JP3565472B2 - イットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の製造方法及びそれにより得られるイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
近年、ディスプレーはハイビジョンテレビやプラズマディスプレーなどのより高細精化が指向されているが、それに伴い使用する蛍光体についても従来のものより小粒子化が望まれている。また、小粒子化と共に、粒度分布のシャープなことや、単分散性もこれらの蛍光体にとって重要な要素である。
本発明は、赤色蛍光体の原料として有用な、小粒子で粒度分布がシャープで単分散した球状のイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の製造方法及びそれにより得られるイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体は希土類金属化合物の主要な用途の一つであるが、従来、蛍光体の原料である希土類元素の共沈酸化物を製造する方法としては、希土類元素を含有する溶液に蓚酸や炭酸塩などの沈殿剤を添加して希土類元素の蓚酸塩や炭酸塩を作り、これを焼成することで特定の組成の酸化物粒子を得る方法が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記した従来の方法では、サブミクロンサイズの酸化物粒子を得ることは難しく、粒子形状も一定していないのが普通で、粒度分布の範囲が1μm以下のものを得ることは難しい。
本発明は、希土類元素の共沈酸化物のうちでディスプレー用蛍光体原料として有用な、小粒子で粒度分布がシャープで単分散した球状のイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の製造方法及びそれにより得られるイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、予め80℃以上沸点以下に加熱した全希土類元素濃度が0.02〜0.08モル/リットルであるイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの鉱酸塩水溶液に80℃以上沸点以下の温度を維持しながら尿素を添加してイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの塩基性炭酸塩を析出させ、得られた沈殿を固液分離し、660〜1300℃で焼成して平均粒径D50が0.2〜1.0μmの微粒子を得ることを特徴とするイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の製造方法、並びに前記製造方法で得られる組成式(YaGdbEuc)2O3(ここでa、b、cは原子比で、0.01≦a≦0.98、0.01≦b≦0.98、0.01≦c≦0.10で、かつa+b+c=1.00)を有するイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
イットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの鉱酸塩水溶液を80℃以上沸点以下に加熱する。この水溶液の温度が80℃未満にならないように尿素を加える。この時尿素の溶解熱によって液温が低下するが、液温が80℃未満まで低下すると尿素の加水分解速度が極端に遅くなるため析出反応初期の粒子の核発生が十分起こらなくなり、粒子同士が凝集して単分散粒子が得られなくなってしまう。さらに80℃以上の温度で加熱を続ける。加熱により不溶性で球状の単分散したイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの塩基性炭酸塩を析出させることができる。単分散した球状の酸化物粒子を得るにはこの時点で単分散した球状の塩基性炭酸塩を得ていることが重要である。
こうして得られた単分散した球状のイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの塩基性炭酸塩を固液分離し、空気中もしくは酸化性雰囲気中で焼成することで、イットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子を得ることができる。
【0006】
析出反応条件をさらに詳しく説明する。
水溶性希土類元素鉱酸塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等が用いられるが、最終製品に不純物根を残さないためには硝酸塩が好ましい。
イットリウム、ガドリニウム、及びユーロピウムを合わせた全希土類元素濃度は0.02〜0.08モル/リットルが良く、0.02モル/リットル未満では生産性が劣り、0.08モル/リットルを超えると不溶性塩であるイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの塩基性炭酸塩同士の凝集が起こり、単分散した球状粒子を得ることが困難になる。
また、イットリウム、ガドリニウム及びユーロピウムの濃度の比率は、イットリウムとガドリニウムに関しては全希土類元素濃度の1〜98原子%のどの値にしても良いが、ユーロピウムについては、濃度が高くても低くても生成するイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の蛍光強度が落ちるため1〜10原子%、好ましくは3〜8原子%が良い。
【0007】
尿素の添加量は全希土類元素濃度の3〜100倍当量が良く、3倍当量未満では不溶性の塩基性炭酸塩の析出に時間がかかるため経済性が悪く、100倍当量を超えると尿素の製造コストに占める比率が上がるためやはり経済性が悪く好ましくない。ただし、これ以外の尿素濃度ではイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの塩基性炭酸塩の単分散球状粒子が得られないというわけではない。
また、尿素の添加量、加熱温度によって、生じる塩基性炭酸塩の大きさ、ひいてはイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の大きさをコントロールすることができ、尿素の添加量を少なくするとより大きな粒子が得られ、加熱温度を低くするとより大きな粒子が得られる。
尚、塩基性炭酸塩の析出時に、粒子の分散性を上げる等の目的のために水溶性の有機高分子を添加することもある。
【0008】
塩基性炭酸塩の焼成温度は660〜1300℃が良く、好ましくは700〜1000℃である。660℃未満の焼成温度では生成するイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子中の炭素の含有率が多くなり、1300℃を超えるとイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の焼結が始まり、単分散した球状粒子ではなくなってしまう。
【0009】
得られたイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子は組成式(Ya Gdb Euc )2 O3 有し、a、b、cはそれぞれ原子比で、0.01≦a≦0.98、0.01≦b≦0.98、0.01≦c≦0.10、かつa+b+c=1.00である。
【0010】
そして、得られたイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子を電子顕微鏡で観察したところ、粒子の90vol %以上が球状粒子であった。
また、この球状粒子100個を無作為に選択して、電子顕微鏡写真に投影した投影図の長径をL1、短径をL2として式(1)より偏径指数Sを計算すると、平均値が0.1以下という円形に近い値を示した。
S=2(L1−L2)/(L1+L2) … 式(1)
更に、平均粒径D50は0.2〜1.0μm、粒度分布の範囲W(D90とD10の差と規定する)は1μm以下と非常に狭い範囲を示した。
上記のように、本発明により得られる粒子はその90vol %以上がほぼ完全な球状の小粒子で粒度分布がシャープであり、形状と大きさが揃っているため分散性に優れ、蛍光体の原料として非常に有用である。
【0011】
【実施例】
以下、実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
(物性測定方法)
(1)希土類元素の塩基性炭酸塩及び希土類元素酸化物の分析:
X線回折法及びICP発光分光分析法によって行った。
(2)粒子の偏径指数S:
球状粒子100個を無作為に選択して、電子顕微鏡写真に投影した該粒子の投影図から長径L1と短径L2を測定し、式(1)より計算した。
(3)平均粒径D50及び粒度分布範囲W(D90とD10の差):
レーザー光の散乱のドップラー効果を測定することで粒子の大きさを測定する粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA:マイクロトラック社製商品名)によって測定した。
【0012】
(実施例)
純水中に硝酸イットリウムの濃度を0.038モル/リットル、硝酸ガドリニウムの濃度を0.009モル/リットル、硝酸ユーロピウムの濃度を0.003モル/リットルとし、全希土類元素濃度を0.05モル/リットルに調製した反応溶液1000リットルを95℃に加熱した。この反応溶液に尿素を48kg加え、攪拌して溶解した。尿素の溶解によって溶液の温度が約90℃に低下したが、約5分で95℃に回復した。さらに反応溶液を97℃で60分間保持した後、生じた沈殿をブフナー漏斗で濾別した。得られたケーキを石英容器に入れ、800℃で4時間焼成した後放冷したところ約6.3kgの粉末が得られた。
得られた粉末を分析したところ組成式(Y0.76Gd0.18Eu0.06)2 O3 で示される酸化イットリウムと酸化ガドリニウムと酸化ユーロピウムの共沈酸化物であった。
このイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウム共沈酸化物を電子顕微鏡で観察したところ、粒径が約0.5μm程度で、単分散した球状粒子であり、粒子の90vol %以上が球状であった(図1参照)。
また、偏径指数Sの平均値は約0.08で完全な球に近かった。
更に、このイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の粒度分布を測定したところ、平均粒径D50は約0.54μm、粒度分布の範囲Wは0.42μmと1μm以下の非常にシャープな粒度分布が得られた(図2参照)。
【0013】
(比較例)
純水中に硝酸イットリウムの濃度を0.038モル/リットル、硝酸ガドリニウムの濃度を0.009モル/リットル、硝酸ユーロピウムの濃度を0.003モル/リットルとし、全希土類元素濃度を0.05モル/リットルに調製した約20℃の反応溶液1000リットルに尿素を48kg加え、攪拌して溶解した。その後反応溶液を97℃まで加熱し、さらに97℃で60分間保持した後生じた沈殿をブフナー漏斗で濾別した。得られたケーキを石英容器に入れ、800℃で4時間焼成した後放冷したところ約6.3kgの粉末が得られた。
得られた粉末を分析したところ組成式(Y0.76Gd0.18Eu0.06)2 O3 で示される酸化イットリウムと酸化ガドリニウムと酸化ユーロピウムの共沈酸化物であった。
このイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウム共沈酸化物を電子顕微鏡で観察したところ一部球状粒子も観察されたが、球状粒子が凝集したような不定形で粒径が1μm以上の粒子が多く、偏径指数を測定しようとしたが、凝集粒子のため測定できなかった(図3参照)。
更に、このイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈粒子の粒度分布を測定したところ平均粒径D50は約1.57μmで、粒度分布の範囲Wは1.88μmと1μm以上とかなり大きな値となり、非常にブロードな粒度分布が得られた(図4参照)。
【0014】
【発明の効果】
蛍光体の原料として有用なイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子が簡便な工程でかつ経済的に製造でき、産業上その利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明のイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の粒度分布を示したグラフである。
【図3】比較例のイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈粒子の電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例のイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈粒子の粒度分布を示したグラフである。
Claims (5)
- 予め80℃以上沸点以下に加熱した全希土類元素濃度が0.02〜0.08モル/リットルであるイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの鉱酸塩水溶液に80℃以上沸点以下の温度を維持しながら尿素を添加してイットリウム/ガドリニウム/ユーロピウムの塩基性炭酸塩を析出させ、得られた沈殿を固液分離し、660〜1300℃で焼成して平均粒径D50が0.2〜1.0μmの微粒子を得ることを特徴とするイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法で得られる、組成式(Ya GdbEuc)2O3(ここでa、b、cは原子比で、0.01≦a≦0.98、0.01≦b≦0.98、0.01≦c≦0.10、かつa+b+c=1.00)を有するイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子。
- 請求項1記載の製造方法で得られる、粒子の90vol%以上が球状であるイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子。
- 請求項1記載の製造方法で得られる、粒度分布の範囲Wが1μm以下であるイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子。
- 請求項1記載の製造方法で得られる、球状粒子100個を無作為に選択したときの偏径指数Sの平均値が0.1以下であるイットリア/ガドリニア/ユーロピア共沈単分散球状粒子。
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