JP6497454B2 - アクリル酸ブチルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル酸ブチルを製造する方法に関する。
商業的なアクリル酸ブチルの最も一般的な製造方法は、アクリル酸とブタノールを原料とするエステル化反応による製造方法である。その多くは液相反応であり、アクリル酸とは異なる有機酸や無機酸、或いはイオン交換樹脂等が、均一系又は不均一系触媒として用いられる。
生成したアクリル酸ブチルは、前記触媒と水が存在すると、原料のアクリル酸とブタノールに戻る逆反応も起こるので、効率良くエステル化反応を進める為、エステル化反応により生じた水を留去しながらエステル化反応を行う、反応蒸留が最も一般的に用いられる。
反応蒸留の方法としては、反応器への原料及び助剤等の供給、副生物を蒸留により除去しながら反応、反応器の内容物の取り出し、等を順次繰り返し行う回分式(非特許文献1)と、これら操作をすべて継続して行う連続式が挙げられる(特許文献1)。
連続式反応蒸留に比べ、回分式反応蒸留の方が、必要な機器数が少なく、設備投資を低く抑えられるという利点がある。しかし、温度や圧力、組成、流量などの運転条件が実質的に一定な連続式に比べ、これらが時間と共に変化する回分式は、運転管理が煩雑になり、また、原料回収等の為に多くの中間タンクが必要になる、原料回収率が低くなる、等々の欠点を有する。
一般的に、生産規模が大きくなるほど、経済的な優位性から連続式プロセスが選択される傾向にある。アクリル酸ブチルの製造においても、市場規模の拡大に伴って個々の製造設備の規模も拡大する傾向にあり、連続式反応蒸留の占める割合が増加している。
一般的な化合物の、連続式反応蒸留では、高い反応転化率は必須でない。最下流の反応器の内容物に含まれる未反応原料は、下流の分離工程で連続的に分離回収され、回収された未反応原料は該反応蒸留に循環されるからである。
しかしアクリル酸ブチル製造の場合、原料のアクリル酸の沸点は、生成物であるアクリル酸ブチルの沸点の近傍にあり、その蒸留分離が困難であるため、通常、未反応アクリル酸は多量の水やアルカリ水によって抽出分離される(特許文献2)。該分離されたアクリル酸を原料として再利用することは、経済的に不利な場合が殆どであり、通常は廃棄される。
以上よりアクリル酸の損失を抑える観点から、アクリル酸ブチルの製造におけるアクリル酸の反応転化率は極力高くすることが望まれる。一方で、アクリル酸及びアクリル酸ブチルは易重合性化合物であり、反応温度等の操作温度が高くなるほど、また反応時間等の操作時間が長くなるほど、重合による閉塞等のリスクが高まる為、過酷な反応条件は避けねばならない。
重合リスクの低減策としては、減圧による低温化と重合防止剤の添加が一般的である(特許文献2)。操作時間短縮の為には、反応器を直列多段とし、適切な触媒を適量加えることが行われる(特許文献1)。また、アクリル酸の反応転化率をより効率良く高める為
、アクリル酸に対する過剰量のブタノールが反応器へ供給される(特許文献3)。
アクリル酸やアクリル酸ブチルの重合以外にも、エステル化反応に並行して幾つかの副反応が進行する。その最たる副生物は3−ブトキシプロピオン酸ブチルであり、アクリル酸ブチルにブタノールが付加する事で生成する。
アクリル酸ブチルの生成速度は、(アクリル酸濃度)×(ブタノール濃度)に比例する。すなわちアクリル酸ブチルの生成速度はアクリル酸の反応転化率が高くなるに伴い低下するが、3−ブトキシプロピオン酸ブチルの生成速度は、(アクリル酸ブチル濃度)×(ブタノール濃度)に比例する為、アクリル酸の反応転化率が高くなり、アクリル酸ブチル濃度が高いほど大きくなる。
つまり、アクリル酸の損失を低減する目的の為に反応転化率を高めていくと、3−ブトキシプロピオン酸生成によるアクリル酸とブタノールの損失が増大するという、ジレンマに陥るわけである。
副生した3−ブトキシプロピオン酸ブチルは加熱分解によりアクリル酸やブタノール、及びアクリル酸ブチルとして回収可能なことが知られているが、全てを回収できるわけではない故、3−ブトキシプロピオン酸の副生量が少ないほど望ましい。
従来の技術においては、アクリル酸とブタノールを原料として直列複数の反応器を有する反応蒸留で連続的にアクリル酸ブチルを製造する方法において、各反応器の温度を制御して最下流の反応器におけるアクリル酸濃度及び3−ブトキシプロピオン酸量をコントロールしていたが、前記温度制御を一定にしていたとしても該アクリル酸濃度、3−ブトキシプロピオン酸量は変動していた。
特表2002−507194号公報 特開2008−266159号公報 特公昭59−12102号公報
Ulmann’s Enclclopedia of Industrial Chimistry、5版A1巻、P168
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、アクリル酸とブタノールとによる直列多段の反応蒸留において、より効率的なエステル化反応を行うことを目的とし、3−ブトキシプロピオン酸ブチルの生成量を抑制し、アクリル酸の反応転化率を高めるアクリル酸ブチルの連続製造方法の提供を課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アクリル酸の反応転化率が高い状態では、少なくとも最下流の反応器へ供給される熱量を一定値に保つことが、3−ブトキシプロピオン酸ブチルを増加させることなく、アクリル酸の反応転化率を向上させることに効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
直列多段の反応器を用いてアクリル酸とブタノールとを反応させてアクリル酸ブチルを含む反応混合物とする反応工程と、前記反応工程で生成した前記アクリル酸ブチルを含む反応混合物から、前記アクリル酸ブチルを、蒸留塔を用いて蒸留によって分離する蒸留工程とを含む、アクリル酸ブチルの製造方法であって、
前記反応工程において、前記直列多段の反応器のうち、少なくとも最下流の反応器に供給する熱源の熱量を実質的に一定にすることを特徴とする、アクリル酸ブチルの製造方法である。
前記熱源は蒸気であり、前記熱量が最下流反応器の出口液中のアクリル酸濃度に基づいて決定される蒸気量であることが好ましく、また、前記熱源が有機溶液又は無機溶液であることも好ましい。さらに、前記直列多段の反応器は3〜8段であることが好ましく、前記直列多段の反応器の温度がいずれも80〜110℃であることが好ましく、前記直列多段の反応器において、下流の反応器ほど反応器の温度が高いことが好ましく、前記蒸留塔の塔頂圧力がいずれも10〜40kPaであることが好ましく、前記蒸留塔が1段または多段であることが好ましく、前記蒸留塔が多段である場合、下流の蒸留塔ほど塔頂圧力が低いことが好ましい。
本発明によれば、アクリル酸とブタノールとによる直列多段の反応蒸留において、より効率的なエステル化反応を行うことを目的とし、3−ブトキシプロピオン酸ブチルの生成量を抑制し、アクリル酸の反応転化率を高めるアクリル酸ブチルの連続製造方法を提供することができる。
エステル化反応蒸留装置の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における各反応器内の反応液組成の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器内のアクリル酸濃度と水濃度との関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器内の3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度とアクリル酸濃度との関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器内の3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度と水濃度との関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器内のアクリル酸ブチル/ブタノール/水の三成分系について、ブタノール濃度及び水濃度を変数とした計算により算出した沸点の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器の温度と該最下流反応器内の水濃度との関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器内の、反応器温度別のアクリル酸濃度と水濃度との関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器の温度と該最下流反応器への蒸気供給量との関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置における最下流反応器の温度と該最下流反応器への蒸気供給量とについて、該最下流反応器へのロード別の関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置におけるロードと最下流反応器への蒸気供給量とについて、該最下流反応器内の水濃度別の関係の一例を示す図である。 エステル化反応蒸留装置において、最下流反応器への蒸気供給量と該最下流反応器内の水濃度との関係、および該最下流反応器内の反応液の温度との関係の一例を示す図である。
本明細書においては、特に断らない限り、蒸気とは水蒸気を指すものとする。
以下、添付図面に基づいて本発明の方法を詳細に説明する。図1は、本発明におけるアクリル酸ブチル反応工程に用いる反応蒸留装置の一例を示すフローシートである。
原料のアクリル酸(1)、ブタノール(2)、及び酸触媒(3)が、直列に複数配置された反応器(R1〜R5)の最も上流側の反応器(R1)に供給される。
反応器の数が多くなるほど、効率よくアクリル酸の反応転化率を高めることが可能となるが、反応器およびその付帯設備の増加に伴う設備費が嵩み、またその運転制御や保全に要する労力も増えることから、これら事項を加味して適当な数が選択される。通常、反応器の数は3〜8である。
反応器は個々に独立した容器でも、仕切板によって複数の反応室に分割された形状でも、またそれらの組み合わせであってもよい。
エステル化反応により生成した水は、加熱によりブタノールやアクリル酸ブチルと共に共沸して、蒸留塔(C1)に送られる。蒸留塔は全ての反応器に対して各々一つずつ存在する場合も、複数の反応器に対して一つの蒸留塔が存在する場合もある。反応器の数と同様の理由により、蒸留塔の数は通常1〜4である。
蒸留塔からの留出ガスはコンデンサ(E1)で凝縮され、デカンタ(D1)で有機層と水層に分離される。有機層は還流液として蒸留塔(C1)に循環(16)され、水層(17)は系外へ排出される。水層(17)には少量のブタノールが含まれる為、その回収を目的としてブタノール回収用の蒸留塔(図示無し)へ送られる場合もある。
2つ目以降の蒸留塔(C2)についても同様である。
直列複数の反応器においては、下流側の反応器ほどアクリル酸の反応転化率が高く、最も下流側の反応器では、該反応転化率は95%以上に達する。未反応アクリル酸をアクリル酸ブチルから分離回収することが難しく、よってアクリル酸原料原単位の点から該反応転化率は高い程望ましいが、該転化率の上昇と共に副生物の増加が加速する為、通常、該反応転化率は99.5%以下である。反応器に供給されるブタノールはアクリル酸に対して小過剰な為、最下流側の反応器内液組成は、アクリル酸ブチルを主成分とし、5〜15重量%のブタノールと微量のアクリル酸、酸触媒、及び少量の副生物を含有している。
温度が高いほどエステル化反応速度は高くなるので効率的だが、アクリル酸やアクリル酸ブチルの重合が起こりやすくなること、また相対的に副反応の反応速度が速くなること、等々の問題もある為、反応器の温度は通常80〜110℃、より好ましくは85〜105℃の範囲に保たれる。該反応器温度で蒸留を行うには減圧が必要であり、蒸留塔の塔頂圧力として通常、10〜40kPaである。
以下、個々の反応器の運転制御方法について述べる。
圧力は一定値となるよう、真空装置の制御を行う。反応装置自体の圧力を制御する事が最も望ましいが、アクリル酸ブチルによる計測部の閉塞とこれによる誤指示を避ける為、反応蒸留装置の塔頂部圧力を制御することが望ましい。用いられる真空装置としては、液封式真空ポンプか、蒸気エジェクター、またはその組み合わせが一般的であり、真空ラインのバルブ開閉により圧力制御を行う。反応器の圧力は全て同じでもよいが、下流側の反応液ほど沸点が高くなるので、効率よく反応蒸留を進める為に、下流側ほど圧力の低い方が望ましい。
反応器への入熱は反応器内部に設けられたインナーコイル、反応器外壁面に設けられた
ジャケット、又は反応器外部の循環路に設けられた熱交換器に熱源を供給する事で行われる。熱源としては水蒸気が最も一般的であるが、有機または無機の熱媒体溶液を用いることも出来る。該熱源の供給量を、反応器内の液温が設定値となるよう、反応器毎に調整することが望ましい。反応器の設定温度は全ての反応器で同一であってもよいが、下流側の反応液ほど沸点が高くなるので、効率よく反応蒸留を進める為に、下流側ほど温度が高いほうが望ましい。最上流の反応器と最下流の反応器との温度差として、好ましくは2〜15℃である。
このようにして、温度と圧力を制御することで、各々の反応器内の液組成を制御することが出来るが、アクリル酸の反応転化率が高い状態では、異なる制御が必要となる。
アクリル酸の反応転化率が高い状態では、最下流の反応器等の温度及び圧力を精度よく制御しても、反応転化率が一定とならない。反応温度を充分に高くすることなどで、その反応転化率を高くすることは可能だが、3−ブトキシプロピオン酸ブチルの副生が増大する。また、エステル化反応は可逆反応であり、逆反応の加水分解には水が必要であるから、効率良く水を留去する必要がある。
アクリル酸の反応転化率が高い状態において、反応器の温度を制御する従来の方法ではなく、少なくとも最下流の反応器への熱量を実質的に一定に制御することにより、3−ブトキシプロピオン酸ブチルの生成量を抑制し、また、効率良く水を留去することができる。
このとき、最下流の反応器から1つ上流側の反応器に供給する熱源の熱量も併せて、実質的に一定に制御してもよい。
なお、熱量を一定にするとは、反応器の熱交換器へ供給された熱媒体から、反応器内のプロセス流体に移動する単位時間当たりの熱量を一定とする事であり、例えば、熱媒体が熱移動の過程で相変化を伴わない媒体の場合、その熱量は[単位時間当たりの熱媒流量]×[熱媒体の比熱]×([熱媒体の熱交換器入口温度]−[熱媒体の熱交換器出口温度])で定義される。
熱媒体が水蒸気で熱交換により凝縮を伴う場合、その熱量は[単位時間当たりの蒸気流量]×{[水の蒸発潜熱]+[水蒸気の比熱]×([水蒸気の供給温度]−[水蒸気の凝縮温度])+[水の比熱]×([水蒸気の凝縮温度]−[熱交換器出口の水温])}で定義される。
上記熱量は、微小時間内での変動を禁ずるものではなく、反応器内に連続的に供給及び排出されるプロセス流体に対して一定の熱量を供給するものであるから、反応器内におけるプロセス流体の滞留時間θに対して、最大でθにおける供給熱量の平均値、好ましくはθ/2、より好ましくはθ/4における供給熱量の平均値を意味する。
「実質的に一定にする」とは、上記供給熱量の平均値が概略一定であることであり、その変動は多くとも15%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
なお、以下に示す図表の数値は、特に断らない限り、熱源として水蒸気を用いた場合の、アクリル酸ブチルの商業設備における約2年分の運転及び分析データに基づくものである。なお、運転開始時や運転条件変更の直後など、定常状態に達していないと考えられるものについては、除してある。
表1、図2は、温度を制御して行う従来の運転によるアクリル酸ブチルの製造における、第1〜5段反応器内のアクリル酸ブチル、ブタノール、アクリル酸、3−ブトキシプロ
ピオン酸ブチル、および水の各濃度(重量%)である。これらは、同一日時に一斉にサンプリングして分析したものである。アクリル酸濃度は指数関数的に減少し、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は緩やかに増加していることが確認される。
次に、表2は、最下流の反応器における液組成の平均値および標準偏差を示したものである。
表2より、変動係数(標準偏差を平均値で除した値)が大きいものは、アクリル酸、次いで水、であることが確認できる。
図3は、最下流の反応器における液組成に関し、アクリル酸濃度と水濃度との関係を表したものである。図3より、アクリル酸濃度と水濃度とは正の相関を示しており、水濃度が小さいほどアクリル酸濃度も小さいことが確認できる。
ここで、図3の結果は、例えば、アクリル酸供給量が低い為に滞留時間が長く、結果として最下流の反応器におけるアクリル酸濃度が低くなった(アクリル酸転化率が上昇した)だけとも考えられる。そして、滞留時間や酸触媒の増加や反応温度の上昇等でアクリル酸転化率が上昇したのであれば、3−ブトキシプロピオン酸ブチルの副生量もまた増加していると考えられる。そこで、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度とアクリル酸濃度との関係について調べ、それを表したものが図4である。
図4より、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度とアクリル酸濃度には、何ら相関は確認されない。すなわち、アクリル酸濃度の変動係数が大きい理由は、滞留時間等によるものではないと推察される。
同様に、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度と水濃度との関係を表したものが図5で
ある。図5より、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度と水濃度には、何ら相関がないことが確認できる。
以上より、最下流の反応器における水濃度の低下は、アクリル酸転化率の上昇に寄与するものと考えられる。
アクリル酸転化率の上昇のためには、軽沸成分である水の濃度を下げればよく、そのためには高温にすればよいものと考えられる。図6は、その水濃度と、他の主要な軽沸成分であるブタノール濃度とを変数とし、アクリル酸ブチル/ブタノール/水の三成分系にて減圧(30kPa)下で沸点を計算したものである。
図6より、沸点の2〜2.5℃の昇温により、水濃度は約0.04重量%低下することが確認できる。ブタノール濃度は沸点の1℃の昇温により約2重量%低下となる。ここで、ブタノールの濃度変化は表2の標準偏差から±0.86重量%であり、つまり運転時のブタノール濃度の変動による温度への影響は高々、±0.5℃ということになる。
そこで、最下流反応器の水濃度と温度との関係(図7)、アクリル酸濃度と温度との関係(図示無し)を調べたが、いずれも両者に相関は確認されなかった。すなわち、最下流反応器の温度を高くしたからといって、水濃度が小さくなるわけではないことが確認できる。
次に、図3で用いたデータのうち、反応器の温度に応じて、90℃以上93℃未満、および96℃以上99℃以下の領域に分けてプロットしたものが図8である。
二つの温度域各々で、水濃度が低いほどアクリル酸濃度も低いという相関は有しているが、二つを比較した場合、温度が高いほど水濃度は低いとの関係は確認出来なかった。
次に、最下流反応器の温度と反応器内インナーコイル(リボイラ)への蒸気供給量との関係について表したものが図9である。
図9より、最下流反応器の温度と蒸気供給量との間には正の相関があることが確認できる。また、温度を一定にした場合であっても蒸気供給量にはかなりの幅があることが確認できる。
図10は、アクリル酸ブチル製造プラントのロード(単位時間当たりの生産量と設計生産量の比率、稼働率ともいう。)が低い状態(ロード70〜80%)、及び高い状態(95〜105%)について各々、図9と同様に最下流反応器への蒸気供給量と該最下流反応器の温度との関係についてプロットしたものである。
図10より、プラントのロードが一定範囲で、最下流反応器をある特定の温度域にあるように制御した場合であっても、蒸気供給量が取り得る値は広いことが確認できる。すなわち、反応器の温度を制御したとしても蒸気供給量にはかなりの振れ幅があることが確認できる。
図11は、プラントのロードと蒸気供給量との関係について、水濃度の高いもの(≧0.1重量%)と低いもの(≦0.07重量%)に分割してプロットしたものである。
各ロードにおいて、蒸気供給量が大きいほど水濃度が小さくなることが確認できる。
以上より、水濃度を小さくするためには、蒸気供給量を大きく設定すべきである。このことは、絶対的な指標である温度を制御して行う従来の運転と大きく異なるものである。温度を制御して行う従来の運転では、蒸気供給量にはかなりの振れ幅があって制御されない。そして、蒸気供給量が制御されないということは、水濃度が小さい場合も存在する一方、水濃度が大きい場合も存在し、結果として残存アクリル酸濃度の振れ幅が大きくなってしまうと考えられる。
すなわち、最下流反応器における水濃度を常に小さく維持するためには、温度を制御するのではなく蒸気供給量を制御すべきである。
例えば、図11にて、水濃度を0.07重量%未満にする為の蒸気供給量として、
蒸気供給量(kg/h)=ロード(%)−15)(kg/h)
程度が必要という事になる。そして、この平均値よりも10〜20kg/h多めの蒸気が与える影響について蒸留計算したのが図12である。
なお、加熱される液組成としては、水を0.2重量%、ブタノールを6重量%含んだアクリル酸ブチル溶液とし、プラント規模に併せて30kPa下にて加熱/留去した場合の蒸留計算を行った。
図12より、蒸気供給量が20kg/h増加すると、水濃度が0.01〜0.02重量%減少することが確認できる。温度が1℃上昇することも確認できるが、これまで述べてきたように、その現実性については定かではない。
反応器の構成や反応条件の違いにより、最下流反応器に必要な供給熱量は異なってくると考えられる。上記のように計算では予測不能な点があるため、本発明の実施としては、例えば下記のような最適化を行うことが好ましい。
温度制御による運転実績がある場合には、上記と同様の方法により、図11に相当する相関を得る。
一方、実績が無い、又は、新規に建設する場合には、熱交換器の能力に余裕(≧20%)をもって設計し、熱量一定の運転を行って、プロセス液の分析結果を反映させて、最適な熱量供給を行うようにする。
以上より、温度を制御して行う従来の運転では、最下流反応器の蒸気供給量に大きな振れ幅が生じてしまい、これがアクリル酸転化率に影響を及ぼしている事が確認出来た。一方で、全5段からなる反応器について、最下流の反応器以外の反応器の熱負荷についても調べた。
表3より、下流側の反応器ほど熱量が小さいことが確認できる。本発明により最下流反応器に供給される熱量は増加することとなるが、その割合は反応器全部の熱量と比べれば、充分に小さいことがわかる。各反応器に供給される熱量の変動係数は、下流側ほど大きくなり、最下流反応器で最大となることが確認できる。
5つの反応器の温度は基準条件として、1段目から順々に、90℃、92℃、92℃、94℃、96℃に設定されている。圧力は蒸留塔の塔頂圧力として、上流側が25kPa、下流側が20kPaに設定されている。
(実施例1)
R5の温度制御を止め、蒸気供給量(kg/h)をロード(%)−10)(kg/h)とし、約6か月間、運転を継続した。R5の温度は平均で96.3℃(0.3℃上昇)となり、水濃度は0.06重量%、アクリル酸濃度は0.27重量%(標準偏差0.05重量%)、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は3.38重量%となった。
R5におけるプロセス液の滞留時間は約2時間であり、30分平均の供給蒸気量は、上記関係式に対して最大で±7%、標準偏差で3%以下であった。供給蒸気の温度に最大で20℃の差があり、これは蒸気による供給熱量の2%未満に相当する。故に、供給熱量の変動は5%未満であった。
(比較例1)
R5出口のアクリル酸濃度が0.30重量%となるよう、分析結果をうけて反応器R1〜5全ての設定温度を全て同じ変化量で変更し、約2か月間、運転を継続した。
温度の上昇は最大で3.6℃であった。アクリル酸濃度は0.30重量%(標準偏差0.34重量%)、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は4.22重量%となった。
R5における30分平均の供給蒸気量は、100%ロードにおいて、平均値に対して最大で±26%、標準偏差で17%であった。
(実施例2)
実施例1と同様にして、但し、R4の温度制御を止め、R4への蒸気供給量をR5への供給量の2.2倍として、1か月間、運転を継続した。
水濃度は0.05重量%、アクリル酸は0.26重量%(標準偏差0.05重量%)、3−ブトキシプロピオン酸ブチル濃度は3.47重量%となった。
R5における供給熱量の変動は5%未満であった。
1 アクリル酸
2 ブタノール
3 酸触媒
11、20、21、22 反応器缶出液
12、13、23、24、25 反応器からの留出ガス
14、26 蒸留塔缶出液
15、27 蒸留塔留出ガス
16、28 有機層(還流液)
17、29 水層
30 反応器缶出液(粗アクリル酸ブチル)
C1、C2 蒸留塔
D1、D2 デカンタ
E1、E2 コンデンサ
R1、R2、R3、R4、R5 反応器

Claims (7)

  1. 直列多段の反応器を用いてアクリル酸とブタノールとを反応させてアクリル酸ブチルを含む反応混合物とする反応工程と、前記反応工程で生成した前記アクリル酸ブチルを含む反応混合物から、水をアクリル酸ブチルと共に共沸して蒸留塔に送り、蒸留によって水を分離する蒸留工程と、粗アクリル酸ブチルを分離する工程を含む、アクリル酸ブチルの製造方法であって、
    ロードと、前記直列多段の反応器のうち少なくとも最下流の反応器に供給する熱源としての蒸気の量と、前記最下流の反応器における水濃度との関係を算出し、前記水濃度が0.07重量%以下となる前記ロードと前記蒸気量との関係を決定する工程を含み、
    記反応工程において、前記蒸気量を、前記水濃度が0.07重量%以下となる蒸気量で一定(ただし、15%以下の変動まで含む。)にすることにより、最下流の反応器の出口液中のアクリル酸濃度を減少させることを特徴とする、アクリル酸ブチルの製造方法。
  2. 前記直列多段の反応器が3〜8段である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記直列多段の反応器の温度がいずれも80〜110℃である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記直列多段の反応器において、下流の反応器ほど反応器の温度が高い、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記蒸留塔の塔頂圧力が10〜40kPaである、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記蒸留塔が1段または多段である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記蒸留塔が多段である場合、下流の蒸留塔ほど塔頂圧力が低い、請求項に記載の方法。
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