JP3958103B2 - 環境対応ガソリン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式内燃機関燃料であるガソリンに関し、特には、使用に伴う環境への影響を押さえることのできるガソリンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンエンジンの使用に伴う環境負荷としては、排気ガスや炭化水素の蒸発が挙げられる。排気ガスは、排気ガス浄化用触媒により浄化される。しかし、エンジン内に吸気弁付着物(インテークバルブデポジット、以下IVDと記す)や燃焼室内デポジット(コンバッションチャンバーデポジット、以下CCDと記す)が生成すると、排気ガス特性が悪化することが知られている。そこで、このような付着物を浄化するために、清浄添加剤としては、ポリエーテルアミン系化合物(以下PEAと記す)、ポリイソブテンアミン系化合物(以下PIBAと記す)、ヒドロキシアミン系化合物などがガソリンに添加される。一般に、清浄添加剤の添加量を増やせば吸気弁付着物を低減できるが、逆に燃焼室内デポジットを生じやすくなるため、添加量を多くできない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
エンジン使用の当初から適切な添加量の清浄添加剤を用いている場合には、吸気弁付着物や燃焼室内デポジットは、発生せず、エンジン内は清浄に保たれ、排気ガス特性は悪化しない。しかし、一旦、デポジットなどが付着すると、清浄添加剤を配合したガソリンを用いても、その付着量は低下せず、相対的に排気ガス特性は改善されない。
【0004】
本発明の目的は、吸気弁付着物や燃焼室内デポジットが付着したエンジンに使用することにより、排気ガス特性が改善されるなど、環境負荷を低減できる環境対応ガソリンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねてきたが、この結果、特定種類の清浄添加剤を特定の組成を有するガソリンと組み合わせて使用したとき、排気ガス特性に優れることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
本発明に係る環境対応ガソリンは、リサーチ法オクタン価98以上、硫黄分10質量ppm以下かつリード蒸気圧65kPa以下であり、70%留出温度が128℃以下、炭素数10以上の芳香族炭化水素含有量が1.5質量%以下、ポリイソブテンアミンを100〜300質量ppm含有し、洗浄後の実存ガムが1mg/100ml以下、洗浄前の実存ガムが11〜20mg/100mlである。
【0007】
【発明の効果】
本発明によるガソリンは、特定の成分の基材に特定の清浄剤を適用することにより、エンジン内に付着物が発生した後であっても、排気ガス性能が向上し、また、使用時の蒸発損失が低い。したがって、本発明のガソリンは、環境に与える影響が少ないガソリンエンジン用の燃料油として、幅広くかつ有効な利用が期待できる。
【0008】
【好ましい実施の形態】
本発明のガソリンは、リサーチ法オクタン価98以上好ましくは98〜100であり、高圧縮比の高性能エンジンの性能を十分発揮させることができるガソリンである。このオクタン価は、「JIS K 2280」の「オクタン価試験方法」において規定された方法で測定される値である。
【0009】
硫黄分は10質量ppm以下、好ましくは5ppm以下である。この硫黄分は、「JIS K 2541」により測定される値である。リード蒸気圧は65kPa以下、好ましくは60〜65kPaである。このリード蒸気圧は、「JIS K 2258」により測定される蒸気圧である。
【0010】
炭素数10以上の芳香族炭化水素含有量は、1.5質量%以下、好ましくは1.4質量%以下である。炭素数10以上の芳香族炭化水素含有量は、ガスクロマトグラフィなどにより測定される。
【0011】
ポリイソブテンアミンを100〜300質量ppm、好ましくは120〜250質量ppm含有する。ポリイソブテンアミンとしては、清浄添加剤として市販される、分子量500〜2500、特には1000〜2000のα−ポリイソブテンアミンが好ましく用いられる。α−ポリイソブテン重合体の末端または中間部分にアミン基(ポリアミンの場合もある)を有する化合物である。添加量がこの範囲未満の場合、吸気弁の付着物を低減する効果は小さくなり、この範囲を越える場合、燃焼室内のデポジット量が増大する。
【0012】
洗浄後の実存ガムが1mg/100ml以下、洗浄前の実存ガムが11〜20mg/100ml、好ましくは14〜18mg/100mlである。この実存ガムは、「JIS K 2261」により測定される実存ガム、洗浄実存ガムである。
【0013】
本発明のガソリンの50%留出温度(以下、T50ともいう)は、加速性能、特に車両冷機時の加速性能の点から、75〜99℃とすることが好ましい。50%留出温度が99℃を越えると、車両冷機時の加速性能が悪化する。また、50%留出温度が75℃未満であると、ベーパーロック、パーコレーションなどを生じ、耐熱性能に対して悪影響を与たり、気化器仕様車では気化器氷結などの発生の懸念がある。この観点から、50%留出温度は、77〜99℃とすることが好ましい。
【0014】
また、70%留出温度(以下、T70ともいう)、90%留出温度(以下、T90ともいう)といった後留部の蒸留性状は、清浄添加剤とのIVDへの相乗効果とCCDへの悪影響という点から適当なバランスを取る必要があるが、T70が高いと添加剤を添加したガソリンの実在ガムがJIS規格(20mg/100ml以下)を超えることとなるため、T70は128℃以下にする必要がある。T70は115〜125℃が特に好ましい。また、T90は155〜165℃の範囲とすることが好ましい。本発明でいう蒸留性状は、「JISK 2254」の「燃料油蒸留試験方法」で規定された方法によって測定される値である。
【0015】
こうした性状を備えたガソリンを製造するためには、例えば次のような基材を混合することができる。こうした本発明を実施する上で好適な基材の種類と性状とについて説明する。この好適な基材の成分は以下の4種の成分、成分(A)〜(E)からなる。
成分(A):すくなくとも沸点が30℃〜105℃の範囲の直留ナフサを水素化脱硫した脱硫ナフサ
成分(B):すくなくとも沸点が40℃〜70℃の範囲の留分を含む流動接触分解ガソリン
成分(C):アルキレートガソリン
成分(D):炭素数7の芳香族炭化水素を70容量%以上含む軽質改質ガソリン基材
成分(E):炭素数9の芳香族炭化水素を80容量%以上含む重質改質ガソリン基材
【0016】
(A)脱硫ナフサとしては、原油の常圧蒸留により得られたすくなくとも沸点が30℃〜105℃の範囲の直留ナフサを水素化脱硫した基材が好ましく用いられる。ガソリン中の(A)脱硫ナフサの含有量は、1〜30容量%とすることが好ましく、5〜15容量%とすることがさらに好ましい。
【0017】
(B)流動接触軽質分解ガソリンとしては、灯軽油から常圧残油に至る広範囲の石油留分、好ましくは重質軽油や減圧軽油を、流動接触分解法によって固体酸触媒で分解して得られる接触分解ガソリン基材のうちの軽質留分が好ましく用いられる。この軽質留分のリサーチ法オクタン価は92〜97、初留点が20〜40℃、90%留出温度が70〜100℃であることが好ましい。ガソリン中の(B)流動接触軽質分解ガソリンの含有量は、1〜50容量%とすることが好ましく、30〜40容量%とすることがさらに好ましい。
【0018】
(C)アルキレートは、イソブタンおよび低級オレフィン(ブテン、プロピレンなど)を、酸触媒(硫酸、フッ化水素酸、塩化アルミニウムなど)の存在下で反応させることによって、得られるものである。本発明では各種のアルキレートを用いることができるが、イソオクタンを60容量%以上含有するものが好ましく、特にこのうちリサーチ法オクタン価が92以上のものを好適に使用できる。ガソリン中の(C)成分の含有量は、1〜60容量%とすることが好ましく、10〜30容量%、さらには15〜27容量%とすることが特に好ましい。
【0019】
(D)軽質改質ガソリン基材は、重質の直留ナフサなどを、従来から知られている接触改質法によって通常得られる接触改質ガソリンから炭素数6より軽質な留分と炭素数8より重質な留分を蒸留等で取り除き、C7芳香族濃度を70〜95容量%としたものが好ましく用いられる。ガソリン中の(D)成分の含有量は、1〜60容量%とすることが好ましく、10〜30容量%、さらには15〜27容量%とすることが特に好ましい。
【0020】
(E)重質改質ガソリン基材は、重質の直留ナフサなどを、従来から知られている接触改質法によって通常得られる接触改質ガソリンから炭素数8より軽質な留分と炭素数11より重質な留分を蒸留等で取り除き、C9芳香族濃度を80〜95容量%としたもの、特には85%〜95容量%としたものが好ましく用いられる。さらに、炭素数10以上の芳香族炭化水素の含有量を5容量%以下としたものが好ましく用いられる。ガソリン中の(E)成分の含有量は1〜50容量%とすることが好ましく、12〜25容量%とすることが特に好ましい。
【0021】
さらに、本発明のガソリンには、当業界で公知の燃料油添加剤の1種又は2種以上を必要に応じて配合することができる。これらの配合量は適宜選べるが、通常は添加剤の合計配合量を0.1重量%以下に維持することが好ましい。本発明のガソリンで使用可能な燃料油添加剤を例示すれば、フェノール系、アミン系などの酸化防止剤、シッフ型化合物、チオアミド型化合物などの金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、多価アルコール又はそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アゾ染料などの着色剤を挙げることができる。
【0022】
【実施例】
以下実施例および比較例により、本発明の構成と効果をさらに具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
【0023】
〔ガソリンの製造と試験結果〕
表1に示した各ガソリン基材を、表2に示す混合割合で混合し、各実施例および各比較例のガソリンを製造した。表1において、成分(C)アルキレートはイソオクタンを65容量%含む基材であり、成分(D)軽質改質ガソリンは接触改質ガソリンの軽質部と重質部を蒸留で除去したトルエンを89容量%程度含む基材、成分(E)重質芳香族ガソリン基材は炭素数9の芳香族分を90容量%含み、炭素数10の芳香族分を3容量%含む基材である。ポリイソブテンアミンとしては、分子量1000〜2000であり、アミン価10mgKOH/g以上のα−ポリイソブテンアミンを用いた。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
また、表3には、各ガソリンの密度、蒸留性状、リサーチ法オクタン価、実存ガムなどの評価結果を示す。
【0027】
【表3】
Claims (1)
- リサーチ法オクタン価98以上、硫黄分10質量ppm以下かつリード蒸気圧65kPa以下であり、70%留出温度が128℃以下、炭素数10以上の芳香族炭化水素含有量が1.5質量%以下、ポリイソブテンアミンを100〜300質量ppm含有し、洗浄後の実存ガムが1mg/100ml以下、洗浄前の実存ガムが11〜20mg/100mlである環境対応ガソリン。
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