JP3964019B2 - 見当制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、見当制御方法及び装置、特に紙やプラスチックフィルム等からなるウェブに多色印刷する際に適用して好適な、見当制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続的に搬送される紙やプラスチックフィルム等からなるウェブに、2色以上で、いわゆる多色印刷する場合、各色の絵柄が正しい位置に印刷され、各色に絵柄間のずれ、即ち見当ずれがないことが、印刷物の品質上重要であることは言うまでもない。
【0003】
このような見当ずれには、一般に、図3に2色の絵柄P、P′をそれぞれ概念的に示したように、ウェブWの流れ方向(図中縦方向)にずれる縦見当ずれAと、流れ方向に対し直交する方向にずれる横見当ずれBがある。
【0004】
多色印刷の見当合わせは、基本となる色(基本色)とその他の色(コントロール色)の印刷位置を合わせることを言うが、ここでは説明を簡単にするために2色印刷とし、主として基本となる色を1色目、コントロールする色を2色目という表現を用いる。
【0005】
ここでは縦見当のみを取り上げるが、1色目と2色目の絵柄について、上記のような縦見当ずれが生じている場合、それを補正する方法としては、コンペンセータロールにより、2色間、即ち各色の絵柄を印刷する版胴間のウェブWの長さ(パス長)を修正する方法が一般に用いられている。
【0006】
今、縦見当を補正する方法を、図4に示した一般的なグラビア印刷機を用いて以下に詳説する。この図4は、1色目を印刷する第1印刷ユニット10と、その下流に位置する2色目用の第2印刷ユニット12とを示したものである。
【0007】
ウェブWは、第1印刷ユニット10を構成する版胴14と圧胴16との間を通過して1色目が印刷された後、第2印刷ユニット12の版胴18と圧胴20の間を通過して2色目が印刷され、その後矢印方向に搬送されて次の工程に移動するようになっている。
【0008】
今、第1、第2印刷ユニット10、12それぞれによる1色目と2色目の印刷の間に縦見当ずれが生じている場合には、両ユニット10、12間に配設されているコンペンセータロール22を矢印方向に移動させ、該両者間のパス長を調整することにより、縦見当ずれの補正を行う。
【0009】
この縦見当ずれを補正する見当修正は、一般に自動的に行われている。具体的には、見当マーク(図示せず)と呼ばれる見当合わせ用のマークを、印刷絵柄と干渉しない位置のウェブ上に絵柄と同時に印刷し、対象の印刷ユニットの近傍でそのマークをオンラインで検知しながら、見当ずれが0になるようにフィードバック制御することが広く行われている。
【0010】
上記図4の場合であれば、制御すべき2色目の色で印刷された見当マークと、基本となるべき1色目の色で印刷された見当マークを、例えば第2印刷ユニット12の出側、即ち版胴18の下流で検知すると共に、図示しない見当制御部により、該両マーク間の距離から縦方向見当ずれを算出し、それが0になるように印刷ユニット間のパス長をコンペンセータロール22により変更して補正する自動制御が行われている。
【0011】
上記のような見当の自動制御により定常印刷を行って印刷物を生産している時に、印刷を一旦中断し、その後再開することがある。図5は、上から順に、この場合の印刷速度、ユニット間のウェブ張力、見当ずれ量及びコンペンセータロールの位置の経時変化をそれぞれ概念的に示したタイムチャートであり、これを用いて従来の見当制御で印刷を中断する場合について以下に詳述する。
【0012】
図5に示したように、V1 (例えば、150m/分)の生産速度(定常速度)で印刷している時に中断する場合、T1 時点で降速を開始し、V2 (例えば、10m/分)の最低速度に到達したT2 時点で圧胴を上昇させることにより版胴からウェブWを離し、その後T3 時点でラインを停止させる。その際、T1 時点〜T2 時点の降速中に印刷ユニット間のウェブ張力は大きく変動するため、その張力変動により色間見当、即ち見当ずれも大きく変動することになる。その見当変動を制御するために、見当制御部はコンペンセータロール22の位置を図示したように移動させることになるが、降速が大きすぎる場合には制御し切れず、ついには見当ずれが自動制御可能範囲(例えば±8mm、図中D)を越えてしまい、フィードバック制御がきかなくなって、T2 時点の前でコンペンセータロール22は停止してしまう。その結果、見当ずれが大きく、しかも一定になった状態でラインが停止することになる。
【0013】
その後、T4 時点で再開する場合には、見当が大きくずれたままなので、通常の開始作業と同様に、最初に、例えば10m/分の一定の低速度で刷出印刷を開始すると同時に、作業者が手動によりA時間かけてコンペンセータロールを動かし、見当ずれが上記自動制御可能範囲に入るようにした後、自動制御に切換えると共に、刷出印刷が安定していることを確認できたT5 時点で再び昇速する。
【0014】
この昇速中もユニット間のウェブ張力が変動し、それに伴って色間見当、コンペンセターロールの位置も変動するが、印刷速度は次第に目標の生産速度V1 に近付いていき、T6 時点で生産速度に達する。その後、B時間かかって自動制御が安定し、T7 時点で完全に見当が合った(見当ずれ量=0)定常状態になる。なお、この自動制御の安定にB時間(安定時間)を要するのは、上述した印刷機を停止する中断に限らず、定常速度で印刷している時に降速し、停止せずに昇速を開始して再度定常速度に戻すだけの場合も同様である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したように、定常印刷(生産)中に印刷機を止めて印刷を中断すると、見当が大きくずれてしまうため、印刷を再開する場合には、通常の印刷開始時と同様の手順で操作をしなければならないことから、又、降速した後に印刷機を止めることなく定常速度に戻す場合にも、見当が完全に合って本生産に入るまでに前記安定時間を要することから、いずれの場合も生産性が低下するという問題があった。
【0016】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、印刷の中断後それを再開する時、又は印刷速度の降速後そのまま定常速度に昇速する時に生じる見当ずれに起因して生産性が低下することを防止できる、見当制御方法及び装置を提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、連続的に搬送されるウェブに2以上の印刷ユニットにより順次印刷する際、隣接する2つの印刷ユニットによりそれぞれ印刷された絵柄について検出された見当ずれ量に基づいて、該両印刷ユニット間に配設されているコンペンセータロールを移動させ、該両印刷ユニット間のウェブ長さを自動的に調整して見当を自動制御する見当制御方法において、定常速度で印刷中に印刷速度を降速する際、降速前に前記自動制御を切って、コンペンセータロールをその時の位置に保持し、その後に昇速する際、目標定常速度に達した後、前記自動制御を再度入れることにより、前記課題を解決したものである。
【0018】
即ち、本発明においては、定常速度で印刷物を生産中に見当の自動制御を切って、コンペンセータロールをそのときの位置に保持した後、降速を開始すると共に、その後昇速を開始して、例えば降速開始時の印刷速度と同一の目標定常速度に達した後、前記自動制御を再度入れるようにしたので、目標定常速度に達するとすぐに見当が合った状態にすることができるため、生産性を向上することができる。
【0019】
本発明は、又、前記見当制御方法において、印刷速度を降速する際、降速後に印刷機を停止させて印刷を中断する場合には、降速だけでなく、印刷を中断した場合でも、迅速に本生産に移行することができる。
【0020】
本発明は、又、前記見当制御方法において、降速前の定常速度が、昇速後の目標定常速度と同一である場合には、昇速完了後すぐに見当が完全に合った状態にすることができる。
【0021】
本発明は、又、連続的に搬送されるウェブに順次印刷する2以上の印刷ユニットと、隣接する2つの印刷ユニットによりそれぞれ印刷された絵柄について見当ずれを検出する見当センサと、該センサにより検出された見当ずれ量に基づいて、該両印刷ユニット間のウェブの調整長さを算出すると共に、該調整長さに応じて該両印刷ユニット間に配設されているコンペンセータロールを移動させて見当を自動制御する見当制御手段を備えた見当制御装置において、定常速度で印刷中に前記見当制御手段による自動制御を入れたり切ったりする制御入・切手段が設置されていると共に、該制御入・切手段が、印刷速度を定常速度から降速させる指令入力に連動して、前記自動制御を切るようになされ、且つ、その後の昇速時に印刷速度が目標定常速度に達した後、前記自動制御を入れるようになされていることにより、同様に前記課題を解決したものである。
【0022】
本発明は、又、前記見当制御装置において、降速前の印刷速度を目標定常速度として記録しておく速度記録手段が設置されていると共に、前記制御入・切手段が、昇速後の印刷速度と、記録されている前記目標定常速度とが一致した後に、前記自動制御を入れるようにしたことにより、昇速後に自動的に、しかも完全に見当が合った状態で見当の自動制御を入れることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る一実施形態の見当制御装置を示す概略構成図である。
【0025】
本実施形態の見当制御装置では、第1、第2印刷ユニット10、12が、前記図4に示した一般的なグラビア印刷機と実質上同一であるため、その説明を省略する。
【0026】
本実施形態の見当制御装置では、第2印刷ユニット12の出側に設置されている見当センサ26から入力される見当ずれ量に基づいて、見当制御の演算を行う制御演算部28と、該演算部28による演算結果に基づいて、コンペンセータロール22を見当ずれがない位置に移動させる駆動制御部30とを有する見当制御部32を備えている。
【0027】
又、この見当制御装置には、定常速度で印刷中に前記見当制御部32による自動制御を入れたり切ったりする制御入・切部34が設置され、該制御入・切部34が、印刷機全体を制御するための本機制御部36から入力される、印刷速度を定常速度から降速させる指令信号に連動して、前記自動制御を切り、その時の位置にコンペンセータロールを保持するようになっている。
【0028】
更に、上記見当制御装置には、上記のような降速指令信号が上記本機制御部36から出力されると同時に、降速前の印刷速度を目標定常速度として記録しておく速度記録部38が設置され、前記制御入・切部34が、昇速後の印刷速度と、該記録部38に記録されている前記目標定常速度とが一致したか否かを判定し、一致した後に前記自動制御を入れるようになっている。
【0029】
次に、本実施形態の作用を、図2に示すタイムチャートを参照しながら詳細に説明する。この図2は、前記図5のタイムチャートに相当する印刷の中断を前提にしたタイムチャートであるため、同一意味のタイミングについては同一の記号を用いている。
【0030】
本実施形態では、印刷物の生産中に機械を停止させて中断する際、降速前に見当の自動制御が自動的に切れるようにすることにより、その時の見当が合っている位置にコンペンセータロール22を保持すると同時に、その時の生産速度(定常速度)を記録しておき、中断後に中断前と同一の目標定常速度に達したら自動的に自動制御が入るようにすることにより、該制御再開後すぐに見当があった状態にできる。
【0031】
即ち、印刷を中断するために降速する前のTa 時点で、作業者が本機制御部36の図示しない降速指令用ボタンを押すと、それに連動して自動的に自動制御が切れ、コンペンセターロール22は定常速度で見当が合っている位置に停止し、保持されると同時に、前記速度記録部38にその時の印刷速度が記録され、その後T1 時点で降速を開始する。
【0032】
T1 時点では既に自動制御が切れてコンペンセータロール22の位置は固定されているため、降速中の印刷ユニット間のウェブ張力の変動によって色間見当が直線的に大きくずれ、途中で一定になって停止している。
【0033】
従って、中断後の再スタート時点T4 においては、見当は大きくずれた状態にあるが、コンペンセータロール22が既に定常速度で見当が合っている位置に保持されているため、刷出時に行う手動操作による見当合せ(図5に示したA時間)を行うことなく、低速の刷出印刷の後、T5 時点で昇速を開始する。
【0034】
昇速時には、前記制御入・切部34で、昇速中の印刷速度が前記速度記録部38に記録されている降速前の速度と一致したと判定されたT5 時点で昇速を停止する。この昇速中は、コンペンセータロール22が降速前の位置に保持されているため、見当ずれは直線的に減少し、印刷速度が定常速度に一致した時点で完全に0になる。
【0035】
上記のように、制御入・切部34で目標の定常速度に達したと判定されると、自動的に前記見当制御部32による自動制御が入り、通常の生産(印刷)が再開される。但し、実際には、図示は省略してあるが、印刷速度が上記定常速度に一致した直後は若干張力が変動しているため、T6 時点より、例えば2、3秒程度経過した後のTb で、自動的に制御が入るようにしてある。
【0036】
以上詳述した如く、本実施形態によれば、印刷中に見当が合っている状態から降速する際に、その直前に見当制御部32の制御を自動的に切ることにより、コンペンセータロール22の位置を同速度で見当が合っている位置に保持することができると共に、印刷再開後は、前回の生産速度まで昇速した時点で、見当制御部32による自動制御を自動的に入れることにより、見当が合っている状態に復元され、そのまま見当の自動調整を開始することができる。
【0037】
従って、前記図5に示した従来法に比べ、従来は必要であった刷出時の手動操作が不要になると共に、見当が安定するに要したTb からT7 時点までのC時間を短縮することができるため、印刷再開時の印刷ロスを大幅に削減することができ、その結果生産性を向上することができる。
【0038】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に示したものに限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0039】
例えば、前記実施形態では印刷の中断に本発明を適用する場合を示したが、印刷中に印刷速度を短時間だけ変更する場合に、本発明を適用してもよい。具体的には、印刷中に版胴表面に汚れ等が付着したために、一旦速度を下げてその除去処理を行った後、中断させることなく再度速度を上げる場合に、速度を下げる直前に本発明によりコンペンセータロールをその時の位置に保持し、その後再度目標定常速度に昇速した後に自動制御を入れることにより、素早く見当を復帰させることができる。
【0040】
又、前記実施形態では降速前の定常速度と昇速する目標定常速度が同一である場合を示したが、定常印刷速度が異なると見当が合うコンペンセータロールの位置も微妙に異なることが多いため、この場合は完全に見当は合わないかも知れないが、通常の生産に使用する、例えば100m/分以上の定常速度であれば十分に自動制御可能範囲に収まるので、再スタートの印刷速度が中断前の印刷速度と異なっていてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、印刷中断後や印刷速度の降速後に昇速させて定常速度の印刷を再開する際に生じる見当ずれ不良印刷を大幅に削減できるため、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態の見当ずれ制御装置の要部を示す概略構成図
【図2】本実施形態による印刷中断前後における印刷速度、ウェブ張力、見当ずれ量、コンペンセータロール位置の経時変化を示すタイムチャート
【図3】印刷の見当ずれを概念的に示す説明図
【図4】従来の一般的な多色刷印刷装置の要部を示す概略構成図
【図5】従来の印刷装置による印刷中断前後における印刷速度、ウェブ張力、見当ずれ量、コンペンセータロール位置の経時変化を示すタイムチャート
【符号の説明】
10…第1印刷ユニット
12…第2印刷ユニット
14、18…版胴
16、20…圧胴
22…コンペンセータロール
24…ガイドロール
26…見当センサ
28…制御演算部
30…駆動制御部
32…見当制御部
34…制御入・切部
36…本機制御部
38…速度記録部
Claims (5)
- 連続的に搬送されるウェブに2以上の印刷ユニットにより順次印刷する際、隣接する2つの印刷ユニットによりそれぞれ印刷された絵柄について検出された見当ずれ量に基づいて、該両印刷ユニット間に配設されているコンペンセータロールを移動させ、該両印刷ユニット間のウェブ長さを自動的に調整して見当を自動制御する見当制御方法において、
定常速度で印刷中に印刷速度を降速する際、降速前に前記自動制御を切って、コンペンセータロールをその時の位置に保持し、
その後に昇速する際、目標定常速度に達した後、前記自動制御を再度入れることを特徴とする見当制御方法。 - 請求項1において、
印刷速度を降速する際、降速後に印刷機を停止させて印刷を中断することを特徴とする見当制御方法。 - 請求項1又は2において、
降速前の定常速度が、昇速後の目標定常速度と同一であることを特徴とする見当制御方法。 - 連続的に搬送されるウェブに順次印刷する2以上の印刷ユニットと、隣接する2つの印刷ユニットによりそれぞれ印刷された絵柄について見当ずれを検出する見当センサと、該センサにより検出された見当ずれ量に基づいて、該両印刷ユニット間のウェブの調整長さを算出すると共に、該調整長さに応じて該両印刷ユニット間に配設されているコンペンセータロールを移動させて見当を自動制御する見当制御手段を備えた見当制御装置において、定常速度で印刷中に前記見当制御手段による自動制御を入れたり切ったりする制御入・切手段が設置されていると共に、
該制御入・切手段が、印刷速度を定常速度から降速させる指令入力に連動して、前記自動制御を切るようになされ、且つ、その後の昇速時に印刷速度が目標定常速度に達した後、前記自動制御を入れるようになされていることを特徴とする見当制御装置。 - 請求項4において、
降速前の印刷速度を目標定常速度として記録しておく速度記録手段が設置されていると共に、
前記制御入・切手段が、昇速後の印刷速度と、記録されている前記目標定常速度とが一致した後に、前記自動制御を入れるようになされていることを特徴とする見当制御装置。
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