JP3960548B2 - (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。なお、「(メタ)アクリル酸」の表記はアクリル酸とメタクリル酸の一方または両方を意味する。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、(メタ)アクリル酸エステルは重合性が極めて高い液体であり、その重合防止のため、ハイドロキノン、フェノチアジン等の重合防止剤を含有させることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、反応器に(メタ)アクリル酸とアルコールとを供給して(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合、反応液に重合防止剤を溶解させても、反応器の天板(マンホール)等の反応器気相部に存在する部材において、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの蒸気が凝縮し、当該凝縮液中で重合するため、長期間に亘って連続運転を行なうことが出来ないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−355570号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、反応器気相部に存在する部材における(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止し、長期間に亘って連続運転を行なうことが出来る様に改良された(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、反応器に(メタ)アクリル酸とアルコールとを供給して(メタ)アクリル酸エステルを製造するに際し、反応器の底部から上部の空間部に突出する様に反応液供給配管を配置し、当該反応液供給管の途中にスクリーンの目開きが60〜100メッシュであるストレーナーを設け、当該反応液供給配管の先端部にスプレーノズルを設け、そして、反応液に重合防止剤を溶解させ、上記のスプレーノズルから反応器気相部に存在する部材に、重合防止剤が溶解した反応液を噴霧して反応器気相部に存在する部材に接触させつつ反応を行なうことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明において好適に使用される反応器とその付帯設備の一例の断面説明図である。
【0008】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造は、基本的には従来公知の方法と同じである。
【0009】
本発明によって製造されるアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル等が挙げられる。本発明によって製造されるメタクリル酸エステルとしては、上記のアクリル酸エステルに対応した各種のメタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0010】
本発明において、原料アルコールとしては、上記の(メタ)アクリル酸エステルに対応する各種のアルコールが使用される。(メタ)アクリル酸とアルコールとの反応は、通常、酸性触媒の存在下に行なわれ、酸性触媒としては、パラトルエンスルホン酸などが使用される。
【0011】
上記の反応は工業的には連続的に行われる。すなわち、(メタ)アクリル酸とアルコールとは反応器に連続的に供給され、生成した(メタ)アクリル酸エステルと副生した水は反応器から連続的に抜出される。(メタ)アクリル酸に対するアルコールの供給モル比は通常0.5〜2、反応温度は通常80〜100℃、反応圧力は通常25〜70kPa、反応時間(滞留時間)は通常1〜5時間である。
【0012】
重合防止剤としては、各種のフェノール化合物、フェノチアジン化合物、銅化合物などが使用される。フェノール化合物としては、ハイドロキノン、メトキノン(メトキシハイドロキノン)、ピロガロール、カテコール、レゾルシン等が挙げられ、フェノチアジン化合物としては、フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、ビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン等が挙げられ、銅化合物としては、塩化第2銅、酢酸銅、炭酸銅、アクリル酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅などが挙げられる。
【0013】
重合防止剤は適当な溶媒に溶解して使用され、斯かる溶媒としては、例えば、フェノール化合物の場合は、水、酢酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族化合物、ケトン化合物、アルコール等が挙げられる。反応液中における重合防止剤の濃度は通常0.01〜1.5重量%である。
【0014】
本発明においては、図1に示す様な撹拌槽型反応器が好適に使用される。撹拌槽型反応器は、両サイド(11)が略半球状となされた円筒体(1)に攪拌器(2)を付設して構成される。円筒体(1)の天井部には、副生した水を抜出すためのベーパー管(3)と点検用のマンホール(4)が備えられる。また、円筒体の(1)内部は、反応に必要な滞留時間に応じ、仕切板(5)によって適当容量の容室に区切られている。この場合、各容室は円筒体(1)の外部に設置されたバルブ(図示せず)付き連絡配管(61)によって連絡され、各容室毎に攪拌器(2)が設置される。
【0015】
原料の(メタ)アクリル酸とアルコールは、ポンプ(図示せず)により反応器の一端の上部から供給され、生成物の(メタ)アクリル酸エステルは、ポンプ(7)により反応器の他端の底部から抜出される。そして、副生した水はベーパー管(3)から抜出される。
【0016】
本発明の特徴は、重合防止剤が溶解した反応液を反応器気相部に存在する部材に接触させつつ反応を行なう点にある。すなわち、本発明においては、重合防止剤含有反応液で反応器気相部に存在する部材を濡らすことにより、反応器気相部に存在する部での(メタ)アクリル酸エステル等の重合を防止する。
【0017】
反応器気相部に存在する部材としては、図1に示した例の場合は、マンホール(4)、円筒体(1)の天板などが挙げられる。上記の反応液と部材との接触手段は、特に制限されないが、ポンプによってスプレーノズルから反応液を噴霧する手段が好適に採用される。例えば、前記の反応液抜出し用のポンプ(7)の吐出側配管(62)(反応液抜出し配管)に反応液供給配管(63)を分岐させて接続し、当該反応液供給配管の先端部にスプレーノズル(8)を設ける。この場合、反応液供給配管(63)は、円筒体(1)の底部から上部の空間部に突出する様に配置することにより、反応器気相部に露出して(メタ)アクリル酸エステルの重合が起こる配管部分が少なくなる。スプレーノズル(8)の型式は、適宜選択され、例えば、面積の狭いマンホール(4)への噴霧には充円錐型スプレーノズル、面積の広い仕切板(5)や円筒体(1)の天板への噴霧には広角扇型スプレーノズルが好適に使用される。
【0018】
本発明においては、反応液中に蓄積される固形物を連続的に除去するため、反応液供給管(63)の途中にストレーナー(9)を設ける。図1に示した例においては、2個のストレーナー(9)が切替え使用可能に設けられている。ストレーナー(9)のスクリーンの目開きは、60〜100メッシュである。また、反応液供給管(63)の途中には、流量計(6f)と圧力計(6p)とを設置し、これらにより、スプレーノズル(8)に供給される反応液の流量を管理するのが好ましい。反応液の供給量は、反応器気相部に存在する部材が常に反応液によって濡れている状態を維持し得る限り、特に制限されないが、通常200L/Hr以上、好ましくは200〜800L/Hrである。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
図1に示すのと同様のステンレス製(SUS316L)撹拌槽型反応器を使用した。円筒体(1)の直径は3000mm、長さは6000mmである。マンホール(4)の直径は500mm、仕切板(5)の高さは2800mmである。
【0021】
上記の撹拌槽型反応器にアクリル酸とブチルアルコールとを供給し、更に、反応液中の濃度が1重量となる量のパラトルエンスルホン酸と0.03重量%となる量のハイドロキノンを供給した。ハイドロキノンは、8重量%濃度のブチルアルコール溶液として供給した。そして、反応温度94℃、反応圧力35kPa、反応時間(滞留時間)3時間の条件で連続的にエステル化反応を行なった。
【0022】
エステル化反応の間、マンホール(4)、円筒体(1)の天板、仕切板(5)の空間露出部のそれぞれの全面に対し、スプレーノズル(8)から反応液を噴霧した。噴霧量は、マンホール(4)に対しては330L/Hr、円筒体(1)の天板に対しては580L/Hr、仕切板(5)の空間露出部に対しては420L/Hrとした。約1年間の連続運転の後、反応を停止し、マンホール(4)から反応器気相部に存在する部材を観察した結果、重合物の付着は認められなかった。
【0023】
比較例1
実施例1において、スプレーノズル(8)からの反応液の噴霧を行なわなかった以外は、実施例1と同様に連続エステル化反応を行なった。反応開始後、約1ケ月経過した時点でストレーナー(9)に固形物が観察され、約2ケ月経過後にはストレーナー(9)に固形物が頻繁に詰まる様になったので反応を停止した。マンホール(4)から反応器気相部に存在する部材を観察した結果、マンホール(4)、円筒体(1)の天板、仕切板(5)の空間露出部に重合物の付着が認められ、剥離してその合計量を測定した結果、200Kgであった。
【0024】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、反応器気相部に存在する部材における(メタ)アクリル酸エステル等の重合を防止し、長期間に亘って連続運転を行なうことが出来る様に改良された(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において好適に使用される反応器とその付帯設備の一例の断面説明図
【符号の説明】
1:円筒体
2:攪拌器
3:ベーパー管
4:マンホール
5:仕切板
61:連絡配管
62:反応液抜出し配管
63:反応液供給配管
6f:流量計
6p:圧力計
7:ポンプ
8:スプレーノズル
9:ストレーナー
Claims (1)
- 反応器に(メタ)アクリル酸とアルコールとを供給して(メタ)アクリル酸エステルを製造するに際し、反応器の底部から上部の空間部に突出する様に反応液供給配管を配置し、当該反応液供給管の途中にスクリーンの目開きが60〜100メッシュであるストレーナーを設け、当該反応液供給配管の先端部にスプレーノズルを設け、そして、反応液に重合防止剤を溶解させ、上記のスプレーノズルから反応器気相部に存在する部材に、重合防止剤が溶解した反応液を噴霧して反応器気相部に存在する部材に接触させつつ反応を行なうことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
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