JP3959203B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁膜をエッチングマスクまたはエッチングストップ層としてフッ酸系エッチャントによりエッチングをする工程を有する半導体装置の製造方法に関する。さらに詳しくは、GaAs基板などを用い、余り高温にすることができず、熱CVD法による窒化シリコン膜を形成することができない場合の耐エッチング性を向上させた絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体の製造プロセスにおいて、窒化シリコン(以下、SiNという)膜は酸化シリコン(以下、SiOという)膜と並んで、最も一般的に用いられている絶縁膜である。この絶縁膜のうちでも、SiN膜はSiO膜に比べて、フッ酸系のエッチャントに強いという利点を有している。しかしながら、このSiN膜の耐フッ酸性は、その堆積法に大きく依存し、膜中の含有水素量が多いと容易にフッ酸系エッチャントにエッチングされてしまうという欠点を有している。すなわち、SiH4 とNH3 ガスの熱分解による、いわゆる熱CVD法によって得られるSiN膜は、最も耐フッ酸性が高く、含有水素量も少ないといわれている。これは、熱CVD法では、堆積温度が800℃以上と高く、膜形成中に原料ガスに含まれる水素基が脱離し、膜中の含有水素量が減るためと考えられている。
【0003】
熱CVD法によるSiN膜は、このように耐フッ酸性に強くフッ酸系エッチャントのマスクまたはエッチングストップ層として便利に用いられている。しかし、GaAsなどの化合物半導体では、熱CVD法によりSiN膜を堆積しようとすると、基板材料自身が熱分解を起してデバイス特性が著しく劣化するという性質を有している。そのため、GaAsなどの化合物半導体には、熱CVD法によるSiN膜を用いることができず、低温で堆積が可能なプラズマCVD法による堆積法が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、GaAsなどの高温で熱分解を起すような化合物半導体では、熱CVD法によるSiN絶縁膜を用いることができず、プラズマCVD法によるSiN絶縁膜が用いられている。しかし、プラズマCVD法により成膜されたSiN膜は、前述の熱CVD法によるSiN膜に比較して、耐フッ酸性が非常に劣るという問題がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、プラズマCVD法による300℃程度の低温で堆積したSiN膜の耐フッ酸性を向上させ、フッ酸系エッチャントに対して充分にマスクまたはエッチングストップ層として機能する絶縁膜を形成することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、GaAsなどの余り高温にすることができない半導体層上などに用いる、フッ酸系エッチャントに耐性のある絶縁膜を得るため、鋭意検討を重ねた結果、同じSiN膜でも熱CVD法により成膜したSiN膜は非常にフッ酸系エッチャントに対して強いのに対して、プラズマCVD法により成膜したSiN膜は、フッ酸系エッチャントに対して非常に腐食されやすい原因が、前述のように、水素基が脱離するか、脱離しないでそのまま膜中に残存するかの相違にあることを見出した。そして、プラズマCVD法により成膜したSiN膜でも、プラズマCVD法により成膜した後に熱処理により水素基を追い出すことにより耐フッ酸性を向上させることを試みた。しかし、通常の炉による熱処理を行っても、耐フッ酸性の向上は見られず、プラズマCVD法により成膜したSiN膜に窒素雰囲気中で急速加熱処理を短時間行うことにより、熱CVD法により成膜したSiN膜と同程度にフッ酸系エッチャントに対する耐性が得られることを見出した。
【0007】
本発明の半導体装置の製造方法は、化合物半導体層上に絶縁膜を設け、該絶縁膜をマスクとしてフッ酸系エッチャントにより前記化合物半導体層をエッチングをする場合に、前記絶縁膜を、プラズマCVD法により窒化シリコン膜を成膜した後、窒素雰囲気中で急速加熱処理を施すことにより形成する際に、前記急速加熱処理を、昇温速度が50℃/秒以上で、1000℃以上に昇温することにより行うことを特徴とする。
【0008】
この急速加熱処理を行うことにより、プラズマCVD法により成膜したSiN膜でも、フッ酸系エッチャントに対して、非常に耐性のある膜となり、フッ酸系エッチャントによりエッチング処理を行う場合のマスクやエッチングストップ層として充分に利用でき、また、この急速加熱処理によりウェハが高温にさらされる時間は非常に短いこと、さらに堆積したSiN膜が熱分解したAsの蒸発を阻止する、いわゆるキャップ層として働くこと、などのため、GaAsなどの化合物半導体層への影響は殆ど現れず、特性にも何ら悪影響が現れない。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しながら本発明の半導体装置の製造方法について説明をする。
【0012】
本発明による半導体装置の製造方法は、図1にその一実施形態であるショットキー電極を有する高周波半導体装置のショットキー電極を形成する部分の製造工程図が示されるように、たとえばGaAsからなる半導体層2上に絶縁膜3を設け、その絶縁膜3をマスクまたはエッチングストップ層としてフッ酸系エッチャントによりエッチングをする場合に、プラズマCVD法によりSiN膜を成膜した後、窒素雰囲気中で急速加熱処理を施すことにより、絶縁膜3を形成することを特徴とする。
【0013】
図1に示される例は、たとえばSBD(ショットキー・バリア・ダイオード)などに用いられる場合のショットキー電極を形成する例で、まず、図1(a)に示されるように、GaAs基板1上にn形またはp形の導電性GaAs層2をエピタキシャル成長し、その表面にプラズマCVD法によりSiN膜3aが1000〜2000Å程度の厚さに設けられている。そして、窒素雰囲気中で急速加熱処理によりSiN膜3a内の水素基を追い出す。この急速加熱処理(RTA)を行うことが本発明の特徴で、後で詳細に説明をする。つぎに、SiN膜3aの上に図示しないレジスト膜を設け、メサ型にする部分のみに絶縁膜3が残るように、フォトリソグラフィ工程によりSiN膜3aをパターニングする。そして、その絶縁膜3をマスクとして、半導体層2をたとえばバッファードフッ酸によりエッチングをし、図1(b)に示されるようなメサ型形状にする。その後、図1(c)に示されるように、絶縁膜3にショットキーコンタクト孔を形成し、たとえばTi/Pt/Auの積層構造からなる電極金属をそれぞれ2000Å、3000Å、4000Å程度の厚さにリフトオフ法により成膜し、電極4を形成することにより、ショットキー電極を有する半導体装置が得られる。
【0014】
前述のように、本発明者らは、GaAsなどの余り高温にすることができない半導体層上などに用いる、フッ酸系エッチャントに耐性のある絶縁膜を得るため、鋭意検討を重ねた結果、プラズマCVD法により成膜するSiN膜は水素基を内部に含有することがフッ酸系のエッチャントに対して耐性がなくなる理由であることを見出し、プラズマCVD法により成膜したSiN膜の水素基を除去するため、アニール(熱処理)をすることにより、耐エッチング性の向上を試みた。
【0015】
まず、プラズマCVD法によるSiN膜の成膜条件を、堆積温度(基板温度)を300℃、投入電力を100W、原料ガスの流量比をSiH4 :NH3 =2:5、成膜厚さを1500Åの一定条件とした。そして、アニール方法として、通常の抵抗加熱炉によるアニールと、ハロゲンランプなどを用いたランプアニール(急速加熱)の2種類のアニールを行った。アニール温度はどちらも1000℃とし、昇温速度は抵抗加熱炉の場合5℃/秒(平均)でアニール時間を2時間、ランプアニールの場合50℃/秒の昇温速度でアニール時間を4分で、いずれも窒素雰囲気中で行った。
【0016】
ランプアニールの場合、ウェハを均一加熱するため、図2に断面説明図が示されるように、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、または窒化ホウ素などの1つまたは2以上の混合物からなる焼結体により形成された支持台11を用い、同様の材料により形成されたリング12がウェハ10の側部に、カバー13が上部にそれぞれ設けられたサセプタを用い、ハロゲンランプなどにより赤外線を照射することにより、サセプタが直ちに昇温する。そして、窒化アルミニウムなどはその熱伝導率が非常に高く、また熱容量が小さいため、前述の昇温速度でウェハ10の温度を上昇させ、接触するウェハ10(図では分解して図示されているため支持台11とウェハ10とが分離しているように書かれているが、実際には接触している)に熱伝導して、薄いウェハも直ちに昇温する。この窒化アルミニウムなどは、焼結体を用い、しかもこれらの表面または内部にカーボンなどからなる赤外線吸収材を設けることにより(黒色にすることにより)、より一層熱の吸収効率が向上する。この窒化アルミニウムの焼結体などは、前述の熱伝導率が高いこと、熱容量が小さいこと、などの他に、熱的安定性が非常に優れているため、1000℃程度の高温にしても、反りなどが生ぜず、サセプタにウェハをしっかりと接触させることができるため、ウェハの全面を非常に均一に加熱することができる。その結果、このサセプタを用いることにより、半導体ウェハを直接加熱するよりも急熱急冷を効率的に行うことが可能で、しかも全体が瞬時に昇温されるため、スリップの発生を抑えることが可能となる。従って、急速加熱を実現しながら半導体ウェハ全体を均一に急速加熱することができる。
【0017】
以上の条件でプラズマCVD法によりSiN膜を成膜したウェハに、急速加熱による4分間のアニール処理を行った(設備の都合により2分間の急速加熱を2回行った)ものA、同様に成膜して従来の抵抗加熱炉による2時間のアニール処理を行ったものB、プラズマCVD法により成膜したのみで、アニール処理を行わないものC、比較サンプルとしての、熱CVD法により850℃で同じ厚さのSiN膜を成膜したものD、のそれぞれについて、フッ酸系エッチャントによるエッチング特性について調べた。エッチャントとしては、63バッファードフッ酸(フッ化アンモニウム20重量%)を用いた。
【0018】
前述の各処理を行ったSiN膜のエッチング特性(時間に対するエッチング深さ(膜厚の変化))をそれぞれ図3に示す。図3から明らかなように、本発明の急速加熱処理を行ったものAは、15Å/分のエッチングスピードで、熱CVD法により成膜したものDの10Å/分と大差なく、フッ酸系エッチャントに対して、充分にマスクまたはエッチングストップ層として使用できることが分る。一方、プラズマCVDだけのものCでは、260Å/分でエッチングマスクとしては使用できず、抵抗加熱炉で2時間のアニールを行ったものBもエッチングスピードは60Å/分と遅くなってはいるものの、マスク材料としてはまだ問題がある。すなわち、ただアニールを行えばよいというものではなく、急速加熱によるアニール処理を行うことにより、プラズマCVD法により成膜したSiN膜でも、フッ酸系エッチャントに対して、充分に耐性のあるマスクとして使用できることが判明した。
【0019】
急速加熱によるアニール処理を行ったものは僅か4分のアニール処理でも充分に耐性が向上するのに対して、従来の加熱炉によるアニール処理によると2時間の熱処理を行っても耐性が充分に向上しない理由はつぎのように考えられる。すなわち、加熱炉によるアニール処理では、昇温スピードが遅く、まずSiN膜の表面の温度が上昇し、ついで順次内部の温度が昇温するため、表面の温度が上昇した時点で、表面の水素基が脱離し、水素基が存在しない緻密な膜が形成され、その後に内部の温度が上昇して水素基が脱離しても、表面に緻密な膜があるため表面から出られなくなり、SiN膜の内部は当初のままの水素基を含有する膜から変質することができない。そのため、表面の非常に薄い膜はフッ酸系のエッチャントに対して耐性があるものの、その膜がエッチングされてなくなると、エッチングされやすい膜になり、耐性が充分に向上しないためと考えられる。図3において、エッチングの初期はエッチングレートが極端に小さく、その後急速にエッチングレートが大きくなっているのはこのためと考えられる。
【0020】
これに対して、急速加熱処理を行うと、温度上昇が早く、表面と内部とが殆ど同時に昇温する。そのため、表面に緻密な膜が形成される前に、内部の水素基が脱離し、水素は外部に放出されて、表面から内部まで均一で緻密な膜となり、熱CVD法により成膜したSiN膜と同程度に耐性の強いSiN膜になるものと考えられる。
【0021】
さらに、アニール処理が急速加熱であるため、GaAsなどのように余り温度を上昇させることができない場合でも、高温の時間が非常に短く、半導体材料が熱分解するなどの問題が生じない。そのため、半導体層に欠陥を生じることがなく、特性に何らの影響も生じない。
【0022】
前述の例では、GaAsからなる化合物半導体の例であったが、前述のようにアニール処理の時間が非常に短く、高温による影響が殆ど現れないため、Al配線などを多層に配線するICなどにおいても、従来はAl配線をした後の層間絶縁膜には熱CVD法による絶縁膜を設けることができなかったが、本発明によれば、低温のプラズマCVD法によりSiN膜を設け、急速加熱処理を施すことにより、熱CVD法により設けたのと同等の絶縁膜を設けることができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体の製造プロセスにおいて、熱CVD法を用いることができない場合にも、プラズマCVD法によりSiNを成膜してその後に急速加熱処理を施すことにより、熱CVD法により形成したSiN膜と同様に水素濃度が低く、フッ酸系エッチャントに対しても強い絶縁膜を得ることができるため、非常に高特性の半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の製造方法に用いる急速加熱処理に用いるサセプタの一例の断面説明図である。
【図3】本発明の製造方法による急速加熱処理をしたSiN膜Aと通常の加熱炉による熱処理をしたものBを、プラズマCVD法により成膜しただけものC、および熱CVD法により成膜したものDと対比して示した図である。
【符号の説明】
2 半導体層
3 絶縁膜
4 電極

Claims (1)

  1. 化合物半導体層上に絶縁膜を設け、該絶縁膜をマスクとしてフッ酸系エッチャントにより前記化合物半導体層をエッチングをする半導体装置の製造方法であって、前記絶縁膜を、プラズマCVD法により窒化シリコン膜を成膜した後、窒素雰囲気中で急速加熱処理を施すことにより形成する際に、前記急速加熱処理を、昇温速度が50℃/秒以上で、1000℃以上に昇温することにより行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
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