JP3960577B2 - カメラの自動露光制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体輝度に応じて絞り板を移動させて露光制御を行うカメラの自動露光制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
予め写真フイルムが装填された1回使用型の簡易型カメラとして、レンズ付きフイルムユニットが知られている。このレンズ付きフイルムユニットは、1回使用型であることから、徹底した構造の簡単化、低コスト化が図られている。他方で、画質向上の要請から、被写体輝度に応じて自動的に絞り切り換えを行って露光制御を行う自動露光制御装置を備えたものが検討されている。
【0003】
この自動露光制御装置は、例えば、特開平9−5817号公報に示すように、絞り開口が設けられた絞り板と、この絞り板を駆動する電磁石と、この電磁石をオン/オフすることで絞り開口を切り換える絞り制御回路とからなる。この絞り制御回路は、シャッタ半押し操作によって絞り制御回路をオンする作動スイッチと、被写体輝度に応じた輝度信号を出力する測光部と、この輝度信号を受けて、それが所定値に達した時に前記電磁石を作動させるスイッチングトランジスタとを備えている。これによれば、シャッタ半押し操作によって前記絞り制御回路が作動し、被写体輝度に応じて自動的に露光制御が行われるので、誰でも簡単に適正な露出量で撮影することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の自動露光制御装置では、被写体輝度が所定値に達した時に電磁石の駆動を開始して絞り板を切り換え、被写体輝度が前記所定値を越えている間、電磁石を駆動しつづけることにより、絞り板を所定位置に保持している。このため、絞り板を保持するためには電磁石に給電しつづけなければならず、電池の消耗が激しいという問題がある。
【0005】
前述した課題を解決するために、本発明は、電池の消耗が少ないカメラの自動露光制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1記載のカメラの露光制御装置は、少なくとも1つの絞り開口が形成され、前記絞り開口が撮影光路上に位置して絞り径を小さくする第1の位置と、前記絞り開口が撮影光路上から退避して絞り径を大きくする第2の位置との間で移動自在に設けられた絞り板と、被写体輝度に応じた光電信号を出力する測光手段と、前記光電信号の変化に応じて前記絞り板を移動させるために、予め前記光電信号と比較する閾値が設定され、被写体輝度が高輝度から低輝度に減少する際に前記光電信号が前記閾値を横切った時、第1の切り換え信号を出力し、被写体輝度が低輝度から高輝度に増加する際に前記光電信号が前記閾値を横切った時、第2の切り換え信号を出力する絞り制御回路と、前記第1の切り換え信号に応答して絞り板を第1の位置に移動させ、第2の切り換え信号に応答して絞り板を第2の位置に移動させるとともに、絞り板をそれぞれの位置に向けて移動させた後に駆動が断たれる電磁駆動手段と、前記電磁駆動手段によって第1又は第2の位置に移動した絞り板を、電磁駆動手段の駆動が断たれた状態でそれぞれの位置に保持する保持手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、前記電磁駆動手段は、第1又は第2の切り換え信号に応答してそれぞれ一定時間駆動される第1,第2のソレノイドで構成すること、あるいは、第1又は第2の切り換え信号に応答してそれぞれ逆方向に電流が一定時間供給される単一のソレノイドで構成することが好ましい。また、前記保持手段は、絞り板が第1又は第2の位置の一方から他方に移動することに追従して死点を越えて移動し、絞り板を他方の位置に向かって付勢するトグルバネであることを特徴とすることが好ましい。
【0008】
なお、前記絞り制御回路に給電を行うオン位置とその給電を断つオフ位置との間で移動自在なスイッチを備え、このスイッチをオフ位置に移動することに連動して前記絞り板を第1の位置に移動させ、前記スイッチをオン位置に移動させたときには、前記絞り制御回路がその時点で測光手段から得られる光電信号を閾値と比較し、光電信号のレベルが閾値以下であることに応答して第2の切り換え信号を出力することが好ましい。さらに、前記スイッチは、オン位置で内蔵ストロボへの給電を行い、オフ位置でその給電を断つことを特徴とすることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のカメラの自動露光制御装置が内蔵されたレンズ付きフイルムユニット11の外観及び内部構造の概略を示す図2及び図3において、レンズ付きフイルムユニット11は、中央に露光部12が設けられ、その横にストロボ装置13が組み付けられた本体基部14と、その前後に被せられる前カバー16及び後カバー17とから構成されるユニット本体と、カートリッジ18及びカートリッジ18から引き出してロール形態にした写真フイルム19とからなる。カートリッジ18及び写真フイルム19は、本体基部14に形成されたカートリッジ収納室14a,フイルム収納室14bにそれぞれレンズ付きフイルムユニットの製造時点で予め組み込まれる。
【0010】
前カバー16には、その前面に、撮影レンズ20を露呈する撮影窓21,ファインダ対物窓22,ストロボ発光窓23が形成されており、その上面には、上面にはシャッタボタン24を露呈する開口,フイルムカウンタ窓25が形成されている。撮影窓21の横にはCdS26が、その横にはストロボスイッチ27が取り付けられる。CdS26は、自動露光制御装置の測光手段であり、周知のように、受光する輝度に応じてその抵抗値が変化する光導電素子である。この抵抗値の変化を検出することにより自動的に絞りが切り換えられて露光制御が行われる。
【0011】
ストロボスイッチ27は、ストロボ充電を開始させるためのもので、上下方向にスライド自在に設けられている。ストロボの充電が完了すると、充電完了ランプが点灯し、この光がライトガイド29を通って撮影者に確認される。また、ストロボスイッチ27は、絞り制御回路を作動させるスイッチと連動しており、前記スイッチ27をオンすると、絞り制御回路が作動し、CdS26の測光が開始される。
【0012】
後カバー17にはファインダ接眼窓31、上面に、ライトガイド29を露呈する充電完了確認窓32が形成され、さらにカートリッジ収納室14a,フイルム収納室14bの底部開口を光密に覆う底蓋17a,17bが一体に形成されている。底蓋17aは、撮影済みの写真フイルムが巻き込まれたカートリッジ18を取り出すときに開放される。
【0013】
カートリッジ収納室14aの上部には、巻上げノブ33が設けられ、その下面に一体に形成された巻上げ軸がカートリッジ18のスプールに係合する。撮影ごとに巻上げノブ33を回動操作することによって、撮影済みの写真フイルム19は1コマ分ずつカートリッジ18に巻き込まれる。このフイルム1コマ巻上げに連動して露光部12に組み込まれたシャッタ機構が次回の撮影のためにチャージされ、またフイルム1コマ給送が完了すると露光部12に組み込まれたロックレバーによって巻上げノブ33の回動がロックされる。
【0014】
露光部12は、前方に向かって角筒状に突出した暗箱基部36をベースにして、これにシャッタ機構,フイルム巻止め機構の他、ファインダ機構やフイルムカウンタ板等を組み付けたものである。さらに、この露光部12は、ファインダ光学系を構成する対物及び接眼レンズを保持する。暗箱基部36の背面には、露光枠が形成されており、撮影位置に送られてきた写真フイルム19の前面で1コマ分の露光範囲を制限する。
【0015】
図4に示すように、暗箱基部36の前面には、シャッタ開口36aが形成されており、その前方に、シャッタ羽根38と、絞り板37と、これらを覆うシャッタカバー39とが取り付けられる。シャッタカバー39には、撮影レンズ20が組み込まれており、撮影レンズ20の後方に、通常の絞り開口(図5の符号40参照)が形成されている。
【0016】
シャッタ羽根38は、周知の蹴飛ばし式のもので、羽根部38aとその上方に延びた取付部38bとからなる。シャッタ羽根39は、取付部38bが暗箱基部36の前面に形成されたピン41と係合し、このピン41を中心軸として回動自在に取り付けられる。
【0017】
取付部38bと暗箱基部36との間には、コイルバネ42がかけられており、シャッタ羽根38は、このコイルバネ42によって閉じ位置方向に付勢される。シャッタボタン24が押下されると、シャッタ機構が作動し、蹴飛ばしレバー43が取付部38bの頭部を蹴飛ばす。取付部38bが蹴飛ばされると、羽根部38aが第1のバネ42の付勢に抗しながら開き方向に回動し、それが全開位置に達すると前記バネ42の付勢によって閉じ位置方向に回動する。これにより、シャッタ開口36aが開閉される。シャッタスピードは設計時に設定された所定値で固定される。
【0018】
また、取付部38bには、押圧部38cが設けられている。この押圧部38cは、シャッタ開閉に連動してストロボ発光させるためのもので、シャッタボタン24が押下されてシャッタ羽根38が全開位置にきた時に、シンクロスイッチ46を押圧して、これをオンする。
【0019】
絞り板37には、通常の絞り開口よりも小さい口径を持つ小絞り開口37aが形成されている。絞り板37は、その開口37bが、ストロボ装置13に設けられた軸47に取り付けられ、この軸47を中心軸として、撮影光路上に小絞り開口37aが挿入される第1の位置と、撮影光路上から小絞り開口37aが退避する第2の位置との間で回動自在とされる。なお、図示しないが、シャッタ羽根38と絞り板37との間にはガイド部材が設けられており、このガイド部材によって、シャッタ羽根38と絞り板37とがその動作時に互いに干渉することがないように規制される。
【0020】
この絞り板37は、2つのソレノイド(図5参照)を連装した駆動部51によって駆動される。駆動部51の本体52には、可動鉄心53と、その両端に巻きつけた2つのコイル(図示せず)とが組み込まれており、その可動鉄心53と2つのコイルとで2つのソレノイドを構成する。2つのソレノイドは、絞り制御回路から切り換え信号(パルス信号)を受けて駆動される。
【0021】
可動鉄心53は、それが上下方向に移動するように、その長手方向がほぼ垂直になるように配置される。駆動部51に上側のソレノイドを作動させる切り換え信号が入力されると、可動鉄心53がそれに引きつけられて上方に移動し、下側のソレノイドを作動させる切り換え信号が入力されると、可動鉄心53がそれに引きつけられて下方に移動する。
【0022】
この可動鉄心53の一部は、本体52の外部に露呈されており、この露呈部分に溝53aが形成されている。この溝53aと絞り板37に設けられた駆動ピン37cとが係合する。この係合により、可動鉄心51の移動に連動して駆動ピン37cが上下方向に移動し絞り板37が回動する。
【0023】
この絞り板37の回動範囲は、シャッタカバー39の背面に設けられたストッパ48と、ストロボ装置13の前面に設けられたストッパ49とで規制される。ストッパ48,49は、絞り板37が第1の位置及び第2の位置まで回動した時に、それぞれ絞り板37と当接することにより、その回動を規制する。
【0024】
また、絞り板37の端部37dには、トグルバネ54の一端54aが取り付けられている。このトグルバネ54は、絞り板37が第1の位置又は第2の位置に回動した時に、バネ付勢により絞り板37をそれぞれの位置に保持するためのものである。トグルバネ54は、その他端54bがシャッタカバー39に取り付けられており、絞り板37が回動すると、これに伴って、他端54bを中心として回動する。すなわち、図5に示すように、絞り板37が、(A)に示す第1の位置から、(B)に示す第2の位置に回動すると、トグルバネ54は、時計方向に向けて回転する。この反対に、絞り板37が、第2の位置から第1の位置に向けて回動すると、トグルバネ54は、反時計方向に向けて回転する。
【0025】
そして、トグルバネ54は、両端54a,54bが互いを斥ける方向に付勢力が働くように蓄勢して取り付けられる。このため、絞り板37が第1の位置にある時には、一端54aが端部37dを下方に押し下げる方向に付勢し、この付勢により、絞り板37が第1の位置に保持される。他方、絞り板37が第2の位置にある時には、一端54aが端部37dを上方に押し下げる方向に付勢し、この付勢により、絞り板37が第2の位置に保持される。
【0026】
ストロボ装置13は、メインコンデンサ56,シンクロスイッチ46,昇圧コイルなどの回路部品を取り付けた回路基板57と、ストロボ放電管やリフレクタ等を含む発光部58と、電源電池59(図3参照)とからなる。CdS26もこの回路基板57に接続される。回路基板57には、回路パターンがプリントされるとともに、各種回路素子が取り付けられてストロボ回路及び絞り制御回路が形成されている。回路基板57の前面には、軸47等の他、一対の接片61が設けられている。
【0027】
また、回路基板57の前面には、受け板62を介してストロボスイッチ27がスライド自在に取り付けられる。ストロボスイッチ27の背面には、ストロボ充電を開始するとともに、絞り制御回路を作動させるための作動スイッチ63が取り付けられている。ストロボスイッチ27をオン位置にスライドすると、この作動スイッチ63が各接片61間を導通させてストロボ充電を開始するとともに、絞り制御回路が作動する。
【0028】
また、ストロボスイッチ27には、これをオフする時に、絞り板37に設けられたピン37eと当接してこのピン37eを押し下げる押圧レバー27aが設けられている。この押圧レバー27aにより、ストロボスイッチ27をオフすると、その時の被写体輝度に関わらず、絞り板37が強制的に第1の位置にセットされる。
【0029】
これにより、ストロボスイッチ27がオフしている時には、絞りが小絞りにセットされるようにするとともに、絞り制御回路の作動を開始する時には、常に絞り板37が第1の位置にセットされるようにしている。また、ストロボスイッチ27をオンすると、押圧レバー27aがピン37eの移動経路から退避するので、絞り板37が回動可能な状態になる。
【0030】
ストロボ回路の例を示す図6において、ストロボ回路は、作動スイッチ63をオンすると、発振トランジスタ66が導通して昇圧コイル67が作動する。昇圧コイル67から得られる二次電流によってメインコンデンサ56とトリガコンデンサ68に充電が行われ、メインコンデンサ56が規定の充電レベルに達するとネオン管69が点灯する。シャッタ羽根38の開放によりシンクロスイッチ46がONすると、トリガコンデンサ68の放電によりトリガコイル71の一次側に電流が流れ、その二次側に接続されたトリガ電極72に高電圧が発生する。これによりメインコンデンサ56に蓄えられていた電荷がストロボ放電管73を通して放電され、ストロボ発光する。
【0031】
他方、絞り制御回路の例を示す図1及びその回路のタイミングチャートを示す図7において、絞り制御回路は、CdS26,コンパレータ76,インバータ77,ANDゲート78,NORゲート79,第1及び第2のソレノイド81,82を備えている。この絞り制御回路の電源電池59及び作動スイッチ63は、ストロボ回路と共通である。第1のソレノイド81は、可動鉄心53を上方に吸引して、絞り板37を第1の位置に回動する。第2のソレノイド82は、可動鉄心53を下方に吸引して、絞り板37を第2の位置に回動する。
【0032】
コンパレータ76は、基準電圧Vref と、CdS26と抵抗84とで分圧された入力電圧Vinとを比較して、ハイ(H)レベル又はロー(L)レベルの信号を出力するためのものである。被写体輝度が高輝度の時、CdS26の抵抗値は低いので、入力電圧Vinが低い。他方、被写体輝度が低輝度の時、CdS26の抵抗値は高く、入力電圧Vinは高い。
【0033】
コンパレータ76は、入力電圧Vinが基準電圧Vref よりも低い時(被写体輝度が高輝度の時)には、H信号を出力しつづける。被写体輝度が減少して、入力電圧Vinが徐々に増加して基準電圧Vref に近づき、基準電圧Vref を上回ったときに、出力信号がH信号からL信号に変化する。その後、入力電圧Vinが基準電圧Vref を上回っている間、L信号を出力しつづける。そして、被写体輝度が増加して、入力電圧Vinが基準電圧Vref を下回ると、H信号に変化する。
【0034】
コンパレータ76から出力された信号は、ANDゲート78,NORゲート79の各々の一方の入力端子78a,79aにそれぞれ入力される。また、この出力信号は、インバータ77にも入力される。このインバータ77によって反転されて出力された信号が、コンデンサ86と抵抗85とによって遅延されて、ANDゲート78,NORゲート78の各々の他方の入力端子78b,79bに入力される。
【0035】
まず、入力電圧Vinが基準電圧Vref よりも低い時(被写体輝度が高輝度の時)、コンパレータ76からH信号が出力される。この時、入力端子78a,79aにはH信号が、入力端子78b,79bにはインバータ77を経由してL信号が入力される。このため、ANDゲート78,NORゲート79ともに、L信号を出力するので、トランジスタ87,88は作動せず、したがって、第1及び第2のソレノイド81,82も作動しない。
【0036】
また、この反対に、入力電圧Vinが基準電圧Vref よりも高い時(被写体輝度が低輝度の時)、コンパレータ76からL信号が出力される。この時、入力端子78a,79aにはL信号が、入力端子78b,79bにはインバータ77を経由してH信号が入力される。このため、ANDゲート78,NORゲート79ともに、L信号を出力するので、第1及び第2のソレノイド81,82は作動しない。このように、入力電圧Vinが基準電圧Vref の上下で、ある程度定常状態にある時には、第1及び第2のソレノイド81,82は作動しない。
【0037】
これに対して、入力電圧Vinが変化して基準電圧Vref を横切る時には、ANDゲート78からトランジスタ87を作動させる駆動パルス、又は、NORゲート79からトランジスタ88を作動させる駆動パルスが選択的に発生して、第1又は第2のソレノイド81,82を作動させる。
【0038】
まず、入力電圧Vinが増加して基準電圧Vref を上回ると(被写体輝度が減少)、コンパレータ76からの出力信号がH信号からL信号に変化する。このL信号が入力端子78a,79aに入力される。この時、NORゲート79は、その入力端子79a,79bに、ともにL信号が入力されるので、H信号を出力する。このNORゲート79のH信号の出力は、その入力端子79bにインバータ77からH信号が入力されるまでの間、すなわち、コンデンサ86と抵抗85とによって入力が遅延される間、つづく。これが駆動パルスとなり、一定時間、第2のソレノイド82を作動させ、絞り板37を第2の位置に回動する。
【0039】
次に、入力電圧Vinが減少して基準電圧Vref を下回ると(被写体輝度が増加)、コンパレータ76の出力がL信号からH信号に変化する。このH信号が入力端子78a,79aに入力される。この時、ANDゲート78は、その入力端子79a,79bにともにH信号が入力されるので、H信号を出力し、トランジスタ87を作動させる駆動パルスを発生する。この駆動パルスによって、一定時間、第1のソレノイド81が作動し、絞り板37が第1の位置に回動する。
【0040】
このように、予め設定された基準電圧Vref を入力電圧Vinが上回る時と、下回る時に絞り板37の切り換えが行われる。基準電圧Vref は、抵抗90と抵抗95との分圧値となる。しかし、その値は、入力電圧Vinが増加していく時と、それが減少していく時とでは、微妙に変化する。
【0041】
これは、いわゆるヒステリシスと呼ばれる現象で、入力電圧Vinが増加する時の基準電圧Vref と、入力電圧Vinが減少する時の基準電圧Vref との間に差が生じる。この差の大きさがヒステリシスの幅となり、これは抵抗91と抵抗92との大きさで決まる。ヒステリシスの幅が小さいと、ノイズによる影響を受けやすくなる。すなわち、入力電圧Vinが基準電圧Vref 付近にある時に、ノイズの影響を受けて駆動パルスの発生が繰り返されるという誤作動が生じやすくなる。また、このヒステリシス幅が大きいと、ノイズによる誤作動が生じにくくなる一方、入力電圧Vinが増加する時の基準電圧Vref と、それが減少する時の基準電圧Vref との差が大きくなってしまう。ヒステリシス幅は、これらを勘案して適宜選択される。
【0042】
また、コンデンサ89と抵抗84とは、作動スイッチ63をオンした時に、入力電圧Vinがコンパレータ76に入力するのを遅らせて、コンパレータ76の出力を初期化するためのものである。作動スイッチ63をオンした時、絞り板37は、常に第1の位置に設定されている。このため、コンパレータ76の出力も、絞り板37が第1の位置にある時に出力されるべきH信号に設定する必要がある。入力電圧Vinの入力を遅らせることで、被写体輝度の状態に関わらず、作動スイッチ63をオンした直後は、基準電圧Vref が入力電圧Vinを常に上回ることになる。したがって、作動スイッチ63をオンした直後はコンパレータ出力がH信号に設定される。
【0043】
以下、上記構成の作用について説明する。ストロボスイッチ27をオンすると、作動スイッチ63がオンする。作動スイッチ63がオンされると、ストロボ充電が開始され、絞り制御回路も作動を開始する。同時に、ストロボスイッチ27の押圧レバー27aが、絞り板37のピン37eの移動経路上から退避して、絞り板37が回動可能な状態になる。
【0044】
作動スイッチ63をオンした直後、入力電圧Vinのコンパレータ76への入力がコンデンサ89と抵抗84とによって遅延されるから、その間、被写体輝度に関わらず、コンパレータ76はH信号を出力する。被写体輝度が低輝度の場合には、入力電圧Vinが増加して基準電圧Vref を上回るから、コンパレータ出力がL信号に変化する。これにより、第2のソレノイド82を作動させる駆動パルスが発生し、絞り板37が第2の位置に回動する。この絞り板37の回動に連動して、トグルバネ54が、絞り板37を第2の位置に付勢する位置に回動する。このため、駆動パルスによる第2のソレノイド82の作動が終了しても、絞り板37はトグルバネ54により第2の位置に保持される。
【0045】
他方、被写体輝度が高輝度の場合には、入力電圧Vinが基準電圧Vref を上回らないから、駆動パルスは発生せず、絞り板37は回動しない。この時、第1のソレノイド81は作動しないが、トグルバネ54によって絞り板37は第1の位置に保持された状態を保つ。
【0046】
巻き上げノブ33を回動すると、フイルムが1コマ巻き上げられるとともに、シャッタチャージが行われる。フレーミングの後、シャッタボタン24を押下すると、シャッタ羽根38が開閉して撮影が行われる。シャッタ羽根38が全開位置にきた時に、シンクロスイッチ46がオンしてストロボ発光する。被写体輝度が低い場合には、通常の絞り開口40がセットされているから、撮影光は、撮影レンズ20,通常の絞り開口40を通って写真フイルム19に露光する。他方、被写体輝度が高い場合には、小絞り開口37aを通って写真フイルム19に露光する。被写体輝度に応じた絞りがセットされているので、適正な露光量で撮影が行われる。
【0047】
また、被写体輝度が高輝度の状態から減少して、入力電圧Vinが基準電圧Vref を上回ると、第2のソレノイド82を作動させる駆動パルスが発生し、絞り板37が第2の位置に回動し、通常の絞り開口40がセットされる。他方、被写体輝度が増加して、入力電圧Vinが基準電圧Vref を下回ると、第1のソレノイド81を作動させる駆動パルスが発生し、絞り板37が第1の位置に回動し、小絞り開口37aがセットされる。このように、日中にストロボ撮影を行う場合など被写体輝度が高い場合には、小絞り開口37aに設定され、他方、夜間や室内など被写体輝度が低い場合には、通常の絞り開口40に設定されるというように、被写体輝度に応じて絞り板が自動的に切り換えられるので、適正な露光量での撮影が可能となる。
【0048】
また、絞り切り換えは、絞り制御回路が作動している間、輝度の変化に応じて即座に行われるので、撮影時にシャッタボタン24を半押し操作して絞り切り換えを行う等特別な操作が不要となる。このため、絞り制御回路を作動させている間は、常に輝度に応じた絞りが設定されているので、適正な露光での撮影が即座に可能となり、シャッタチャンスを逃してしまうようなことはない。
【0049】
また、駆動パルスを発生させて絞り板37を駆動するので、電源電池59の消耗が抑えられる。そして、絞り板37をトグルバネ54によって各位置に保持するので、それを保持するために電源電池59を消耗する必要がない。
【0050】
撮影が終了し、ストロボスイッチ27をオフすると、作動スイッチ63もオフされる。このオフ時に、絞り板37が第2の位置にセットされている場合には、押圧レバー27aが絞り板37のピン37eと当接し、ピン37eを下方に押し下げて絞り板37を第1の位置にセットする。ストロボを使用しないで撮影する場合、一般に、被写体輝度は高いと考えられるので、小絞りをセットすることにより、適正な露光量で撮影が行われる。
【0051】
上記例では、絞り板を駆動するソレノイドとして、1つの可動鉄心とその両端に巻いた2つのコイルとで構成した2連ソレノイドを使用し、一方のソレノイドを選択的に作動させることにより可動鉄心を上下方向に移動して、絞り板を切り換える例で説明したが、図8及び図9に示すように、1つの可動鉄心と1つのコイルとで構成した1個のソレノイドを使用し、コイルに流す電流の向きを変化させることにより可動鉄心を上下方向に移動して、絞り板を切り換えるようにしてもよい。
【0052】
駆動部96は、1つの可動鉄心97と、その一端に巻きつけられたコイルとで構成されたソレノイド98を備えている。可動鉄心97の一部には溝97aが形成されており、この溝97aとピン37cとが係合することにより、可動鉄心97の上下動に連動して絞り板37が回動する。この可動鉄心97には永久磁石が使用されており、その極性とコイルに流れる電流の向きによってできる極性とにより、吸収、反発させて可動鉄心97を上下動させる。
【0053】
この例の絞り制御回路には、そのANDゲート78の出力側にトランジスタ101,102が、そのNORゲート79の出力側にトランジスタ103,104がそれぞれ接続される。これらのトランジスタ101〜104はソレノイド98に接続される。
【0054】
被写体輝度が増加して、入力電圧Vinが基準電圧Vref を下回ると、ANDゲート78から駆動パルスが出力され、トランジスタ101,102が作動する。これにより、ソレノイド98にA方向の電流が流れて可動鉄心97が上方に移動して絞り板37が第1の位置に回動する。他方、被写体輝度が増減少して、入力電圧Vinが基準電圧Vref を上回ると、NORゲート79から駆動パルスが出力され、トランジスタ103,104が作動する。これにより、ソレノイド98にB方向の電流が流れて可動鉄心97が下方に移動して絞り板37が第2の位置に回動する。
【0055】
上記例では、作動スイッチとストロボスイッチとを連動させて、ストロボスイッチがオンしている時に絞り制御回路が作動するようにしているが、図10に示すように、作動スイッチ105をレンズカバーと連動させるようにしてもよい。レンズ付きフイルムユニット106は、レンズカバー107を備えている。このレンズカバー107は、使用時に撮影レンズ20を露呈する開き位置(図示)と、不使用時に撮影レンズ20を覆う閉じ位置との間で開閉自在に取り付けられている。ファインダ物窓108の横には、一対の金属接片からなる作動スイッチ105が一部露呈されている。作動スイッチ105は、使用時には、両接片が接触してオンする。レンズカバー107には、この両接片を絶縁し、作動スイッチ105をオフするための絶縁片109が設けられている。レンズカバー107が閉じられると、絶縁片109が両接片間に差し込まれて、作動スイッチ105がオフされる。
【0056】
これにより、レンズカバー107が開いた時だけ、絞り制御回路が作動するので、電源電池の無駄な消耗が防止される。また、ストロボスイッチ27と連動させていないので、ストロボ撮影を行わない場合でも、絞り制御回路を作動させることができる。
【0057】
なお、この例では、レンズカバー107が下方のヒンジ111に支持されて、レンズカバー107が前方側に倒れ込むように開く例で説明してるが、横方向にスライド自在に設けられたレンズカバーでもよい。また、この例では、レンズカバー107の裏面に、CdS112が設けられている。このため、仮に作動スイッチ105を設けなかったとしても、レンズカバー107が閉じ位置にある時には、CdS112の受光面に光が入ることはなく、輝度変化を検出しないので、絞り板37の切り換えが行われてしまうようなことはない。また、もちろん、作動スイッチ105を設けた場合には、CdS112をレンズカバー107の表面に設けてもよいし、また、レンズカバー107ではなく、本体側に設けてもよい。
【0058】
また、図11に示すレンズ付きフイルムユニット116のように、撮影時に本体を保持するグリップ部117に操作ボタン118を設け、この操作ボタン118に作動スイッチを連動させてもよい。これによれば、グリップ部117で作動スイッチのオン/オフを行えるので、操作がしやすい。
【0059】
また、絞り制御回路の作動スイッチを設けずに、常に絞り制御回路をオンするようにしてもよい。これによれば、レンズ付きフイルムユニットをその包装袋から取り出した時から、CdSによる輝度変化の検出が開始される。
【0060】
また、上記例では、絞り制御回路がオンしている間、常時測光するようにしているが、例えば、測光間隔を監視する内部タイマを設け、この内部タイマにより一定間隔(例えば、1秒間隔)で測光し、その時の輝度状態に応じた電気信号を前記一定間隔で出力するようにしてもよい。
【0061】
なお、上記例では、いずれも、ストロボ内蔵型のレンズ付きフイルムユニットに実施した例で説明しているが、ストロボ非内蔵型のものでもよいし、また、レンズ付きフイルムユニットでなくてもよく、コンパクトカメラに実施してもよい。
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明のカメラの自動露光制御装置は、少なくとも1つの絞り開口が形成され、前記絞り開口が撮影光路上に位置して絞り径を小さくする第1の位置と、前記絞り開口が撮影光路上から退避して絞り径を大きくする第2の位置との間で移動自在に設けられた絞り板と、被写体輝度に応じた光電信号を出力する測光手段と、前記光電信号の変化に応じて前記絞り板を移動させるために、予め前記光電信号と比較する閾値が設定され、被写体輝度が高輝度から低輝度に減少する際に前記光電信号が前記閾値を横切った時、第1の切り換え信号を出力し、被写体輝度が低輝度から高輝度に増加する際に前記光電信号が前記閾値を横切った時、第2の切り換え信号を出力する絞り制御回路と、前記第1の切り換え信号に応答して絞り板を第1の位置に移動させ、第2の切り換え信号に応答して絞り板を第2の位置に移動させるとともに、絞り板をそれぞれの位置に向けて移動させた後に駆動が断たれる電磁駆動手段と、前記電磁駆動手段によって第1又は第2の位置に移動した絞り板を、電磁駆動手段の駆動が断たれた状態でそれぞれの位置に保持する保持手段とを設けたから、絞り切り換えを行うための電池の消耗を抑えることができる。このため、容量が小さい電池を内蔵するレンズ付きフイルムユニット等には好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】絞り制御回路を示す回路図である。
【図2】レンズ付きフイルムユニットの全体斜視図である。
【図3】レンズ付きフイルムユニットの分解斜視図である。
【図4】露光部の分解斜視図である。
【図5】絞り板の動作を示す正面図である。
【図6】ストロボの回路を示す回路図である。
【図7】駆動パルスの発生タイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】1個のソレノイドで駆動する絞り板の動作を示す。
【図9】図8の例の絞り制御回路を示す回路図である。
【図10】作動スイッチとレンズカバーとを連動させたレンズ付きフイルムユニットの全体斜視図である。
【図11】グリップ部に設けた操作ボタンと作動スイッチとを連動させたレンズ付きフイルムユニットの全体斜視図である。
【符号の説明】
26 CdS
27 ストロボスイッチ
37 絞り板
37a 小絞り開口
59 電源電池
76 コンパレータ
81,82,98 ソレノイド

Claims (6)

  1. 少なくとも1つの絞り開口が形成され、前記絞り開口が撮影光路上に位置して絞り径を小さくする第1の位置と、前記絞り開口が撮影光路上から退避して絞り径を大きくする第2の位置との間で移動自在に設けられた絞り板と、
    被写体輝度に応じた光電信号を出力する測光手段と、
    前記光電信号の変化に応じて前記絞り板を移動させるために、予め前記光電信号と比較する閾値が設定され、被写体輝度が高輝度から低輝度に減少する際に前記光電信号が前記閾値を横切った時、第1の切り換え信号を出力し、被写体輝度が低輝度から高輝度に増加する際に前記光電信号が前記閾値を横切った時、第2の切り換え信号を出力する絞り制御回路と、
    前記第1の切り換え信号に応答して絞り板を第1の位置に移動させ、第2の切り換え信号に応答して絞り板を第2の位置に移動させるとともに、絞り板をそれぞれの位置に向けて移動させた後に駆動が断たれる電磁駆動手段と、
    前記絞り制御回路及びストロボへ給電を開始するオン位置と、前記給電を断つオフ位置との間で移動自在であり、前記絞り制御回路とストロボを連動させてオンオフするストロボスイッチと、
    前記電磁駆動手段によって第1又は第2の位置に移動した絞り板を、電磁駆動手段の駆動が断たれた状態でそれぞれの位置に保持する保持手段とが設けられており、
    前記ストロボスイッチが前記オフ位置に移動するときに、前記絞り板が前記第2の位置にある場合には、前記ストロボスイッチに連動して前記絞り板を前記第1の位置に移動させるとともに、前記ストロボスイッチをオン位置に移動するときには、その直後の前記被写体輝度が低輝度である場合には、輝度変化が無くても、前記絞り制御回路が前記第2の切り換え信号を出力することにより、前記絞り板を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させることを特徴とするカメラの自動露光制御装置。
  2. 前記電磁駆動手段は、可動鉄心の両端にそれぞれ配置した2つのコイルからなる2連ソレノイドであり、第1の切り換え信号に応答して一方のコイルへ一定時間電流を供給することにより前記可動鉄心を第1方向に移動させ、第2の切り換え信号に応答して他方のコイルへ一定時間電流を供給することにより前記可動鉄心を第2方向に移動させることを特徴とする請求項1記載のカメラの自動露光制御装置。
  3. 前記電磁駆動手段は、可動鉄心の一端に1つのコイルを配置したソレノイドであり、前記第1の切り換え信号に応答して前記コイルへ正方向に一定時間電流が供給されることにより前記可動鉄心を第1方向に移動させ、前記第2の切り換え信号に応答して前記コイルへ逆方向に一定時間電流が供給されることにより前記可動鉄心を第2方向に移動させることを特徴とする請求項1記載のカメラの自動露光制御装置。
  4. 前記保持手段は、絞り板が第1又は第2の位置の一方から他方に移動することに追従して死点を越えて移動し、絞り板を他方の位置に向かって付勢するトグルバネであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1つ記載のカメラの自動露光制御装置。
  5. 前記絞り制御回路がオンしている間、常時測光又は一定の間隔を空けて測光を行うことを特徴とする請求項1〜4いずれか1つ記載のカメラの自動露光制御装置。
  6. 前記可動鉄心には、絞り板に設けられた駆動用のピンと係合する溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1つ記載のカメラの自動露光制御装置。
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