JP3956236B1 - 実験廃液の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 試験研究機関から排出された実験廃液中に含まれる化学成分を検証しつつ最終的にフェライト化処理を行って無害化する。実験廃液中に含まれる化学成分の種類に優先順位を定め、優先順位の高い順に廃液の種類を分別し、無機系廃液として分別された特定の実験廃液に対しては、前処理系処理としてフェライト処理不可能な物質を廃液中から除去、或いは中和し、次いでフェライト化処理を行う。有機系廃液として分別された実験廃液に対しては、一括噴霧燃焼方式により熱分解し、燃焼ガスを洗浄した洗煙水に含まれるダイオキシン類およびフッ素を除去し、さらに洗煙水のフェライト化処理を行う。フェライト化処理は、前記燃焼ガスを洗浄した洗煙水及び無機系廃液中に含まれる重金属イオンをマグネタイトの沈降結晶格子中に取り組んで、洗煙水及び廃液中から除去する処理である。
【選択図】 図4
Description
実験廃液は、大きく有機廃液と無機廃液とに分けられ、それぞれについての保管方法、処理方法は異なる。表1に実験廃液の分類を示す。
2)水銀を含有し、シアンを含有しない廃液は、他にどの様な化学物質を含んでいても水銀含有廃液として分別する。
3)フッ素・リン酸を含み、シアン、水銀を含有しない廃液は、他にどの様な化学物質を含んでいてもフッ素・リン酸含有廃液として分別する。
4)シアン、水銀、フッ素・リン酸を含有せず、有機物であって、且つハロゲンを含む廃液は、ハロゲン廃液として分別する。
5)シアン、水銀、フッ素・リン酸を含有せず、有機物であって、且つハロゲンを含まず、難燃性と判断されたものは難燃廃液として分別する。
6)シアン、水銀、フッ素・リン酸を含有せず、有機物であって、且つハロゲンを含まず、難燃性と判断されたものを含まず、さらに水溶性のものは難燃廃液として分別する。
8)シアン、水銀、フッ素・リン酸、有機物を含まず硝酸を含む廃液は、硝酸含有廃液として分別する。
9)シアン、水銀、フッ素・リン酸、有機物、硝酸を含まず、アルカリを含む廃液は、アルカリ含有廃液として分別する。
10)シアン、水銀、フッ素・リン酸、有機物、硝酸、アルカリを含まない廃液は、重金属含有廃液として分別する。
有機系廃液(可燃不溶性廃液、可燃水溶性廃液、難燃性廃液、ハロゲン廃液)について、沈殿物を除去した後、可燃不溶性廃液とハロゲン廃液とを可燃液に、難燃性廃液と可燃水溶性廃液を難燃液に分類し、これら可燃液、難燃液を一括噴霧燃焼方式を用いて熱分解処理する。燃焼によって発生した燃焼ガスは、洗浄水で冷却・洗浄処理を行い、ガス中のダイオキシン類除去処理を行った後、ガスは大気中に放散させ、残存する燃焼灰は含有試験を行った上でその最終処理を処理業者に外部委託する。
無機系廃液については、廃液ごとに固有の前処理系処理を行う。特定の無機系廃液、すなわち、水銀含有廃液、シアン含有廃液、フッ素・リン酸含有廃液に対しては、前処理系処理として沈殿物を除去した後、それぞれの廃液中に含まれる水銀、シアン、フッ素・リン酸を除去し、硝酸含有廃液に対しては、沈殿物を除去した後、廃液中の硝酸を中和する。しかし、重金属含有廃液、アルカリ含有廃液については、前処理として沈殿物を除去した後、後処理系処理としてフェライト化処理を行う。フェライト化処理は、マグネタイトの沈降結晶格子中に無機系廃液中に含まれる重金属イオンを取り組んで、これら重金属を廃水中から除去する処理である。
xM2++(3−x)Fe2++6OH−→MxFe(3−x)(OH)6・・・(1)
この混合水酸化物を水溶液中で加熱、空気酸化を行うと、再溶解、酸化、晶析を経て最終的に次式の反応によってフェライトが生成され、その過程を経て廃液中の金属イオンもスピネルフェライトを形成する(特許文献3参照)。
MxFe3−x(OH)6+1/2O2 → MxFe3−xO4 ・・・(2)
図2は、本発明方法を実現するシステムの構成図である。以下に図2を参照しながら本発明による実験廃液の処理方法を説明する。本発明による実験廃液の処理方法は、前述のとおり有機系廃液処理と、無機系廃液処理とに大別される。
有機系廃液処理系は、それぞれの廃液に含まれる沈殿物を除去した後の可燃液及び難燃液に対して熱分解処理と、冷却・洗浄処理と、ダイオキシン類除去処理とを順次に行う処理システムである。
(a)熱分解処理
図2において、熱分解処理は、噴霧燃焼方式を用いて行われる。噴霧燃焼方式とは、ロータリーバーナーにて廃液を噴霧しつつ廃液を熱分解させる処理である。廃液投入装置1から取り出された実験廃液を難燃性(可燃水溶性廃液、難燃性廃液、硝酸)と、可燃性(可燃不溶性廃液、ハロゲン廃液)とに区別し、難燃性廃液受槽2、可燃性廃液受槽3にそれぞれ投入される。各槽内の廃液は、個別に噴霧燃焼炉4内に導入されるようになっている。まず、噴霧燃焼炉4の側面に設置された助燃バーナー及び可燃バーナーに地下タンク5から助燃料(灯油)を供給し、助燃料の燃焼熱で炉内温度を上昇させる。
噴霧燃焼炉4内の燃焼ガスは、熱交換ダクトを通して冷却塔7内に送り込まれ、循環水槽8内で冷却水の給水を受けて冷却され、さらにスクラバー塔9にてアルカリ洗浄された後、冷却器10aにて凝縮し、ついでデミスター10bに送り込まれ、ガス中に含まれる水分が除去される。
燃焼ガス中のダイオキシン類除去処理は、デミスター10bの後段に接続された燃焼ガス処理用のダイオキシン類除去装置11内に燃焼ガスを導入して行う。使用するダイオキシン類除去装置11の種類は必ずしも限定されるものではないが、この実施例においては、図3に示すようなハニカム状の活性炭12の積層を用いている。
燃焼ガスの冷却・洗浄処理に使用されたアルカリ洗浄水(洗煙水)は、循環水槽8に回収される。回収されたアルカリ洗浄水は、ダイオキシン類含有の虞があるため、数段に渡って洗煙水用ダイオキシン類除去処理装置11a、11b・・を通して洗浄水中のダイオキシン類を吸着処理したあと、洗浄廃水受槽18に受け入れる。洗浄廃水受槽18内に受入れられた洗煙水のフッ素処理として塩化カルシウム及び苛性ソーダを作用させて洗煙水中のフッ素を除去する。洗煙水は、次いで後述する重金属系受槽24内に送り込んで、無機系廃液とともに、フェライト化処理に備える。一方、噴霧燃焼炉4内に発生した燃焼灰は固形廃棄物として処理業者に外部委託する。
無機系廃液処理系は、これを大別して前処理系処理と、後処理系処理としてフェライト化処理とを順次行う処理システムである。
(a)前処理系処理
前処理系処理は、無機系廃液の種類によって固有の処理を行う。すなわち、水銀含有廃液、シアン含有廃液、フッ素・リン酸含有廃液に対しては、分別された廃液の種類ごとに沈殿物を除去し、水銀処理、シアン処理、フッ素・リン酸処理を個別に行い、硝酸含有廃液に対しては硝酸の中和処理を行う。重金属含有廃液、アルカリ含有廃液に対しては、沈殿物を除去する以外に格別の処理は不要である。
水銀処理は、水銀含有廃液中の水銀のみを吸着除去する処理である。処理に際しては、水銀廃液投入槽19内の廃液を廃液受槽20から酸化分解槽21内に順次移し、酸化分解槽21内には、ボイラー15に発生させた蒸気を送り込み、酸化分解槽21内の廃液を70℃に加温して過マンガン酸カリを加え、攪拌しつつ廃液中に含まれる有機物を酸化分解し、吸着塔22内の水銀吸着樹脂に通水することによって廃液中の無機水銀、有機水銀を含めて廃液中から吸着除去する。水銀が除去された廃液は、一旦チェック槽23に貯め、水銀の除去程度をチェックし、水銀含有量が規準以下であることを確認した後、重金属系受槽24に貯めてフェライト化処理に備える。
シアン処理は、シアン含有廃液中のシアンを分解する処理である。シアンの分解方法としては、アルカリ塩素法を用いた例を示している。処理に際しては、シアン廃液投入槽25内の廃液をシアン分解槽26中に移し、シアン分解槽26内で次亜塩素酸ナトリウムを加えてシアンを分解(一次分解、二次分解)し、残存シアンをシアン吸着塔27内のシアン吸着樹脂に吸着させ、シアンが除去された廃液は、チェック槽28に貯め、シアンの除去程度をチェックし、シアン含有量が規準以下であることを確認した後、重金属系受槽24に貯めて後のフェライト化処理に備える。
フッ素・リン酸処理は、フッ素・リン酸含有廃液中のフッ素・リン酸を除去する処理である。処理に際しては、フッ素・リン酸廃液投入槽29内の廃液をフッ素・リン酸処理槽30中に移し、処理槽30内に塩化カルシウムを加え、さらに苛性ソーダを加えて廃液を中性又はアルカリ性に調整することにより、水に不溶性のフッ化カルシウム、リン酸カルシウムの水酸化物を生成させ、ついで、脱水機31にかけて生成物と、廃液とを固液分離する。固体成分が除かれた廃液はろ過水槽32でろ過し、フッ素吸着塔33を通して残存するフッ素を吸着除去し、チェック槽34に貯め、フッ素とリン酸との除去程度をチェックし、重金属系受槽24に貯めて後のフェライト化処理に備える。
硝酸の除去に際しては、2001年に硝酸性窒素などの排水基準が追加されたため、以下の硝酸中和処理が必要になった。硝酸中和処理は、処理槽内で廃液中に苛性ソーダを加え、廃液のpHを強酸から中性に調整する。中和調整された硝酸含有廃液は、難燃性廃液の希釈液として使用し、噴霧焼却炉内に噴霧し、燃焼分解させる。
フェライト化処理は、前記前処理系処理で処理された水銀廃液、シアン廃液、フッ素・リン酸廃液および洗煙水ダイオキシン類除去処理において処理された廃液中に含まれる重金属をフェライトの結晶構造中に取り込んで無害化する処理である。フェライト化処理は(a)有機物の分解処理〜(f)固液分離処理の手順によって行い、後処理として(g)中和処理、(h)高度排水処理を行う。
前記前処理系処理で処理された水銀廃液、シアン廃液、フッ素・リン酸廃液および重金属含有廃液、アルカリ含有廃液と、有機系廃液の処理における洗煙水ダイオキシン類除去処理において処理された廃液とを重金属系受槽24に集め、ついで、溶解調整槽35に移して廃液を攪拌混合しつつ、その混合液に対し、まず、混合液のpHを酸性領域に調整し、ついで過マンガン酸カリウムを加え、廃液中に含まれ、フェライト化反応の妨害物質となる有機物を分解する。
廃液中に含まれる有機物を分解後、引き続いて廃液中に硫酸第一鉄を添加してこれを溶解させる。その添加量は、廃液500l(リットル)に対してFeSO4・7H2O25kgである。
第一鉄塩を溶解させた廃液を次に反応塔36内に移し、反応塔36内で、廃液中に苛性ソーダを加えて廃液のpHを9〜10に調整する。
(d)昇温処理
pHを9〜10に調整した廃液に、ボイラー15に発生させた蒸気を吹き込み、廃液の液温を65℃まで昇温する。
昇温された廃液にブロア37から空気を吹き込み、廃液を酸化反応を進行させる。
(f)固液分離処理
空気の吹込みによって、廃液の酸化反応が進み、フェライトが生成し、これが液中に沈降する。液中に沈殿したフェライトを含む廃液を次に脱水機38に移して固液分離し、廃液中からスラッジを除去する。
(g)中和処理
スラッジを除去した上澄み液は、活性炭塔39を経由して中和槽40内に導入する。上澄み液は、アルカリ領域のため、排水基準の範囲内のレベルに中和する。
中和された上澄み液は、キレート樹脂塔41内に通水して水中に残存する有害物質を吸着除去し、処理水をモニタリング槽42内で水質分析を行い、その水質が排水規準値以下であることを確認し、処理水貯槽43から下水道へ放流する。
(4)廃液を判断しつつ処理する手順
a)研究機関の各実験室から排出され、前述の排出基準に従い、専用の容器内に分別貯留された廃液について、有機系廃液、無機系廃液の区別に関わらず、まず、廃液中にシアンが含まれているかどうかを判断する(ステップS1)。
b)シアン廃液処理(ステップS2)を行った後の処理水について、分別基準に定めた他の化学物質が含まれているかどうかを判断する。ステップS2の処理後の処理水にシアン以外に他の化学物質が含まれていなければ、その処理水をフェライト化処理する。逆に処理水中に他の化学成分が含まれている場合に、まず、第1に水銀が含まれているかどうかを判断する(ステップS3)。
f)ステップS10において、廃液が難燃性ではないと判断されたときには、次に水溶性かどうかを判断し(ステップS12)、水溶性と判断されたときには、これを難燃液として熱分解処理を行い(ステップS13)、さらに冷却・洗浄ならびにダイオキシン処理、フッ素処理を順次に行い、その洗煙水をフェライト化処理に移す。
h)一方、ステップS7において、廃液中に有機物が含まれないと判断されて時には、次に廃液中に硝酸が含まれているかどうかを判断し(ステップS15)、廃液中に硝酸が含まれているときには、硝酸中和処理し(ステップS16)、さらに熱分解処理(ステップS17)した後、さらに冷却・洗浄ならびにダイオキシン処理、フッ素処理を順次に行い、その洗煙水をフェライト化処理に移す。
i)ステップS15において、廃液中に硝酸が含有されていないときには、アルカリ廃液、重金属含有廃液を加え、前記各ステップで生成した処理水、洗煙水とともにフェライト化処理し(ステップS18)、その処理水が排出基準を満たしているかどうかを判断し、排出基準を満たしているかどうかを判定し(ステップS19)、排出基準を満たしていれば、放流し、排出基準を満たしていなければ再処理を行う。
実験廃液中に含まれる化学物質の分類について、最も大事な事は、廃液の中にどのような化学物質が含まれているかを知ることであるが、単に廃液の中に含まれる化学物質を特定しただけでは十分ではない。本発明においては、前述のように単に廃液の中に含まれる化学物質を特定するだけでなく、化学物質毎の区分の他に処理に優先順位を決め、優先順位が高い区分で、分類が決まる。例えば、優先順位の上の位置にあるシアンと下の位置にある有機物とが混合した廃液があれば、それは優先順位の高いシアン廃液として先に処理するのである。
研究機関の各実験室から出された廃液中にどのような化学成分が含まれているかどうかの判断は、客観的な化学的な分析によるのが正確であるが、この様な検証を行うまでもなく、実験廃液中にどのような化学成分が含まれているかを最もよく知っているのは、実験担当者である廃液排出者本人である。廃液の排出者本人が、実験廃液を、指定された分別基準に従って正規に分別貯留していれば、化学的分析は不要である。すなわち、各実験室から出された廃液について、実験担当者の申請に基づいて分別貯留された容器のテープ、容量による表示に基づいて図4に示すフローの優先順位にしたがって各化学成分の含有の判断を行い、それぞれの化学成分含有廃液に固有の処理を経て、最終的にフェライト処理を行うことが最終の目標である。実験者、管理者が互いに協力することによって、莫大なエネルギーを消費することなく、発生源処理(原点処理)の理念を実現することが可能となる。
2 難燃性廃液受槽
3 可燃性廃液受槽
4 噴霧燃焼炉
5 地下タンク
6 誘引排風機
7 冷却塔
8 循環水槽
9 スクラバー塔
10a 冷却器
10b デミスター
11 ダイオキシン類除去装置
11a,11b 洗煙水用ダイオキシン類除去処理装置
12 ハニカム状の活性炭
13 ミキシングチャンバー
14 熱風発生炉
15 ボイラー
16 煙突
17 モニタリング装置
18 洗浄廃水受槽
19 水銀廃液投入槽
20 廃液受槽
21 酸化分解槽
22 吸着塔
23 チェック槽
24 重金属系受槽
25 シアン廃液投入槽
26 シアン分解槽
27 シアン吸着塔
28 チェック槽
29 フッ素・リン酸廃液投入槽
30 フッ素・リン酸処理槽
31 脱水機
32 ろ過水槽
33 フッ素吸着塔
34 チェック槽
35 溶解調整槽
36 反応塔
37 ブロア
38 脱水機
39 活性炭塔
40 中和槽
41 キレート樹脂塔
42 モニタリング槽
43 処理水貯槽
Claims (1)
- 試験研究機関から排出された実験廃液中に含まれる化学物質を検証しつつ最終的にフェライト化処理を行って無害化する実験廃液の処理方法であって、
廃液中に含まれる化学物質をシアン、水銀、フッ素・リン酸、有機物、硝酸の順に優先順位を定めて順次廃水中に含まれる化学物質の有無の判断及び当該化学物質を処理するステップを設定し、研究機関から排出された廃液を、有機系廃液、無機系廃液の区別に関わらず、優先順位が上位のステップから下位のステップの順に予め定められた化学物質の含有の有無を個別に順に判断し、それぞれのステップにおいて処理すべき特定の化学物質が含まれていれば、その化学物質が含まれる廃液を処理した後、その処理水中に、次のステップにおいて処理すべき化学物質が含まれているかどうかを判断し、当該化学物質が含まれているときには、その化学物質が含まれる廃液を処理し、他の化学物質が含まれていないと判断されたときには、処理された廃液の処理水あるいは燃焼処理後の洗煙水をフェライト化処理するステップを繰り返し、全ての処理のステップ終了後の処理水あるいは燃焼処理後の洗煙水を最終的にフェライト化処理することを特徴とする実験廃液の処理方法。
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