JP3955735B2 - 芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩及びその製造法に関する。さらに詳しくは、染料、高分子重合体等の製造中間体あるいは高分子重合体の改質剤として有用である新規な芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記式(A)であらわされる芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩は染料、高分子重合体等の製造中間体及び高分子重合体改質剤として有用であるにもかかわらずこれまでにその合成が報告されていなかった。
【0003】
一般に、芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩の製造方法としては次のような方法が考えられる。すなわち、1)芳香族ジカルボン酸スルホン酸塩とジアミン類を直接アミド化する方法、2)芳香族ジカルボン酸クロライドスルホン酸塩とジアミン類を塩基性化合物および溶媒の存在下で反応させる方法、3)芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステルスルホン酸塩とアミンのエステル交換反応による方法、4)芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドをスルホン酸塩化する方法等がある。
【0004】
以上の方法の中で、1)の方法は安価な原料で芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩を製造できる可能性があるが、原料となる芳香族ジカルボン酸スルホン酸塩は、反応性、溶解性が対応する芳香族ジカルボン酸より低いために反応温度を290℃以上にする必要があり、ジアミン類の常圧下での沸点を超えてしまう。従って高圧に耐える反応容器が必要となり、工業的に連続的に大量に製造するには困難であった。また高温で反応させると分解反応などの副反応を起こしやすい。
【0005】
2)の方法では芳香族ジカルボン酸クロライドスルホン酸塩を使用するので、原料となる芳香族ジカルボン酸クロライドスルホン酸塩の製造が困難である。該芳香族ジカルボン酸クロライドスルホン酸塩が得られたとしても、それに続く反応で反応溶媒を用いることからコスト的にも不利となる。
【0006】
3)の方法では該ジアルキルエステルスルホン酸塩は比較的安価で使用可能であるが、アミンとの反応が遅いため1)の方法と同様に目的物を高収率、高純度で得ることはできない。
【0007】
さらに4)の方法では、ジカルボン酸基を有する芳香族基よりもアミノ基のほうがスルホン酸基と反応しやすく目的とする生成物は得られない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる現状に挑み、芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩の製造方法について鋭意検討した結果、特定の前駆体とジアミンとの反応により、目的とする化合物を高収率で製造できることを見出し本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、上記課題を解決するものであり、以下のとおりである。
1.下記式(A)
M(n)Xn (A)
[上記式においてM(n)はn価の金属イオン、4級アンモニウムイオンまたは4級ホスホニウムイオンからなる群より選ばれる1種のイオン種をあらわし、Xは下記式(B)
【0010】
【化4】
【0011】
[上記式においてAr1はベンゼン、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ナフタレンのすくなくとも1種類から誘導される3価の芳香族基であり、Ar2はベンゼン、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ジフェニルエーテルのすくなくとも1種類から誘導される2価の芳香族基をあらわす。]
をあらわす。]
で示される芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩。
2.該M(n) が1価の金属イオン、4級アンモニウムイオンまたは4級ホスホニウムイオンである1.記載の芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩。
3.該M(n) がアルカリ金属イオンである2.記載の芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩。
4.下記式(C)
M(n) Yn (C)
[上記式においてM(n) は上記式(A)の定義と同じであり、Yは下記式(D)
【0012】
【化5】
【0013】
[上記式においてAr1は上記式(B)の定義と同じであり、R1は炭素数6〜15の芳香族基をあらわす。]
をあらわす。]
であらわされる芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルスルホン酸塩1当量に対し下記式(E)
【0014】
【化6】
【0015】
[上記式においてAr2は上記式(B)の定義と同じである。]
であらわされる芳香族ジアミン2モル以上を仕込み、反応を行うことを特徴とする上記一般式(A)で示されるジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩の製造法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は1.下記式(A)
M(n)Xn (A)
[上記式においてM(n)はn価の金属イオン、4級アンモニウムイオンまたは4級ホスホニウムイオンからなる群より選ばれる1種のイオン種をあらわし、Xは下記式(B)
【0017】
【化7】
【0018】
[上記式においてAr1はベンゼン、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ナフタレンのすくなくとも1種類から誘導される3価の芳香族基であり、Ar2はベンゼン、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ジフェニルエーテルのすくなくとも1種類から誘導される2価の芳香族基をあらわす。]
をあらわす。]
であらわされる芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩およびその製造方法である。
【0019】
上記式(B)中のAr1はベンゼン、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ナフタレンのすくなくとも1種類から誘導される3価の芳香族基であり、これらの中でも好ましくはベンゼン、ナフタレン、ビフェニルから誘導されるものである。またAr2はベンゼン、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ジフェニルエーテルのすくなくとも1種類から誘導される2価の芳香族基であり、これらの中で特に好ましいのはベンゼン、ジフェニルエーテルのすくなくとも1種類から誘導されるものである。
【0020】
またM(n)はn価の金属イオン、アンモニウムイオン、またはホスホニウムイオンをあらわす。具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、鉄、ニッケル、クロム、銅等の金属イオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等の4級アンモニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン等の4級ホスホニウムイオンを例示することが出来る。M(n)が2価の金属イオンの時には、金属イオン1分子に対して上記式(B)であらわされるアニオン種が2分子結合している。この場合には該芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩1モルが1/2当量に相当する。n>3の時も同様である。これらのなかで、M(n)は好ましくは1価の金属イオン、アンモニウムイオン、またはホスホニウムイオンであり、より好ましくはアルカリ金属イオンが挙げられる。これらのうちリチウム、ナトリウム、カリウムのイオンがもっとも好ましい。式(A)に示される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルスルホン酸塩の具体例として5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジフェニル、5−カリウムスルホイソフタル酸ジフェニル等を挙げることが出来る。
【0021】
本発明で使用する下記式(C)
M(n)Yn (C)
[上記式においてM(n)は上記式(A)の定義と同じであり、Yは下記式(D)
【0022】
【化8】
【0023】
[上記式においてAr1は上記式(B)の定義と同じであり、R1は炭素数6〜15の芳香族基をあらわす。]
をあらわす。]
で示される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルスルホン酸塩のAr1とM(n)については上記式(A)および(B)と同じものをあらわしている。置換基R1は炭素数6〜15の芳香族基であり、具体的にはフェニル、ナフチル基が望ましい。
【0024】
これらの芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルスルホン酸塩の製造法は特に制限はないが例えば特開平7−89928号公報に記載される、エステル交換触媒の存在下、芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステルスルホン酸塩1当量と、それに対し2から3倍当量のジアリールカーボネートとを250〜320℃で加熱溶融させるという製造方法が最も好ましく利用できる。
【0025】
また下記式(E)
【0026】
【化9】
【0027】
[上記式においてAr2は上記式(B)の定義と同じである。]
で示される芳香族ジアミンのAr 2は上記式(B)と同じものをあらわしている。これらのうち、Ar 2 がベンゼンであるm−フェニレンジアミンが好ましいがこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明において上記式(C)で示される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルスルホン酸塩1当量に対し上記式(E)で示されるジアミンは2モル以上の過剰量を仕込むのが好ましい。
【0029】
本発明では、上記式(C)で示される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルスルホン酸塩と上記式(E)で示される芳香族ジアミンとを反応させるのであるが、両方の化合物を加熱溶融させて反応させることが好ましい。反応の際、必要に応じて反応条件で1-メチル2-ピロリドン、1-シクロヘキシル2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジフェニルスルホン等の安定な溶媒を用いても良い。芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルスルホン酸塩は、反応に先立って、乾燥しておくことが望ましい。これは、スルホン酸塩が吸湿しやすいため、吸湿した水分によってフェニルエステルの分解を防ぐためである。また、反応時には酸化防止剤等の各種添加剤を併用することも好ましい。
【0030】
これらの化合物を加熱溶融する温度としては、200℃から300℃が好ましく、240℃から280℃がさらに好ましい。200℃より温度が低いと反応が進まず、300℃より温度が高いと反応させるジアミンの沸点以上になる、あるいは分解などの副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。
【0031】
反応は加圧下、常圧下、減圧下いずれでも行うことが出来るが、通常は常圧下または減圧下で行う。好ましくは、精製するモノヒドロキシ化合物を留去しつつ、常圧下で反応を行い、ほぼ反応が終了した時点で減圧下とし、未反応のジアミンを留去するのが好ましい。
【0032】
得られた生成物はそのままでも使用できるが、精製することがより好ましい。精製方法としては、特に制限はなく従来の方法が使用できるが、再沈殿か再結晶が好ましい。再沈殿溶媒としてジクロロメタン、クロロホルム等が有効であるがこれに限定されるものではない。再沈殿の方法の一例としては得られた粗生成物をメタノール,NMP等に溶解させその溶液をジクロロメタン、クロロホルム等の貧溶媒に加えるというものである。
【0033】
【発明の効果】
本発明の芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩は縮合系高分子の単量体、添加剤として、また合成中間体として有用である。例えば縮合系高分子成型物の染色性改善などに有効である。本発明により、これまでにその有効性が明らかでありながら報告例のなかった芳香族ジカルボン酸ジアリールジアミドスルホン酸塩を、安価な原料を使用し、通常のエステル交換反応装置による製造を可能にしたことからその工業的意義はきわめて大きい。
【0034】
【実施例】
以下実施例をあげて本発明を詳述するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジフェニル2.1重量部、m-フェニレンジアミン2.16重量部を攪拌装置及び流出系を有する反応器に仕込み、容器内を窒素置換した後常圧下280℃まで加熱し、4時間反応させた。その後6.67kPa(50mmHg)まで減圧し未反応のm-フェニレンジアミン及びフェノールを留去させ2.19重量部の粗生成物を得た。得られた生成物を200重量部のメタノールに溶解させ2000重量部のクロロホルムにて再沈殿させ精製した。得られた化合物の収量は1.65重量部、収率74%、融点は366〜368℃であり、1H−NMR、IRスペクトルをそれぞれ図に示す。
【0036】
以上より、本発明が芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩の製造には有効な方法であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の生成物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1の生成物のIRスペクトルである。
Claims (4)
- 該M(n)が1価の金属イオン、4級アンモニウムイオンまたは4級ホスホニウムイオンである請求項1記載の芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩。
- 該M(n)がアルカリ金属イオンである請求項2記載の芳香族ジカルボン酸ジアリールアミドスルホン酸塩。
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