JP3953214B2 - 電解コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電解コンデンサに関する。さらに詳しく述べると、本発明は、低インピーダンスでかつ寿命特性が良好な電解コンデンサ、特にアルミニウム電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、一般的な電気部品の一つであり、種々の電気・電子製品において、主として電源回路用や、ディジタル回路のノイズフィルター用に広く使用されている。
現在使用されている電解コンデンサにはいろいろな種類のものがあり、その一例を示すと、アルミニウム電解コンデンサ、湿式タンタル電解コンデンサなどである。なお、本発明で特に優れた効果を期待できるものはアルミニウム電解コンデンサであり、したがって、以下、この種の電解コンデンサを参照して本発明を説明し、また、「電解コンデンサ」と言う場合、特に断りのある場合を除いてアルミニウム電解コンデンサを指すものとする。
【0003】
従来のアルミニウム電解コンデンサは、典型的には、高純度アルミニウム箔をエッチングしてその表面積を増加させた後、そのアルミニウム箔の表面を陽極酸して誘電体化した陽極箔とアルミニウム表面をエッチングして表面積を増大した陰極箔とを対向して配置し、さらにそれらの箔の中間にセパレータ(隔離紙)を介在させて積層体となし、この積層体を巻き取つた構造の素子に電解液を含浸する。電解液含浸後の素子をケース(一般にはアルミニウム製)に収容し、そして弾性封口体で密封して電解コンデンサが完成する。なお、電解コンデンサには、このような巻回構造以外のものもある。
【0004】
上述のような電解コンデンサにおいては、電解液の特性が電解コンデンサの性能を決定する大きな要因をなす。特に近年の電解コンデンサの小型化に伴い、陽極箔あるいは陰極箔はエッチシグ倍率の高いものが使用されるようになり、コンデンサ本体の抵抗率が大きくなっていることから、これに用いる電解液としては、抵抗率(比抵抗)の小さな高導電性のものが常に要求される。
【0005】
これまでの電解コンデンサの電解液は、エチレングリコール(EG)を主溶媒としてこれに水を約10重量%程度まで加えて構成した溶媒に、電解質としてアジピン酸、安息香酸等のカルボン酸又はそのアンモニウム塩を溶解したものが一般的である。このような電解液では、比抵抗は1.5Ω・m(150Ω・cm)程度である。
【0006】
コンデンサにおいては、その性能を十分に発揮するため、インピーダンス(Z)を低下させることが絶えず求められている。インピーダンスは種々の要因により決定し、例えばコンデンサの電極面積が増加すれば低下し、そのため大型コンデンサになれば自ずと低インピーダンス化が図られる。また、セパレータを改良することで低インピーダンス化を図るアプローチもある。とは言え、特に小型のコンデンサにおいては、電解液の比抵抗がインピーダンスの大きな支配因子となっている。
【0007】
最近では、非プロトン系の有機溶媒、例えばGBL(γ−ブチロラクトン)等を使用した低比抵抗の電解液も開発されている(例えば、特開昭62−145713号、同62−145714号、および同62−145715号公報を参照されたい)。しかし、この非プロトン系電解液を用いたコンデンサは、低比抵抗をもたらすことが知られている電子伝導体を用いた固体コンデンサに比べると、インピーダンスがはるかに劣っている。
【0008】
このような現状に鑑みて、現在、低インピーダンスで長寿命であるアルミニウム電解コンデンサを提供することが望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
アルミニウム電解コンデンサの電解液においてその溶媒の一部として用いられる水の濃度を高くすれば、電解質の濃度を高くして低比抵抗化が可能である。本発明者らは、電解液中の水の濃度を高くして低比抵抗化しながら、なおかつ、水の濃度が高くなるために生ずる各種の弊害を防止するための各種の工夫を行い、高性能(特に低インピーダンスで長寿命化)のアルミニウム電解コンデンサを実現し、別途開示している。上記工夫の中でも、限定するわけではないが、特に水とアルミニウムとの反応を防止するために電解液を安定化することが有効である。
【0010】
しかしながら、この安定化された水系電解液を用いるなどの工夫により高性能のアルミニウム電解コンデンサを得ることができたが、その高い性能を持つアルミニウム電解コンデンサの寿命が必ずしも十分に長くないという問題が見出された。
本発明は、このように電解液中の水の濃度を高くして低インピーダンスを実現した電解コンデンサで、しかも寿命特性に優れた電解コンデンサを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の如き問題を検討するうちに、従来より電解コンデンサは使用とともに電解液がドライアップして寿命に到ることは知られていたが、本発明の電解コンデンサのように水の濃度が高い電解液を用いる系では電解液のドライアップより以前に電解コンデンサの特性が低下して寿命に到ることを見出し、さらに、その原因の最大のものは、水の濃度が高い電解液を用いる系では電解液組成の微妙なバランスが特性発揮に重要であるために、水は蒸気圧が高いために飛散し易く、あるいはその他有機溶媒等の成分の飛散によっても、電解液組成の微妙なバランスが崩れて特性を劣化させ、そのためにドライアップ以前に電解コンデンサの特性が低下して寿命に到ること、そして、上記問題点は、電解液を含浸したコンデンサ素子をケースに収納し、弾性封口体で密封した電解コンデンサであって、電解液が20〜63.9重量%の有機溶媒と80〜36.1重量%の水とから構成された溶媒中に電解質を含む電解コンデンサにおいて、弾性封口体をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ベーク材等のガスバリヤ性に優れた材料をゴムに貼着した複合ゴムで構成することによって解決されることを見出したものである。
【0012】
本発明のより好適な態様としては、下記を挙げることができる。
(1)電解質が、カルボン酸、カルボン酸の塩、無機酸及び無機酸の塩からからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
(2)電解液が、▲1▼キレート化合物、▲2▼糖類、▲3▼ヒドロキシベンジルアルコール及び/又はLグルタミン酸二酢酸又はその塩、▲4▼ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン及びニトロアニソールからなる群から選択される少なくとも1種のニトロ化合物、及び、▲5▼グルコノラクトン、から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0013】
(3)電解質が、カルボン酸又はその塩と無機酸又はその塩との両方を含む。
(4)アルミニウム電解コンデンサである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液では、電解質を溶解するための溶媒としして、有機溶媒と水との混合物からなる水性混合溶媒を使用する。
混合溶媒の形成のために水と一緒に用いられる有機溶媒は、好ましくは、プロトン系溶媒、非プロトン系溶媒又はその混合物である。ここで、プロトン系溶媒は好ましくはアルコール化合物であり、また、非プロトン系溶媒は好ましくはラクトン化合物である。
【0015】
有機溶媒としては、プロトン系溶媒と非プロトン系溶媒を任意に使用することができる。適当なプロトン系溶媒の例としては、アルコール化合物を挙げることができる。また、ここで有利に使用することのできるアルコール化合物の具体的な例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコール(グリコール)、グリセリン等の三価アルコールを挙げることができる。また、適当な非プロトン系溶媒の例としては、ラクトン化合物を挙げることができる。また、ここで有利に使用することのできるラクトン化合物の具体的な例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、γ−ブチロラクトンやその他の分子内分極化合物を挙げることができる。有機溶媒は、プロトン系溶媒と非プロトン系溶媒の中から選択される1種以上を使用することができる。複数種のプロトン系溶媒を使用してもよく、複数種の非プロトン系溶媒を使用してもよく、あるいはプロトン系溶媒と非プロトン系溶媒の混合系を使用してもよい。
【0016】
本発明の電解液では、溶媒成分として、上記した有機溶媒のほかに水を使用し、特に本発明の場合、比較的高濃度の水を含有するという点で従来の電解液とは区別される。本発明においては、このような水性混合溶媒を使用することで、溶媒の凝固点を低下させ、それにより低温での電解液のインピーダンス特性を改善して、低温と常温でのインピーダンス比が小さいことで示される良好な低温特性を実現することができる。電解液中の水の含有量は、36.1〜80重量%の範囲にあるのが好適であり、残部が有機溶媒である。水の含有量が36.1重量%より少ない場合にも、80重量%を超える場合にも、電解液の凝固点降下の度合いは不十分となり、電解コンデンサの良好な低温特性を得るのが困難になる。溶媒中において最も好ましい水の含有量は45〜80重量%である。
【0017】
本発明の電解液における電解質としては、カルボン酸、カルボン酸の塩、無機酸又は無機酸の塩を用いることが好ましく、これらの電解質成分は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電解質成分としては、導電性が高く、かつアルミニウムとの反応が低い酸成分(プロトン系電解質)として、カルボン酸が優れている。使用可能なカルボン酸の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、p−ニトロ安息香酸、サリチル酸及び安息香酸に代表されるモノカルボン酸や、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸及びアゼライン酸に代表されるジカルボン酸が含まれ、例えばクエン酸やオキシ酪酸のようにヒドロキシル基などの官能基を持ったカルボン酸も使用可能である。
【0018】
しかし、高耐圧電解コンデンサ用にはカルボン酸やカルボン酸の塩よりもホウ酸などの無機酸又はその塩が好適である。このような電解質成分として使用可能な無機酸の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホウ酸、スルファミン酸等が含まれる。本発明の実施において電解質として無機酸又はその塩を使用すると、電解液の凝固点降下が期待でき、そのため電解液の低温特性の更なる向上に寄与することができる。
【0019】
さらに、上記したようなカルボン酸又は無機酸の塩としては、いろいろな塩を使用することができるけれども、適当な塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アルキルアンモニウム塩等が含まれる。このような塩のなかでも、アンモニウム塩を用いるのがより好ましい。
電解液中のカルボン酸の濃度は3〜30重量%、無機酸の濃度は0.1〜15重量%が一般的である。
【0020】
さらに、本発明では、理由は明らかではないが、カルボン酸又はカルボン酸の塩と、無機酸又は無機酸の塩とを併用すると、それぞれを単独で用いる場合と比べて電解コンデンサの寿命が顕著に延長されるので、好適である。カルボン酸と無機酸を併用する場合のそれぞれの濃度は、各々を単独で使用する場合の上記濃度の範囲内で適宜選択すればよい。
【0021】
本発明の電解液において使用する電解質の量は、電解液や最終的に得られるコンデンサに要求される特性、使用する溶媒の種類や組成及び量、使用する電解質の種類等の各種のファクタに応じて、最適な量を適宜決定することができる。
本発明では、要するに、20〜63.9重量%の有機溶媒と80〜36.1重量%の水とからなる水性混合溶媒と電解質を含む電解液を用いた電解コンデンサに、弾性封口体としてガスバリヤ性の優れた材料を貼着した複合ゴムを用いることを特徴とするものである。しかし、本発明の電解コンデンサの電解液では、上記したような特定の組成の電解液、すなわち、20〜63.9重量%の有機溶媒と80〜36.1重量%の水とからなる水性混合溶媒に対し、好適にはカルボン酸、カルボン酸の塩、無機酸及び無機酸の塩からからなる群から選択される少なくとも1種の電解質を含み、さらに、好適な態様として、この電解液を安定化するために、これに限定されるわけではないが、例えば、下記▲1▼〜▲5▼から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことができる。
【0022】
▲1▼ キレート化合物、
例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸一水和物(CyDTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(DTPA)、ジアミノプロパノール四酢酸(DPTA−OH)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)1/2水和物(EDDPO)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)等。
【0023】
このようなキレート化合物を含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善、耐食性の向上の効果を奏することができる。
▲2▼ 糖類、
例えば、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース等。
【0024】
このような糖類を含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解質カルボン酸の分解抑制、電解コンデンサの低温特性の改善の効果を奏することができる。
▲3▼ ヒドロキシベンジルアルコール及び/又はLグルタミン酸二酢酸又はその塩。
【0025】
このような化合物を含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善の効果を奏することができる。
▲4▼ ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン及びニトロアニソールからなる群から選択される少なくとも1種のニトロ化合物。
【0026】
このようなニトロ化合物を含むことにより、Alと水の反応時に発生する水素ガスの吸収、耐食性の向上の効果を奏することができる。
▲5▼ グルコノラクトン。
グルコノラクトンを含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善、耐食性の向上の効果を奏することができる。グルコノラクトンは、▲1▼〜▲4▼のいずれか一種と併用するのが好ましい。
【0027】
また、これらの添加剤のほかにも、アルミニウム電解コンデンサあるいはその他の電解コンデンサの分野で常用の添加剤をさらに添加してもよい。適当な常用の添加剤としては、例えば、マンニット、シランカップリング剤、水溶性シリコーン、高分子電解質などを挙げることができる。
電解液は、上記したような各種の成分を任意の順序で混合し、溶解することによって調製することができ、また、基本的には従来の技法をそのままあるいは変更して使用することができる。例えば、有機溶媒と水との混合物である水性混合溶媒を調製した後、得られた混合溶媒に電解質及び必要に応じて任意の添加剤を溶解することで簡単に調製することができる。
【0028】
本発明の36.1重量%以上の水を含む溶媒を用いる電解液系の電解コンデンサでは、限定するわけではないが、電解液を電解コンデンサ素子の粗体積に対して50容積%超、好ましくは55容積%以上、さらには60容積%以上、特に65容積%以上収容させると、電解液の局部的な液組成の変化に対して余分な電解液による均一化が図られ、高特性をより長く維持して、電解コンデンサの特性寿命を延長することができるので好適である。
【0029】
本発明は、上記のような電解液と関連して、弾性封口体をPTFE、ベーク材等のガスバリヤ材をゴムに貼着した複合ゴムで構成することを特徴としている。従来より、アルミニウム電解コンデンサでは電解液が外部に飛散し乾燥して特性が劣化して寿命となること(ドライアップ)は知られており、飛散しやすい非プロトン系電解液のコンデンサの封口体としては気密性の高いIIRゴムを使用しているが、エチレングリコール系の電解液では飛散が少ないので、弾性封口体としてはエチレンプロピレンゴム(EPT)、スチレンブダジエンゴム(SBR)などが実用されている。従来の水の量が20重量%未満の水性混合溶媒系では、気密性の高いゴムの弾性封口体を用いればドライアップまでの期間は延長できるが、そのような弾性封口体は、コンデンサの他の要因に基づく寿命からみて過剰品質でかつコストアップであるために、実用されていない。
【0030】
しかしながら、本発明の36.1重量%以上の水を含有する水性混合溶媒を用いる電解液の系では、従来のEPTやSBRの弾性封口体を用いたのでは、ドライアップに到らないのに、せっかくの高品質のアルミニウム電解コンデンサの製品特性が早期に十分に発揮されなくなり寿命に到ること、しかし、弾性封口体をガスバリヤ材貼着ゴムからなる弾性封口体にすることによって、高品質のアルミニウム電解コンデンサの特性寿命を顕著に延長することができることを見出した。
【0031】
本発明においては、弾性封口体をPTFE、ベーク材等のガスバリヤ材をゴムに貼着した複合ゴムで構成するが、これは36.1重量%以上の水を含有する水性混合溶媒を用いる電解液の特性を維持するために、特に電解液成分の飛散を防止して電解液の微妙な組成を維持するためであって、電解液のドライアップを防止するものではない。
【0032】
本発明の電解コンデンサの弾性封口体に用いる複合ゴムを構成するガスバリヤ材としては、水、エチレングリコール、窒素ガスなどの透過がないか、殆どない材料が好ましい。例えば、PTFE、ベーク材、グラスファイバー、ポリプロピレン(PP)などである。
本発明の弾性封口体はガスバリヤ材で貼着されているので、ゴム本体の材質は特に限定されないが、ゴム本体もガスバリヤ性が優れている事が望ましく、IIR(ブチルゴム)、特にPO加硫IIR、樹脂加硫IIRのほか、IIR−EPTブレンドゴムなどが好適である。
【0033】
弾性封口体のゴムにガスバリヤ材を貼る位置は弾性封口体からガスが透過することを防止する態様であればよい。
本発明の電解コンデンサは、常用の技法に従って製造することができる。例えば、表面を陽極酸化して誘電体化したアルミニウムから製作した陽極箔と、この陽極箔の誘電体化した面に対向するアルミニウム製の陰極箔と、陽極箔と陰極箔との問に介在するセパレータ(隔離紙)とから構成したコンデンサ用素子に電解液を含浸した後、その素子を適当なケ−ス内に収容し、弾性封口体を用いて密封することによって、アルミニウム電解コンデンサを製造することができる。得られるアルミニウム電解コンデンサにおいては、有機溶媒と水との混合溶媒による低インピーダンス化の効果、長寿命化の効果を達成することができる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に説明する。言うまでもなく、ここに掲げた実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定しようとするものではない。
実施例1〜7
巻回構造のアルミニウム電解コンデンサを下記の手順に従って製造した。
【0035】
まず、アルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理し、リン酸塩水溶液中で陽極酸化して表面に酸化皮膜を形成し、その後電極引出し用リードタブを取りつけてアルミニウム陽極箔を作った。次に、別のアルミニウム箔にやはり電気化学的にエッチング処理を施した後、電極引出し用リードタブを収り付けてアルミニウム陰極箔を作った。続いて、陽極箔と陰極箔間にセパレータ(隔離紙)を挟んで巻回することにより、コンデンサ素子を作った。そしてこのコンデンサ素子に、下記の第1表に組成を示した電解液を含浸してから、有底アルミニウムケースに電極引出し用リードタブがケースの外に出るようにして収容し、このケースの開口を弾性封口体(PTFE貼着ゴム製)で密封して、巻回構造の電解コンデンサ(10WV−1000μF)を作製した。弾性封口体は、厚さ1.0mmのPTFEの板の上にゴムを厚さ2.0mmに加硫成形して合計厚さ3.0mm、直径10mmの円板状に成形したものであった。
【0036】
本例で使用した電解液の30℃における比抵抗を測定したところ、下記の表1に記載のような測定値が得られた。また、作製した電解コンデンサについて、低温(−40℃)でのインピーダンス及び常温(20℃)でのインピーダンスを測定した後、それぞれの測定値との比として表されるインピーダンス比(Z比)を、異なる周波数:120Hz及び100kHzで測定した。下記の表1に記載のような測定値が得られた。さらに、各電解コンデンサの寿命特性を評価するため、容量、tanδ及び漏れ電流のそれぞれについて測定を行った。
【0037】
下記の表1に記載のような測定値が得られた。(なお、この初期特性は弾性封口体の種類を変えても変化しなかった。)
【0038】
【表1】
【0039】
比較例1〜2
実施例1〜7と同様にして、下記組成の電解液と、EPT及びSBRからなる従来の弾性封口体を用いてアルミニウム電解コンデンサ(10WV,470μF)を作成し、その初期特性及び105℃中で定格印加(10WV)し、3000時間後の特性を測定した。
【0040】
エチレングリコール 45重量部
水 40重量部
アジピン酸アンモニウム 14.4重量部
グルコノラクトン 0.1重量部
エチレンジアミン四酢酸 0.5重量部
結果を表2に示す。電解コンデンサのドライアップより以前に特性が顕著に劣化している。
実施例8〜9
比較例の弾性封口体をベーク材及びPTFEをIIR(ブチルゴム)の表面に貼着した複合ゴムに変えて、比較例と同じように評価した。この場合のベーク材及びPTFEの寸法、複合ゴムの寸法(形状)は実施例1〜7と同じとした。
【0041】
結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
上記した表1に記載の結果から理解されるように、本発明の電解液の比抵抗は従来の一般の電解液のそれと比べて小さく、本発明の電解液を使用して作製した電解コンデンサは、従来の電解コンデンサに比べて低インピーダンスである。
また、表2に見られるように、従来のEPT及びSBRからなる弾性封口体を用いた場合には、折角の優れた電解コンデンサ特性が電解液のドライアップ以前の早期に寿命に到ったが、本発明によりベーク材などのガスバリヤ材貼着ゴムに変えると、特性の低下が抑制され、長寿命化が実現された。
【0044】
また、上記比較例1〜2及び実施例8〜9と同様にして、ただし電解液として実施例1〜7に示したような他の電解液を用いた場合にも、EPT及びSBRからなる従来の弾性封口体の場合には特性寿命が短いが、本発明によりガスバリヤ材貼着ゴムの弾性封口体を用いると電解コンデンサの特性寿命が延長された。
【0045】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、低インピーダンスでかつ、寿命特性が良好である電解コンデンサが提供される。
Claims (1)
- 電解液を含浸したコンデンサ素子をケースに収納し、弾性封口体で密封した電解コンデンサにおいて、前記電解液が20〜63.9重量%の有機溶媒と80〜36.1重量%の水とから構成される溶媒中に電解質を含み、前記電解質がカルボン酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種と無機酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種の両方を含み、前記電解液がニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン及びニトロアニソールからなる群から選択される少なくとも1種のニトロ化合物を含み、かつ、前記弾性封口体をポリテトラフルオロエチレン、ベーク材等のガスバリヤ性に優れた材料をゴムに貼着した複合ゴムで構成することを特徴とする電解コンデンサ。
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