JP3963953B2 - 可撓性グリースシール用の弾性コポリエーテルエステル組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、コポリエーテルエステル組成物を含む自動車のベローズに関する。
コポリエーテルエステル組成物は、例えば、それから作られる物品が頻繁に変形に付される場合に使用される。これに関して非常によく知られた適用は、駆動および伝動軸、かじ取柱およびサスペンジョン部品ならびにシーリングリングを保護するためのベローズである。かかる適用では、材料もしばしばまたは連続的に油またはグリースなどの潤滑剤に接触することになる。コポリエーテルエステル組成物が油およびグリースの影響に対して耐性を有することは、比較的複雑な形での該組成物の加工性が簡単であることと並んで、広く使用される理由の一つである。自動車の、中でもいわゆるCV(定速)ジョイントの継続した小形化のため、摩擦および潤滑工学に関するより高度の要求を満たすための改善された潤滑剤の需要がある。このための新規潤滑剤が開発されており、それは、自動車の継続した開発に伴うより高い室温ですら十分機能するものである。
しかし、今回、高められた作用温度では、これらの新しく開発された潤滑剤が、現在一般的である熱可塑性エラストマー組成物から作られるシーリングベローズの老化をかなり早め、その結果、裂け始めがすぐに生じ、次いで、曲げ点での急速な引裂の伝達および潤滑剤の早すぎる漏れが生じる。
そこで、本発明の目的は、該組成物によって得られる物品からの潤滑剤の早すぎる漏れが、新規潤滑剤を使用したより過酷な条件下でも回避される熱可塑性エラストマー組成物を含む自動車のベローズを提供することである。
そこで、この目的は、少なくとも1個のアルキレングリコールおよび少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸から誘導される硬質セグメントならびに少なくとも1個のポリアルキレンオキシドグリコールおよび少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸から誘導される軟質セグメントで構成される少なくとも2個のコポリエーテルエステルAおよびBの混合物を含むコポリエーテルエステル組成物によって達成され、ここで、Aにおける軟質セグメントXの濃度およびBにおける軟質セグメントYの濃度はコポリエーテルエステルに対して30〜65重量%であり、XおよびYの分子量Mは500〜3000であり、かつ
Figure 0003963953
であることが見いだされた。
コポリエーテルエステルの混合物は米国特許第4,751,132号、特開昭59-05851および特開昭61-203165から公知である。米国特許第4,751,132号の混合物は、少なくとも75重量%の軟質セグメントを含むコポリエーテルエステルを一成分として含むが、融点が低すぎ、機械的特性もよくない。特開昭59-05851のコポリエーテルエステル混合物は、40〜90:60〜10の重量比の2個のコポリエーテルエステルAおよびBから成り、AおよびBは各々、45〜70および60〜85重量%の同一の軟質セグメントを含む。この組成物も、程度はより小さいが、米国特許第4,751,132号の組成物の欠点を示す。
特開昭61-203165は、2個のコポリエーテルエステルAおよびBの混合物を開示しており、AおよびBは10〜60重量%の軟質セグメントを含み、Aにおける軟質セグメントの濃度はBにおける軟質セグメントの濃度より2〜20重量%高い。実施例では、AおよびBにおける軟質セグメントの分子量は同じである。流動性は、個々のコポリエーテルエステルの流動性に対して改善されており、曲げ疲労挙動は、個々のコポリエーテルエステルの挙動の間にある。
非常に驚いたことに、かなり改善された曲げ疲労挙動が本発明に係るコポリエーテルエステル組成物によって得られる。
本発明に係る組成物のコポリエーテルエステルはその技術の現状であり、例えば”Encyclopedia of Polymer Service and Engineering”,Vol.12, pp.75-117(1988)に記載されている。
アルキレンジオールの例として、炭素数2〜12、好ましくは2〜4のアルキレンジオールを挙げることができる。芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル酸、好ましくはテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびジフェニルジカルボン酸が挙げられる。好ましくは、ジカルボン酸がテレフタル酸もしくはテレ−およびイソフタル酸の少なくとも80:20のモル比の混合物、ナフタレンジカルボン酸または4,4’−ジフェニルジカルボン酸もしくは4,4’−ジフェニルジカルボン酸およびテレフタル酸の混合物である。硬質セグメントの分子量は、広い範囲内で変わり得る。例えば400〜4000であり、好ましくは600〜2500である。
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、例えばポリ(プロピレンオキシド)グリコールである。ポリ(ブチレンオキシド)グリコールが好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールセグメントの分子量は、500〜3000、好ましくは600〜2500である。コポリエーテルエステルAおよびBのポリ(アルキレンオキシド)グリコールセグメントの分子量は、少なくとも400、好ましくは少なくとも500、さらに好ましくは少なくとも750の差で異なる。
AおよびBにおける軟質セグメントの濃度は、30〜65重量%、好ましくは35〜60重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。好ましくは、AおよびBにおける軟質セグメントXおよびYの濃度は各々、AおよびBにおける硬質セグメントの数平均分子量が5倍以下、好ましくは3倍以下の大きさで異なるように選択される。さらに好ましくは、AおよびBにおける硬質セグメントの数平均分子量はほとんど同じである。
A:Bの重量比は広い範囲内で変わり得る。例えば0.1〜10、好ましくは0.25〜4、さらに好ましくは0.5〜2である。
老化過程において非常に驚いたことに、本発明の老化したサンプルでは離層が生じることが分かった。このことは、混合されていない2つの相の存在を示す。本発明によれば、これが、本発明に係る組成物の優れた挙動を説明する。
この理由のため、本発明は、少なくとも部分的に混合されていない少なくとも2個のコポリエーテルエステルAおよびBを含むコポリエーテルエステル組成物もカバーする。部分的に混合されない条件は、非常に強く攪拌する条件下ですらAおよびBが相溶性でないことによって引き起こされ得る。他方、完全な混合は、例えば粘度が互いにほんのわずかに異なるコポリエーテルエステルAおよびBを選択することにより、または非常に弱い攪拌条件を選択することにより、または両方を選択することにより、意図的に回避することができる。
また付随的には、多官能性化合物を混入することにより、または、鎖の延長を引き起こすジイソシアネートを混入することにより、AおよびBの粘度を制御することも可能である。制御された架橋度を保証するかかる多官能性化合物の周知の例としては、トリスメチロールプロパン(TMP)が挙げられ、これは、ポリエーテルエステルに対して0.05〜5.0重量%、好ましくは0.05〜3.0重量%の濃度で使用される。
最後の場合、関与するコポリエーテルエステルは、原則的には、完全に混和性であってもよいが、AおよびBは意図的に組成物の共連続相において混合される。
さらに、本発明は、本発明に係る組成物によって得られる物品もカバーする。
本発明はまた、屈曲における動的変形条件下でのこの物品の使用方法もカバーする。
特に、高められた温度で油およびグリースと接触する場合の動的変形下での使用が有利である。技術の現状による物品に対する最も大きい利点は、少なくとも125℃の温度で得られる。
本発明に係る組成物は、好ましくは、0.05〜2重量%、さらには0.1〜1.5重量%の酸化安定剤、例えば立体障害のあるフェノールまたは第二アミンも含む。非常に適するのは、アミドを含むポリフェノールである。
本発明に係る組成物はまた、通常のフィラーを、好ましくは少量で、すなわちフィラーを含む組成物の50重量%未満で、さらに好ましくは35重量%未満で、最も好ましくは25重量%で含む。フィラーの例としては、カーボンブラック、タルク、粘土、着色剤が挙げられる。所望ならば、他の添加物も効果的な量で存在させることができ、例えば、難燃効果を有する添加物、例えばメラミン、メラミン化合物(例えば、メラミンシアヌレートまたはメラミンホスフェート)、ハロゲン化化合物(例えば、ポリブロモスチレン)など、ならびに加工助剤、例えば離型剤が挙げられる。所望ならば、これらの添加剤は、少なくとも2個のコポリエーテルエステルに異なる濃度で存在させてもよく、所望により、成分AおよびBの一方のみに添加物を存在させてもよい。好ましくは、AおよびBの両方が酸化防止剤を含む。
本発明に係る組成物は、熱可塑性ポリマーを溶融混合するための通常の装置を使用して構成成分から得ることができる。同様の装置の例としては、混練機、押出機およびミキシングロールが挙げられる。溶融混合は、好ましくは、その前に、通常は顆粒形で存在する成分AおよびBならびに所望により添加物の固相混合が行われる。好ましくは、混合は、温和な条件下、すなわち、生じるせん断力が好ましくは低く保持される条件下で行う。溶融混合は、好ましくは酸素および水を排除して行う。
本発明に係る物品は、溶融形からの成形によって得られる。好ましくは、その場合、射出成形またはインフレート法を使用する。インフレート法の場合は、所望により、固体状態の後凝縮により組成物の粘度を増加させる。射出成形が最も好ましく、複合形の場合は、所望によりその後に2以上の射出成形部品を溶接して全体とする。
本発明を下記実施例および比較例を参照して説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
グリースエージング
組成物から作った試験ロッドを、空気循環炉に置いたグリースを含むビーカーにロッドを浸すことにより、グリースエージング試験に付した。
一定時間後、多数のロッドをグリースから取り出し、イソオクタンで約30秒間洗浄することにより清浄し、ティッシュペーパーでふいた後、静的および動的負荷試験に付した。吸収されたグリース量も測定した。試験ロッドは、全ての材料を140℃で4時間乾燥させた後、Arburg 9射出成形機を使用した射出成形により得た。射出成形条件は、成形温度50℃;バレル温度200〜220℃、最大圧;サイクル時間40秒であった。
静的負荷試験
引張強度および破断時の伸びをISO R 527に従って23℃で測定した。記載した値は全て、少なくとも3個(ISO S 2)の試験ロッドの平均である。
動的負荷試験
長さが120mm(ISO 132-1983(E))のいわゆる「デマチア」試験ロッドをクランプに挟み、5Hzの周期数で負荷をかけた。負荷は屈曲に基づき、試験ロッド全体は中心としてのあらかじめ規定された幾何学的に狭い部分(円形溝)を持って折り畳んだ。
使用したグリース
Dow Corning Europe製のMolykote VN2461C:主としてリチウム石鹸グリースをベースとし、硫化モリブデンも含み、最大使用温度が130℃であるグリース。
Carl Bechem GMBH(ドイツ)製のBerutox GKN HTBJ(商標):ポリ尿素グリースをベースとし、鉱物/合成塩基性油および流化モリブデンを含み、最大使用温度が160℃であるグリース。
コポリエーテルエステルAおよびB
これらは、オートクレーブ中で化合し、重合が開始するまで加熱することにより製造した。
Figure 0003963953
攪拌機が毎分30回の一定した回転モーメントに達するまで反応器の中身を攪拌しながら、重縮合を約3時間続けた。重縮合の最終温度は、242.7±1.2℃であった。AおよびBのm−クレゾールにおける相対粘度ηrelは、各々、2.16および2.58であり、溶融温度は各々、191.3および190.4℃であった。
コポリエーテルエステルC
Du Pont de Nemours, Lux.製のHytrek 8105(商標):pTHF1400をベースとし、硬質セグメントとしてのポリブチレンテレフタレート/イソフタレートコポリエステルおよび鎖延長剤としてのMDIを含むコポリエーテルエステル。ショアー硬度は42Dであった。相対粘度は4.20であった。ベローズおよび他の用途には吹込成形が好ましい。
実施例Iおよび比較例A〜C
コポリエーテルエステルAおよびBを上記したように一軸スクリュー押出機を使用して50/50重量比で混合し、安定化のために、1.0重量%のNaugard 445(商標)および0.5重量%のRewopan IM-OA(商標)を添加した(全ての組成物は、マスターバッチによって添加されるカーボンブラックを含んでいた。)
得られた押出顆粒を、真空下、140℃で約2時間、回転乾燥機中で乾燥させ、次いで、少なくとも3.70の相対粘度が得られるまで、180℃での後凝縮に付した。これらのA/B 50/50組成物のショアーD硬度は40であった。
コポリエーテルエステルAを83.3/16.7の重量比でポリブチレンテレフタレートと混合し、ショアーD硬度が38である組成物Dにし、後凝縮によって相対粘度を3.80にした。
エージング試験用の試験ロッドを各種組成物およびコポリエーテルエステルから射出成形した。表3にその試験結果を示す。
125℃で種々のグリースに14日間さらした場合の動的疲労挙動に対する影響を種々の材料に関して示す。動的負荷下でのエージングの解析のために、多数の視覚検査を示す。
略号および商品名の説明
PTHFはポリテトラヒドロフランを表す。
1000および2000は、PTHFの分子量を示す。
MDIは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートである。
Naugard 445(商標)は、Uniroyal Chemical製の芳香族アミンである。
Rewopon IM-OA(商標)は、Rewo製の二置換イミダゾリン酸化防止共安定剤である。
Vulcanox DDA(商標)は、Bayer製の芳香族アミン熱安定剤である。
Irganox 1330(商標)は、Ciba-Geigy製の立体障害のあるフェノールである。
Figure 0003963953
Figure 0003963953
表2の結果は、本発明(実施例I)に係る組成物A/Bが組成物Dおよび未混合コポリエーテルエステルBおよびC(比較例A〜C)よりもグリースと接触した後の長期疲労挙動が良好であることを示す。この結果は、例えばMolykote VN 2461Cにおいて、本発明に係る組成物は1,000サイクルの後すでに何らかの攻撃を受けたが、未混合コポリエーテルエステルは攻撃を受けなかったという事実にもかかわらず得られた。
実施例IIおよび比較例DおよびE
組成物A/BおよびDならびにコポリエーテルエステルCを使用して、吹込成形によりベローズを製造し、該ベローズは、実際の条件下での促進耐久試験に付した。
この目的のために、ベローズをCVTジョイントの上に載せ(定速伝達ジョイント)、駆動軸を21.5°の角度でセットした。
関与するグリースをベローズに充填した後、軸を100℃および1500回転/分の速度で駆動させ、ベローズの疲労のモーメントを測定した。自動車産業では、このような条件下では、一般に、350時間の寿命で十分であると考えられる。
結果を表3に示す。
Figure 0003963953
ベローズが少なくとも30.106の断面変形に耐えなければならないこの実際の試験でも、本発明に係る組成物から得られたベローズは、その技術の現状にかかるベローズよりも優れていることが分かった。

Claims (4)

  1. 少なくとも1個のアルキレンジオールおよび少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸から誘導される硬質セグメントならびに少なくとも1個のポリアルキレンオキシドグリコールおよび少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸から誘導される軟質セグメントで構成される少なくとも2個のコポリエーテルエステルAおよびBの混合物を含むコポリエーテルエステル組成物を含む、自動車のベローズにおいて、Aにおける軟質セグメントXの濃度およびBにおける軟質セグメントYの濃度がコポリエーテルエステルに対して30〜65重量%であり、XおよびYの分子量が500〜3000であり、かつ
    Figure 0003963953
    である自動車のベローズ。
  2. 組成物におけるAおよびBの重量比が0.1〜10であることを特徴とする請求項1に記載の自動車のベローズ。
  3. 組成物におけるAおよびBの重量比が0.25〜4であることを特徴とする請求項1に記載の自動車のベローズ。
  4. 組成物におけるAおよびBの重量比がが0.5〜2であることを特徴とする請求項1に記載の自動車のベローズ。
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