JP3970416B2 - ボタン付機能を有するミシン - Google Patents

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正法 白石
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボタン付機能を有するミシン、特にボタン付け時に縫い始めの止め縫いを行なうか否かを容易に選択することができるボタン付機能を有するミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ボタン付けの縫製を行う場合、図5に2つのボタン穴A、Bを拡大して示したように、最初の縫い目の糸抜けを防止するために、同一の穴A内において、図中1、2、3の順番で針落ち位置を示すようにその径の範囲内で針をわずかに移動させて縫い動作を行う、いわゆる止め縫いを所定回数行なった後に、矢印で示したように3の位置から隣の穴Bに針を移動させることが行われている。縫い終りの場合も、縫い終りのボタン穴内において図中e、f、gの順で針落ち位置を示すように、同様に止め縫いを行っている。この止め縫いは、例えば0.4mmのピッチで、その後の穴AB間の通常縫いは、例えば2〜3mmで行なうことができる。但し、当然ボタンや穴の大きさによって異なる。
【0003】
ところが、縫い始めの止め縫いは縫製物の種類等によっては、上記止め縫いを必ずしも行わなくてもよい場合があるため、その縫い動作に要する時間を削減し、作業効率の向上を図る上からも、ユーザ側でその縫製動作に縫い始めの止め縫いを入れるか否かの選択を行っていた。
【0004】
従来、ボタン付時に縫い始めの止め縫いを入れるか否か(有無)は、機械式のボタン付機能を有するミシン(以下、単にボタン付ミシンともいう)では、送りカムの形状を変更していずれか一方の縫製パターンに決めることにより、又、電子式のボタン付ミシンにおいては、プログラム入力したパターンデータにより針落ち位置を制御することにより、それぞれ行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のボタン付ミシンでは、縫い始めの止め縫いの有無の選択は、機械式の場合にはカムを交換する作業が、又、電子式の場合にはパターンデータが格納されているデータROMを交換する作業が必要となるため、選択作業が煩雑である上に、作業能率の低下が避けられないという問題があった。
【0006】
更に、電子式の場合には、パターンデータに止め縫い有りと無しの2種類を用意することになるため、パターン数が2倍となってしまい、その保存や選択が困難であるという問題もある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、ボタン付時に縫い始めの止め縫いを行うか否かの選択を容易且つ迅速に行うことができるボタン付機能を有するミシンを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、縫い始めの止め縫いを含む縫製パターンに従ってボタン付けを行うボタン付機能を有するミシンにおいて、ボタン付け時に縫い始めの止め縫いを行う有効と行わない無効のいずれかを選択する選択手段と、前記縫製パターンから所定寸法以下のピッチを縫い始めの止め縫いと判断する判断手段とを備えていると共に、前記選択手段によって有効が選択された場合は、前記縫製パターンに従って縫製を行い、無効が選択された場合は、前記判断手段によって判断された縫い始めの止め縫いを行わないように制御する制御手段を備えたことにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る一実施形態のボタン付ミシン(ボタン付機能を有するミシン)の概略構成を示すブロック図、図2は、そのミシンテーブル上に付設されている入出力用の操作パネルを示す平面図である。
【0011】
図1において、符号48は第1のCPUを、49は第2のCPU(制御手段)を、それぞれ示している。第1のCPU48の出力側には、ミシンの上軸に回転駆動力をダイレクトに伝達するモータ56が、インターフェイス(I/F)54、モータドライバ55を介して接続されている。
【0012】
この第1のCPU48の入力側には、ミシンスタートを行うためのスタートスイッチ50、ミシンペダルの踏み込みを検出するペダルスイッチ51が、各インターフェイス52、53を介してそれぞれ接続されていると共に、処理手順をプログラム及び固定データの形で格納するROM57が接続されている。そして、当該第1のCPU48には、データ、演算に使用する情報、演算結果等を記憶するRAM58が入出力可能に接続されている。
【0013】
上記第1のCPU48には、第2のCPU49がインターフェイス47を介して入出力可能に接続されている。この第2のCPU49の出力側には、布押え枠(図示せず)をミシンベッド表面に沿ってX−Y移動するためのXモータ2、Yモータ3が、インターフェイス61、モータドライバ62を介して接続されていると共に、布押え枠の上側部分(布押え足)を上げ下げするための押えマグネット63、糸切りを行わせるための糸切りマグネット64が、インターフェイス65、マグネットドライバ66を介して接続されている。この第2のCPU49の出力側には又、作業者に対して情報を表示するために操作パネル59に設けられている表示手段59bが接続されている。
【0014】
又、この第2のCPU49の入力側には、ミシン制御に必要な情報を入力するために同パネル59に設けられている入力手段59aが接続されていると共に、布押え枠のX側の原点位置を検出するためのX側原点センサ33、布押え枠のY側の原点位置を検出するためのY側原点センサ34が、インターフェイス60を介して接続されている。又、第2のCPU49の入力側には、固定データの形で情報を格納するデータROM67、処理手順をプログラムの形で格納するシステムROM68、書き込んだ情報、プリセットした情報を記憶していて電源がオフになっても当該情報が消えることがないEEPROM69が接続されている。又、この第2のCPU49には、データ、演算に使用する情報、演算結果等を記憶するRAM70が入出力可能に接続されている。
【0015】
そして、上記CPU48、49は、上述した各入力に従って、上述した各出力側に適宜駆動指令を送出する構成になされている。
【0016】
上記入力手段59a、表示手段59bが形成されている前記操作パネル59は、図2に示すような外観を有し、図示しないミシンテーブル上に載設されている。即ち、上記入力手段59aは、設定状態と縫製状態との切り換えを行う準備スイッチ71と、設定項目の選択を行う選択スイッチ72と、各設定値のリセットを行う(表示値をデフォルト値に戻す)リセットスイッチ73と、設定値を加算すると共に送り前進を行う+/前進スイッチ74と、設定値を減算すると共に送り後退を行う−/後退スイッチ75と、ボタン付けの針落ち位置の順番を含む縫製パターンと、該縫製パターンにて縫製を行う際に必要な情報(例えば縫製速度等)とを組み合わせた、予め設定済みの縫製パターン情報をワンタッチで呼び出すファンクションスイッチP1、P2、P3と、を含んでいる。
【0017】
前記表示手段59bは、縫製状態を点灯にて示す縫製LED76と、設定項目の設定値を表示するデータ表示部77と、パターンNo.(縫製パターンに当る)、X拡大縮小率、Y拡大縮小率、スピード(速度)、カウンタ、糸巻きの各項目を点灯にて示す設定項目LED78と、を含んでいる。
【0018】
前記RAM70には、パターンNo.、X拡大縮小率、Y拡大縮小率、スピード、カウンタの各情報、P1、P2、P3情報(縫製パターン情報)等をそれぞれ格納する記憶領域が備えられている。
【0019】
上記パターンNo.には、例えば1〜102までのNo.が格納され、No.1〜99まではデータROM67に格納されているパターンNo.を表わし、No.100〜102はP1〜P3の各情報を表わす。
【0020】
X及びYの拡大縮小率には、それぞれ20〜200の値が格納され(通常の値は100)、スピードには、400rpm〜2700rpmの値が格納され、又、カウンタには、0枚〜9999枚の値が格納される。
【0021】
本実施形態のボタン付ミシンでは、前記ROM67には、ボタン付けの縫製パターンとして、止め縫いを含むパターンのみが格納されている。そして、本実施形態では、ボタン付けを行なう際に止め縫いを行う“有効”と、行わない“無効”を選択する選択手段が、前記操作パネル59に形成されている入力手段59aである準備キー71、+/前進キー74、−/後退キー75等により構成され、選択されたデータは前記RAM70に記憶されるようになっている。
【0022】
又、前記ROM67から読み出された縫い始めの止め縫いを含む縫製パターンデータから、予め前記RAM70に記憶されている所定寸法(例えば0.5mm)以下のピッチを縫い始めの止め縫いと判断する判断手段が、前記第2のCPU49で構成されている。そして、前記選択手段を構成する入力手段59aによって“有効”が選択された時には、前記縫製パターン(止め縫いを含む)に従って、縫製を行い“無効”が選択された時に、前記判断手段によって判断された縫い始めの止め縫いを行わないように、該CPU49によって制御されるようになっている。
【0023】
その際、縫い始めの止め縫いを行わない無効が選択された場合は、前記判断手段によって縫い始めの止め縫いと判断された縫い目だけ、針を上位置に保持したまま布を移動させる空送りを行うように制御することにより、上記止め縫いを行わないようにしている。このようにすることにより、複雑なパターン制御を行うことなく止め縫いを無効にすることができ、逆にこのようにしないと最初の針落ち点まで変わってしまうため、制御が複雑になる。
【0024】
上記空送りは、具体的には前記上軸用モータ56を停止させた状態で、針棒を針上位置に維持したまま(縫い始めには、通常縫製物が載置されるので針棒は針上位置にある)、X、Yパルスモータ2、3をそれぞれパターン通り作動させることにより実現される。
【0025】
又、止め縫いの判断基準とする前記所定寸法のピッチを設定する設定手段が、同様に前記入力手段59aにより構成され、設定された寸法が前記RAM70に記憶されるようになっており、これにより設定寸法を変更できるようになっている。
【0026】
本実施形態においては、図3のフローチャートの手順に従って以下のようにして縫い始めの止め縫い有無(“有効”“無効”)の選択が行われる。
【0027】
まず、前記図2に示した操作パネルを使用し、その準備キー71とリセットキー73を押しながら、電源をONする(ステップS1)と、データ表示部77がメモリスイッチの表示モードになるので、その状態で+/前進キー74を押すと、“22−0”がデータ表示部77に表示される(ステップS2)。
【0028】
次いで、準備キー71を押して縫製LED76を点灯させ(ステップS3、4)、その後+/前進キー74又は−/後退キー75をONして、無効に当る“22−0”が表示された止め縫い無し、又は有効に当る“22−1”が表示された止め縫い有りの選択を行い(ステップS5)、その選択状態を反転する(ステップS6)ときには上記ステップS5に戻り、その必要がないときには、準備キー71をONして、止め縫いの有無を登録(設定)する(ステップS7、8)。
【0029】
次いで、縫い始めの止め縫いの判断基準である所定寸法のピッチを設定する。その際、ピッチを長くしたいときには+/前進キー74をONにして、逆に短くしたいときには、−/後退キー75をONにして、それぞれ0.1mmずつピッチを増減させ(ステップS9、10)、所望の値になったら準備キー71をONにすることにより、縫い始めの止め縫いの判定に用いるピッチを登録(設定)する(ステップS11、12)。
【0030】
前記P1、P2、P3情報には、前述した縫製パターンの番号であるパターンNo.、スピード等を組み合わせた各縫製パターン情報が予め登録して格納されており、ボタン付け(縫製)を行う際には、例えば上記P1、P2、P3情報のうちのいずれかを呼び出せば、この選択されたP情報に従って縫製を行うことができるようになっている。
【0031】
又、その際、例えばP1、P2、P3の順番で情報を選択しておくことにより、ボタン穴の芯間、縫製パターン等が異なることから縫製対象が変化するサイクル縫いにも対応できるようになっている。
【0032】
本実施形態においては、図4に示したフローチャートに従ってボタン付の縫製を行うことができる。即ち、縫製スタートにより、ステップS21で縫い始めの止め縫いの設定が有効か無効かを判断し、止め縫い無効設定(Y)の場合は、ステップS22で縫い始めのデータが止め縫いデータかどうか設定ピッチにより判断し、縫い始めの止め縫いデータ(Y)の場合は空送りし(ステップS23)、次の縫いデータが止め縫いデータかどうか再度判断する(ステップS22)。一方、上記ステップS21で縫い始めの止め縫い有効設定(N)の場合はパターン通りの通常縫製を行い(ステップS24)、又、縫い始めの止め縫いと判断された針数分だけ上記ステップS23の空送りを行ったことにより、縫い始めの止め縫いデータが終了し、上記ステップS22で(N)の場合は、その後はパターン通りの通常縫製を行う(ステップS24)。
【0033】
これを更に具体的に説明すると、前記止め縫い有無の選択操作で前記表示部77に“22−1”を表示させて“有”を選択するとともに、止め縫いと判断するか否かの基準であるピッチの所定寸法を、例えば0.5mmに設定した後、縫製パターン情報P1を選択し、縫製を開始すると、該情報P1に従ってボタン付けが開始される。その際、情報P1に含まれる縫製パターンには、最初に0.5mm以下のピッチの縫い目があり、その後通常縫いのピッチの縫い目が連続しているため、前記図4に示したと同様に最初にある0.5mm以下の縫い目を縫い始めの止め縫いと判断して、それを実行した後、隣りの穴へ移動する通常縫いの動作を開始することができる。
【0034】
逆に、表示部77に“22−0”を表示させて“無”を選択すると、最初の0.5mm以下の縫い目では、縫製物を空送りすることにより、その縫い目を飛び越えて、直ぐに2つ目の通常縫い動作に移行する。
【0035】
このように、縫製パターンとしては、最初に止め縫いが含まれているものを準備しておき、その縫い動作を行うか否かのモード選択を行うだけで、止め縫いを入れたり外したりを簡単に行うことができる。
【0036】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0037】
(1)縫製物により止め縫いの有無を選択する場合、それを手元のパネル操作により簡単に選択することができる。
【0038】
(2)縫製物に合った縫製条件(縫い始めの止め縫いの有無)が選択可能となるので、縫い始めの目飛びを低減できる。
【0039】
(3)縫い始めの止め縫いの実施、不実施が1種類のパターンで兼用できるため、パターンデータ数が少なくて済む。
【0040】
(4)縫製条件が異なるボタン付けを繰り返し行なうサイクル縫いにおいても、縫製物に合った縫製が簡単に行うことができる。
【0041】
(5)縫い始めの止め縫い有りの縫製パターンに対して、止め縫い無しを選択することができるので、サイクル縫いを行う場合には、サイクルタイムを短縮することができる。
【0042】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に示したものに限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0043】
例えば、前記実施形態では、空送りを、上軸駆動用モータ56を停止させ針棒を針上位置に保持したまま、X、Yパルスモータを駆動して行う場合を示したが、これに限定されず公知の針棒解放機構を利用してもよい。
【0044】
又、止め縫いの有効無効の選択及び基準寸法の設定は、前記実施形態に示した方法に限らず、制御部に別途設けたディップスイッチ(図示せず)等を使って選択した結果や設定値を前記第2のCPU49に読みこんで行ってもよい。
【0045】
又、止め縫いか否かを判断するピッチの基準寸法は、前記実施形態に示した0.5mmに限定されない。
【0046】
又、前記基準寸法の設定は、設定手段により別途行う場合に限らず、予め縫製パターン情報にそれぞれ適切な値を組み込んでおいてもよい。
【0047】
又、止め縫いの針落ち位置は、前記図5に示したものに限定されない。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、ボタン付け時に止め縫いを行うか否かの選択を容易且つ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態のボタン付ミシンの概略構成を示すブロック図
【図2】上記ミシンに付設されている操作パネルを示す平面図
【図3】上記ミシンで止め縫いの有効又は無効を選択し、設定する手順を示すフローチャート
【図4】上記実施形態における縫製動作の流れを示すフローチャート
【図5】止め縫いを説明するための線図
【符号の説明】
49…CPU(制御手段、判断手段)
59a…入力手段(選択手段)

Claims (3)

  1. 縫い始めの止め縫いを含む縫製パターンに従ってボタン付けを行うボタン付機能を有するミシンにおいて、
    ボタン付け時に縫い始めの止め縫いを行う有効と行わない無効のいずれかを選択する選択手段と、前記縫製パターンから所定寸法以下のピッチを縫い始めの止め縫いと判断する判断手段とを備えていると共に、
    前記選択手段によって有効が選択された場合は、前記縫製パターンに従って縫製を行い、無効が選択された場合は、前記判断手段によって判断された縫い始めの止め縫いを行わないように制御する制御手段を備えていることを特徴とするボタン付機能を有するミシン。
  2. 請求項1において、
    縫い始めの止め縫いの判断基準である前記所定寸法のピッチを設定する設定手段が備えられていることを特徴とするボタン付機能を有するミシン。
  3. 請求項1において、
    縫い始めの止め縫いを行わない無効が選択された場合は、前記判断手段によって縫い始めの止め縫いと判断された縫い目だけ、針を上位置に保持したまま布を移動させる空送りを行うように制御することを特徴とするボタン付機能を有するミシン。
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