JP3962153B2 - 改良された防汚性を有する食品加熱加工器具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品加熱加工器具に関し、さらに詳しくは、ある種のフッ素樹脂フィルムを熱溶融接着するか、またはある種のフッ素樹脂塗料を塗布焼成して製造された、優れた防汚性を有する食品加熱加工器具に関する。ここで、食品加熱加工器具とは、フライパン、鍋、電気炊飯器の内釜、ホットプレート、パン焼型などの家庭用または業務用調理器具だけでなく、オーブンの窓、ガスレンジの天板など、食品を加熱加工する際に使用され、かつ加熱により、食材、調味料などが焦げ付く可能性のある物品すべてを含む。例えば、ガスレンジは、加熱調理中に鍋の中の煮汁が吹きこぼれ、そのままガスレンジ上に焦げ付くことがあり、このような加熱による焦げ付きが生じる可能性のあるすべての器具を含み、家庭用だけでなく業務用の厨房で使用される加熱器具も含む。
【0002】
【従来の技術】
従来より、フッ素樹脂またはフッ素樹脂フィルムを被覆した金属板、ガラス板などは優れた防汚性を有するものとして知られており、調理器具、ガスレンジ、コピーロールなどに幅広く用いられている。例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を主成分とする粉体フッ素樹脂をガラスに塗装溶着させた汚れ防止処理ガラスを窓ガラスとして用いた加熱調理器(特開平4−240133号公報)や、ガラス基板表面上にパーフルオロアルキル基を有するクロロシラン系界面活性剤からなる膜を設けた調理器具用の撥水・撥油性ガラス(特開平4−243934号公報)がある。また、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を用いた被覆方法も開発されている(特開平6−264000号公報)。
【0003】
フッ素樹脂またはフッ素樹脂フィルムを被覆した従来の食品加熱加工器具は、優れた防汚性を有しており、通常の汚れであれば簡単に取り去ることができる。しかしながら、焦げ付きによる汚れ、特に砂糖および醤油の焦げ付きによる汚れが落ちにくく、その汚れを無理に擦り取ることによって塗膜性能を損なうという問題があり、焦げ付きによる汚れを簡単に取り去ることができるフッ素樹脂加工の食品加熱加工器具の開発が所望されている。
【0004】
また、種々の新規なフッ素樹脂の開発も行われており、金属に対する腐食潜在性を有する不安定な末端基を含有しない改良されたPFAも開発されている(特開平3−247609号公報)。末端に不安定基を有する溶融加工可能なパーフルオロポリマーの粉体または成形体の安定化法も開発されている(特開平2−163128号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、砂糖および醤油の焦げ付きなどによる汚れであっても容易に取り除くことができる改良された防汚性を有するオーブンの窓、ガスレンジの天板、調理器具などの食品加熱加工器具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属に対する腐食潜在性を有する不安定な末端基を含有しない改良されたPFAを用いることにより、砂糖および醤油の焦げ付きなどによる汚れであっても容易に取り除くことができることを見出した。
【0007】
すなわち、本願の第1の発明に従う食品加熱加工器具は、基材表面にフッ素樹脂フィルムを熱溶融接着することからなり、前記フッ素樹脂フィルム中のフッ素樹脂成分が、
(a)90〜99重量%の式−CF2CF2−で表される反復単位及び1〜10重量%の式−CF(ORf)−CF2−(式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)で表される少なくとも1種の反復単位から本質的に成り、
(b)反応又は分解でHFを発生しうる末端基を実質的に含まず、
(c)末端基は実質的にすべてが−CF3であり、
(d)372℃における溶融粘度が107ポイズ以下である、テトラフルオロエチレン共重合体であることを特徴とする。
【0008】
また、本願の第2の発明に従う食品加熱加工器具は、基材表面にフッ素樹脂塗料を塗布焼成することからなり、
前記フッ素樹脂塗料中のフッ素樹脂成分は、
(a)90〜99重量%の式−CF2CF2−で表される反復単位及び1〜10重量%の式−CF(ORf)−CF2−(式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)で表される少なくとも1種の反復単位から本質的に成り、
(b)反応又は分解でHFを発生しうる末端基を実質的に含まず、
(c)末端基は実質的にすべてが−CF3である、テトラフルオロエチレン共重合体であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるフッ素樹脂フィルムおよびフッ素樹脂塗料は、不安定な末端基である−CF2CH2OH、−COHN2、−COF、および−COOHの末端基を有するテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を、ほとんどすべての不安定な末端基を除去するのに十分な条件下でフッ素ガスと接触させ、さらに抽出しうるフッ化物イオン含量を必要な低量まで減ずることによって製造された改良された共重合体粒子を含有する。かかる共重合体粒子は、
(a)90〜99重量%の式−CF2CF2−で表される反復単位及び1〜10重量%の式−CF(ORf)−CF2−(式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)で表される少なくとも1種の反復単位から本質的に成るテトラフルオロエチレン共重合体の粒子であって、
(b)反応又は分解でHFを発生しうる末端基を実質的に含まず、
(c)末端基は実質的にすべてが−CF3であり、さらにフィルムとして用いる場合には、
(d)372℃における溶融粘度が107ポイズ以下である粒子である。
【0010】
−CF(ORf)−CF2−(式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)で表される少なくとも1種のビニルエーテルに由来する反復単位を1〜10重量%含有することにより、テトラフルオロエチレン共重合体が弾性体ではなくプラスチックとなる。含有量は2〜4重量%であることが好ましい。好適なパーフルオロアルキル基は、n−パーフルオロアルキルであり、特に好ましいのは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(n−プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(n−ヘプチルビニルエーテル)、およびこれらの混合物である。
【0011】
本発明において用いられる共重合体は、少なくとも1つの第三のモノマーを5重量%まで含有することができる。共重合しうる代表的なモノマーは、式
【化1】
[式中、R1は−RfまたはRfXであり、Rfは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基であり、−Rf−は鎖の各端に結合原子価のある炭素数1〜12のパーフルオロアルキレンジラジカルであり、およびXはHまたはClであり、並びにR2は−RfまたはRfXである]
によって表される。このような共重合しうるフッ素化されたエチレン性不飽和モノマーは、ヘキサフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキセン−1を含む。
【0012】
また、本発明のテトラフルオロエチレン共重合体は、反応又は分解でHFを発生しうる末端基を実質的に含まず、かつ末端基は実質的にすべてが−CF3であるが、これは、末端基−CF2CH2OH、−CONH2、−COF、および−COOHは炭素数106当たり6つより少なく、かつ抽出しうるフッ化物イオンは重量で3ppmまたはそれ以下しか含まれていないことを意味する。
このようにほとんどすべての不安定な末端基をフッ素化して−CF3に転化したフッ素樹脂を含有するフィルムまたは塗料を被覆した食品加熱加工器具は、優れた防汚性を発揮し、特に、砂糖および醤油などの焦げ付きによる汚れを簡単に除去することができる。
【0013】
フィルムに加工して用いる場合には、テトラフルオロエチレン共重合体の粒子の溶融粘度はフィルムに加工できる範囲でなければならない。通常の溶融加工装置でフィルムに加工することができる溶融粘度は、372℃において107ポイズ以下であり、好ましくは、104〜106ポイズの範囲である。溶融粘度は次のように変更したASTM D−1238に準じて測定した。シリンダー、オリフィスおよびピストン・チップを耐腐食性合金から作った。試料5.0gを372±1℃に保った内径9.53mmのシリンダーに装填した。試料をシリンダーに装填してから5分後に、これを直径2.10mm、長い方形端のオリフィス8mmから5000gの負荷の下に押し出した。これは変形応力44.8KPaに相応した。ポイズ単位の溶融粘度は計算により求めることができる。
【0014】
本発明の食品加熱加工器具は、金属またはガラスの基材表面に、フッ素樹脂成分が上記の共重合体であるフッ素樹脂フィルムを公知の方法により熱溶融接着するか、またはフッ素樹脂成分が上記の共重合体であるフッ素樹脂塗料を公知の方法により塗布焼成することにより製造される。
フィルムの厚さは任意であり、食品加熱加工器具の種類に応じて異なるが、通常10〜125μmであり、好ましくは25〜50μmである。
また、フィルムは上記フッ素樹脂の他に、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤をフッ素樹脂フィルムの特性を損なわない範囲で配合することができる。基材にフィルムを載置し、熱溶融接着を行うことにより被覆物が得られる。熱溶融接着は、305〜350℃にて、1〜10kg/cm2の加圧下にて行われる。
【0015】
フッ素樹脂塗料は、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、はけ塗りなど公知の方法で基材に塗布され、慣用の装置および方法で焼成される。焼成温度は、350〜400℃であり、焼成時間は、5〜20分である。塗膜の厚さは任意であるが、焼成後の膜厚は、5〜15μmが好ましい。
フッ素樹脂層と基材との密着性を上げるために、基材に予めプライマーを公知の方法により塗布焼成することが好ましい。好ましいプライマーは、ポリアミドイミドおよび/またはポリイミドと、ポリエーテルスルホンまたはポリフェニレンサルファイドと、フッ素樹脂と、金属粉末とを、有機溶媒中に溶解または分散させてなるプライマーである。プライマー中のフッ素樹脂としては、特に、熱溶融し易いタイプのPFA、FEP、または両者の混合物が好適に使用される。
【0016】
本発明の食品加熱加工器具は、PFAの不安定な末端基をフッ素化することにより除去したフッ素樹脂を用いることにより、加熱キッチン用品の焦げ付きなどに対する防汚性を改良することができる。不安定な末端基は、PFAの分子量に対してわずかに存在しているだけであり、このようなわずかな末端基を改良することが、本発明により明らかにされたように焦げ付きに対する防汚性をもたらすことは驚くべきことである。
【0017】
【実施例】
本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は本実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜2、比較例1〜4)
ポリエーテルスルホン(ICI社製商品名VICTREX)25重量%、ポリアミドイミド(AMOCO社製商品名TORLON)25重量%、FEP45重量%およびアルミニウム粉末5重量%をn−メチルピロリドンとジアセトンアルコールとの混合溶剤(2:1)中に分散させ、プライマーを調製した。得られたプライマーを表面を脱脂したアルミ板にスプレーし、焼成後の膜厚で約8ミクロンになるように塗布した。これを150℃で15分間乾燥させ乾燥後焼成炉にて350℃で15分間焼成した。焼成したプライマー層の上に表1のフッ素樹脂フィルムを載置し、315℃、圧力5kg/cm2で熱溶融接着を行い、フッ素樹脂フィルム被覆物を得た。得られた被覆物を乾拭きした後、砂糖と醤油を1:1の重量比で混合し、0.5mlを被覆物上で表1に示した温度にて30分加熱し、焦げ付かせた。乾燥したタオルで焦げ付きを10往復払拭した後の被覆物の表面を目視観察した。結果を表1に示す。
【0018】
(実施例3〜4、比較例5〜8)
実施例1と同様にフッ素樹脂フィルム被覆物を作成した。得られた被覆物を水を含ませた濡れタオルで10往復拭いた以外は、実施例1と同様に試験した。結果を表1に示す。
【0019】
(実施例5)
ポリエーテルスルホン(ICI社製商品名VICTREX)25重量%、ポリアミドイミド(AMOCO社製商品名TORLON)25重量%、FEP45重量%およびアルミニウム粉末5重量%をn−メチルピロリドンとジアセトンアルコールとの混合溶剤(2:1)中に分散させ、プライマーを調製した。得られたプライマーを表面を脱脂したアルミ板にスプレーし、焼成後の膜厚で約8ミクロンになるように塗布した。これを150℃で15分間乾燥させ乾燥後焼成炉にて350℃で15分間焼成した。焼成したプライマー層の上に表1のフッ素樹脂塗料をスプレー塗布し、350℃で15分間焼成し、フッ素樹脂塗料被覆物を得た。得られた被覆物をからぶきした後、砂糖と醤油を1:1の重量比で混合し、0.5mlを被覆物上で表1に示した温度にて30分加熱し、焦げ付かせた。水を含んだ濡れタオルで焦げ付きを10往復払拭した後の被覆物の表面を目視観察した。結果を表1に示す。
【0020】
実施例および比較例において使用されたフィルムおよび樹脂は以下のとおりである。
フィルムA: 末端基がCF3である厚さ80μmのテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA450HP−J)
フィルムB: 末端基がCF3である厚さ250μmのテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA450HP−J)
フィルムC: 末端基がCONH2、COOH、COF、CF2Hである厚さ40μmのテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA340−J)
フィルムD:末端基がCOF、CF2Hである厚さ50μmのテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(デュポン社製PFA350)
フィルムE: 末端基がCOF、CF2Hである厚さ125μmのテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(デュポン社製PFA350)
フィルムF: 末端基がCOF、CF2Hである厚さ250μmのテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA350−J)
樹脂A:末端基がCF3である平均粒径0.2μmのテトラフルオロエチレン共重合体(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA450HP−J)
【0021】
【表1】
○は完全に焦げ付きが取れたことを表す。△はごくわずかに焦げ付きが取れたことを表す。×はかなり焦げ付きが残ったことを表す。
【0022】
乾拭きで汚れを除去した実施例1〜2と比較例1〜4とを比較すると、200℃での焦げ付きに対する防汚性はいずれも不十分であるが、それ以上の温度での焦げ付きに対する防汚性は、実施例の方が優れていることがわかる。また、濡れ拭きで汚れを除去した実施例3〜4と比較例5〜8とを比較すると、フィルムの厚さに拘わらず、いずれの温度で生じた焦げ付きに対しても、実施例の方が優れた防汚性を有していることがわかる。
実施例5より、塗料を被覆してもフィルムと同様に優れた防汚性を発揮できることがわかる。
【0023】
【発明の効果】
本発明による食品加熱加工器具は、砂糖と醤油の焦げ付きに代表されるひどい汚れであっても容易に取り除くことができる改良された防汚性を有する。
Claims (5)
- 基材表面にフッ素樹脂フィルムを熱溶融接着することからなる食品加熱加工器具において、
前記フッ素樹脂フィルム中のフッ素樹脂成分は、
(a)90〜99重量%の式−CF2CF2−で表される反復単位及び1〜10重量%の式−CF(ORf)−CF2−(式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)で表される少なくとも1種の反復単位から本質的に成り、
(b)末端基−CF 2 CH 2 OH、−CONH 2 、−COFおよび−COOHは、炭素数10 6 あたり6つより少なく、
(c)372℃における溶融粘度が107ポイズ以下である、
テトラフルオロエチレン共重合体であることを特徴とする食品加熱加工器具。 - 基材表面にフッ素樹脂塗料を塗布焼成することからなる食品加熱加工器具において、
前記フッ素樹脂塗料中のフッ素樹脂成分は、
(a)90〜99重量%の式−CF2CF2−で表される反復単位及び1〜10重量%の式−CF(ORf)−CF2−(式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)で表される少なくとも1種の反復単位から本質的に成り、
(b)末端基−CF 2 CH 2 OH、−CONH 2 、−COFおよび−COOHは、炭素数10 6 あたり6つより少ない、
テトラフルオロエチレン共重合体であることを特徴とする食品加熱加工器具。 - 食品加熱加工器具が、家庭用または業務用の調理器具であることを特徴とする請求項1または2に記載の食品加熱加工器具。
- 食品加熱加工器具が、家庭用または業務用の加熱器具であることを特徴とする請求項1または2に記載の食品加熱加工器具。
- 食品加熱加工器具が、フライパン、鍋、電気炊飯器の内釜、ホットプレートまたはパン焼型であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の食品加熱加工器具。
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JP09515798A JP3962153B2 (ja) | 1998-03-25 | 1998-03-25 | 改良された防汚性を有する食品加熱加工器具 |
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JP6665236B2 (ja) * | 2018-07-17 | 2020-03-13 | 三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社 | 耐ブリスター性に優れたpfa成形体およびpfa成形体のブリスター発生を抑制する方法 |
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1998
- 1998-03-25 JP JP09515798A patent/JP3962153B2/ja not_active Expired - Fee Related
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