JP4007528B2 - ガソリン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両冷機時の加速性能および排出ガス性能に優れ、かつ燃焼室内のデポジットを少なくできるような、高オクタン価のガソリンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などの発生源の一つである。このため、最近の自動車エンジンは空気とガソリンの割合を精密に制御してこれらの有害成分を触媒で効率的に除去するシステムを有していたり、スキッシュ流という空気流動によって燃焼を促進するためにスキッシュエリアという狭い空間を燃焼室内に設けている。空気とガソリンの割合を精密に制御するシステムを有する最近のエンジンに適した燃料として特開平4−320492号公報や特開平9−95688号に示すようなガソリン製造方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来提案されているガソリンでは新型エンジンの性能を発揮させるには充分ではない。例えば自動車の燃料に対して特に求められる冷機時の加速性が低かったり、燃焼室内でのデポジット(CCD)量が増加したりすることがある。このデポジットが増加すると、先述のスキッシュエリアにデポジットが付着して異音を発生したり、またデポジットの断熱効果によってノッキングを起こしやすくなる。このため、排ガス中の有害成分、特にHC,COを低下させ、自動車の燃料として必要な車両冷機時の加速性能などを満足させることができ、かつデポジットの発生が少ないガソリンが求められていた。
【0004】
本発明の課題は、(1)排ガス、特にHC、COの発生が少なく、(2)車両冷機時の加速性能などを満足し、(3)デポジットの発生が少ないガソリンを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねてきたが、この結果、特定の組成・性状を有するガソリン組成物を使用したとき、排ガス中の有害成分が減少し、車両冷機時の加速性能が向上し、かつデポジットの発生も少なくなることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
本発明に係るガソリンは、特定の蒸留性状および芳香族炭化水素の含有量を有している。すなわち、本発明によるガソリンは、オクタン価96以上であり芳香族炭化水素の含有量が45容量%以下であるガソリンであって、50%留出温度(以下、T50と記す)が80℃〜96℃であり、70%留出温度(以下、T70と記す)とT50の比T70/T50が1.2〜1.0であり、90%留出温度(以下、T90と記す)とT50の比T90/T50が1.45〜1.0であり、かつ、T90とT70の比T90/T70が1.2〜1.0である。また、本発明に係るガソリンは、(A)すくなくとも沸点が40℃〜70℃の範囲の留分を含む流動接触分解ガソリン、および、(B)トルエン濃度60%以上の接触改質ガソリンを含有し、さらには、(C)アルキレートを含有していることが好ましい。
【0007】
本発明のガソリンはオクタン価96以上、好ましくは98以上であり、高圧縮比の高性能エンジンの性能を十分発揮させることができるガソリンである。このオクタン価は、「JIS K 2280」の「オクタン価試験方法」において規定された方法で測定される値である。
【0008】
本発明のガソリンの50%留出温度は、加速性能、特に車両冷機時の加速性能の点から、75〜99℃とする必要がある。50%留出温度が99℃を越えると、車両冷機時の加速性能が悪化する。また、50%留出温度が75℃未満であると、ベーパーロック、パーコレーションなどを生じ、耐熱性能に対して悪影響を与たり、気化器仕様車では気化器氷結など発生の懸念がある。この観点から、50%留出温度は、77〜99℃、さらには80〜96℃とすることが一層好ましい。
【0009】
また、T70,T90といった後留部の蒸留性状もT50に劣らず車両冷機時の加速性能および排ガス性能への影響が大きく、T50,T70,T90をフラット化することが好ましく、オクタン価など他の性状のバランスを取った上でT70/T50=1.2〜1.0、T90/T50=1.45〜1.0、T90/T70=1.20〜1.0が適当である。特に好ましくは、T70/T50=1.2〜1.1、T90/T50=1.40〜1.20、T90/T70=1.20〜1.05の範囲である。また、燃焼室デポジットの観点からは特にT90が重要であり、T90/T50=1.45〜1.0とすることで燃焼室デポジット低減に効果的である。本発明でいう蒸留性状は、「JIS K 2254」の「燃料油蒸留試験方法」で規定された方法によって測定される値を意味する。
【0010】
芳香族成分の含有量について言えば、本発明のガソリンは、芳香族成分含有量を45容量%以下とする必要があり、25〜35容量%の範囲とすることが一層好ましい。芳香族成分の含有量が45容量%を越えると、自動車のガソリン系統で使用されている部品に対して悪影響を及ぼしたり、スパークプラグのくすぶりを発生させることがある。なお、ここで言う芳香族成分の含有量は、「JIS K 2536」に規定されている「燃料炭化水素成分試験方法(蛍光指示薬吸着法)」によって測定される値である。
【0011】
こうした性状を備えたガソリンを製造するためには、例えば次のような基材を混合することができる。こうした本発明を実施する上で好適な基材の種類と性状とについて説明する。この好適な基材の成分は以下の成分(A)、(B)から、さらには、成分(C)からなる。
【0012】
成分(A):すくなくとも沸点が40℃〜70℃の範囲の留分を含む流動接触分解ガソリン
成分(B):トルエン濃度60%以上の接触改質ガソリン
成分(C):アルキレート
本発明で使用する(A)流動接触分解ガソリンとしては、灯軽油から常圧残油に至る広範囲の石油留分、好ましくは重質軽油や減圧軽油を、流動接触分解法によって固体酸触媒で分解して得られる流動接触分解ガソリンであり、リサーチ法オクタン価が89〜92であり、初留点が25〜40℃、90%留出温度が160〜190℃である流動接触分解ガソリンが好ましい。
【0013】
また、(A)流動接触軽質分解ガソリンとしては、灯軽油から常圧残油に至る広範囲の石油留分、好ましくは重質軽油や減圧軽油を、流動接触分解法によって固体酸触媒で分解して得られる接触分解ガソリン基材のうちの軽質留分が好ましく用いられる。この軽質留分のリサーチ法オクタン価は92〜97、初留点が25〜40℃、90%留出温度が70〜90℃であることが好ましい。また、ガソリン中の(A)流動接触軽質分解ガソリンの含有量は、1〜50容量%とすることが好ましく、20〜40容量%とすることがさらに好ましい。
【0014】
(B)接触改質ガソリンは、重質の直留ナフサなどを、従来から知られている接触改質法によって得られるもので、トルエン濃度60%以上の基材である。このような基材は、通常得られる接触改質ガソリンから炭素数8より重質な留分(約140℃よりも高沸点の留分)を蒸留で除き、トルエン濃度を60〜80%としたもの、または、この炭素数8より重質な留分を除いた接触改質ガソリンから更に前留部(約100℃よりも低沸点の留分)を蒸留で除き、トルエン濃度85%以上、特には87%〜95%としたものが好ましく用いられる。本発明では(B)成分の含有量は1〜50容量%とすることが好ましく、30〜50容量%とすることが特に好ましい。
【0015】
(C)アルキレートは、イソブタンおよび低級オレフィン(ブテン、プロピレンなど)を、酸触媒(硫酸、フッ化水素酸、塩化アルミニウムなど)の存在下で反応させることによって、得られるものである。本発明では各種のアルキレートを用いることができるが、イソオクタンを60容量%以上含有するものが好ましく、特にこのうちリサーチ法オクタン価が92以上のものを好適に使用できる。(C)成分の含有量は、1〜60容量%とすることが好ましく、10〜30容量%、さらには15〜25容量%とすることが特に好ましい。
【0016】
むろん、上記の各成分は、同等の性状を有していれば、その製造方法は問わずに使用することができる。上記の各成分以外に、所定の性状を満たすために直留ナフサを0〜15容量%、MTBE(メチル−tert−ブチルエーテル)などの含酸素化合物0〜15容量%、また、蒸気圧を確保してエンジンの始動性を良好に保つために、炭素数4の留分を0〜8容量%加えることができる。
【0017】
さらに、本発明のガソリンには、当業界で公知の燃料油添加剤の1種又は2種以上を必要に応じて配合することができる。これらの配合量は適宜選べるが、通常は添加剤の合計配合量を0.1重量%以下に維持することが好ましい。本発明のガソリンで使用可能な燃料油添加剤を例示すれば、フェノール系、アミン系などの酸化防止剤、シッフ型化合物、チオアミド型化合物などの金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤、多価アルコール又はそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アゾ染料などの着色剤を挙げることができる。
【0018】
【実施例】
以下実施例および比較例により、本発明の構成と効果をさらに具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
【0019】
〔排出ガス試験〕
表1に示す各試験車種のうち、三菱自動車工業株式会社製のディアマンテを使用し、10・15モードおよび11モードで排出ガス試験を行った。測定項目は、一酸化炭素、全炭化水素および窒素酸化物濃度とした。
【0020】
【表1】
【0021】
〔加速性試験〕
表1に示すトヨタ自動車株式会社製のクラウンを使用した。冷機時加速性は、恒温室に試験車を置き、25℃の一定温度で一昼夜放置した。その後、シャーシダイナモ(負荷条件は、ロードロードに設定)上で試験車のエンジンを始動させ、1/4スロットル開度で0から120km/hまで加速するために必要な時間を測定し、評価した。暖機時加速性は、十分に暖機した後にエンジンを再始動させ、上記と同様にして試験した。
【0022】
〔デポジット(CCD)発生試験〕
表1に示す市販エンジンを、エンジンベンチに据付け、エンジン回転数2200rpm、トルク3.3kgfmの運転条件で合計50時間連続して運転した後、燃焼室に蓄積したデポジットを採取し、その重量を秤量した。
【0023】
〔ガソリンの製造と試験結果〕
表2に示した各ガソリン基材を、表3および表4に示す混合割合で混合し、各実施例および各比較例のガソリンを製造した。表2において、接触改質ガソリン70はトルエンを70容量%含み、また、接触改質ガソリン90はトルエンを90容量%含む基材である。接触改質ガソリンbは、接触改質ガソリンaの前留15%、後留80%を蒸留でカットした基材である。接触改質ガソリンaはトルエンを25容量%含み、接触改質ガソリンbはトルエンを38容量%含む基材である。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
また、表5および表6には、各ガソリンの密度、蒸留性状、リサーチ法オクタン価、芳香族炭化水素の割合を示す。
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
これらの各実施例、比較例のガソリンについて、それぞれ前述の排出ガス試験、加速性試験およびデポジット発生試験を行った。これらの試験結果を、表7、表8および表9に示す。
【0031】
【表7】
【0032】
表7から明らかなように、、排出ガス中に含まれる成分の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)が減少した。比較例のガソリンと比較すると、明らかに低い値であった。
【0033】
【表8】
【0034】
また、表8に加速性能の結果を示す。実施例1〜5、比較例1〜4を使用した結果から、50%留出温度が75〜99℃、好ましくは86〜97℃の範囲で良好な車両冷機時の加速性が得られる。さらに、T70/T50、T90/T50、T90/T70の値を、T70/T50=1.20以下、T90/T50=1.45以下、T90/T70=1.20以下とした場合に良好な車両冷機時の加速性と良好な排気性能が得られることが判る。
【0035】
【表9】
【0036】
これらの結果からわかるように、本発明のガソリンは、排ガス中の有害成分発生量が低く、冷機時、暖機時ともに、加速性能が優れており、特に冷間時の加速性能はきわめて優れている。また、表9からわかるように、デポジット(CCD)には、T90/T50およびT90/T70の低下ととともに、デポジット量が減少することが判る。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、特定の芳香族含有量および特定の蒸留性状を有するガソリンを提供するものであり、これによって、従来のガソリンと比較して、車両冷機時の加速性能が良好で、排気ガス中の有害成分発生量が低く、公害対策に極めて有利なものとなった。従って、本発明のガソリンは、低公害で高性能を有するガソリンエンジン用の燃料油として、幅広くかつ有効な利用が期待できる。
Claims (3)
- オクタン価96以上であり芳香族炭化水素の含有量が45容量%以下であるガソリンであって、
50%留出温度(以下、T50と記す)が80℃〜96℃であり、
70%留出温度(以下、T70と記す)とT50の比T70/T50が1.2〜1.0であり、
90%留出温度(以下、T90と記す)とT50の比T90/T50が1.45〜1.0であり、
かつ、T90とT70の比T90/T70が1.2〜1.0であることを特徴とするガソリン。 - (A)すくなくとも沸点が40℃〜70℃の範囲の留分を含む流動接触分解ガソリン、および、
(B)トルエン濃度60%以上の接触改質ガソリンを含有していることを特徴とする請求項1記載のガソリン。 - (A)すくなくとも沸点が40℃〜70℃の範囲の留分を含む流動接触分解ガソリン、
(B)トルエン濃度60%以上の接触改質ガソリン、および、
(C)アルキレートを含有していることを特徴とする請求項1記載のガソリン。
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