JP6497454B2 - アクリル酸ブチルの製造方法 - Google Patents
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Description
、アクリル酸に対する過剰量のブタノールが反応器へ供給される(特許文献3)。
直列多段の反応器を用いてアクリル酸とブタノールとを反応させてアクリル酸ブチルを含む反応混合物とする反応工程と、前記反応工程で生成した前記アクリル酸ブチルを含む反応混合物から、前記アクリル酸ブチルを、蒸留塔を用いて蒸留によって分離する蒸留工程とを含む、アクリル酸ブチルの製造方法であって、
前記反応工程において、前記直列多段の反応器のうち、少なくとも最下流の反応器に供給する熱源の熱量を実質的に一定にすることを特徴とする、アクリル酸ブチルの製造方法である。
以下、添付図面に基づいて本発明の方法を詳細に説明する。図1は、本発明におけるアクリル酸ブチル反応工程に用いる反応蒸留装置の一例を示すフローシートである。
反応器は個々に独立した容器でも、仕切板によって複数の反応室に分割された形状でも、またそれらの組み合わせであってもよい。
直列複数の反応器においては、下流側の反応器ほどアクリル酸の反応転化率が高く、最も下流側の反応器では、該反応転化率は95%以上に達する。未反応アクリル酸をアクリル酸ブチルから分離回収することが難しく、よってアクリル酸原料原単位の点から該反応転化率は高い程望ましいが、該転化率の上昇と共に副生物の増加が加速する為、通常、該反応転化率は99.5%以下である。反応器に供給されるブタノールはアクリル酸に対して小過剰な為、最下流側の反応器内液組成は、アクリル酸ブチルを主成分とし、5〜15重量%のブタノールと微量のアクリル酸、酸触媒、及び少量の副生物を含有している。
圧力は一定値となるよう、真空装置の制御を行う。反応装置自体の圧力を制御する事が最も望ましいが、アクリル酸ブチルによる計測部の閉塞とこれによる誤指示を避ける為、反応蒸留装置の塔頂部圧力を制御することが望ましい。用いられる真空装置としては、液封式真空ポンプか、蒸気エジェクター、またはその組み合わせが一般的であり、真空ラインのバルブ開閉により圧力制御を行う。反応器の圧力は全て同じでもよいが、下流側の反応液ほど沸点が高くなるので、効率よく反応蒸留を進める為に、下流側ほど圧力の低い方が望ましい。
ジャケット、又は反応器外部の循環路に設けられた熱交換器に熱源を供給する事で行われる。熱源としては水蒸気が最も一般的であるが、有機または無機の熱媒体溶液を用いることも出来る。該熱源の供給量を、反応器内の液温が設定値となるよう、反応器毎に調整することが望ましい。反応器の設定温度は全ての反応器で同一であってもよいが、下流側の反応液ほど沸点が高くなるので、効率よく反応蒸留を進める為に、下流側ほど温度が高いほうが望ましい。最上流の反応器と最下流の反応器との温度差として、好ましくは2〜15℃である。
アクリル酸の反応転化率が高い状態では、最下流の反応器等の温度及び圧力を精度よく制御しても、反応転化率が一定とならない。反応温度を充分に高くすることなどで、その反応転化率を高くすることは可能だが、3−ブトキシプロピオン酸ブチルの副生が増大する。また、エステル化反応は可逆反応であり、逆反応の加水分解には水が必要であるから、効率良く水を留去する必要がある。
このとき、最下流の反応器から1つ上流側の反応器に供給する熱源の熱量も併せて、実質的に一定に制御してもよい。
熱媒体が水蒸気で熱交換により凝縮を伴う場合、その熱量は[単位時間当たりの蒸気流量]×{[水の蒸発潜熱]+[水蒸気の比熱]×([水蒸気の供給温度]−[水蒸気の凝縮温度])+[水の比熱]×([水蒸気の凝縮温度]−[熱交換器出口の水温])}で定義される。
上記熱量は、微小時間内での変動を禁ずるものではなく、反応器内に連続的に供給及び排出されるプロセス流体に対して一定の熱量を供給するものであるから、反応器内におけるプロセス流体の滞留時間θに対して、最大でθにおける供給熱量の平均値、好ましくはθ/2、より好ましくはθ/4における供給熱量の平均値を意味する。
「実質的に一定にする」とは、上記供給熱量の平均値が概略一定であることであり、その変動は多くとも15%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
なお、以下に示す図表の数値は、特に断らない限り、熱源として水蒸気を用いた場合の、アクリル酸ブチルの商業設備における約2年分の運転及び分析データに基づくものである。なお、運転開始時や運転条件変更の直後など、定常状態に達していないと考えられるものについては、除してある。
ピオン酸ブチル、および水の各濃度(重量%)である。これらは、同一日時に一斉にサンプリングして分析したものである。アクリル酸濃度は指数関数的に減少し、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は緩やかに増加していることが確認される。
ある。図5より、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度と水濃度には、何ら相関がないことが確認できる。
以上より、最下流の反応器における水濃度の低下は、アクリル酸転化率の上昇に寄与するものと考えられる。
二つの温度域各々で、水濃度が低いほどアクリル酸濃度も低いという相関は有しているが、二つを比較した場合、温度が高いほど水濃度は低いとの関係は確認出来なかった。
図9より、最下流反応器の温度と蒸気供給量との間には正の相関があることが確認できる。また、温度を一定にした場合であっても蒸気供給量にはかなりの幅があることが確認できる。
図10より、プラントのロードが一定範囲で、最下流反応器をある特定の温度域にあるように制御した場合であっても、蒸気供給量が取り得る値は広いことが確認できる。すなわち、反応器の温度を制御したとしても蒸気供給量にはかなりの振れ幅があることが確認できる。
各ロードにおいて、蒸気供給量が大きいほど水濃度が小さくなることが確認できる。
すなわち、最下流反応器における水濃度を常に小さく維持するためには、温度を制御するのではなく蒸気供給量を制御すべきである。
蒸気供給量(kg/h)=(ロード(%)−15)(kg/h)
程度が必要という事になる。そして、この平均値よりも10〜20kg/h多めの蒸気が与える影響について蒸留計算したのが図12である。
なお、加熱される液組成としては、水を0.2重量%、ブタノールを6重量%含んだアクリル酸ブチル溶液とし、プラント規模に併せて30kPa下にて加熱/留去した場合の蒸留計算を行った。
図12より、蒸気供給量が20kg/h増加すると、水濃度が0.01〜0.02重量%減少することが確認できる。温度が1℃上昇することも確認できるが、これまで述べてきたように、その現実性については定かではない。
温度制御による運転実績がある場合には、上記と同様の方法により、図11に相当する相関を得る。
一方、実績が無い、又は、新規に建設する場合には、熱交換器の能力に余裕(≧20%)をもって設計し、熱量一定の運転を行って、プロセス液の分析結果を反映させて、最適な熱量供給を行うようにする。
R5の温度制御を止め、蒸気供給量(kg/h)を(ロード(%)−10)(kg/h)とし、約6か月間、運転を継続した。R5の温度は平均で96.3℃(0.3℃上昇)となり、水濃度は0.06重量%、アクリル酸濃度は0.27重量%(標準偏差0.05重量%)、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は3.38重量%となった。
R5におけるプロセス液の滞留時間は約2時間であり、30分平均の供給蒸気量は、上記関係式に対して最大で±7%、標準偏差で3%以下であった。供給蒸気の温度に最大で20℃の差があり、これは蒸気による供給熱量の2%未満に相当する。故に、供給熱量の変動は5%未満であった。
R5出口のアクリル酸濃度が0.30重量%となるよう、分析結果をうけて反応器R1〜5全ての設定温度を全て同じ変化量で変更し、約2か月間、運転を継続した。
温度の上昇は最大で3.6℃であった。アクリル酸濃度は0.30重量%(標準偏差0.34重量%)、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は4.22重量%となった。
R5における30分平均の供給蒸気量は、100%ロードにおいて、平均値に対して最大で±26%、標準偏差で17%であった。
実施例1と同様にして、但し、R4の温度制御を止め、R4への蒸気供給量をR5への供給量の2.2倍として、1か月間、運転を継続した。
水濃度は0.05重量%、アクリル酸は0.26重量%(標準偏差0.05重量%)、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は3.47重量%となった。
R5における供給熱量の変動は5%未満であった。
2 ブタノール
3 酸触媒
11、20、21、22 反応器缶出液
12、13、23、24、25 反応器からの留出ガス
14、26 蒸留塔缶出液
15、27 蒸留塔留出ガス
16、28 有機層(還流液)
17、29 水層
30 反応器缶出液(粗アクリル酸ブチル)
C1、C2 蒸留塔
D1、D2 デカンタ
E1、E2 コンデンサ
R1、R2、R3、R4、R5 反応器
Claims (7)
- 直列多段の反応器を用いてアクリル酸とブタノールとを反応させてアクリル酸ブチルを含む反応混合物とする反応工程と、前記反応工程で生成した前記アクリル酸ブチルを含む反応混合物から、水をアクリル酸ブチルと共に共沸して蒸留塔に送り、蒸留によって水を分離する蒸留工程と、粗アクリル酸ブチルを分離する工程を含む、アクリル酸ブチルの製造方法であって、
ロードと、前記直列多段の反応器のうち少なくとも最下流の反応器に供給する熱源としての蒸気の量と、前記最下流の反応器における水濃度との関係を算出し、前記水濃度が0.07重量%以下となる前記ロードと前記蒸気量との関係を決定する工程を含み、
前記反応工程において、前記蒸気量を、前記水濃度が0.07重量%以下となる蒸気量で一定(ただし、15%以下の変動まで含む。)にすることにより、最下流の反応器の出口液中のアクリル酸濃度を減少させることを特徴とする、アクリル酸ブチルの製造方法。
- 前記直列多段の反応器が3〜8段である、請求項1に記載の方法。
- 前記直列多段の反応器の温度がいずれも80〜110℃である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記直列多段の反応器において、下流の反応器ほど反応器の温度が高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記蒸留塔の塔頂圧力が10〜40kPaである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記蒸留塔が1段または多段である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記蒸留塔が多段である場合、下流の蒸留塔ほど塔頂圧力が低い、請求項6に記載の方法。
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