JP3874861B2 - 直流ofケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ポリプロピレンラミネート紙(以下、PPラミネート紙と略記する。)を絶縁紙として用いた直流OFケーブルに関し、直流絶縁破壊強度およびインパルス絶縁破壊強度を向上し、同時にPPラミネート紙の絶縁油による膨潤性を低下させたものである。
【0002】
【従来の技術】
超高圧直流送電ケーブルとして従来よりOFケーブルが用いられている。直流ケーブルは長距離送電に有利であることから、直流OFケーブルは海底長尺ケーブル等に用いられることが多い。このため、このような直流OFケーブルに用いられる絶縁油には、長距離にわたって所定の油圧を維持するため、低粘度のものが用いられ、その代表的なものにはJIS−C−2320 2種3号油として規定されている直鎖状アルキルベンゼン油などがある。
【0003】
一方、絶縁油としては長らくクラフト紙が用いられてきたが、近年プラスチックフィルムの両面にクラフト紙を貼り合わせたプラスチックラミネート紙が絶縁破壊特性に優れることから直流OFケーブル用の絶縁紙として使用することが検討されている。
このプラスチックラミネート紙としては、ポリプロピレンフィルムを用いたPPラミネート紙がその性能、使用実績から最も広く用いられている。
【0004】
ところで、絶縁紙としてPPラミネート紙を用い、絶縁油としてアルキルベンゼン油を用いた直流OFケーブルは、絶縁紙としてクラフト紙を用い、絶縁油としてアルキルベンゼン油を用いた従前の直流OFケーブルよりも直流絶縁破壊強度、インパルス絶縁破壊強度が優れるものの、更にこれらの特性を向上させて絶縁層の厚みを薄くしてケーブルを細径化することが望まれている。
【0005】
また、PPラミネート紙を構成するポリプロピレンは炭化水素系のポリマーであるため、PPラミネート紙にあっては同様の炭化水素系の絶縁油であるアルキルベンゼン油に対して油浸膨潤の問題があり、この膨潤が顕著な場合にはケーブル曲げ試験時に絶縁層の紙シワ、座屈が生じたり、絶縁層の厚み方向の油流抵抗が増大したりするなどの問題が生じ、PPラミネート紙のポリプロピレンフィルムの油浸膨潤の低減が望まれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
よって、この発明における課題は、PPラミネート紙を巻回し、これにアルキルベンゼン油を含浸した直流OFケーブルの直流絶縁破壊強度、インパルス絶縁破壊強度を向上すると同時にPPラミネート紙の油膨潤性を改善することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題は、絶縁油として、アルキルベンゼン油にエステル系絶縁油を混合した比誘電率2.5〜3.5、絶縁抵抗1×1013〜1×1015Ω・cmの絶縁油を用いることにより解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の直流OFケーブルは、絶縁紙としてPPラミネート紙を導体上に巻回し、これにアルキルベンゼン油とエステル系絶縁油とを混合した比誘電率2.5〜3.5で絶縁抵抗1×1013〜1×1015Ω・cmである絶縁油を含浸したものである。
ここで用いられるPPラミネート紙としては、特に限定されず、PPフィルムの両面にクラフト紙が貼り合わせられたもので、その厚みが50〜200μmであり、全体の厚みに対するプロピレンフィルムの厚みの割合(PP分率と言う。)が30〜60%の範囲にあるものが用いられる。
【0009】
また、ここで用いられる絶縁油としては、アルキルベンゼン油とエステル系絶縁油との混合油であって、その比誘電率が2.5〜3.5の範囲にあり、かつ絶縁抵抗が1×1013〜1×1015Ω・cmの範囲にあるものが用いられる。
本発明での比誘電率および絶縁抵抗は、JIS−C−2101に規定される方法で求められるものを言う。
【0010】
上記アルキルベンゼン油としては、JIS−C−2320 2種3号油として規定されている低粘度、低流動点のものが用いられ、直鎖状アルキルベンゼン油が用いられる。
さらに、上記エステル系絶縁油としては、比較的粘度の低いものが好ましく、例えばベンジルネオカプレート(比誘電率3.42)、トリクレジルホスフェート(比誘電率6.4)などが挙げられる。
【0011】
アルキルベンゼン油とエステル系絶縁油との混合比は、特に限定されず、混合油の比誘電率および絶縁抵抗が上述の範囲となるようにそれらの量比を定めればよい。
例えば、エステル系絶縁油としてトリクレジルホスフェートを用いた場合には、体積比で10〜50%程度、ベンジルネオカプレートを用いた場合には30〜60%程度である。
【0012】
アルキルベンゼン油とエステル系絶縁油との混合油の比誘電率が2.5未満であればインパルス絶縁破壊強度向上効果が得られず、3.5を越えると直流絶縁破壊強度が低下して好ましくない。
また、その絶縁抵抗が1×1013Ω・cm未満では絶縁抵抗の低下に伴う直流熱破壊因子に起因する特性の低下が生じて不都合となり、1×1015Ω・cmを越えると直流絶縁破壊強度改善効果が得られなくなる。
【0013】
このような直流OFケーブルにあっては、そのインパルス絶縁破壊強度および直流絶縁破壊強度が向上し、かつPPラミネート紙の油膨潤性が改善される。
直流OFケーブルの絶縁破壊は、弱点である油隙(オイルギャップ)が起点となることが知られており、インパルス電圧が印加された場合、電圧は容量分担となるので比誘電率に逆比例した分担電圧となる。一般のアルキルベンゼン油ではその比誘電率が約2.2であり、PPラミネート紙絶縁層ではPP分率30〜60%で比誘電率が2.5〜3.0であることから、油隙に大きな電圧分担となる。このため、混合絶縁油の比誘電率を2.5〜3.5とすることで、油隙の分担電圧を低下させることができ、インパルス絶縁破壊強度を高めることができる。
【0014】
また、直流電圧が印加された場合、電圧は抵抗分担となる。絶縁油の絶縁抵抗が高くなると油隙の分担電圧が大きくなり、直流絶縁破壊強度が低下する。一般のアルキルベンゼン油の絶縁抵抗が1×1016Ω・cm程度であるので、この絶縁抵抗を1×1013〜1×1015Ω・cmとすることで油隙での直流絶縁破壊強度を高めることができる。
さらに、エステル系絶縁油は、元来ポリプロピレンに対する相溶性が小さいことから、混合油によるPPラミネート紙の油浸膨潤は小さいものとなる。
【0015】
本発明の直流OFケーブルでは、導体側および遮蔽層側にクラフト紙を数回ないし数10回巻回し、これに上記混合油を含浸した副絶縁層を設けることもでき、これによってインパルス絶縁破壊強度を向上でき、鉛工対策もできて好ましい。
【0016】
以下、具体例を示して作用、効果を明確にする。
(実施例)
径20mmの導体上にPP分率55%、厚み125μmのPPラミネート紙を8層巻回して約1mmの絶縁層を形成し、これに種々の絶縁油を含浸してモデルケーブルを作成した。
絶縁油として、直鎖状アルキルベンゼン油(JIS−C−2320 2種3号油)およびこれにエステル系絶縁油としてトリクレジルホスフェート(TCP)またはベンジルネオカプレート(BNC)を種々の割合で混合したものを使用した。
【0017】
このモデルケーブルのインパルス絶縁破壊強度および直流絶縁破壊強度を温度80℃、油圧1kg/cm2 の条件下で測定した。油浸膨潤試験はPPラミネート紙を積層し、油圧1kg/cm2 、温度100℃の絶縁油中での平衡厚み増加率により評価した。
結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0003874861
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の直流OFケーブルにあっては、インパルス絶縁破壊強度、直流絶縁破壊強度が向上し、絶縁層の厚みを薄くでき、細径化が可能となる。また、PPラミネート紙の絶縁油による油浸膨潤を減少することもできる。

Claims (1)

  1. ポリプロピレンラミネート紙を巻回し、これにアルキルベンゼン油とエステル系絶縁油とを混合した比誘電率2.5〜3.5、絶縁抵抗1×1013〜1×1015Ω・cmの絶縁油を含浸した絶縁層を有する直流OFケーブル。
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