JP3955762B2 - ベルトプライの形成方法、及びその形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れたベルト耐久性を確保しながら、操縦安定性、車両流れ、摩耗性能等のタイヤの運動特性、及びタイヤの振動特性を改善しうるベルトプライの形成方法、及びその形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】
一般に、空気入りタイヤに配されるベルト層aは、図8(A)、(B)に示すように、ベルトコードbをタイヤ周方向に対して例えば10〜40度の角度θで配列したベルトプライa1の複数枚(同図には2枚のものを示す)を、各コードbがプライ間相互で交差するようにコードbの向きを違えて重置することによって形成される。
【0003】
このとき、前記ベルトプライa1として、多数本のベルトコードを引き揃えてなるコード配列体の表裏をトッピングゴムで被覆した巾広帯状のゴム引きシートを、裁断して形成した所謂カットエンドプライが用いられる。
【0004】
しかし、このようなベルトプライa1は、その両側端cに各ベルトコードbが切断されたカットエンド(切断端)が存在するため、タイヤへの拘束力が弱くショルダー部shでの剛性が減じるなど、操縦安定性およびショルダー部shでの摩耗性能が低下するという問題がある。又高速走行時、ショルダー部shがリフィティングしやすくなり、しかもベルトコードbのカットエンドではゴムとの接着力に劣るため、ベルト端剥離が発生しやすく高速耐久性を損ねる傾向にある。又ベルトプライa1では、その周方向端を重ね継ぎして円筒状に連結されるが、この時の重ね継ぎ部が周上に一箇所形成されるため、ユニフォミティーが損なわれ、タイヤの振動特性に悪影響を与える。さらには、最外側のベルトプライa1に配されるベルトコードbの傾斜方向に起因してプライステアーが発生し、車両流れを招くという問題もある。
【0005】
そこで近年、このような種々の問題点を解決するため、図9に例示するように、ベルトコードを引き揃えてゴム引きした巾狭の帯状プライdを、タイヤ周方向に対して傾斜させかつ両側縁で交互にく字状に折返して連続して巻回させることにより、ベルトプライa2を重ね継ぎ部のない円筒状に形成することが、例えば特開2000−198317号公報等に提案されている。
【0006】
しかし、この種のベルトプライa2(便宜上、非カットエンドプライという場合がある)では、帯状プライdが両側縁cで上下に折り重ねて曲げられるため、タイヤの繰り返し変形によってベルトコードが、折返しの部分eで破断損傷しやすくなり、ベルトプライa2自体の耐久性が充分に確保できず、このベルトコードの破断部が起点となってタイヤの耐久性を阻害するという問題がある。
【0007】
本発明は、非カットエンドプライの改良に係わり、前記折返しの部分でのベルトコードの破断損傷を抑制でき、ベルトプライ自体の耐久性を充分に確保しつつ、カットエンドプライが有する問題点、即ち操縦安定性、車両流れ性、耐摩耗性、高速耐久性等のタイヤの運動特性、及びタイヤの振動特性を改善しうるベルトプライの形成方法、及びその形成装置の提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、ゴム引きされた金属製のベルトコードを、ドラム上で、タイヤ周方向に対して傾斜させかつ両側縁で交互にく字状に折返して連続して巻回させ円筒状のベルトプライを形成するベルトプライの形成方法であって、
前記巻回に先立ち、型付け手段を用いて前記ベルトコードを円弧状に折り曲げて型付けすることにより前記ベルトコードの前記折返しの部分を形成したことを特徴としている。
【0009】
又請求項2の発明は、前記請求項1のベルトプライの形成方法に用いるベルトプライの形成装置であって、
前記型付け手段は、
固定の一対のガイドローラからなり該ガイドローラ間を前記ベルトコードが通ることによりベルトコードをタイヤ軸方向に位置決めする固定案内具、
及び一対の移動ローラを有し、該移動ローラ間を通過するベルトコードを前記ベルトプライの両側縁間のストロークで交互に往復移動させしかも前記一対の移動ローラを往復移動方向に並べて配するコード往復移動部と、前記ストロークの両端に位置し、近づくベルトコードを、前記ストロークの中心線側の前記移動ローラに押し付けることによりベルトコードを円弧状に折り曲げて型付けする型付け片とからなる型付け具からなることを特徴としている。
【0010】
又請求項3の発明は、ベルトプライの形成装置であって、前記型付け片の先端部分は、ストロークの両端に移動した時の中心線Co側の移動ローラの軸心よりもさらに中心線Co側に位置することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、本願第1発明の形成方法によって形成されたベルトプライを用いた空気入りタイヤが乗用車用タイヤである場合を示す子午断面図である。
【0012】
図1において、空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6の外側に配されるベルト層7とを具えている。
【0013】
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して例えば75゜〜90゜の角度で配列したラジアル構造の1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aから構成される。カーカスコードとしては、例えばナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが好適に使用できるが、要求により、スチール等の金属コードも採用しうる。
【0014】
又前記カーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間を跨るプライ本体部6aの両端に、前記ビードコア5の廻りで内側から外側に折り返される折返し部6bを一連に具え、このプライ本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に先細状にのびるビード補強用のビードエーペックスゴム8が配される。
【0015】
次に、前記ベルト層7は、ベルトコード10が、ベルト層7の両側縁Eで交互に折返される非カットエンドのベルトプライ9によって形成される。
【0016】
このベルトプライ9は、本実施形態では、図2に平面に展開して略示するように、タイヤ周方向に対して例えば10〜40度のコード角度αで傾斜させた金属製の1本のベルトコード10を、前記両側縁Eで交互にく字状に折返しながら周方向に連続して巻回することにより形成される。
【0017】
このとき、前記ベルトコード10の折返しの部分Qでは、該ベルトコード10は、同一面内で円弧状に折り曲げられて折返されることが必要であり、これによって、該折返しの部分Qでのベルトコード10の破断損傷が防止され、ベルトプライ9自体の耐久性が向上される。
【0018】
そのためには、前記折返しの部分Qでのベルトコード10の曲率半径Rを0.5mm以上、好ましくは2.0mm以上とするのが望ましい。なお、前記曲率半径Rが10.0mmを越えて過大となると、ベルト端近傍において、ベルトコード間の交差角度が浅くなるためベルト剛性が減少し、非カットエンドプライの利点である操縦安定性、耐摩耗性等の向上効果が充分に発揮されない傾向となる。
【0019】
又前記ベルトコード10は、その折返しの部分Qが、タイヤを一周する毎に、その前又は後に周回したベルトコード10の折返しの部分Qに対して、所定のピッチ長さLpで周方向に順次位置ずれするように巻回される。従って、ベルトコード10の一方の側縁Eでの折返し回数Nと前記ピッチ長さLpとの積N×Lpを、ベルトプライ9の円周長さLとすることにより、ベルトコード10の始端と終端とが略一致する均一なコード間隔のベルトプライ9が形成できる。
【0020】
このような本実施形態のベルトプライ9は、従来的な非カットエンドプライと同様、操縦安定性、車両流れ性、耐摩耗性、高速耐久性等のタイヤの運動特性、及びタイヤの振動特性に対して優れた性能を発揮できる。特に車両流れに対しては、図3の如く、ベルトコード10が周方向に対して右上がりに傾斜する領域Y1と、その反対の左上がりに傾斜する領域Y2とが交互に現れるため、コード配列に起因するプライステアーが発生せず、車両流れをいっそう抑制しうる。
【0021】
しかも前記ベルトプライ9は、前記折返しの部分Qでのベルトコード10の破断損傷を抑制しうるため、非カットエンドプライが有していたベルトプライ自体の耐久性の低下を充分に改善することが可能となる。
【0022】
又本例では、ベルト層7を一つのベルトプライ9によって構成した場合を例示しているが、要求によりこのベルトプライ9の半径方向外側或いは内側に、従来的なカットエンドの他のベルトプライを設けることもでき、さらにはベルト層7の外側に、バンドコードをタイヤ周方向と略平行に螺旋巻きしたバンド層を設けても良い。
【0023】
次に、前記ベルトプライ9は、図4に概念的に示すように、ゴム引きされた金属製のベルトコード10を、ドラム11上で、タイヤ周方向に対してコード角度αで傾斜させかつ前記両側縁Eで交互にく字状に折返しながら連続して巻回させることにより形成する。
【0024】
しかしこのとき、前記巻回に先立ち、型付け手段20を用いて前記ベルトコード10を円弧状に折り曲げて型付けすることにより前記ベルトコード10の折返しの部分Qを形成することが重要である。これにより、前記両側縁Eにおいて、ベルトコード10が所定の曲率半径Rを有して円弧状に折り返される前記ベルトプライ9を、高品質でかつ能率良く形成できる。
【0025】
なお図5は、ベルトプライの形成装置30を示す略図であって、形成装置30は、ボビン12から巻き戻されかつトッピング装置13によってトッピングゴムがゴム引きされるベルトコード10を、巻回に先立って型付けする前記型付け手段20と、この型付けされたベルトコード10をその周面で巻回する前記ドラム11とを含んで形成される。なおトッピング装置13及びドラム11としては、従来的な周知構造のものが使用できる。
【0026】
又前記型付け手段20は、図6、7に略示するように、固定の一対のガイドローラ21A、21Aからなりこのガイドローラ21A、21A間を前記ベルトコード10が通ることによりベルトコード10をタイヤ軸方向に位置決めする固定案内具21、及びこの固定案内具21の下流側に配される型付け具22を具える。
【0027】
なお前記固定案内具21として、本例では、ガイドローラ21A、21Aが、前記側縁E、E間の中心線Coを中心とした対称位置で向かい合いフレームFに回転自在に枢着された場合を例示しており、該ガイドローラ21Aの間には、ゴム引きされたベルトコード10が挿通しうる小間隙が形成される。
【0028】
又前記型付け具22は、一対の移動ローラ23A、23Aを有しこの移動ローラ23A、23A間を通過するベルトコード10を前記両側縁E、E間のストロークKで交互に往復移動させるコード往復移動部23と、前記ストロークKの両端に位置し、近づくベルトコード10を、離れた側(即ち中心線Co側)の移動ローラ23Aに押し付けることによりベルトコード10を円弧状に折り曲げて型付けする型付け片24とを具えて形成される。
【0029】
前記コード往復移動部23は、本例では、タイヤ軸方向に往復移動可能な移動台25に、前記移動ローラ23A、23Aを、ベルトコード10が挿通しうる小間隙を有して往復移動方向(即ちタイヤ軸方向)に並べて枢着している。ここで、前記移動ローラ23Aの半径rは、本例では、前記曲率半径Rから、ベルトコード10にゴム引きされるトッピングゴムの被覆厚さtを減じた値R−tと略等しく設定される。
【0030】
又前記移動台25は、ベルトコード10が前記コード角度αとなるように、ドラム11の回転速度と同期した所定の移動速度を有して駆動手段26によって往復移動する。この駆動手段26として、本例では、ボールネジ機構を用いたものを例示しており、図中の符号27は前記移動台25のネジ孔に螺合するネジ軸、符号28は前記ネジ軸27を駆動する駆動モータ、符号29は移動台25を案内するガイドを示している。なお駆動手段26として他に、シリンダを用いることもでき、さらにはリンク機構、ラック・ピニオン機構など周知の種々の構造のものも好適に採用できる。
【0031】
又前記型付け片24は、ベルトコード10の供給方向上流側、下流側に配される型付け片部24A、24A間に、前記ストロークKの両端に移動した時の移動ローラ23A、23Aが入り込む間隙部Hを具える。そして、型付け片部24Aの各先端部分Aeが、ストロークKの両端に近づくベルトコード10と当接し、前記先端部分Ae、Ae間で、このベルトコード10を前記中心線Co側の移動ローラ23A’に押し付けることにより、前記ベルトコード10を移動ローラ23A’の周面に沿って円弧状に折り曲げて型付けしうる。
【0032】
本例では、前記型付け片24が、型付け片部24A、24A間を底部24Bで継いだU字状のものを例示しており、U字内の凹部である間隙部Hに、移動ローラ23A、23Aが入り込む。なおベルトコード10の型付けを確実に行うために、型付け片部24Aの前記先端部分Aeは、ストロークKの両端に移動した時の中心線Co側の移動ローラ23A’の軸心よりもさらに中心線Co側に延在するのが好ましい。
【0033】
なお前記型付け具22によって型付けされたベルトコード10は、押えローラ15により、押付けられ前記ドラム11に貼り着される。
【0034】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0035】
【発明の効果】
請求項1、2の発明は、叙上の如く構成しているため、ベルト層の両側縁において、ベルトコードが所定の曲率半径を有して円弧状に折り返される非カットエンドのベルトプライを、高品質でかつ能率良く形成できる。
【0036】
又この方法、装置を用いた空気入りタイヤは、円弧状の型付けにより、折返しの部分でのベルトコードの破断損傷が抑制され、ベルトプライ自体の耐久性が充分に確保される。又操縦安定性、車両流れ性、耐摩耗性、高速耐久性等のタイヤの運動特性、及びタイヤの振動特性等に対しても、従来的な非カットエンドプライと同様に、優れた性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形成方法によって形成されたベルトプライを用いた空気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。
【図2】そのベルトプライを平面に展開して示す線図である。
【図3】ベルトプライのコードの配列状態を略示する線図である。
【図4】ベルトプライの形成方法を説明する斜視図である。
【図5】ベルトプライの形成装置を略示する線図である。
【図6】それに用いる型付け手段を略示する平面図である。
【図7】型付け手段を略示する正面図である。
【図8】(A)、(B)は、従来的なカットエンドのベルトプライを説明する線図である。
【図9】従来的な非カットエンドのベルトプライを説明する線図である。
【符号の説明】
1 空気入りタイヤ。
9 ベルトプライ
10 ベルトコード
11 ドラム
20 型付け手段
21 固定案内具
21A ガイドローラ
22 型付け具
23 コード往復移動部
23A 移動ローラ
24 型付け片
30 ベルトプライの形成装置
E 側縁
K ストローク
Q 折返しの部分
Claims (3)
- ゴム引きされた金属製のベルトコードを、ドラム上で、タイヤ周方向に対して傾斜させかつ両側縁で交互にく字状に折返して連続して巻回させ円筒状のベルトプライを形成するベルトプライの形成方法であって、
前記巻回に先立ち、型付け手段を用いて前記ベルトコードを円弧状に折り曲げて型付けすることにより前記ベルトコードの前記折返しの部分を形成したことを特徴とするベルトプライの形成方法。 - 請求項1のベルトプライの形成方法に用いるベルトプライの形成装置であって、
前記型付け手段は、
固定の一対のガイドローラからなり該ガイドローラ間を前記ベルトコードが通ることによりベルトコードをタイヤ軸方向に位置決めする固定案内具、
及び一対の移動ローラを有し、該移動ローラ間を通過するベルトコードを前記ベルトプライの両側縁間のストロークで交互に往復移動させしかも前記一対の移動ローラを往復移動方向に並べて配するコード往復移動部と、前記ストロークの両端に位置し、近づくベルトコードを、前記ストロークの中心線側の前記移動ローラに押し付けることによりベルトコードを円弧状に折り曲げて型付けする型付け片とからなる型付け具からなることを特徴とするベルトプライの形成装置。 - 前記型付け片の先端部分は、ストロークの両端に移動した時の中心線Co側の移動ローラの軸心よりもさらに中心線Co側に位置することを特徴とする請求項2記載のベルトプライの形成装置。
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