JP3961627B2 - 重荷重用荒れ地走行空気入りラジアル・タイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は重荷重用空気入りタイヤに関するものであり、特に、主として荒れ地走行に供される建設車両用空気入りラジアル・タイヤのベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、建設車両用空気入りタイヤは、左右1対のビード部に配置されたビード・コアーと、クラウン部から両サイド部を経て両ビード部に延び、該ビード・コアーに巻回されてビード部に係留された、コードがラジアル方向に配列されたゴム被覆コード層よりなるラジアル・カーカスと該ラジアル・カーカスのクラウン部外側に配置されたベルトを備え、該ベルトは、実質的に非伸長性の複数本のコードを被覆ゴム中に埋設して成るゴム被覆コード層を、隣接する層のコード方向がタイヤの赤道線を挟み互いに逆方向になるように、タイヤの赤道線におけるコード角度が周方向に対し15度乃至30度で積層して成る主交差ベルト層を含んでいる。
【0003】
一般に、建設車両用空気入りタイヤは、岩石や砕石などが散在する荒れ地で使用されることが多く、ベルト間にセパレーション故障が発生しやすい。
従来、このセパレーション故障の発生および進展の原因であるベルト端付近の歪みを小さくするために、主交差ベルト層両端部にベルト端クッション・ゴムが配置され、それなりの効果が得られたが、抜本的な対応策とはいえず、ベルト端に発生した亀裂がセパレーション故障に進展してタイヤの寿命が一気に短くなることがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述したような従来タイヤの欠点を除去し、主として荒れ地走行に供される建設車両用空気入りラジアル・タイヤにおいて、ベルト間のセパレーション故障の進展を遅らせて、寿命の長いタイヤを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるタイヤは、左右1対のビード部に配置されたビード・コアーと、クラウン部から両サイド部を経て両ビード部に延び、該ビード・コアーに巻回されてビード部に係留された、コードがラジアル方向に配列されたゴム被覆コード層よりなるラジアル・カーカスと該ラジアル・カーカスのクラウン部外側に配置されたベルトを備えたタイヤにおいて、
(1)該ベルトは、実質的に非伸長性の複数本のコードを被覆ゴム中に埋設して成る少なくとも3層のゴム被覆コード層を、隣接する層のコード方向がタイヤの赤道線を挟み互いに逆方向になるように、タイヤの赤道線におけるコード角度が周方向に対し15度乃至30度で積層して成る主交差ベルト層を含み、
(2)該主交差ベルト層の有効ベルト幅がトレッド幅の20乃至75%であり、
(3)該主交差ベルト層のうち、ラジアル方向最外側に隣接して配置された2層の最外側隣接ベルト層の、両端部の層間にクッション・ゴムが配置され、
(4)該主交差ベルト層の両端部において、前記クッション・ゴムの配置に伴って前記ベルト層の少なくとも一方が跳ね上がり、もしくは、垂れ下がることによって形成される断面層間角度θが1乃至8度であることを特徴とする主として荒れ地走行に供される建設車両用空気入りラジアル・タイヤである。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によるタイヤでは、該主交差ベルト層のすべての隣接ベルト層の、両端部における断面層間角度θが1乃至8度であることが好ましい。
【0008】
本明細書において、「主交差ベルト層」とは、実質的に非伸長性の複数本のコードを被覆ゴム中に埋設して成る少なくとも2層のゴム被覆コード層を、隣接する層のコード方向がタイヤの赤道線を挟み互いに逆方向になるように、タイヤの赤道線におけるコード角度が周方向に対し15度乃至30度で積層して成るベルト層を意味する。
本発明による建設車両用空気入りラジアル・タイヤのベルトは、上記の主交差ベルト層と、必要に応じてそのラジアル方向外側に主交差ベルト層を保護するための保護ベルト層を積層した構造となっている。主交差ベルト層の機能はタイヤの充填内圧によって生じる周方向張力を負担し、タイヤの断面を所望の形状に維持することであり、そのために実質的に非伸長性の複数本のコードを被覆ゴム中に埋設して成る少なくとも2層のゴム被覆コード層を、隣接する層のコード方向がタイヤの赤道線を挟み互いに逆方向になるように、タイヤの赤道線におけるコード角度が周方向に対し15度乃至30度で積層してある。
【0009】
本明細書において、「隣接ベルト層の両端部における断面層間角度θ」とは、交差ベルト層において、タイヤの回転軸を含む断面で見たときに、両端部において隣接するベルト層がなす角度である。
したがって、隣接するベルト層が一方の端部から他方の端部まで、互いに平行に、換言すれば、互いに同じ間隔を保って配置されていれば断面層間角度θはゼロであり、両端部において跳ね上がりおよび/または垂れ下がっていれば断面層間角度θは隣接するベルト層がなす最大角度である。
隣接するベルト層が両端部において跳ね上がりおよび/または垂れ下がって、断面層間角度θが形成されている具体例について、後程、実施態様の項で説明する。
【0010】
本明細書において、「 有効ベルト幅」 とは、交差ベルト層において、隣接コード層間でコード方向がタイヤの赤道線を挟み互いに逆方向に積層されている最大幅を指す。
結果的には、有効ベルト幅は、コード方向がタイヤの赤道線を挟み同方向のベルト層を除いて、交差ベルト層のうちで2番目に幅広のベルト層の幅が有効ベルト幅に相当することになる。
【0011】
一般に、ラジアル・タイヤのベルトのセパレーション故障は、ベルト端を起点としてベルトに沿ってベルトの上やベルト間に進展していく。本発明はこの進展速度を遅くしてタイヤの延命を図るものである。
通常、ラジアル・タイヤのベルトに発生する歪みはベルト端で最大となる。そこで、従来、このベルト端での歪みを小さくするためにベルト層両端部にベルト端クッション・ゴムが配置されている。発明者等がベルト端クッション・ゴムを備えたベルト層端部の挙動について研究した結果、このベルト端クッション・ゴムの入れ方すなわちその断面形状によってクッション・ゴムのタイヤ赤道側端近傍で歪みが急激に増加することが判明した。この歪みのために、ベルト端を起点として発生した亀裂がベルトに沿ってタイヤの内側(クッション・ゴムのタイヤ赤道側端近傍)に向かって加速度的に広がっていき、最悪の場合、この部分でセパレーション故障が発生する。
【0012】
従来のタイヤは、クッション・ゴムが適正に配置されておらず、隣接ベルト層の両端部における断面層間角度θが大きすぎて、クッション・ゴムのタイヤ赤道側端近傍での歪みが大きなものとなっていたが、本発明の空気入りラジアル・タイヤは上記のような構成であり、特に、主交差ベルト層のうち、ラジアル方向最外側に隣接して配置された2層の最外側隣接ベルト層の両端部における断面層間角度θが1乃至8度であり、好ましくは主交差ベルト層のすべての隣接ベルト層の両端部における断面層間角度θが1乃至8度であるので、上記クッション・ゴムのタイヤ赤道側端近傍での歪みが急激に増加することを防止している。
隣接ベルト層の両端部における断面層間角度θが1度より小さくなると、ベルト端での歪が極端に増加し、ベルト端クッション・ゴム本来の効果が得られなくなる。
【0013】
本発明の空気入りラジアル・タイヤは上記のような構成であり、特に、主交差ベルト層の有効ベルト幅がトレッド幅の20乃至75%であることが好ましい。
これは、一般に、タイヤの接地圧はショルダー部に比べセンター部の方が高いため、センター部の温度が高くなる。この高温領域に断面層間角度θの大きいベルト端が存在すると、歪みの要因に熱の要因が相乗的に作用してセパレーション故障を引き起こしやすくなるので、これを避けるためである。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、「隣接ベルト層の両端部における断面層間角度θ」について、隣接するベルト層が両端部において跳ね上がりおよび/または垂れ下がって、断面層間角度θが形成されている具体例について説明する。図1乃至図6は、隣接する2層のベルト層B1とB2の左半分の断面略図である。
図1は、隣接する2層のうちラジアル方向内側のベルト層B1に対しラジアル方向外側のベルト層B2の端部が跳ね上がって、断面層間角度θが形成されている具体例である。
図2は、隣接する2層のうちラジアル方向内側のベルト層B1に対しラジアル方向外側のベルト層B2の端部が一度跳ね上がって断面層間角度θが形成され、その後元に戻ってベルト層B1に平行になって終端している具体例である。
図3は、隣接する2層のうちラジアル方向外側のベルト層B2に対しラジアル方向内側のベルト層B1の端部が垂れ下がって、断面層間角度θが形成されている具体例である。
図4は、隣接する2層のうちラジアル方向外側のベルト層B2に対しラジアル方向内側のベルト層B1の端部が一度垂れ下がって断面層間角度θが形成され、その後元に戻ってベルト層B2に平行になって終端している具体例である。
図5は、隣接する2層のうちラジアル方向内側のベルト層B1の端部が垂れ下がって、ラジアル方向外側のベルト層B2の端部が跳ね上がって、断面層間角度θが形成されている具体例である。
図6は、隣接する2層のうちラジアル方向内側のベルト層B1の端部が一度垂れ下がって、ラジアル方向外側のベルト層B2の端部が一度跳ね上がって、断面層間角度θが形成され、その後いずれも元に戻って互いに平行になって終端している具体例である。
【0015】
以下、本発明に従う実施例1乃至4のタイヤおよび従来例のタイヤについて、図面を参照しながら説明する。タイヤ・サイズはORR 37.00R57である。
【0016】
図7は本発明に従う実施例1のタイヤの左半分の断面を示す概略図であって、実施例1のタイヤ1は、トレッド2、一対のビード・コアー3、クラウン部からサイド部を経てビード部に延び、ビード・コアー3をタイヤ内側から外側に巻き返した1層のラジアル・プライからなるカーカス4、およびトレッド2とカーカス4との間に配置されたベルト5を含んでいる。
ベルト5は、第1ベルト51、第2ベルト52、第3ベルト53、第4ベルト54および第5ベルト55の5層のベルト層で成されている。第1ベルト51乃至第4ベルト54がタイヤの充填内圧によって生じる周方向張力を負担する主交差ベルト層であり、この主交差ベルト層のラジアル方向外側に主交差ベルト層を保護するために第5ベルト55が保護ベルト層として配置されている。
第1乃至第4ベルト51乃至54には破断伸度が2.5%の非伸長性のスチール・コードが使用され、第5ベルト55には破断伸度が6.8%の伸長性のスチール・コードが使用されている。
第1ベルト51、第2ベルト52、第3ベルト53、第4ベルト54および第5ベルト55の5層のベルト層のタイヤの赤道線におけるコード角度は周方向に対し、それぞれ右21度、左23度、右21度、左28度および左27度であって、ベルト幅は、それぞれ、530mm、690mm、600mm、460mmおよび870mmである。
主交差ベルト層の第1ベルト51と第2ベルト52の間の断面層間角度θ12は6度で、第2ベルト52と第3ベルト53の間の断面層間角度θ23は2度で、第3ベルト53と第4ベルト54の間の断面層間角度θ34は3度である。
主交差ベルト層の有効ベルト幅は600mmで、トレッド幅は840mmであるので、主交差ベルト層の有効ベルト幅はトレッド幅の約71%である。
【0017】
実施例2のタイヤは、
第2ベルト52乃至第4ベルト54の3層が主交差ベルト層であること、
第1ベルト51、第2ベルト52、第3ベルト53、第4ベルト54および第5ベルト55の5層のベルト層のタイヤの赤道線におけるコード角度は周方向に対し、それぞれ、左21度、左23度、右21度、左28度および左27度であって、ベルト幅は、それぞれ、670mm、580mm、530mm、360mmおよび870mmであること、
主交差ベルト層の第2ベルト52と第3ベルト53の間の断面層間角度θ23は5度で、第3ベルト53と第4ベルト54の間の断面層間角度θ34は4度であること、および
主交差ベルト層の有効ベルト幅は530mmで、トレッド幅は840mmであるので、主交差ベルト層の有効ベルト幅はトレッド幅の約63%であること
を除いて、実施例1のタイヤとほぼ同じである。
【0018】
実施例3のタイヤは、
第1ベルト51乃至第3ベルト53の3層が主交差ベルト層であること、
第1ベルト51、第2ベルト52、第3ベルト53、第4ベルト54および第5ベルト55の5層のベルト層のタイヤの赤道線におけるコード角度は周方向に対し、それぞれ、右21度、左23度、右21度、右28度および左27度であって、ベルト幅は、それぞれ、400mm、670mm、580mm、360mmおよび870mmであること、
主交差ベルト層の第1ベルト51と第2ベルト52の間の断面層間角度θ12は3度で、第2ベルト52と第3ベルト53の間の断面層間角度θ23は6度であること、および
主交差ベルト層の有効ベルト幅は580mmで、トレッド幅は840mmであるので、主交差ベルト層の有効ベルト幅はトレッド幅の約69%であること
を除いて、実施例1のタイヤとほぼ同じである。
【0019】
実施例4のタイヤは、
第1ベルト51、第2ベルト52、第3ベルト53、第4ベルト54および第5ベルト55の5層のベルト層のタイヤの赤道線におけるコード角度は周方向に対し、それぞれ、左21度、右23度、左21度、右28度および左27度であって、ベルト幅は、それぞれ、400mm、380mm、700mm、590mmおよび870mmであること、
主交差ベルト層の第1ベルト51と第2ベルト52の間の断面層間角度θ12は1度で、第2ベルト52と第3ベルト53の間の断面層間角度θ23は2度で、第3ベルト53と第4ベルト54の間の断面層間角度θ34は3度であること、および主交差ベルト層の有効ベルト幅は590mmで、トレッド幅は840mmであるので、主交差ベルト層の有効ベルト幅はトレッド幅の約70%であること
を除いて、実施例1のタイヤとほぼ同じである。
【0020】
従来例のタイヤは、
主交差ベルト層の第1ベルト51と第2ベルト52の間の断面層間角度θ12は12度で、第2ベルト52と第3ベルト53の間の断面層間角度θ23は9度で、第3ベルト53と第4ベルト54の間の断面層間角度θ34は15度であること
を除いて、実施例1のタイヤとほぼ同じである。
【0021】
上記実施例1乃至4のタイヤと従来例のタイヤについて、耐セパレーション性能の比較試験を実施した。試験は、供試タイヤを室内ドラム試験機で一定時間走行させて、タイヤを解剖してセパレーションの長さを測定した。
試験結果を、従来例のタイヤのセパレーションの長さを100として指数表示で表1に示す。数字が小さいほどよい結果であること、すなわち耐セパレーション性能に優れたタイヤであることを示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明によって、耐セパレーション性能に優れたタイヤを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】隣接する2層のベルト層の左半分の断面略図である。
【図2】隣接する2層のベルト層の左半分の断面略図である。
【図3】隣接する2層のベルト層の左半分の断面略図である。
【図4】隣接する2層のベルト層の左半分の断面略図である。
【図5】隣接する2層のベルト層の左半分の断面略図である。
【図6】隣接する2層のベルト層の左半分の断面略図である。
【図7】本発明による空気入りタイヤの左半分のタイヤ子午線断面略図である。
【符号の説明】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド
3 ビード・コアー
4 カ−カス
5 ベルト
51 第1ベルト
52 第2ベルト
53 第3ベルト
54 第4ベルト
55 第5ベルト
Claims (2)
- 左右1対のビード部に配置されたビード・コアーと、クラウン部から両サイド部を経て両ビード部に延び、該ビード・コアーに巻回されてビード部に係留された、コードがラジアル方向に配列されたゴム被覆コード層よりなるラジアル・カーカスと該ラジアル・カーカスのクラウン部外側に配置されたベルトを備えたタイヤにおいて、
(1)該ベルトは、実質的に非伸長性の複数本のコードを被覆ゴム中に埋設して成る少なくとも3層のゴム被覆コード層を、隣接する層のコード方向がタイヤの赤道線を挟み互いに逆方向になるように、タイヤの赤道線におけるコード角度が周方向に対し15度乃至30度で積層して成る主交差ベルト層を含み、
(2)該主交差ベルト層の有効ベルト幅がトレッド幅の20乃至75%であり、
(3)該主交差ベルト層のうち、ラジアル方向最外側に隣接して配置された2層の最外側隣接ベルト層の、両端部の層間にクッション・ゴムが配置され、
(4)該主交差ベルト層の両端部において、前記クッション・ゴムの配置に伴って前記ベルト層の少なくとも一方が跳ね上がり、もしくは、垂れ下がることによって形成される断面層間角度θが1乃至8度であることを特徴とする主として荒れ地走行に供される建設車両用空気入りラジアル・タイヤ。 - 該主交差ベルト層のすべての隣接ベルト層の、両端部における断面層間角度θが1乃至8度であることを特徴とする、請求項1記載の建設車両用空気入りラジアル・タイヤ。
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