JP3960088B2 - 電源システムおよびその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料電池を備える電源システムおよびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと酸素を含有する酸化ガスとの電気化学反応によって、起電力を得る。燃料電池は、出力電流と出力電圧との間に所定の関係があり、このような出力電流−出力電圧特性(出力特性)は、例えば燃料電池に供給されるガス量に応じて変化する。燃料電池における出力電流−出力電圧特性の一例を図13に実線で示す。このような出力電流−出力電圧特性を参照すると、燃料電池に供給されるガス量に応じて、最も出力電力が大きくなるポイント、すなわち発電効率が最も高くなるポイントを設定することができる。この結果、図14のように、供給ガス量と、このような量のガスを供給されたときに発生しうる電力の最大値とを対応させることができる。そのため、燃料電池の発電を行なう際に、供給ガス量を求め、図14に示す図に基づいて燃料電池の出力ポイントを決定することで、供給ガス量が変化しても常に発電効率を高く維持しつつ燃料電池の発電を行なうことが可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図13に示すような出力電流−出力電圧特性は、供給ガス量だけでなく、他の要因によっても変化する。例えば、供給されるガスの組成や、ガスの圧力、燃料電池内部の温度や湿度など、種々の要因の影響を受ける。出力特性が、図13に実線で示した想定特性であるものとして、動作ポイントと示した出力ポイントで運転を行なっているときに、実際の出力特性が、波線で示した実特性に変化してしまっているということが起こりうる。そのため、上記のように供給ガス量など所定の要因を検出して、これに基づいて出力ポイントを設定していても、他の要因に起因して出力特性が変化するときには、発電効率を充分に高く維持できなくなるおそれがある。
【0004】
例えば、供給ガス量と、望ましい出力電力との関係として、図14に実線で示す関係に基づいて出力ポイント設定の制御を行なっていたとする。このとき、負荷要求が変化して、燃料電池の出力電力をWcからWdに変化させるときには、燃料電池に供給するガス量を、出力電力Wcに対応するQcから、出力電力Wdに対応するQdに増加させる制御を行なうことになる。しかしながら、このとき、何らかの要因で出力電流−出力電圧特性が変化して、供給ガス量と望ましい出力電力との関係が、図14で波線で示す関係に変化していた場合には、Wdの電力を得るために必要は供給ガス量は、Qeとなる。すなわち、(Qd−Qe)のガス量が無駄となり、燃料電池の発電効率が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池の出力特性が変化したときにも、燃料電池の発電効率を高く維持する技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するために、本発明は、燃料電池を備え、所定の負荷に電力を供給する電源システムであって、
前記燃料電池における出力電流と出力電圧との間に成立する関係である出力特性を予め記憶する記憶部と、
前記出力特性を参照して、前記燃料電池の目標出力ポイントを決定する出力ポイント決定部と、
前記出力ポイント決定部が決定した前記目標出力ポイントの近傍で、前記燃料電池からの出力電力を変動させる出力制御部と、
前記燃料電池の出力電力が変動した結果得られる前記燃料電池の出力特性を取得する出力特性取得部と
を備え、
前記出力ポイント決定部は、前記出力特性取得部で取得された出力特性を参照して、発電効率が最大となる修正された出力ポイントを決定し、
前記出力制御部は、前記修正された出力ポイントに基づいて前記燃料電池から電力を出力させることを要旨とする。
【0007】
このような電源システムによれば、燃料電池の真の出力特性が、記憶部が記憶する出力特性からずれてしまった場合にも、燃料電池の出力ポイントとして、より望ましい出力ポイント(燃料電池における発電効率がより高くなる出力ポイント)を選択することができる。
【0008】
なお、燃料電池では、所定量のガスが供給されて、適当な大きさの負荷が接続されているときには、出力電流と出力電圧とは1対1に対応する。そのため、燃料電池の出力特性とは、燃料電池における出力電流と出力電圧との関係ということができる。
【0010】
このような構成とすれば、燃料電池の出力ポイントを修正するために用いる出力特性として、新たに取得した出力特性を用いるため、このような動作を繰り返すことで、真の出力特性により近い出力特性を取得することができると共に、より望ましい出力ポイントを選択することができる。
【0011】
本発明の電源システムにおいて、
前記燃料電池に供給されるガスの量に関する情報を取得するガス量取得部をさらに備え、
前記記憶部は、前記燃料電池の出力特性と供給ガス量との関係を予め記憶しており、
前記出力ポイント決定部は、前記ガス量取得部が取得したガス量に基づき、前記出力特性を参照して、前記目標出力ポイントを決定することとしても良い。
【0012】
このような構成とすれば、供給ガス量に対応して出力特性が新たに取得されるため、供給ガス量が変動しても、供給ガス量に応じて燃料電池の出力ポイントの修正が行なわれる。
【0013】
このような本発明の電源システムにおいて、
前記出力制御部によって前記燃料電池の出力電力を変動させる処理が1回行なわれる間に、前記供給されるガス量の変動する割合が、10%未満であることとしても良い。
【0014】
このように、ガス流量が変化する速さに比べて、燃料電池の出力電力を変動させる処理を行なう速さが充分に速いことにより、ガス量に応じて出力ポイントを修正する動作を、支障なく行なうことができる。
【0015】
また、本発明の電源システムにおいて、
電源配線に対して前記燃料電池と並列に接続された蓄電器と、
前記負荷の要求する電力と、前記出力ポイント決定部が決定した前記目標出力ポイントで前記燃料電池が発電する電力との差として、前記蓄電器が出力すべき電力を決定する蓄電器出力決定部と
をさらに備え、
前記出力制御部は、前記電源システムから前記負荷の要求する電力が出力されるように、前記燃料電池からの出力電力と共に、前記蓄電器からの出力電力を、前記蓄電器出力決定部が決定した前記電力の近傍で変動させることとしても良い。
【0016】
このような本発明の電源システムにおいて、
前記燃料電池から出力される電力を前記電源配線に伝える際に電圧の変換を行なうDC/DCコンバータをさらに備え、
前記蓄電器は2次電池であり、
前記出力制御部は、前記電源配線における電圧が、前記蓄電器出力決定部が決定した電力を前記2次電池が出力するときの前記2次電池の電圧の近傍で変動するように、前記DC/DCコンバータの出力電圧を設定することとしても良い。
【0017】
あるいは、本発明の電源システムにおいて、
前記蓄電器は、DC/DCコンバータを介して前記電源配線に接続される2次電池であり、
前記出力制御部は、前記DC/DCコンバータの出力電圧を、前記目標出力ポイントにおける前記燃料電池の出力電圧の近傍で変動するように設定することとしても良い。
【0018】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、電源システムの制御方法や、電源システムを搭載する電気自動車などの形態で実現することが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の全体構成:
B.燃料電池の出力ポイントの制御:
C.第2実施例:
D.変形例:
【0020】
A.装置の全体構成:
図1は、本発明の第1実施例である電気自動車10の構成の概略を表わすブロック図である。電気自動車10は、電源システム15を備えている。電源システム15から電力を供給される負荷として、高圧補機40と、駆動インバータ30を介して電源システム15に接続される駆動モータ32とを備えている。これら電源システム15と負荷との間には、配線50が設けられており、この配線50を介して、電源システム15と負荷との間で電力がやり取りされる。
【0021】
電源システム15は、燃料電池システム22と、2次電池26とを備えている。燃料電池システム22は、後述するように発電の本体である燃料電池を備えており、DC/DCコンバータ28を介して配線50に接続している。このDC/DCコンバータ28と、2次電池26とは、上記配線50に対して並列に接続されている。さらに配線50には、燃料電池へ電流が逆流するのを防止するためのダイオード42がさらに設けられている。
【0022】
図2は、燃料電池システム22の構成の概略を表わす説明図である。燃料電池システム22は、燃料電池60と、燃料ガス供給部61と、ブロワ64とを備えている。本実施例では、燃料電池60として、固体高分子型燃料電池を用いている。
【0023】
燃料ガス供給部61は、燃料電池60に対して、水素を含有する燃料ガスを供給する装置であり、例えば、改質燃料のタンクと改質器とを備えることとすればよい。改質燃料としては、天然ガス等の気体炭化水素、ガソリン等の液体炭化水素、エタノールなどのアルコール類やアルデヒド類など、種々のものを選択可能である。改質器は、用いる改質燃料に応じた改質触媒を内部に備えて、改質燃料の供給を受けて改質反応を進行し、水素リッチな改質ガスを生成する。なお、燃料ガス供給部61では、この改質ガスを燃料電池60に供給するのに先立って、さらに一酸化炭素濃度の低減を行なうことが望ましい。
【0024】
あるいは、燃料ガス供給部61を、内部に水素を貯蔵し、水素ガスを燃料ガスとして燃料電池60に供給する装置とすることもできる。このような場合には、例えば、燃料ガス供給部61が水素ボンベを備えることとすればよい。あるいは、水素吸蔵合金を内部に有する水素タンクを備えることとし、上記水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることによって水素を貯蔵することとしても良い。このような改質ガスあるいは水素ガスは、燃料ガス供給路62を介して燃料電池60のアノードに供給され、電気化学反応に供される。電気化学反応で利用されなかった残りの水素ガスは、燃料ガス排出路63に排出される。
【0025】
また、ブロワ64が取り込んだ圧縮空気は、酸化ガス供給路65によって、酸化ガスとして燃料電池60のカソードに供給される。燃料電池60から排出されるカソード排ガスは、カソード排ガス路66に導かれて外部に排出される。なお、燃料ガス供給路62,酸化ガス供給路65には、それぞれ、各流路を通過するガス流量を検出するための流量センサ67,68が設けられている。また、燃料電池システム22において、燃料ガスあるいは酸化ガスを加湿する加湿器を、燃料ガス供給路62や酸化ガス供給路65にさらに設けることとしても良い。
【0026】
2次電池26としては、鉛蓄電池や、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、リチウム2次電池など種々の2次電池を用いることができる。この2次電池26は、燃料電池システム22の始動時に、燃料電池システム22の各部を駆動するための電力を供給したり、燃料電池システム22の暖機運転が完了するまでの間、各負荷に対して電力を供給する。また、本実施例の電源システム15では、燃料電池60が定常状態で発電を行なうときにも、負荷が所定の値よりも大きくなる場合には、2次電池26によって電力を補うことが可能となっている。
【0027】
また、図1に示すように、2次電池26には、2次電池26の残存容量(SOC)を検出するための残存容量モニタ27が併設されている。本実施例では、残存容量モニタ27は、2次電池26における充電・放電の電流値と時間とを積算するSOCメータとして構成されている。あるいは、残存容量モニタ27は、SOCメータの代わりに電圧センサによって構成することとしてもよい。2次電池26は、その残存容量が少なくなるにつれて電圧値が低下するという性質を有しているため、電圧を測定することによって2次電池26の残存容量を検出することができる。
【0028】
DC/DCコンバータ28は、出力側の目標電圧値を設定することによって、配線50における電圧を調節し、これによって2次電池26からの出力電圧を調節して、その結果として燃料電池60の発電量を制御する。また、DC/DCコンバータ28は、燃料電池60と配線50との接続状態を制御するスイッチとしての役割も果たしており、燃料電池60が発電を停止するときには、燃料電池60と配線50との接続を切断する。なお、DC/DCコンバータ28と燃料電池60とを接続する配線には、燃料電池60からの出力電流を検出する電流計45と、燃料電池60からの出力電圧を検出する電圧計46とが設けられている。
【0029】
電源システム15から電力の供給を受ける負荷の一つである駆動モータ32は、同期モータであって、回転磁界を形成するための三相コイルを備えている。この駆動モータ32は、駆動インバータ30を介して電源システム15から電力の供給を受ける。駆動インバータ30は、上記駆動モータ32の各相に対応してスイッチング素子としてのトランジスタを備えるトランジスタインバータである。駆動モータ32の出力軸36は、減速ギヤ34を介して車両駆動軸38に接続している。減速ギヤ34は、駆動モータ32が出力する動力を、その回転数を調節した上で車両駆動軸38に伝える。
【0030】
また、他の負荷である高圧補機40は、電源システム15から供給される電力を、300V以上の電圧のまま利用する装置である。高圧補機40としては、例えば、燃料電池60に空気を供給するためのブロワ64(図2参照)を挙げることができる。さらに、燃料電池60を冷却するために、燃料電池60内部に冷却水を循環させるための冷却ポンプ(図示せず)も、高圧補機40に含まれる。これらの装置は、燃料電池システム22に含まれる装置であるが、図1においては、電源システム15の外側に、高圧補機40として示した。さらに、高圧補機40としては、燃料電池システム22に含まれるものの他に、例えば電気自動車10が備える空調装置(エアコン)が含まれる。
【0031】
また、電気自動車10は、制御部48をさらに備えている。制御部48は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPUと、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAMと、各種の信号を入出力する入出力ポート等を備える。この制御部48は、既述した電流計45および電圧計46が出力する信号や、残存容量モニタ27が出力する信号、あるいは、車両の運転に関して入力される指示信号を取得する。また、DC/DCコンバータ28,燃料電池システム22、駆動インバータ30、高圧補機40などに駆動信号を出力する。
【0032】
B.燃料電池の出力ポイントの制御:
本実施例の電源システム15では、燃料電池60の出力ポイントは、燃料電池に供給されるガス量に基づいて設定している。図3は、燃料電池60における出力電流−出力電圧特性(出力特性)が、ガス量に応じて変化する様子を表わす説明図である。図3では、供給ガス量をF1,F2,F3,F4と増やすに従って、出力電流−出力電圧特性が変化する様子を示している。
【0033】
図3に示すように、所定の量のガスを供給して燃料電池60において発電を行なう際には、出力電流が大きくなるに従って、出力電圧は次第に低下する。そのため、出力電流と出力電圧との積として表わされる燃料電池60からの出力電力は、所定の最大値を示し、この出力電力の最大値は、供給ガス量に応じてそれぞれ定めることができる。図4は、燃料電池60における出力電流と出力電力との関係を表わす図であり、図3と同様に、供給ガス量をF1,F2,F3,F4と増やすに従って上記関係が変化する様子を示している。図3および図4では、一例として、供給ガス量がF2のときには、出力電力は最大値Pmとなり、このときの出力電流はIm(出力電圧はVm)であることを示す。
【0034】
本実施例の電源システム15では、制御部48が備える既述したROMにおいて、供給ガス量ごとに、各々のガス量に対応した出力電流−出力電圧特性が記憶されている。電源システム15が記憶する燃料電池の出力特性は、ガス量以外に出力特性に影響し得る他の条件(供給ガスの組成や圧力、内部温度や湿度)を一定として測定した結果に基づいており、燃料電池の出力ポイントを決定する際の基準となる出力特性として記憶されている。本実施例の電源システム15では、燃料電池の発電を行ないながら出力特性の変化を検出し、上記基準となる出力特性を修正しつつ、発電状態の制御を行なっている。
【0035】
電源システム15の運転状態を制御する際には、本実施例では、供給ガス量を測定し、上記記憶した出力特性を参照することによって、そのときに燃料電池60から出力可能な電力の最大値を求める。そして、供給ガス量に応じて求められるこのような出力電力の最大値を、燃料電池60が出力電力可能な電力としている。なお、本実施例では、酸化ガスが充分量供給されているときに燃料ガス量を変化させたときの出力特性と、燃料ガスが充分量供給されているときに酸化ガス量を変化させたときの出力特性と、の両方を記憶している。燃料電池60に供給される燃料ガス量と酸化ガス量を検出したときに、より不足する側のガス量に対応する出力特性を参照して、そのときに燃料電池60が出力電力可能な電力量を求める。
【0036】
図5は、電源システム15の稼働中に、制御部48において実行される出力ポイント制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンが実行されると、制御部48は、まず、カウンタのリセットを行なう(ステップS100)。このカウンタは、燃料電池60の出力特性を知るために、燃料電池の出力電流および出力電圧の測定を所定回数行なうためのものである。
【0037】
次に、負荷要求の読み込みを行なう(ステップS110)。負荷要求とは、所望の走行状態を実現するのに駆動インバータ30が要する電力であり、電気自動車10の車速およびアクセル開度に基づいて定まる。
【0038】
そして、ステップS110で読み込んだ負荷要求に基づいて、電源システム15に要求されている要求電力Preq を算出する(ステップS120)。なお、要求電力Preq を算出する際には、上記駆動インバータ30が要する電力に加えて、高圧補機40の消費電力も考慮される。
【0039】
次に、流量センサ67,68より、燃料ガス供給路62を通過する燃料ガスの流量と、酸化ガス供給路65を通過する酸化ガスの流量とに関する情報を取得する(ステップS130)。なお、燃料ガスの流量とは、燃料ガス供給部61が改質ガスを生成する場合には改質ガスの流量であり、燃料ガス供給部61が水素ガスを貯蔵する場合には水素ガスの流量である。また、酸化ガスの流量とは、ブロワ64によって供給される圧縮空気の流量である。このような改質ガスの流量や水素ガスの流量、あるいは圧縮空気の流量もまた、負荷要求の大きさに応じて制御される。しかしながら、これら燃料ガスや酸化ガスの流量が制御を受けて変化する速度は、図5に示した処理ルーチンが実行される速度に比べると極めて遅い。そのため、本ルーチンを実行する際には、このステップS130でガス流量を取り込むと、ガス流量はこの値で略一定であるものと扱って、以下の処理を行なっている。
【0040】
その後、ステップS130で読み込んだガス流量に基づいて、制御部48のROMに記憶する既述した出力特性を参照して、そのときに燃料電池60が出力可能な電力(FC許容電力)Ppermを決定する(ステップS140)。すなわち、上記出力特性に基づいて、ステップS130で読み込んだガス流量を供給される燃料電池が出力可能な最大電力を、FC許容電力Ppermとして決定する。
【0041】
燃料電池60が出力可能な電力Ppermを決定すると、次に、2次電池26が出力すべき電力PBAT を、ステップS120で算出した要求電力Preq と、上記FC許容電力Ppermとの差(Preq −Pperm)として算出する(ステップS150)。ここで、残存容量モニタ27から、2次電池26のSOCを読み込み(ステップS160)、これに基づいて、2次電池26の目標電圧VBATaimを決定する(ステップS170)。
【0042】
ここで、制御部48は、既述した燃料電池60の出力特性に加えて、2次電池26の出力電流−出力電圧特性に関するデータをROM内に記憶している。図6は、制御部48が記憶してる上記データの一例を表わす説明図である。図6に示すように、2次電池26の出力電流−出力電圧特性は、SOCによって変化するものであり、SOCが決まれば、そのときの出力特性が定まる。図6では、SOCの小さな順に、出力電流−出力電圧特性がG1,G2,…,G5となることを表わしている。ステップS160においてSOCを取り込むと、制御部48は、そのSOCに対応する出力電流−出力電圧特性をROMから読み出す。そして、ステップS170では、この読み出した出力特性に基づいて、ステップS150で算出した2次電池26が出力すべき電力PBAT に相当する電力を出力するための、2次電池26の目標電圧VBATaimを決定する。
【0043】
具体的には、例えば、検出されたSOCに対応した出力電流−出力電圧特性として、図6における特性G3が読み出されたとする。この場合、制御部48は、その読み出された特性G3において出力電圧と出力電流の積(すなわち、2次電池26の出力電力)が、上記PBAT に略等しくなるポイントを算出する。今、このポイントが図6に示すPn であるとすると、そのポイントPn での2次電池26の出力電圧Vn を、2次電池26に要求される目標出力VBATaimとしてステップS170において決定する。
【0044】
次に、ステップS170で決定した2次電池26の目標電圧VBATaimにサイン波を重畳することによって、DC/DCコンバータの出力電圧の指令値Vord を設定する(ステップS180)。目標電圧VBATaimにサイン波(sinωt)を重畳した様子を、図7(A)に示す。そして、DC/DCコンバータ28と駆動インバータ30に対して駆動信号を出力する(ステップS190)。ここで、DC/DCコンバータ28に対しては、駆動信号として、ステップS180で設定したDC/DCコンバータの電圧指令Vord が出力される。また、駆動インバータ30に対しては、ステップS110で読み込んだ負荷要求に基づいて駆動信号を出力する。
【0045】
これによって、駆動モータ32では負荷要求に応じた電力が消費されると共に、電源システム15からは、ステップS120で算出した要求電力Preq に相当する電力が出力される。このとき、DC/DCコンバータ28の電圧指令値が上記のように変動することにより、この変動に伴って2次電池26からの出力電力PBAT も変動する。また、燃料電池60からの出力電圧PFCは、要求電力Preq と2次電池26の出力電力PBAT との差に相当する電力となる。そのため、2次電池26からの出力電力PBAT が変動するのに伴って、燃料電池60からの出力電圧PFCもまた変動する。図7(A)に示すようにDC/DCコンバータの電圧指令を変動させたときに、2次電池26出力電力PBAT および燃料電池60出力電力PFCが変動する様子を、図7(B)に示す。
【0046】
ここで、制御部48は、既述したカウンタの値を一つ進める処理を行なう(ステップS200)。ステップS200の処理は、ステップS100で一旦カウンタをリセットした後に、以下のステップS210において燃料電池60の出力状態を検出する動作を何回繰り返したかを計測するためのものである。
【0047】
次に、燃料電池60の出力電流および出力電圧を、それぞれ、電流計45および電圧計46から取り込む(ステップS210)。そして、既述したカウンタの値が、予め定めた所定の値nに達したかどうかを判断する(ステップS220)。カウンタの値がnに達していないときには、ステップS200に戻り、カウンタの値を一つ進めて、ステップS210の処理を処理を再び行なう。これにより、2次電池26の出力電力PBAT と燃料電池60の出力電力PFCとが変動する状態で、燃料電池60の出力電流および出力電圧を測定する動作がn回繰り返される。
【0048】
また、上記のように燃料電池の出力電力PFCが変動するときに、燃料電池60の出力電流が変動する様子を図7(C)に、燃料電池60の出力電圧が変動する様子を図7(D)に示す。図7(C)および(D)では、図5のステップS210において電流および電圧が取り込まれたポイントを、丸を付して示した。カウンタの値がnに達するまでステップS200からS220の処理を繰り返すことで、燃料電池60の出力電流や出力電圧が変動する間に、図7(C)、(D)に示すようにn個のポイント(図7(C)、(D)ではn=14)で電流値および電圧値の検出が行なわれる。
【0049】
なお、図7(C)に示すように、燃料電池60の出力電流は、ステップS140で決定した許容電力Ppermを燃料電池60が発電するときの出力電流Ipermの近傍で変動する。また、図7(D)に示すように、燃料電池60の出力電圧は、同じく許容電力Ppermを燃料電池60が発電するときの出力電圧Vpermの近傍で変動する。
【0050】
ステップS220においてカウンタの値がnに達したと判断されると、上記のように電流値および電圧値をn回測定した結果に基づいて、新たな出力特性を得て(ステップS230)、本ルーチンを終了する。
【0051】
燃料電池60の出力電流および出力電圧をn回測定することによって得られる新たな出力特性の一例を図8に示す。この新たな出力特性は、本ルーチンを繰り返し行なう過程で、ステップS130で次回再び同じガス量が検出されたときに用いられる。すなわち、ステップS140において、予め記憶している出力特性に代えて、この新たな出力特性が参照されて、FC許容電力Ppremが決定される。
【0052】
新たな出力特性を得る具体的な方法を、以下に例示する。まず、ステップS230では、n回測定した出力電流と出力電圧の組み合わせのうち、両者の積である出力電力PFCが最も大きくなる組み合わせを選択する。ステップS140で参照した出力特性(予め記憶していたもの)が、現実の状態と良く一致しているならば、出力電流がIperm、出力電圧がVpermのときに、出力電力PFCは最大となるはずである。しかしながら、予め記憶していた出力特性と実際の出力特性との間にずれが生じている場合には、出力電流および出力電圧が上記とは異なる値のときに、出力電力PFCは最大となる。図7では、出力電流がIpermとは異なるIA であって(図7(C)参照)、出力電圧がVpermとは異なるVA のときに(図7(D)参照)、出力電力PFCは最大値PA となる(図7(B)参照)様子を表わしている。このような場合には、ステップS230において、ステップS130で検出したガス量に対して選択すべき最大出力としてPA が新たに記憶される。そして、次回に同じガス量が検出されたときには、ステップS140において上記新たに記憶した最大出力が参照されて、FC許容電力PpremとしてPA が決定される。
【0053】
以上のように構成された本実施例の電源システム15によれば、燃料電池の出力電力を電気的に変動させることによって得られる実際の検出値に基づいて、燃料電池の発電量を決めるために参照する出力特性が修正される。ここで、本実施例では、燃料電池の発電効率がより高くなるように、すなわち所定の供給ガス量に対して発電量が最大となるように、出力特性を定めている。そのため燃料電池に供給されるガス成分や圧力、内部の温度や湿度などが変化して、出力特性が変化したときにも、燃料電池における発電効率をより高く維持することが可能となる。
【0054】
なお、上記nの値は、2以上の任意の値から選択することができる。供給ガス量が変化する速さと、上記ルーチンを実行する速さなどを考慮して、適宜設定すればよい。すなわち、図5の処理では、出力電流および出力電圧をn回測定する動作を、供給ガス量がステップS130で取り込んだ値であるという前提で行なっている。そのため、nの値は、供給ガス量が一定であるものと扱える時間内に、電圧指令値を変化させて電流値および電圧値を検出可能となる回数とすればよい。
【0055】
このように、図5の処理を実行する速さは、供給ガス量が変動する速さに比べて充分に速い必要がある。例えば、ステップS180でサイン波を重畳した電圧をDC/DCコンバータの電圧指令として電源システム15を駆動する際に、供給されるガスの変動する割合が10%未満であることが望ましい。
【0056】
また、上記した説明では、FC許容電力Ppermよりも要求電力Preq が大きいものとしていたが、PreqよりもPpermが充分に大きく、燃料電池によって2次電池の充電を行なう場合にも、同様の制御を行なうことができる。この場合には、ステップS150で求められる2次電池が出力すべき電力PBATは負の値となる。このとき、例えば、ステップS150において算出されるPBATがPrであって、ステップS160で取り込まれる2次電池のSOCがG4であるならば、ステップS170では、2次電池の目標電圧VBATaim としてVrが決定される(図6参照)。
【0057】
これに対して、電源システム15の各部の状態や負荷要求の大きさによっては、上記現在の出力特性を新たに取得するための制御が行なわれない場合もある。例えば、要求電力Preq よりもFC許容電力Ppermが大きく、燃料電池によって発電可能な電力が負荷要求に対して過剰となる場合であって、2次電池26のSOCが略100%のときには、これ以上2次電池を充電することができないため、上記制御は行なわないこととすればよい。
【0058】
このような場合には、DC/DCコンバータ28の電圧指令Vord として、2次電池から充放電が行なわれない電圧が設定される。すなわち、2次電池26が満充電のときの出力特性を図6のG5とすると、上記電圧指令Vord をVsに設定する。このとき、負荷要求に応じた電力を駆動モータ32が消費するように駆動インバータ30に駆動信号を出力すると、燃料電池60の出力電力はPreqとなる。
【0059】
また、2次電池26のSOCが低下して、これ以上放電すべきではないと判断されるときであって、FC許容電力Ppermよりも要求電力Preq が大きいときにも、上記出力特性を新たに取得するための制御は行なわないこととすればよい。例えば、これ以上放電すべきでないと判断される2次電池26の状態として、2次電池のSOCが図6のG1であったときには、DC/DCコンバータ28の電圧指令Vord をVtに設定すればよい。このとき、駆動インバータ30に対しては、FC許容電力Ppermに応じた電力を駆動モータ32が消費するように、駆動信号を出力すればよい。このような制御を行なうと、燃料電池60の出力電力はPpermに略等しくなり、駆動モータ32の消費電力は、負荷要求に応じた値よりも抑制されることになる。
【0060】
C.第2実施例:
図9は、第2実施例の電気自動車110の構成を表わす説明図である。電気自動車110は、電源システム115を搭載している。図9の電気自動車110において、第1実施例の電気自動車10と共通する部分については同じ参照番号を付し、詳しい説明を省略する。電気自動車110は、電気自動車10と比べて、燃料電池システム22と2次電池26との接続関係が異なっている。電気自動車110では、2次電池26は、DC/DCコンバータ28介して配線50に接続しており、燃料電池60は、上記DC/DCコンバータ28と、配線50に対して並列に接続されている。
【0061】
電気自動車110においても、第1実施例と同様に、燃料電池からの出力電力(FC許容電力Pperm)を設定する際に参照する出力特性を新たに取得するための制御を行なう。図10は、電源システム115の稼働中に、制御部48において実行される出力ポイント制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。
【0062】
本ルーチンが実行されると、制御部48は、まず、ステップS300〜S330として、図5のステップS100〜S130と同様の処理を行なう。すなわち、カウンタをリセットし、負荷要求を読み込んで電源システム115に要求されている要求電力Preq を算出し、燃料電池60に供給されるガス量を取り込む。次に、ステップS330で読み込んだガス流量に基づいて、制御部48のROMに記憶する出力特性を参照して、FC許容電力Pperm、と、燃料電池60の目標電圧VFCaim を決定する(ステップS340)。ここで、FC許容電力Ppermは、既述したように、記憶した出力特性に基づいて、ステップS330で読み込んだガス流量に対して燃料電池60が発電し得る最大値として決定される値である。また、目標電圧VFCaim は、燃料電池60が上記FC許容電力Ppermを出力するときの出力電圧として、上記記憶した出力特性に基づいて決定される値である。
【0063】
次に、ステップS340で決定した燃料電池60の目標電圧VFCaim にサイン波を重畳することによって、DC/DCコンバータの出力電圧の指令値Vord を設定する(ステップS350)。目標電圧VFCaim にサイン波(sinωt)を重畳した様子を、図11(A)に示す。そして、DC/DCコンバータ28と駆動インバータ30に対して駆動信号を出力する(ステップS360)。ここで、DC/DCコンバータ28に対しては、駆動信号として、ステップS350で設定したDC/DCコンバータの電圧指令Vord が出力される。また、駆動インバータ30に対しては、ステップS310で読み込んだ負荷要求に基づいて駆動信号を出力する。
【0064】
これによって、駆動モータ32では負荷要求に応じた電力が消費されるようになる。また、電源システム15からは、ステップS320で算出した要求電力Preq に相当する電力が出力される。このとき、DC/DCコンバータ28の電圧指令値が上記のように変動することにより、この変動に伴って燃料電池60からの出力電力PFCも変動する。また、このとき、2次電池26からの出力電圧PBAT は、要求電力Preq と燃料電池60の出力電力PFCとの差に相当する値となる。そのため、燃料電池60からの出力電力PFCが変動するのに伴って、2次電池26からの出力電圧PBAT もまた変動する。図11(A)に示すようにDC/DCコンバータの電圧指令を変動させたときに、燃料電池60出力電力PFCおよび2次電池26出力電力PBAT が変動する様子を、図11(B)に示す。
【0065】
ここで、制御部48は、既述したカウンタの値を一つ進める処理を行なう(ステップS370)。ステップS370の処理は、ステップS300で一旦カウンタをリセットした後に、以下のステップS380において燃料電池60の出力状態を検出する動作を何回繰り返したかを計測するためのものである。
【0066】
次に、燃料電池60の出力電流および出力電圧を、それぞれ、電流計45および電圧計46から取り込む(ステップS380)。そして、既述したカウンタの値が、予め定めた所定の値nに達したかどうかを判断する(ステップS390)。カウンタの値がnに達していないときには、ステップS370に戻り、カウンタの値を一つ進めて、ステップS380の処理を処理を再び行なう。これにより、燃料電池60の出力電力PFCと2次電池26の出力電力PBAT とが変動する状態で、燃料電池60の出力電流および出力電圧を測定する動作がn回繰り返される。
【0067】
また、上記のように燃料電池の出力電力PFCが変動するときに、燃料電池60の出力電流が変動する様子を図11(C)に、燃料電池60の出力電圧が変動する様子を図11(D)に示す。図11(C)および(D)では、図10のステップS380において電流および電圧が取り込まれたポイントを、丸を付して示した。カウンタの値がnに達するまでステップS370からS390の処理を繰り返すことで、燃料電池60の出力電流や出力電圧が変動する間に、図11(C)、(D)に示すようにn個のポイント(図11(C)、(D)ではn=14)で電流値および電圧値の検出が行なわれる。
【0068】
なお、図11(C)に示すように、燃料電池60の出力電流は、ステップS340で決定した許容電力Ppermを燃料電池60が発電するときの出力電流Ipermの近傍で変動する。また、図11(D)に示すように、燃料電池60の出力電圧は、同じく許容電力Ppermを燃料電池60が発電するときの出力電圧Vpermの近傍で変動する。
【0069】
ステップS390においてカウンタの値がnに達したと判断されると、上記のように電流値および電圧値をn回測定した結果に基づいて、新たな出力特性を得て(ステップS400)、本ルーチンを終了する。この新たな出力特性は、既述した第1実施例と同様にして得ることができる。すなわち、出力電流および出力電圧を測定したn個のポイントのうち、燃料電池60の出力電力が最大となったポイントを、ステップS330で読み込んだガス量に対応する新たな出力ポイントとして記憶する。そして、次回、同じガス量が検出されたときには、この新たに記憶したポイントに基づいて、制御が行なわれる。
【0070】
以上のように構成された第2実施例の電源システム115によれば、第1実施例と同様の効果を得ることができる。すなわち、燃料電池に供給されるガス成分や圧力、内部の温度や湿度などが変化して、出力特性が変化したときにも、燃料電池における発電効率をより高く維持することが可能となる。
【0071】
なお、第1実施例と同様に、電源システム115の各部の状態や負荷要求の大きさによっては、上記現在の出力特性を新たに取得するための制御が行なわれない場合がある。例えば、要求電力Preq よりもFC許容電力Ppermが大きく、2次電池26のSOCが略100%のときには、これ以上2次電池を充電することができないため、上記制御は行なわないこととすればよい。このような場合には、DC/DCコンバータ28の電圧指令Vord として、燃料電池60が要求電力Preq を出力するときの出力電圧を設定する。そして、DC/DCコンバータ28によって、配線50と2次電池26との間の接続を遮断する。
【0072】
また、2次電池26のSOCが低下して、これ以上放電すべきではないと判断されるときであって、FC許容電力Ppermよりも要求電力Preq が大きいときにも、上記出力特性を新たに取得するための制御は行なわないこととすればよい。この場合には、DC/DCコンバータ28の電圧指令Vord として、燃料電池60がFC許容電力Ppermを出力するときの出力電圧を設定する。また、DC/DCコンバータ28によって、配線50と2次電池26との間の接続を遮断する。そして、このような場合には、駆動モータ32における消費電力を、負荷要求に応じた値よりも抑制する。すなわち、駆動モータ32における消費電力が、FC許容電力Ppermに応じた値となるように、駆動インバータ30を制御する。
【0073】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0074】
D1.変形例1:
上記実施例では、燃料電池60の出力電力を変動させる際に、DC/DCコンバータ28の電圧指令に対して、サイン波を重畳することとしたが、異なる構成としても良い。現在記憶している燃料電池の出力特性に基づいて求められるポイントの近傍で、出力電力を変動させることができるならば、記憶している出力特性を、その時点における真の出力特性に近づける修正を行なうためのデータを得ることが可能となる。
【0075】
DC/DCコンバータ28の電圧指令を変化させるパターンの変形例を、図12に示す。図12に示すように、電圧指令をステップ状に変化させることとしても良い。ここでは、燃料電池の出力電流および出力電圧の測定は、配線50の電圧が安定しているときに行なうこととしており、測定ポイントは、図12中に丸を付して示した。
【0076】
D2.変形例2:
また、上記実施例では、燃料電池60に供給されるガス量は、流量センサ67,68の検出結果に基づいて判断したが、異なる構成としても良く、供給ガス量を反映する値に基づいて判断すればよい。例えば、酸化ガスの流量を直接検出する代わりに、ブロワ64の回転数を読み込んで、ガス流量を算出することとしても良い。
【0077】
D3.変形例3:
燃料電池の出力状態(出力電流および出力電圧)を測定した結果から新たな出力特性を得るための処理は、測定結果から得られるn個の出力電力の値から、直接に最大値を選択する以外の構成とすることも可能である。例えば、測定したn個のデータを解析して、真の最大値を推定する処理を行なうこととしても良い。また、上記のように燃料電池の出力状態を測定した結果から選択する出力電力の値は、燃料電池の出力電力を変動させた範囲において最も大きい値ではなくても、ほぼ最大値、例えば最大値の95%以上の値を選択すれば、同様の効果を得ることができる。
【0078】
D4.変形例4:
また、記憶した燃料電池の出力特性に基づいて燃料電池の出力ポイントを決定する制御は、燃料電池に供給されるガス量以外の要因に基づいて行なうこととしても良い。上記実施例では、負荷要求が変化するのに応じてガス量も変化させることとし、燃料電池60の出力特性を供給ガス量に応じて記憶することとした。これに対して、例えば、燃料電池と2次電池とを備える電源システムが定置型であって、供給されるガス量が一定である場合に、他の変動要因(ガスの組成や湿度、燃料電池の内部温度や圧力など)の変化に対応した出力特性を記憶することとしても良い。出力特性に影響を与える所定の要因に応じた出力特性を記憶して出力ポイントを設定するのであれば、本発明を適用可能であり、上記所定の要因以外の要因に起因して出力特性が変化するときに、これを修正することができる。
【0079】
D5.変形例5:
上記のように、燃料電池の出力電力を変動させることによって新たに取得した燃料電池の出力特性は、電源システムの停止時にはリセットすることとしても良いし、そのまま記憶を保持することとしても良い。記憶を保持することとすれば、次回電源システムを起動する時にも、記憶した出力特性が生かされる。これに対して、記憶をリセットする場合には、次回に電源システムを起動する時には、そのときに電源システムが置かれた状況に応じて、新たに出力特性の取得の動作を開始すればよい。
【0080】
D6.変形例6:
また、図5あるいは図10に示した処理を実行して、記憶していた燃料電池の出力特性を修正する動作は、電源システムの稼働中には常に行なうこととしても良いし、あるいは一定時間毎に行なうこととしてもよい。また、燃料電池の出力特性の変化を引き起こす要因の変動(改質器の温度変化や、燃料電池内部の温度や圧力の変化等)が検出されたときに、上記した出力特性を修正するための動作を行なうこととしても良い。修正の制御を行なわないときには、第1の実施例の電源システム15では、図5の処理を行なわないため、2次電池の目標電圧VBATaimにサイン波を重畳するという動作を行なわず、目標電圧VBATaimをそのままDC/DCコンバータの電圧指令Vord として設定すればよい。また、第2の実施例の電源システム115では、図10の処理を行なわないため、燃料電池の目標電圧VFCaim にサイン波を重畳するという動作を行なわず、目標電圧VFCaim をそのままDC/DCコンバータの電圧指令Vord として設定すればよい。
【0081】
D7.変形例7:
図1あるいは図9に示した電源システムにおいて、さらに、キャパシタ等の蓄電器を備えることとしても良い。燃料電池に供給されるガス量に応じて、燃料電池の出力ポイントを制御可能であって、負荷要求が一定であっても燃料電池の出力電力を変動させることが可能なシステムであれば、本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である電気自動車10の構成の概略を表わすブロック図である。
【図2】燃料電池システム22の構成の概略を表わす説明図である。
【図3】燃料電池60における出力電流−出力電圧特性が、ガス流量に応じて変化する様子を表わす説明図である。
【図4】燃料電池60における出力電流と出力電力との関係が、ガス流量に応じて変化する様子を表わす図である。
【図5】出力ポイント制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。
【図6】2次電池26において、SOCが種々異なるときの出力特性の例を表わす説明図である。
【図7】DC/DCコンバータの出力電圧を変化させたときに、これに伴って種々の値が変化する様子を表わす説明図である。
【図8】燃料電池60の出力電流および出力電圧をn回測定することによって得られる新たな出力特性の一例を示す図である。
【図9】第2実施例の電気自動車110の構成を表わす説明図である。
【図10】出力ポイント制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。
【図11】DC/DCコンバータの出力電圧を変化させたときに、これに伴って種々の値が変化する様子を表わす説明図である。
【図12】DC/DCコンバータ28の電圧指令を変化させるパターンの変形例を示す図である。
【図13】燃料電池における出力電流−出力電圧特性を示す説明図である。
【図14】燃料電池における供給ガス量と出力電力との関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
10,110…電気自動車
15,115…電源システム
22…燃料電池システム
27…残存容量モニタ
28…DC/DCコンバータ
30…駆動インバータ
32…駆動モータ
34…減速ギヤ
36…出力軸
38…車両駆動軸
40…高圧補機
42…ダイオード
45…電流計
46…電圧計
48…制御部
50…配線
60…燃料電池
61…燃料ガス供給部
62…燃料ガス供給路
63…燃料ガス排出路
64…ブロワ
65…酸化ガス供給路
66…カソード排ガス路
67,68…流量センサ
Claims (10)
- 燃料電池を備え、所定の負荷に電力を供給する電源システムであって、
前記燃料電池における出力電流と出力電圧との間に成立する関係である出力特性を予め記憶する記憶部と、
前記出力特性を参照して、前記燃料電池の目標出力ポイントを決定する出力ポイント決定部と、
前記出力ポイント決定部が決定した前記目標出力ポイントの近傍で、前記燃料電池からの出力電力を変動させる出力制御部と、
前記燃料電池の出力電力が変動した結果得られる前記燃料電池の出力特性を取得する出力特性取得部と
を備え、
前記出力ポイント決定部は、前記出力特性取得部で取得された出力特性を参照して、発電効率が最大となる修正された出力ポイントを決定し、
前記出力制御部は、前記修正された出力ポイントに基づいて前記燃料電池から電力を出力させる
電源システム。 - 請求項1記載の電源システムであって、
前記燃料電池に供給されるガスの量に関する情報を取得するガス量取得部をさらに備え、
前記記憶部は、前記燃料電池の出力特性と供給ガス量との関係を予め記憶しており、
前記出力ポイント決定部は、前記ガス量取得部が取得したガス量に基づき、前記出力特性を参照して、前記目標出力ポイントを決定する
電源システム。 - 請求項2記載の電源システムであって、
前記出力制御部によって前記燃料電池の出力電力を変動させる処理が1回行なわれる間に、前記供給されるガス量の変動する割合が、10%未満である
電源システム。 - 請求項1ないし3いずれか記載の電源システムであって、
電源配線に対して前記燃料電池と並列に接続された蓄電器と、
前記負荷の要求する電力と、前記出力ポイント決定部が決定した前記目標出力ポイントで前記燃料電池が発電する電力との差として、前記蓄電器が出力すべき電力を決定する蓄電器出力決定部と
をさらに備え、
前記出力制御部は、前記電源システムから前記負荷の要求する電力が出力されるように、前記燃料電池からの出力電力と共に、前記蓄電器からの出力電力を、前記蓄電器出力決定部が決定した前記電力の近傍で変動させる
電源システム。 - 請求項4記載の電源システムであって、
前記燃料電池から出力される電力を前記電源配線に伝える際に電圧の変換を行なうDC/DCコンバータをさらに備え、
前記蓄電器は2次電池であり、
前記出力制御部は、前記電源配線における電圧が、前記蓄電器出力決定部が決定した電力を前記2次電池が出力するときの前記2次電池の電圧の近傍で変動するように、前記DC/DCコンバータの出力電圧を設定する
電源システム。 - 請求項4記載の電源システムであって、
前記蓄電器は、DC/DCコンバータを介して前記電源配線に接続される2次電池であり、
前記出力制御部は、前記DC/DCコンバータの出力電圧を、前記目標出力ポイントにおける前記燃料電池の出力電圧の近傍で変動するように設定する
電源システム。 - 請求項1ないし6記載の電源システムであって、
前記出力ポイント決定部は、前記燃料電池の出力電力がほぼ最大となるように、前記目標出力ポイントを決定する
電源システム。 - 請求項2記載の電源システムであって、
前記出力ポイント決定部は、前記出力特性取得部が前記出力特性を取得した後は、前記燃料電池に供給されるガス量が再び同じとなるときには、前記出力制御部が前記燃料電池の出力電力を変動させたときに該出力電力が最大となったときの前記燃料電池の出力ポイントを、前記修正された出力ポイントとして決定する
電源システム。 - ガスの供給を受けて発電を行なう燃料電池を備え、所定の負荷に電力を供給する電源システムの制御方法であって、
(a)前記燃料電池における出力電流と出力電圧との間に成立する関係である出力特性を予め記憶する工程と、
(b)前記出力特性を参照して、前記燃料電池の目標出力ポイントを決定する工程と、
(c)前記(b)工程で決定した前記目標出力ポイントの近傍で、前記燃料電池からの出力電力を変動させる工程と、
(d)前記(c)工程で前記燃料電池の出力電力を変動させた結果得られる前記燃料電池の出力特性を取得する工程と、
(e)前記(d)工程で取得された出力特性を参照して、発電効率が最大となる修正された出力ポイントを決定し、前記修正された出力ポイントに基づいて前記燃料電池から電力を出力させる工程と
を備える電源システムの制御方法。 - 請求項9記載の電源システムの制御方法であって、
(f)前記燃料電池に供給されるガスの量に関する情報を取得する工程をさらに備え、
前記(a)工程は、前記燃料電池の出力特性と供給ガス量との関係を予め記憶する工程であり、
前記(b)工程は、前記(f)工程で取得したガス量に基づき、前記出力特性を参照して、前記目標出力ポイントを決定する
電源システムの制御方法。
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