JP3960510B2 - ポリエステルマルチフィラメント糸及びその製造方法並びにその織編物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自発伸長性および深色性を有し、かつ染色後の最終製品がソフトでふくらみ感のある風合いを呈するポリエステルマルチフィラメント糸及びその製造方法並びにその織編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは多くの優れた特性を有するが故に繊維として広く用いられているが、染色加工後の色艶が悪いという欠点が有り、例えば綿、絹、羊毛のような天然繊維、あるいはレイヨン、アセテートのような半合成繊維に比べ、色の鮮明性、深みに劣る点があげられる。染色特性に関するこれらの欠点は、繊維の屈折率、繊維の表面形状、繊維の形態(繊維の太さ、断面形状、中空部の有無、クリンプ形態)などに起因することが知られている。ポリエステル繊維の屈折率は1.6〜1.7程度で有り、他の繊維素材の屈折率(1.45〜1.6程度)と比較するとかなり高く、またポリエステル繊維は溶融紡糸法によって製造されるため、一般にその表面がきわめてなめらかであり、繊維表面での白色光の反射率を増大させ、深色性の低下を引き起こす。従来より、ポリエステル繊維の深色性を改善するために、繊維表面の改質による種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特公昭59−24233号公報には、粒子径が0.1μm以下の微粒子を0.5〜10重量%含有させたポリエステル繊維をアルカリ処理して、繊維表面に微細な凹凸を形成させる方法が提案されている。しかしながら、このような表面微多孔化ポリエステル繊維は、表面が微多孔化されていないポリエステル繊維と比較して深色性は改善されるものの、繊維内部は改質されていないので、染料が繊維内部に入りにくく、染色性が不十分となり、十分な深みのある色の最終製品は得られない。
【0004】
一方、近年の消費者ニーズの多様化の中で、深色性能の改善とともに、これまで以上にソフトで膨らみ感のある風合いが求められてきている。そのために、2本以上の糸条を流体処理或いは合糸することにより嵩高糸や潜在捲縮を得るという方法が用いられ、その特徴をより大きく発揮させるために収縮率の異なる糸条の組合せが用いられ、高収縮繊維との収縮差を出すために自発伸長繊維が提案されている。
【0005】
例えば特開平6−200439号公報では、複屈折率△nが30〜70×10−3の範囲にあるポリエステルの高配向未延伸フィラメント糸を、ガラス転移温度以上で延伸し、引き続いて緩和熱処理することにより、自発伸張性ポリエステル太細フィラメント糸が提案されている。しかしながら、このようなポリエステル自発伸長性繊維も、繊維の屈折率は1.6〜1.7程度であり、他の繊維素材の屈折率(1.45〜1.6程度)と比較するとかなり高く、また、溶融紡糸法によって製造されるため、その表面がきわめてなめらかであり、繊維表面での反射光を増大させ、最終製品の深色性について十分とは言えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するものであり、自発伸張性能、染色後の深色性が良好で、ソフトで膨らみ感のある風合いを呈する最終製品が得られる、ポリエステルマルチフィラメント糸及びその製造方法並びにその織編物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の要旨は、一次粒子の平均粒径が0.2μm以下である二酸化ケイ素を0.2〜2重量%含有した、複屈折率△nが20〜65×10−3の低配向部と△nが70〜150×10−3の高配向部からなるモノフィラメントから構成されるポリエステルマルチフィラメント糸であって、U%が+1.0%以上のピークが5個/m以上あり、沸水処理時の伸長率が0%以上、沸水処理に引き続き130℃以上で乾熱処理した時、さらに1%以上の伸長率を示し、3%水酸化ナトリウム水溶液を用い、沸騰温度で減量率20%まで、アルカリ減量した後に繊維表面にa=0.1〜2μm、1≦b/a≦10のボイド(但し、aは繊維軸に垂直方向のボイドの長さ、bは繊維軸方向のボイドの長さ)が形成されることを特徴とするポリエステルマルチフィラメント糸にある。
【0008】
また本発明の第二の要旨は、一次粒子の平均粒径が0.2μm以下である二酸化ケイ素を0.2〜2重量%含有した、複屈折率△nが20〜65×10−3の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸を下記(1)〜(4)式を同時に満たす条件で延伸し、引き続いて(5)、(6)式を同時に満足する条件で緩和熱処理することを特徴とする、複屈折率△nが20〜65×10 −3 の低配向部と△nが70〜150×10 −3 の高配向部からなるモノフィラメントから構成され、U%が+1.0%以上のピークが5個/m以上あるポリエステルマルチフィラメント糸の製造方法にある。
【0009】
DR=MDR×(0.4〜0.55)>1.0 (1)
DR=1.03〜1.40 (2)
HR =Tg〜(Tg+30)℃ (3)
HR <Tc (4)
RR>5 . (5)
HP>(HR+50)℃ (6)
ここで、DRは1段目延伸域の延伸倍率。
DRは2段目延伸域の延伸倍率。
MDRは予熱温度90℃で測定した最大延伸倍率。
HRは1段目延伸域の引取りローラーの表面温度。
HRは2段目延伸域の引取りローラーの表面温度。
RRは緩和熱処理域の緩和率。
HPは緩和熱処理域の緩和温度。
Tc は結晶化温度である。
【0010】
さらに本発明の第三の要旨は、該ポリエステルマルチフィラメント糸を少なくとも一部に用いた織編物にある。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルマルチフィラメント糸は、複屈折率△nが20〜65×10−3の低配向部と△nが70〜150×10−3の高配向部からなるモノフィラメントから構成されていることが必要である。△nが20〜65×10−3の低配向部は分子配向が抑制され、染料分子が繊維内部に拡散しやすい構造になっていることから濃染性を示す。また、△nが70〜150×10−3の高配向部が存在することで、低配向部に比べ淡染性を示し、濃淡差による意匠性に優れたものとなると共に、アルカリ減量後も十分な繊維強度を保つことが可能となる。
【0012】
△nが20×10−3未満の低配向部が存在すると、アルカリ減量後に十分な強度低を保つことが困難となり、△nが70〜150×10−3の高配向部が存在しないと、濃淡差による意匠効果がえられず、アルカリ減量後の強度も不十分となる。
【0013】
また本発明のポリエステルマルチフィラメント糸は、U%が+1.0%以上のピークが5個/m以上あることが必要である。
【0014】
U%が+1.0%以上のピークは低配向部の存在周期を示し、低配向部と高配向部が高度に分散していないと、染色後の最終製品の外観上好ましくないだけでなく、ソフトで膨らみ感のある風合いが得られない。U%が+1.0%以上のピークが5個/m未満であることは、低配向部と高配向部が高度に分散していないことを意味する。
【0015】
また、本発明のポリエステルマルチフィラメント糸は、沸水処理時の伸長率が0%以上、好ましくは0.5%以上であり、沸水処理したフィラメントを引き続き130℃以上で乾熱処理した時、さらに1%以上伸長する必要があり、好ましくは1.5%以上伸長することが望ましい。沸水処理時の伸長率が0%未満、または沸水処理したフィラメントを引き続き130℃以上で乾熱処理した時の伸長率が1%未満の場合には、収縮性のフィラメント糸と混繊した後の、製織または製編後の精練、染色仕上げ等の熱処理工程で自発伸長せず、ふくらみ間のあるソフトな風合いが得られない。
【0016】
さらに本発明では、アルカリ減量後に、繊維表面にa=0.1〜2μm、1≦b/a≦10のボイド(但し、aは繊維軸に垂直方向のボイドの長さ、bは繊維軸方向のボイドの長さ)が存在していることが必要である。繊維軸に対して縦長のボイドが存在することによって、繊維表面反射光が減少し、低配向部による濃染性の効果との相乗効果によって最終製品の深色性を向上できる。
【0017】
繊維軸に垂直方向のボイドの長さaが0.1μm未満の場合、2μmを超える場合は、可視光の乱反射が起こりにくいため、繊維表面での正反射光(白色光)が減少しにくく、最終製品の深色性が得られない。また、b/aが1未満であると繊維の配向度が低く繊維強度不足となり、10を超えると、繊維の配向が高すぎ、繊維内部に染料が浸透しにくくなるので、最終製品の深色性が劣る。
【0018】
アルカリ減量は、アルカリ化合物の水溶液により行うが、アルカリ処理に使用される化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。なかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましく用いられる。
【0019】
また、このアルカリ処理による減量率は、もとの繊維重量に対して5重量%以上、好ましくは10重量%以上が好ましい。アルカリ減量の条件は、アルカリ化合物の種類等によって異なるが、濃度0.1〜30重量%、温度室温〜100℃の範囲が好ましく、処理時間は1分〜4時間の範囲が好ましい。
【0020】
さらに本発明では、一次粒子の平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下である二酸化ケイ素が0.2〜2重量%含有されていることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.5重量%含有されていることが望ましい。また、粒子の分散性、および染色後のフィラメントの深色性向上効果の面より、BET法により測定した比表面積が100m/g以下の乾式法シリカが特に好ましい。
【0021】
平均粒径が0.2μmを超えると、本発明の目的である最終的なポリエステルフィラメントの深色性が低下しやすい。尚、ここでいう一次粒子の平均径とは、該一次粒子と同一の容積を持つ仮想的な球の直径を意味する。
【0022】
更に、二酸化ケイ素の含有量が0.2重量%未満の場合には、本発明の目的であるポリエステルマルチフィラメント糸の深色性が得られにくく、また2重量%を超える場合には、製糸工程安定性が悪化しやすい。
【0023】
また、本発明のポリエステルフィラメントを得るためのポリエステルポリマーは、公知の方法で合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、テレフタル酸とエチレングリコールを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させるかして、テレフタル酸のグリコールエステル及び/またはその低重合体を合成し、次いで常法により重縮合させる方法が一般的である。
【0024】
さらに、本発明のポリエステルフィラメントを得るためのポリエステルポリマーには、適当な艶消し剤、易滑剤、顔料等の添加剤が含有されていてもよい。
【0025】
本発明のポリエステルマルチフィラメント糸は高配向部と低配向部がフィラメント間及び糸長方向に高度に分散し、かつアルカリ減量後に繊維表面が微多孔化され得るポリエステルフィラメントであり。該ポリエステルフィラメント糸の低配向部は分子配向が抑制されており、染料分子が繊維内部に拡散しやすい構造になっており、高配向部が高度に分散していること、および繊維表面微多孔化による表面反射光の減少との相乗効果によって最終製品の深色性を向上できる。
【0026】
次に本発明のポリエステルマルチフィラメント糸の製造方法の一例を示す。
本発明のポリエステルマルチフィラメント糸を製造するにあたり使用する高配向未延伸糸は、複屈折率△nが20〜65×10-3の範囲内にある必要があり、好ましくは40〜60×10-3の範囲内である。未延伸糸の△nが20×10-3より低い場合は、得られるフィラメント糸の沸水処理時の伸長率は小さく、目的とする自発伸張性は得られない。この理由は、太細フィラメント化した時、太部である未延伸部の配向が低すぎるため、沸水処理時の熱エネルギーによる配向非晶部における分子構造の安定化は、結晶化ではなく無定形への構造変化となり、結果的にはフィラメントは収縮することになる。一方、△nが、65×10-3より大きい場合には、最大延伸倍率が低く1段目延伸域の延伸倍率(DR)が1以下となり、太細フィラメント化する延伸条件は得られず未延伸糸の緩和熱セット糸となる。その結果、沸水処理後の乾熱処理の伸長性は認められるが、沸水処理時の自発伸長性はない。また、分子配向が高すぎることで、染色時に染料が繊維内部に拡散しにくくなり、染色後のフィラメント糸の深色性も不十分となる。
【0027】
△nが20〜65×10-3の範囲にある高配向未延伸糸を、室温の給糸ローラーとTg〜(Tg+30)℃に加熱された引取ローラーから構成される一対のローラー間で延伸倍率が1.0より大きく、かつ予熱温度90℃で測定した最大延伸倍率(MDR)の40〜55%に設定された延伸倍率で延伸する事により、延伸は引取ローラー上で延伸が微小に変動する不均一延伸となる。この結果、太部と細部がフィラメント間そして糸長方向に高度に分散した、太細フィラメントが得られる。
【0028】
この太細フィラメントを引き続いて、結晶化温度以下の温度で延伸倍率が1.03〜1.40であるような緊張熱処理を施すことにより、結晶化の進行を極力抑えつつ、未延伸部である太部の配向を高め、精練、染色工程等の熱処理工程において結晶化しやすい状態とすることができる。この段階で得られる太細フィラメントは、延伸部である細部に延伸による構造歪みが残っており、沸水処理時の伸長率は−7〜−5%と自発伸長性能は有していない。この緊張熱処理を受けた太細フィラメントを引き続いて、5.0%より高い緩和率と(緊張熱処理時の処理温度+50)℃より高い温度条件下で緩和熱処理することにより、細部の構造歪みは緩和され、沸水時の伸長率が0%以上である自発伸長特性を有する太細フィラメントとなる。ここで、延伸工程と緩和熱処理工程は、連続した一工程で実施しても、独立した二工程で実施してもよい。この自発伸長性太細フィラメントは、130℃以上の乾熱処理を施すことによりさらに1%以上の比可逆的な伸長が認められる。
【0029】
上記延伸条件の範囲を外れた条件で延伸を行った場合は、自発伸長性が発現しなかったり、自発伸長性能が認められても、太部と細部の分散が悪く、染斑が発生した染め品位に劣るものとなる。さらに自発伸長特性についても、糸長方向に斑のある品質的に問題のある繊維となる。
【0030】
また本発明のポリエステルマルチフィラメント糸を用いた織編物は、織編機、織編組織等については特に制約することなく、少なくとも一部に用いることによって、本発明の目的とする深色性を有し、かつ染色後の最終製品がソフトでふくらみ感のある風合いを呈する織編物を得ることができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、実施例中、部、%とあるものは重量部、重量%を意味し、実施例中の各特性値の評価は、下記の方法で行った。
【0032】
複屈折率△n:カネボウエンジニアリング株式会社製分子配向度測定装置DELTA−Nにて測定した。
【0033】
U%(低配向部の存在周期):計測器工業社製イブネステスタKET−80Cにて糸速8m/分で測定した糸斑チャートを用いて、フィラメント3.2m当たりについて、ピークが+1.0%以上の部分をカウントし、1m当たりに変換した。
【0034】
沸水処理時の伸長率:1デシテックスあたり1/34cNの張力下で試長1mの10回巻カセを準備し1デシテックスあたり2/3.4cNの荷重を負荷して初期カセ長(L)を測定する。そのカセを無荷重状態で沸騰水中に30分間浸漬した後、再び荷重をかけて測定カセ長(L)を測定し、次式より算出する。
伸長率=(L1−L0)/L×100%
乾熱処理時の伸長率:沸水処理時の伸長率を測定した後、測定後のカセサンプルを雰囲気温度180℃の中に無荷重状態で10分間放置し、測定カセ長(L)を測定し、次式により算出する。
伸長率=(L2−L)/L×100%
未延伸糸のTg、Tc+:セイコー電子工業株式会社製示差走査熱量測定機DSC220にて、昇温速度10℃/分で測定した値である。
L値:日本電色工業株式会社製側色色差計Z−1001 DP型にて測定した値である。
【0035】
(実施例1)
テレフタル酸100部、エチレングリコール52部をエステル化槽に仕込み、40kPaの加圧下エステル化反応を行った。引き続き、得られた反応生成物にトリメチルホスフェイト、三酸化アンチモン、一次粒子の平均粒径が0.04μmで、BET法により測定した比表面積が46m/g乾式法微粒状二酸化ケイ素を生成ポリエステルに対して実質上、0.01%、0.04%、0.8%となるよう各々エチレングリコール溶液または分散液として加え、重合槽に移した。槽を減圧して真空度0.133kPa以下の高真空下285℃にて重縮合反応を行い、ポリエステルポリマーを得た。得られたポリマーを常法によりチップ化、乾燥し、孔径0.20mmの円形孔を36個有する紡糸口金より紡糸温度283℃で溶融紡糸し、2700m/分で巻取って、100デシテックス/36フィラメントの未延伸糸を製造した。得られた未延伸糸のMDRは2.66、△n=47×10-3、Tg=75℃、Tc=138℃であった。この未延伸繊維を下記の延伸条件で延伸、緩和熱処理して90デシテックス/36フィラメントの太細フィラメントを製造した。
一段目延伸倍率(DR1)=MDR×0.46
二段目延伸倍率(DR2)=1.08
一段目引取りローラー温度(HR1)=95℃
二段目引取りローラー温度(HR2)=100℃
緩和率(RR)=15%、緩和温度(HP)=195℃
得られたマルチフィラメント糸を構成するモノフィラメントの低配向部の△nは30〜50×10-3、高配向部の△nは90〜100×10-3であった。また、該マルチフィラメント糸の繊維軸方向の低配向部の存在周期は14.3個/mと高度に分散していた。
【0036】
該マルチフィラメント糸の沸水処理時の伸長率は1.2%、乾熱処理時の伸長率は3.6%であり、沸水処理後引き続いて実施した乾熱処理により、2.4%の伸長を示したことになる。また、該マルチフィラメント糸とイソフタル酸を8モル%共重合した改質ポリエステルを使用して製造した55デシテックス/18フィラメントの高収縮糸をエアー混繊し、145デシテックス/54フィラメントの混繊糸を製造、平織織物を作成し、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の織物サンプルを得、風合いを評価した結果、膨らみ感のあるソフトな風合いを有していた。
【0037】
また、該マルチフィラメント糸の編地を作成した後、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の編地サンプルを得、この減量編地サンプルの繊維表面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面にa=0.1〜2μm、1≦b/a≦10の繊維軸方向に対して縦長のボイド(但し、aは繊維軸に垂直方向のボイドの長さ、bは繊維軸方向のボイドの長さ)が存在していた。また、この減量編地サンプルを、黒色の染料Dianix Black GS−Eを、サンプルに対して22.6%添加した水溶液で、135℃で60分間処理し、黒色編地サンプルを得た。得られた黒色編地のL値を測定したところ、13.5であり深色性に優れていた。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様にして得た未延伸糸を下記の延伸条件で延伸、緩和熱処理して90デシテックス/36フィラメントの太細フィラメントを製造した。
一段目延伸倍率(DR1)=MDR×0.50
二段目延伸倍率(DR2)=1.08
一段目引取りローラー温度(HR1)=95℃
二段目引取りローラー温度(HR2)=100℃
得られたマルチフィラメント糸を構成するモノフィラメントの低配向部および高配向部の△nは実施例1と同じであった。また、マルチフィラメント糸の繊維軸方向の低配向部の存在周期は13.4個/mで高度に分散していた。このマルチフィラメント糸の沸水処理時の伸長率は0.8%、乾熱処理時の伸長率は3.2%であり、沸水処理後引き続いて実施した乾熱処理により、2.4%の伸長を示したことになる。また、該マルチフィラメント糸とイソフタル酸を8モル%共重合した改質ポリエステルを使用して製造した55デシテックス/18フィラメントの高収縮糸をエアー混繊し、145デシテックス/54フィラメントの混繊糸を製造、平織織物を作成し、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の織物サンプルを得、風合いを評価した結果、膨らみ感のあるソフトな風合いを有していた。
【0039】
また、該マルチフィラメント糸の編地を作成した後、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の編地サンプルを得た。この減量編地サンプルの繊維表面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面にa=0.1〜2μm、1≦b/a≦10の繊維軸方向に対して縦長のボイド(但し、aは繊維軸に垂直方向のボイドの長さ、bは繊維軸方向のボイドの長さ)が存在していた。また、この減量編地サンプルを、黒色の染料Dianix Black GS−Eを、サンプルに対して22.6%添加した水溶液で、135℃で60分間処理し、黒色編地サンプルを得た。得られた黒色編地のL値を測定したところ、13.8であり深色性に優れていた。
【0040】
(実施例3)
実施例1と同様にして得た未延伸糸を下記の延伸条件で延伸、緩和熱処理して90デシテックス/36フィラメントのマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を構成するモノフィラメントの低配向部および高配向部の△nはそれぞれ30〜50×10−3、90〜100×10−3であった。また、該マルチフィラメント糸の繊維軸方向の低配向部の存在周期は13.9個/mで高度に分散していた。
一段目延伸倍率(DR1)=MDR×0.46
二段目延伸倍率(DR2)=1.08
一段目引取りローラー温度(HR1)=95℃
二段目引取りローラー温度(HR2)=98℃
緩和率(RR)=15%、緩和温度(HP)=195℃
該マルチフィラメント糸の沸水処理時の伸長率は0.5%、乾熱処理時の伸長率は2.9%であり、沸水処理後引き続いて実施した乾熱処理により、2.4%の伸長を示したことになる。また、該マルチフィラメント糸とイソフタル酸を8モル%共重合した改質ポリエステルを使用して製造した55デシテックス/18フィラメントの高収縮糸をエアー混繊し、145デシテックス/54フィラメントの混繊糸を製造、平織織物を作成し、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の織物サンプルを得、風合いを評価した結果、膨らみ感のあるソフトな風合いを有していた。
【0041】
また、該マルチフィラメント糸の編地を作成した後、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の編地サンプルを得た。この減量編地サンプルの繊維表面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面にa=0.1〜2μm、1≦b/a≦10の繊維軸方向に対して縦長のボイド(但し、aは繊維軸に垂直方向のボイドの長さ、bは繊維軸方向のボイドの長さ)が存在していた。また、この減量編地サンプルを、黒色の染料Dianix Black GS−Eを、サンプルに対して22.6%添加した水溶液で、135℃で60分間処理し、黒色編地サンプルを得た。得られた黒色編地のL値を測定したところ、13.5であり深色性に優れていた。
【0042】
(比較例1)
二酸化ケイ素を無添加とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメント糸を得た。得られたマルチフィラメント糸を構成するモノフィラメントの低配向部および高配向部の△nはそれぞれ30〜50×10−3、90〜100×10−3であった。また、該マルチフィラメント糸の繊維軸方向の低配向部の存在周期は14.1個/mで高度に分散していた。
【0043】
しかし、該マルチフィラメント糸の編地を作成した後、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の編地サンプルを得、減量編地サンプルの繊維表面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面にはボイドが存在せず、減量編地サンプルに、黒色の染料Dianix Black GS−Eをサンプルに対して22.6%添加した水溶液で、135℃で60分間処理し、黒色編地サンプルを得、黒色編地のL値を測定したところ、14.6であり、深色性が不十分であった。
【0044】
(比較例2)
実施例1と同様にポリエステルポリマーを得、得られたポリマーを常法によりチップ化、乾燥し、孔径0.20mmの円形孔を36個有する紡糸口金より紡糸温度283℃で溶融紡糸し、1600m/分で巻取って、223デシテックス/36フィラメントの未延伸糸を製造した。得られた未延伸糸のMDRは3.6、Tg=75℃、Tc=138℃であった。この未延伸繊維を下記の延伸条件で延伸して90デシテックス/36フィラメントのポリエスマルチテルフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸の△nは150×10-3で、配向斑のないものであった。
一段目延伸倍率(DR1)=1.011
二段目延伸倍率(DR2)=MDR×0.68
一段目引取りローラー温度(HR1)=85℃
熱セット温度=150℃
該マルチフィラメント糸の沸水処理時の伸長率は−8%、乾熱処理時の伸長率は−12%と自発伸長性を有していなかった。また、該マルチフィラメント糸の編地を作成した後、3%水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度で処理して減量率20%の編地サンプルを得、減量編地サンプルの繊維表面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面にa=0.1〜2μm、1≦b/a≦10の繊維軸方向に対して縦長のボイドが存在していた(但し、aは繊維軸に垂直方向のボイドの長さ、bは繊維軸方向のボイドの長さ)。しかし、この減量編地サンプルを、黒色の染料Dianix Black GS−Eを、サンプルに対して22.6%添加した水溶液で、135℃で60分間処理し、黒色編地サンプルを得、黒色編地のL値を測定したところ、14.2であり、深色性が不十分なものであった。
【0045】
【発明の効果】
本発明のポリエステルマルチフィラメント糸は、高配向部が高度に分散していること、および繊維表面微多孔化による表面反射光の減少との相乗効果によって優れた深色性を示し、自発伸長性を有していることから風合いにも優れ、衣料用素材、特にブラックフォーマル等の濃色素材として極めて好適なものである。

Claims (3)

  1. 一次粒子の平均粒径が0.2μm以下である二酸化ケイ素を0.2〜2重量%含有した、複屈折率△nが20〜65×10−3の低配向部と△nが70〜150×10−3の高配向部からなるモノフィラメントから構成されるポリエステルマルチフィラメント糸であって、U%が+1.0%以上のピークが5個/m以上あり、沸水処理時の伸長率が0%以上、沸水処理に引き続き130℃以上で乾熱処理した時、さらに1%以上の伸長率を示し、3%水酸化ナトリウム水溶液を用い、沸騰温度で減量率20%まで、アルカリ減量した後に繊維表面にa=0.1〜2μm、1≦b/a≦10のボイド(但し、aは繊維軸に垂直方向のボイドの長さ、bは繊維軸方向のボイドの長さ)が形成されることを特徴とするポリエステルマルチフィラメント糸。
  2. 一次粒子の平均粒径が0.2μm以下である二酸化ケイ素を0.2〜2重量%含有した、複屈折率△nが20〜65×10−3の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸を下記(1)〜(4)式を同時に満たす条件で延伸し、引き続いて(5)、(6)式を同時に満足する条件で緩和熱処理することを特徴とする、複屈折率△nが20〜65×10 −3 の低配向部と△nが70〜150×10 −3 の高配向部からなるモノフィラメントから構成され、U%が+1.0%以上のピークが5個/m以上あるポリエステルマルチフィラメント糸の製造方法。
    DR=MDR×(0.4〜0.55)>1.0 (1)
    DR=1.03〜1.40 (2)
    HR =Tg〜(Tg+30)℃ (3)
    HR <Tc (4)
    RR>5 . (5)
    HP>(HR+50)℃ (6)
    ここで、DRは1段目延伸域の延伸倍率。
    DRは2段目延伸域の延伸倍率。
    MDRは予熱温度90℃で測定した最大延伸倍率。
    HRは1段目延伸域の引取りローラーの表面温度。
    HRは2段目延伸域の引取りローラーの表面温度。
    RRは緩和熱処理域の緩和率。
    HPは緩和熱処理域の緩和温度。
    Tc は結晶化温度である。
  3. 請求項1に記載のポリエステルマルチフィラメント糸を少なくとも一部に用いた織編物。
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