JP3953458B2 - インターフェロンβのような分泌タンパク質をコードする遺伝子を使用する治療のための方法および組成物 - Google Patents

インターフェロンβのような分泌タンパク質をコードする遺伝子を使用する治療のための方法および組成物 Download PDF

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Description

(発明の分野)
本発明は、遺伝子治療に関する。より詳細には、本発明は、ヒトおよび動物への、インターフェロンタンパク質のような分泌タンパク質をコードするDNAの送達に関する。
(発明の背景)
インターフェロン(「IFN」ともよばれる)は、種々の生物学的活性を有するタンパク質である。このうちのいくつかは、抗ウイルス、免疫調節性および抗増殖性である。インターフェロンは、比較的低分子で、種特異的な単鎖ポリペプチドであり、ウイルス、ポリペプチド、マイトジェンなどのような種々のインデューサーへの暴露に応答して、哺乳動物細胞によって産生される。インターフェロンは、動物組織および細胞をウイルスの攻撃に対して防御し、かつ重要な宿主防御機構である。ほとんどの場合、インターフェロンは、他の型の組織および細胞よりも、それらが産生された種類の組織および細胞に対して、より良好な防御を提供する。このことは、ヒト由来インターフェロンが、他の種に由来するインターフェロンよりヒト疾患を処置するにおいて、より有効であり得ることを示す。
ヒトインターフェロンのいくつかの異なる型が存在し、一般的には、白血球(インターフェロンアルファ[α])、線維芽細胞(インターフェロンベータ[β])、および免疫(インターフェロンガンマ[γ])および非常に多くのそれらの改変体として分類されている。インターフェロンに関する一般的な議論は、種々のテキストおよび研究論文において見出され得、それらには以下:The Interferon System(W.E.Stewart,II,Springer−Verlag、N.Y.1979);およびInterferon Therapy(World Health Organization Technical Reports Series 676,World Health Organization,Geneva 1982)(これらは、本明細書中において参考として援用される)が含まれる。
インターフェロンは、非常に多くのヒト癌の処置において可能性を有する。なぜなら、これらの分子は、多重レベルで作用する抗癌活性を有するからである。第1に、インターフェロンタンパク質は、ヒト腫瘍細胞の増殖を直接阻害し得る。この抗増殖活性はまた、シスプラチン、5FUおよびタキソールのような認可された種々の化学療法剤を用いて相乗的である。第2に、インターフェロンタンパク質の免疫調節性活性は、抗腫瘍免疫応答の誘導を導き得る。この応答は、NK細胞の活性化、マクロファージ活性の刺激、およびMHCクラスI表面発現の誘導を包含し、これらは、抗腫瘍細胞傷害性Tリンパ球活性の誘導を導く。さらに、いくつかの研究によって、IFN−βタンパク質は、抗脈管形成性活性を有し得ることがさらに示されている。脈管形成、すなわち新たな血管形成は、固形腫瘍の増殖のために重要である。証拠により、IFN−βがbFGFおよびVEGFのような前脈管形成性因子の発現を阻害することによって脈管形成が阻害され得るということが示される。最後に、インターフェロンタンパク質は、組織再構成において重要であるコラゲナーゼおよびエラスターゼのような酵素の発現をもたらすことによって腫瘍侵襲性を阻害し得る。
インターフェロンはまた、2つの異なる機構に基づく抗ウイルス活性を有するようである。例えば、I型インターフェロンタンパク質(αおよびβ)は、ヒトB型肝炎ウイルス(「HBV」)およびC型肝炎ウイルス(「HCV」)の複製を直接阻害するが、これらのウイルスに感染した細胞を攻撃する免疫応答も刺激し得る。
詳細には、そしてその潜在的な治療価値にもかかわらず、インターフェロンタンパク質は、ウイルス性肝炎および固形腫瘍に対して限られた臨床成功しか有していなかった。IFN−αは、HBVおよびHCVの両方の処置のために認可されている;しかし、両方の場合における応答割合は、約20%に過ぎない。インターフェロンタンパク質が、リンパ腫、白血病、黒色腫および腎臓細胞癌のようないくつかの癌の処置のために認可されている一方で、インターフェロンが、固体腫瘍の処置において単独または従来の化学療法剤と組み合わせて使用される臨床治験の大部分は、不成功であった。
インターフェロンを投与する方法は、この重要な治療剤の臨床適用における重要な因子である。静脈内、筋肉内または皮下注射のいずれかによるインターフェロンタンパク質の全身投与は、最も頻繁には、毛様細胞性白血病、後天性免疫不全症候群(AIDS)および関連するカポジ肉腫のような障害の処置においていくらかの成功を伴って使用されてきた。しかし、それらの精製された形態のタンパク質が特に変性しやすいことが公知である。特に、インターフェロンβについては、溶液におけるインターフェロン変性の主要な機構は、凝集および脱アミドである。溶液および他の産物におけるインターフェロン安定性の欠失は、現在までその有用性が限定されていた。さらに、非経口インターフェロンタンパク質投与(筋肉内、皮下または静脈内)後に、インターフェロンタンパク質のクリアランスの速度は、非常に迅速である。従って、今や、非経口タンパク質投与は、その活性部位(固形腫瘍、または肝炎の場合には肝臓)で十分なインターフェロンの局在化を可能にしないかもしれない。患者において非経口に与えられ得るインターフェロンの量は、高インターフェロン用量で観察された副作用によって制限される。より有効な治療が、明らかに必要である。
本願発明は、以下の項を提供する:
項1.インターフェロンβタンパク質のインビボ発現のための細胞系であって、該系は、哺乳動物細胞;および該哺乳動物細胞に含まれるベクターであって、インターフェロンβタンパク質をコードし、その発現を可能にするインターフェロンβポリヌクレオチド配列を有するベクター、
を包含する、細胞系;
項2.前記哺乳動物がヒトである、項1に記載の細胞系;
項3.前記発現ベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターおよびアデノウイルスベクターからなる群より選択されるウイルスベクターを含み、ここで、該アデノウイルスベクターは、それ自体、(a)そのE1遺伝子における欠失を有するアデノウイルスベクター;(b)そのE1遺伝子における欠失およびそのE2a遺伝子における欠失または変異を有するアデノウイルスベクター;(c)そのE1およびE4遺伝子の両方における欠失を有するアデノウイルスベクター、ならびに(d)そのE1、E2、E3およびE4遺伝子の欠失を有するアデノウイルスベクターからなる群より選択されるアデノウイルスベクターである、項1に記載の細胞系;
項4.前記細胞が、複数の細胞の一部分であって、該複数の細胞の数の約10%以下が前記ベクターを含む、項1に記載の細胞系;
項5.前記複数の細胞の数の約3.0%以下が前記ベクターを含む、項4に記載の細胞系;
項6.前記複数の細胞の数の約1.0%以下が前記ベクターを含む、項5に記載の細胞系;
項7.前記複数の細胞の数の約0.3%以下が前記ベクターを含む、項6に記載の細胞系;
項8.前記細胞が癌細胞である、項1〜7に記載の細胞系;
項9.前記癌細胞が肝臓癌細胞である、項8に記載の細胞系;
項10.項1〜8のいずれか1項に記載の細胞系および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物;
項11.遺伝子治療の薬学的調製物を作製するための方法であって、該方法は、(a)該遺伝子治療の薬学的調製物のレシピエント同じ細胞種を含む複数の細胞を形成する工程、(b)該複数の細胞のうち少なくとも1つにインターフェロンβタンパク質をコードするインターフェロンβポリヌクレオチド配列を有するベクターを導入して、インターフェロンβタンパク質を発現させる工程、および(c)薬学的に受容可能なキャリア中に少なくとも1つの細胞を配置する工程、を包含する、方法;
項12.前記少なくとも1つの細胞にベクターを導入する工程が、前記複数の細胞の数の約10%以下にベクターを導入する工程を包含する、項11に記載の方法;
項13.前記ベクターがアデノ随伴ウイルスベクターおよびアデノウイルスベクターからなる群より選択されるウイルスベクターを含む、項10〜12のいずれか1項に記載の方法;
項14.前記アデノウイルスベクターが、(a)そのE1遺伝子における欠失を有するアデノウイルスベクター;(b)そのE1遺伝子における欠失およびそのE2a遺伝子における欠失または変異を有するアデノウイルスベクター;(c)そのE1およびE4遺伝子の両方における欠失を有するアデノウイルスベクター、ならびに(d)そのE1、E2、E3およびE4遺伝子の欠失を有するアデノウイルスベクターからなる群より選択される、項13に記載の方法;
項15.遺伝子治療のための方法であって、該方法が、(a)少なくとも1つの哺乳動物細胞にインターフェロンβタンパク質をコードするインターフェロンβポリヌクレオチド配列を有するベクターを導入して、インターフェロンβタンパク質を発現させる工程、および(b)該少なくとも1つの細胞を該哺乳動物の部位に接触させる工程、を介して、該少なくとも1つの哺乳動物細胞を遺伝的に改変する工程、を包含する、方法;
項16.前記ベクターを導入する工程の前に、前記哺乳動物に由来する前記少なくとも1つの細胞を取り出す工程をさらに包含する、項15に記載の方法;
項17.前記少なくとも1つの細胞を取り出す工程が、複数の細胞を取り出す工程を包含し、そして前記ベクターを導入する工程が該複数の細胞の約10%未満にベクターを導入する工程を包含する、項16に記載の方法;
項18.前記ベクターを導入する工程が、前記少なくとも1つの細胞に該ベクターを直接注入する工程を包含する、項15〜17のいずれか1項に記載の方法;
項19.前記投与する工程が、局所投与、眼内投与、非経口投与、鼻腔内投与、気管内投与、気管支内投与、筋肉内投与、および皮下投与からなる群より選択される経路による投与を包含する、項15〜16のいずれか1項に記載の方法;
項20.前記非経口投与が、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、および皮下投与からなる群より選択される経路を含む、項19に記載の方法;
項21.前記細胞が腫瘍細胞である、項15〜20のいずれか1項に記載の方法;
項22.前記細胞が肝臓細胞である、項21に記載の方法;
項23.前記ベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターおよびアデノウイルスベクターからなる群より選択されるウイルスベクターを含み、ここで、該アデノウイルスベクターは、それ自体、(a)そのE1遺伝子における欠失を有するアデノウイルスベクター;(b)そのE1遺伝子における欠失およびそのE2a遺伝子における欠失または変異を有するアデノウイルスベクター;(c)そのE1およびE4遺伝子の両方における欠失を有するアデノウイルスベクター、および(d)そのE1、E2、E3およびE4遺伝子の欠失を有するアデノウイルスベクターからなる群より選択されるアデノウイルスベクターである、項15〜22のいずれか1項に記載の方法;
項24.前記発現ベクターを導入する工程が、前記少なくとも1つの細胞に該ベクターを直接注入する工程を包含する、項20に記載の方法;
項25.前記導入する工程が、前記インターフェロンの転写を制御するための誘導性プロモーターを含む該発現ベクターを導入する工程を包含する、項20に記載の方法;
項26.前記発現ベクターがウイルスベクターを含む、項20に記載の方法;
項27.前記哺乳類動物レシピエントがヒトである、項20に記載の方法;
項28.エキソビボでの遺伝子治療の方法であって、該方法は、
被験体から複数の細胞を取り出す工程;
組換えアデノウイルスを含まない過剰の細胞が存在するように、該複数の細胞のうち少なくとも1つの細胞に、該アデノウイルスを投与する工程であって、ここで該アデノウイルスがそのE1遺伝子における欠失または変異を有し、該アデノウイルスが分泌タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドをさらに包含する、工程;および
該被験体に該複数の細胞を再導入する工程、
を包含する、方法;
項29.前記複数の細胞の数の少なくとも10%が前記組換えアデノウイルスを含む、項28に記載の方法;
項30.前記複数の細胞の数の少なくとも3%が前記組換えアデノウイルスを含む、項28に記載の方法;
項31.前記複数の細胞の数の少なくとも1%が前記組換えアデノウイルスを含む、項28に記載の方法;
項32.前記複数の細胞の数の少なくとも0.3%が前記組換えアデノウイルスを含む、項28に記載の方法;
項33.前記分泌タンパク質がインターフェロンである、項28に記載の方法;
項34.インビボでの遺伝子治療の方法であって、最初に被験体から細胞を取り出すことなく、該被験体の細胞に直接ヒトインターフェロンβタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを投与する工程を包含する、方法;
項35.前記投与する工程が、局所投与、眼内投与、非経口投与、鼻腔内投与、気管内投与、気管支内投与、筋肉内投与、および皮下投与からなる群より選択される経路による投与を包含する、項34に記載の方法;
項36.前記非経口投与が、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、および皮下投与からなる群より選択される経路を含む、項35に記載の方法;
項37.前記細胞が腫瘍細胞である、項34に記載の方法。
(発明の要旨)
本出願は、治療薬としてのインターフェロンタンパク質のような分泌タンパク質の送達に付随する問題を排除することに関する。本発明は、インターフェロン治療の方法に関し、ここでタンパク質自体よりむしろ分泌タンパク質をコードする遺伝子が送達される。
従って、本発明の1つの目的は、哺乳動物レシピエントに対する遺伝子操作された細胞の使用およびインターフェロンのような分泌タンパク質を送達するためのその使用に基づいて遺伝子治療の方法を提供することである。本発明は、細胞発現系を形成するための方法、これによって生成されたこの発現系、および発現系を含む薬学的組成物を提供することによって、これらおよび他の目的を満たす。この細胞発現系は、1つ以上の分泌タンパク質をコードする遺伝子を発現し、そしてインサイチュでの哺乳動物レシピエントに遺伝子産物を送達するためのビヒクルとして有用である。好ましい実施態様において、哺乳動物レシピエントは、ヒトである。
本発明の1つの実施態様において、細胞発現系は、インビボでの哺乳動物レシピエントの細胞での、症状を処置するためのインターフェロンタンパク質の発現に関して記載される。この発現系は、哺乳動物レシピエントと同じ種の細胞およびインターフェロンタンパク質の発現のためにそこに含まれる発現ベクターを含む。好ましくは、哺乳動物レシピエントはヒトであり、この発現ベクターは、ウイルスベクターを含む。
別の実施態様において、発現系は、哺乳動物レシピエントと同じ種の複数の細胞および分泌タンパク質を発現させるためにそこに含まれる発現ベクターを含む。この発現ベクターは、複数の細胞の一部分にのみ含まれる。好ましくは、細胞数の少なくとも0.3%がそのベクターを含む。好ましい分泌タンパク質はインターフェロンであり、そして最も好ましいインターフェロンは、α、β、γ、およびコンセンサスインターフェロンであり、βインターフェロンが最も好ましい。
他の実施態様において、細胞発現系は複数の癌細胞を含み、そして癌細胞の少なくとも一部分は、発現の際にインターフェロンをコードする単離されたポリヌクレオチドを有するアデノウイルスベクターを含む。この細胞発現系において、アデノウイルスベクターは、(a)そのE1遺伝子における欠失および/または変異を有するアデノウイルスベクター;(b)そのE2a遺伝子における欠失および/または変異を有するアデノウイルスベクターであって、ヒトインターフェロンβを発現する、アデノウイルスベクター;(c)そのE1およびE4遺伝子の両方における欠失および/または変異を有するアデノウイルスベクター、ならびに(d)その遺伝子の全ての欠失を有するアデノウイルスベクターであって、ヒトインターフェロンβを発現する、アデノウイルスウイルスベクターからなる群より選択される。
分泌タンパク質を哺乳動物レシピエントのある部位に送達するための薬学的組成物もまた、本発明内に含まれる。この組成物は、キャリアおよび哺乳動物レシピエントと同じ種の遺伝的に改変された複数の細胞を含み、そしてこの細胞の少なくとも一部分は、有効量の分泌タンパク質を発現するための発現ベクターを含む。好ましい分泌タンパク質は、インターフェロンである。この組成物は、インビボおよびエキソビボの両方の送達のための組成物を含む。
哺乳動物レシピエントへ投与するための、エキソビボでの遺伝子治療の薬学的調製物を作製するための方法は、別の実施態様である。この方法は、以下:(a)哺乳動物レシピエントと同じ種の複数の細胞を形成する工程、(b)複数の細胞のうち少なくとも1つの細胞に分泌されたタンパク質を発現するための発現ベクターを導入して、少なくとも1つの遺伝的に改変された細胞を形成する工程、および(c)薬学的に受容可能なキャリア中に少なくとも1つの遺伝的に改変された細胞を配置して、哺乳動物レシピエントのある部位に投与するために適切である薬学的調製物を得る工程を包含する。
本発明の別の実施態様は、遺伝子治療のための方法であり、この方法は、以下の工程:(a)少なくとも1つの細胞に分泌タンパク質を発現するための発現ベクターを導入して、少なくとも1つの遺伝的に改変された細胞を形成する工程、および(b)哺乳動物レシピエントのある部位にこの遺伝的に改変された細胞を接触させる工程、によって哺乳動物レシピエントの少なくとも1つの細胞を遺伝的に改変する工程を包含する。この方法は、発現ベクターを導入する工程の前に、哺乳動物レシピエントから少なくとも1つの細胞を取り出す工程をさらに包含し得る。なお別の実施態様において、ベクターを導入する工程は、ベクターを複数の細胞の一部分にのみ導入する工程を包含する。
エキソビボでの遺伝子治療の方法は本発明に含まれ、そして被験体から複数の細胞を取り出す工程;過剰の細胞がアデノウイルスを含まないように、この複数の細胞のうち少なくとも1つに組換えアデノウイルスを投与する工程を包含する。このアデノウイルスは、E1遺伝子における欠失を有し、そして分泌タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む。この複数の細胞は、被験体に再導入される。
インビボでの遺伝子治療の方法において、この工程は、ヒトインターフェロンβタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドを含むアデノウイルスベクターを、最初に被験体から細胞を取り出すことなく、被験体の細胞に直接投与する工程を包含する。インビボおよびエキソビボでの方法は、局所的、眼内、非経口、鼻腔内、気管内、気管支内、筋肉内、皮下、静脈内、筋肉内、および腹腔内投与を可能にする。
本発明は、いくつかの利点を有する。インターフェロン遺伝子治療は、低い全身レベルで非常に高い局所的インターフェロン濃度を可能にする。これは、より少ない副作用でより大きな有用性を生じる。また、インターフェロンタンパク質治療において観察された状況(そこでは、タンパク質注射後に生じる(毒性を導き得る)タンパク質濃度の非常に高いインターフェロン「バースト」またはピークの後に、インターフェロン濃度が、低すぎて有効でない可能性のある、非常に低いレベルが続く)とは異なり、遺伝子治療によって送達されたインターフェロンは、かなり一定のレベルで存在する。
患者の利便性もまた重要な要素である。インターフェロンタンパク質の頻繁な注射が必要であるが、インターフェロン遺伝子を発現するベクターの、単回の投与か、または数回の頻繁でない投与は、タンパク質の長期の安定した生成を提供し得る。遺伝子治療は、異なる標的器官または腫瘍に対して、制御された様式において、インターフェロンの送達を可能にし得る。同一の細胞がインターフェロンを発現し、分泌し、そして取り込む、自己分泌系が、確立され得る。従って、非常に局所的な用量が、達成され得る。これらの高用量は、毒性の問題に起因して、非経口タンパク質投与によっては、達成され得ない。
インターフェロンタンパク質は、細胞より外に分泌されるので、腫瘍における全ての細胞、または肝炎感染肝臓における全ての細胞が、インターフェロン遺伝子によって形質導入される必要があるわけではない。その遺伝子を取り込まない細胞は、近隣の細胞(その遺伝子を有し、インターフェロンタンパク質を分泌する)によって影響を受ける(いわゆる「バイスタンダー効果」)。これは重要な発見であり、そして処置レジメにおいて劇的な効果を有する可能性がある。なぜなら、腫瘍塊中の、または器官内の全ての細胞が、発現ベクターを含有する必要があるわけではないからである。
最後に、非経口インターフェロン投与は、抗インターフェロン抗体の生成をもたらすことが、示されている。この可能性のある中和抗体応答が、明確な局所領域へのインターフェロン遺伝子の導入の後に減少し得るということがあるかもしれない。局所的発現の他にも、発現されたインターフェロンは、内因性のヒト細胞によって生成される。従って、このインターフェロンは、その構造およびグリコシル化において、より天然であり、そして、おそらく、細菌、酵母、チャイニーズハムスター卵巣細胞で生成され、次に精製されて非経口的に注射されるインターフェロンタンパク質よりも、より免疫原性が少ない。
本発明のこれらおよび他の局面、ならびに種々の利点および有用性は、好ましい実施態様の詳細な説明、および添付の図面を参照して、より明らかである。
(好ましい実施態様の説明)
本発明は、部分的に、以下の特徴を有する細胞を使用するエキソビボ遺伝子治療方法の開発に基づく:(1)患者から容易に除去され得る、(2)遺伝性物質の形質導入によって、インビトロで改変され得る、(3)レシピエントに都合よく移植され得る、(4)非血栓溶解性である、そして(5)大多数のレシピエントに移植され得る。開示されるインビボ遺伝子治療方法は、以下の特徴を有する細胞を使用する:(1)レシピエントに存在し、そして(2)単離された遺伝物質をインサイチュで発現するように改変され得る。遺伝子の改変された細胞は、発現される遺伝物質の量を制御するための調節エレメントを含有する。
遺伝的に改変された細胞は、インサイチュで生存し、そして発現される物質が、細胞の位置する組織の正常な機能を妨げることなく、有利(例えば、治療的)な効果を有するために必要な時間、その発現される物質を生成し続ける。
好ましくは、発現された物質は、分泌タンパク質(以下に定義する)である。最も好ましくは、分泌タンパク質は、インターフェロンである。実際、インターフェロンは、最も好ましい治療的因子であるが、任意の分泌タンパク質を用いる遺伝子治療に適用可能である一般的な原理が、発見されている。本発明者らは、インターフェロンのような分泌タンパク質がそれが発現されている細胞から放出されるという事実に起因して、腫瘍塊または例えば、肝炎に感染した肝臓における細胞の全てが「分泌タンパク質」遺伝子によって形質導入される必要がないことを、見いだした。遺伝子を取り込まない細胞は、その遺伝子を有し、そしてそのタンパク質を分泌する近隣の細胞の影響を受ける(すなわち、「バイスタンダー効果」)。遺伝子治療は、インターフェロンを発現するようコードする単離されたポリヌクレオチドを用いて記載されているが、(以下に規定するような)任意の分泌タンパク質が、本発明の方法および組成物において可能性を有する。
本明細書において引用される全ての引用文献は、本明細書において参考として援用される。
(1.定義)
「遺伝子治療」−罹患する生物への遺伝子情報の導入を介して、疾患表現型が矯正される手順。
「エキソビボ遺伝子治療」−細胞を被検体から取り出し、そしてインビトロで培養する手順。機能的遺伝子のようなポリヌクレオチドは、インビトロで細胞に導入され、改変された細胞を培養物中で増殖し、そして次に被検体に再移植される。
「インビボ遺伝子治療」−標的細胞が被検体から取り出されない手順。むしろ、移入されたポリヌクレオチド(例えば、インターフェロンを発現するためにコードする遺伝子)を、インサイチュでレシピエント生物の細胞(すなわち、レシピエント内)に導入する。インビボ遺伝子治療は、いくつかの動物モデルにおいて試験されており、近年の刊行物は、器官および組織中への、インサイチュでの直接的遺伝子移入の実行可能性が報告している。
「遺伝子治療を受容可能な状態」−例えば、遺伝的疾患(すなわち、1つ以上の遺伝子欠損に起因する疾患状態)、後天的病理(すなわち、先天的欠損に起因しない病理学的状態)、ガンの状態ならびに予防プロセス(すなわち、疾患または所望されない医学的状態の予防)を含む。
「後天的病理」−とは、異常な生理学、生化学、細胞生物学、構造生物学、および分子生物学の状態によって明らかとなる、疾患または症候群をいう。
「ポリヌクレオチド」−核酸単量体単位のポリマーであって、単量体単位は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、または両方の組み合わせである。4つのDNA塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)である。4つのRNA塩基は、A、G、C、およびウラシル(U)である。
「単離された」−インターフェロンをコードする遺伝子のポリヌクレオチド配列に適用される場合、RNAまたはDNAポリヌクレオチド、ゲノムポリヌクレオチドの一部、cDNAまたは合成ポリヌクレオチドを意味し、これらは、その起源または操作によって、(i)天然に会合するポリヌクレオチドの全てとは会合しない(例えば、宿主細胞中に、発現ベクターの一部として存在する)か;あるいは(ii)天然に連結するものとは異なる、核酸または他の化学部分と連結するか;あるいは(iii)天然には存在しない。「単離された」とは、さらにポリヌクレオチド配列:(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、インビトロで増幅されるか;(ii)化学的に合成されるか;(iii)クローニングによって組み換え的に生成されるか;または(iv)切断およびゲル分離によって精製される、ことをさらに意味する。
従って「単離された」インターフェロンポリヌクレオチドは、例えば、アンチセンスRNAに転写され得る天然に生じない核酸、ならびに、天然に生じる細胞中で、発現されないかまたは生物学的に有意ではないレベルで発現されるインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子を含む。説明のために、ヒトインターフェロンβ1aをコードする、合成遺伝子または天然の遺伝子は、ヒト脳細胞に関して、「単離された」と考えられる。なぜなら、後者の細胞は、天然にはインターフェロンβ1aを発現しないからである。「単離されたポリヌクレオチド」のさらに別の例は、誘導性プロモーターと相同組み換えを介する内因性インターフェロンコード配列の組み合わせのような組み換え遺伝子を生成する、インターフェロン遺伝子の一部のみの導入である。
「遺伝子」−そのmRNAを介して特定のタンパク質のアミノ酸配列をコードする、DNA配列(すなわち、3’−5’ペントースホスホジエステル結合による、相互に連結したヌクレオチドの直線的整列)。
「転写」−遺伝子からmRNAを生成するプロセス。
「翻訳」−mRNAからタンパク質を生成するプロセス。
「発現」−DNA配列または遺伝子によって、転写と翻訳を組み合わせて、タンパク質を生成するプロセス。
「増殖阻害」−本明細書において使用する場合、この用語は、標的細胞(すなわち、腫瘍)の増殖の阻害および形質転換表現型の阻害(例えば、形態の変化によって測定される)の両方をいう。
「アミノ酸」−ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の単量体単位。20のいずれかのL−異性体アミノ酸が存在する。この用語はまた、アミノ酸のアナログおよびタンパク質アミノ酸のD−異性体およびそのアナログを含む。
「タンパク質」−そのサイズにかかわらず、本質的に20のいずれかのタンパク質アミノ酸からなるポリマー。「ポリペプチド」は、しばしば比較的大きなポリペプチドに関して使用され、そして「ペプチド」は、しばしば低分子ポリペプチドに関して使用されるが、当該分野におけるこれらの用語の使用は、重複し、そして変化する。本明細書において使用する場合、用語「タンパク質」とは、他に記載しなければ、ペプチド、タンパク質およびポリペプチドをいう。
「分泌タンパク質」−細胞内部から細胞外部に対して輸送されるタンパク質;分泌タンパク質の中には、多数の増殖因子および免疫モジュレータータンパク質(例えば、種々のインターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン(例えば、IL−1、−2、−4、−8、および−12)、ならびに増殖因子(例えば、GM−CSF、G−CSF))が存在する。
「遺伝子融合」とは、個々のペプチド骨格の、そのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を介する、同一直線上で共有結合した2つ以上のタンパク質をいう。
「変異」−生物の遺伝物質の質または構造の任意の変化、特に野生型インターフェロン遺伝子における任意の変化(すなわち、欠失、置換、付加、または変化)か、または野生型インターフェロンタンパク質における任意の変化。
「野生型」−インターフェロン遺伝子またはインターフェロンタンパク質の、それぞれの、インビボで存在するような、天然に生じるポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列。
「標準的ハイブリダイゼーション条件」−ハイブリダイゼーションおよび洗浄の両方について、0.5×SSC〜約5×SSCおよび65℃と実質的に等価な塩および温度条件。従って、本明細書において使用する場合、用語「標準的ハイブリダイゼーション条件」は、操作的な定義であり、ハイブリダイゼーションの範囲を含む。より高ストリンジェントな条件は、例えば、プラークスクリーニング緩衝液(0.2% ポリビニルピロリドン、0.2% Ficoll 400;0.2% ウシ血清アルブミン、50mM Tris−HCl(pH7.5);1M NaCl;0.1% ピロリン酸ナトリウム;1% SDS);10% デキストラン硫酸、および100μg/ml変性超音波処理サケ精子DNAを用いる65℃で12〜20時間でのハイブリダイゼーション、ならびに、75mM NaCl/7.5mM クエン酸ナトリウム(0.5×SSC)/1% SDSを用いる65℃での洗浄を含み得る。より低ストリンジェトな条件は、例えば、プラークスクリーニング緩衝液、10% デキストラン硫酸、および110μg/ml変性超音波処理サケ精子DNAを用いる55℃で12〜20時間でのハイブリダイゼーション、ならびに、300mM NaCl/30mM クエン酸ナトリウム(2.0×SSC)/1% SDSを用いる55℃での洗浄を含み得る
「発現制御配列」−遺伝子に作動可能に連結される場合、その遺伝子の発現を制御および調節するヌクレオチドの配列。
「作動可能に連結された」−発現制御配列が、ポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御および調節する場合、そのポリヌクレオチド配列(DNA、RNA)が発現制御配列と作動可能に連結されている。用語「作動可能に連結された」とは、発現されるポリヌクレオチド配列の前の適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有すること、ならびに発現制御配列の制御下でのポリヌクレオチド配列の発現、および単離されたヌクレオチド配列によってコードされる所望のインターフェロンの産生を可能にするように、正確なリーディングフレームを維持することを含む。
「発現ベクター」−発現ベクターが宿主細胞に導入される場合、少なくとも1つの遺伝子の発現を可能にする、ポリヌクレオチド(最も一般的にはDNAプラスミドであるが、ウイルスも含む)。このベクターは、細胞中で複製可能であっても、なくてもよい。
「腫瘍」−任意の所望されない細胞の増殖。そのような増殖としては、悪性および非悪性、固形および液体腫瘍、ガン腫、ミエローマ、肉腫、白血病、リンパ腫、および他のガン性、新生物性または腫瘍形成性疾患を含む。
「遺伝的に改変された細胞」(「細胞発現系」とも呼ばれる)−インターフェロンタンパク質の発現のための細胞および発現ベクターを含む。エキソビボ目的のために、遺伝的に改変された細胞は、哺乳動物レシピエントへの投与に適し、ここで、その細胞は、そのレシピエントの内因性の細胞を置換するか、または共存する。インビボ目的のために、細胞はレシピエント内で作製される。
本発明はまた、上記の遺伝的に改変された細胞の作製および使用のための種々の方法を提供する。特に、本発明は、哺乳動物レシピエントの細胞をエキソビボで遺伝的に改変する方法、およびその遺伝的に改変された細胞をその哺乳動物レシピエントに投与する方法を提供する。エキソビボ遺伝子治療のための好ましい実施態様において、細胞は自系細胞、すなわち、哺乳動物レシピエントから取り出された細胞である。本明細書において使用する場合、用語「取り出す」とは、インビボにおける天然に存在する位置から取り出された、細胞または複数の細胞を意味する。患者から細胞を取り出す方法、ならびに単離された細胞を培養物中で維持する方法は、当業者にとって公知である(Stylianou、E.、ら、KidneyIntl.37:1563−1570(1992);Hjelle、J.H.、ら、Peritoneal Dialysis Intl.9:341−347(1989);Heldin、P.、Biochem.J.283:165−170(1992);Di Paolo、N.ら、Int.J.Art.Org.12:485−501(1989);Di Paolo、N.ら、Clinical Nephrol.34:179−1848(1990);Di Paolo、N.、ら、Nephron 57:323−331(1991))。本明細書の上記および下記の両方の、発明の詳細な説明に記載の全ての特許、特許出願および刊行物は、本明細書において参考として援用される。
(II.単離されたインターフェロンポリペプチド)
「インターフェロン」(「IFN」ともいう)は、低分子の、種特異的、1本鎖ポリペプチドであって、種々のインデューサー(例えば、ウイルス、ポリペプチド、マイトジェンなど)への曝露に応答して哺乳動物細胞によって産生される。最も好ましいインターフェロンは、組換え形態であり、そして種々のインターフェロンを含むタンパク質生成のためのDNA組換え技術が、公知であり、いかなる方法によっても本発明を限定することを意図しない。例えば、米国特許第4,399,216号、同5,149,636号、同5,179,017号(Axelら)、および同4,470,461号(Kaufman)を参照のこと。インターフェロンα、β、γおよびコンセンサスインターフェロンの組換え形態が産生されている。インターフェロンの形態は、システイン枯渇変異(例えば、インターフェロンβについて)およびメチオニン枯渇変異のような改変体をコードするポリヌクレオチド配列を含む細胞から発現され得る。他の改変は、宿主細胞の翻訳後プロセシング系を介して生じ得る。従って、特定のインターフェロンの正確な化学構造は、いくつかの要素に依存し、そして本発明の範囲を限定することを意図しない。本明細書に記載の処方物において含まれるそのようなインターフェロンタンパク質の全ては、適切な環境的条件に配置される場合、その生物活性を保持する。
本発明の本方法において使用され得る好ましいポリヌクレオチドは、種々の脊椎動物、好ましくは哺乳動物の野生型インターフェロン遺伝子配列由来であり、そして当業者に周知の方法を使用して得られる。例えば、米国特許第5,641,656号(1997年6月24日発行:トリI型インターフェロンプロタンパク質および成熟トリI型インターフェロンをコードするDNA)、米国特許第5,605,688号(1997年2月25日−組換えイヌおよびウマI型インターフェロン);米国特許第5,554,513号(1996年9月10日;ヒトインターフェロンβ2AをコードするDNA配列);米国特許第5,541,312号(1996年7月30日−ヒト線維芽細胞β2インターフェロンポリペプチドをコードするDNA);米国特許第5,231,176号(1993年7月27日、ヒト白血球インターフェロンをコードするDNA分子);米国特許第5,071,761号(1991年12月10日、ヒトリンパ芽球腫インターフェロンLyINF−α−2およびLyIFN−α−3のサブ配列をコードするDNA配列);米国特許第4,970,161号(1990年11月13日、ヒトインターフェロンγをコードするDNA配列);米国特許第4,738,931号(1998年4月19日、ヒトインターフェロンβ遺伝子を含むDNA);米国特許第4,695,543号(1987年9月22日、ヒトαインターフェロンGx−1遺伝子)および米国特許第4,456,748号(1984年6月26日、異なる天然に存在する白血球インターフェロンのサブ配列をコードするDNA)を参照のこと。
遺伝子のインターフェロンファミリーの変異体メンバーは、本発明によって使用され得る。野生型インターフェロンポリヌクレオチド配列における変異は、従来の当業者に公知の指向性変異誘発方法を使用して開発されている。用語「変異」はまた、遺伝子融合体を含み、その結果以下のインターフェロン配列(本明細書に参考として援用される)が全て「変異」配列として考慮されることを意味する。
米国特許第5,273,889号(1993年12月28日、免疫原性ロイコトキシンをコードする配列と連結したγインターフェロン遺伝子を含むDNA構築物);米国特許第4,959,314号(1990年9月25日、生物学的に活性なネイティブタンパク質の合成ムテインをコードするDNA配列を有する遺伝子);米国特許第4,929,554号(1990年5月29日、des−CYS−TYR−CYS組換えヒト免疫インターフェロンをコードするDNA);米国特許第4,914,033号(1990年4月3日、βインターフェロンを含む改変βインターフェロンをコードするDNA分子)および米国特許第4,569,908号(1986年2月11日、マルチクラスハイブリッドインターフェロンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するDNA)。
さらに、これらの特許に記載される単離されたポリヌクレオチドは、機能的に等価なポリヌクレオチドを提供するために変化させられ得る。ポリヌクレオチドは、以下の条件の少なくとも1つを満たす場合、上記の配列と比較して「機能的に等価」である:
(a)「機能的等価物」は、標準的なハイブリダイゼーション条件下で任意の上記の配列とハイブリダイズし、および/または、任意の上記の配列に対して縮重しているポリヌクレオチドである。最も好ましくは、これは、野生型インターフェロンの治療的活性を有する変異インターフェロンをコードする;
(b)「機能的等価物」は、上記のインターフェロン配列の任意のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を発現のためにコードするポリヌクレオチドである。
要約すれば、用語「インターフェロン」とは、上記に列挙の因子、ならびにその機能的等価物を含むが、これらに限定されない。従って、本明細書において使用する場合、用語「機能的等価物」とは、インターフェロンタンパク質、または哺乳動物レシピエントに対して、機能的等価物とみなされるインターフェロンと同程度か、または改善された有益な効果を有するインターフェロンタンパク質をコードするポリヌクレオチドをいう。当業者によって明らかなように、機能的に等価なタンパク質は、組換え技術によって(例えば、「機能的に等価なDNA」を発現することによって)、生成され得る。従って、本発明は、天然に生じるDNA、ならびに非天然DNA(天然に生じるDNAによってコードされるのと同一のタンパク質をコードする)によってコードされるインターフェロンを含む。配列をコードするヌクレオチドの縮重に起因して、他のポリヌクレオチドが、インターフェロンをコードするために使用され得る。これらには、配列内の同一のアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換(従って、サイレント変化を生成する)により変化される、上記の配列の全てまたは一部を含む。そのように変化した配列は、これらの配列の等価物とみなされる。例えば、Phe(F)は、2つのコドンによってコードされる(TTCまたはTTT)。Tyr(Y)は、TACまたはTATによってコードされ、そしてHis(H)は、CACまたはCATによってコードされる。一方、Trp(W)は、単一のコドン(TGG)によってコードされる。従って、特定のインターフェロンをコードする所定のDNA配列にとって、これをコードする多くのDNA縮重配列が存在することが明らかである。これらの縮重DNA配列は、本発明の範囲内であると考慮される。
コンセンサスインターフェロンはまた、この定義内に含まれる。本明細書において使用される場合、「コンセンサスインターフェロン」は、非天然ポリペプチドであり、これは、その大部分が全ての天然ヒトインターフェロンサブタイプ配列に共通であるアミノ酸残基を含み、そして全てのサブタイプに共通のアミノ酸が存在しない1つ以上の位置では、その位置で主に生じるアミノ酸を含むが、少なくとも1つの天然に生じるサブタイプにおいてその位置に存在しない任意のアミノ酸残基を、決して含まない。コンセンサスインターフェロン配列が、もし、サブタイプ配列を有する場合、上記の参考文献の任意のインターフェロンのコンセンサス配列を包含する。例示的なコンセンサスインターフェロンは、米国特許第4,695,623号および同4,897,471号(Amgen)に開示される。コンセンサスインターフェロンをコードするDNA配列は、これら特許に記載のように合成され得るか、または他の標準的な方法によって合成され得る。コンセンサスインターフェロンポリペプチドは、好ましくは、本明細書において記載のように、宿主に形質転換されたか、またはトランスフェクトされた、生成されたDNA配列の発現産物である。すなわち、コンセンサスインターフェロンは、好ましくは、組換え的に生成される。そのような物質は、当業者に周知の手順によって精製され得る。
上記に開示のインターフェロンおよび遺伝子置換療法に適用しやすい条件は、単に説明のためであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。公知の状態の処置のための適切なインターフェロンの選択は、過度の実験を要さない、当業者の技術範囲内であるとみなされる。
(III.分泌型タンパク質のポリヌクレオチド配列を細胞に導入するための方法)
用語「形質転換」または「形質転換する」は、細胞の任意の遺伝的改変を言い、そして「トランスフェクション」および「形質導入」の両方を含む。
本明細書中で使用される「細胞のトランスフェクション」は、細胞による、添加されたDNAの取り込みによる新規な遺伝物質の獲得をいう。従って、トランスフェクションとは、物理学的方法または化学的方法を使用する、細胞への核酸(例えば、DNA)の挿入をいう。以下を含むいくつかのトランスフェクション技術が、当業者に公知である:リン酸カルシウムDNA共沈法(Methods in Molecular Biology、第7巻、Gene Transfer and Expression Protocols、E.J.Murray編,Humana Press(1991));DEAE−デキストラン(前出);エレクトロポレーション(前出);カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション(前出);およびタングステン粒子加速微粒子ボンバードメント(Johnston,S.A.、Nature 346:776〜777(1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈法(Brash D.E.ら、Molec.Cell.Biol.7:2031〜2034(1987)。これらの方法の各々は、当該分野において周知である。
対照的に、「細胞の形質導入」とは、DNAウイルスまたはRNAウイルスを使用して、細胞へ核酸を移入するプロセスをいう。ウイルス内に含まれる1つ以上のインターフェロンタンパク質をコードする1つ以上の単離されたポリヌクレオチド配列は、形質導入された細胞の染色体に取り込まれ得る。あるいは、細胞は、ウイルスで形質導入されるが、細胞は、単離されたポリヌクレオチドを染色体に取り込んでいないが、細胞内の染色体外でインターフェロンを発現し得る。
1つの実施態様に従って、細胞は、エクスビボで形質転換される(すなわち、遺伝的に改変される)。細胞は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)から単離され、そして組換え分泌型タンパク質(たとえば、インターフェロン)を発現するための1つ以上の発現制御配列に作動可能に連結された組換え遺伝子のような、単離されたポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換される(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトされる)。次いで、細胞は、インサイチュでタンパク質の送達のための哺乳動物レシピエントに投与される。好ましくは、哺乳動物レシピエントはヒトであり、そして改変される細胞は、自律的細胞である(すなわち、細胞は哺乳動物レシピエントから単離される)。インビトロでの細胞の単離および培養は、報告されている。
別の実施態様に従って、細胞は、形質転換されるか、または別の方法でインビボで遺伝的に改変される。哺乳動物レシピエント(好ましくは、ヒト)由来の細胞は、分泌型タンパク質(すなわち、組換えインターフェロン)を発現するための1つ以上の発現制御配列に作動可能に連結された組換え遺伝子のような単離されたポリヌクレオチドを含むベクターで、インビボにて形質転換(すなわち、形質導入またはトランスフェクト)され、そしてそのタンパク質はインサイチュで送達される。
分泌型タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド(例えば、1つ以上の治療用インターフェロンタンパク質をコードするcDNA)は、遺伝的に改変された細胞を提供するために、遺伝子移入方法(例えば、トランスフェクションまたは形質導入)によって、エクスビボまたはインビボで細胞に導入される。種々の発現ベクター(すなわち、標的細胞への単離されたポリヌクレオチドへの送達を促進するためのビヒクル)が当業者に公知である。
代表的には、導入された遺伝物質は、新規な遺伝子の転写を制御するためのプロモーターとともに、インターフェロン遺伝子のような単離されたポリヌクレオチド(通常は、インターフェロンをコードするエキソンを含む、cDNAの形態)を含む。プロモーターは、転写を開始するために必要な特定のヌクレオチド配列を特徴的に有する。必要に応じて、遺伝物質は、RNAスプライシングによって成熟転写物から除去されるイントロン配列を含み得る。ポリアデニル化シグナルは、発現されるべき遺伝子の3’末端に存在するべきである。導入される遺伝物質はまた、治療用遺伝子産物(すなわち、インターフェロン)を細胞から細胞外環境へ分泌するために適切な分泌「シグナル」配列を含み得る。
必要に応じて、単離された遺伝物質はさらに、所望の遺伝子転写活性を得るために必要とされるさらなる配列(すなわち、エンハンサー)を含む。この議論の目的のために、エンハンサーは、簡単には、コード配列と連続して(シスで)作用してプロモーターによって指示される基本的な転写レベルを変化させる、任意の非翻訳DNA配列である。
好ましくは、プロモーターおよびコード配列が作動可能に連結され、コード配列の転写を可能にするように、単離された遺伝物質は、プロモーターのすぐ下流の細胞ゲノムに導入される。好ましいウイルス性発現ベクターは、挿入されるインターフェロン遺伝子の転写を制御するための外因性プロモーターエレメントを含む。そのような外因性プロモーターは、構成性プロモーターおよび誘導性プロモーターの両方を含む。
天然に存在する構成性プロモーターは、必須の細胞機能を調節するタンパク質の発現を制御する。結果として、構成性プロモーターの制御下の遺伝子は、すべての細胞増殖条件下で発現される。例示的な構成性プロモーターは、特定の構成性機能または「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子についてのプロモーターを含む:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(Scharfmannら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88:4626〜4630(1991))、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、β−アクチンプロモーター(Laiら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA 86:10006−10010(1989))、および当業者に公知の他の構成性プロモーター。
さらに、多くのウイルス性プロモーターは、真核生物細胞において構成的に機能する。これらは、とりわけ以下を含む:SV40の初期プロモーターおよび後期レセプター(BernoistおよびChambon,Nature,290:304(1981)を参照のこと);モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの長い末端反復(LTR)(Weissら、RNA Tumor Viruses,Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor、NY(1985)を参照のこと);単純ヘルペスウイルス(HSV)のチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、Proc.Nat. Acad. Sci. USA、78:1441(1981)を参照のこと);サイトメガロウイルス前初期(IE1)プロモーター(Karasuyamaら、J.Exp.Med.,169:13(1989)を参照のこと);ラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター(Yamamotoら、Cell、22:787(1980));アデノウイルス主要後期プロモーター(Yamadaら、Proc.Nat. Acad. Sci.USA、82:3567(1985))。従って、上記の構成性プロモーターのいずれかは、遺伝子挿入物の転写を制御するために使用され得る(B節もまた参照のこと)。
インターフェロン遺伝子の送達が特定の組織に対してである場合、この遺伝子の発現を標的化することが望ましくあり得る。例えば、特定の組織においてのみ発現される、文献に記載された多くのプロモーターが存在する。例としては、B型肝炎ウイルスの肝臓特異的プロモーター(Sandigら、Gene Therapy 3:1002〜1009(1996)、およびアルブミン遺伝子(Pinkertら、Genes and Development、1:268〜276(1987)が挙げられる;他の肝臓特異的プロモーターについては、Guoら、Gene Thearapy、3:802〜810(1996)もまた参照のこと。さらに、特定の腫瘍においてのみ発現される、文献において記載される多くのプロモーターが存在する。例としては、以下が挙げられる:PSAプロモーター(前立腺ガン)、ガン胎児性抗原プロモーター(結腸ガンおよび肺ガン)、β−カゼインプロモーター(乳ガン)、チロシナーゼプロモーター(黒色腫)、カルシニューリンAαプロモーター(神経膠腫、神経芽腫)、c−シスプロモーター(骨肉腫)、およびα−フェトプロテインプロモーター(肝ガン)。
誘導性プロモーターの制御下にある遺伝子は、それ単独で発現されるか、または誘導剤の存在下でより大きな程度で発現される(例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下での転写は、特定の金属イオンの存在下で非常に増大する)。マウス乳房腫瘍ウイルスの長い末端反復(MMTV LTR)内に存在するグルココルチコイド誘導性プロモーターもまた参照のこと(Klessigら、Mol.Cell.Biol.4:1354(1984))。誘導性プロモーターは、それらの誘導因子が結合する場合に転写を刺激する応答性エレメント(RE)を含む。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチン酸、およびサイクリックAMPについてのREが存在する。特定のREを含むプロモーターは、誘導性応答を得るために選択され得、そしていくつかの場合において、RE自体は、異なるプロモーターに結合され、それによって組換え遺伝子に誘導性を付与し得る。
従って、適切なプロモーター(構成性対誘導性;強い対弱い)を選択することによって、遺伝的に改変された細胞におけるインターフェロンの発現の存在およびレベルの両方を制御することが可能である。インターフェロンをコードする遺伝子が、誘導性プロモーターの制御下にある場合、インサイチュでのインターフェロンの送達は、遺伝的に改変された細胞を、インターフェロンの転写を可能にする条件下でインサイチュで曝露することによって、例えば、因子の転写を制御する誘導性プロモーターの特定の誘導因子の注入によって誘発される。例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下のインターフェロン遺伝子によってコードされたインターフェロンタンパク質の遺伝的に改変された細胞によるインサイチュ発現は、適切な(すなわち、誘導性)金属イオンを含む溶液と、遺伝的に改変された細胞をインサイチュで接触させることによって増強される。
最近、外因性に投与される低分子によって、遺伝子発現の正確な調節を可能にする、非常に洗練された系が開発されている。これらとしては、FK506/Rapamycin系(Riveraら、Nature Medicine 2(9):1028〜1032、1996);テトラサイクリン系(Gossenら、Science 268:1766〜1768、1995)、エクジソン系(Noら、Proc.Nat. Acad. Sci.USA 93:3346〜3351、1996)、およびプロゲステロン系(Wangら、Nature Biotechnology 15:239〜243、1997)が挙げられる。
従って、インサイチュで送達されるインターフェロンの量は、以下のような因子を制御することによって調節される:(1)挿入された遺伝子の転写を指向するために使用されるプロモーターの性質(すなわち、プロモーターが、構成性か誘導性か、強いか弱いか、または組織特異的であるか);(2)細胞に挿入される外因性遺伝子のコピー数;(3)患者に投与(例えば、移植)される、形質導入/トランスフェクトされた細胞の数;(4)エクスビボ方法における移植物(例えば、移植片、またはカプセル化発現系)のサイズ;(5)エクスビボ方法における移植物の数;(6)インビボ投与によって形質導入/トランスフェクトされる細胞の数;(7)形質導入/トランスフェクトされた細胞または移植物が、エクスビボおよびインビボ方法の両方の適切な場所に置かれた時間の長さ;ならびに(8)遺伝的に改変された細胞による、インターフェロンの産生速度。
治療的に有効な用量の特定のインターフェロンの送達のための、これらの因子の選択および最適化は、先に開示された因子および患者の臨床的プロフィールを考慮すると、過度な実験なしに当業者の範囲内にあると考えられる。
本発明者らの遺伝子治療方法によって発現されるタンパク質は分泌型タンパク質であるので、遺伝子治療ベクターを含まない周辺の細胞はなお影響を及ぼされる(実施例を参照のこと)。結果として、本方法は、代表的には選択可能遺伝子の使用を必要としない。にもかかわらず、少なくとも1つのプロモーター、およびインターフェロンをコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドに加えて、発現ベクターは、発現ベクターでトランスフェクトまたは形質導入されている細胞の選択を容易にするために、必要に応じて選択遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)を含み得る。あるいは、細胞は、2つ以上の発現ベクター(少なくとも1つのベクターは、インターフェロンをコードする遺伝子を含み、他のベクターは選択遺伝子を含む)でトランスフェクトされる。適切なプロモーター、エンハンサー、選択遺伝子、および/またはシグナル配列の選択(下記)は、過度な実験なしに当業者の範囲内にあると考えられる。
(IV.特異的遺伝子治療ベクターを調製する方法)
ベクターへのポリヌクレオチド配列の挿入のための、当該分野において公知の任意の方法が使用され得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)、およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,J.Wiley & Sons,NY(1992)を参照のこと。従来のベクターは、特定のインターフェロンについてのポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された適切な転写/翻訳制御シグナルからなる。プロモーター/エンハンサーはまた、インターフェロンの発現を制御するために使用され得る(第III節を参照のこと)。
腫瘍細胞の遺伝子治療における使用のための、哺乳動物宿主細胞と適合性の発現ベクターには、例えば以下が挙げられる:プラスミド;ニワトリ、マウス、およびヒトレトロウイルスベクター;アデノウイルスベクター:ヘルペスウイルスベクター:パルボウイルス;および非複製性ポックスウイルス。特に、複製欠損性組換えウイルスは、複製欠損性ウイルスのみを産生するパッケージング細胞株において産生され得る。Current Protocols in Molecular Biology:第9.10節〜第9.14節(Ausubelら編)、Greene Publishing Associcates,1989を参照のこと。
遺伝子移入系における使用のための特定のウイルス性ベクターは、現在、十分に確立されている。例えば以下を参照のこと:Madzakら、J.Gen.Virol.、73:1533〜36(1992)(パポバウイルスSV40);Berknerら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、158:39〜61(1992)(アデノウイルス);Mossら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:25〜38(1992)(ワクシニアウイルス);Muzyczka、Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:97〜123(1992)(アデノ随伴ウイルス);Margulskee、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、158:67〜93(1992)(単純ヘルペスウイルス(HSV)およびエプスタインバーウイルス(HBV));Miller,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:1〜24(1992)(レトロウイルス);Brandyopadhyayら、Mol.Cell.Biol.4:749〜754(1984)(レトロウイルス);Millerら、Nature,357:455〜450(1992)(レトロウイルス);Anderson,Science,256:808〜813(1992)(レトロウイルス)。
好ましいベクターは、以下を含むDNAウイルスである:アデノウイルス(好ましくは、Ad−2またはAd−5に基づくベクター)、ヘルペスウイルス(好ましくは、単純ヘルペスウイルスに基づくベクター)、およびパルボウイルス(好ましくは「欠損性」または非自律的パルボウイルスに基づくベクター、より好ましくはアデノ随伴ウイルスに基づくベクター、最も好ましくはAAV−2に基づくベクター)。例えば、Aliら、Gene Therapy 1:367〜384、1994;米国特許第4,797,368号および同第5,399,346号、ならびに以下の議論を参照のこと。
例えば、インターフェロン配列を移入するための特定のベクター系の選択は、種々の因子に依存する。1つの重要な因子は、標的細胞集団の性質である。レトロウイルスベクターは、広範に研究され、そして多くの遺伝子治療適用において使用されているが、レトロウイルスベクターは、一般には、分裂していない細胞に感染するのに不適切であるが、ガン治療において有用であり得る。なぜなら、レトロウイルスベクターは、複製している細胞においてのみそれらの遺伝子を組込み、そして発現させるからである。レトロウイルスベクターは、標的細胞ゲノムへの適切な組込みに起因して、エクスビボでのアプローチに有用であり、そしてこれに関して魅力的である。
アデノウイルスは、種々の細胞型に治療用導入遺伝子またはレポーター導入遺伝子を効率的に送達するように改変され得る、真核生物DNAウイルスである。一般的なアデノウイルス2型および5型(それぞれ、Ad2およびAd5)は、ヒトにおいて呼吸性疾患を生じ、そして現在、デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)、および嚢胞性線維症(CF)の遺伝子治療について開発されている。Ad2およびAd5の両方は、ヒト悪性疾患と関連しないアデノウイルスのサブクラスに属する。アデノウイルスベクターは、有糸分裂状態にかかわらず、実質的にすべての細胞型への非常に高レベルな導入遺伝子送達を提供し得る。高力価(1011プラーク形成単位/ml)の組換えウイルスは、293細胞(アデノウイルスによって形質転換された相補ヒト胎児腎臓細胞株:ATCC CRL1573)において容易に生成され得、そして感知されるほどの損失なしに長期間、凍結保存され得る。遺伝的不均衡を補完する治療用導入遺伝子をインビボで送達する際のこの系の効率は、種々の障害の動物モデルにおいて実証されている。Y.Watanabe、Atherosclerosis,36:261〜268(1986);K.Tanzawaら、FEBS Letters,118(1):81〜84(1980);J.L.Golastenら、New Engl.J.Med.、309(11983):288〜296(1983);S.Ishibashiら、J.Clin.Invest.、92:883〜893(1993);およびS.Ishibashiら、J.Clin.Invest.,93:1889〜1893(1994)を参照のこと。実際に、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)についてのcDNAをコードする組換え複製欠損性アデノウイルスは、いくつかのヒトCF臨床試験における使用について承認されている。例えば、J.Wilson,Nature,365:691〜692(1993年10月21日)を参照のこと。遺伝子治療についての組換えアデノウイルスの安全性のさらなる支持は、ヒト集団における、生アデノウイルスワクチンの広範な経験である。
ヒトアデノウイルスは、直線状の約36kbの二本鎖DNAゲノムから構成され、これは、100マップ単位(m.u.)に分割され、その各々は、360bp長である。DNAは、ウイルス性DNA複製について必要とされるゲノムの各末端にて短い逆方向末端反復(ITR)を含む。遺伝子産物は、ウイルスDNA合成の開始より前またはその後の発現に基づいて,初期領域(E1〜E4)および後期領域(L1〜L5)に組織化される。例えば、Horwitz、Virology、第2版、B.N.Fields,Raven Press Ltd.、New York(1990)を参照のこと。
アデノウイルスゲノムは、その正常なウイルス生活環の間に非常に調節されたプログラムを経る。Y.Yangら、Proc.Natl. Acad. Sci.U.S.A.91:4407〜4411(1994)を参照のこと。ビリオンは、細胞によってインターナリゼーションを受け、エンドソームに入り、そしてそこからウイルスは細胞質に侵入し、そのタンパク質コートを失い始める。ビリオンDNAは、核に移動し、ここで、その染色体外線状構造を染色体内に組み込むのではなく、それを保持する。前初期遺伝子(E1aおよびE1b)は、核において発現される。これらの初期遺伝子産物は、アデノウイルス性転写を調節し、そして種々の宿主遺伝子(これは、ウイルス産生について細胞をプライムする)のウイルス性複製および発現について必要とされ、そしてより後期の初期遺伝子(例えば、E2、E3、およびE4)、続いて後期遺伝子(例えば、L1〜L5)のカスケード活性化の中心をなす。
遺伝子治療について開発された第1世代の組換え複製欠損性アデノウイルスは、全E1aおよびE1b領域の一部の欠失を含む。この複製欠損性ウイルスは、機能的アデノウイルスE1領域(これは、トランスでE1タンパク質を提供し、それによってE1欠失アデノウイルスの複製を可能にする)を含む293細胞において増殖される。得られるウイルスは、多くの細胞型に感染し得、そして導入遺伝子を発現し得るが(ただし、ウイルスはプロモーターを保有する)、E1領域DNAを有さない細胞において複製し得ない。組換えアデノウイルスは、それらが広範な宿主域を有し、静止細胞またはニューロンのような最終的に分化した細胞に感染し得るという利点を有し、そして本質的に非腫瘍形成性のようである。アデノウイルスは、宿主ゲノムに組み込まれないようである。それらは染色体外に存在するので、挿入変異誘発の危険性は、非常に低減されている。組換えアデノウイルスは、非常に高い力価を生じ、ウイルス性粒子は中程度に安定性であり、発現レベルは高く、そして広範な細胞が感染され得る。
アデノ随伴ウイルス(AAV)はまた、体細胞遺伝子治療のためのベクターとして使用されている。AAVは、それを遺伝子操作のための理想的な基質にする単純なゲノム構成(4.7kb)を有する、小さな一本鎖(ss)DNAウイルスである。2つのオープンリーディングフレームは、1連のrepおよびcapポリペプチドをコードする。Repポリペプチド(rep78、rep68、rep62、およびrep40)は、AAVゲノムの複製、レスキュー、および組込みに関与する。capタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)は、ビリオンキャプシドを形成する。5’末端および3’末端でrepオープンリーディングフレームおよびcapオープンリーディングフレームに隣接するのは、145bpの逆方向末端反復(ITR)であり、そのうちの最初の125bpは、Y型またはT型二重鎖構造を形成し得る。AAVベクターの開発のために重要なのは、全repおよびcapドメインが切り出され、そして治療用導入遺伝子またはレポーター導入遺伝子で置換され得ることである。B.J.Carter、Handbook of Parvoviruses、P.Tijsser編,CRC Press、155〜168頁(1990)を参照のこと。ITRが、AAVゲノムの複製、レスキュー、パッケージング、および組込みのために必要とされる最小の配列を表すことが示されている。
AAV生活環は、二相性であり、潜伏性エピソードおよび溶解性エピソードの両方から構成される。潜伏性感性の間、AAVビリオンは、キャプシド化ssDNAとして細胞に侵入し、そしてそのすぐ後に、AAV DNAが、宿主細胞分裂の明らかな必要性なしに宿主染色体に安定に組み込まれる核に送達される。ヘルパーウイルスの非存在下で、組み込まれたAAVゲノムは、潜伏性のままであるが、活性化およびレスキューされ得る。AAVプロウイルスを保有する細胞が、宿主クロマチンからの切除を補助するためにAAVによって必要とされるヘルパー機能をコードするヘルペスウイルスまたはアデノウイルスによる二次感染でチャレンジされる場合、生活環の溶解期が始まる(B.J.Carter,前出)。感染親一本鎖(ss)DNAは、rep依存性様式で、二重鎖複製形態(RF)DNAに拡大される。レスキューされたAAVゲノムは、予め形成されたタンパク質キャプシド(正二十面体対称、直径約20nm)にパッケージングされ、そして細胞溶解後に+または−のいずれかのssDNAゲノムがパッケージングされた感染性ビリオンとして放出される。
AAVは、遺伝子治療において有意な可能性を有する。ウイルス粒子は、非常に安定であり、そして組換えAAV(rAAV)は、rAAVが、ペレット化またはCsCl勾配バンド形成によって精製され得るという点で「薬物様」特徴を有する。それらは、熱安定性であり、粉末になるまで凍結乾燥され、十分な活性まで再水和され得る。それらのDNAは、宿主染色体に安定に組み込まれ、それゆえ、発現は長期である。それらの宿主域は、広く、そしてAAVは公知の疾患を全く引き起こさないので、その結果、組換えベクターは非毒性である。
マウスにおけるAAV由来の高レベル遺伝子発現は、少なくとも1.5年間持続することが示された。Xiao、Li、およびSamulski(1996)Journal of Virology 70、8089〜8108を参照のこと。ウイルス性毒性または細胞性宿主免疫応答の証拠が存在しないので、ウイルス遺伝子治療のこれらの限定は、克服された。
Kaplitt、Leone、Samulski、Xiao、Pfaff、O’Malley、およびDuring(1994) Nature Genetics 8、148〜153は、AAVベクターを使用する直接的な頭蓋内注射後に、ラット脳におけるチロシンヒドロキシラーゼの長期(4ヶ月まで)発現を記載した。これは、ヒトにおけるパーキンソン病のための潜在的な治療である。発現は、非常に効率的であり、そしてウイルスは安全かつ安定であった。
Fisherら(Nature Medicine(1997)3、306〜312)は、AAVの筋肉内に注射後、マウスにおける安定な遺伝子発現は報告した。再度、ウイルスは安全であった。細胞性免疫応答も体液性免疫応答も、ウイルス、または外来遺伝子産物に対して検出されなかった。
Kesslerら(Proc. Natl. Acad.Sci.USA(1996)93、14082〜14087)は、マウスにおけるAAVの筋肉内注射後に、エリトロポイエチン(Epo)遺伝子の高レベル発現を示した。Epoタンパク質は、循環において存在することが示されたが、そして治療の可能性を示す赤血球計数における増加が報告された。このグループによる他の研究は、ガンについての処置としてHSV tk遺伝子を発現するAAVを使用した。固形腫瘍における高レベル遺伝子発現が記載されている。
最近、バキュロウイルスAutographa californica多発性(multiple)核多角体病ウイルス(AcMNPV)に主に由来する組換えバキュロウイルスは、インビトロにて哺乳動物細胞に形質導入し得ることが示されている(Hofmann,C.,Sandig、V.、Jennings,G.,Rudolph、M.、Schlag、P.、およびStrauss,M.(1995)、「Efficient gene transfer into human hepatocytes by baculovirus vectors」、Proc.Natl. Acad. Sci. USA 92、10099〜10103;Boyce,F.M.およびBucher,N.L.R.(1996)「Baculovirus−mediated gene transfer into mammalian cells」、Proc.Natl. Acad. Sci.USA 93、2348〜2352を参照のこと)。
組換えバキュロウイルスは、遺伝子治療について可能性のあるいくつかの利点を有する。これらは、非常に大きなDNA挿入能力、ヒトにおける予め存在する免疫応答の欠如、哺乳動物における複製の欠如、哺乳動物における毒性の欠如、バキュロウイルス転写プロモーターの昆虫特異性に起因する哺乳動物細胞におけるウイルス性遺伝子の発現の欠如、および潜在的には、これらのウイルス性タンパク質に対して指向される細胞傷害性Tリンパ球応答の欠如を含む。
(IV.効力についての試験/インターフェロンの同定)
インターフェロンポリヌクレオチドは、発現ベクターを介して細胞に投与される。一般に、特定の細胞条件および代謝に対する所定の遺伝子治療ベクターの効力を、以下についてアッセイすることにより試験する:(i)細胞の形態の変化;(ii)細胞増殖の阻害;および(iii)抗ウイルス活性。
単離された細胞において特定のインターフェロン遺伝子産物を発現するための特定の発現ベクターの選択および最適化は、好ましくは、1以上の適切な制御領域(例えば、プロモーター)を有する、このインターフェロン遺伝子を得ること;このインターフェロン遺伝子が挿入されたベクターを含むベクター構築物を調製すること;培養細胞にインビトロでこのベクター構築物をトランスフェクトまたは形質導入すること;およびこのインターフェロン遺伝子産物が培養細胞中に存在するか否かを決定することにより達成される。
インターフェロンをコードするポリヌクレオチドでのトランスフェクションの効果は、多数の容易に利用可能なヒト腫瘍細胞株のうちの任意の1つを用いてインビトロで試験され得る。このような細胞株としては、ヒト膀胱ガン細胞株5637(ATCC HTB9)、ヒト乳ガン細胞株MDA−MB−468(ATCC HTB132);ヒト前立腺ガン細胞株DU145(ATCC HTB81);ヒト骨肉腫細胞株SAOS2(ATCC HTB85);肺ガン細胞株に対して転移性のヒト線維肉腫Hs913T(ATCC HTB152);ヒト子宮頸ガン細胞株HeLa(ATCC ECL2)が挙げられる。これらの細胞株の各々は、インターフェロンをコードする適切なポリヌクレオチドでトランスフェクトされ得、そして細胞増殖および細胞の形態に対するトランスフェクションの効果は、当該分野で公知の手順(例えば、細胞生存率を測定するためのトリパンブルー排除アッセイ、経時的な増殖を測定するための細胞計数、およびDNA複製を測定するためのトリチウムチミジンの取り込み)を用いて試験され得る。
分泌タンパク質をコードする適切なポリヌクレオチドを有するウイルスベクターを含まない周囲の細胞に対するこの分泌タンパク質の効果は、実施例3に記載される方法を用いて容易に試験され得る。
標的細胞に一旦導入されると、インターフェロン配列は、挿入された変異インターフェロン配列に相同/相補的である配列を含むプローブを用いる核酸ハイブリダイゼーションのような従来の方法により同定され得る。インターフェロンの転写は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応により測定され得る。あるいは、インターフェロンタンパク質は、細胞馴化培地において、従来の抗ウイルスアッセイまたはELISAアッセイによって測定される。別のアプローチでは、配列は、標的細胞への発現ベクターの導入により引き起こされる「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性など)の存在または非存在により同定され得る。例えば、インターフェロンβ 1aをコードするポリヌクレオチドが、優性の選択マーカー遺伝子(例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子)をSV40初期プロモーターの別個の制御下で有するベクターに挿入される場合、この配列はマーカー遺伝子機能(ジェネティシン耐性)の存在により同定され得る。適切なベクターを検出する他の方法は、当業者に容易に利用可能である。
(V.有用性)
(A.インターフェロンおよび感染性疾患)
インターフェロンは、細菌、真菌、およびウイルス感染の処置において用いられている。インフルエンザおよび水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、インターフェロンによる阻害に特に感受性であり、そしてしばしばインターフェロン活性の測定のためのアッセイ、およびインターフェロン抗ウイルス活性機構を探求する調査において用いられる。ヒト病原体であり、そしてインターフェロンに感受性であるようである他のウイルスとしては、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ライノウイルス、および脳心筋炎ウイルスが挙げられる。
中でもより魅力的なウイルス疾患標的は、肝炎である。多数のウイルスにより引き起こされる肝臓疾患であるウイルス性肝炎は、世界的な主要な健康的問題である。5つの別個のヒト肝炎ウイルスが単離およびクローニングされている。これらは、A型、B型、C型、D型、およびE型の肝炎である。急性および慢性のウイルス性肝炎のいくつかの症例は、既に特徴付けられた肝炎ウイルス以外の肝炎ウイルス(例えば、新たに発見されたG型肝炎ウイルス)と関連するようである。最大の有病率を有するウイルスは、A型、B型、およびC型である。急性および慢性の肝臓傷害および炎症を引き起こすことに加えて、HBVおよびHCV感染は、肝細胞ガンを導き得る。インターフェロンは、HBVおよびHCVに対してインビボで、ならびにD型肝炎およびA型肝炎に対して細胞培養において、あるレベルの効力が実証されている。
ウイルス性肝炎は、インターフェロン遺伝子の導入により処置され得る。この遺伝子の送達の好ましい標的は、肝臓中の肝細胞である。エクスビボ治療(例えば、肝臓細胞を外植し、続いてインターフェロンを発現するポリヌクレオチドを導入し、次いで患者に移植し戻すこと)は可能であるが、インビボでの遺伝子の送達は、特に好ましい。手術を行って、肝臓の門脈にこの遺伝子を注射するか、またはカテーテルを通してこの遺伝子を肝臓の動脈に注入する。理想的には、静脈内注射のような、より侵襲性の低い診療が用いられる。
インターフェロン遺伝子は、適切な発現ベクターにおいて転写プロモーターの制御下に置かれる。転写プロモーターは、起源が細胞性またはウイルス性(CMV、SV40、RSVなど)であり得る。肝臓特異的遺伝子発現が所望される場合、肝細胞特異的細胞プロモーター(例えば、アルブミンエンハンサー/プロモーター、α1−アンチトリプシンプロモーター、またはHBVエンハンサー/プロモーター)が好ましい。文献に記載される多くの肝臓特異的プロモーターが存在する(下記を参照のこと)。
インターフェロン遺伝子が肝炎感染細胞でのみ発現されるベクターを設計することもまた可能である。例えば、インターフェロン遺伝子の発現は、HBV感染肝細胞にのみ存在するHBV転写因子HBxにより誘導され得る。さらに、「キャリア」系が使用され得る。これは、非ウイルス性送達系(例えば、カチオン性リポソームまたはタンパク質:DNA結合体(DNAとアシアログリコプロテインとの結合体は、肝細胞上のアシアログリコプロテインレセプターへの結合を介して肝臓に優先的に送達され得る))であり得る。
しかし、今日まで、最も効率的な遺伝子送達系は、起源がウイルス性である。組換えレトロウイルスを用いて、ヒト肝細胞にエクスビボで遺伝子を送達している。動物モデルは、組換えアデノウイルスが、インビボでの静脈内投与の後に肝臓に非常に効率的に局在し得ることを示す。静脈内注射したアデノウイルスのうちの約98%が肝臓に局在する。
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)はまた、インビボ投与後に肝臓に感染し得るようである。他の型のウイルス(例えば、アルファウイルス、レンチウイルス、または他の哺乳動物ウイルス)が用いられ得る。近年、非哺乳動物ウイルスである昆虫特異的バキュロウイルスが、肝細胞に効率的に遺伝子を送達し得、そして発現し得ることが示された(Hofmanら,1995;BoyceおよびBucher,1996,前出)。
例として、組換えアデノウイルスを利用してインターフェロン遺伝子をインビボで送達し得る。複製欠損アデノウイルスは、複数のグループにより構築された。このようなウイルスの最初の産生は、E1領域の欠失に起因して欠損性である。この欠損は、アデノウイルスE1領域を発現する293細胞株において補完される。E1、E2a、および/またはE4遺伝子の欠失によって、より広範に無能にした組換えアデノウイルスを使用することが好ましい。これらの欠損した機能の全ては、パッケージング細胞株において発現され得る。インターフェロン遺伝子は、任意の多数のプロモーター(例えば:CMV前初期プロモーター、RSV LTR、細胞アクチンプロモーター、アルブミンエンハンサー/プロモーター、または他の肝臓特異的プロモーター)の下流に置かれる。この遺伝子カセットは、欠失した遺伝子のうちの1つ(例えば、アデノウイルス移入ベクターを作製するためにはE1)の代わりに組換えアデノウイルスベクター中に置かれる。
インターフェロン遺伝子を有する組換えアデノウイルスは、直接連結または標準法によるパッケージング細胞へのトランスフェクション後の相同組換えを介して生成される。インターフェロン遺伝子を有する組換えウイルスストックは、何回もプラーク精製され、次いでパッケージング細胞における大規模生成により拡大される。ウイルスは、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、または他の方法により精製され得、次いでパッケージング細胞において力価測定され得る。E1およびE2aが欠損したアデノウイルス(Engelhardtら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:6196−6200,1994)、ならびにE1およびE4が欠損したアデノウイルス(Gaoら,J.Virology,70:8934−8943,1996)を生成するための方法は、詳細に記載されている。E1が欠損したアデノウイルスを生成するための方法は、Graham,F.L.およびL.Prevec,「Methods for Construction of Adenovirus Vectors」,Mol.Biotech,3:207−220(1995)に見出され得る。
種々の用量のウイルスが、試行において試験される。ウイルスの用量は、10プラーク形成単位(pfu)で開始され、そして1012 pfuまで増加するようである。必要であれば、ウイルスは、(例えば、1〜6ヶ月毎に1回)反復して投与され得る。反復ウイルス投与から生じる体液性免疫応答は、反復投与の有効性を制限し得る。この場合、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンまたはCD40リガンドに対する抗体)がウイルスとともに投与され得る。
ウイルス性肝炎に対するインターフェロン遺伝子治療の効果は、動物モデルにおいて試験され得る(第C節を参照のこと)。例えば、B型肝炎ウイルスの場合、多くのモデルが利用可能である。これらとしては、ウッドチャック、アヒル、ツパイ、ラット、およびマウスが挙げられる。マウスHBVモデルの中に含まれるのは、HBVについてトランスジェニックであり、そしてHBV DNAをその肝臓において安定に複製して循環におけるHBVウイルスの定常的産生を導くマウスである。HCVについては、チンパンジーモデルが利用可能である。インターフェロン遺伝子を有するアデノウイルスは、肝臓に直接投与され得るか、または静脈内注射により与えられ得る。効力は、ウイルスDNA複製、循環中のウイルス粒子、肝臓酵素(ALT)、肝臓の病理および炎症をモニタリングすることにより決定される。
(B.ガン)
インターフェロンタンパク質は、多くの環境(setting)において抗腫瘍活性を有することが示されている。概説については、WadlerおよびSchwartz,Cancer Research 50:3473−3486,1990;Martin−Odegard,DN&P,4:116−117,1991;ならびにSpiegel,Seminars in Oncology 15(5):41−45,1988を参照のこと。インターフェロンαおよびインターフェロンβでの処置は、いくつかのガンに対していくらかの効力を示した。遺伝子療法は、単独で、または従来の手術、照射、または化学療法とともに行われ得る。遺伝子治療に敏感に反応するガンについての以下のリストは、単に部分的なものであり、インターフェロン遺伝子治療は、このリストに含まれない多くの疾患環境において有効であり得るようである。
悪性神経膠腫は、成体における全ての原発性脳腫瘍のうちの60〜80%を占める。ヒト神経膠腫細胞は、免疫欠損(ヌード)マウスに大脳内に移植されて、神経膠腫モデルを提供し得る。インターフェロンβタンパク質処置は、これらのマウスにおける生存を増加させることが示された。神経膠腫におけるいくつかのインターフェロンβタンパク質試行についての問題は、インターフェロンβの非経口的(静脈内または筋肉内)投与後の高い毒性であった。脳へのインターフェロンβ遺伝子の、おそらく手術時の、局所送達は、脳における長期のインターフェロンβ生成を、タンパク質の全身性投与後に見られる副作用を伴わずに生じ得る。
黒色腫は、インターフェロン遺伝子治療の優秀な標的である。転移性悪性黒色腫についての予後は、乏しい。疾患の発生数は、劇的に増加しており、そして従来の化学療法は効果がない。黒色腫は、患者の応答が宿主の免疫応答に依存し得るという点で、免疫原性腫瘍型であるようである。インターフェロンβの抗増殖活性および免疫調節活性は共に、この環境において有効であり得る。本発明者らは、インターフェロンβタンパク質が、培養した悪性黒色腫細胞に対して直接的な抗増殖効果を有することを観察した。
血管腫は、肥満細胞、線維芽細胞、およびマクロファージの蓄積となる毛細管内皮の増殖であり、そして組織損傷をもたらす。通常は無害であるが、血管腫は、必須器官を危険にさらし、そして死を引き起こし得る。インターフェロンαタンパク質は、乳児においてステロイド耐性血管腫の早期後退を誘導することが示された(Martin−Odegard,前出)。
インターフェロンタンパク質は、白血病、リンパ腫、および骨髄腫の処置において有効であることが示された。これらの疾患において示された効力は、インビトロでのガン処置におけるインターフェロンタンパク質の効力が充分に特徴付けられているにもかかわらず、インビボでの効力は通常ずっと低いという一般的な知見とは対照的である。それにもかかわらず、インターフェロンαは、毛様細胞性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫に対してヒト臨床試験において有効である。インターフェロンβタンパク質は、培養中の腎臓細胞ガン細胞の増殖を阻害する。IFN−αは、既に、腎臓細胞ガンの処置における使用が認可されている。
結腸直腸ガンは、米国におけるガン関連死の主要な原因である。IFN−αタンパク質、IFN−βタンパク質、およびIFN−γタンパク質による、培養ヒト結腸ガン細胞に対する強力な抗増殖効果が存在する。結腸ガンは、しばしば悲惨な結果を伴って肝臓に転移を生じる。アデノウイルスまたは他の肝臓向性送達系を用いて、インターフェロン遺伝子をこれらの転移の処置のために肝臓に送達し得る。肝細胞ガンは、アデノウイルスによる肝臓送達の効率が高いことに起因して、魅力的な標的である。IFN−βタンパク質が培養中のヒト肝ガン細胞の増殖を有意に阻害することが観察されている。
インターフェロンタンパク質は、手術不能の非小細胞肺ガン(non−small cell lung carcinoma)の処置における効力が、いくつかの臨床試験において示されているが、他の臨床試験においては示されていない。2つのヒト肺ガン細胞株は、インターフェロンβタンパク質による増殖阻害に感受性であることが見出される(βはαよりも有効であった)。1つの臨床試験では、有意なインターフェロン関連毒性が、インターフェロンの静脈内投与後に観察された。肺へのインターフェロンβ遺伝子の局所送達(おそらく、組換えアデノウイルスベクターのエアロゾル送達による)は、タンパク質の全身性送達後に観察される毒性を伴わずに有効であり得る。インビトロでは、インターフェロンβタンパク質を用いる小細胞肺ガン細胞の増殖阻害が観察された。
インターフェロンαタンパク質は、ヌードマウスにおける乳ガン異種移植片の増殖を阻害する。インターフェロンβは、その抗増殖効果だけでなく、そのエストロゲンレセプターおよびプロゲステロンレセプターのインビボでの誘導により抗エストロゲンタモキシフェンに対して乳ガンを感作することに起因して、乳ガンに対して有効であり得る。本発明者は、ヒト乳ガンのマウスモデルにおけるIFN−β遺伝子治療を用いる実験(実施例3および4を参照のこと)からのデータを示す。
卵巣ガンは、可能な疾患標的である。インターフェロンβタンパク質は、培養卵巣ガン細胞の増殖阻害においてインターフェロンαよりも活性でないようである。この場合、治療は、腹膜への遺伝子治療ベクターの点滴注入により行われ得る。なぜなら、この型の腫瘍は、腹膜腔に満ちる傾向があるからである。
まとめると、インターフェロンタンパク質を用いる臨床結果は一様に陽性であるというわけではないが、インターフェロンタンパク質は、多数の環境において抗腫瘍特性を実証した。IFN−αタンパク質およびIFN−βタンパク質は、従来の化学療法とともに試験され、そして多くの適応症(子宮頸ガン細胞、喉頭ガン細胞、白血病細胞、腎臓細胞ガン、結腸腺ガン、および骨髄腫を含む)においてこれらの薬物との相乗作用を示した。インターフェロンが抗新脈管形成活性を有するとも考えられる。局所IFN−βレベルと新脈管形成能力との間には逆の相関が存在する。いくつかのデータは、持続レベルのIFN−βタンパク質が新脈管形成の阻害に必要であることを示す。この場合、インターフェロン遺伝子治療は、高レベルのインターフェロンタンパク質が極めて迅速に低いレベルまたは検出不能なレベルに低下するタンパク質治療よりも好ましい。
(C.動物遺伝子治療モデル)
当業者は、エキソビボおよびインビボで遺伝子治療を試験するために利用可能である多くの動物モデルを知っている。最も通常に用いられるげっ歯類ガンモデルは、ヌード(nu/nu)マウスにおけるヒト腫瘍異種移植片モデルである。ヒトのガン細胞が、培養中で増殖され、そして適切な発現制御配列に作動可能に連結された、インターフェロンコード遺伝子でトランスフェクトまたは感染される。次いで、これらの細胞は、ヌードマウスに注射される。代表的には、腫瘍細胞がマウスの背中に皮下に注射されて、固形腫瘍塊の形成を導く(実施例1を参照のこと)。あるいは、腫瘍細胞は、腫瘍が自然に出現する器官に正常位に注射され得る(肺ガン細胞は、肺に注射される;結腸ガン細胞は結腸に注射される、など)。次いで、腫瘍増殖の後に、経時的な腫瘍塊の直径の測定が行われ得る(実施例2を参照のこと)。
Okadaら(1996)Gene Therapy 3,957−964は、脳へのヒト神経膠腫細胞の頭蓋内定位直接注射により実験的神経膠腫をマウスにおいて形成した。検出可能な腫瘍が形成された後、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV tk)を発現するAAVベクターは、同じ部位に直接注射された。HSV tk酵素は、非毒性ヌクレオシドアナログであるガンシクロビル(GCV)を毒性の代謝産物に変換する。遺伝子治療後、GCVは、腹腔内に投与された。AAV−tkおよびGCVを受けたマウスは腫瘍サイズの劇的な減少を示したが、コントロールAAVを、またはGCVなしでAAV−tkを受けたマウスは示さなかった。この治療は安全かつ有効であるようであった。
組換えアデノウイルス(AdV)はまた、動物モデルおよび初期のヒト臨床試験において固形腫瘍の処置に用いられた。これらの研究の多くは、類似のヌードマウス/ヒト異種移植片モデルを用いた。これらのモデル構築実験のいくつかの例を下記に列挙する。Claymanら(1995)Cancer Research 55,1−6は、ヌードマウスにおける頭部および頚部のヒト扁平上皮ガンのモデルを提示した。彼らは、野生型p53を発現するアデノウイルスがこれらの腫瘍の形成を妨害することを見出した。
Hirschowitzら(1995)Human Gene Therapy 6,1055−1063は、ヒト結腸ガン細胞をヌードマウスに導入した。腫瘍が樹立された後、彼らは、これらの腫瘍に、E.coliシトシンデアミナーゼ遺伝子(CD)を発現するアデノウイルスを直接注射し、次いで5−フルオロシトシン(5FC)を全身投与した(CDおよび5FCは、tkおよびGCVに類似する酵素/プロドラッグの組み合わせである)。彼らは、腫瘍サイズの4〜5倍の減少を観察した。
Zhangら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,4513−4518は、ヌードマウスにおいてヒト乳房腫瘤を形成した。これらの腫瘍は、インターフェロンαを発現するアデノウイルスとともに直接注射される。彼らは、100%の動物において腫瘍の後退を観察した。
Koら(1996)Human Gene Therapy 7,1683−1691は、ヒト前立腺腫瘍をヌードマウスにおいて形成し、そして野生型p53を発現するアデノウイルスの腫瘍内直接注射が腫瘍の増殖を阻害することを見出した。全ての処置マウスは、処置の中止の少なくとも12週間後まで腫瘍がないままであった。
Bischoffら(1996)Science 274,373−376は、ヒト子宮頸ガンおよび神経膠芽細胞腫の腫瘍をヌードマウスにおいて形成した。彼らは、これらのマウスを、E1B遺伝子が欠失したアデノウイルスで処置した。E1Bの非存在下では、アデノウイルスは、p53欠損腫瘍細胞を選択的に殺傷する。腫瘍に直接注射した場合、このアデノウイルスは動物のうちの60%において腫瘍後退を引き起こした。
Ohwadaら(1996)Human Gene Therapy 7,1567−1576は、ヒト結腸ガン細胞をヌードマウスの肝臓に注射して、結腸ガンの肝臓転移を模倣した。次いで、彼らは、CDを発現するアデノウイルスを腫瘍の近傍の肝臓に注射した。5FCでの全身処置は、これらの動物における腫瘍増殖を抑制した。
ガンモデルはまた、免疫応答性マウスおよびラットにおいて提示され得る。これらの腫瘍は、マウスに注射される同系げっ歯類腫瘍細胞から樹立され得る。あるいは、腫瘍は、内因性細胞に由来し得る。これらの場合、内因性腫瘍は、発癌物質での動物の処置に起因し得るか、あるいはマウスの遺伝的背景(例えば、p53の欠損)に起因して自発的に形成され得る。いくつかの例が続く。
Elshamiら(1996)Human Gene Therapy 7,141−148は、免疫応答性ラットにおける内因性中皮腫を、tk遺伝子を発現するアデノウイルスで処置した。このウイルスは、胸膜腔に注射され、次いでGCVが全身投与された。彼らは、腫瘍の重量の劇的な減少および生存時間の増加を示した。
Easthamら(1996)Human Gene Therapy 7,515−523は、同系マウス前立腺腫瘍細胞株を免疫応答性マウスに皮下移植した。彼らは、アデノウイルス−tkをこの腫瘍に直接注射し、そしてGCVで全身処置した。著者らは、腫瘍サイズの減少および生存の長期化を報告した。
Bramsonら(1996)Human Gene Therapy 7,1995−2002は、サイトカインIL−12を発現するアデノウイルスを、内因性マウス乳房腫瘤に直接注射した。彼らは、マウスのうちの75%が腫瘍の後退を有し、そして33%が長期間の後に腫瘍がないままであったことを見出した。
Rileyら(1996)Nature Medicine 2,1336−1341は、網膜芽細胞腫遺伝子を発現するアデノウイルスを、Rb+/−マウスにおいて自然に生じた下垂体メラニン細胞刺激ホルモン産生細胞の腫瘍に直接注射した。彼らは、処置動物における腫瘍細胞の増殖の減少、腫瘍増殖の減少、および寿命の長期化を見出した。
レトロウイルスベクターは、ヒトの遺伝子治療臨床試験において用いられた最初のベクターである。本特許出願に関連する1つの報告は、Rothら(1996)Nature Medicine 2,985−991の報告である。彼らは、野生型p53遺伝子を発現する組換えレトロウイルスを生成した。このウイルスは、非小細胞肺ガンを有する9人のヒト患者に、気管支鏡に挿入された針を用いて腫瘍内直接注射により導入された。9人の患者のうち、3人は腫瘍の後退を示したが、他の3人の患者は腫瘍増殖の安定化を示した。
(D.他の実施態様)
遺伝的に改変された細胞は、例えば腹腔内注射により、あるいはこのレシピエントの細胞適合性部位において、この細胞を、またはこの細胞を含む移植片もしくはカプセルを移植することにより投与される。本明細書中で使用される場合、「細胞適合性部位」は、この遺伝的に改変した細胞、細胞移植片、またはカプセル化した細胞発現系が、有害な生理学的結果を誘発せずに移植され得るレシピエントの構造、腔、または流体を言う。例えば代表的な細胞適合性部位には、腹膜腔、胸腔、および心膜腔、ならびにこの細胞が由来するところの固形腫瘍、またはこの腫瘍が除去されるところの器官がある。
この遺伝的に改変した細胞は、細胞適合性部位に、単独でまたは他の遺伝的に改変した細胞と共に移植され得る。従って、本発明は、第1の改変した細胞は第1のインターフェロンを発現し、第2の改変した細胞は第2のインターフェロンまたは他の分泌タンパク質を発現するような、遺伝的に改変した細胞の混合物を使用することにより、レシピエントの系を改変する方法を採用する。他の遺伝的に改変した細胞型(例えば、肝細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはケラチノサイト)が遺伝的に変化した細胞と共に添加され、導入した遺伝子の複雑なセットの発現を生じる。さらに、同一のまたは異なるベクター上の、1つより多い組換え遺伝子は、それぞれ遺伝的に改変された細胞に導入され得、これにより単一の細胞による複数のインターフェロンの発現を可能にする。
本発明はさらに細胞移植片を包含する。この移植片は、哺乳動物のレシピエントへの移植に適する支持体へ付着される多数の上述の遺伝的に改変した細胞を含む。この支持体は、天然の物質または合成物質から形成され得る。別の実施態様において、この移植片は、腹膜の斑を含む。この実施態様によると、この支持体は、多数の遺伝的に改変した細胞を一緒に保有する天然に存在するマトリックスである。あるいはこの移植片は、天然に存在するマトリックスの置換物に付着される多数の上述の細胞を含む(例えば、Gelfoam(Upjohn,Kalamazoo,Mich.),Dacron,Cortex(登録商標))。
本発明の別の局面によると、カプセル化した細胞の発現系が提供される。このカプセル化した系は、哺乳動物レシピエントへの移植に適するカプセルおよびそこに含まれる多数の上述の遺伝的に改変した中皮細胞を含む。このカプセルは、合成物質または天然に存在する物質から形成され得る。このようなカプセルの処方は当該者らに公知である。哺乳動物レシピエントに直接移植される細胞(すなわち、遺伝的に改変した細胞がこの細胞適合性部位と直接物理的に接触しているような様式で移植される)と対照的に、このカプセル化した細胞は移植後単離したままである(すなわち、この部位と直接物理的な接触をしていない)。従ってこのカプセル化した系は、遺伝的に改変した非不死化細胞を含有するカプセルに限定されないが、遺伝的に改変した不死化細胞を含み得る。
(VI.処方)
好ましい実施態様において、遺伝的に改変した細胞の調製は、治療的有効用量のインターフェロンをレシピエントにインサイチュで送達するに充分な量の細胞を含む。既知の条件についての特定のインターフェロンの治療的有効用量の、決定は、過度の実験を必要とせずに、当業者の技術の範囲内である。従って、有効用量を決定する際に、当業者は、患者の状態、状態の重症度、ならびに投与される特定のインターフェロンの臨床の研究の結果を考慮する。
この遺伝子またはこの遺伝的に改変した細胞が薬学的に受容可能なキャリアに既に存在しない場合、それらはこのレシピエントに投与する前にこのようなキャリアに配置される。このような薬学的に受容可能なキャリアには、例えば等張の生理食塩水およびこの患者および治療に適切な他の緩衝液が挙げられる。
この用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、インターフェロンをコードする単離されたポリヌクレオチドが結合してその適用を容易にする天然の、または合成の1つ以上の成分を意味する。適切なキャリアには滅菌生理食塩水が挙げられるが、薬学的に受容可能であることが知られる他の水溶性および非水溶性の等張滅菌溶液および滅菌懸濁液は当業者らに公知である。この点について、用語「キャリア」は任意のプラスミドおよびウィルス発現ベクターを含む。「有効量」とは、疾患の、変性の、または損傷の状態の進行を回復または遅延させ得る量を言う。有効量は個々の根拠に基づいて決定され得、そして部分的に処置されるべき症状の考慮および探求された結果に基づく。有効量は、このような要素を使用して、そしてただ慣用的な実験を使用して当業者により決定され得る。
好ましい方法において、その付帯ベクター(すなわち「キャリア」)内に含まれるインターフェロンポリヌクレオチド配列の有効量は注射針を用いた直接の注射を介して、あるいはガンもしくは腫瘍またはこの腫瘍に送る血管中に配置したカテーテルもしくは他の送達チューブを介して、標的細胞または腫瘍組織に直接投与され得る。投薬量は主に、処置される条件、選択されたインターフェロン、年齢、体重、および被検体の健康のような因子により、従って被検体間で変化し得る。ウィルス遺伝子治療ベクターが使用される場合、ヒト被検体についての有効量は、ウィルス発現ベクターを含む、約1×10〜約1×1012プラーク形成ユニット(pfu)/mlインターフェロンを含む生理食塩水の約0.1〜約10mlの範囲であると考えられる。
上述のとおり、IFN遺伝子は直接の注射により固形腫瘍に投与され得る。あるいは、この腫瘍への送達は、この腫瘍に送る血管への注入により行われ得る。このベクターの非経口的な投与はまた可能である。インターフェロンをコードするポリヌクレオチドは、局所的に、眼内に、非経口的に、鼻腔内に、気管内に、気管支内に、筋肉内に、皮下に、または任意の他の手段により投与され得る。非経口的投与には、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下が含まれる。より高性能なアプローチは、ウィルス、あるいは天然の向性による、または特定の腫瘍型にのみ見られるレセプターへ結合する表面分子の存在により、異なる腫瘍型に対し局在化する化学的な結合体の非経口的投与であり得る。
上述のとおり、本発明は哺乳動物レシピエント中に遺伝子産物(例えば、インターフェロン)を発現する細胞表現系を形成する方法、これにより生産された発現系、およびこれを含む薬学的組成物を提供する。以下の実施例は、動物モデル系における細胞遺伝子治療の実行可能性を実証に関する。
本発明によれば、インターフェロンが、固体腫瘍の処置において単独または従来の化学療法剤と組み合わせて使用される有効な治療が提供される。
(実施例1:例示的動物モデル)
動物モデルにおいて、インターフェロンを発現し得るポリヌクレオチドのインビボ試験を都合よく達成する。腫瘍を、ヒト腫瘍細胞株のマウスへの注射によりヌードマウス中に形成する。このヌードマウス(nu/nu株)は免疫不全性で、かつ外来腫瘍細胞を拒絶しない。腫瘍細胞注射後1〜2週間で腫瘍は形成するが、この正確な時期は注入された細胞の数およびこの細胞株の腫瘍形成能による。インターフェロンを発現するポリヌクレオチドを、このマウスへの注入前の培養物内で、従来のトランスフェクション手順により、この腫瘍細胞中に導入する。あるいは、この適切なポリヌクレオチドを、この腫瘍がこのマウスに形成された後、トランスフェクションまたはインビボウィルス形質転換により腫瘍中に導入し得る。
月ツスフェクトーよりる468腫瘍の組織学的な分析を行った。さら 1つだが実施例として、この使用された細胞は、膀胱腫瘍細胞株HTB9(Huangら、前出)であるか、網膜芽細胞腫細胞株WERI−Rb27であるかのいずれかである(共に、Takahashiら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 88:5257−5261,1991)。培養物中のインターフェロンをコードする単離したポリヌクレオチドの送達について、腫瘍細胞をトランスフェクトするか(リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、またはリポフェクトアミン(lipofectamine)トランスフェクションのような従来の手順を使用する)、または直接感染させる(レトロウィルス、アデノウィルス、バキュロウィルス、またはアデノ随伴ウィルス)。100%の細胞が適切なポリヌクレオチドを首尾良く取り込んだ効果的なウィルス感染の場合、細胞の選択は必要ない。さらに、ほんの少しのパーセントの細胞がこのインターフェロン遺伝子を発現する必要があるので、薬剤選択は通常必要とされないことを見い出した(実施例3)。
本明細書中に記載されたウィルス感染ほど効果的ではないトランスフェクションの場合に選択が行われるならば、細胞を、薬剤耐性遺伝子(例えば、G418耐性をコードするneo遺伝子)およびこのインターフェロン遺伝子のようなポリヌクレオチドを共にコードする発現ベクターでトランスフェクトする。対照のトランスフェクションはこの薬剤耐性遺伝子のみをコードするベクターである。
この薬剤を含有する培地中における選択の約2〜3週間後、この細胞コロニーはプールされ、そして約100ulの容量中、約10の細胞数でnu/nu(ヌード)メスマウスの脇腹に、皮下に注射される。ウィルス感染した細胞は、選択工程の必要なしに直接注射される。このマウスはさらに少なくとも2ヶ月間維持され、かつ腫瘍サイズは、キャリパを使用し毎週モニターされる。
あるいは、トランスフェクトされない腫瘍細胞、または感染されない腫瘍細胞はこのマウスの脇腹に、皮下に注射される。腫瘍形成後、インターフェロンをコードするポリヌクレオチドを含むDNAまたはウィルスは、この腫瘍中に直接注射される。多くのウィルスはこの手順に適切であるが、組換えアデノウィルスは最も効率的であり、そして組換えレトロウィルスはこの腫瘍細胞ゲノムに安定的に組込まれる利点がある。DNAは、このDNAをカチオンのリポソームと混合し、そしてこの混合物を注入することでこの細胞に導入され得る。このインターフェロン遺伝子を含有しないDNAまたはウィルスは、対照として役立てるために他のマウスの腫瘍に注入される。腫瘍の進行または縮小を、キャリパを用いてモニターする。
(実施例2:例示的肺ガンモデル)
さらなる実施例として、インターフェロンをコードするリポソームにカプセル化された、単離したポリヌクレオチドを用いるヒト小細胞肺ガンの処置を、リポソーム、特に小粒子リポソームエアロゾルを使用するこのような処置を必要とする細胞中に、インターフェロンをコードするポリヌクレオチドを導入することによりインビボで行い得る。エアロゾルを介して投与すると、インターフェロンをコードするポリヌクレオチドが、鼻咽頭の表面で、気管支樹で、および肺動脈弁区中に一様に沈着する。リポソームエアロゾルの議論について、Knight and Gilbert,Eur.J.Clin.Micro.and Infect.Dis.,7:721−731(1988)を参照のこと。この方法で肺ガンを処置するめに、インターフェロンをコードするポリヌクレオチドを、任意の他の簡便な方法により精製する。インターフェロンをコードするポリヌクレオチドをリポソームと混合し、そして高い有効性でそれらに取り込む。このエアロゾル送達は緩やかで、かつ正常なボランティアおよび患者により充分に許容されるので、インターフェロンをコードするポリヌクレオチドを、含有するリポソームを任意の段階の肺ガンを罹患している患者を処置するために投与する。このリポソームを、鼻吸入によりまたは噴霧器に接続した気管内チューブにより、腫瘍の増殖を阻害するに充分な用量で送達する。エアロゾル投与処置を、必要な繰り返しを伴い、2週間毎日投与する。
正常位の小細胞肺ガンを使用するインビボの研究を、胸腺欠損の(nu/nu)ヌードマウスの右の主流の気管支に注入された腫瘍を使用して実施し得る(1マウスあたり約1.5×10細胞)。3日後このマウスは、リポソームカプセル化したインターフェロン遺伝子およびこのインターフェロン遺伝子配列を欠く対照を気管支内に接種される処置(連続3日間毎日)のコースを開始する。腫瘍形成およびサイズを、両方の処置の後、キャリパを用いて測定し、そしてマウスの生存を評価する。
(実施例3:インターフェロンβ1a遺伝子を用いたエキソビボ遺伝子治療)
この実施例において、本発明者はヒト乳房ガン細胞株MBA−MD−468(アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手した)を使用する。細胞はヒトインターフェロン−β1a遺伝子を発現するアデノウィルスで感染されていないかまたは感染されているかのいずれかである。この場合、このアデノウィルスはE1遺伝子を欠失しており、かつE2a遺伝子中に温度感受性変異を有する。この特定のアデノウィルスを産生する方法は、Engelhardtら,(1994),Gene Therapy 5:1217−1229(さらなる詳細については以下をまた参照のこと)に見い出され得る。手短には、このインターフェロンβ1a遺伝子を遺伝子転写がCMV IE1プロモーターにより駆動されるような、アデノウィルスベクターpAdCMVlink1に前もってクローン化し、これによりアデノウィルストランスファープラスミドを作成した。この遺伝子を欠失したE1遺伝子に代わりこのベクターに挿入した。このインターフェロン遺伝子を有する組換えアデノウィルスを、このトランスファープラスミドおよび293細胞中のアデノウィルスゲノムの組換えにより産生する。ウィルスをプラーク精製し、そして従来の方法によりプラークアッセイにおいて滴定(titer)した。
(材料および方法)
(細胞培養)ヒトガン細胞MDA−MB−468、Huh7、KM12LA4、ME180、HeLa、U87、および293を、10%ウシ血清、2mMグルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシン、必須でないアミノ酸、ならびにビタミンを含有するダルベッコ改変イーグル培地中に接着性の培養物として維持する。
(精製したアデノウィルスの産生)サイトメガロウィルス初期プロモーター、により駆動されるヒトIFNβ遺伝子をコードするアデノウィルストランスファーベクター(pAdCMV−huIFNβ)を、ヒトINF−β1aをコードするcDNA挿入物をプラスミドpAdCMVlink1に連結することにより構築する(Engelhardtら,1994前出を参照のこと)。プラスミドpAdCMV−huIFNβを、温度感受性アデノウィルスH5ts125から精製されたゲノムDNAとともに、293細胞に同時トランスフェクトする。個々のプラーク由来の組換えアデノウィルスを使用し、293細胞を39℃で感染し、そしてこの上清をELISAアッセイによりIFN−β遺伝子発現について試験する。IFN−βcDNA(H5.110hIFNβ)を有するアデノウィルスを同定し、さらに増幅した。同様に、比色マーカーβガラクトシダーゼ(H5.110lacZ)をコードするコントロールE2A温度感受性アデノウィルスを作成する。ウィルス調製を293細胞で産生し、かつ2回のプラーク単離後CsCl勾配で精製する。それらが野生型アデノウィルスの存在についてネガティブであることを示した。
細胞を、2%ウシ血清を含有する3mlの培地中100の感染多重度(MOI)でH5.110hIFNβを用いて感染する。15時間から18時間後、上清が収集され、IFNβ濃度はELISAアッセイによって定量する。
(ELISAアッセイ)96ウェルプレートを一晩4℃で、抗ヒトIFNβ抗体、B02でコートする(Summit Pharmaceuticals Co.,Japan)。この抗体を50mM炭酸水素/炭酸ナトリウム、0.2mM MgCl、および0.2mM CaCl(pH9.6)を含むコーティング緩衝液中、10μg/mlで使用する。このプレートをPBS中1%カゼインを用いて1時間室温でブロックした後、1%カゼインおよび0.05%Tween−20に希釈したIFNβタンパク質標準(AvonexTM,Biogen)のIFNβサンプルを添加する。次にこのプレートを室温で、抗IFNβウサギ血清と共に(1:2000希釈)1時間、ロバ抗ウサギ抗体を結合した西洋ワサビペルオキシダ−ゼ(HRP)と共に(Jackson Immuno Research,1:5000希釈)1時間、およびこの基質溶液(4.2mM TMBおよび0.1M酢酸ナトリウム−クエン酸ナトリウムpH4.9)と共に連続的に室温でインキュベートする。この反応を2N HSOにより停止した後、吸光度を450nmで測定した。
(マウス実験)4〜6週齢のメスBalb/c nu/nuマウスをTaconicファーム(Boston,Massachusetts)から入手する。全てのマウスは、各試験の前、少なくとも2週間は、病原性のないBiogen動物施設中に維持する。エキソビボ実験について、感染したおよび感染しなかった細胞を、トリプシン/EDTA溶液で収集し、PBSで2回洗浄する。これらの細胞は、マウスに注入する直前に、下記の比率で混合する。100μlのPBS中に全部で2×10細胞を、右の脇腹の皮下に移植した。腫瘍サイズはキャリパを使用して長さおよび幅を測定し、そして平均腫瘍直径(mm)として表す。
インビボ直接注入実験(実施例4)について、100μl/PBS中2×10腫瘍細胞をまずヌードマウスに皮下に移植する。腫瘍サイズが直径5〜6mmに達した場合、組換えアデノウィルスの種々の用量を含有する100μlのPBSを単回注入で腫瘍の中心に直接注入する。腫瘍は、キャリパを使用して長さおよび幅をモニターする。腫瘍サイズはこの長さおよび幅を平均化することで計算する。動物の死は、このなかで腫瘍が出血の兆しを示し始めたか、または全体重の10%に達したマウスを屠殺することと定義しする。アポトーシスは、Oncor,Inc.(Catalog#S7110−KIT)により提供されるインサイチュアポトーシス検出キットを使用して調査する。
(結果)
本発明者は最初にアデノウィルスベクターの形質転換の有効性およびトランスジーン発現を評価した。ヒト乳房ガン細胞MDA−MB−468は、漸増する多重度感染(MOI)のH5.110lacZで感染した。X−gal染色後、本発明者は、100のMOIで、この遺伝子形質導入の有効性はこれらの細胞中約100%に達したことを見積もった(データ示さず)。従って、この乳房ガン細胞は、1細胞あたり100プラーク形成ユニット(pfu)の比で培養物中に感染される。なぜならこれらのガン細胞を用いた本発明者らの経験は、これがこの集団における全ての細胞でこの遺伝子の発現を導く最も低いウィルス:細胞比であったことを示した。
最初の実験について、注入後18時間、2×10細胞を各ヌードマウスの背中の皮下に注入する。5匹のマウスは、感染されていない細胞で注入し、かつ5匹のマウスはアデノウィルスIFNβで感染した細胞で注入する。有意なサイズの腫瘍は、対照の感染されていない細胞で注入した全てのマウスで生じた。腫瘍は、IFNβ(H5.110hIFNβ:表1)を発現するアデノウィルスで処理した細胞で感染した任意のマウスに現れなかった。
腫瘍細胞のIFNβタンパク質へのインビトロ曝露がインビボの腫瘍形成能の損失を導き得る可能性を除外するために、本発明者は、ウィルス感染後18時間して検出したタンパク質濃度の、IFNβタンパク質をもちいてMDA−MB−468細胞を処理した。徹底的な洗浄後、同数の処理した細胞または未処理細胞、あるいは10%処理細胞を含む混合物をこのヌードマウスに注入する。腫瘍の発達を、全て3つの群のマウスに観察する(データは示さず)。このことはエキソビボIFNβ遺伝子送達は腫瘍形成の阻害に重要な意味を持つが、インビトロタンパク質処理はそうでないことを示す。
IFNβ遺伝子を発現するガン細胞が形質導入されていない細胞の破壊を導き得るかどうかを決定するために、以下の実験を行なう。この同じガン細胞が、IFNβ遺伝子(H5.110hlIFNβ)を発現するアデノウィルスで感染されていないか、感染されているか、あるいは全く抗ガン効果を有することが予期されないβガラクトシダーゼレポータータンパク質をコードするlacZ遺伝子(H5.110lacZ)を発現する以外は同型のアデノウィルスで感染されるかのいずれかであり、従ってこのアデノウィルス自身による任意の効果についての対照である。全てのアデノウィルス感染は、100のpfu:細胞比で行なう。本発明者は、MDA−MB−468腫瘍細胞を100のMOIでH5.110hIFNβまたはH5.110lacZを用いて別々に感染した。感染後18時間で、この感染した細胞を収集し、そしてそれらの一部をマウスへの注入直前に感染していない細胞で混合した。Balb/cヌードマウスに、同数の感染した細胞、感染されていない細胞、もしくは10%の感染した細胞および90%のこのウィルスに曝露されなかった細胞を含有する混合物を用いて皮下に移植した。腫瘍増殖を12日後にモニターする。感染されていない細胞で移植した全てのマウスが腫瘍を発達させる一方で、どの腫瘍も100%H5.110hIFNβまたはH5.110lacZ感染した細胞を受け入れたマウスで観察しなかったが、これはいずれかのウィルスによる感染が腫瘍形成能を破壊し得ることを示唆する(表1)。しかし10%H5.110lacZ感染した細胞を受け入れた全てのマウスが腫瘍を発達させた一方で、10%H5.110hIFNβ感染した細胞を受容した全てのマウスは発達させなかった。従って、H5.110lacZ感染は、この既に感染した細胞の腫瘍形成を抑制するに充分であるが、同時注入した未処理のおよび感染していない細胞の腫瘍形成能ブロックしそこなった。対照的に、10%の細胞におけるH5.110hIFNβによる形質導入は、このウィルスにより形質導入された細胞ならびに形質導入されなかった細胞の腫瘍形成能を抑制するに充分であった。100%形質導入集団中、H5.110lacZによる腫瘍形成の阻害は、一般的ないくらかの毒性効果、またはこのアデノウィルスの産生のいくらかの抗腫瘍効果に起因し得るが、形質導入細胞にインビトロで複製する能力があったことは記されるべきである(未公開データ)。
腫瘍形成能を抑制するのに必要なインターフェロンを含むウィルスの量を確立するために、このH5.110hIFNβおよびH5.110lacZ感染腫瘍細胞を、各事例において感染していない細胞が過剰にあるような多様な比率で、感染されていない細胞と別々に混合する。この混合は、異なる試料がこのアデノウィルスで感染された10%、3%、1%、0.3%細胞、および感染されていない残りからなる。混合後直ちにこの細胞はこのヌードマウスに注入される。この結果を表1に示す。この腫瘍直径を細胞の注入後種々の時間で、二次元で測定する。表1中の各データの点は、4匹のマウスからの横方向、および縦方向の直径測定の、平均の+/−標準偏差を表す。測定は、この腫瘍細胞の注入後12、19、26および33日で行った。
Figure 0003953458
腫瘍の発達は、1%程度のH5.110hIFNβ形質導入細胞を受け入れたマウス中で完全にブロックされた(表1)。この細胞の注入後、最初の週で、非常に小さい腫瘍を10、3、および1%のH5.110hIFNβを注入したマウス中で検出し得た(これらは感知可能であるが、測定するに充分大きくはない)。しかしこれらの小さい腫瘍の全ては、9日目で完全に後退した。このことは、幾つかの細胞は短い期間生存し、かつこの期間中IFNβ遺伝子を発現したことを示唆し、この全腫瘍の死へと導く。ヌードマウスにおいてこの細胞株で行った幾つかの実験において、1%の細胞をH5.110hIFNβで形質導入し、かつ100%が生存していた場合、腫瘍形成は決して観察されなかった(データは示さず)。0.3%H5.110hIFNβ形質導入細胞を受け入れたマウスは腫瘍を発達させたが、これらの腫瘍のサイズは対照マウスのサイズより有意に小さく、この0.3%群の、5匹のうちの2匹は、33日目までに完全に後退した(表1)。
対照的に、10%〜0.3%H5.110lacZ処置細胞を受け入れたマウスは未感染群と類似のサイズの腫瘍を発達させ、どの腫瘍の後退もこれらの対照群のいずれにおいても観察されなかった(表1)。
明らかに、ほんの非常に小さいパーセントの細胞におけるヒトインターフェロンβ(hIFN−β)の発現が、ヌードマウスにおいて腫瘍形成能をブロックするようであった。本発明者はさらに、腫瘍形成に影響を及ぼすが必然的にブロックせず、かつマウスの生存を促進するのに要求されるH5.110hIFNβ感染細胞についての最も低い比率を調査した。0.3%、0.1%、0.03%、0.01%および0%H5.110hIFNβ感染細胞を含む同数のMDA−MB−468細胞をヌードマウスに移植し、そして腫瘍増殖をモニターした。0.3%または0.1%感染細胞を受け入れたマウスは、未感染細胞のみを受け入れたマウスと比較して、ずっと小さな腫瘍を発達させる(図1A)。0.3および形質導入で形成された腫瘍の5つのうちの3つ、および0.1%形質導入で形成された腫瘍の5つのうちの1つの腫瘍が、それぞれ完全に後退した。有意に延長された生存が、0.3%および0.1%形質導入群中で観察された。0%、0.01%、または0.03%感染した細胞の移植が75日以内に、全ての動物の死を生じる一方で、0.1%および0.3%群のそれぞれにおいて、5匹のうちの1匹および5匹のうちの3匹の動物が、109日目のこの実験の終了時に、腫瘍を生じさせずに生存していた(図1B)。
全ての腫瘍細胞のほんの小さな部分(約0.3%より大きく、好ましくは約1.0%より大きい)が、効力を有するためにトランスフェクトまたは感染されることが必要であると思われる。これは、この腫瘍における全ての細胞が腫瘍抑制遺伝子を獲得する必要がある野生型腫瘍サプレッサー(例えば、p53)の送達のような、抗ガン遺伝子治療アプローチとは異なる。
従って、このインターフェロン遺伝子は、インビトロ感染後インビボで強力な抗増殖性効果を実証する。対照は、これがアデノウィルスよりもインターフェロンに起因したことを示す。
(他のヒト異種移植片腫瘍におけるエキソビボIFNβ遺伝子治療)
本発明者はまた、このエキソビボヒト異種移植片モデル中の他の腫瘍細胞型におけるH5.110hIFNβ形質導入の効果を試験した。ヒト結腸ガン細胞KM12L4A、ヒト肝臓ガン細胞Huh7、またはヒト子宮頚ガン細胞ME180をH5.110hIFNβで形質導入する。10%、1%、または0%形質導入細胞を含有する同数の細胞を、ヌードマウスにおいて腫瘍を形成するそれらの能力について試験する。3つの型の未感染細胞の注入は、全てのマウスにおいて速く増殖する腫瘍の形成を引き起こす。対照的に、10%H5.110hIFNβ感染細胞のエキソビボ送達は、試験した全ての動物において、腫瘍の発達がないように導くか、またはよりゆっくりと増殖する腫瘍の遅延状況に導く(図2A)。H5.110hIFNβによる1%形質導入が完全に腫瘍形成を妨害するMDA−MB−468細胞を用いて得られた結果とは異なり、これら3つの細胞型の1%形質導入は腫瘍の形成をもたらすが、それらのサイズは各時点での未感染対照より小さい。10%および1%形質導入細胞を受け入れたマウスは、未感染細胞を受け入れたマウスと比較して延長された生存を示す(図2B)。従って、多数の異なる腫瘍細胞へのエキソビボアデノウィルス媒介IFNβ遺伝子送達は、腫瘍形成能の効率的な阻害をもたらし、かつ動物生存時間の増加を導く。
(実施例4:インターフェロンβ1a遺伝子を用いたインビボ遺伝子治療)
エキソビボアプローチの代わりに、直接インビボ遺伝子治療を行い得る。インビボ遺伝子治療において、この遺伝子を直接的に患者に投与する。この実施例において、ヒトIFNβ遺伝子(H5.110hIFNβ)を有するアデノウィルスを直接的に固体腫瘍に注入する。簡単には、2×10MBA−MD−468ヒト乳房ガン細胞を、50のヌードマウスの背中に皮下注入した。約5〜6mmの直径の皮下腫瘍は、MDA−MB−468細胞の皮下注入の24日後に、ヌードマウス中に形成する。このとき、腫瘍を、単回腫瘍内注入において、1×10〜3×10pfu/マウスの範囲である多様なウィルス用量で、PBS、あるいはH5.110hIFNβおよびH5.110lacZベクターで処置した。
図3に示すデータは、14日以内に、3×10、1×10、または3×10全pfuでH5.110hIFNβを用いた単回用量処置が腫瘍後退を引き起こすことを示す。完全な腫瘍後退はこの3×10pfu群中5匹のマウスのうち4匹、および1×10pfu処置群中5匹のマウスのうち3匹で生じる。1×10pfuのH5.110hIFNβを注入した腫瘍において、約1500IU/mlの高度に局所的なINFβ濃度が検出され得、一方、37IU/mlのみのINFβが血清中で検出される。1×10、3×10、および1×10pfuを含むより低いH5.110hIFNβ用量はほとんどまたは全く効果がなく(図3およびデータは示さず)、この抗腫瘍応答は用量依存性であることを示す。等価な用量でのPBSまたはH5.110lacZの注入は腫瘍後退を導かない(図3)。この腫瘍がより長い期間にわたりモニターされた場合、緩やかな増殖および後退が、3×10pfuでH5.110lacZを注入した幾つかの個々の腫瘍中に観察され、この対照ウィルスはその用量で腫瘍増殖の軽い阻害を引き起こし得ることを示唆する。3×10、1×10、または3×10pfuでH5.110hIFNβを用いた処置はPBSまたはH5.110lacZ処置マウスに対して、生存を有意に増加する(データは示さず)。本発明者らはまた多回注入を試験し、確立したMDA−MB−468およびHeLa腫瘍に3日おきに与えられた1×10pfu H5.110hIFNβの5注入は、両腫瘍型のよりゆっくりとした増殖および後退をもたらす(未公開)。本発明者はまた、ヒト神経膠細胞株U87を使用する類似のインビボ実験を行った。これらの細胞は、完全な腫瘍後退が1×10pfu H5.110hIFNβで処置された4匹のマウスのうち4匹、および1×10pfuで処置された4匹のうちの2匹に見られるように、IFNβに対して非常に感受性であった(データは示さず)。これらの所見は、IFNβ遺伝子の直接および局所のインビボアデノウィルス送達が、有意な抗腫瘍効果を及ぼし得ることを実証する。
1×10pfuウィルスを注射した4日後,このMDA−MB−468腫瘍を組織学的試験のために収集する。そのときに、H5.110hIFNβを注射した腫瘍は後退の徴候を示す。ヘマトキシリン−エオシン染色によるMDA−MB−468腫瘍の組織学的分析を行う。H5.110lacZ注入腫瘍においてよりも、H5.110hIFNβ注入腫瘍に、より多くのアポトーシス細胞が見られる。本発明者は、末端標識したフラグメント化ゲノムDNAの直接蛍光検出によりアポトーシスを確認した。非常に少数の浸潤単核細胞が、H5.110hIFNβまたはH5.110lacZ注入腫瘍中に観察され、この細胞性免疫応答はこのモデルにおけるH5.110hIFNβが指向する腫瘍後退において主な役割を果たし得ないことを示す。
上述に示されるエキソビボおよびインビボ実験は共に、インターフェロンの直接の抗増殖性効果のみを測定する。これらは免疫不全性のマウスであるので、腫瘍破壊を刺激し得るインターフェロンが有するどの免疫刺激活性も存在しない。またインターフェロンはヒトからマウスへの種を交差しないので、これらのマウスにおいてヒトガン細胞を阻害するために用いられるこのヒトIFNβは、このヒトIFNβがマウス血管内皮細胞で作用しないので、血管形成を阻害するとは予期されない。従って、ヒト患者がヒトIFNβを有するアデノウィルスで処置された場合、さらにより多い劇的な抗ガン活性が見られる可能性がある。これは、免疫適格(immune−competent)非ヒト霊長類においてモデル化され得た。あるいは、マウス起源の腫瘍を有する免疫適格マウスにおいてマウスIFNβ遺伝子を有するアデノウィルスを使用し得た。これらの同系マウス腫瘍モデルの多くが利用可能である。
ここで提供されたデータは、新規の腫瘍の形成をブロックするための、ならびに確立した腫瘍の後退を引き起こすためのIFNβ遺伝子治療の顕著な能力を実証する。このエキソビボ形質導入実験は、強力な分泌タンパク質の0.3%〜1.0%程度形質導入細胞への導入がMDA−MB−468腫瘍の確立をブロックすることを確認した。多様な他の腫瘍細胞株を試験し、そしてIFNβ効果の効力に変動があるが、全てが1〜10%のIFNβ形質導入細胞でブロックされ得た。腫瘍形成に影響するに必要な相対的に小さなパーセントのIFNβ分泌細胞により刺激されるが、次に本発明者は、前形成された(pre−formed)腫瘍をこのアデノウィルスの直接腫瘍内注入でチャレンジした。再びこのIFNβ遺伝子送達の効果は強力であり、ウィルスの単回注入は、部分的な、またはある場合は完全な腫瘍後退をもたらした。
これらの研究において、この腫瘍の劇的な後退は主に、IFNβの直接の抗増殖性または細胞傷害性活性の結果であるようであった。この結果は、この研究において使用されたIFNβ遺伝子がヒト起源のものであるという事実により支持され、そしてヒトIFNβは認識し得るほどには、この宿主マウス細胞と交差反応しない。また、使用された免疫不全ヌードマウスは、Tリンパ球、1型IFN誘導免疫刺激中における主なエフェクター細胞を欠く(Tough,D.Fら,(1996),Science 272:1947−1950およびRogge、L.ら(1997)J.Exp.Med.,185:825−831)。さらにIFNβ遺伝子送達後迅速に後退する腫瘍において、単核細胞の浸潤中の顕性な増加は観察されなかった。これらの所見は、IFNβ媒介抗増殖性活性が腫瘍後退を引き起こすに単独で充分であり得たという考えを支持する。本発明者らのデータは、悪性細胞のIFN誘導抗増殖性活性に対するインビトロ感受性と、インビボ治療効果との間で以前に観察された臨床的相関と一致するようである(EinhornおよびGrander(1996)J.Interferon Cytokine Res.16:275−281)。
要約すれば、アデノウィルス媒介IFNβ遺伝子治療がマウスモデルにおける効率的な抗腫瘍効果を及ぼし得ることが見出された。INFβ遺伝子の非常に小さいパーセントの細胞へのエキソビボ送達が腫瘍形成をブロックするに充分であり、そして単回用量直接的腫瘍内IFNβ遺伝子送達は確立した腫瘍の後退を導いた。いかなる作用理論により結び付けられることを切望せずに、この強力な抗腫瘍効果はIFNβの自己分泌およびパラ分泌効果から得られ得る。この抗腫瘍効果は、遺伝子送達の程度が限定されるようであり、かつ有意なバイスタンダー(bystsnder)効果が要求される遺伝子治療ガン試行における重大な因子であり得た。従って、局所のIFNβ遺伝子治療は、ヒトにおける腫瘍の処置について有望なストラテジーを提供する。
(等価物)
上述は、単に特定の好ましい実施態様の詳細な記述であることが理解されるべきである。従って、種々の改変および等価物は本発明の精神および範囲から外れることなしになされ得ることが当業者に明らかである。
感染していないMDA−MB−468(白丸)、あるいは、0.01%(上向き白三角)、0.03%(白四角)、0.1%(下向き白三角)、または0.3%(斜線丸)のH5.110hIFNβ細胞で感染させた細胞のいずれかを、ヌードマウスの横腹に皮下注射し、平均腫瘍サイズを腫瘍細胞移植後の時間に対してプロットした。 109日の期間の観察での、マウス生存率パーセントを示す、Kaplan−Meirプロット。感染していない細胞(白丸);0.01%(上向き白三角)、0.03%(白四角)、0.1%(下向き白三角)、0.3%(斜線丸)でのH5.110hIFNβ感染細胞。 (1)KM12L4A細胞;(2)Huh7細胞;および(3)ME180細胞における、エキソビボインターフェロンβ遺伝子治療。平均腫瘍サイズを、腫瘍細胞移植後の時間に対しプロットした。非感染細胞(黒四角)、あるいは、1%(黒丸)、または10%(上向き黒三角)でのH5.110hIFNβ感染細胞を移殖したマウス。数匹のマウスを屠殺したこれらの群において、腫瘍サイズを平均として示し、最後の値は屠殺した動物について行ったものである。プロットの不連続は、群における全ての動物の死亡または屠殺を反映する。 70日の期間の観察での、マウス生存率パーセント。パネル1、2、および3は、KM12L4A細胞、Huh7細胞、およびME180細胞のそれぞれを用いて移植したマウスを用いて作製したデータを示す。シンボルは、非感染細胞(黒四角)、1%(黒丸)、または10%(上向き黒三角)でのH5.110hIFNβ感染細胞を移植したマウスを示す。 樹立したMDA−MB−468腫瘍のインビトロ処置に関する。腫瘍を、それぞれ3×10pfu(斜線丸)、1×10pfu(斜線四角)、3×10pfu(白丸)、1×10pfu(上向き白三角)、および3×10pfu(下向き白三角)のH5.110hIFNβでか、またはPBS(×四角)で、または3×10pfu(白ダイヤ)、1×10pfu(上向き黒三角)、3×10pfu(×)、および1×10pfu(白右向き三角)のH5.110lacZでそれぞれ注射した。腫瘍サイズを、処置注射後14日間にわたり、測定した。

Claims (5)

  1. エキソビボでの遺伝子治療に使用するための組成物であって、該組成物が複数の細胞を含み、ここで該複数の細胞が、少なくとも1つの組換えアデノウイルスを 含む細胞、および組換えアデノウイルスを含まない過剰の細胞を含み、ここで該アデノウイルスがそのE1遺伝子における欠失または変異を有し、該アデノウイルスがインターフェロンβをコードする単離されたポリヌクレオチドをさらに含み、該組成物は、該複数の細胞の数の10%以下が該ベクターを含むときに有効な遺伝子治療を提供する、組成物。
  2. 前記複数の細胞の数の少なくとも10%が前記組換えアデノウイルスを含むときに有効な遺伝子治療を提供する、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記複数の細胞の数の少なくとも3%が前記組換えアデノウイルスを含むときに有効な遺伝子治療を提供する、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記複数の細胞の数の少なくとも1%が前記組換えアデノウイルスを含むときに有効な遺伝子治療を提供する、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記複数の細胞の数の少なくとも0.3%が前記組換えアデノウイルスを含むときに有効な遺伝子治療を提供する、請求項1に記載の組成物。
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