JP3963028B2 - 含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋重合後に高い表面硬度、良好な密着力及び低屈折率を示し、反射防止膜や光ファイバーのクラッド材料等の原材料成分として利用できる含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルに関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素原子を有する化合物は低屈折率を示すため反射防止膜や光ファイバーのクラッド材料等への使用が可能である。いずれも屈折率の低下に伴い性能は向上する。例えば含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの重合体、他モノマーとの共重合体、テトラフルオロエチレン重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体又はフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等の光ファイバーへの応用が提案されている(特開昭59−84203号公報、特開昭59−84204号公報、特開昭59−98116号公報、特開昭59−147011号公報、特開昭59−204002号公報)。
【0003】
最近ではアクリル酸含フッ素アルキルエステル重合体、メタクリル酸含フッ素アルキルエステル重合体、又は商品名「サイトップ」(旭硝子株式会社製)、商品名「テフロンAF」(アメリカ・デュポン社製)等の非結晶性ペルフルオロ樹脂等の溶媒可溶性の低屈折率含フッ素重合体の減反射フィルムへの応用が試みられている(特開昭64−16873号公報、特開平1−149808号公報、特開平6−115023号公報)。
【0004】
しかし、これらの含フッ素樹脂はいずれも非架橋性樹脂であり硬化後の表面硬度が低く、耐摩耗性に劣り、密着力も不十分であるという欠点がある。
【0005】
表面硬度を向上させるために含フッ素単官能(メタ)アクリル酸エステル又は含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステルと、非含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルとの適当な配合から得られる架橋重合体が提案されている(特開昭58−105943号公報、特開昭62−199643号公報、特開昭62−250047号公報)。これらの架橋重合体は、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル中のフッ素含量や非含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルとの配合比を調整することで、ある程度の範囲内で低屈折率と表面硬度を調節しうる。しかし、含フッ素単官能(メタ)アクリル酸エステルと多官能(メタ)アクリル酸エステルとは相溶性が悪く任意の割合では相溶しない。そのため十分な低屈折率を達成できない。一方、含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステルと多官能(メタ)アクリル酸エステルとは任意の割合で相溶する。しかし屈折率を下げるために架橋重合体中のフッ素原子含量を増やすと架橋密度が低下してしまう。そのため低屈折率と表面硬度とを満足に両立することはできず、光ファイバー及び減反射フィルムへ表面硬度を付与することは困難である。更に密着力にも問題がある。
【0006】
密着力の向上、並びに他の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの原材料としての使用を目的として、含フッ素ヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステルが提案されている(特開平4−321660号公報、特開平4−356443号公報、特開平4−356444号公報)。しかし、これらは単官能(メタ)アクリル酸エステルであるので、硬化後の表面硬度が低く、耐摩耗性に劣るという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低屈折率、表面硬度及び密着力を満足しうる含フッ素化合物を与える含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記式(1)で表される含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルが提供される。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なる基であって、水素原子、アクリロイル基又はメタクリロイル基を示し、且つR1及びR2の少なくとも一方及びR3及びR4の少なくとも一方は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を示す。Rは、フッ素原子を2以上有する炭素数2〜12のフルオロアルキレン基を表す。)
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、前記式(1)で表すことができる。具体的には、R1及びR2の一方がアクリロイル基又はメタクリロイル基、他方が水素原子を表し、R3及びR4の一方がアクリロイル基又はメタクリロイル基、他方が水素原子を表す、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステル(以下ジエステルAと称する);R1、R2、R3及びR4のうち1個は水素原子を、残る3個はアクリロイル基又はメタクリロイル基を表す、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する含フッ素三官能(メタ)アクリル酸エステル(以下トリエステルAと称する);及びR1、R2、R3及びR4が同一又は異なる基であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す、含フッ素四官能(メタ)アクリル酸エステル(以下テトラエステルAと称する)である。式(1)において、Rの炭素数が12を超えると製造が困難である。
【0012】
ジエステルAとしては、1,8−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,7−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,7−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、2,7−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,8−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、2,8−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,10−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,11−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,10−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、2,10−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,12−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン、1,11−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,12−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン又は2,11−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,12−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等を好ましく挙げることができる。
【0013】
トリエステルAとしては、1,2,8−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−7−ヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,2,7−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−8−ヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,2,9−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−8−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,8−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−9−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,10−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−9−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,9−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−10−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,11−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−10−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,10−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−11−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,12−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−11−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン又は1,2,11−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−12−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等を好ましく挙げることができる。
【0014】
テトラエステルAとしては、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン−1,2,7,8−テトラオール、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン−1,2,8,9−テトラオール、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン−1,2,9,10−テトラオール、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン−1,2,10,11−テトラオール又はテトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン−1,2,11,12−テトラオール等を好ましく挙げることができる。これらジエステルA、トリエステルA及びテトラエステルAは低屈折率樹脂等に使用する際に単独若しくは混合物として用いられる。
【0015】
ジエステルAは、例えば下記式(2)で表わされる含フッ素ジエポキシド(以下、ジエポキシドBと称す)と0.8〜5当量の(メタ)アクリル酸とを、触媒の存在下、通常の開環反応により反応させる方法等により製造することができる。
【0016】
【化3】
【0017】
(式中Rはフッ素原子を2以上有する炭素数2〜12のフルオロアルキレン基を表わす。)
トリエステルA又はテトラエステルAは、例えば(a)まず前記ジエポキシドBと、2当量の(メタ)アクリル酸とを、触媒の存在下、通常の開環反応により反応させてジエステルAを生成させ、(b)次いで得られたジエステルAと(メタ)アクリル酸クロリドとをエステル化反応させる2工程の反応等により製造できる。
【0018】
前記ジエポキシドBとしては、例えば1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロエタン、1,3−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロプロパン、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン、1,5−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロペンタン又は1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロヘキサン等が好ましく挙げられる。
【0019】
前記反応(a)におけるジエポキシドBと(メタ)アクリル酸とを反応させる際の仕込み比は、ジエポキシドB 1molに対して(メタ)アクリル酸1.6〜10mol、好ましくは2.0〜3.6molが望ましい。反応温度は40〜200℃、特に80〜120℃が望ましい。反応時間は1〜48時間、特に2〜12時間が望ましい。
前記反応(a)に用いる触媒としては、例えばトリエチルアミン又はベンジルジメチルアミン等の3級アミン;テトラエチルアンモニウムブロマイド又はテトラメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。触媒の添加量は、反応混合物全量中0.001〜5.0重量%、特に0.01〜2.5重量%が望ましい。
前記反応(a)においては、反応時の重合防止のために重合禁止剤、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル又はtert-ブチルカテコール等を添加することが望ましい。重合禁止剤の添加量は、反応混合物全量中0.001〜2.0重量%が、特に0.005〜0.2重量%が望ましい。
【0020】
前記反応(a)終了後、生成したジエステルAを含む混合物に、必要に応じて各種の処理を行い、高品質のジエステルAを得ることができ、また、トリエステルA又はテトラエステルAの製造において、次の(b)工程に供する前にも同様な処理を行うことができる。処理としては例えば、過剰の(メタ)アクリル酸、過剰の重合禁止剤あるいは触媒等を除去するために、反応混合物を、クロロホルム、塩化メチレン又はトリフルオロメチルベンゼン等に溶解し、水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液で洗浄する処理等が挙げられる。必要に応じて減圧蒸留等により精製しても良い。減圧蒸留の際には重合防止のために重合禁止剤、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル又はtert-ブチルカテコール等の添加が望ましい。添加量は、反応混合物に対して0.001〜2.0重量%、特に0.005〜0.2重量%が望ましい。
【0021】
前記反応(a)によって得られるジエステルAは、下記式(3)〜(5)(式中R5は(メタ)アクリロイル基を示し、Rは前記ジエポキシドBのものと同一である)で表わされる3種類の異性体の混合物となる。これら異性体の混合物はそのまま使用しても、分離して使用しても良い。
【0022】
【化4】
【0023】
前記反応(b)におけるジエステルAと(メタ)アクリル酸クロリドとの反応混合比は、トリエステルAを製造する場合、ジエステルA1molに対して(メタ)アクリル酸クロリド0.8〜3mol、特に1.0〜2.0molが望ましい。一方、テトラエステルAを製造する場合には、ジエステルA 1molに対して(メタ)アクリル酸クロリド1.6〜10mol、特に2.0〜4.0molが望ましい。
前記反応(b)において、反応で生じる塩酸を捕捉するために、トリエチルアミン又はベンジルジメチルアミン等の3級アルキルアミン、若しくはピリジン等の塩基が添加できる。塩基の添加量は、トリエステルAの製造の場合、ジエステルA 1molに対して0.8〜3.0mol、特に1.0〜2.0molが望ましい。一方、テトラエステルAの製造の場合、ジエステルA 1molに対して1.6〜10.0mol、特に2.0〜4.5molが望ましい。
前記反応(b)は、適切な溶媒中で行うのが好ましい。適切な溶媒としては、例えばクロロホルム、塩化メチレン又はトリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。溶媒は、ジエステルA、(メタ)アクリル酸クロリド及び必要に応じて添加する塩基の総量100重量部に対して20〜2000重量部、特に100〜500重量部の範囲で用いるのが望ましい。
前記反応(b)の反応温度は−20〜20℃、特に−10〜10℃が望ましく、反応時間は0.1〜12時間、特に0.5〜2時間が望ましい。
【0024】
前記反応(b)終了後、生成したトリエステルA又はテトラエステルA、未反応物、副生成物、捕捉剤の塩酸塩及び溶媒等の混合物に、必要に応じ各種処理を行い、所望のトリエステルA又はテトラエステルAが得られる。処理としては例えば、反応系中の過剰の(メタ)アクリル酸クロリドを分解するためにメタノール又はエタノール等のアルコール類若しくは水等を少量添加する処理、希塩酸等の酸性水溶液で洗浄する処理、減圧蒸留又はカラムクロマトグラフィー等により精製する処理が挙げられる。減圧蒸留を行う際には重合防止のために重合禁止剤、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル又はtert-ブチルカテコール等の添加が望ましい。添加量は、反応後の混合物全量中0.001〜2.0重量%、特に0.005〜0.2重量%が望ましい。
【0025】
前記反応(b)によって得られるトリエステルAは、下記式(6)及び(7)で表される2種類の異性体の混合物(式中R5は、前記R5と同様である)となる。これらの異性体の混合物は、各種用途に使用する場合には、そのまま使用しても、また分離して使用しても良い。
【0026】
【化5】
【0027】
本発明の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、そのまま架橋重合により硬化させて耐摩耗性、密着性等に優れた硬化被膜等とすることができるが、ジエステルA又はトリエステルAはさらに反応工程を行い、他の含フッ素多官能アクリレートとした後に架橋重合させても良い。例えば本発明のジエステルA又はトリエステルAと、イソシアネート化合物等とを反応させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート等を合成し、さらにこれらを架橋重合により硬化させて硬化被膜を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、複数の(メタ)アクリロイル基を有するので、架橋重合により硬化させた際に三次元網目構造を呈し、表面硬度が高く耐擦傷性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性等に優れた硬化被膜が得られる。また水酸基を有するジエステルA及びトリエステルAは、硬化被膜の密着力を良好にしうる。得られる硬化物は高い光透過性と低屈折率を有している上に密着性にも優れ、反射防止膜、光ファイバーのクラッド材料等の耐摩耗性、密着性等を要求される低屈折率樹脂の材料として有用である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1−1
撹拌機、冷却管、ガス導入管を備えた反応器に、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)、アクリル酸216.2g(3mol)、テトラエチルアンモニウムブロマイド4.4g、tert−ブチルカテコール0.44gを仕込み、油浴中で徐々に加熱して95〜100℃とし、同温度で4時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液を500mlのクロロホルムに溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で3回洗浄した。クロロホルムを減圧留去し、得られた黄色結晶を更に酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:2)を展開溶媒としてカラムクロマトグラフィにより精製することで生成物A 417.1g(0.91mol)を得た。生成物Aは次の式(8)に示す構造を有する化合物であった。
XCH2(CF2)4CH2X ・・・(8)
式中の2つのXは同一又は異なる基で、下記式(9)で表される基であるX1、又は下記式(10)で表される基であるX2である。生成物Aは3種類の異性体、即ち2つのX1を持つもの、2つのX2を持つもの、及びX1とX2とを1つづつ持つものの混合物であった。
【0030】
【化6】
【0031】
以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS)
X1:6.47(dd,1H);6.17(dd,1H);5.91(dd,1H);4.50〜4.38(m,1H);4.30,4.20(dABq,2H);2.45(d,1H)
X2:6.42(dd,1H);6.14(dd,1H);5.86(dd,1H);5.48〜5.39(m,1H);3.82〜3.76(m,2H);2.76(t,1H)
強度比よりX1:X2=85:15
XCH 2 CF2−:2.73〜2.28(m,2H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−110.20,−120.44
Exact MS:測定値;458.0985
理論値;C16H18F8O6:458.0976。
【0032】
実施例1−2
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロエタン214.2g(1mol)を用いた以外は実施例1−1と同様にして、下記式(11)に示す構造を有する生成物B 312.2g(0.87mol)を得た。
XCH2(CF2)2CH2X ・・・(11)
式中2個のXは同一又は異なる基で、前記X1又はX2である。生成物Bは3種類の異性体、即ち2つのX1を持つもの、2つのX2を持つもの、及びX1とX2とを1つづつ持つものの混合物であった。
【0033】
以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS)
X1:6.46(dd,1H);6.17(dd,1H);5.91(dd,1H);4.50〜4.38(m,1H);4.29,4.19(dABq,2H);2.45(d,1H)
X2:6.42(dd,1H);6.14(dd,1H);5.86(dd,1H);5.47〜5.39(m,1H);3.81〜3.76(m,2H);2.75(t,1H)
強度比よりX1:X2=85:15
XCH 2 CF2−:2.72〜2.27(m,2H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−109.62
Exact MS:測定値;358.1034
理論値;C14H18F4O6:358.1039。
【0034】
実施例1−3
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロヘキサン414.2g(1mol)を用いた以外は実施例1−1と同様にして、下記式(12)に示す構造を有する生成物C 502.3g(0.90mol)を得た。
XCH2(CF2)6CH2X ・・・(12)
式中2個のXは同一又は異なる基で、前記X1又はX2である。生成物Cは3種類の異性体、即ち2つのX1を持つもの、2つのX2を持つもの、及びX1とX2とを1つづつ持つものの混合物であった。
【0035】
以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS)
X1:6.47(dd,1H);6.18(dd,1H);5.91(dd,1H);4.51〜4.38(m,1H);4.30,4.21(dABq,2H);2.45(d,1H)
X2:6.42(dd,1H);6.15(dd,1H);5.86(dd,1H);5.48〜5.40(m,1H);3.82〜3.76(m,2H);2.77(t,1H)
強度比よりX1:X2=85:15
XCH 2 CF2−:2.74〜2.28(m,2H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−112.42,−121.44,−123.18
Exact MS:測定値;558.0917
理論値;C18H18F12O6:558.0912。
【0036】
実施例2−1
撹拌機、冷却管及びガス導入管を備えた反応器に、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)、アクリル酸216.2g(3mol)、テトラエチルアンモニウムブロマイド4.4g及びtert−ブチルカテコール0.44gを仕込み、油浴中で徐々に加熱して95〜100℃とし、同温度で4時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液をクロロホルム500mlに溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で3回洗浄した。得られたクロロホルム溶液には、下記式(13)、(14)及び(15)に示す構造を有する化合物が存在しているものと考えられる。
【0037】
【化7】
【0038】
撹拌機、温度計、ガス導入管及び滴下ロートを備えた5リットル反応器に上記クロロホルム溶液及びトリエチルアミン152g(1.5mol)を仕込み、氷冷下でアクリル酸クロリド136g(1.5mol)をクロロホルム150mlに溶解して、滴下ロートから反応液の温度が5℃を超えないよう滴下した。滴下終了後氷冷のまま2時間撹拌した後、30mlのメタノールを添加し、さらに10分間撹拌した。クロロホルムを減圧留去し、得られた黄色結晶をさらに酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:4)を展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに溶媒を減圧留去することで目的生成物D 102.5g(0.20mol)を得た。生成物Dは、下記式(16)で示される生成物D1及び式(17)で示される生成物D2の混合物であった。1H−NMRの強度比より生成物D1:生成物D2は85:15であった。以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
(生成物D1)
【0039】
【化8】
【0040】
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.47(dd,1H);6.44(dd,1H);6.44(dd,1H);6.17(dd,1H);6.15(dd,1H);6.11(dd,1H);5.91(dd,1H);5.91(dd,1H);5.87(dd,1H);5.64〜5.60(m,1H);4.50〜4.38(m,1H);4.42,4.27(dABq,2H);4.30,4.20(dABq,2H);2.73〜2.28(m,4H);2.45(d,1H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−110.20,−120.44
Exact MS:測定値;512.1399
理論値;C19H20F8O7:512.1395
(生成物D2)
【0041】
【化9】
【0042】
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.44(dd,1H);6.44(dd,1H);6.42(dd,1H);6.15(dd,1H);6.14(dd,1H);6.11(dd,1H);5.91(dd,1H);5.87(dd,1H);5.86(dd,1H);5.64〜5.60(m,1H);5.48〜5.39(m,1H);4.42,4.27(dABq,2H);3.82〜3.76(m,2H);2.76(t,1H);2.73〜2.28(m,4H)。
【0043】
実施例2−2
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロエタン214.2g(1mol)を用いた以外は実施例2−1と同様にして生成物E 78.3g(0.19mol)を得た。生成物Eは、下記式(18)で示される生成物E1及び式(19)で示される生成物E2の混合物であった。1H−NMRの強度比より生成物E1:生成物E2は85:15であった。以下に得られた生成物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
(生成物E1)
【0044】
【化10】
【0045】
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.46(dd,1H);6.44(dd,1H);6.42(dd,1H);6.17(dd,1H);6.14(dd,1H);6.11(dd,1H);5.91(dd,1H);5.91(dd,1H);5.87(dd,1H);5.64〜5.60(m,1H);4.50〜4.38(m,1H);4.42,4.27(dABq,2H);4.29,4.19(dABq,2H);2.72〜2.28(m,4H);2.45(d,1H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−109.62
Exact MS:測定値;412.1154
理論値;C17H20F4O7:412.1145
(生成物E2)
【0046】
【化11】
【0047】
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.44(dd,1H);6.44(dd,1H);6.42(dd,1H);6.14(dd,1H);6.14(dd,1H);6.11(dd,1H);5.91(dd,1H);5.87(dd,1H);5.86(dd,1H);5.64〜5.60(m,1H);5.48〜5.39(m,1H);4.42,4.27(dABq,2H);3.81〜3.76(m,2H);1.75(t,2H);2.72〜2.27(m,4H)。
【0048】
実施例2−3
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロヘキサン414.2g(1mol)を用いた以外は実施例2−1と同様にして、生成物F 128.6g(0.21mol)を得た。生成物Fは、下記式(20)で示される生成物F1及び式(21)で示される生成物F2の混合物であった。1H−NMRの強度比より生成物E1:生成物E2は85:15であった。以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
(生成物F1)
【0049】
【化12】
【0050】
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.47(dd,1H);6.44(dd,1H);6.44(dd,1H);6.18(dd,1H);6.15(dd,1H);6.11(dd,1H);5.91(dd,1H);5.91(dd,1H);5.87(dd,1H);5.64〜5.60(m,1H);4.51〜4.38(m,1H);4.42,4.27(dABq,2H);4.30,4.21(dABq,2H);2.74〜2.28(m,4H);2.45(d,1H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−112.42,−121.44,−123.18
Exact MS:測定値;612.1011
理論値;C21H20F12O7:612.1017
(生成物F2)
【0051】
【化13】
【0052】
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.44(dd,1H);6.44(dd,1H);6.42(dd,1H);6.15(dd,1H);6.14(dd,1H);6.11(dd,1H);5.91(dd,1H);5.87(dd,1H);5.86(dd,1H);5.64〜5.60(m,1H);5.48〜5.40(m,1H);4.42,4.27(dABq,2H);3.82〜3.76(m,2H);2.77(t,1H);2.74〜2.28(m,4H)。
【0053】
実施例3−1
撹拌機、冷却管及びガス導入管を備えた反応器に、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)、アクリル酸216.2g(3mol)、テトラエチルアンモニウムブロマイド4.4g、tert−ブチルカテコール0.44gを仕込み、油浴中で徐々に加熱して95〜100℃とし、同温度で4時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液をクロロホルム500mlに溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で3回洗浄した。得られたクロロホルム溶液には、前記式(13)、(14)及び(15)で示される構造を有する化合物が存在していると考えられる。
【0054】
撹拌機、温度計、ガス導入管及び滴下ロートを備えた5リットル反応器に、上記クロロホルム溶液及びトリエチルアミン607.2gを仕込み、氷冷下でアクリル酸クロリド362g(4mol)をクロロホルム300mlに溶解して、滴下ロートから反応液の温度が5℃を超えないよう滴下した。滴下終了後氷冷のまま2時間撹拌した後、80mlのメタノールを添加し、さらに10分間撹拌した。クロロホルムを減圧留去し、得られた黄色結晶をさらに酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:4)を展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに溶媒を減圧留去することで、下記式(22)に示す構造を有する生成物G(テトラアクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7,−オクタフルオロデカン−1,2,9,10−テトラオール)134.6g(0.24mol)を得た。
【0055】
【化14】
【0056】
以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.44(dd,1H);6.44(dd,1H);6.15(dd,1H);6.11(dd,1H);5.91(dd,1H);5.87(dd,1H);5.64〜5.60(m,1H);4.42,4.27(dABq,2H);2.63〜2.50(m,1H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−110.21,−120.44
Exact MS:測定値;566.1195
理論値;C22H22F8O8:566.1187。
【0057】
実施例3−2
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロエタン214.2g(1mol)を用いた以外は実施例3−1と同様にして、下記式(23)、(24)及び(25)に示す化合物を経て、下記式(26)で示される生成物H(テトラアクリル酸−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン−1,2,7,8−テトラオール)105.4g(0.22mol)を得た。
【0058】
【化15】
【0059】
以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.45(dd,1H);6.44(dd,1H);6.16(dd,1H);6.11(dd,1H);5.92(dd,1H);5.87(dd,1H);5.65〜5.61(m,1H);4.42,4.28(dABq,2H);2.63〜2.51(m,1H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−109.63
Exact MS:測定値;466.1244
理論値;C20H22F4O8:466.1251。
【0060】
実施例3−3
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロヘキサン414.2g(1mol)を用いた以外は実施例3−1と同様にして、下記式(27)、(28)及び(29)に示す化合物を経て、下記式(30)で示される生成物I(テトラアクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン−1,2,11,12−テトラオール)159.9g(0.24mol)を得た。
【0061】
【化16】
【0062】
以下に得られた化合物の1H−NMR、19F−NMR及びExact MSの結果を示す。
1H−NMR(δ(ppm)CDCl3/TMS):6.44(dd,1H);6.43(dd,1H);6.15(dd,1H);6.10(dd,1H);5.91(dd,1H);5.86(dd,1H);5.64〜5.59(m,1H);4.41,4.27(dABq,2H);2.63〜2.49(m,1H)
19F−NMR(δ(ppm)CDCl3/CFCl3):−112.41,−121.44,−123.16
Exact MS:測定値;666.1114
理論値;C24H22F12O8:666.1123。
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