JP3971940B2 - ガスエンジン用スパークプラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はガスエンジン用スパークプラグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の点火に使用されるスパークプラグは、基本的には火花放電ギャップにおける飛火が不能となった時点をもって寿命と判断される。具体的には、スパークプラグは、使用継続により電極が消耗して火花放電ギャップの間隔が広がり、それに伴って放電に必要な閾電圧も徐々に上昇する。最終的にその閾電圧が、スパークプラグに電圧印加する電源の能力を超えて高くなると飛火が不能となり、燃焼室内の混合気に着火することができなくなるので、内燃機関の運転に支障を生ずるようになる。従って、スパークプラグの長寿命化を図るには、電極消耗を抑制することが重要である。その一つの手法として、電極の火花放電ギャップに臨む部分を、PtやIr等の貴金属あるいはその合金からなる貴金属耐消耗部とすることが行われている。
【0003】
近年、コージェネレーションシステムやヒートポンプの普及に伴い、ガスエンジン用スパークプラグの需要が伸びている。これらの用途は、スパークプラグの使用条件がとりわけ厳しい点で際立っている。例えば、コージェネレーションシステムは工業用の電力あるいは熱源として活用されることが多く、システム停止が前提となるスパークプラグの交換は、可及的に行いたくないという要望がある。そのため、エンジンは基本的に24時間稼動となり、1000〜2000時間もの間ノンストップで運転継続されるのが普通である。また、工業用の大型システムにおいては、排気量が大きいために、エンジン回転数は1000〜2500rpm程度と低く抑えられる。この条件にて高出力を実現するためには、過給による充填量の増加が必須となる。過給を行うと点火時期における筒内圧力が上昇するため、絶縁破壊強度がもともと高い気体燃料の放電条件はますます厳しくなり、放電電圧が更に上昇する。その結果、限界ギャップはより厳しくなる。他方、ヒートポンプは一般空調用等のコンプレッサー動力源として使用されることが多く、運転条件自体はコージェネレーションシステムほどではない。しかし、メンテナンスフリー化の傾向はより顕著であり、連続運転の継続が10000〜20000時間に達することも珍しくない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ガスエンジン用スパークプラグは、上記のような過酷な条件での長時間連続使用に耐える電極寿命が求められるにもかかわらず、寿命改善の具体的対策を講ずることが、ガソリンエンジンよりもはるかに難しい。つまり、ガスエンジンは、液化石油ガス(LPG)や圧縮天然ガス(CNG)など、常圧で室温以下の沸点を有する気体燃料を使用する。気体燃料は、ガソリン混合気等と比較して絶縁破壊電圧が高い。それゆえ、ガスエンジン用スパークプラグにおいては、放電電圧が上昇するため、火花放電ギャップの間隔がかなり小さく設定される。当然、正常な飛火に支障が生ずるようになる限界ギャップ間隔も小さく、寿命に至る電極消耗代(つまり、ギャップ拡大代)も制限される。また、ガソリンエンジンでは、ガソリンの気化潜熱による冷却効果のため、吸入される混合気の温度は比較的低く、温度も上昇しにくい。しかし、気体燃料を使用するガスエンジンではこのような冷却効果は生じないので、電極温度が上昇しやすく消耗も進行しやすい。つまり、ガスエンジン用スパークプラグは、電極消耗が進行しやすい上に電極消耗代も小さいので、前述のような貴金属耐消耗部を単に採用するだけでは、要求される寿命レベルを実現することは事実上不可能に近い。
【0005】
そこでスパークプラグの中心電極径を大きくし、火花放電ギャップを形成する電極対向面積を増加させることにより、寿命向上を図ることが考えられる。しかし、ガスエンジン用スパークプラグの場合、火花放電ギャップの間隔が前述のように狭く設定されるため、火花放電ギャップの電極対向面積を過度に大きく設定しすぎると、点火性に悪影響が生じ、却って性能を低下させることにつながる。従って、中心電極径を増大させて寿命向上を図る方法には限界がある。
【0006】
本発明の課題は、点火性に悪影響を生ずることなく寿命向上を有効に図ることができ、ひいては、コージェネレーションシステムやヒートポンプなどにおける過酷な寿命要求にも十分適合できるガスエンジン用スパークプラグを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明のガスエンジン用スパークプラグの第一は、
1つの中心電極と、先端部が中心電極の先端部に対向する形で配置され、中心電極との間に火花放電ギャップを形成する1又は複数の接地電極とを備え、それら中心電極と接地電極との、火花放電ギャップを挟んで対向する部分が少なくとも、貴金属を主成分とする貴金属耐消耗部とされ、かつ、該火花放電ギャップの間隔Bが0.2mm以上0.7mm以下に調整され、
火花放電ギャップは、中心電極の先端面に接地電極が対向して形成されるものを第一種火花放電ギャップとし、中心電極の周側面に接地電極が対向して形成されるものを第二種火花放電ギャップとして、1つの第一種火花放電ギャップと1以上の第二種火花放電ギャップとを含む複数個、もしくは2以上の第二種火花放電ギャップを含む複数個が形成されてなり、さらに、
それら複数個の火花放電ギャップのそれぞれについて、中心電極と接地電極との、前記間隔Bを満たす火花放電ギャップを挟んだ電極対向面積をA(単位:mm2)として、該電極対向面積Aと火花放電ギャップ間隔B(単位:mm)との間に、
B≧0.1exp(A/4)
の関係が成り立っていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のガスエンジン用スパークプラグの第二は、
1つの中心電極と、先端部が中心電極の先端部に対向する形で配置され、中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極とを備え、それら中心電極と接地電極との、火花放電ギャップを挟んで対向する部分が少なくとも、貴金属を主成分とする貴金属耐消耗部とされ、かつ、該火花放電ギャップの間隔Bが0.2mm以上0.7mm以下に調整され、
火花放電ギャップは、中心電極の周側面と接地電極に形成された穴又は切欠きの内周面とが対向するものとして形成されてなり、さらに、
火花放電ギャップは、中心電極と接地電極との、間隔Bを満たす火花放電ギャップを挟んだ中心電極の電極対向面積をAとして、該電極対向面積Aと火花放電ギャップの間隔Bとの間に、
B≧0.1exp
の関係が成り立っていることを特徴とする。
【0009】
このような構成を有する本発明のガスエンジン用スパークプラグは、点火性を損ねることなく、その寿命を大幅に向上でき、ひいては、コージェネレーションシステムやヒートポンプなどにおける過酷な寿命要求も十分充足することができるようになる。
【0010】
以下、さらに詳細に説明する。まず、本発明のガスエンジン用スパークプラグにおいては、絶縁破壊電圧の高いLPGやCNGなどの気体燃料に対する着火性を高めるため、火花放電ギャップ間隔Bを、0.2mm以上0.7mm以下の小さい値に設定する。これは、スパークプラグをガスエンジン用として用いるための一つの大きな前提でもある。火花放電ギャップ間隔Bが0.7mmを超えると、電極消耗によりギャップが拡大するとすぐ飛火に支障が生ずるようになり、寿命確保ができなくなる。他方、火花放電ギャップ間隔Bを0.2mm以下に設定すると、製造時に許容されるギャップ間隔公差が極端に狭くなり、歩留まり低下を招くことにつながる。
【0011】
また、本発明のガスエンジン用スパークプラグにおいては、過酷な条件下で連続使用を行っても火花放電ギャップの拡大が急速に進行しないよう、中心電極と接地電極との、火花放電ギャップを挟んで対向する部分を少なくとも、貴金属を主成分とする貴金属耐消耗部にて構成する。貴金属は、一般にはPt族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)にAu及びAgを加えた元素群の総称であるが、本発明においては、特に、Pt及びIrが耐消耗性に優れているので好適に採用できる。なお、本明細書において「主成分とする」とは、着目する成分が質量含有率において最も高くなっていることを意味する。具体的には、Pt−Ni合金(例えばPtを主成分とし、Niを2〜40質量%含有させた合金)、Pt−Ir合金(例えばPt又はIrを主成分とし、Irを2〜98質量%含有させた合金)、Pt−Ir−Ni合金(例えば、Ptを主成分とし、Irを2〜40質量%、Niを2〜40質量%含有させた合金)、Ir−Ni合金(Ir又はNiを主成分とし、Niを2〜70質量%含有させた合金)等を例示できる。
【0012】
次に、本発明のスパークプラグの第一においては、火花放電ギャップを2つ以上形成する。火花放電ギャップの数を増やすことで、火花放電ギャップの電極対向面積の合計が増加する。また、第二においては、中心電極の周側面に対し、接地電極に形成された穴又は切欠きの内周面を対向させて火花放電ギャップが形成されるので、周方向の電極対向長さが大きくなり、火花放電ギャップの電極対向面積が増加する。いずれも、結果としてギャップ拡大率を抑制することができる。また、火花放電ギャップの数が複数になれば、電極対向面積の合計が増加しても、1つの火花放電ギャップ当たりの電極対向面積は過度に増加しないから、個々の火花放電ギャップの点火性が損なわれることもない。
【0013】
本発明のスパークプラグの第一においては、火花放電ギャップは、中心電極の先端面に接地電極を対向させた第一種火花放電ギャップと、同じく周側面に接地電極を対向させた第二種火花放電ギャップとの2種類が形成可能である。中心電極の先端面には1個の接地電極のみ対向配置できるので、第一種火花放電ギャップの形成可能個数は高々1個である。他方、中心電極の周側面を利用する第二種火花放電ギャップは、中心電極を取り囲むように複数個の接地電極を配置でき、それぞれ第二種火花放電ギャップを形成することができる。従って、火花放電ギャップを複数個作るための具体的な組合せとしては、1つの第一種火花放電ギャップと1以上の第二種火花放電ギャップとの組合せ、もしくは(第一種火花放電ギャップを含まない)2以上の第二種火花放電ギャップの組合せのいずれかを採用できる。なお、1つの接地電極と中心電極との間に、第一種火花放電ギャップと第二種火花放電ギャップとの双方が形成されることもありうる。
【0014】
また、本発明のガスエンジン用スパークプラグは、中心電極と接地電極との火花放電ギャップを挟んだ電極対向面積A(単位:mm2)と、火花放電ギャップ間隔B(単位:mm)との間に、
B≧0.1exp(A/4) ‥‥‥ ▲1▼
の関係が成り立つことを必須要件とする。ここでいう電極対向面積Aとは、個々の火花放電ギャップについての対向面積であって、合計面積を意味するものではない。先に説明した通り、各火花放電ギャップは電極対向面積Aが大きくなるほど、正常に飛火が生じても点火性は悪くなる傾向にある。そこで、本発明者ら実験により詳細に検討したところ、電極対向面積Aの値と、点火性に難が生じ始める閾火花放電ギャップ間隔B’とは、
B’=0.1exp(A/4) ‥‥‥ ▲2▼
の実験式により結び付けられることがわかった。
【0015】
図21は、その実験結果を示すグラフである。実験に使用したスパークプラグは、主体金具の取付ねじ部の呼びがM14、ねじリーチが19mmであり、中心電極の先端面に接地電極の側面を平行に対向させて火花放電ギャップを形成したタイプのものである。接地電極と中心電極の双方の火花放電ギャップに対向する位置に、Pt製の貴金属チップを溶接してあり、絶縁体の主体金具からの突き出し長は1.5mm、中心電極の絶縁体からの突き出し長(貴金属チップ長さを含む)は2mmである。対向面積Aを、中心電極の先端面に溶接した円柱状の貴金属チップの外径を変化させ、さらに火花放電ギャップの値も変化させて、種々のスパークプラグの試験品を作製した。
【0016】
これらの試験品の着火性を、失火法により評価した。具体的には、スパークプラグを直列3気筒(総排気量1642cc)のガスエンジンの、第一の気筒に取り付け、回転数900rpm:1/2負荷の条件で運転を開始する。運転中、空燃比を徐々に希薄側に変化させ、失火率が1%となったときの残存酸素濃度を調べ、その残存酸素濃度を希薄化限界残存酸素濃度として求める。この希薄化限界残存酸素濃度が9%となるギャップ間隔Bを、前記した点火性に難が生じ始める閾火花放電ギャップ間隔みなす。図21は、このようにして求めた各対向面積Aについての閾火花放電ギャップ間隔をプロットしたものである。プロット点には、前記した▲2▼式が精度よくフィッティングしており、該▲2▼式の妥当性が裏付けられている。
【0017】
従って、実際に採用する火花放電ギャップの間隔Bが▲1▼の不等式を充足することにより、個々の火花放電ギャップは、それぞれ電極対向面積Aの値によらず良好な点火性を確保することができる。他方、飛火そのものを支障なく生じさせる観点から、前述の通り、
0.7≧B≧0.2 (単位:mm) ‥‥‥ ▲3▼
となるように設定する必要がある。従って、本発明のガスエンジン用スパークプラグにおいて、採用可能な火花放電ギャップの間隔Bの値は、図21の斜線の領域のようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施例に係るスパークプラグを示すものである。このスパークプラグ100は、例えばコージェネレーションシステムやヒートポンプ用のガスエンジンに使用され、筒状の主体金具1、先端部が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端を突出させる形で絶縁体2の内側に配置された中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合され、他端側が中心電極3の先端部と対向するように配置されて、該中心電極3と間に火花放電ギャップを形成する接地電極4,5等を備えている。なお、中心電極3は、絶縁体2の軸線O方向に形成された貫通孔6の前端側(軸線O方向において火花放電ギャップの形成される側を前方側とする)に配置されている。また、貫通孔6の後端側には端子金具23が配置され、導電性ガラスシール層24,26及び電波吸収用の抵抗体25を介して中心電極3に電気的に接続されている。
【0019】
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には軸線O方向に沿って、前述のように中心電極3が嵌め込まれた孔部6を有している。また、主体金具1は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成する。また、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。
【0020】
図2は、図1のスパークプラグ100の要部を拡大して示すものである。接地電極4,5の合計数は2つであり、それぞれ先端部が中心電極3の先端部に対向する形で配置されて火花放電ギャップgt,gpを形成している。そして、中心電極3と接地電極4,5との、火花放電ギャップgt,gpを挟んで対向する部分が少なくとも、貴金属を主成分とする貴金属耐消耗部13,14,15とされている。貴金属耐消耗部13,14,15は、例えばPt,Irあるいはそれらのいずれかを主成分とする合金よりなる。また、各火花放電ギャップgt,gpの間隔Bは、いずれも0.2mm以上0.7mm以下に調整される。
【0021】
火花放電ギャップgt,gpは、中心電極3の先端面13tに接地電極4が対向して形成される第一種火花放電ギャップgtと、中心電極3の周側面13pに接地電極5が対向して形成される第二種火花放電ギャップgpとの2種類がある。この実施形態のスパークプラグ100においては、第一種火花放電ギャップgtと第二種火花放電ギャップgpとがそれぞれ1つずつ形成されている。そして、それら火花放電ギャップgt,gpのそれぞれについて、中心電極3と接地電極4,5との、火花放電ギャップgt,gpを挟んだ電極対向面積をA(単位:mm2)とし、該電極対向面積Aと火花放電ギャップgt,gpの間隔B(単位:mm)との間に、
B≧0.1exp(A/4) (前記▲1▼式)
の関係が成り立っている。
【0022】
第二種火花放電ギャップgpについては、電極対向面積Aを以下のように定義する。すなわち、図2の中心電極3の中心軸線Oにz軸を定め、このz軸を通るように直交動径軸Rを定めた円柱座標系を考え、R方向において中心電極3の周側面位置から貴金属チップ15の先端面15pまでの距離ε(mm)を測定したとき、0.2≦ε≦0.7を満たす中心電極3の、周側面領域の面積を電極対向面積Aとする。
【0023】
次に、第一種火花放電ギャップgtについては、電極対向面積Aを以下のように定義する。すなわち、図4に示すように、中心電極3の軸線Oと平行に入射方向PDを定める。そして、図4左に示すように、中心電極3のみを取り出したと考えて、接地電極4の位置する側に光源を置き、入射方向PDに沿って平行光線PL1を投射する。そして、貴金属耐消耗部13の先端面13tにおいて、この平行光線PL1を受光しうる領域をS1とする。
【0024】
また、図4右に示すように、接地電極4のみを取り出したと考えて、中心電極3の位置する側に光源を置き、入射方向PDに沿って平行光線PL2を投射する。そして、接地電極4の側面に形成された貴金属耐消耗部14の先端面14tにおいて、この平行光線PL1を受光しうる領域をS2とする。そして、図5に示すように、これら2つの領域S1及びS2を入射方向PDにおいて透視したとき、互いに重なって見える領域を対向領域として定め、その面積をもって電極対向面積Aとする。なお、互いに重なって見える領域の面積が、領域S1と領域S2とで異なる場合は、その小さいほうの面積をもって電極対向面積Aとする。
【0025】
スパークプラグ100は、上記説明から明らかな通り、「課題を解決するための手段」の欄にて説明した本発明のガスエンジン用スパークプラグの構成を有してなる。すなわち、貴金属耐消耗部13,14,15を採用し、かつ火花放電ギャップgt,gpを複数個に分散形成することにより、合計の電極対向面積を増加させたから、その寿命を大幅に向上できる。また、増加するのは電極対向面積の合計であって、1つ1つの火花放電ギャップgt,gpの電極対向面積が過度に大きくなることはない。そして、前記した▲1▼の関係式を充足するようにギャップ間隔Bを定めたから点火性も良好に確保できる。かくして、スパークプラグ100は、コージェネレーションシステムやヒートポンプなどの過酷な使用条件においても、十分満足できる性能及び耐久性を実現できる。
【0026】
本発明のガスエンジン用スパークプラグにおいては、複数個の火花放電ギャップgt,gpのそれぞれについて、電極対向面積Aが2.7mm2以上7mm2以下に調整されていることが望ましい。電極対向面積Aをこの範囲に収めることにより、スパークプラグの耐久性を一層高めることができる。以下にその理由を説明する。
【0027】
図21において、電極対向面積Aをある値に定めたとき、燃料への点火を支障なく行うことができるギャップ間隔Bの範囲は、▲2▼式の曲線で定められる閾値B’を下限値とし、▲3▼式の上限値0.7mmまでの値が可能である。例えば、初期ギャップ間隔B0を、着火性確保のために多少の余裕を見込んで、
B0=B’+α ‥‥‥ ▲4▼
に設定すれば、ギャップ間隔Bが上限値0.7mmに到達するまでの拡大代は、
ΔB=0.7−(B’+α) ‥‥‥ ▲5▼
により表すことができる。図21に示すように、電極対向面積Aが増加すると、▲2▼式に従いB’は単調に増加するから、▲5▼式の拡大代ΔBは、電極対向面積Aの増加に伴い単調に減少することとなる。
【0028】
次に、一回の飛火で電極(貴金属耐消耗部)が消耗する体積(以下、飛火単位消耗体積という)が一定であれば、電極対向面積Aが大きいほど、ギャップ間隔Bの拡大率は小さくなる、しかし、本発明者らが検討したところ、この飛火消耗体積は、電極対向面積Aの値に依存して変化することがわかった。このことを、以下の実験により確かめた。すなわち、図21の実験に用いたのと同タイプであって、電極対向面積Aを種々の値に設定したスパークプラグを用い、放電電圧15kV、1放電当たりのエネルギーが60mJ、周波数75Hzにて1000時間放電を継続したときの総電極消耗体積を求めた。そして、この総電極消耗体積を総放電回数にて除することにより、飛火単位消耗体積を算出した。図22は、この算出された飛火単位消耗体積を、電極対向面積Aの値に対してプロットしたものである。このグラフによると、電極対向面積Aがある値以下に小さくなると、飛火単位消耗体積が急速に増加していることがわかる。これは、電極対向面積Aが小さくなると電極先端の熱引きが損なわれ、温度上昇しやすくなることが原因している。
【0029】
図22の飛火単位消耗体積VEと電極対向面積Aとの関係に適当な実験式Fを回帰し、
VE=F(A) ‥‥‥ ▲6▼
にて表す。他方、▲5▼式において計算の便宜のためα=0とすれば、ギャップの拡大代ΔBは、▲2▼式も用いて、
ΔB=0.7−B’=0.7−0.1exp(A/4) ‥‥‥ ▲7▼
により表すことができる。そして、ギャップの拡大代ΔBに電極対向面積Aを乗ずれば、電極の総消耗代体積GVを算出することができる。すなわち、
GV=A・ΔB=A・{0.7−0.1exp(A/4)} ‥‥‥ ▲8▼
この総消耗代体積GVを飛火単位消耗体積VEにて除した値は、火花放電ギャップ間隔が上限に到達するまでに可能な総飛火回数Q、つまりスパークプラグの寿命値を表すことになる。▲6▼及び▲8▼から、
Q=GV/VE
=A・{0.7−0.1exp(A/4)}/F(A) ‥‥‥ ▲9▼
【0030】
図23は、上記▲9▼式に種々のAの値を代入して寿命値Qを算出し、Aの値にしてプロットしたものである。ただし、グラフの縦軸は、A=1.12mm2のQ値を1として、相対寿命値Q’により表してある。この結果を見ると、電極対向面積Aが2.7mm2以上7mm2以下の範囲において相対寿命値Q’が特に高くなり、耐久性を向上できることがわかる。
【0031】
以下、スパークプラグ100の細部についてさらに詳細に説明する。図2に示すように、スパークプラグ100においては、中心電極3の、先端面13tと該先端面13tに連なる周側面先端部13pとを含む部分が、一体の貴金属耐消耗部13として形成されている。また、接地電極4,5として、側面14tを貴金属耐消耗部13の先端面13tと対向させることにより第一種火花放電ギャップgtを形成する第一種接地電極4と、該第一種接地電極4とは別体であり、先端面15pを貴金属耐消耗部13の周側面と対向させることにより第二種火花放電ギャップgpを形成する第二種接地電極5とが設けられている。このように、第一種火花放電ギャップgtと第二種火花放電ギャップgpとを、個別の接地電極4,5を用いて形成することにより、個々の火花放電ギャップgt,gpの形成位置を自由に設定・調整できるので、設計上の自由度が増す利点がある。
【0032】
また、中心電極3の軸線O方向において、貴金属耐消耗部13の先端面13tが位置する側を前方側としたとき、該貴金属耐消耗部13に周側面13pに対向する第二種接地電極5の先端面15pの、軸線O方向における前端縁位置X1が、貴金属耐消耗部13の先端面位置Y1よりも後方側に位置してなる。このような位置関係にて第二種接地電極5を配置すると、貴金属耐消耗部13は、第一種火花放電ギャップgtでの飛火に伴う先端面13t側からの消耗代と、第二種火花放電ギャップgpでの飛火に伴う周側面13pからの消耗代とが重ならない。その結果、周側面13pが消耗しても、先端面13tの面積が縮小しにくくなるので、図22の関係により第一種火花放電ギャップgt側でのギャップ拡大が急速化する心配がない。すなわち、スパークプラグの更なる長寿命化を図ることができる。
【0033】
中心電極3は、Ni又はFeのいずれかを主成分とした金属(例えば、Inconel 600等のNi基耐熱合金:Inconelは英国Inco社の商標名)よりなる軸状の電極本体3mを有する(ただし、その内部には、熱引き促進のためのCu系金属かならる芯材3cが組み込まれている)。そして、その電極本体3mの先端面に貴金属部材を重ね合わせ、その重ね合わせ面の周方向に沿って環状の溶接部Wを形成することにより貴金属耐消耗部13が形成されている。環状の溶接部Wは、全周レーザー溶接により簡単かつ確実に形成できる。
【0034】
また、第二種接地電極5の貴金属耐消耗部13の先端面13tは、軸線O方向における後端縁位置X2が、溶接部Wの前端縁位置Y2よりも前方側に位置している。X2がY2よりも後方側にあると、第二種火花放電ギャップgpの一部が溶接部Wと重なり、溶接部Wにて飛火することになる。溶接部Wは、電極母材の金属成分が合金化することにより低融点化しているため、この位置で飛火すると消耗が急速に進んで溶接部Wがえぐり取られ、貴金属耐消耗部13が剥離したりする不具合につながる。そこで、X2をY2よりも前方側に位置させることによりこのような不具合を解消できる。
【0035】
なお、接地電極4及び5も,Ni又はFeのいずれかを主成分とした金属よりなる軸状の電極本体4m,5mをそれぞれ有する。電極本体4m,5mは、基端側が主体金具1の端面に溶接され、先端側が中心電極3に向けて側方に曲げ返されている。このうち、第一種接地電極4は、曲げ返された電極本体4mの先端部側面が中心電極3の先端面13tと平行に対向している。その対向位置には、貴金属部材が抵抗溶接等により接合されて貴金属耐消耗部14が形成され、第一種火花放電ギャップgtが形成されている。また、第二種接地電極5は、曲げ返された電極本体5mの先端面に貴金属部材が抵抗溶接等により接合され、貴金属耐消耗部15が形成されている。そして、該貴金属耐消耗部15の先端面15pが貴金属耐消耗部13の周側面13pと対向して、第二種火花放電ギャップgpが形成されている。
【0036】
以下、本発明のガスエンジン用スパークプラグの種々の変形例について説明する。図6に示すスパークプラグ101は、第二種接地電極5が、中心電極3の周囲に2個(つまり、複数個)配置されている。第二種接地電極5を複数個配置することにより、第二種火花放電ギャップgpの数を増やすことができ、電極対向面積Aの合計が増大してより長寿命のスパークプラグを実現できる。第二種接地電極5の数を除き、他は図2のスパークプラグ100と同様に構成されている。また、図10は、第二種接地電極5を3個配置した例である。
【0037】
図7に示すように、中心電極3側の貴金属耐消耗部13は円柱状に形成され、第二種接地電極5の貴金属耐消耗部15の先端面15pの形状は、貴金属耐消耗部13の周側面13pの形状に対応した部分円筒面とされている。このように構成すると、貴金属耐消耗部13の周側面13pの周方向において、第二種火花放電ギャップ15pの間隔が一様となり、電極対向面の消耗を均一化することができる。また、貴金属耐消耗部15の先端面15pを部分円筒面とすることで電極対向面積が増大し、スパークプラグの寿命向上にも寄与する。この構成は、第二種接地電極5を1つのみ有する図2のスパークプラグ100にも当然適用できる。
【0038】
他方、図8に示すように、貴金属耐消耗部15の先端面15pを平面状に形成することもできる。この場合、貴金属耐消耗部13の周側面13pは、少なくとも第二種火花放電ギャップ15pの対向面13fを平面状に形成するようにする。この態様は、貴金属耐消耗部15を形成するための貴金属部材が単純な板状形態となり、製造が容易である。なお、貴金属耐消耗部13は、図9に示すように、円柱状の貴金属部材13’の周側面を、軸線と交差する向きに圧縮成型することにより、平面状の対向面13fを形成すると製造が容易である。この場合、貴金属部材13’の、電極母材3m(図6)への溶接側端部には、円筒状の周側面13bを一部残留させておくと、全周レーザー溶接を行う際に、レーザービームの周側面13bへの合焦位置を一定にでき、溶接ムラ等を生じにくい利点がある。
【0039】
次に、図11A及び図11Bに示すスパークプラグ102は、第一種接地電極を省略し、第二種接地電極5(及び第二種火花放電ギャップgp)のみを複数個設けた例である。この実施形態においては、中心電極3側の貴金属耐消耗部13が四角柱状に形成され、周側面をなす4つの平面のそれぞれに、第二種接地電極5の先端に設けられた貴金属耐消耗部15の平面状の先端面15pが対向している。ただし、図11Bに一点鎖線にて示すように、図2と同様の第一種接地電極4を追加して、合計五極のスパークプラグとして構成することも可能である。
【0040】
図12のスパークプラグ103は、本発明のスパークプラグの第二の実施形態を示すものである。接地電極125は横長の板状に形成され、両端が主体金具1に溶接される一方、その長手方向中央に板厚方向の貫通孔26が形成されている。中心電極3側の貴金属発火部13の先端部が軸線方向に該貫通孔26内に挿入され、貴金属発火部13の周側面13pと、貫通孔26の内周面との間に、1個の火花放電ギャップgpが連続環状形態に形成されている。この場合の電極対向面積Aも、図2の第二種火花放電ギャップgpの対向面積と全く同様に定義する。接地電極125は、全体を貴金属のムク材として構成してある。従って、貫通孔26の内周面を含む部分が貴金属耐消耗部として機能することは明らかである。なお、図中一点鎖線で示すように、図2のスパークプラグ100と同様の第一種接地電極4を追加することもできる。また、図13に示すように、接地電極125に貫通孔ではなく、板幅方向の一方に開放する切欠26’を形成してもよい。
【0041】
図14のスパークプラグ104は、図2のスパークプラグ100と同様、第一種接地電極4と第二種接地電極5を有している。ただし、電極母材4m,5mをそれぞれ主体金具1の端面から軸線O方向に立設配置されている。そして、貴金属耐消耗部14及び15は、いずれも棒状の貴金属部材の一端を電極母材4m,5mの先端に溶接することにより接合され、主体金具1の中心軸線Oに向けて半径方向内向きに直線状に伸びている。そして、第一種接地電極4の貴金属耐消耗部14の先端部側面は、中心電極3側の貴金属耐消耗部13の先端面13tと対向して第一種火花放電ギャップgtを形成している。また、第二種接地電極5の貴金属耐消耗部15の先端面は、貴金属耐消耗部13の周側面13pと対向して第二種火花放電ギャップgpを形成している。この構造のスパークプラグは、以下の理由により製造が容易である利点がある。
・電極母材4m,5mの曲げ加工が不要である。
・貴金属耐消耗部14及び15の溶接端が火花放電ギャップgt,gpから離れているために、抵抗溶接でも十分な接合強度が確保できる。
・貴金属耐消耗部14及び15は、貴金属線材を切断することにより容易に形成できる。
【0042】
以上説明したスパークプラグ100〜104は、いずれも第一種火花放電ギャップgtと第二種火花放電ギャップgpが、別体の第一種接地電極4と第二種接地電極5とにより形成されていたが、図15に示すスパークプラグ105のように、1つの接地電極8により2種の火花放電ギャップgt,gpを一括形成することもできる。
【0043】
すなわち、1つの接地電極8の少なくとも先端部を貴金属耐消耗部18として形成する。該貴金属耐消耗部18の側面を中心電極3の先端面と対向する位置関係にて配置する。その側面に、中心電極3の軸線O方向を深さ方向とする有底の凹部を形成し、その凹部に中心電極3の先端部を挿入配置する。そして、該凹部の底面18tと中心電極3の先端面13tとの間に第一種火花放電ギャップgtを形成し、同じ凹部の内側面18pと中心電極3の先端部周側面13pとの間に第二種火花放電ギャップgpを形成する。2つの火花放電ギャップgt,gpが形成されるにもかかわらず、接地電極8の数が1つで済むので、材料コスト及び組立てコストの双方の観点から経済的である。図15の実施形態においては、軸状の電極母材8mの先端面に棒状の貴金属耐消耗部18を、溶接部Wを介して接合し、貴金属耐消耗部18の先端面に開放する凹部を形成している。従って、第二種火花放電ギャップgpは、凹部の非開放側の内側面との間に1個のみ形成されている。
【0044】
なお、中心電極3側の貴金属発火部13は、既に説明済みのスパークプラグ100〜104と同様に形成される。なお、図16に示すように、電極母材3mの先端に縮径部3qを形成し、その縮径部にカップ状の貴金属部材を被せて溶接部Wにより固定すれば、貴金属使用量を削減できるので経済的である。この形態は、スパークプラグ100〜104にも同様に適用できる。
【0045】
上記スパークプラグ105においては、図17に示すように、第一種火花放電ギャップgtと第二種火花放電ギャップgpとが空間的に一体不可分に形成されることとなる。しかし、図3〜図5を用いて説明した定義によれば、各火花放電ギャップgt,gpの電極対向面積Aは、互いに分離した形で一義的に決定することができる。
【0046】
また、図18のスパークプラグ106に示すように、貴金属耐消耗部18に形成する凹部は、貴金属耐消耗部18の先端面側にも内側面18pを形成して、当該先端面側を非開放とすることもできる。このようにすると、接地電極8の長手方向において、第二種火花放電ギャップgpを2箇所に形成することができ、スパークプラグの寿命向上を図る上でより有利となる。図18においては、貴金属耐消耗部18の長手方向中間部を、プレス加工等により曲げ変形させることにより凹部を形成している。従って、貴金属耐消耗部18の凹部開口側と反対側の面には、凹部形成位置に対応して凸部18vが形成されている。他方、図19に示すように、該凸部18vが形成されないように凹部を形成してもよい。このような凹部は、切削、据え込みあるいはコイニング加工により形成できる。
【0047】
また、図20に示すスパークプラグ107は、全体が貴金属耐消耗部18とされた(つまり、貴金属ムク材にて構成された)接地電極8により、第一種火花放電ギャップgtと第二種火花放電ギャップgpとを一括形成した例である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの縦半断面図。
【図2】図1の要部を拡大して示す半断面図。
【図3】電極対向面積の定義方法を説明する第一の図。
【図4】同じく第二の図。
【図5】同じく第三の図。
【図6】本発明の第二実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの要部縦半断面図。
【図7】図6の平面模式図。
【図8】その変形例を示す平面模式図。
【図9】図8の変形例に使用する貴金属部材の説明図。
【図10】図7の別の変形例を示す平面模式図。
【図11A】本発明の第三実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの要部斜視図及び平面模式図。
【図11B】図11Bの平面模式図。
【図12】本発明の第四実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの要部斜視図。
【図13】図12の変形例を示す部分断面図。
【図14】本発明の第五実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの要部側面図。
【図15】本発明の第六実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの要部側面図。
【図16】中心電極側の貴金属耐消耗部の形成形態の変形例を示す断面図。
【図17】図15のスパークプラグにおける電極対向面積の概念を説明する図。
【図18】本発明の第七実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの要部側面図。
【図19】図18の変形例を示す要部側面図。
【図20】本発明の第八実施形態に係るガスエンジン用スパークプラグの要部側面図。
【図21】ギャップ間隔と電極対向面積との関係を調べた実験結果を示すグラフ。
【図22】飛火単位消耗体積と電極対向面積との関係を調べた実験結果を示すグラフ。
【図23】スパークプラグ寿命と電極対向面積との関係を調べた実験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
3 中心電極
3m 電極本体
W 溶接部
gt,gp 火花放電ギャップ
gt 第一種火花放電ギャップ
gp 第二種火花放電ギャップ
4,5,8 接地電極
13,14,18 貴金属耐消耗部
13t 先端面
13p 周側面
15p 先端面
18t 凹部の底面
18p 凹部の内側面
Claims (8)
- 1つの中心電極(3)と、先端部が前記中心電極(3)の先端部に対向する形で配置され、前記中心電極(3)との間に火花放電ギャップ(gt,gp)を形成する1又は複数の接地電極(4,5,8)とを備え、それら中心電極(3)と接地電極(4,5,8)との、前記火花放電ギャップ(gt,gp)を挟んで対向する部分が少なくとも、貴金属を主成分とする貴金属耐消耗部(13,14,15,18)とされ、かつ、該火花放電ギャップ(gt,gp)の間隔Bが0.2mm以上0.7mm以下に調整され、
前記火花放電ギャップ(gt,gp)は、前記中心電極(3)の先端面(13t)に前記接地電極(4,8)が対向して形成されるものを第一種火花放電ギャップ(gt)とし、前記中心電極(3)の周側面(13p)に前記接地電極(5,8)が対向して形成されるものを第二種火花放電ギャップ(gp)として、1つの第一種火花放電ギャップ(gt)と1以上の第二種火花放電ギャップ(gp)とを含む複数個、もしくは2以上の第二種火花放電ギャップ(gp)を含む複数個が形成されてなり、さらに、
それら複数個の火花放電ギャップ(gt,gp)のそれぞれについて、前記中心電極(3)と前記接地電極(4,5,8)との、前記間隔Bを満たす前記火花放電ギャップ(gt,gp)を挟んだ電極対向面積をA(単位:mm2)として、該電極対向面積Aと前記火花放電ギャップ(gt,gp)の間隔B(単位:mm)との間に、
B≧0.1exp(A/4)
の関係が成り立っていることを特徴とするガスエンジン用スパークプラグ。 - 複数個の火花放電ギャップ(gt,gp)のそれぞれについて、前記電極対向面積Aが2.7mm2以上7mm2以下に調整されてなる請求項1記載のガスエンジン用スパークプラグ。
- 前記中心電極(3)の、先端面(13t)と該先端面(13t)に連なる周側面先端部(13p)とを含む部分が、一体の貴金属耐消耗部(13)として形成され、
また、前記接地電極として、側面(14t)を前記貴金属耐消耗部(13)の先端面(13t)と対向させることにより前記第一種火花放電ギャップ(gt)を形成する第一種接地電極(4)と、該第一種接地電極(4)とは別体であり、先端面(15p)を前記貴金属耐消耗部(13)の周側面と対向させることにより前記第二種火花放電ギャップ(gp)を形成する第二種接地電極(5)とが設けられてなる請求項1又は2に記載のガスエンジン用スパークプラグ。 - 前記中心電極(3)の軸線(O)方向において、前記貴金属耐消耗部(13)の先端面(13t)が位置する側を前方側としたとき、該貴金属耐消耗部(13)の周側面(13p)に対向する、前記第二種接地電極(5)の先端面(15p)の、前記軸線(O)方向における前端縁位置(X1)が、前記貴金属耐消耗部(13)の先端面位置(Y1)よりも後方側に位置してなる請求項3記載のガスエンジン用スパークプラグ。
- 前記中心電極(3)は、Ni又はFeのいずれかを主成分とした金属よりなる軸状の電極本体(3m)の先端面に貴金属部材を重ね合わせ、その重ね合わせ面の周方向に沿って環状の溶接部(W)を形成することにより前記貴金属耐消耗部(13)を形成したものであり、
また、前記接地電極として、先端面(15p)を前記貴金属耐消耗部(13)の周側面と対向させることにより前記第二種火花放電ギャップ(gp)を形成する第二種接地電極(5)が設けられ、前記中心電極(3)の軸線(O)方向において、前記貴金属耐消耗部(13)の先端面(13t)が位置する側を前方側としたとき、該貴金属耐消耗部(13)の周側面(13p)に対向する前記第二種接地電極(5)の先端面(15p)の、前記軸線(O)方向における後端縁位置(X2)が、前記溶接部(W)の前端縁位置(Y2)よりも前方側に位置してなる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のガスエンジン用スパークプラグ。 - 前記第二種接地電極(5)が、前記中心電極(3)の周囲に複数個配置されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガスエンジン用スパークプラグ。
- 前記接地電極として、1つの接地電極(8)の少なくとも先端部を前記貴金属耐消耗部(18)として形成し、かつ、該貴金属耐消耗部(18)の側面に、前記中心電極(3)の軸線(O)方向を深さ方向とする有底の凹部を形成し、その凹部に前記中心電極(3)の先端部を挿入配置して、該凹部の底面(18t)と前記中心電極(3)の先端面(13t)との間に前記第一種火花放電ギャップ(gt)を形成し、同じ凹部の内側面(18p)と前記中心電極(3)の先端部周側面(13p)との間に前記第二種火花放電ギャップ(gp)を形成した請求項1又は2に記載のガスエンジン用スパークプラグ。
- 1つの中心電極(3)と、先端部が前記中心電極(3)の先端部に対向する形で配置され、前記中心電極(3)との間に火花放電ギャップ(gp)を形成する接地電極(5)とを備え、それら中心電極(3)と接地電極(5)との、前記火花放電ギャップ(gp)を挟んで対向する部分が少なくとも、貴金属を主成分とする貴金属耐消耗部(5)とされ、かつ、該火花放電ギャップ(gp)の間隔Bが0.2mm以上0.7mm以下に調整され、
前記火花放電ギャップ(gp)は、前記中心電極(3)の周側面(13p)と前記接地電極(5)に形成された穴又は切欠きの内周面とが対向するものとして形成されてなり、さらに、
前記火花放電ギャップ(gp)は、前記中心電極(3)と前記接地電極(5)との、前記間隔Bを満たす前記火花放電ギャップ(gp)を挟んだ前記中心電極の電極対向面積をA(単位:mm2)として、該電極対向面積Aと前記火花放電ギャップ(gp)の間隔B(単位:mm)との間に、
B≧0.1exp(A/4)
の関係が成り立っていることを特徴とするガスエンジン用スパークプラグ。
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