JP3957228B2 - 水分散性ポリマーおよびそれを含むコーティング組成物 - Google Patents

水分散性ポリマーおよびそれを含むコーティング組成物 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、水分散性ポリマー、およびこの水分散性ポリマーを含む金属下地用のコーティング組成物に関する。このコーティング組成物は、水分散性ポリマー、退性塩基、硬化剤、そして、水と揮発性有機溶媒を含んだ担体を含む。この水分散性ポリマーは、(a)約2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物、(b)連結化合物であって、(i)炭素−炭素間の共役二重結合または炭素−炭素間の三重結合、および(ii)エポキシ基に対して反応性を有する部位を含む連結化合物、ならびに(c)アクリルモノマーから調製されるものであって、該ポリマーのエポキシ部分(a)は、連結化合物(b)によって、重合したアクリル部分(c)と共有結合される。
発明の背景
未処理の金属下地に接触している水性溶液が、未処理の金属下地を腐食することはよく知られている。よって、食品や飲料などの水分を含む製品を収容するための金属製容器などの金属製品にあっては、水分を含む製品と金属製品との相互作用を阻止または解消すべく腐食耐性処理が施されている。従来、金属製品または金属下地に対して腐食耐性を付与する場合、一般に、金属下地を不動態化したり、あるいは腐食阻止用の被覆剤で金属下地にコーティング処理が行われていた。
研究者らは、金属製品の腐食を抑制または解消し、かつ金属製品内に収容されている水性製品に対して悪影響を与えない改善されたコーティング組成物を探求し続けてきた。例えば、研究者らは、腐食を引き起こすイオン、酸素分子および水分子と金属下地との接触および相互作用を防ぐために、コーティング剤の不透水性の改善を目指していた。濃化剤を用いることで不透水性の改善を図れるものの、ある特定の有用なコーティング特性を有する軟質性と粘着性に優れたコーティング剤が実現される反面、他の有用なコーティング特性がおろそかになることがしばしばある。
加えて、実用上、金属下地を塗布するコーティング剤の厚み、接着特性および柔軟性には限界がある。例えば、コーティング剤が肉厚になると費用が嵩み、硬化時間が長くなり、美観上好ましくなく、また、コーティング処理した金属下地を圧断および成形して金属製品に仕上げる工程に悪影響を及ぼす。同様に、金属下地を圧断および成形して所望形状の金属製品に仕上げる間にもコーティング剤の連続性が保持されるよう、コーティング剤には良好な柔軟性を付与すべきである。
研究者らは、腐食抑制に加えて耐薬品性も備えたコーティング剤も探求し続けてきた。金属製容器の内面に適したコーティング剤は、金属製容器の収容物による溶媒和化作用に耐え得るものでなければならない。コーティング剤が十分な耐薬品性を備えていないと、コーティング剤の成分が包装物に浸透してしまい、包装物を汚染することになる。わずかな量のコーティング剤成分であっても、ビールのような品質管理が難しい食品では、味の変質などの弊害を招くことになる。
従来より、良好な耐薬品性を備えた硬化したコーティング剤を得るために、有機溶媒を主体としたコーティング組成物が用いられてきた。このような有機溶媒を主体としたコーティング組成物は、本質的に水不溶性の成分を含んでおり、これによって、金属製容器に収容された水分を含む収容物の溶媒和化作用に効果的に耐え得るようになる。しかしながら、環境上ならびに毒物学上の観点から、そして政府の規制が強化されるに従い、水を主体としたコーティング組成物の数が増えてきた。水を主体としたこのコーティング組成物は、水溶性または水分散性の成分を含むので、水を主体としたコーティング組成物から得られた硬化したコーティング剤は、水の溶媒和化作用の影響を受けやすくなっている。
エポキシを主体としたコーティング剤およびポリ塩化ビニルを主体としたコーティング剤は、金属下地に対する接着性、柔軟性、耐薬品性および腐食抑制の諸効果を発現するので、食品や飲料用の容器内面のコーティングに用いられている。しかしながら、エポキシを主体としたコーティング剤およびポリ塩化ビニルを主体としたコーティング剤には重大な欠点があり、その解消のために研究者らが今もなお研究に取り組んでいる。
例えば、ポリ塩化ビニルや、ポリ塩化ビニリデンのようなビニルポリマーを含む類縁のハロゲン化物は、前掲の耐薬品性および腐食抑制の諸効果を呈し、また経済的でもある。しかしながら、ポリ塩化ビニルやビニルポリマーを含む類縁のハロゲン化物を硬化させると、発癌物質として知られている塩化ビニルのような毒性のモノマーが発生する。また、ビニルポリマーを含むハロゲン化物を焼却などして処分すると、毒性のモノマーが発生する。このような塩化ビニルの発生は、製罐プラント、食品加工プラントおよび包装プラント、そして処分場で働く作業員を潜在的な危険性に曝すことになる。ポリ塩化ビニルや類縁のポリマーの処分によっても、発癌物質のダイオキシンや環境上有害な塩酸が発生する。よって、食品と接触する形態でのポリ塩化ビニルを主体としたコーティング組成物の使用の禁止を目的とした政府規制が敷かれ、これによって、ビニルポリマーを含むハロゲン化物に関する環境上および衛生上の問題点の解消が図られている。
これら環境上の問題点を解消するために、最近、食品および飲料用容器の内面をコーティングするための、エポキシを主体としたコーティング組成物が使用されている。ところが、このエポキシを主体としたコーティング組成物にも欠点がある。例えば、エポキシを主体としたコーティング組成物は、ポリ塩化ビニルを主体としたコーティング組成物より高価である。
様々な特許で、金属罐用の水系コーティング組成物が開示されている。一般に、先行特許では、罐のコーティングのための水系熱硬化性樹脂を含んだコーティング組成物を開示している。この熱硬化性樹脂は、メチルエチルケトンのような有機溶媒に対する硬化したコーティング剤の耐久性によって実証されているものであり、硬化中に架橋フィルムが形成されるように架橋剤を使用して調製することができる。硬化した熱硬化性樹脂は、罐用のコーティング剤としては不十分な柔軟性しか備えていないことが多い。
最近、金属製の罐のコーティングに有用な樹脂として、水系フェノキシ樹脂が開示されている。これら水系フェノキシ樹脂は、高分子量の熱可塑性樹脂であり、これら樹脂の製造は容易ではなく、また実際の商業レベルでの使用にあっては値段が高すぎる側面がある。加えて、これらフェノキシ樹脂は熱可塑性樹脂であるので、フェノキシ樹脂から得られたコーティング剤は、金属製の罐のコーティングに用いた水を主体とした組成物に対しては良好な遮蔽効果を発現するが、有機溶媒に対しては耐久性を示さない。
従って、研究者らは、接着性、柔軟性、耐薬品性および腐食抑制の諸効果を備え、かつ経済的で、容器に収容された食品や飲料に悪影響を及ぼさない、食品および飲料用容器の内面用の水系コーティング組成物を探求し続けてきた。
研究者らは、扱いが容易な上に、熱可塑性コーティング組成物よりも良好な耐薬品性を示すことから、熱硬化性コーティング組成物を好んで採用してきた。熱硬化性コーティング組成物は、好適な分子量を有する硬化したコーティング剤を得るために、架橋剤、一般的にはフェノール樹脂、アミノプラスト、あるいは同様の樹脂をも必要とする。
これまで、研究者は、金属下地に適用する水系エポキシ樹脂を主体とする組成物を研究していた。これら研究者の多くが、コーティングフィルムの連続性を維持しながらもコーティングした金属下地を加工できるような、十分な柔軟性を備えたエポキシ樹脂を主体とした水性組成物を探求してきた。従来のエポキシ樹脂は、強固な硬化フィルムを形成することが多く、このことが、金属下地を、金属製の罐のような金属製品に加工、すなわち成形する前に、金属下地のコーティングを容易にしていた。金属下地の成形に先駆けて金属下地をコーティングすることは、標準的な工業手法である。
例えば、Johnson et alの米国特許第4,954,553号では、カルボキシル基を持ったフェノキシ樹脂と、フェノキシ樹脂よりも柔軟なポリエステルのような樹脂を含む水性コーティング組成物を開示されている。カルボキシル基を持ったフェノキシ樹脂は、エチレンが不飽和のモノマーを、フェノキシ樹脂に結合して調製される。このコーティング組成物は、柔軟性の硬化したコーティング剤をもたらす。Fanの米国特許第4,355,122号と第4,374,875号は、水系フェノール組成物を開示しており、ここでは、カルボキシル基を含むエチレンが不飽和のモノマーが、標準的なフリーラジカル重合法によって、フェノキシ樹脂に結合され、次いで、カルボキシル基が塩基によって中和されている。
Chu et alの米国特許第4,446,258号は、水性コーティング組成物を開示しており、この組成物は、(1)カルボキシル基を含む前成形した追加用のポリマーとエポキシ樹脂との反応生成物を中和したものと、(2)in situまたは組成物への添加のいずれかによって調製され、かつ前成形した追加用のポリマーと異なる、アクリルまたはビニルポリマーを含んでいる。
Evans et alの米国特許第4,212,781号は、未反応エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびアクリル樹脂とエポキシ樹脂のグラフトポリマーを含んだポリマーブレンドを得るために、エポキシ樹脂にアクリルモノマーあるいはモノマーブレンドを結合することを開示している。Steinmetzの米国特許第4,302,373号では、修飾したポリエポキシド(例えば、エステルまたはエーテル)あるいはフェノールおよびカルボキシル機能性ポリマーとの反応生成物を中和したものを必須的に含む、水系コーティング組成物が開示されている。
Patelの米国特許第4,936,602号は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ノボラック樹脂、およびレゾール樹脂を含む水性コーティング組成物を開示している。Wuの米国特許第3,943,187号と第3,997,694号は、硬質および軟質部位を有するアクリルポリマーとエポキシ樹脂との混合物を必須的に含む、有機溶媒を主体としたコーティング組成物を開示している。Salenskyの米国特許第4,638,038号は、無水物またはポリカルボン酸がフェノキシ樹脂に結合してなる修飾されたフェノキシ樹脂を開示している。Spencerの米国特許第5,296,525号は、(a)不飽和基を有するモノマーとエポキシ樹脂との反応生成物、(b)次に、反応生成物(a)を、前成形したカルボキシル機能性ポリマーと第3級アミンと反応せしめること、(c)そして、反応生成物(b)を乳化重合によって不飽和モノマーと反応せしめることを開示している。
アクリル樹脂を混合したエポキシ樹脂、またはアクリル樹脂が結合したエポキシ樹脂を開示した他の特許として、Matthews et alの米国特許第4,247,439号;Evans et alの米国特許第4,308,185号;Wuの米国特許第4,021,396号;McCartyの米国特許第4,444,923号;Brown et alの米国特許第4,585,813号;およびTing et alの米国特許第4,480,058号がある。
エポキシ樹脂とアクリル樹脂を含む水を主体としたコーティング組成物を開示した文献として;
J.T.K. Woo et al.,″Synthesis and Characterization of Water-Reducible Graft Epoxy Copolymers,″J. Coat. Tech.,54(1982), pp.41-55;および
1988年2月3〜5日に、ルイジアナ州ニューオリンズで開催された″Water-Borne and Higher-Solid Coatings Symposium″で発表された、R.N. Johnson et al.,″Water-Borne Phenoxy Resins Low VOC Coatings with Excellent Toughness, Flexibility and Adhesion,″がある。
上掲の特許と文献は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂を含む水系コーティング組成物を開示している。これら特許と文献は、炭素−炭素間の共役二重結合または三重結合を有する連結化合物によって、アクリル樹脂に共有結合したエポキシ樹脂を含んだ水分散性ポリマーを含む水系コーティング組成物は開示していない。
本発明のコーティング組成物は、硬化させることによって、(1)良好な柔軟性、(2)良好な接着性、および(3)良好な耐薬品性と腐食抑制を呈する。
発明の要旨
本発明は、水系コーティング組成物、特に、それを硬化させることで、金属下地の腐食を効率的に抑制し、その組成物が内面にコーティングされた容器に収容された収容物に悪影響を及ぼさず、そして、良好な柔軟性、耐薬品性および接着性を呈する水系コーティング組成物に関する。このコーティング組成物を、金属下地の表面に塗布し、そして、架橋したコーティング剤を得るに十分な時間と温度条件で硬化させることで、このコーティング組成物は、鉄金属および非鉄金属下地の腐食を効率的に抑制する。本発明のコーティング組成物は、缶端および缶体の内部および外部の双方、そして食品包装用の金属クロージャーに対して使用できる。
本発明のコーティング組成物は、従来のエポキシ樹脂を主体とした組成物が抱えていた問題点を克服するものであり、そして:
(a)水分散性ポリマーであって、
(i)エポキシ樹脂のような、約2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物、
(ii)連結化合物であって、
(A)炭素−炭素間の共役二重結合または炭素−炭素間の三重結合、そして
(B)エポキシ基に対して反応性を有する部位、
を有する連結化合物、および
(iii)少なくともその一部がポリマーを水分散性にすることができるアクリルモノマーから調製される水分散性ポリマーであって、
該ポリマーが少なくとも一つのエポキシ基を有し、また、該ポリマーのエポキシ部分(i)が、連結化合物(ii)によって、重合したアクリル部分(c)と共有結合されている水分散性ポリマー;
(b)第3級アミンのような退性塩基;
(c)硬化剤;および
(d)水と揮発性有機溶媒を含んだ担体、を含む。
特に、本発明のコーティング組成物は;
(a)非揮発性物質の約5重量%〜約60重量%の重量の水分散性ポリマー;
(b)水分散性ポリマーを水分散性にするに十分な量の退性塩基;および
(c)非揮発性物質の約0.5重量%〜約25重量%の重量の、フェノール樹脂やアミノプラストのような硬化剤、を含む。
本発明のコーティング組成物で使用される水分散性ポリマーは、(i)エポキシ化合物、(ii)活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合部分とエポキシ基に対して反応性を有する部位を有する連結化合物、および(iii)少なくともその一部がポリマーを水分散性にすることができるアクリルモノマーから調製される。本明細書において使用される「活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合部分」なる語句は、炭素−炭素間の共役二重結合または炭素−炭素間の三重結合のいずれかに定義される。
エポキシ化合物は、約2つのエポキシ基、すなわち、エポキシ化合物の分子当たり約1.5〜約2.5個のエポキシ基と約180〜約20,000のエポキシ当量(Epoxy Equivalent Weight:EEW)を有しており、ポリマーの約5重量%〜約95重量%の量が使用される。活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合部分とエポキシ基に対して反応性を有する部位を備えた連結化合物は、エポキシ化合物によってもたらされたエポキシ基の少なくとも約1%(すなわち、約1%以上)および約50%までが反応するに十分な量が使用される。換言すれば、連結化合物は、エポキシ化合物の約0.1重量%〜約5重量%、あるいは水分散性ポリマーの約0.003重量%〜約4重量%の量が使用される。
重合したアクリルモノマーは、ポリマーの約5重量%〜約95重量%の量が使用される。重合したアクリルモノマーの少なくとも5重量%が、ポリマーに水分散性を付与するカルボン酸やアミド部分などの部分を有している。このポリマーは、約0.25重量%〜約20重量%の、水分散性を付与する部分を有する重合したアクリルモノマーを含む。このポリマーの重合したアクリルモノマー部分には、スチレンのようなビニルモノマーを、0%〜約95重量%含めることもできる。このポリマーの重合したアクリルモノマー部分には、ジビニルベンゼンのような1つ以上のビニル基を有するモノマーを、0%〜約3重量%含めることもできる。
よって、水分散性ポリマーは、一般構造式:
E−L−A、
式中、Eはポリマーのエポキシ樹脂部分、Lはポリマーの連結部分、そして、Aはポリマーの重合したアクリル部分である。このポリマーに塩基、例えば、退性塩基を添加することで、このポリマーに水分散性が付与される。
水分散性ポリマーのエポキシ部分は、接着性、擦傷部分の架橋性、耐薬品性および腐食耐性を付与する。水分散性ポリマーのアクリル部分は、流動性、湿潤性および硬度特性を付与し、そして、水分散性ポリマーを水に分散させる上で必要な親水性を付与する。エポキシ部分とアクリル部分を連結することで、水分散性ポリマーに対する柔軟性と抵抗性が向上する。このように、水分散性ポリマーは、缶のコーティングにおいて求められる良好な柔軟性と加工適性を改善し、また耐薬品性も改善する。
コーティング組成物の成分(a)〜(c)が水性担体に分散され、コーティング組成物が、組成物の総重量の約5%〜約50%、および、好ましくは約10%〜約50%の非揮発性成分を含むようにする。顔料、充填材、あるいは組成物の見映えや作用を改善するための添加物などの他の任意成分も組成物に取り込むことができ、そして、それに応じて、組成物中の全非揮発性物質の重量%を、コーティング組成物の総重量の約60重量%以上にまで高めることができる。コーティング組成物に含まれる担体には、組成物成分の分散あるいは乳化を補助し、あるいはコーティング組成物と下地との適性を改善するために、揮発性有機溶媒を含めることもできる。一般的には、コーティング組成物は、約15〜約35重量%の揮発性有機溶媒を含む。
本明細書において使用される「コーティング組成物」なる語句は、水分散性ポリマー、退性塩基、硬化剤、および担体中に分散した他の任意成分を含んだコーティング組成物として定義される。「硬化したコーティング組成物」なる語句は、コーティング組成物を硬化した結果得られた、付着性の重合コーティング剤として定義される。
金属下地に塗布され、次いで、十分な時間をかけて、十分な温度条件下で硬化せしめて得たコーティング組成物は、硬化したコーティング組成物による付着層を形成し、これは効果的に腐食を抑制し、良好な柔軟性と良好な金属下地への接着性を発現し、そして、硬化したコーティング組成物に接触する食品や飲料のような収容物に悪影響を及ぼさない。このような好ましい特性がために、硬化したコーティング組成物は、食品や飲料用容器の内面を被覆するために使用することができ、また、従来のポリ塩化ビニルを主体とした組成物やエポキシを主体とした組成物が抱えていた問題点を解消する。硬化したコーティング組成物は、水分散性ポリマーと硬化剤を必須的に含み、これら成分の量は、コーティング組成物に含まれる非揮発性物質として表れる。退性塩基は、硬化工程中に、コーティング組成物から排出あるいは除去される。
本発明の他の特徴によれば、従来のエポキシ/アクリル樹脂を主体としたコーティング剤と比較して、硬化したコーティング組成物は、良好な柔軟性、良好な耐久性、および金属下地への良好な接着性を呈する。硬化したコーティング組成物の金属下地への良好な接着性は、コーティング組成物の腐食抑制効果を改善する。硬化したコーティング組成物の良好な柔軟性は、成形および圧断工程のような、コーティングした金属下地をコーティングした金属製品に仕上げるための工程を容易にし、硬化したコーティング組成物を、その連続性を維持しながら、金属下地に密接に接触せしめる。良好な耐薬品性も呈する硬化したコーティング組成物は、十分な硬度を有しているため擦過しにくく、また、硬化したコーティング組成物で内面をコーティングした容器に収容された食品や飲料に悪影響を及ぼさない。
本発明の他の重要な態様によれば、本発明のコーティング組成物は、食品や飲料用の容器の内面をコーティングするために用いられていた、従来のエポキシ/アクリルを主体としたコーティング剤や、従来のポリ塩化ビニルを主体としたコーティング剤の問題点を解消する硬化したコーティング組成物を提供する。さらに、本発明のコーティング組成物は、缶体と缶端の内面と外面の双方およびクロージャーにも用いることができ、これにより、容器製造において、複数のコーティング組成物を用いる必要が無くなる。
本発明のこれら態様と他の態様および利点は、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明白になるであろう。
好適な実施態様の詳細な説明
本発明のコーティング組成物は、硬化させることによって、アルミニウム、鉄、鋼鉄および銅のような、これらに限定されるものでないが、金属下地の腐食を効果的に抑制する硬化したコーティング組成物をもたらす。この硬化したコーティング組成物は、硬化させることで、金属下地への良好な接着性;良好な耐薬品性と擦傷抵抗性;および、良好な柔軟性が実証されている。
一般に、本発明のコーティング組成物は、(d)水と有機溶媒を含む担体中に、(a)水分散性ポリマー、(b)退性塩基および(c)硬化剤を含む。加えて、本発明のコーティング組成物は、組成物の美観を改善し、組成物の加工を容易にし、あるいは組成物の機能特性を改善する、滑剤のような任意成分を含めることができる。組成物の各成分の詳細を、以下に述べる。
(a)水分散性ポリマー
水分散性ポリマーは、(i)約2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物、(ii)活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合部分とエポキシ基に対して反応性を有する部位を有する連結化合物、および(iii)少なくともその一部がポリマーを水分散性にすることができるアクリルモノマー、から調製される。連結化合物(ii)は、エポキシ化合物(i)と重合したアクリルモノマー(iii)との間に共有結合をもたらす。
本発明の重要な特徴によると、水分散性ポリマーは、非揮発性物質の約5〜約60重量%、好ましくは、約10〜約50重量%の量だけコーティング組成物に用いられる。
後述するように、水分散性ポリマーのエポキシ部分は、硬化したコーティング組成物に、接着性、耐薬品性と擦傷抵抗性を付与する。水分散性ポリマーのアクリル部分は、ポリマーを水に分散するために必要な機能性をもたらし、また、流動性、硬度および湿潤特性も付与する。硬化したコーティング組成物の柔軟性と耐薬品性は、共有結合したエポキシ部分とアクリル部分を有する水分散性ポリマーをコーティング組成物に用いているので、従来のエポキシ/アクリル酸を主体とした組成物よりも改善される。この硬化したコーティング組成物は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との組み合わせによる有利な特徴を発現し、また、ポリマーのエポキシ部分とアクリル部分が共有結合されたことによる利点も有する。
コーティング組成物は金属下地に塗布され、金属下地を缶端、缶体あるいはクロージャーのような金属製品へ成形する前に硬化されるので、硬化したコーティング組成物の柔軟性は重要な特徴である。硬化したコーティング組成物に付与された柔軟性は、従来のエポキシを主体とした組成物で指摘されていた剛性の問題を解消する。金属製品の製造工程中に硬化したコーティング組成物にて発生する擦傷の防止および金属製品に収容された収容物の腐食防止効果の観点から、硬化した組成物の耐薬品性と擦傷抵抗性は重要な特徴である。
水分散性ポリマーは、エポキシ化合物、連結化合物、およびアクリルモノマーから調製される。これら成分は、EEWが約360〜約20,000、そして、好ましくは、約1,000〜約12,000の水分散性ポリマーが得られるように反応に供される。この水分散性ポリマーは、約35,000〜約75,000、そして、好ましくは、約45,000〜約60,000の重量平均分子量(Mw);および、約6,000〜約25,000、そして、好ましくは、約7,000〜約16,000の数平均分子量(Mn)を有する。
水分散性ポリマーの各成分を、以下により詳細に述べる。
(i)約2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物
約2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物は、水分散性ポリマーの重量の約5重量%〜約95重量%、好ましくは、約10重量%〜約90重量%の量が用いられる。本発明の特徴を最大限引き出すために、エポキシ化合物は、水分散性ポリマーの重量の約15重量%〜約85重量%の量が用いられる。
水分散性ポリマーを調製している間に、エポキシ化合物によってもたらされたエポキシ基部分は、連結化合物との反応において消費される。しかしながら、後述するように、連結化合物との反応による修飾を受けたエポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する。
このエポキシ化合物は、エポキシ化合物の分子当たり、平均で、約1.5〜約2.5個のエポキシ基を含む。エポキシ基の平均数が約2.5を超えると、組成物の架橋が過剰に進行して、硬化したコーティング剤が過度に固くなったり、脆くなったりする。このエポキシ化合物は、EEWが約180〜約20,000、そして、好ましくは、約1,000〜約12,000である。本発明の特徴を最大限引き出すために、エポキシ化合物のEEWは、約2,000〜約8,500とする。
このエポキシ化合物は、硬化したコーティング組成物に対して、耐薬品性と擦傷抵抗性を付与する。エポキシ化合物の量が、水分散性ポリマーの重量の約5重量%未満になると、硬化したコーティング組成物は脆くなり、また、金属製品の製造工程中に亀裂が生じたり、接着性を喪失することになる。加えて、コーティング剤が適性に硬化するに不十分な量の架橋可能な成分も用いられている。エポキシを含む化合物の量が、水分散性ポリマーの重量の約95重量%を超えると、硬化したコーティング組成物は十分な流動性と湿潤性を得るに至らず、また、水中でのポリマーの分散はますます難しくなる。上述した重量範囲であれば、硬化したコーティング組成物は、亀裂を生じずに硬化したコーティング組成物の成形を許容するに十分な柔軟性を有し、また、良好な耐薬品性と擦傷抵抗性を発現するに十分な硬度を兼ね備えることになる。
一般的に、約2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物は、線状のエポキシ樹脂であって、樹脂の各分子末端はエポキシ基で終わっている。よって、約2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物は、エポキシ化合物の分子当たり、平均で、約1.5〜約2.5個のエポキシ基を含む。
このエポキシ化合物を、脂肪族エポキシ化合物あるいは芳香族エポキシ化合物とすることができる。好ましいエポキシ化合物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを主体としたエポキシ樹脂のような芳香族である。このエポキシ化合物は、EEWが約180〜約20,000、そして、好ましくは、約1,000〜約12,000である。このエポキシ化合物は、約400〜約50,000の重量平均分子量(Mw)を有する。エポキシ化合物は、市販されているものを使用でき、あるいは、当業者に周知の標準的な方法によって低分子量エポキシ化合物を改質することで、例えば、EEWが約180〜約500のエポキシ化合物をビスフェノールAを用いて、EEWが約1,000〜約12,000のエポキシ化合物を生成して調製することができる。
エポキシ化合物の例として、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社から入手可能な、DER 664、DER 667、DER 668およびDER 669や、テキサス州ヒューストンのシェルケミカル社から入手可能な、EPON 1004、EPON 1007およびEPON 1009などがあるが、これらに限定されるものではない。市販されている形態でそのまま使用でき、またはビスフェノールAで改質が可能な低分子量エポキシ化合物の例として、シェルケミカル社から入手可能なEPON 828がある。
一般に、好適なエポキシ化合物として、脂肪族、脂環式、または芳香族のエポキシ樹脂があり、例えば、構造式IおよびIIによって表されるエポキシ樹脂:
Figure 0003957228
式中、それぞれのAは、互いに独立した、1〜約12個、好ましくは1〜約6個、そして最も好ましくは1〜約4個の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル;それぞれのRは、互いに独立した、水素、または1〜約3個の炭素原子を有するアルキル基;それぞれのXは、互いに独立した、水素、1〜約12個、好ましくは1〜約6個、そして最も好ましくは1〜約4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基またはヒドロカルビロキシ基、またはハロゲン原子、好ましくは塩素または臭素;nは、0または1、そしてn’は0〜約150、そして、好ましくは、0〜約100の平均値である。
具体的には、好ましいエポキシ樹脂は、(ジグリシジルエーテル/ビスフェノールA)樹脂、すなわち、ビスフェノールA(III)と、
Figure 0003957228
の重合付加によって調製されたポリエーテルジエポキシドである。
このジグリシジルエーテルは、水酸化ナトリウムのような塩基の存在下で、エピクロロヒドリンの2分子とビスフェノールAの1分子を反応させることで予備成形することができる。しかしながら、好ましくは、エポキシ樹脂を生成すべく、得られるジグリシジルエーテル分子とビスフェノール分子がin situで反応するよう、この反応を進行せしめる。
この場合、エポキシ樹脂は、式中のn’が0〜約150の数字である、以下の理想化した式V:
Figure 0003957228
にて異なるn’値を持った多様な重合体の混合物である。
ビスフェノールA以外に、以下に限定の意図も無く例示的に示したビスフェノールを用いて、ビスフェノールのジグリシジルエーテルを改質して有用なエポキシ樹脂が調製できる。
Figure 0003957228
Figure 0003957228
Figure 0003957228
Figure 0003957228
水分散性ポリマーの成分として使用可能な他のエポキシ樹脂は、エポキシを含んだ以下の出発物質から調製することができる。これらエポキシを含んだ物質は、エポキシ化合物の分子量を十分に高分子量域に調整するために、ビスフェノールAや他のビスフェノールとの反応に供される。
Figure 0003957228
(ii)活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合部分とエポキシ基に対して反応性を有する部位を有する連結化合物
水分散性ポリマーを調製するために用いた連結化合物は、2つの官能基を有し、また、水分散性ポリマーのエポキシ部分と該ポリマーの重合アクリルモノマー部分を共有結合する。この連結化合物は、水分散性ポリマーの重量の約0.003重量%〜約4重量%、好ましくは、約0.003重量%〜約2.5重量%の量が用いられる。
本発明の他の重要な特徴によると、エポキシ化合物によってもたらされたエポキシ基の少なくとも1%〜約50%までと反応するに十分な量の連結化合物を使用する。好ましくは、エポキシ化合物によってもたらされたエポキシ基の少なくとも約5%〜約40%、そして、最も好ましくは、約5%〜約25%までと反応するに十分な量の連結化合物を使用する。従って、エポキシ化合物と連結化合物との間の反応によってすべてのエポキシ基が消費されるわけではなく、そして、水分散性ポリマーが少なくとも1つのエポキシ基を有するに十分なエポキシ基が残存する。
前述したように、連結化合物は、二機能性モノマーである。一方の機能性は、エポキシ基と反応できる部分によるものである。第二の機能性は、活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合を有する部分によるものである。ここで用いた、「活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合」なる語句は、炭素−炭素間の三重結合、すなわち、アセチレン結合、あるいは炭素−炭素間の共役二重結合を指す。
この連結化合物は、一般構造式VIまたはVII
Figure 0003957228
式中、R1は、水素、脂肪族ヒドロカルビル基、脂環式ヒドロカルビル基、あるいは芳香族ヒドロカルビル基であり;rは1〜6の数であり;sは1〜6の数であり;pは1〜18の数であり;および、Yはエポキシ基と反応できる部分である。
好ましくは、この連結化合物は、最高で12個の炭素原子を有するものとする。
具体的には、R1は、フェニルのような芳香族ヒドロカルビル基、あるいはC1-C10アルコキシ置換フェニル、ハロ置換フェニルやC1-C18アルキル置換フェニルのような置換芳香族ヒドロカルビル基とすることができる。ここで用いた、「ハロ」なる語句は、フッ素、塩素、臭素および沃素を含む。このR1基を、置換または非置換の、脂肪族ヒドロカルビル基あるいは脂環式ヒドロカルビル基とすることもできる。R1の例として、水素;C1-C18アルキル基、そして、好ましくは、C1-C10アルキル基;C5-C7シクロアルキル基;フェニル置換C1-C18アルキルまたはC5-C7シクロアルキル基;および、ハロ置換アルキルまたはシクロアルキル基があるが、これらに限定されない。このR1基は、不飽和のC1-C18脂肪族ヒドロカルビル基または不飽和のC5-C7脂環式ヒドロカルビル基、すなわち、1つ以上の炭素−炭素間の二重結合または炭素−炭素間の三重結合を有する官能基とすることもできる。このような不飽和の脂肪族ヒドロカルビル基および不飽和の脂環式ヒドロカルビル基は、置換したものでも、あるいは非置換のものでもよい。R1に関する置換基は、修飾されたエポキシ化合物または水分散性ポリマーの調製において妨げにならない程度の反応性を有するものである。本発明の特徴を最大限引き出すためには、R1を、水素、C1-C4アルキル基、C5-C7シクロアルキル基、またはフェニル基とする。
Y基は、エポキシ基と反応できるものであれば、特に、限定されるものではない。よって、Y基は、カルボキシル基(-CO2H)、アミド基(-CON(R22)、アミノ基(-N(R22)、水酸基(-OH)またはメルカプト(-SR3)とすることができるが、これらに限定されるものではなく、また、式中、R2基は、互いに独立した、水素、C1-C4アルキル基、またはフェニル基であり、そして、R3は、水素、C1-C4アルキル基、またはフェニル基である。
連結化合物として具体的には、ソルビン酸、ソルビンアルコール、ジシクロペンタジエン酸、共役不飽和脂肪酸(例えば、エレオステアリン酸)、3-ペンチン-1-オール、2-ペンチン-1-オール、4-ペンチン酸、4-ペンチン-1-オール、4-ペンチン-2-オール、1-ペンチン-3-オール、ヘプタコセ-10,12-ジイン酸、ヘプタデカ-2,4-ジイン酸、ヘンイコサ-2,4-ジイン酸、2-ヘプチノ酸、2-ヘキシノ酸、ノナコサ-10,12-ジイン酸、ノナデカ-1,4-ジイン酸、2-ノンイン酸、ペンタデカ-2,4-ジイン酸、ペンタコサ-10,12-ジイン酸、フェニルプロピオン酸、プロピオン酸、テトロン酸、トリコサ-10,12-ジイン酸、10-ウンデシン酸、1-ブチン-3-オール、2-ブチン-1-オール、3-ブチン-1-オール、2-デシン-1-オール、3-デシン-1-オール、3,6-ジメチル-1-ヘプチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3,4-ジメチル-1-ペンチン-3-オール、3-エチル-1-ヘプチン-3-オール、4-エチル-1-ヘキシン-3-オール、3-エチル-5-メチル-1-ヘプチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3-エチル-1-ペンチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1-ヘプチン-3-オール、2-ヘプチン-1-オール、3-ヘプチン-1-オール、4-ヘプチン-2-オール、5-ヘプチン-3-オール、1-ヘキシン-3-オール、2-ヘキシン-1-オール、3-ヘキシン-1-オール、4-ヘキシン-2-オール、5-ヘキシン-1-オール、5-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、5-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-ノニン-1-オール、1-オクチン-3-オール、3-オクチン-1-オール、1-フェニル-2-プロピン-1-オール、2-プロピン-1-オール、10-ウンデシン-1-オール、3-アミノフェニルアセチレン、プロパルギルアミン、およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。好ましい連結化合物は、構造式(VIII)を有するソルビン酸である。
CH3-CH=CH-CH=CH-CO2H (VIII)
(iii)アクリルモノマー
重合を終えたアクリルモノマーは、水分散性ポリマーの重量の約5重量%〜約95重量%、好ましくは、約10重量%〜約90重量%の量が用いられる。本発明の特徴を最大限引き出すためには、重合したアクリルモノマーは、水分散性ポリマーの重量の約15重量%〜約85重量%の量が用いられる。
このアクリルモノマーは、水分散性ポリマーのアクリル部分と連結化合物を活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合部分を介して共有結合するために、連結化合物の存在下で、遊離基重合反応によって重合される。好ましくは、このアクリルモノマーは、連結化合物がエポキシ化合物に共有結合した後に、連結化合物の存在下で重合される。
本発明の重要な特徴によると、このアクリル部分の少なくとも一部が、ポリマーを水に分散できるように作用する。これらモノマーは、水溶性ホモポリマー、あるいは塩基で中和することで水溶性になるホモポリマーのいずれかを生成するモノマーと定義される。このアクリルモノマーは、モノマーの総重量に基づいた、ビニルモノマーの0%〜約95%までを含むことができる。過剰な枝分かれを避けるために、ポリビニルモノマーの量をモノマーの総重量の0%〜約3%とする。
一般的に、アクリルモノマーは、α、β−不飽和カルボン酸を含む。このα、β−不飽和カルボン酸は、塩基で中和したポリマーを水分散性にする。好適なα、β−不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせがある。このアクリルモノマーは、ポリマーを水分散性にする、アクリルアミドやメタアクリルアミドも用いることができる。
従来、α、β−不飽和カルボン酸は、スチレンやアクリル酸エステルのような、ビニルまたはアクリルモノマーで共重合されていた。α、β−不飽和カルボン酸との共重合に適した重合可能なビニルおよびアクリルモノマーとして、例えば、ビニル部分を有する芳香族および脂肪族化合物や、α、β−不飽和カルボン酸のエステルやアミド類がある。好適なビニルおよびアクリルモノマーの例として、スチレンおよびハロスチレン類;イソプレン;共役ブタジエン;α−メチルスチレン;ビニルトルエン;ビニルナフタレン;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、エチルヘキシル、ラウリル、および他のC4-C12アルキルアクリレート、メタクリレートおよびクロトネート;ジメチルマレート、ジブチルフマレートおよびα、β−不飽和カルボン酸の同様のジエステル類;およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。他の好適な重合可能なビニルモノマーには、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、イソブトキシメチルアクリルアミドなどがある。
好ましいアクリルモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物である。
好ましいビニルモノマーは、スチレンである。最も好ましいアクリルおよびビニルモノマーは、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、およびこれらの混合物である。
アクリルモノマーを重合し、そして、アクリルモノマーと連結化合物を当業者に周知の遊離基重合反応条件下に供して、連結化合物に共有結合せしめる。よって、アクリルモノマーは重合され、そして、遊離基開始剤の存在下で連結化合物に共有結合される。有用な遊離基開始剤には、レドックス開始剤、例えば、クメンヒドロペルオキシドのような過酸化物型触媒、あるいは、例えば、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物があるが、これらに限定されない。
一般に、水分散性ポリマーの調製にあっては、いかなる遊離基開始剤も利用できる。汎用されている、好ましい遊離基開始剤は、過硫酸カリウムである。過硫酸カリウム以外にも、有用な遊離基重合触媒として、アルカリ金属の亜硫酸塩あるいは重亜硫酸塩、アンモニウム亜硫酸塩、アンモニウムメタ重亜硫酸塩、アンモニウム重亜硫酸塩、アルカリ金属の過硫酸塩、あるいは過硫酸アンモニウムのようなレドックス開始剤;t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチル過安息香酸塩、t−ブチルペルオキシイソプロピル炭酸塩、およびペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンのような過酸化物あるいはペルオキシ酸、あるいはこれらの混合物などのペルオキシ化合物があるが、これらに限定されない。さらに、アゾビスイソブチロニトリル;4-t-ブチルアゾ-4'-シアノ吉草酸;4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸);2,2'-アゾビス(2-アミジンプロパン)ジ塩酸塩;2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル);ジメチル2,2'-アゾビスイソ酪酸塩;2,2'-アゾジメチルビス(2,4-ジメチルバレロニトリル);(1-フェニルエチル)アゾジフェニルメタン;2,2'-アゾビス(2,-メチルブチロニトリル);1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル);2-(カルバモイルアゾ)-イソブチロニトリル;2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタ-2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシ)バレロニトリル;2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン);2,2'-アゾビス(N,N' ジメチレンイソブチルアミジン)ジ塩酸塩;4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸);2,2'-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド);2,2'-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス-(ヒドロキシメチル)-エチル]プロピオンアミド);2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド];2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物などの遊離基熱開始剤も有用である。
連結化合物とエポキシ化合物を反応せしめるか、あるいは、低分子エポキシ化合物を所定のEEWにまで改質すると同時に、連結化合物と改質したエポキシ樹脂を反応せしめ、次いで、エポキシ化合物に結合した連結化合物の存在下でアクリルモノマーを重合することによって、水分散性樹脂は調製される。好ましい方法では、低分子量エポキシ化合物を同時に改質し、一方で、改質したエポキシ化合物を連結化合物と反応せしめる。
水分散性ポリマーの調製を例示する目的で、以下の実験と反応を実施した。
まず、連結化合物が、その活性化された不飽和の炭素−炭素間の二重結合を損なわずに、エポキシ基に共有結合する能力を、化合物(X)を生成すべく、1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン(IX)とソルビン酸(VIII)を反応せしめることで実証した。
Figure 0003957228
具体的には、化合物(X)は、反応生成物を得るべく、反応用フラスコに、74.0g(0.49当量)の化合物IX、55.3g(0.49当量)のソルビン酸、0.006g(500ppm)の臭化テトラエチルアンモニウム(TEAB)、および20gのメチルエチルケトンを混合して調製された。反応混合物の当初の酸価は、約184.1であった。
窒素ガス(N2)で反応混合物全体を覆い、そして、反応混合物を華氏200度まで加熱し、酸価が1未満になるまで華氏200度の温度を保った。反応中に、加熱した反応混合物に、0.06gのTEABを添加した。酸価が1未満にまで落ちた後に、反応混合物を冷却し、そして、化合物(X)を回収するために反応混合物からメチルエチルケトンを剥ぎ取った。化合物(X)の構造を、核磁気共鳴(NMR)分光器で確認した。
改質したエポキシ樹脂(例えば、約1,000のEEW)とソルビン酸とを反応せしめる実験を行うと、改質したエポキシ樹脂を完全に溶解し、そして、ソルビン酸と均質に反応せしめる上で、粘性が大きすぎることがよくある。この問題点を解消するために、ソルビン酸(VIII)とビスフェノールA(III)を低分子量エポキシ化合物と共に混合し、エポキシ化合物とも同時に反応するようにする。得られたエポキシ−ソルビン酸塩のポリマーの構造を、NMR分光器で確認した。ソルビン酸の共役ジエン部分は、反応中に、何らの影響も受けていなかった。そして、ソルビン酸塩で修飾したエポキシ化合物は、構造式(XI)を有していた。
Figure 0003957228
式中、tは0〜約70である。このように、ソルビン酸塩で修飾したエポキシ化合物(XI)は、架橋剤との反応に供せるエポキシ基とアクリルモノマーとの反応に供せる活性化された不飽和の炭素−炭素間の結合部分を有している。
他の実施態様では、ソルビン酸塩で修飾したエポキシ化合物を、アクリルモノマーとの反応に先駆けて、ソルビン酸塩で修飾したエポキシ化合物(XI)に残存しているエポキシ環を開環する。例えば、化合物(XI)のエポキシ環を、ソルビン酸塩で修飾したエポキシ化合物の終端でのエポキシ環が構造(XII)に変換された対応するα−グリコール化合物を得るために、加水分解することができる。
Figure 0003957228
同様に、化合物(XI)のエポキシ環は、構造式(R42NHを有する窒素化合物、式中、R4基は、互いに独立した、水素、フェニル、あるいは1〜6個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキルである窒素化合物で開環することができる。かような窒素化合物の例として、アンモニア、第一級アミン、あるいは第二級アミンがある。窒素化合物でエポキシ環を開環すると、修飾したエポキシ化合物(XI)の終端にα−アミノアルコールが生じる。
加えて、修飾したエポキシ化合物のエポキシ環は、構造式R50Hを有する水酸基含有化合物、式中、R5は1〜6個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル基、あるいはR5はフェニルである水酸基含有化合物で開環することができる。アルコールでエポキシ環を開環すると、修飾したエポキシ化合物の終端にα−ヒドロキシエーテルが生じる。
さらに、修飾したエポキシ化合物のエポキシ環は、構造式(XIII)を有する燐酸、
Figure 0003957228
式中、R6基は、互いに独立した、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはヒドロキシアルキル基、あるいはフェニルである燐酸で開環することができる。構造式(XIII)の燐酸でエポキシ環を開環すると、修飾したエポキシ化合物の終端に、構造式(XIV)のα−ヒドロキシ燐酸塩エステルが生じる。
Figure 0003957228
連結化合物がアクリルモノマーを重合していることを実証するために、遊離基重合条件下で、ソルビン酸を、アクリルモノマーとビニルモノマーと反応せしめた。得られたポリマーには、ソルビン酸の共役ジエンは認められなかった。具体的には、以下の実施例で、ソルビン酸、アクリルモノマー、およびビニルモノマーの共重合を実証する。
Figure 0003957228
成分(a)と(b)を反応用フラスコに仕込み、華氏230度になるまで加熱した。次いで、成分(c)〜(i)を予め混合しておいたものを、加熱した(a)と(b)の混合物に、同混合物を攪拌しながら、かつ温度を華氏230〜235度に維持しつつ、90分かけて滴下した。成分(c)〜(i)から得たモノマー混合物の残量を、成分(j)を用いて反応用フラスコに流し込んだ。得られた反応混合物を、30分間、華氏230度に維持し、そして、成分(k)を添加した。さらに30分間、華氏230度に維持した後、成分(l)を添加した。再度、30分間、華氏230度に維持した後、成分(m)を添加した。そして、反応混合物を、さらに60分間、華氏230度に維持した後に、放冷した。
溶媒を反応混合物から蒸発せしめ、次いで、得られたコポリマーを、ソルビン酸のジエン部分の存在について、NMRで分析を行った。ジエン部分の痕跡は、認められなかった。
後述するように、構造式(XI)のソルビン酸塩で修飾したエポキシ化合物は、水分散性ポリマーをもたらすべく、アクリルおよびビニルモノマーとの反応に供された。得られた水分散性ポリマーは、構造式:
E−L−A、
式中、Eはポリマーのエポキシ部分、Aはアクリル部分、そして、LはEとAを共有結合する連結部分である。
(b)退性塩基
この水分散性ポリマーは、ポリマーを水分散性にすることができる、十分量のアクリルモノマーを含む。これらアクリルモノマーは、一般的には、α、β−不飽和カルボン酸であり、また、これらモノマーは、退性塩基でカルボン酸部分を中和することによってポリマーを水分散性にする。
水分散性モノマーのアクリル部分のカルボン酸基の約20%〜約100%を中和するに十分な量の退性塩基が使用される。過剰量の退性塩基はコーティング組成物に悪影響を及ぼさないものの、過剰量の退性塩基は何の効果を奏するものでもなく、単に浪費されるだけである。好ましくは、水系コーティング組成物中に存在するカルボン酸基の少なくとも約35%〜約75%を中和するに十分な量の退性塩基が使用される。組成物に添加される退性塩基の正確な量は、水分散性ポリマーの酸価、および退性塩基の塩基度から決定される。
退性塩基は、硬化中のコーティング組成物から排出される、割合に揮発性の化合物である。従って、硬化中のコーティング組成物は、水不溶性の性状を改めて獲得し、よって、良好な耐薬品性と良好な白化耐性を呈する硬化したコーティング組成物が得られるのである。
通常、退性塩基は、第一級、第二級または第三級のアミン、芳香族または脂肪族のいずれかであり、あるいは第一級、第二級または第三級のアルカノールアミン、あるいはアンモニウム、水酸化アルキルアンモニウム、または水酸化アリルアンモニウム、あるいはこれらの混合物である。退性塩基として、水酸化アンモニウム、1〜約4個の炭素原子を持つアルキル基を有する水酸化テトラアルキルアンモニウム(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム)、モノエタノールアミン、ジメチルアミン、メチルジエタノールアミン、ベンジルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエタノールアミン、ブチルアミン、ピペラジン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルフォリン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、トリエチルアミン、2-ジメチルアミン-2-メチル-1-プロパノール、ジイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、N-メチルピペリジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ピペリジン、ピリジン、ジメチルアニリン、および同様のアミン類とアルカノールアミン類、およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
(c)硬化剤
本発明のコーティング組成物は、フェノール樹脂やアミノプラストのような硬化剤も含む。このコーティング組成物は、非揮発性物質の重量の約0.5重量%〜約25重量%、そして、好ましくは、約1重量%〜約20重量%の硬化剤を含む。本発明の特徴を最大限引き出すために、このコーティング組成物は、約1重量%〜約10重量%の硬化剤を含む。
硬化剤として、フェノール樹脂、アミノプラスト、カルボジイミド、または同様の硬化剤を用いることができる。フェノール樹脂とは、フェノールとホルムアルデヒドとの反応から得られる縮合生成物であり、約800〜約8,000、そして、好ましくは、約1,200〜約5,000の低重量平均分子量を有する。フェノールや、ヒドロキシフェニル部分を有する化合物などが、フェノール樹脂のフェノール成分として用いることができる。適切なフェノール化合物として、フェノール、クレジル酸およびビスフェノールAがあるが、これらに限定されない。ビスフェノールAが、フェノール樹脂での好適なフェノール成分である。
同様に、アミノプラストも硬化剤として使用することもできる。一般に、アミノプラストは、ユリアホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、およびベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂のような、部分的または全体的にアルキル化した低分子量の縮合生成物である。
市販されているアミノプラストには、例えば、CYMEL 301、CYMEL 303、CYMEL 370およびCYMEL 373があり、これらはすべてメラミンを主体とし、例えば、CYMEL 301はヘキサメトキシメチルメラミンであり、コネチカット州スタムフォードのアメリカンシアナミド社から市販されている。
アミノプラスト樹脂の他の例として、アルデヒドと、ホルモーグアナミン、アンメリンとの反応によって生成される樹脂、2-クロロ-4,6-ジアミン-1,3,5'-トリアジン;2-フェニル-p-オキシ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン;および、2,4,6-トリエチル-トリアミノ-1,3,5-トリアジンなどがある。モノ−、ジ−、またはトリアリルメラミン、例えば、2,4,6-トリフェニルトリアミン-1,3,5-トリアジンが好ましい。
樹脂物質を得るためにアミノ化合物との反応に供する他のアルデヒド類として、クロトンアルデヒド、アクロレイン、あるいは、ヘキサメチレンテトラアミン、パラアルデヒドのようなアルデヒド類を生成する化合物がある。
(d)担体
本発明のコーティング組成物は、水を主体とするものであるが、揮発性有機溶媒を取り込むことも可能である。一般に、コーティング組成物に用いられる揮発性有機溶媒とは、華氏約350度〜約500度で、約6秒〜約15分間かけて加熱して、コーティング組成物を硬化する間に、コーティング組成物から実質的に全部が蒸発するに十分な揮発性を有する。
この揮発性有機溶媒は、組成物成分の溶解、分散および乳化を助長すべく担体の一部に用いられるものであり、これによって、より安定な組成物が得られる。この揮発性有機溶媒は、表面張力、焼付け中の流展性および粘度のような組成物の物理的特性を改善するためにも使用され、これによって、塗布が容易で、かつより均質な硬化剤を提供する組成物が得られる。この揮発性有機溶媒は、コーティング組成物の流動性を改善し、そして、コーティング組成物の噴霧を容易ならしめる。
無数の揮発性有機溶媒が、本発明のコーティング組成物に利用することができる。好適な揮発性有機溶媒は、保管中の蒸発を防止するに十分な低い蒸気圧と、コーティング組成物の硬化中にコーティング組成物から蒸発するに十分な高い蒸気圧を有している。揮発性有機溶媒の例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはジプロピレングリコールのメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルまたはフェニルエーテル;エチレングリコールメチルエーテルアセテート;エチレングリコールエチルエーテルアセテート;エチレングリコールブチルエーテルアセテート;ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート;ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート;ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;n-ブタノール;ヘキシルアルコール;ヘキシルアセテート;メチルn-アミルケトン;ブチレングリコール;プロピレングリコール;ジイソブチルケトン;メチルプロピルケトン;メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン;2-エトキシエチルアセテート;t-ブチルアルコール;アミルアルコール;2-エチルヘキシルアルコール;シクロヘキサノール;イソプロピルアルコール;および、同様の有機溶媒、ならびにこれらの混合物があるが、これらに限定されるものでない。
好ましい揮発性有機溶媒は、n-ブタノールである。これは、コーティング組成物成分は、n-ブタノールに速やかに分散することによる。他の好適な揮発性有機溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテル、すなわち、ブチルセロソルブである。
担体には、担体の重量の約10重量%まで程度の比較的少量の非極性有機溶媒を、コーティング組成物に悪影響を及ぼすことなく、硬化工程の前または後に含めることもできる。非極性有機溶媒には、塩素化炭化水素、脂肪族炭化水素や、あるいは、トルエン、エチルベンゼン、ベンゼン、キシレン、ミネラルスピリット、ケロシン、ナフサ、ヘプタン、ヘキサン、およびこれらの組み合わせを含む芳香族炭化水素などがある。
本発明のコーティング組成物に用いられる担体の量は、所望の、または必要とするコーティング組成物の流動学的性質によってのみ制限を受ける。通常は、その製造が容易で、金属下地に容易にかつ均一に塗布でき、そして、所望の硬化時間内に硬化中のコーティング組成物からの揮発が十分に進む組成物を得るべく、十分量の担体がコーティング組成物に用いられる。
従って、非揮発性物質の重量の約5%〜約60%、そして、好ましくは、約10%〜約50%の量の担体を含むコーティング組成物を得るに十分な量の担体が組成物に用いられる。本発明の特徴を最大限引き出すためには、水系コーティング組成物は、非揮発性物質の重量の約15重量%〜約45重量%の量の担体を含む。任意の充填材を添加することで、非揮発性物質の量を約60%を超える量にまで増大できる。
よって、担体が、組成物成分を十分に分散、乳化および/または可溶化し;コーティング組成物の安定性またはコーティング組成物の効率的な硬化に悪影響を及ぼす組成物成分との相互作用に無関係であり;さらに、金属下地の腐食を抑制し、硬化したコーティング組成物と接触する食物や飲料に悪影響を及ぼさず、そして、容器やクロージャーの内部または外部のコーティング剤として用いるに十分な接着性や柔軟性などの物理的特性が実証されている硬化したコーティング組成物を形成するために、実質的に組成物全体が、比較的迅速に素早く蒸発する、限りにおいては、主成分の水と少量成分の揮発性有機溶媒を含む担体は、本質的に、本発明のコーティング組成物において有用である。
(e)他の任意成分
本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物または該組成物から得られた硬化したコーティング組成物に対して悪影響を及ぼさない他の任意成分も使用することができる。このような任意成分は当該技術分野では公知のものであり、これらは、組成物の美観を改善し;組成物の製造、加工、取り扱いおよび塗布を容易ならしめ;そして、コーティング組成物または該組成物から得られた硬化したコーティング組成物の特定の機能性をさらに改善するために、コーティング組成物に用いられている。
このような任意成分として、例えば、染料、顔料、増量剤、充填材、特別な抗腐食剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、抗酸化剤、定着性光安定剤、およぼこれらの組み合わせがある。非イオン性または陰イオン性界面活性剤も、流動性を改善するためにコーティング組成物に用いられる。合成滑剤のワックスエマルジョンおよび/または分散液が、滑り特性を改善すべく硬化したコーティング組成物に用いられる。各任意成分は、コーティング組成物または該組成物から得られた硬化したコーティング組成物に悪影響を及ぼさない量であって、所定の目的を達成するに十分な量で用いる。
本発明のコーティング組成物の調製は、まず、水分散性ポリマーを調製することから始まる。水分散性ポリマーは、好ましくは、エポキシ化合物の改質と、エポキシ化合物と連結化合物との反応を同時に行うことで調製される。生成した改質されたエポキシ化合物を、水分散性ポリマーを得るべく、遊離基重合条件下で、アクリルモノマーと反応せしめる。
そして、水分散性ポリマーを、退性塩基、硬化剤、および担体、すなわち、水と揮発性有機溶媒と共に混合する。コーティング組成物中の非揮発性物質の量を所定レベルにまで調整するに十分な量の担体を用いる。担体の添加前あるいは添加後に、任意成分をコーティング組成物に加えることができる。
本発明のコーティング組成物を検証すべく、以下の実施例および比較例を作成し、これらを金属下地に塗布し、そして、被覆された金属下地を得るべく最後に硬化せしめた。次いで、被覆された金属下地を、食品や飲料用の容器として使用すべく、比較試験を行った。この硬化した被覆を、金属下地の腐食を抑制する性能;金属下地への接着性;耐薬品性;柔軟性;および、引掻および擦傷抵抗性に関して試験を行った。本発明の組成物を、食品や飲料用途のコーティング金属下地に対して汎用されている市販のビニルオルガノゾル組成物(すなわち、比較例1)と比較した。
Figure 0003957228
比較例1の組成物は、非揮発性物質を約33.8%含んでいる。
Figure 0003957228
実施例1の組成物は、非揮発性物質を約33%含んだ本発明のコーティング組成物である。実施例1の組成物は、組成物成分が均質になるまで単に混合することで調製される。実施例1の組成物は、以下の実施例2に記載の水分散性ポリマーを利用したものである。
実施例2
水分散性ポリマー/退性塩基溶液
エポキシ化合物、すなわち、EPON 828、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(EEW 187、180ポンド)を、還流凝縮器に装着された窒素充填した反応器に仕込んだ。エポキシ化合物を華氏約170度〜華氏約175度にまで加熱し、そして、約3000のEEWのエポキシ樹脂(例えば、約99ポンド)を得るべく、加熱したエポキシ化合物に十分量のビスフェノールAを添加した。加えて、ソルビン酸の464gとホスホニウム塩触媒(すなわち、テキサス州ヒューストンのシェルケミカル社から入手可能な、SHELL Catalyst 1201)の77gを、反応器に入れた。
窒素充填を続けながら、得られた混合物を華氏約240度にまで加熱した。華氏約240度に達した後、この混合物を華氏100度にまで冷却した。発熱反応によって温度は華氏270度にまで上昇し、そして、混合物を冷却しながらも、1分間当たり華氏約1度〜1.5度の割合で華氏約350度に至るまで温度上昇した(最高温度は、華氏約365度であった)。熱がひいた後に、約1時間加熱することによって、混合物の温度を華氏約350度〜360度に保った。エポキシ樹脂のEEWが約3000を超えた時に、ブチルセロソルブ(176ポンド)を混合物に添加し、そして、華氏約250度になるまで混合物を冷却した。
次いで、n-ブチルアルコール(32.8ポンド)を混合物に添加し、得られた混合物を、華氏230度になるまでさらに冷却した。スチレン(790g)、エチルアクリレート(38.7ポンド)、メチルメタクリレート(11.6ポンド)、アクリル酸(3,299g)およびメタクリル酸(3,950g)を予め混合して得た、約166の酸価を有する混合物を調製した。アゾビスイソブチロニトリル開始剤(464g)をモノマー混合物に添加し、そして、得られたアクリルモノマー/開始剤の混合物を、華氏約230度の温度を維持しながら、90分間かけて反応器に入れた。残余のアクリルモノマーを、14.4ポンドのブチルセロソルブで反応容器内に流し込み、さらに30分間、華氏約230度の温度に保った。
次に、アゾビスイソブチロニトリルの201gとブチルセロソルブの402gを予め混合して得た混合物を反応器に入れ、得られた混合物を、さらに30分間、華氏約230度の温度に保った。アクリルモノマーの重合を確実ならしめるべく、この作業をさらに2回繰り返した。
反応器の内容物を華氏約220度にまで冷却し、次いで、4090gの脱イオン水を添加した。反応器の内容物を華氏212度にまで冷却し、次いで、水(4090g)とジメチルエタノールアミン(4090g)とを予め混合して得た混合物を反応器に入れた。10分間その状態を維持した後、加熱した脱イオン水(262ポンド、華氏200度)を、1時間かけて反応器に入れた。水を加えている間に、反応生成物を、華氏約195度〜約200度にまで冷却した。次に、反応生成物を、華氏約105度にまで冷却するために、脱イオン水(135ポンド)を素早く添加した。そして、脱イオン水を添加することで、反応生成物を、所定の固形分含量に調整した。
実施例2のポリマー溶液は、固形分が約35重量%;pHが約7.2;#3スピンドル、約25℃、20rpmにて計測して得られた粘度が約350cps(センチポアズ);固形分の酸価が約32.5、そして、固形分の塩基度が約16.2であった。実施例2での水分散性ポリマー/退性塩基溶液は、実施例1の組成物の主要成分として使用した。
実施例1の組成物を、内部乾燥フィルム重量が約5.2〜約7mg/平方インチ(msi)、そして外部乾燥フィルム重量が約2.3〜約2.8msiの割合となるように、アルミニウム板の両面に塗布した。実施例1の組成物を、約150フィート/分の割合で塗布し、そして、華氏約450度で、約11秒間硬化させた。実施例1の組成物は、塗布が容易で、良好な流動性を示し、発泡性が無く、スキニングも無く、顕著な溶媒の喪失も認められず、また、2時間経過後でも粘度の明確な上昇はなかった。硬化したコーティング組成物は、良好な光沢を発現していた。
実施例1の組成物を、比較例2の組成物と比較した。比較例1を、対照として用いた。比較例2の組成物からソルビン酸が抜けていること以外は、比較例2の組成物は、実施例1の組成物と同様である。よって、比較例2の組成物は、ポリマーのエポキシ部分とポリマーの重合アクリル部分とを共有結合する連結化合物は含んでいない。
要するに、比較例2では、非揮発性物質の重量の97重量%のエポキシ−アクリル分散液を含んでいる。エポキシ−アクリル分散液は、非揮発性物質を33%含んでおり、この分散液は、改質したエポキシ樹脂、スチレン、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、およびメタクリル酸を用いていた。比較例2のエポキシ−アクリル分散液は、ソルビン酸を用いないこと、そして、比較例2で使用したエポキシ樹脂を、合成の第一工程としてよりもむしろ合成前に改質することを除けば、実質的に実施例2と同様の方法で調製される。比較例2の組成物は、実施例1と同じ硬化剤と滑剤を同量含んでおり;また、非揮発性物質を30%含んでいる。
実施例1、比較例1および2の組成物を金属下地(例えば、アルミニウム板)に塗布し、コーティングされた金属下地を得るべく硬化せしめた。これらコーティングされた金属下地について、食品や飲料用容器の内面としての用途に関して、比較試験を行った。以下により詳細に実証されるように、本発明のコーティング組成物を硬化して得た硬化したコーティング組成物は、食品や飲料用容器、あるいはクロージャーの内面または外面のコーティングに適している。
具体的には、本発明のコーティング組成物は、金属下地に塗布され、次いで、金属下地に接着硬化したコーティング組成物を得るために、約3分〜約5分間、華氏約350度〜約500度のような、十分な温度で、十分な時間をかけて硬化される。このコーティングされた金属下地は、容器や他の金属製品に成形されることになる。
従って、真新しい未処理のアルミニウム板に、約0.1ミルの厚みの硬化フィルムを得るに十分な量の、実施例1、比較例1および2の組成物を、それぞれ個別に塗布した。金属下地に組成物を塗布する前に、各組成物を脱イオン水で固形分を約28重量%に調整した。実施例1の組成物または比較例1と2の組成物を個別にアルミニウム板に塗布した後に、各組成物を、HVHT型コイルオーブンに通して、華氏450度で、約16秒間かけて硬化せしめた。硬化した各コーティング組成物は、平滑で、光沢があり、欠陥は認められなかった。
表Iに、硬化したコーティング組成物に関して実施した各種試験の結果をまとめた。
Figure 0003957228
表Iにまとめた結果は、実施例1の組成物が、市販の組成物(比較例1)よりも白化耐性に優れていることを示している。
実施例1および比較例2の組成物も、プロセス耐性に関して試験を行った。これらの試験では、異なる条件下で、所定時間、コーティングした下地に液体を接触せしめ、次いで、エナメル等級試験にて、これら液体に対する耐性について下地の試験を行った。
このエナメル等級とは、缶端や缶体などの缶に塗布された硬化したコーティングフィルムの連続性を試験するものである。金属下地をコーティングした後に、缶端や缶体が成形加工される。よって、硬化したコーティング剤は、この製造工程にて変形されることになる。表IIに表したデータは、本発明の組成物(実施例1)のエナメル等級が、比較例2のエナメル等級よりも優秀な等級にあることを示している。
このエナメル等級試験では、電極から電解質を介して缶に形成されたコーティング剤への電流の流れを計測する。このコーティング剤は、絶縁体として機能し、よって、コーティング層の連続性が完壁であれば電流は流れないことになる。ミリアンプの数値が小さいほど、金属下地へのコーティング層がより連続的であることになる。表IIのデータでは、実施例1の組成物でコーティングした缶に関して比較的小さなミリアンプの数値が得られており、良好なフィルム連続性が認められる。実施例1の組成物は、優秀なエナメル等級にあることから、実質的に良好なプロセス耐性を備えるものであった。
Figure 0003957228
一般に、実施例1の組成物は、比較例2の組成物と比較して、柔軟性、接着性、およびエナメル等級が改善されていた。実施例1は、現在も利用されている比較例1の市販のビニルオルガノゾル組成物と匹敵する性能も備えていた。加えて、本発明の組成物は、取り扱いや塗布に適した粘度を有するハイソリッド組成物の生成を許容する固体/粘度関係も改善した。よって、本発明のコーティング組成物は、同様の最終用途に用いる現在市販の組成物と少なくとも同等のコーティング性能を備えていた。
表IとIIにまとめたデータは、本発明のコーティング組成物が、食品や飲料用容器の内面もしくは外面用のコーティング剤、あるいは食品容器用のクロージャーとして有用な硬化したコーティング組成物を提供することを示している。本発明の組成物は、良好な白化耐性と良好な接着性を実証する。白化耐性試験では、熱い洗剤溶液や他の液剤による衝撃への硬化したコーティング剤の抵抗力を試験する。金属性容器は、金属平板をまずコーティングし、次いで、コーティングした金属シートを所望形状に成形して製造されるので、金属製容器用のコーティング組成物は、良好な接着性と柔軟性が実証されなければならない。接着性が貧弱なコーティング剤は、成形中に金属下地から剥離することになる。よって、接着性が欠如すると、金属下地の腐食を抑制する硬化したコーティング組成物の性能に悪影響を及ぼすことになる。本発明のコーティング組成物は金属下地に対する優れた接着性を有するので、このコーティング組成物は金属下地に塗布することができ、そして、コーティング剤のフィルム連続性に悪影響を及ぼさずに、金属下地を成形することができる。
本発明のコーティング組成物は、良好な柔軟性を有する硬化したコーティング組成物も提供した。金属製容器のような所望の金属製品に圧断あるいは成形される以前に金属下地はコーティングされるので、柔軟性は、硬化した重合コーティング剤の重要な特性である。コーティングした金属下地は、成形中に極度の変形作用を受けるので、コーティング剤が十分な柔軟性を備えていないと、コーティング剤に亀裂や破断を生ずることになる。このような亀裂があると、容器内の水性物が金属下地に自在に接触できるので、金属下地の腐食に至ることになる。本発明のコーティング組成物でコーティングした金属下地は、金属缶の形状に成形された。亀裂や破断は、認められなかった。加えて、先述したように、本発明のコーティング組成物から得られる硬化したコーティング剤は、金属下地に対して十分な接着性を示し、そして、金属製品への加工中にも十分な接着性を維持し、これによって、腐食抑制効果がさらに高められる。
表IとIIに示した比較試験は、本発明の硬化したコーティング組成物が、金属下地に対する接着性を維持し;柔軟性があり;十分な硬度を有するため、引掻および擦傷抵抗性があり;白化抵抗性があり;そして、化学的攻撃にも抵抗性を示すことを実証している。
他の利点として、本発明の組成物は、硬化したコーティング組成物の有用な物理的および化学的特性に悪影響を及ぼさずとも、華氏約350度〜華氏約500度という比較的広範な温度範囲と、約3分〜約5分という比較的広範な時間範囲において硬化することができる。従って、容器製造業者は、コーティング組成物の硬化特性に鑑みてコーティングプロセスを設計する必要がなく;また、コーティング剤製造業者も、特定のコーティングプロセスに適するようにコーティング組成物の硬化特性を調整する必要もない。よって、本発明のコーティング組成物は、普遍的な適用範囲を有する。さらに、本発明の硬化組成物によって実証された広範な硬化範囲ならびに化学的および物理的特性は、水系コーティング組成物を、缶体および缶端の内面と外面の双方に対して有用なものにする。従来、缶体および缶端ならびに容器の内面と外面に対して、異なるコーティング組成物が併用されていた。これは本発明の組成物の適用範囲を、さらに拡大するものである。
本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、これまで説明してきた本発明の多くの修正と変更を加えれることは明らかであり、よって、添付したクレームに示した限定のみが付加されるべきである。

Claims (29)

  1. E-L-Aの構造式で表される水分散性ポリマーであって、当該構造式中、Eは、少なくとも一つのエポキシ基を有するエポキシ部分、Aは、重合したアクリル部分、および、Lは、当該エポキシ部分(E)と当該アクリル部分(A)とを共有結合する連結部分であり、かつ、以下の化合物、すなわち;
    (A)その一分子当たりに平均で1.5個〜2.5個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、
    (B)共役二重結合を形成する少なくとも二つの二重結合または炭素-炭素間の三重結合のいずれかと、エポキシ基に対して反応する部分とを含む連結化合物、および、
    (C)少なくともその一部が、α,β-不飽和カルボン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびこれらの組み合わせのいずれかであり、かつ当該ポリマーに水分散性を付与するアクリルモノマー、
    から調製される、ことを特徴とする水分散性ポリマー。
  2. 前記エポキシ基が、水、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、アルコール、ジオール、フェノール、アルカノールアミン、燐酸、燐酸モノエステル、燐酸ジエステル、またはこれらの組み合わせによって開環される請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  3. その5重量%〜95重量%が、前記エポキシ部分である請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  4. 前記エポキシ化合物のエポキシ当量が、180〜20,000である請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  5. 前記エポキシ化合物が、二つのエポキシ基を有する化合物とビスフェノールとの反応によって生成したポリエーテルジエポキシドを含む請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  6. その0.003重量%〜4重量%が、前記連結部分である請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  7. 前記連結化合物が、前記エポキシ化合物が供給するエポキシ基の少なくとも1%〜50%と反応する請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  8. 前記連結化合物が、以下の構造式、すなわち;
    Figure 0003957228
    の構造式を有し、当該構造式中、
    1は、水素、フェニル基、C1-C10アルコキシ置換フェニル基、ハロ置換フェニル基、C1-C18アルキル置換フェニル基、C1-C18アルキル基、C5-C7シクロアルキル基、フェニル置換C1-C18アルキル基、フェニル置換C5-C7シクロアルキル基、ハロ置換C1-C18アルキル基、ハロ置換C5-C7シクロアルキル基、不飽和C1-C18脂肪族ヒドロカルビル基、および不飽和C5-C7脂環式ヒドロカルビル基からなるグループから選択され、
    rは1〜6、sは0〜6、pは0〜18であり、および
    Yは、エポキシ基と反応できる部分である、
    構造式で表される請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  9. 前記Yが、カルボン酸基、水酸基、アミノ基-N(R22、アミド基-CON(R22からなるグループから選択され、
    当該R2が、互いに独立した、水素、C1-C4アルキル基またはフェニル基、および、メルカプト基-SR3であって、当該R3が、水素、C1-C4アルキル基、またはフェニル基である、請求項8に記載の水分散性ポリマー。
  10. 前記連結化合物が、ソルビン酸、ソルビンアルコール、ジシクロペンタジエン酸、共役不飽和脂肪酸、エレオステアリン酸、3-ペンチン-1-オール、2-ペンチン-1-オール、4-ペンチン酸、4-ペンチン-1-オール、4-ペンチン-2-オール、1-ペンチン-3-オール、ヘプタコセ-10,12-ジイン酸、ヘプタデカ-2,4-ジイン酸、ヘンイコサ-2,4-ジイン酸、2-ヘプチノ酸、2-ヘキシノ酸、ノナコサ-10,12-ジイン酸、ノナデカ-1,4-ジイン酸、2-ノンイン酸、ペンタデカ-2,4-ジイン酸、ペンタコサ-10,12-ジイン酸、フェニルプロピオン酸、プロピオン酸、テトロン酸、トリコサ-10,12-ジイン酸、10-ウンデシン酸、1-ブチン-3-オール、2-ブチン-1-オール、3-ブチン-1-オール、2-デシン-1-オール、3-デシン-1-オール、3,6-ジメチル-1-ヘプチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3,4-ジメチル-1-ペンチン-3-オール、3-エチル-1-ヘプチン-3-オール、4-エチル-1-ヘキシン-3-オール、3-エチル-5-メチル-1-ヘプチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3-エチル-1-ペンチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1-ヘプチン-3-オール、2-ヘプチン-1-オール、3-ヘプチン-1-オール、4-ヘプチン-2-オール、5-ヘプチン-3-オール、1-ヘキシン-3-オール、2-ヘキシン-1-オール、3-ヘキシン-1-オール、4-ヘキシン-2-オール、5-ヘキシン-1-オール、5-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、5-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-ノニン-1-オール、1-オクチン-3-オール、3-オクチン-1-オール、1-フェニル-2-プロピン-1-オール、2-プロピン-1-オール、10-ウンデシン-1-オール、3-アミノフェニルアセチレン、プロパルギルアミン、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  11. 前記連結化合物での炭素原子の数が、12個以下である請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  12. 前記アクリル部分の少なくとも5重量%が、前記ポリマーに水分散性を付与するモノマーである請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  13. その0.25重量%〜20重量%が、水分散性を付与するモノマーである請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  14. 前記α,β-不飽和カルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  15. 前記アクリル部分の0重量%〜95重量%が、ビニルモノマー、α,β-不飽和酸のエステル、α,β-不飽和酸のアミド、アクリロニトリル、またはこれらの組み合わせである請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  16. 前記アクリル部分が、スチレン、ハロスチレン、イソプレン、共役ブタジエン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、C4-C12アルキルアクリレート、C1-C12アルキルメタクリレート、C1-C12アルキルクロトネート、ジメチルマレート、ジブチルフマレート、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、イソブトキシメチルアクリルアミド、および、これらの組み合わせからなるグループから選択されたモノマーを含む請求項15に記載の水分散性ポリマー。
  17. 前記エポキシ部分が、以下の構造式、すなわち:
    Figure 0003957228
    の構造式を有し、当該構造式中、tは0〜70であり、連結部分Lは、ソルビン酸を含み、および、重合したアクリル部分Aは、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の水分散性ポリマー。
  18. 前記アクリル部分が、スチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項17に記載の水分散性ポリマー。
  19. 以下の工程、すなわち:
    (a)その一分子当たりに平均で1.5個〜2.5個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、当該エポキシ化合物によって供給されるエポキシ基の少なくとも1%〜50%を消費する連結化合物、すなわち、炭素-炭素間の共役二重結合を形成する少なくとも二つの二重結合または炭素-炭素間の三重結合のいずれかと、エポキシ基と反応する部分とを有する連結化合物とを反応させて、当該エポキシ化合物と当該連結化合物とを共有結合せしめて、少なくとも一つのエポキシ基を有する修飾エポキシ化合物を調製し、および
    (b)当該修飾エポキシ化合物を、α,β-不飽和カルボン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなるグループから選択されたアクリルモノマーと反応せしめて、当該連結化合物の炭素-炭素間の共役二重結合または炭素-炭素間の三重結合を介して当該アクリルモノマーを共重合させる、
    工程を含む方法によって調製された、ことを特徴とする水分散性ポリマー。
  20. 前記工程(a)および前記工程(b)の間に、前記修飾エポキシ化合物のエポキシ基を加水分解する工程をさらに含む請求項19に記載の水分散性ポリマー。
  21. 前記工程(a)および前記工程(b)の間に、(R42NHの構造式[式中、R4基は、互いに独立した、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、あるいは、1〜6個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基である]で表される窒素化合物を用いて、前記修飾エポキシ化合物のエポキシ基を開環する工程をさらに含む請求項19に記載の水分散性ポリマー。
  22. 前記工程(a)および前記工程(b)の間に、(R5)OHの構造式[式中、R5基は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、あるいは、1〜6個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基である]で表される水酸基含有化合物を用いて、前記修飾エポキシ化合物のエポキシ基を開環する工程をさらに含む請求項19に記載の水分散性ポリマー。
  23. 前記工程(a)および前記工程(b)の間に、以下の構造式、すなわち:
    Figure 0003957228
    [式中、R6基は、互いに独立した、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基あるいはフェニル基である]の構造式で表される燐酸を用いて、前記修飾エポキシ化合物のエポキシ基を開環する工程をさらに含む請求項19に記載の水分散性ポリマー。
  24. 以下の成分、すなわち:
    (i)E-L-Aの構造式で表され、かつ非揮発性物質の重量の5重量%〜60重量%の水分散性ポリマーであって、当該構造式中、Eは、その一分子当たりに平均で1.5個〜2.5個のエポキシ基を有し、かつエポキシ化合物に由来するエポキシ部分であり、Lは、連結部分であって、連結化合物、すなわち、炭素-炭素間の共役二重結合を形成する少なくとも二つの二重結合または炭素-炭素間の三重結合のいずれかと、エポキシ基と反応する部分とを有する連結化合物を含み、Aは、重合したアクリル部分であって、少なくともその一部が、α,β-不飽和カルボン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびこれらの組み合わせのいずれかであり、かつ当該ポリマーに水分散性を付与するアクリルモノマーを含み、および、当該連結部分(L)を介して、当該エポキシ部分(E)が、当該アクリル部分(A)に共有結合している、水分散性ポリマー、
    (ii)当該水分散性ポリマーを水に分散せしめるに十分な量の塩基、すなわち、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第一級アルカノールアミン、第二級アルカノールアミン、第三級アルカノールアミン、水酸化アンモニウム、水酸化アルキルアンモニウム、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択され、かつ当該アミン、当該アルカノールアミンおよび当該水酸化アルキルアンモニウムのアルキル基が、1個〜4個の炭素原子を有する塩基、
    (iii)非揮発性物質の重量の0.5重量%〜25重量%の硬化剤、および
    (iv)水と揮発性有機溶媒を含む担体、
    を含む、ことを特徴とするコーティング組成物。
  25. 前記アクリル部分が、α,β-不飽和酸を含み、かつ、前記アクリル部分が供給するカルボン酸基の20%〜100%を中和する塩基を含む請求項24に記載のコーティング組成物。
  26. 前記塩基が、水酸化アンモニウム、炭素原子の数が1個〜4個のアルキル基を有する水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、モノエタノールアミン、ジメチルアミン、メチルジエタノールアミン、ベンジルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエタノールアミン、ブチルアミン、ピペラジン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルフォリン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、トリエチルアミン、2-ジメチルアミン-2-メチル-1-プロパノール、ジイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、N-メチルピペリジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ピペリジン、ピリジン、ジメチルアニリン、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項24に記載のコーティング組成物。
  27. 前記硬化剤が、フェノール樹脂、アミノプラスト、カルボジイミド、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項24に記載のコーティング組成物。
  28. 金属下地をコーティングする方法であって、以下の工程、すなわち;
    請求項24に記載のコーティング組成物を、金属下地の表面に塗布し、
    当該組成物に含まれる塩基と担体を除去し、および
    当該組成物が塗布された金属下地を、177℃〜260℃の温度で、6秒〜15分間、加熱して当該組成物を硬化させる、
    工程を含む、ことを特徴とする金属下地をコーティングする方法。
  29. 請求項24に記載のコーティング組成物を硬化して得た接着層でコーティングした少なくとも1つの表面を具備する、ことを特徴とする金属製品。
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