JP3956095B2 - 希土類元素酸化物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に赤色発光団としてディスプレイや医療用などのX線診断用装置に使用される希土類元素酸化物製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イットリウムユーロピウム酸化物やイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物は、赤色発光団としてディスプレイや医療用などのX線診断用装置などに用いられている。プラズマディスプレイは大型フラットパネルディスプレイとして今後が期待されているディスプレイであるが、イットリウムユーロピウム酸化物やイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物は、キセノンプラズマの発する147nmの励起光に対して高い発光効率を持つプラズマディスプレイの赤色発光団として注目を集めている。
【0003】
プラズマディスプレイの赤色発光団としては、他にイットリウムガドリニウムユーロピウムホウ酸塩があるが、イットリウムユーロピウム酸化物やイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物は、発光効率ではイットリウムガドリニウムユーロピウムホウ酸塩に比較して低いものの、色純度、寿命の点では優れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
プラズマディスプレイなどのディスプレイにとっては、パネルの高輝度化はディスプレイの特性向上にとって重要課題である。
【0005】
パネルの高輝度化に関しては赤色発光団自体の輝度向上が計られているが、赤色発光団のセル内への塗布特性もパネルの輝度に大きな影響を与えると言われている。塗布特性については、プラズマディスプレイセル内へ均一に、凹凸の少ない状態で塗布できるものが好ましいとされている。赤色発光団の形状としては小粒子、同一粒径、同一形状である方が、均一塗布特性が高く好ましいとされている。
【0006】
赤色発光団の粒子サイズや形状、特に粒子サイズは原料の粒子サイズに影響され、一般に、より粒径のばらつきの小さい、即ち粒度分布のシャープな原料を使用した方がシャープな粒度分布を持つ赤色発光団が得られるため、近年原料粉末は粒度分布のシャープさが求められるようになってきている。
【0007】
しかし、従来の原料酸化物を顕微鏡などで観察すると、粒度分布がシャープな原料粉末といえども、粒子の大きさはまちまちであり、その大きさの差が幾分小さいとか、形が幾分似通っているものに過ぎなかった。このような原料粉末を用いて製造した赤色発光団は、粒子の大きさもまちまちである。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、均一粒径で粒度分布がシャープな希土類元素酸化物(イットリウムユーロピウム酸化物、イットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物)製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、本発明に到達したもので、本発明は、
イットリウムユーロピウムの塩基性炭酸塩を600〜1500℃で焼成して、粒子径が0.5μm以上2μm以下で、電子顕微鏡で各粒子を観察したときに全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が10%未満である均一粒径の球状イットリウムユーロピウム共沈酸化物を得た後、更にこのイットリウムユーロピウム共沈酸化物を1100℃以上1800℃以下に加熱することを特徴とする均一粒径球状イットリウムユーロピウム共沈酸化物と同一粒子径であるイットリウムユーロピウム酸化物の製造方法、
イットリウムガドリニウムユーロピウムの塩基性炭酸塩を600〜1500℃で焼成して、粒子径が0.5μm以上2μm以下で、電子顕微鏡で各粒子を観察したときに全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が10%未満である均一粒径の球状イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物を得た後、更にこのイットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物を1100℃以上1800℃以下に加熱することを特徴とする均一粒径球状イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物と同一粒子径であるイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物の製造方法
を提供する。
【0010】
即ち、本発明者らは、先に、粒径、形状の均一な球状希土類元素酸化物及びその製造方法を提案した(特願2000−203549号:特開2002−29741号公報)が、このような方法で得られる平均粒子径が0.5〜2μmの均一粒径、均一形状の球状希土類元素酸化物を用いて、赤色発光団として粒子径が0.5〜2μmの均一粒径のイットリウムユーロピウム酸化物もしくはイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物を製造することを課題として検討を行った。
【0011】
また、近年ではX線を用いた医療診断においては診断データをデジタル化して保存することが一般的になりつつあり、診断画面の高解像度などのためには、赤色発光団に対してX線に対して高い発光効率をもち、なおかつ小粒子、デテクタに対する高い感度をもった発光特性をもつこと、塗布特性がよいことなどが求められている。このような要求を満たす赤色発光団として粒子径が0.5〜2μmの均一粒径のイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物を製造することを課題として検討を行った。
【0012】
その結果、上記提案に係る粒子径が0.5〜2μmの均一粒径球状イットリウムユーロピウム又はイットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物を1100〜1800℃に加熱することにより、粒径の揃ったイットリウムユーロピウム又はイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物が得られることを見出したものである。この場合、原料となる酸化物の粒子径が0.5〜2μmと小さいために結晶成長させることが比較的容易であること、原料の酸化物粒子の大きさが一定であるために同一の熱処理温度で各々の粒子で程度の等しい結晶成長をさせられること、赤色発光団の製造工程をなるべく簡便にすることを考え、赤色発光団製造には一般的に使用されているホウ酸、塩化バリウム、塩化アンモニウムなどといったフラックスを混合せずに原料酸化物を結晶成長させ、赤色発光団を作ることが可能となった。このようにして得られたイットリウムユーロピウム酸化物、イットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物はプラズマディスプレイの赤色発光団やX線を用いた医療診断用の赤色発光団として好適なものである。
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に係るイットリウムユーロピウム酸化物及びイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物は、粒子径が0.5〜2μmの均一粒径を有する単分散のものである。ここで、粒子径は、電子顕微鏡観察による粒子径であるが、これと同時にフィッシャー・サブ−シーブ・サイザー(Fisher Sub−Sieve Sizer)で測定した平均粒子径(フィッシャー径)も0.5〜2μmであることが好ましい。また、均一粒径とは、電子顕微鏡などで各粒子を観察したときに、全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が10%未満のものを言う。更に、その形状は、球状乃至球状に近い多面体であることが好ましい。
【0014】
本発明において、イットリウムユーロピウム酸化物又はイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物の組成としては、イットリウムユーロピウム酸化物の場合は、酸化イットリウムで99〜85重量%、酸化ユーロピウムで1〜15重量%、イットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物の場合は、酸化イットリウムで4〜95重量%、酸化ガドリニウムで1〜95重量%、酸化ユーロピウムで1〜15重量%であることが好ましく、更にイットリウム、ガドリニウム、ユーロピウム以外の希土類酸化物を1重量%以下配合させ、複合酸化物として用いてもよい。この場合、ホウ素及びバリウムの含有量の合計が20ppm以下であることが好ましい。なお、イットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物は、目的により、例えばプラズマフラットパネル等に用いる場合は、酸化ガドリニウムを30〜60重量%、X線診断用装置等に用いる場合は酸化ガドリニウムを70〜95重量%添加することが好ましい。
【0015】
また、本発明において、イットリウムユーロピウム酸化物、イットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物の結晶子の大きさは、XRDのWilson法での測定値で特に600Å以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のイットリウムユーロピウム酸化物及びイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物は、粒子径が0.5〜2μmの均一粒径球状のイットリウムユーロピウム共沈酸化物又はイットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物を1100〜1800℃に加熱して得られる赤色発光団である。
【0017】
ここで、原料として用いる上記希土類元素の共沈酸化物及びその製造方法は、特願2000−203549号明細書(特開2002−29741号公報)に記載の通りであるが、これを要約して述べると、希土類元素の水溶性塩の水溶液に尿素を尿素濃度が50g/リットル以下の実質的に一定濃度を保つように添加しながら80℃以上の温度で加熱熟成して、希土類元素塩基性炭酸塩を製造し、次いでこの希土類元素塩基性炭酸塩を約600〜1500℃で焼成することにより、上記希土類元素の共沈酸化物を製造することができる。即ち、本発明に係る赤色発光団原料の希土類酸化物共沈粒子の製造方法については、希土類の硝酸塩等の水溶性塩に尿素を添加、反応させて得られるもので、具体的には溶液中の希土類イオン濃度と尿素濃度をコントロールし、好ましくは用いる水溶性塩中の希土類イオン濃度を20g/リットル以下、尿素を溶液中で50g/リットル以下にして、温度を適切に溶液の沸点以下にコントロールしながら、均一粒径の共沈炭酸塩を析出させ、これを焼成することで希土類酸化物共沈粒子を製造することができる。このような方法で、粒子径が0.5〜2μmまでの均一粒径の球状希土類元素の共沈酸化物、例えば図1に示すような球状イットリウムユーロピウム単分散共沈酸化物粒子を原料として用いることができる。
【0018】
この場合、イットリウムユーロピウム共沈酸化物及びイットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物粒子の結晶子の大きさは、XRDのWilson法で測定した場合、200〜400Å程度であり、赤色発光団として使用するには原料酸化物粒子の結晶を400〜1000Å、好ましくは600〜1000Å程度に成長させることが必要である。なお、ここで用いる粒子の形状が球状とは、短径と長径がほぼ同一であることを意味し、均一粒径とは、上述したように電子顕微鏡などで各粒子を観察したときに、全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が10%未満であるものを言い、得られた赤色発光団の粒子においても原料酸化物と平均粒子径はほぼ同等の値を示すものである。
【0019】
本発明で用いる原料の希土類共沈酸化物であるイットリウムユーロピウム酸化物又はイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物の組成としては、赤色発光団組成と同じであり、イットリウムユーロピウム酸化物の場合は、希土類の含有量は酸化イットリウムで99〜85重量%、酸化ユーロピウムで1〜15重量%、イットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物の場合は、酸化イットリウムで4〜95重量%、酸化ガドリニウムで1〜95重量%、酸化ユーロピウムで1〜15重量%である原料希土類共沈酸化物を用いることができ、更にイットリウム、ガドリニウム、ユーロピウム以外の希土類酸化物を1重量%以下配合させ、複合酸化物として用いてもよい。
【0020】
ここで、従来より、赤色発光団としてのイットリウムユーロピウム酸化物やイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物を製造する際には、ホウ酸(又は酸化ホウ素)、塩化バリウム、塩化アンモニウムなどのフラックス成分を添加して加熱処理するのが一般的であった。
【0021】
こうしたフラックス成分を添加する主たる目的は、結晶成長を促進させることであるが、結晶成長後の赤色発光団としては、フラックス成分のない方が概して赤色発光団の発光強度や寿命に対して好ましい結果が得られ、一般には洗浄などの工程を経て赤色発光団中や赤色発光団表面に残留したフラックス成分を除去している。しかし、フラックス成分の一部は洗浄工程でも除去しきれずに赤色発光団中に残留し、赤色発光団の発光強度や寿命などの特性に対して悪影響を及ぼすことがある。
【0022】
本発明で検討した赤色発光団は、0.5〜2μmの大きさの均一粒径を有するイットリウムユーロピウム酸化物及びイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物であり、本発明の微粒子の単一分散である球状希土類共沈酸化物を用いることにより、フラックス成分がなくても熱処理だけで粒子内での結晶を十分に成長させられることにより、色純度、寿命特性の優れた赤色発光団を得ることができる。また、原料の粒径が不揃いであれば、粒子によって結晶成長する温度が異なるため、フラックスの添加は欠かせないものであるが、今回使用する粒子は均一粒径であり、ほぼ同じ温度で同様な結晶成長が起こるという点からもフラックス成分の添加は不要になり、赤色発光団である酸化物中のホウ素及びバリウムの含有量が20ppm以下に低く抑えることができる。
【0023】
フラックス成分を添加せずに原料酸化物を直接赤色発光団化することで、フラックス成分を洗浄除去する工程を省くことができ、赤色発光団を製造するまでの工程が簡便になる利点がある。
【0024】
赤色発光団製造条件としては原料共沈酸化物をアルミナ坩堝などに入れ、電気炉を用いて加熱処理するもので、大気、真空、不活性のいずれかの雰囲気において、加熱温度1100〜1800℃、好ましくは1200〜1700℃、特に好ましくは1300〜1600℃の間で10分〜6時間加熱することにより、赤色発光団を得ることができる。ここで言う加熱処理とは、原料酸化物を結晶成長させる目的で行う処理である。この場合、加熱処理した赤色発光団試料を透過型電子顕微鏡で観察した場合、1100℃未満での加熱処理温度では結晶成長は起こるものの、結晶成長速度は遅く、実際には1100℃以上での加熱処理が結晶成長には必要であるため、1100〜1800℃、好ましくは1200〜1700℃、更に好ましくは1300〜1600℃で加熱処理するものである。1800℃を超えた温度で加熱すると、凝集粒子が多く発生し、2μmを超え、数μmの粒径になる粒子もあり、0.5〜2μmの球状粒子とそれ以外の粒径を有する粒子が混在し、不均一状態になり、塗布特性が低下する。
【0025】
ここで、得られる酸化物を電子顕微鏡写真((株)日本電子)で観察した場合、原料共沈酸化物にほぼ等しい大きさの球状に近い単分散粒子であり、原料共沈酸化物と同一粒子径である。
【0026】
このような方法で得られた酸化物は、ディスプレイやX線を用いた医療診断装置などに用いられる希土類酸化物赤色発光団として、従来にない粒径が0.5〜2μmの均一粒径であるという特徴をもった赤色発光団である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0028】
[実施例1]
酸化イットリウムと酸化ユーロピウムの重量比で94:6の組成の粒子直径が約1.0μmの均一粒径球状単分散イットリウムユーロピウム共沈酸化物粒子を合成した。この際の原料酸化物の合成条件は以下の通りである。
【0029】
純水を90℃以上でほぼ一定温度に加熱した。酸化物換算で重量比94:6のイットリウム/ユーロピウム混合硝酸溶液と尿素を加えて加熱を続けた。この際に溶液中の希土類イオン濃度が20g/リットル以下、尿素濃度が50g/リットル以下となるように調整しながらイットリウム/ユーロピウム混合硝酸溶液及び尿素を添加していくことで、約1.2μmの均一粒径の塩基性炭酸塩を析出させた。この塩基性炭酸塩を800℃で焼成することで、図1に示すような原料となる均一粒径・球状イットリウムユーロピウム共沈酸化物を得た。
【0030】
この共沈酸化物粒子を電気炉中、大気雰囲気で1400℃で5時間熱処理して、酸化物(赤色発光団)を得た。得られた酸化物を電子顕微鏡で観察すると、粒径が約1μmの球状に近い多面体の単分散粒子であった。電子顕微鏡で各粒子を観察したときに、全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が約7%であった。この赤色発光団である酸化物中のホウ素及びバリウム含有量を測定したところ、それぞれ5ppm以下であった。
【0031】
この酸化物を30mg/cm2の割合でガラス基板に塗布したところ、均一な塗布膜が得られた。この酸化物の発光スペクトルを147nmの励起光源で測定(分光計器株式会社の真空紫外域吸収蛍光測定装置)したところ、約612nmに強い発光ピークを持つ蛍光スペクトルが得られた(図9)。612nmの発光ピークを有することにより、赤色の発光団であることが示されている。
【0032】
ここで、上記共沈酸化物を種々の温度で熱処理した場合に得られた酸化物の電子顕微鏡写真を図2〜6に示す。図2は熱処理温度1100℃、図3は同1200℃、図4は同1400℃、図5は同1650℃、図6は同1850℃のイットリウムユーロピウム酸化物である。
【0033】
また、熱処理温度と得られたイットリウムユーロピウム酸化物の結晶子の大きさを表1に示す。この場合、加熱時間は2時間であり、結晶子の大きさはXRDのWilson法で測定した。
【0034】
【表1】
Figure 0003956095
【0035】
更に、1400℃で熱処理することにより得られた酸化物(赤色発光団)の粒度分布をレーザー散乱型の粒度分布測定装置(LEED&NORTHRUP製)で測定した結果を図7に示す。
【0036】
図6に示したように、1850℃の熱処理条件では、実際に電子顕微鏡写真でも凝集粒子が多く見られ、数μm以上の粒径になる粒子も見られ、球状粒子と球状以外の粒子が混在しており、不均一である。酸化物粒子の塗布特性としては単分散した均一粒径の粒子が最も好ましく、このような融着粒子は塗布特性を悪化させる点で好ましくないと考えられる。
【0037】
また、1400℃で熱処理することにより得られた酸化物粒子を基板に塗布した状態を電子顕微鏡で観察したところ、赤色の発光を有し、基板上に非常に密に充填されていることが確認できた(図8)。
【0038】
更に、各温度で熱処理して製造した酸化物の蛍光スペクトルを測定した。測定装置は分光計器株式会社の真空紫外分光システムB−95100を用い、励起波長147nmでの612nmの発光強度で比較した。測定サンプルはガラス基板上に酸化物を30mg/cm2の割合で塗布し、励起光の当たった面の相対発光強度を測定した。結果を表2に示す。その結果、147nmの励起光での612nmの相対発光強度は1300〜1700℃で熱処理したものがより高いことがわかった。
【0039】
【表2】
Figure 0003956095
【0040】
[実施例2]
酸化イットリウムと酸化ガドリニウムと酸化ユーロピウムの重量比で40:54:6の組成の粒子直径が約1.0μmの均一粒径球状単分散イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物粒子を合成した。この際の原料酸化物の合成条件は以下の通りである。
【0041】
純水を90℃以上でほぼ一定温度に加熱した。酸化物換算で重量比40:54:6のイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウム混合硝酸溶液と尿素を加えて加熱を続けた。この際に溶液中の希土類イオン濃度が20g/リットル以下、尿素濃度が50g/リットル以下となるように調整しながらイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウム混合硝酸溶液及び尿素を添加してゆくことで、約1.2μmの均一粒径の塩基性炭酸塩を析出させた。この塩基性炭酸塩を800℃で焼成することで、原料となる均一粒径・球状イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物を得た。
【0042】
この共沈酸化物粒子を電気炉中、大気雰囲気で1400℃で5時間熱処理して、酸化物粒子(赤色発光団)を得た。得られた酸化物粒子を電子顕微鏡で観察すると、粒径が約1μmの球状に近い多面体の単分散粒子であり、電子顕微鏡で各粒子を観察したところ、全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が8%であった。この酸化物中のホウ素及びバリウム含有量を測定したところ、それぞれ5ppm以下であった。
【0043】
この酸化物粒子を20mg/cm2の割合でガラス基板に塗布したところ、図8の写真に見られるような均一な塗布膜が得られた。この酸化物粒子の発光スペクトルを147nmの励起光源で測定したところ、約612nmに強い発光ピークを持つ蛍光スペクトルが得られた。
【0044】
[比較例1]
酸化イットリウムと酸化ユーロピウムの重量比で94:6の組成の平均粒子径約1μmのシュウ酸塩沈殿を焼成して得られる不定形イットリウムユーロピウム共沈酸化物粒子を合成した。
【0045】
この共沈酸化物粒子を電気炉中、大気雰囲気で1400℃で5時間熱処理して、赤色発光団を得た。得られた酸化物粒子を電子顕微鏡で観察すると、形状の一定しない大きさの不揃いな粒子であった。
【0046】
この酸化物粒子を30mg/cm2の割合でガラス基板に塗布したところ、均一な塗布膜が得られた。この酸化物の発光スペクトルを147nmの励起光源で測定したところ、約612nmの発光ピーク強度は実施例1に比較して約95%の相対発光強度しかなかった。
【0047】
[比較例2]
酸化イットリウムと酸化ガドリニウムと酸化ユーロピウムの重量比で40:54:6の組成の平均粒子径約1μmのシュウ酸塩沈殿を焼成して得られる不定形イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物粒子を合成した。
【0048】
上記酸化物にフラックス成分としてホウ酸0.1重量%、塩化バリウム1重量%、塩化アンモニウム1重量%を添加し、1200℃で5時間焼成した。冷却した後、水洗し、酸化物粒子を得た。得られた酸化物粒子を電子顕微鏡で観察すると、形状の一定しない大きさの不揃いな粒子であった。この酸化物中のホウ素及びバリウム含有量を測定したところ、それぞれ約20ppm及び約100ppmであった。
【0049】
この酸化物粒子を30mg/cm2の割合でガラス基板に塗布したところ、均一な塗布膜が得られた。この酸化物の発光スペクトルを147nmの励起光源で測定したところ、約612nmの発光ピーク強度は実施例2に比較して約97%の相対発光強度しかなかった。
【0050】
[実施例3]
酸化イットリウムと酸化ガドリニウムと酸化ユーロピウムの重量比で6:91:3の組成の粒子直径が約1.0μmの均一粒径球状単分散イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物粒子を実施例1の方法に準じて合成した。得られた酸化物粒子を電子顕微鏡で観察すると、粒径が約1μmの球状に近い多面体の単分散粒子で、全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が約8%であった。この酸化物のホウ素及びバリウム含有量を測定したところ、それぞれ5ppm以下であった。
【0051】
この酸化物粒子を20mg/cm2の割合でガラス基板に塗布したところ、均一な塗布膜が得られた。この酸化物の発光スペクトルをX線の励起光源で測定したところ、約612nmに強い発光ピークを持つ蛍光スペクトルが得られた。この酸化物はX線を利用した医療用診断用フィルムや医療診断システム用赤色発光団として良好なものであった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、ディスプレイやX線を用いた医療診断装置などに有用な小粒子、均一粒径の希土類元素酸化物が簡便な工程でかつ経済的に製造でき、産業上その利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)はそれぞれ球状単分散粒子であるイットリウムユーロピウム共沈酸化物の顕微鏡写真である。
【図2】同共沈酸化物を1100℃で熱処理することにより得られたイットリウムユーロピウム酸化物の顕微鏡写真である。
【図3】同共沈酸化物を1200℃で熱処理することにより得られたイットリウムユーロピウム酸化物の顕微鏡写真である。
【図4】同共沈酸化物を1400℃で熱処理することにより得られたイットリウムユーロピウム酸化物の顕微鏡写真である。
【図5】同共沈酸化物を1650℃で熱処理することにより得られたイットリウムユーロピウム酸化物の顕微鏡写真である。
【図6】同共沈酸化物を1850℃で熱処理することにより得られたイットリウムユーロピウム酸化物の顕微鏡写真である。
【図7】同共沈酸化物を1400℃で熱処理することにより得られたイットリウムユーロピウム酸化物の粒度分布を示すグラフである。
【図8】基板上に酸化物粒子を塗布した状態を示す顕微鏡写真である。
【図9】イットリウムユーロピウム酸化物における147nmの励起光源測定による発光ピークを示すグラフである。

Claims (2)

  1. イットリウムユーロピウムの塩基性炭酸塩を600〜1500℃で焼成して、粒子径が0.5μm以上2μm以下で、電子顕微鏡で各粒子を観察したときに全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が10%未満である均一粒径の球状イットリウムユーロピウム共沈酸化物を得た後、更にこのイットリウムユーロピウム共沈酸化物を1100℃以上1800℃以下に加熱することを特徴とする均一粒径球状イットリウムユーロピウム共沈酸化物と同一粒子径であるイットリウムユーロピウム酸化物の製造方法。
  2. イットリウムガドリニウムユーロピウムの塩基性炭酸塩を600〜1500℃で焼成して、粒子径が0.5μm以上2μm以下で、電子顕微鏡で各粒子を観察したときに全体の90%以上の粒子で径の大きさの差が10%未満である均一粒径の球状イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物を得た後、更にこのイットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物を1100℃以上1800℃以下に加熱することを特徴とする均一粒径球状イットリウムガドリニウムユーロピウム共沈酸化物と同一粒子径であるイットリウムガドリニウムユーロピウム酸化物の製造方法。
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