JP3966038B2 - 樹脂部品のインサート材セット構造およびこの構造による成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂部品のインサート材セット構造およびこの構造を用いた成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂部品の剛性・強度を高める目的で、金属製のインサート材を一体成形することがある。図7は、この一体成形時の金型の断面図で、コア型1にインサート材3がセットされ、コア型1に対しキャビ型5を閉じた状態でキャビティ7に樹脂を供給することで、樹脂部品が成形される。
【0003】
コア型1には、キャビ型3に向けて突出する位置決めピン9が設けられ、この位置決めピン9は、インサート材3に設けた位置決め孔3aに挿入されて、インサート材3を位置決めする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の構造では、位置決めピン9が、キャビティ7を貫通し、キャビ型5にまで達しているため、成形後の樹脂部品は、位置決めピン9による貫通孔が形成されてしまい、樹脂部品の外観品質を著しく損なうものとなる。
【0005】
そこで、この発明は、インサート材を位置決めする位置決めピンによる樹脂部品の外観品質の低下を防止することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、インサート材がセットされる一方の型に、前記インサート材に設けた位置決め孔に挿入されてインサート材の位置決めを行う位置決めピンを設け、この位置決めピンと他方の型との間には、成形時にて隙間を有し、前記インサート材の位置決め孔の周辺を薄肉化して薄肉部を設け、この薄肉部と、インサート材をセットした状態の一方の型との間に空間を設け、前記薄肉部は、成形時の前記一方の型と他方の型との間の樹脂圧により押し付けられ、前記空間側に変形するものである構成としてある。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成において、前記位置決めピンが挿入される前の状態での前記位置決め孔の内径を、前記位置決めピンの外径より小さくした構成としてある。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の構成において、前記位置決めピンに、前記一方の型と他方の型との間に樹脂を供給するためのゲートを設けた構成としてある。
【0009】
請求項4の発明は、一方の型に設けられてインサート材を位置決めする位置決めピンと、他方の型との間に、成形時にて隙間が形成されるよう設定し、前記一方の型に、前記位置決めピンが位置決め孔に挿入されるようインサート材をセットし、セット後型閉じを行って前記一方の型と他方の型との間に樹脂を供給することで、前記インサート材の位置決め孔周辺の薄肉部が、樹脂圧により押し付けられ、前記一方の型側に変形する成形方法としてある。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4の発明の成形方法において、前記位置決めピンに設けたゲートから、前記一方の型と他方の型との間に樹脂を供給する構成としてある。
【0011】
【発明の効果】
請求項1または4の発明によれば、成形時に位置決めピンと他方の型との間に隙間を有するので、他方の型側の成形後の樹脂部品表面には、位置決めピンによる孔が形成されず、樹脂部品の外観品質を向上させることができる。また、成形時には、薄肉部が樹脂圧によって一方の型側に変形して、位置決め孔周縁が位置決めピンから離れ、樹脂部品の離型が容易になる。
【0012】
請求項2の発明によれば、インサート材を一方の型にセットする際に、薄肉部の位置決め孔周縁が位置決めピンによって変形し、インサート材の一方の型への固定が確実となる。
【0013】
請求項3または5の発明によれば、位置決めピンに設けたゲートから樹脂を供給するようにしたので、位置決めピンとしての専用部分が不要となり、型構造の簡素化を図ることができる。また、インサート材がセットされる一方の型側から樹脂を供給するので、これと反対側の他方の金型表面に対応する側の樹脂部品表面には、ゲートの跡が残らず、外観品質が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は、この発明の第1の実施形態を示す射出成形金型の要部の断面図で、この金型によって、図2に示すような樹脂部品13が射出成形される。この樹脂部品13は、自動車におけるバックドアのインナパネルである。
【0016】
上記したインナパネルは、ガラス繊維などで強化されたポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂からなるパネル本体15を有し、このパネル本体15の図2中で紙面表側の左右両側部付近に、鉄板などからなるインサート材17が一体成形される。さらに、このインナパネルには、図示しないアウタパネルが図2中で紙面表側からインナパネルの全体を覆うように接着剤によって接合される。
【0017】
なお、図2中で符号19で示すものはリブである。このリブについては、図1中の後述するキャビティ33における、アウタパネルが接合される接合フランジ部に対応する部位33a,33bと、インサート材17に適宜設けられる図示しない貫通孔から樹脂が流れ込み成形される。
【0018】
上記した樹脂部品13を射出成形する際には、図1に示すように、一方の型であるコア型21にインサート材17をセットする。このインサート材17は、コア型21の凸部23に密着するよう底面25,左右両側面27,29をそれぞれ備えている。インサート材17をセットしたコア型21と、他方の型であるキャビ型31との間には、樹脂が充填されるキャビティ33が形成される。
【0019】
コア型21の上記した底面25に対向する部位には、インサート材17を位置決めするための位置決めピン35を、凹部23aに嵌入した状態で設けてあり、この位置決めピン35とキャビ型31との間には、隙間37が形成されている。すなわち、図1は成形時の状態を示しており、この成形時にて上記した隙間37が形成されるものとなる。上記した位置決めピン35に対応してインサート材17の底面25には、位置決めピン35が挿入される位置決め孔25aを形成してある。
【0020】
この位置決め孔25aの内径は、位置決めピン35が挿入される前の状態では、位置決めピン35の外径より小さく設定してある。具体的には、位置決めピン35が挿入される前の状態での位置決め孔25aの内径は、位置決めピン35の外径より0.2mm程度小径化することが望ましい。
【0021】
図3は、インサート材17における上記した位置決め孔25a周辺の構造を示している。位置決め孔25aの周辺は、インサート材17における他の部位に対して薄肉化した薄肉部25bを有している。そして、この薄肉部25bは、コア型21側に環状の切欠25cを設けることで形成される。これにより薄肉部25bは、キャビ型31側に形成されることになり、インサート材17を図1のようにコア型21にセットした状態では、この薄肉部25bとコア型21との間に、環状の空間39が形成される。
【0022】
上記した薄肉部25bの形成範囲は、半径で、位置決め孔25aの径プラス3mm以上かつ5mm以下とすることが望ましい。
【0023】
次に、作用を説明する。まず、キャビ型31をコア型21に対して開いた状態で、インサート材17を、図1に示すようにコア型21にセットする。図4は、このときの要部の拡大した図である。このとき、位置決めピン35を位置決め孔25aに挿入するが、位置決め孔25aの位置決めピン35挿入前の内径は、位置決めピン35の外径より小さく、かつ位置決め孔25aは薄肉部25bに形成されているので、内周縁が変形し、位置決めピン35に引っ掛かった状態となる。これにより、樹脂射出前のインサート材17がコア型21に確実に位置決め固定される。
【0024】
インサート材17をコア型21にセット後、キャビ型31を閉じた状態で、キャビティ33に樹脂を供給する。すると、図5に示すように、キャビティ33内の樹脂圧により、薄肉部25bが空間39側に変形する。この変形により、薄肉部25bの空間39側の一部が、コア型21に接触し、かつ位置決め孔25aの周縁部が位置決めピン35の外周面から離れた状態となる。
【0025】
その後、キャビティ33内の樹脂が冷却固化し、キャビ型31をコア型21に対して開いた状態で、成形品すなわち図2に示してある樹脂部品13を取り出す。
【0026】
この場合、位置決めピン35とキャビ型31との間に、成形時に隙間37を有するので、成形後の樹脂部品13のキャビ型31側に対応する樹脂部品13の表面(図2(a)中で紙面裏側に相当)には、位置決めピン35による孔は形成されず、樹脂部品13の外観品質の向上が図られる。
【0027】
また成形後は、薄肉部25bが変形して位置決め孔25aの周縁部が位置決めピン35の外周面から離れるので、位置決めピン35が位置決め孔25aから容易に抜け、樹脂部品13の離型が容易となる。
【0028】
図6は、この発明の第2の実施形態を示しており、前記図5に対応する断面図である。この実施形態は、第1の実施形態における位置決めピン35を設けた部位(コア型21)に、位置決めピン兼用のゲート部材41を設けている。このゲート部材41は、内部にキャビティ33に樹脂を供給するためのゲート41aを備えている。
【0029】
上記したゲート部材41の外径は、前記第1の実施形態における位置決めピン35の外径と同じである。すなわち、図6においても、位置決め孔25aの内径は、位置決めピン兼用のゲート部材41が挿入される前の状態では、ゲート部材41の外径より小さく設定してある。
【0030】
そしてこのゲート部材41と、型閉じ状態でのキャビ型31との間には、第1の実施形態と同様の隙間43を、成形時に備える構成となっている。このため、成形後の樹脂部品13のキャビ型31側に対応する表面(図2(a)中で紙面裏側に相当)には、位置決めピン兼用のゲート部材41による孔は形成されず、外観品質の向上が図られる。
【0031】
また成形後についても、第1の実施形態と同様に、薄肉部25bが変形してその周縁部がゲート部材41の外周面から離れるので、ゲート部材41が位置決め孔25aから容易に抜け、樹脂部品13の離型が容易となる。
【0032】
さらに、上記した第2の実施形態によれば、位置決めピンとしての専用部分が不要となり、型構造の簡素化を図ることができ、キャビ型31と反対のインサート材17側から樹脂を供給するので、キャビ型31に対応する側の樹脂部品13の表面には、ゲートの跡が残らず、外観品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す射出成形金型の要部の断面図である。
【図2】(a)は図1の射出成形金型により成形された樹脂部品の斜視図、(b)は(a)の樹脂部品にインサート成形されるインサート材の斜視図である。
【図3】図1の射出成形金型におけるインサート材の位置決め孔周辺の構造を示す断面図である。
【図4】図3の状態からインサート材をコア型にセットした状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態からキャビティに樹脂を充填した状態を示す断面図である。
【図6】この発明の第2の実施形態を示す、図5に対応する断面図である。
【図7】従来例を示す射出成形金型の要部の断面図である。
【符号の説明】
17 インサート材
21 コア型(一方の金型)
25a 位置決め孔
25b 薄肉部
31 キャビ型(他方の金型)
35 位置決めピン
37,43 隙間
39 空間
41 位置決めピン兼用のゲート部材
41a ゲート

Claims (5)

  1. インサート材がセットされる一方の型に、前記インサート材に設けた位置決め孔に挿入されてインサート材の位置決めを行う位置決めピンを設け、この位置決めピンと他方の型との間には、成形時にて隙間を有し、前記インサート材の位置決め孔の周辺を薄肉化して薄肉部を設け、この薄肉部と、インサート材をセットした状態の一方の型との間に空間を設け、前記薄肉部は、成形時の前記一方の型と他方の型との間の樹脂圧により押し付けられ、前記空間側に変形するものであることを特徴とする樹脂部品のインサート材セット構造。
  2. 前記位置決めピンが挿入される前の状態での前記位置決め孔の内径を、前記位置決めピンの外径より小さくしたことを特徴とする請求項1記載の樹脂部品のインサート材セット構造。
  3. 前記位置決めピンに、前記一方の型と他方の型との間に樹脂を供給するためのゲートを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の樹脂部品のインサート材セット構造。
  4. 一方の型に設けられてインサート材を位置決めする位置決めピンと、他方の型との間に、成形時にて隙間が形成されるよう設定し、前記一方の型に、前記位置決めピンが位置決め孔に挿入されるようインサート材をセットし、セット後型閉じを行って前記一方の型と他方の型との間に樹脂を供給することで、前記インサート材の位置決め孔周辺の薄肉部が、樹脂圧により押し付けられ、前記一方の型側に変形することを特徴とする成形方法。
  5. 前記位置決めピンに設けたゲートから、前記一方の型と他方の型との間に樹脂を供給することを特徴とする請求項4記載の成形方法。
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