JP3960638B2 - 摩擦の少ない案内部を有する引き戸 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一つの扉の運動方向に延在する、摩擦の少ない案内部を有する引き戸であって、前記案内部は、扉を支持する手段と、定置の案内手段とからなり、前記定置の案内手段が、扉に配置された案内手段と共働して、扉を運動方向に沿って案内する形式の引き戸に関する。
【０００２】
本発明の引き戸は、例えば建物の部屋のドア、シャワー室仕切り、または自動車やエレベータおよびすべての形式の輸送手段に適用することができる。
【０００３】
【従来の技術】
これまで公知の引き戸は通常、機械的案内部を有する。この機械的案内部は多少の摩擦を有する。比較的長く使用していると、潤滑の不足または汚れによりしばしば滑り雑音が生じたり、動きが重くなったり、最後には戸が引っかかって動かなくなったりする。取り付けの誤りや戸の調整不備があると最初からこのような望ましくない作用を引き起こす。その結果、ときおり案内要素が曲がったり、その固定が失われたりする。
【０００４】
ドイツ特許公開公報第１７８４３９２号から、引き戸の下縁部に配置されたシューを磁力によって浮遊させてフレームに配置する構成が公知である。そのためには縦方向に延びた複数の永久磁石をシュー内に配置する。この永久磁石は長手方向に延在する縦方向のＮ極とＳ極を有する。これらの磁石は対向して、同じ強度の磁石が敷居の上側に配置されている。これらの磁石の極はシューの磁石の同じ極の下にあり、これにより反発作用、すなわち浮遊作用が得られる。
【０００５】
この公知の装置の欠点は、浮遊作用が機械的側方案内部によって妨害されることである。摩擦によって発生する側方案内部の力は、引き戸の直線状経過に不利に作用する。その際に引き戸は不利な条件では動きがきつくなることがある。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、特許請求の範囲に記載の通り、公知の装置の欠点を回避し、容易に開閉でき、潤滑がほとんど必要なく、取り付けおよび調整の簡単な引き戸を提供することである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明の引き戸の案内部は無接触で動作し、扉と敷居とにそれぞれ互いに向き合った同じ極を有する磁石ないしマグネットシューを有する。同じ極は相互に反発するので、扉は無接触かつ音を立てずに、したがって正確に案内される。
【０００８】
本発明によって達成される重大な利点は、実質的に磨耗が発生しないことである。磁気反発力が常時作用し、この力は案内要素間の間隔が小さければ小さいほど大きいので、磁気案内部は横力に対して同時にダンパとして作用する。その他に戸板の慣性質量もダンパとして作用する。磁石の構成に応じて、案内部は水平、垂直または両方向に作用することができる。垂直案内部の場合でも、戸は同じように磁気クッションの上に立つ。この場合、戸上側縁部における通常の支持ローラは省略することもできる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、単に実施の形態として示す図面に基づいて詳細に説明する。
【００１０】
図１から図６には、引き戸の扉１０が示されている。引き戸は複数の扉１０を有することもできる。扉１０はローラ１０．１によって上側レール１１に沿って走行可能である。扉１０の下側縁部では、案内キール１２が敷居１４内に配置された案内レール１５のスリット１３に係合している。汚れの侵入から保護するために、スリット１３はできるだけ狭く構成される。さらに、スリット１３の前後に分離磁石１６を配置することができ、これにより磁気的影響を及ぼす可能性のある汚染粒子が吸着される。案内キール１２には第一のマグネットシュー１７があり、扉１０に対して横方向に内部磁力線が走るようにその第一の極１８、１９が固定されている。第一の極１８、１９は第一のマグネットシュー１７の長手側の自由端面として、戸下側縁部に沿って垂直方向に構成されている。第一の極１８、１９に対向して案内レール１５中には、案内レールとして作用する第二のマグネットシュー２７が嵌め込まれている。この第二のマグネットシュー２７は第二の極２８、２９を有する。その際に常に同じ極が、すなわちＳ極１８と２８、並びにＮ極１９と２９が相互に対向し、扉１０を横に案内する。マグネットシュー１７、２７は有利には、次のように固定されている。磁石の両方の極が相互に磁気的に絶縁されるように、すなわちＮ極とＳ極との間の外部磁力線が磁性構成部材ないし磁化可能構成部材内を通るのではなく、空隙または非磁性ホールドを介して閉じるように、戸キール１２ないし敷居１４に固定されている。磁石の両極間の短絡、例えばマグネットシュー１７の極１８と１９間の短絡が生じると、反発力が外に向かって減衰することになる。案内キール１２は敷居１４と同様に、磁石の両方の極１８、１９、２８、２９に接する限り、プラスチックまたはアルミニウムから製造され、いずれにしろ好ましくは非磁性材料から製造される。
【００１１】
これに対して、両方の敷居側の第二のマグネットシュー２７の裏側にある異なる極間では磁気的帰還路が所望される。これは、キール１２の反対側にある磁石２８、２９の極を例えば戸敷居１４内の鉄製フレーム２６により接続することにより行う。案内キールの下の第一のマグネットシュー１７がいつでも、それが二つ設けられている限り、同様である。
【００１２】
分離磁石１６は、磁気的汚染粒子がマグネットシュー１７、２７の反発作用する極端面に近づかないようにする。この分離磁石も二つのマグネットシュー２７と一体に成形することができる。この場合、マグネットシュー２７のＮ極とＳ極を有する長手側が作用する。
【００１３】
磁気的な滑り案内に必要な磁力を維持するために、好ましくは硬磁性合金または酸化物永久磁石材料からなるマグネットシューを使用する。加工処理の容易な、例えばバリウムフェライト粉末を含むプラスチック結合磁石を使用することもできる。これらの実施の形態は、すばらしい緊急滑走という追加の利点を有する。マグネットシューの作用幅を選択することにより、反発力をさらに変化することができる。磁石の所要の強度は第一に戸の重量と予想される横力に依存する。建物内の戸が軽量の場合、弱い、細い、または間欠的なマグネットシューで十分である。
【００１４】
マグネットシューは、減磁に必要な磁界強度Ｈが対向する同じ極のマグネットシューの磁束密度Ｂよりも大きくなるように構成しなければならない。できるだけ大きなエネルギー出力を得るには、マグネットシューを比較的短い区間で、小さな、好ましくは反対方向に斜めに延在する中間室に分割すると有利である。これによりいずれの戸位置でも近似的に同じ反発力が得られる。
【００１５】
図３と図４に示した案内部は、横方向案内の他に同時に扉１０の下側支持にも用いることができる。案内キール１２は隅金具の形の第三のマグネットシュー３０を有する。この場合も第三の磁極３１、３２が第三のマグネットシュー３０の長手側に形成されており、端面として構成された第三の極３１、３２は約９０゜の角度で相互に離れて配置されている。
【００１６】
案内レール１５内の対向する第四のマグネットシュー３３は馬蹄形または円形に曲げられており、端面として構成された第四の極３４、３５を備えている。これらの極は約９０°の角度で相互に向き合っている。扉１０に対して横方向に作用する水平反発力の他に、マグネットシュー３０、３３を介してさらに上方に垂直に向いた力が作用する。
【００１７】
図５と図６では、第五のマグネットシュー３６が案内キール１２の下に配置されている。案内キール１２に対向して第六のマグネットシュー３７が配置されている。第五のマグネットシュー３６と第六のマグネットシュー３７の対向する極は同じ極である。この構成は上方に垂直に向いた力を扉１０に及ぼす。これにより扉１０の上側案内部における荷重力が減少する。ローラ１０．１を備える図示の実施例では転がり抵抗が低減される。同じ作用が扉１０の上側縁部に配置された少なくとも一つのマグネットシュー１０．２により達成される。このマグネットシューは磁石として構成された上側レール１１と共働する。これに伴う利点は、前の図３、図４の実施の形態と同様にノイズがさらに低減されることである。さらに支承構成部材の設計強度を下げて、コストを下げることもできる。
【００１８】
一片形の直通するマグネットシューの代わりに、比較的短い、相互に反発する磁石部材片、または非磁性中間部材で相互に分離された磁石部材片を使用することもできる。中間部材は好ましくは磁石部材片よりも細い。特に有利には、マグネットシューをキールの打ち抜き部または垂直のスリットにはめ込む。脱落しないように、ねじ留めしたシューによりこれを確保することができる。
【００１９】
前述した水平方向に作用する磁石案内部は、戸下側縁部の他に戸上側縁部にも設けることができる。扉が湾曲している場合には、それに応じて湾曲した案内部を使用する。その際、マグネットシューも弓状に形成することになる。そのためにはプラスチック結合フレキシブル磁石が特に適する。底部にスリットを設ける代わりに、例えば半円形のマグネットシューを底部に載置ないし接着することもできる。対向部材として凹形のマグネットシューが扉の下側に配置される。必要な場合には磁石の後部に金属板を設けることによって作用する磁束密度を増強することができる。特に高い磁束密度は希土類金属により得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の磁石案内部を有する引き戸の斜視図である。
【図２】図１の磁石案内部の詳細図である。
【図３】水平方向および垂直方向に磁石案内部を有する引き戸の斜視図である。
【図４】図３の磁石案内部の詳細図である。
【図５】水平方向および垂直方向に磁石案内部を有する別の実施の形態の引き戸の斜視図である。
【図６】図５の磁石案内部の詳細図である。
【符号の説明】
１０ 扉
１０．１ ローラ
１２ 案内キール
１３ スリット
１４ 敷居
１５ 案内レール
１６ 分離磁石
１７ マグネットシュー
１８、１９ 極

Claims (8)

1. 少なくとも一つの扉（１０）の運動方向に延在し、該扉を支持する手段および案内する手段からなる、摩擦の少ない案内部を有しており、上方及び下方の定置の案内手段（１１、１５）が、前記扉（１０）に配置された上方および下方の案内手段（１０．１、１２）と共働して、前記扉（１０）を運動方向に沿って案内する形式の引き戸であって、
   前記定置の案内手段の一方（１５）および前記扉の案内手段の一方（１２）がそれぞれ、扉（１０）を案内する磁石（２７、３３および１７、３０）を有しており、
   前記定置の案内手段（１５）の磁石（２７、３３）と前記扉（１０）の案内手段（１２）の磁石（１７、３０）とのそれぞれ対向する極が同じ極であり、それらの極によって前記扉（１０）の案内に作用する反発力が形成され、
   前記磁石は、少なくとも一つの分離磁石（１６）が設けられたマグネットシュー（１７、２７、３０、３３）からなり、該分離磁石が、磁気的に影響を及ぼす汚染粒子を吸着してマグネットシュー（１７、２７、３０、３３）から遠ざけることを特徴とする引き戸。
2. 前記定置の案内手段の一方が、敷居（１４）内に配置された案内レール（１５）を有し、前記案内レールにマグネットシュー（２７、３３）が配置されており、
   前記扉（１０）の案内手段の一方が案内キール（１２）を有し、該案内キールにマグネットシュー（１７、３０）が配置されていることを特徴とする請求項１に記載の引き戸。
3. 前記マグネットシュー（１７、２７）が、運動方向に平行に配置されたロッドとして構成されており、前記マグネットシューの対向する長手側に異なる極（１８、１９；２８、２９）を有することを特徴とする請求項２に記載の引き戸。
4. 前記案内キール（１２）に配置されたマグネットシュー（１７）が前記案内レール（１５）中を走り、
   前記案内レール（１５）のマグネットシュー（２７）が、前記案内キール（１２）に配置されたマグネットシュー（１７）に平行に延びており、
   相互に向き合う極（１８、２８；１９、２９）が同じ極であることを特徴とする請求項２または３に記載の引き戸。
5. 案内レール（１５）と案内キール（１２）のマグネットシュー（１７、２７）の極は、磁気的に相互に絶縁して配置されていることを特徴とする請求項１から４のいずれか一項に記載の引き戸。
6. 極（３１、３２）の端面が斜めに下方に向いている少なくとも一つの湾曲したマグネットシュー（３０）が案内キール（１２）に配置されており、
   案内レール（１５）中に、前記湾曲したマグネットシュー（３０）に対向して、馬蹄形に構成された少なくとも一つのマグネットシュー（３３）が配置されており、
   該マグネットシューの極（３４、３５）の端面が、前記湾曲したマグネットシュー（３０）の同名の極（３１、３２）の端面に平行に延びることを特徴とする請求項５に記載の引き戸。
7. 前記案内キール（１２）には、運動方向に延びる少なくとも一つのマグネットシュー（３６）が該案内キール（１２）に配置されたマグネットシュー（１７）の下側に設けられており、
   前記案内レール（１５）に配置された少なくとも一つのマグネットシュー（３７）を有しており、該マグネットシューが案内キール（１２）に配置された前記マグネットシュー（３６）と共働して、前記扉（１０）に作用する揚力を形成することを特徴とする請求項５に記載の引き戸。
8. マグネットシュー（１７、２７、３０、３３、３６、３７）の材料として、硬磁性合金、酸化物永久磁石材料、またはプラスチック結合フェライト粉末を使用することを特徴とする請求項１から７のいずれか一項に記載の引き戸。

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