JP4090082B2 - ガソリンエンジン用燃料油 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガソリンエンジン用燃料油に関し、さらに詳しくは、発熱量を低下させることなく、軽質分のオクタン価を向上させ、耐ノック性能及び冷始動時の運転性能を向上させたガソリンエンジン用燃料油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、内燃機関用、特にガソリンエンジン用燃料油(ガソリンということもある)としては、高オクタン価及び高発熱量を有するとともに環境汚染問題から、環境性能にも優れるものが要望されるようになってきた。
従来、四エチル鉛を配合することにより、オクタン価の高いガソリンが製造されていたが、現在では鉛による公害問題のために、その配合は禁止されている。そこで、高オクタン価のガソリンを得るために、これまで様々な方法がとられてきた。その一つとして、オクタン価の高いガソリン基材を用いる方法が知られている。この場合、主として芳香族分を多く含有する基材が用いられるが、この芳香族分はオクタン価は高いものの、排気ガス中のベンゼン量を増加させ、かつオゾンの生成を増加させるなどの環境上の問題がある。また、高オクタン価基材としてメタノールやメチルtert−ブチルエーテル(以下、MTBEと略記する)などを配合する方法が知られているが、これらはガソリンのオクタン価向上には有効であるものの、発熱量が他の炭化水素より低いという欠点があり、燃費や出力が低下する上、配合量を増やすと排ガス中のNOx が増加する場合がある。
ところで、ガソリンエンジンを搭載した自動車においては、耐ノック性能及び冷始動時の運転性能の向上が要求される。この場合オクタン価の高い軽質分を含むガソリンが必要であるが、現状では軽質でオクタン価の高いガソリン基材は得られていないのが実状である。
一方、芳香族分を減少した高性能ガソリンとして、例えば(1)MTBE1〜15容量%とナフテン系炭化水素1〜30容量%を含有するガソリン(特開平5−179264号公報)、(2)分子内に7員環又は8員環を有し、かつ環構造内に3個以上の不飽和結合を有する化合物を含有するガソリン組成物(特開平5−230475号公報)、炭素数6以上のシクロ環を有する脂環式化合物1容量%以上を含有する低アロマ分高性能ガソリン(特開平5−302090号公報)、(4)1,3−シクロヘキサジエン及び/又は1,4−シクロヘキサジエンを含有するガソリン組成物(特開平6−136372号公報)などが提案されている。しかしながら、これらのガソリンは、いずれもガソリン留分の全領域においての高オクタン価及び高発熱量を必ずしも充分に満足するものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、発熱量を低下させることなく、軽質分のオクタン価を向上させ、ガソリン留分の全領域において高オクタン価及び高発熱量を発揮することができ、特に、耐ノック性能及び冷始動時の運転性能を向上させたガソリンエンジン用燃料油を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有するガソリンエンジン用燃料油を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、ベンゼンを低減し、低沸点でオクタン価の高いシクロペンタン類を所定の割合で含有し、かつ特定の蒸気圧,蒸留性状及びオクタン価を有する燃料油により、その目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0005】
すなわち、本発明は、(イ)シクロペンタン環を有する炭化水素化合物を4.1〜30容量%、(ロ)ベンゼンを1容量%以下、及び(ハ)硫黄分を100ppm以下含有し、かつ(ニ)温度37.8℃における蒸気圧が0.45〜0.95kg/cm2であり、(ホ)蒸留性状が、10%留出温度70℃以下,50%留出温度75〜105℃、90%留出温度180℃以下であり、更に(ヘ)リサーチ法オクタン価が89〜106であることを特徴とするガソリンエンジン用燃料油(但し、メチルシクロペンタンを2容量%以上、90容量%以下含有していることを特徴とするガソリンを除く。
を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料油に用いられるシクロペンタン環を有する炭化水素化合物は、ベンゼンにかわる基材として考えられているMTBEやシクロヘキサンに比べてオクタン価と発熱量とが高いレベルでバランスしたものである。このようなシクロペンタン環を有する炭化水素化合物としては、本発明においては、シクロペンタン,メチルシクロペンタン又は1,1−ジメチルシクロペンタン等が好ましく用いられる。下記第1表に、上記シクロペンタン環を有する炭化水素化合物,MTBE及びシクロヘキサンのリサーチ法オクタン価(RON),モーター法オクタン価(MON),沸点及び真発熱量を示す。
【0007】
【表1】
Figure 0004090082
【0008】
上記シクロペンタン環を有する炭化水素化合物は、その由来については特に制限はないが、好ましくは、炭化水素を熱分解してオレフィンを製造する装置から生成される熱分解油を分留及び抽出により処理して得られるシクロペンタン環を有するガソリン基材等を使用でき、特に、石油化学エチレン製造装置からの分解油からの芳香族分を抽出した残油(ラフィネート等)留分を更に分留して得られる留分を含む基材(L−RAF)を好適に使用することができる。このL−RAFとしては、工程の途中でジエン類の抽出や水添による精製をしたものが好ましく用いられる。
本発明の燃料油においては、上記シクロペンタン環を有する炭化水素化合物の含有量は4.1〜30容量%の範囲で選ばれる。この含有量が4.1容量%未満では軽質分のオクタン価の向上効果が充分に発揮されず、耐ノック性能及び冷始動時の運転性能が向上せず、本発明の目的が達せられない。また、30容量%を超えると夏場にベーパーロック等を起こす可能性が高くなる。軽質分のオクタン価向上効果及びベーパーロックなどの点から、シクロペンタン環を有する炭化水素化合物の好ましい含有量5〜25容量%の範囲である。また、本発明の燃料油においては、ガソリン自体及び排気ガスの低公害性の観点からベンゼン含有量1容量%以下である。また、硫黄分含有量は100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。硫黄分含有量が上記範囲を超える場合は、SOX 低減及び三元触媒被毒低減の観点から好ましくない。
【0009】
本発明の燃料油は、温度37.8℃における蒸気圧が0.45〜0.95kg/cm2 の範囲である。この蒸気圧が上記範囲を逸脱すると始動性,運転性及び加速性のバランスに優れ、また耐ノック性に優れた燃料油が得られない。このような観点から、上記蒸気圧は0.50〜0.85kg/cm2 の範囲であることが好ましい。
また、本発明の燃料油においては、蒸留性状が、10%留出温度70℃以下、50%留出温度75〜105℃、90%留出温度180℃以下であれば、耐ノック性能及び始動性,運転性,加速性が優れたものとなり、いずれか一つでも上記範囲を逸脱すると始動性が低下したり、運転性が低下したり、あるいは加速性が低下したりする。始動性,運転性及び加速性がバランスした運転性能,耐ノック性能並びにエンジンの汚染防止などの面からも、好ましい蒸留性状は、10%留出温度が35〜65℃、50%留出温度が80〜100℃、90%留出温度が135〜175℃である。
【0010】
さらに、本発明の燃料油はリサーチ法オクタン価が89〜106である。このリサーチ法オクタン価が上記範囲を逸脱する場合は本発明の目的が達せられない。好ましいリサーチ法オクタン価は89以上96未満の範囲である。なお、本発明における蒸気圧はJIS K−2258,蒸留性状はJIS K−2254及びリサーチ法オクタン価はJIS K−2280に準拠して求めた値である。
本発明の燃料油においては、芳香族分の含有量は10〜40容量%の範囲にあるものが好ましく、またオレフィン分の含有量は3〜30容量%の範囲にあるものが好適である。芳香族分の含有量が10容量%未満では所望のオクタン価が得られにくく、また40容量%を超えると排気ガスの環境汚染の問題などから好ましくない。オクタン価及び環境性能などの面から、より好ましい芳香族分の含有量は15〜35容量%の範囲である。一方、オレフィン分の含有量が上記範囲にあれば、燃料油の安定性の面では問題が生じない。この点から、より好ましいオレフィン含有量は5〜25容量%の範囲である。なお、上記芳香族分及びオレフィン分の含有量は、石油学会法JP1−5S−33−90に準拠し、ガスクロマトグラフィー法により測定した値である。
【0011】
本発明の燃料油は上記各条件を満たすものであればよく、その起源については特に制限はないが、例えば次に示すガソリン基材を用いて、上記各条件を満たすように適宜配合することにより調製することができる。該ガソリン基材としては、例えば、原油の常圧蒸留により得られたナフサ、この常圧蒸留によるナフサ留分を分留して得られるナフサやイソペンタン、接触分解法や水素化分解法などで得られる分解ガソリン、接触改質法などで得られる改質ガソリン、この改質ガソリンからベンゼンを除去した脱ベンゼン改質ガソリン、オレフィンの重合により得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素にプロピレンやブテンなどの低級オレフィンを付加(アルキル化)することにより得られるアルキレート、さらにはアイソメレート、脱n−パラフィン油、及びこれらの製造過程で得られるブタン、又はこれらの特定範囲の留分や芳香族炭化水素、あるいはMTBE,メチルtert−アミルエーテル,エチルtert−ブチルエーテル,エチルtert−アミルエーテルなどの含酸素化合物などが挙げられる。しかし、MTBE等の含酸素化合物の場合は発熱量の低下を引き起こすので、混合しないかあるいは使用しても3%未満、更には1%未満とするのが好ましい。更に、炭化水素を熱分解してオレフィンを製造する装置から生成される熱分解油を分留及び抽出により処理して得られるシクロペンタン環を有するガソリン基材が好ましく用いられることは前述の通りである。
【0012】
本発明の燃料油には、さらに必要に応じて、各種の添加剤を適宜配合することができる。
このような添加剤としては、例えば、フェノール系やアミン系などの酸化防止剤、シッフ型化合物やチオアミド型化合物などの金属不活性剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド,ポリアルキルアミン,ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤、多価アルコール及びエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩,高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン性界面活性剤,カチオン性界面活性剤,両性界面活性剤などの帯電防止剤、アゾ染料などの着色剤など、公知の燃料油添加剤が挙げられ、これらを一種あるいは二種以上添加することができる。また、これらの添加剤の添加量は状況に応じて適宜選定すればよいが、通常は添加剤の合計量として燃料油の0.1重量%以下とすることが望ましい。
【0013】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、燃料油,基材の性状及び燃料油の性能は、次の方法に従って求めた。
〔燃料油,基材の組成及び性状〕
(1)密度
JIS K−2249に準拠して測定
(2)蒸気圧
JIS K−2258に準拠して測定
(3)リサーチ法オクタン価
JIS K−2280に準拠して測定
(4)蒸留性状
JIS K−2254に準拠して測定
(5)真発熱量
JIS K−2279に準拠して測定
(6)硫黄分含量
JIS K−2541に準拠して測定
(7)組成
石油学会法JP1−5S−33−90に準拠し、ガスクロマトグラフィー法により測定
【0014】
〔燃料油の性能〕
(1)運転性
1500cc,マルチポイントインジェクション,三元触媒装着のオートマチック車を用い、室温(20℃)にてエンジン冷機状態でアクセル1/2開度で加速し、加速開始からエンジン回転数が3000rpmに到達する時間を加速時間(sec)とした。この時間が短いほどエンジン冷機時の燃料の加速応答性が良好である。なお、ここでは、比較例1の結果を基準にして到達時間を%で示した。
(2)耐ノック性能
通常、レギュラーガソリン仕様車においては、リサーチ法オクタン価が89未満になるとノッキングが発生し始める。特に、オクタン価の低いガソリンでは激しいノッキングが起こり、場合によってはエンジンが故障する。そこで、リサーチ法オクタン価が89以上のガソリンの耐ノック性能を○と評価し、89未満のガソリンの耐ノック性能を×と評価した。
【0015】
実施例、比較例1、2及び参考例1、2
第2表に示す性状のガソリン基材とL−RAF及びMTBEを用い、第3表に示す割合で混合して燃料油を調製し、その各々について性状及び性能を求めた。結果を第3表に示す。
【0016】
【表2】
Figure 0004090082
【0017】
【表3】
Figure 0004090082
【0018】
【表4】
Figure 0004090082
【0019】
(注)運転性能は「−」の方が3000rpmに到達する時間が短く、運転性能がよいことを示す。
第2表及び第3表から分かるように、比較例1は、実施例1に比べてシクロペンタン留分が少ないため、運転性能及び耐ノック性能が悪く、一方、比較例2はMTBEを配合したため、発熱量が低下し、運転性能が著しく悪化する。
【0020】
【発明の効果】
本発明のガソリンエンジン用燃料油は、発熱量を低下させることなく、軽質分のオクタン価を向上させたものであって、ガソリン留分の全領域において高オクタン価及び高発熱量を発揮することができ、特に、耐ノック性能及び冷始動時の運転性能が良好である。更に、本発明のガソリンエンジン用燃料油は、環境性能にも優れたものである。

Claims (4)

  1. (イ)シクロペンタン環を有する炭化水素化合物を4.1〜30容量%、(ロ)ベンゼンを1容量%以下、及び(ハ)硫黄分を100ppm以下含有し、かつ(ニ)温度37.8℃における蒸気圧が0.45〜0.95kg/cm2であり、(ホ)蒸留性状が、10%留出温度70℃以下,50%留出温度75〜105℃、90%留出温度180℃以下であり、更に(ヘ)リサーチ法オクタン価が89〜106であることを特徴とするガソリンエンジン用燃料油(但し、メチルシクロペンタンを2容量%以上、90容量%以下含有していることを特徴とするガソリンを除く。)。
  2. リサーチ法オクタン価が89以上96未満である請求項1記載のガソリンエンジン用燃料油。
  3. シクロペンタン環を有する炭化水素化合物がシクロペンタン,メチルシクロペンタン又は1,1−ジメチルシクロペンタンである請求項1又は2に記載のガソリンエンジン用燃料油。
  4. 炭化水素を熱分解してオレフィンを製造する装置から生成される熱分解油を分留及び抽出により処理して得られたシクロペンタン環を有するガソリン基材を含む請求項1〜3のいずれかに記載のガソリンエンジン用燃料油。
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