、油浸絶縁紙に含浸されている高粘度絶縁油よりも動粘度の低い絶縁油、好ましくは25℃における動粘度が30センチストークス以下である絶縁油を使用することが、本発明のポイントである。
【0010】
この低粘度の絶縁油には、特に混合を必要としない1種のみからなるものが好ましく、ナフテン系鉱油,パラフィン系鉱油,ポリブデン,DDBなどの合成油で、25℃における動粘度が150センチストークス以下、好ましくは30センチストークス以下のものが用いられる。動粘度が25℃において150センチストークスを越える絶縁油では、常温でのかけ油の際に気泡を巻き込む恐れがある。
【0011】
このような絶縁油においては、常温においても低粘度であるので、かけ油に際して加熱する必要がなく、常温のまま使用することができ、しかも低粘度であるので、気泡を巻き込むことなく、油浸絶縁紙を巻回してゆくことができる。
ついで、この油浸絶縁体上に遮蔽層等を形成し、鉛工を施し、ついで真空引きしたのち高粘度絶縁油を注油し、さらに防食層を被覆するところは、従来の接続方法と同様である。
【0012】
このような接続方法にあっては、油浸絶縁紙の巻回の際のかけ油として常温において低粘度の絶縁油を用いているので、油浸絶縁体に気泡等が巻き込まれることがほとんどなくなる。また、絶縁油の加熱が不要であり、作業性が向上するとともに引火等の危険性もなくなる。また、気泡が巻き込まれたとしても、低粘度の絶縁油中に存在するので、次工程の真空引きの際に簡単に脱気される。
さらに、二種以上の絶縁油を混合しなくとも、市販のものをそのまま使用することができるので、作業が簡便となる。
【0013】
本発明の接続方法では、かけ油に用いた低粘度の絶縁油は、徐々に油浸絶縁紙に含浸されている高粘度絶縁油と混ざり合い、最終的には高粘度絶縁油に近い粘度を持つようになり、この部分の絶縁油が温度変化に起因して油浸絶縁体から脱油することはない。
【0014】
以下、具体例を示す。
(実施例)
25℃での動粘度が20,000センチストークスの高粘度絶縁油を120℃に加熱して密閉容器内においてテープ状の絶縁紙に真空含浸して油浸絶縁紙を作成した。
この油浸絶縁紙をMINDケーブルの導体接続部に対して、25℃での動粘度が4.0センチストークスの低粘度絶縁油を常温でかけ油しながら巻回して油浸絶縁体を形成してケーブル接続部とした。
【0015】
この接続部の直流絶縁破壊電圧を測定したところ、MINDケーブルの油浸絶縁体のそれに比較して90〜95%の値を示した。
また、接続部の油浸絶縁体を切り出し、その内部を観察したところ、ボイド等の欠陥はほとんど存在しなかった。
さらに、接続部を常温で1ヶ月放置したのち、温度25℃から80℃に至るヒートサイクルを10回与え、この後の直流絶縁破壊電圧を測定したところ、初期値の98%を示し、これにより温度変化による脱油もほとんど生じていないことが確認された。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の接続方法は、MINDケーブルの導体接続部に絶縁油をかけ油しながら油浸絶縁紙を巻回する際に、低粘度絶縁油をかけ油として用いるものであるので、気泡等の巻き込みがなく、作業が容易で、引火等の危険性がなく、良好な電気絶縁特性を有する接続部を得ることができる。
Claims (4)
- 導体上に絶縁紙を巻回し、これに高粘度絶縁油を含浸してなる油浸絶縁体を有する高粘度油浸ケーブルを接続する際、
導体接続部に、高粘度絶縁油を含浸した油浸絶縁紙を、高粘度絶縁油よりも低粘度の絶縁油を常温でかけ油しながら、巻回することを特徴とする高粘度油浸ケーブルの接続方法。 - 低粘度の絶縁油は、25℃における動粘度が30センチストークス以下のものであることを特徴とする請求項1記載の接続方法。
- 前記油浸絶縁紙の巻回の後、前記接続部を真空引きすることを特徴とする請求項1または2記載の接続方法。
- 請求項1から3のいずれか一項記載の接続方法によって接続された高粘度油浸ケーブルの接続部。
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