JP3959656B2 - マスタシリンダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ブレーキ、油圧クラッチ等の油圧装置に接続されるマスタシリンダの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の油圧ブレーキ、油圧クラッチ等の油圧装置に接続されるマスタシリンダには、ピストンのストロークの開始にともない、ピストン部に設けられたセンタバルブがリザーバ側に連通する通路を閉鎖することによって油圧を発生させるようにしたいわゆるセンタバルブ型のマスタシリンダがある。
【0003】
従来のセンタバルブ型のマスタシリンダの一例について図7および図8を参照して説明する。図7および図8に示すように、マスタシリンダ1は、自動車の油圧ブレーキ装置に接続されるコンベンショナル/センタバルブ型のタンデムマスタシリンダであり、シリンダ本体2内に、後輪側の出力ポート3に連通する加圧室2aを加圧するプライマリピストン4と、前輪側の出力ポート5に連通する加圧室2bを加圧するセカンダリピストン6とが直列に嵌装されている。プライマリピストン4とセカンダリピストン6との間には、第1戻しばね7および連結部材8が介装されており、セカンダリピストン6とシリンダ本体2の底部との間には、第2戻しばね9が介装されている。
【0004】
シリンダ本体2の側壁には、プライマリピストン4に対向する部位に第1リザーバポート10が設けられている。第1リザーバポート10は、入口ポート11および補償ポート12によってシリンダ本体2内に連通されている。入口ポート11は、プライマリピストン4のピストンカップ13の背面側の供給室2cに常時開口するように配置されている。また、補償ポート12は、プライマリピストン4が図7に示す原位置にあるとき、加圧室2aのピストンカップ13の前面側(加圧側)直近に開口するように配置されている。このようにして、プライマリピストン4は、コンベンショナル型のマスタシリンダを構成している。
【0005】
シリンダ本体2の側壁には、さらに、セカンダリピストン6に対向する部位に第2リザーバポート14が設けられている。第2リザーバポート14は、入口ポート15(図8参照)によってシリンダ本体2内に連通されている。入口ポート15は、セカンダリピストン6のピストンカップ16の背面側の供給室2dに常時開口するように配置されている。セカンダリピストン6には、ピストンカップ16によって画成された加圧室2bと供給室2dとの間を連通、遮断するセンタバルブ17が設けられている。
【0006】
シリンダ本体2には、第2リザーバポート14内の底部からシリンダ本体2の直径方向にピン穴18が穿設され、このピン穴18に、供給室2dをその直径方向に横切るストッパピン19が挿入されている。そして、ストッパピン19がセカンダリピストン6の中間部に形成された長孔20に挿通されてそのストローク範囲を規制している。また、センタバルブ17は、通常は閉弁しており、セカンダリピストン6が図7に示すその原位置まで後退し、長孔20の端部がストッパピン19に当接してセンタバルブ17の開閉ロッド21を押圧することにより、センタバルブ17が開弁するようになっている。このようにして、セカンダリピストン6は、センタバルブ型のマスタシリンダを構成している。
【0007】
第1リザーバポート10および第2リザーバポート14には、リザーバ22の接続ノズル23がリテーナ24を介して嵌合されている(第1リザーバポート10側のみ図示する)。ここで、リザーバ23の接続ノズル23の先端縁部とピン穴18とが重なるように配置されており、接続ノズル23をストッパピン19の抜け止めとしている。出力ポート3には、液圧制御弁(図示せず)を介して後輪ブレーキのホィールシリンダ(図示せず)が接続され、出力ポート5には、前輪ブレーキのホィールシリンダ(図示せず)が接続される。また、プライマリピストン4の一端部の連結穴25には、ブレーキペダルに連結された倍力装置(図示せず)のプッシュロッドが連結される。
【0008】
このように構成されたマスタシリンダ1の作用について次に説明する。
【0009】
ブレーキペダルを操作して、倍力装置のプッシュロッドによってプライマリピストン4およびセカンダリピストン6を移動させる、プライマリピストン4は、そのストロークの開始によってピストンカップ13が補償ポート12を遮断し、加圧室2aを加圧して出力ポート3から液圧制御弁を介して後輪ブレーキのホィールシリンダへ加圧ブレーキ液を供給して後輪ブレーキを作動させる。同時に、セカンダリピストン4は、そのストロークの開始によって開閉ロッド21がストッパピン19から離間してセンタバルブ17が閉じ、加圧室2bを加圧して出力ポート5から前輪ブレーキのホィールシリンダへ加圧ブレーキ液を供給して前輪ブレーキを作動させる。
【0010】
ブレーキペダルの操作を解除すると、戻しばね7,9によって、プライマリピストン4およびセカンダリピストン6が原位置に復帰し、プライマリピストン4側では、加圧室2aが入力ポート11および補償ポート12を介してリザーバ22に連通されてブレーキ液の過不足が補償され、また、セカンダリピストン6側では、開閉ロッド21がストッパピン19に押圧されてセンタバルブ17が開弁し、加圧室2bが供給室2dを介してリザーバ22に連通されてブレーキ液の過不足が補償される。これにより、ブレーキシューまたはブレーキパッドの摩耗によるブレーキ液容量の変化および温度によるブレーキ液の体積変化を吸収することができる。
【0011】
なお、上記と同様のストッパピンを有するセンタバルブ型のマスタシリンダは、特開昭55-102762 号公報にも記載されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のセンタバルブ型のマスタシリンダ1では、次のような問題がある。シリンダ本体2のセカンダリピストン6側の側壁には、ピン穴18および入口ポート15の2つ開口が設けられているので、セカンダリピストン6の組付時に、これらの開口の縁部によってピストンカップ16が損傷を受けやすい。また、リザーバ22の接続ノズル23の先端縁部をピン19の抜け止めとするため、ピン孔18を接続ノズル23の先端縁部と重なるように配置する必要があるので、ストッパピン19のレイアウトの自由度が制約される。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ピストン組付時のピストンカップの損傷を防止するとともに、ストッパピンのレイアウトの自由度を大きくすることができるセンタバルブ型のマスタシリンダを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、リザーバの接続ノズルが嵌合されるリザーバポートおよび油圧装置が接続される出力ポートを有するシリンダ本体と、該シリンダ本体に摺動可能に嵌装されて前記シリンダ本体内を前記出力ポートに連通する加圧室と前記リザーバポートに連通する供給室とに画成するピストンと、前記ピストンに設けられ前記加圧室と前記供給室とを連通、遮断するセンタバルブと、前記シリンダ本体内の供給室を横切るように設けられて前記ピストンの原位置を規定するとともに、前記ピストンが原位置にあるとき前記センタバルブを開弁させ、前記ピストンがストロークを開始したとき前記センタバルブを閉弁させるストッパピンとを備えたマスタシリンダであって、前記ストッパピンは、前記リザーバポート内に設けられたピン穴に前記供給室内をその直径方向に横切ってその両端部が支持されるように挿入され、また、前記ストッパピンにその軸方向に沿って設けられてその側壁の前記センタバルブに当接しない部位に開口して前記リザーバポートと前記供給室とを連通させる作動油通路と、前記ストッパピンからその径方向に沿って外方へ延び、前記リザーバの接続ノズルの先端部に当接して前記ストッパピンの抜け止めを行う係止部とを有していることを特徴とする。
【0015】
このように構成したことにより、シリンダ本体のリザーバポートと供給室とがストッパピンの作動油通路によって連通される。また、係止部がリザーバポートに嵌合されたリザーバの接続ノズルの先端部に当接してストッパピンの抜けを防止する。
また、請求項2の発明は、上記請求項1の構成において、前記ストッパピンが挿入されるピン穴は前記リザーバポートの中心から偏心した位置に設けられ、前記ストッパピンの係止部は、前記リザーバポートの内周面の半径よりも大きく形成され、前記リザーバポートの内周面に当接して前記ストッパピンの回動を規制することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態は、図7および図8に示す従来例に対して、セカンダリピストン側のストッパピンおよび入口ポートの構造が異なる以外は概略同様の構成であるから、以下、図7および図8に示すものと同様の部分には同一の番号を付して異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態のマスタシリンダ26では、上記従来例において、第2リザーバポート14をシリンダ本体2内に連通させる入口ポート15が省略されている。また、第2リザーバポート14からシリンダ本体2の直径方向に穿設されたピン穴18には、上記従来例のストッパピン19の代わりに、ストッパピン27が挿入されて供給室2dをその直径方向に横切っている。
【0018】
図3に示すように、ストッパピン27は、円筒状部材の側壁の一部にその軸方向に沿って延びるスリット27a (作動油通路)が形成され、また、一端部にその径方向に沿って外方へ延びる係止部27b が形成されている。図4に示すように、係止部27b の径方向外方への突出長さLは、ストッパピン27がピン穴18に挿入された状態で、第2リザーバポート14の直径方向に沿って、第2リザーバポート14の内周面付近まで達する長さとなっており、係止部27b の先端部が第2リザーバポート14の内周面に当接することにより、ストッパピン27の回動範囲が角度θに規制されるようになって。また、係止部27b の先端部付近が第2リザーバポート14に取付けられたリザーバ22の接続ノズル23の先端縁部に当接することにより、ストッパピン27がピン穴18から抜けないようになっている。
【0019】
このように構成したことにより、ストッパピン27は、第2リザーバポート14内からピン穴18に挿入することにより、供給室2dを横切るように装着することができる。そして、第2リザーバポート14は、ピン穴18に挿入されたストッパピン27の内部およびスリット27a を介して、シリンダ本体2内の供給室2dに常時連通される。これにより、上記従来例と同様に、加圧室2bとリザーバ22との間で供給室2dおよびセンタバルブ17を介してブレーキ液の授受を行うことができ、ブレーキシューまたはブレーキパッドの摩耗によるブレーキ液容量の変化および温度によるブレーキ液の体積変化を吸収することができる。
【0020】
そして、上記従来の入口ポート15を省略してシリンダ本体2内のセカンダリピストン6側の開口をピン穴18のみとしたので、セカンダリピストン6の組付時にピストンカップ16を損傷しにくくすることができる。
【0021】
また、係止部27b によってストッパピン27の回り止めを行っているので、ストッパピン27が回動してセンタバルブ17の開閉ロッド21がストッパピン27のスリット27a に当接することがなく、開閉ロッド21を確実にストッパピン27の側壁に当接させてセンタバルブ17を開閉することができる。さらに、係止部27b は、第2リザーバポート14の内周面付近まで延ばされているので、ピン穴18の位置にかかわらず、係止部を第2リザーバポート14に取付けられたリザーバ22の接続ノズル23の先端縁部に当接させることができる。これにより、ピン穴18を接続ノズル23の先端縁部と重なるように配置する必要がなくなり、ストッパピン27のレイアウトの自由度を大きくすることができる。
【0022】
本実施形態に用いられるストッパピンは、図3に示すものの他、例えば図5に示すように、円柱状部材の側壁に軸方向に沿って溝28a (作動油通路)を形成し、一端部に図3のものと同様の係止部を28b を形成したストッパピン28として、溝28a によって第2リザーバポート14とシリンダ本体2内の供給室2dとを常時連通させるブレーキ液通路を形成するようにすることもできる。
【0023】
また、例えば図6に示すように、円筒状部材の側壁に貫通孔29a (作動油通路)を穿設し、一端部に図3のものと同様の係止部を29b を形成したストッパピン29として、円筒状部材の内部および貫通孔29a によって第2リザーバポート14とシリンダ本体2内の供給室2dとを常時連通させるブレーキ液通路を形成するようにすることもできる。
【0024】
本実施形態のストッパピンは、これらの他、第2リザーバポート14とシリンダ本体2内の供給室2dとを常時連通させるブレーキ液通路を形成することができ、回動および脱落を防止する係止部を有するものであれば、その他の形状のものとすることもできる。
【0025】
なお、本実施形態では、一例としてコンベンショナル/センタバルブ結合型タンデムマスタシリンダのセカンダリピストン側に構成されたセンタバルブ型のマスタシリンダに関連して説明したが、本発明は、これに限らずストッパピンを有するセンタバルブ型のマスタシリンダであれば、この他のものにも同様に適用することができる。また、ブレーキマスタシリンダに限らずクラッチマスタシリンダ等のその他の油圧装置のマスタシリンダにも同様に適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明は、センタバルブ型のマスタシリンダにおいて、リザーバポート内に設けられたピン穴から供給室内に挿入されるストッパピンに、作動油通路および係止部を設けたことにより、シリンダ本体のリザーバポートと供給室とがストッパピンの作動油通路によって連通される。また、係止部がリザーバポートに嵌合されたリザーバの接続ノズルの先端部に当接してストッパピンの抜けを防止する。その結果、従来の入口ポートを省略することができ、ピストンの組付時にピストンカップを損傷しにくくすることができる。また、係止部によってストッパピンの抜けを防止することができるので、ピン穴をリザーバの接続ノズルの先端縁部と重なるように配置する必要がなくなり、ストッパピンのレイアウトの自由度を大きくすることができる。
また、請求項2の発明は、前記ストッパピンの係止部が、リザーバポートの内周面に当接してストッパピンの回動を規制するので、ストッパピンのレイアウトの自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るタンデムマスタシリンダのセンタバルブ型マスタシリンダを構成するセカンダリピストン部の縦断面図である。
【図2】図1のマスタシリンダのセカンダリピストン部を示す平面図である。
【図3】図1の装置のストッパピンの斜視図である。
【図4】図1の装置のストッパピンの係止部によるストッパピンの回動範囲を示す図である。
【図5】図1の装置に適用されるストッパピンの変形例を示す斜視図である。
【図6】図1の装置に適用されるストッパピンの他の変形例を示す斜視図である。
【図7】従来のコンベンショナル/センタバルブ結合型タンデムマスタシリンダの縦断面図である。
【図8】図7のマスタシリンダのセカンダリピストン部を示す平面図である。
【符号の説明】
2 シリンダ本体
2b 加圧室
2d 供給室
5 出力ポート
6 セカンダリピストン(ピストン)
14 第2リザーバポート(リザーバポート)
17 センタバルブ
18 ピン穴
22 リザーバ
23 接続ノズル
26 マスタシリンダ
27,28,29 ストッパピン
27a スリット(作動油通路)
27b,28b,29b 係止部
28a 溝(作動油通路)
29a 貫通孔(作動油通路)
Claims (2)
- リザーバの接続ノズルが嵌合されるリザーバポートおよび油圧装置が接続される出力ポートを有するシリンダ本体と、該シリンダ本体に摺動可能に嵌装されて前記シリンダ本体内を前記出力ポートに連通する加圧室と前記リザーバポートに連通する供給室とに画成するピストンと、前記ピストンに設けられ前記加圧室と前記供給室とを連通、遮断するセンタバルブと、前記シリンダ本体内の供給室を横切るように設けられて前記ピストンの原位置を規定するとともに、前記ピストンが原位置にあるとき前記センタバルブを開弁させ、前記ピストンがストロークを開始したとき前記センタバルブを閉弁させるストッパピンとを備えたマスタシリンダであって、前記ストッパピンは、前記リザーバポート内に設けられたピン穴に前記供給室内をその直径方向に横切ってその両端部が支持されるように挿入され、また、前記ストッパピンにその軸方向に沿って設けられてその側壁の前記センタバルブに当接しない部位に開口して前記リザーバポートと前記供給室とを連通させる作動油通路と、前記ストッパピンからその径方向に沿って外方へ延び、前記リザーバの接続ノズルの先端部に当接して前記ストッパピンの抜け止めを行う係止部とを有していることを特徴とするマスタシリンダ。
- 前記ストッパピンが挿入されるピン穴は前記リザーバポートの中心から偏心した位置に設けられ、前記ストッパピンの係止部は、前記リザーバポートの内周面の半径よりも大きく形成され、前記リザーバポートの内周面に当接して前記ストッパピンの回動を規制することを特徴とする請求項1記載のマスタシリンダ。
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