JP3552930B2 - 電解コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電解コンデンサに関する。さらに詳しく述べると、本発明は、低比抵抗の電解液を使用した低インピーダンスの電解コンデンサ、特にアルミニウム電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、一般的な電気部品の一つであり、種々の電気・電子製品において、主として電源回路用や、ディジタル回路のノイズフィルター用に広く使用されている。
現在使用されている電解コンデンサにはいろいろな種類のものがあり、その一例を示すと、アルミニウム電解コンデンサ、湿式タンタル電解コンデンサ、セラミック電解コンデンサ、フィルム電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ、タンタル電解コンデンサなどである。なお、本発明で特に優れた効果を期待できるものはアルミニウム電解コンデンサであり、したがって、以下、この種の電解コンデンサを参照して本発明を説明し、また、「電解コンデンサ」と言う場合、特に断りのある場合を除いてアルミニウム電解コンデンサを指すものとする。
【0003】
従来のアルミニウム電解コンデンサは、典型的には、高純度アルミニウム箔をエッチングしてその表面積を増加させた後、そのアルミニウム箔の表面を陽極酸化して誘電体化した陽極箔とアルミニウム表面をエッチングして表面積を増大した陰極箔とを対向して配置し、さらにそれらの箔の中間にセパレータ(隔離紙)を介在させて積層体となし、この積層体を巻き取つた構造の素子に電解液を含浸する。電解液含浸後の素子をケース(一般にはアルミニウム製)に収容し、そして弾性封口体で密封して電解コンデンサが完成する。なお、電解コンデンサには、このような巻回構造以外のものもある。
【0004】
上述のような電解コンデンサにおいては、電解液の特性が電解コンデンサの性能を決定する大きな要因をなす。特に近年の電解コンデンサの小型化に伴い、陽極箔あるいは陰極箔はエッチシグ倍率の高いものが使用されるようになり、コンデンサ本体の抵抗率が大きくなっていることから、これに用いる電解液としては、抵抗率(比抵抗)の小さな高電導性のものが常に要求される。
【0005】
これまでの電解コンデンサの電解液は、エチレングリコール(EG)を主溶媒としてこれに水を約10重量%程度まで加えて構成した溶媒に、電解質としてアジピン酸、安息香酸等のカルボン酸又はそのアンモニウム塩を溶解したものが一般的である。このような電解液では、比抵抗は1.5Ω・m(150Ω・cm)程度である。
【0006】
コンデンサにおいては、その性能を十分に発揮するため、インピーダンス(Z)を低下させることが絶えず求められている。インピーダンスは種々の要因により決定し、例えばコンデンサの電極面積が増加すれば低下し、そのため大型コンデンサになれば自ずと低インピーダンス化が図られる。また、セパレータを改良することで低インピーダンス化を図るアプローチもある。とは言え、特に小型のコンデンサにおいては、電解液の比抵抗がインピーダンスの大きな支配因子となっている。
【0007】
最近では、非プロトン系の有機溶媒、例えばGBL(γ−ブチロラクトン)等を使用した低比抵抗の電解液も開発されている(例えば、特開昭62−145713号公報、同62−145714号公報、同62−145715号公報を参照)。しかし、この非プロトン系電解液を用いたコンデンサは、低比抵抗をもたらすことが知られている電子伝導体を用いた固体コンデンサに比べると、インピーダンスがはるかに劣っている。
【0008】
このような現状に鑑みて、現在、低比抵抗の電解液を用いた低インピーダンスのアルミニウム電解コンデンサを提供することが望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、アルミニウム電解コンデンサの電解液において電解液中の水の濃度を高くして低比抵抗化しながら、なおかつ、水の量が多くなるために生ずる各種の弊害を防止するための各種の工夫を行い、高性能(特に低インピーダンスで長寿命)のアルミニウム電解コンデンサを実現し、別途開示している。上記工夫の中でも、限定するわけではないが、特に水とアルミニウムとの反応を防止するために電解液を安定化することが有効である。
【0010】
しかしながら、この安定化された水系電解液を用いるなどの工夫により低インピーダンスの小型高性能アルミニウム電解コンデンサを実現することができたが、その高性能の小型アルミニウム電解コンデンサの寿命が必ずしも理論通りには延びないという問題が見出された。
本発明は、このように低比抵抗化した電解液を使用して、低インピーダンスを実現した小型電解コンデンサで、しかも寿命特性に優れた電解コンデンサを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の如き問題を検討するうちに、本発明の電解コンデンサのように高導電性電解液を用いてインピーダンスを小さくした小型化電解コンデンサでは、電極間距離が薄いために電解液の循環(均一化)が阻害される傾向にあること、しかも、水の濃度を高くした電解液を用いる系では電解液組成の微妙なバランスが特性発揮に重要であるために、電解液と電極との局所的な反応により電解液の組成バランスが崩れたときに、電解液組成のバランスを回復することができずに特性の安定化を阻害し、ひいて特性寿命を短くしていること、そして本発明によれば、電解液をコンデンサ素子の電極間に含浸するほかに、ケース内のそれ以外の空間に意識的に電解液を余分に含浸(収容)しておくことにより、局部的に劣化する電解液の組成をより長い間所望の組成範囲に維持することができ、それによって所望の特性を維持して上記問題を解決することができることを見出した。
【0012】
こうして、本発明のよれば、上記問題を解決するために、陽極箔と陰極箔の間にセパレータを挟んで巻いた捲回体の電極箔間に電解液を含浸して成るコンデンサ素子をケースに収容し密封してなる電解コンデンサにおいて、前記電解液が20〜80重量%の有機溶媒と80〜20重量%の水とから構成される溶媒中に電解質を含み、かつ、前記電解液が、前記捲回体の電極箔間に含浸されるとともに、前記捲回体の巻芯空隙部、及び / 又は前記捲回体の電極箔が存在しないセパレータのみの上下部、及び / 又は前記巻回体以外のケース内にも存在し、かつ、前記電解液が前記コンデンサ子の粗体積に対して0.55以上の比をなす量で含まれることを特徴とする電解コンデンサを提供する。
【0013】
本発明のより好適な態様としては、下記を挙げることができる。
(1)前記電解液の体積比が0.60以上、さらには0.65以上である。
(2)電解質が、カルボン酸、カルボン酸の塩、無機酸及び無機酸の塩からからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
(3)電解液が、▲1▼キレート化合物、▲2▼糖類、▲3▼ヒドロキシベンジルアルコール及び/又はLクルタミン酸二酢酸又はその塩、▲4▼ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン及びニトロアニソールからなる群から選択される少なくとも1種のニトロ化合物、及び、▲5▼グルコノラクトン、から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0014】
(4)アルミニウム電解コンデンサである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液では、電解質を溶解するための溶媒としして、有機溶媒と水との混合物から構成した溶媒を使用する。
混合溶媒の形成のために水と一緒に用いられる有機溶媒は、好ましくは、プロトン系溶媒、非プロトン系溶媒又はその混合物である。ここで、プロトン系溶媒は好ましくはアルコール化合物であり、また、非プロトン系溶媒は好ましくはラクトン化合物である。
【0016】
有機溶媒としては、プロトン系溶媒と非プロトン系溶媒を任意に使用することができる。適当なプロトン系溶媒の例としては、アルコール化合物を挙げることができる。また、ここで有利に使用することのできるアルコール化合物の具体的な例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコール(グリコール)、グリセリン等の三価アルコールを挙げることができる。また、適当な非プロトン系溶媒の例としては、ラクトン化合物を挙げることができる。また、ここで有利に使用することのできるラクトン化合物の具体的な例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、γ−ブチロラクトンやその他の分子内分極化合物を挙げることができる。有機溶媒は、プロトン系溶媒と非プロトン系溶媒の中から選択される1種以上を使用することができる。複数種のプロトン系溶媒を使用してもよく、複数種の非プロトン系溶媒を使用してもよく、あるいはプロトン系溶媒と非プロトン系溶媒の混合系を使用してもよい。
【0017】
本発明の電解液では、溶媒成分として、上記した有機溶媒のほかに水を使用し、特に本発明の場合、比較的に高濃度の水を使用するという点で従来の電解液とは区別される。本発明においては、このような水性混合溶媒を使用することで、溶媒の凝固点を低下させ、それにより低温での電解液のインピーダンス特性を改善して、低温と常温でのインピーダンス比が小さいことで示される良好な低温特性を実現することができる。電解液中の水の含有量は、20〜80重量%の範囲にあるのが好適であり、残部が有機溶媒である。水の含有量が20重量%より少ない場合にも、80重量%を超える場合にも、電解液の凝固点降下の度合いは不十分となり、電解コンデンサの良好な低温特性を得るのが困難になる。水性混合溶媒中における水の含有量は、20〜80重量%であり、より好適な水の量は30〜80重量%であり、最も好ましい水の量は45〜80重量%である。
【0018】
本発明の電解液における電解質としては、カルボン酸、カルボン酸の塩、無機酸又は無機酸の塩が用いることが好ましく、これらの電解質成分は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電解質成分としては、導電性が高く、かつアルミニウムとの反応が低い酸成分(プロトン系電解質)として、カルボン酸が優れている。使用可能なカルボン酸の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、p−ニトロ安息香酸、サリチル酸及び安息香酸に代表されるモノカルボン酸や、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸及びアゼライン酸に代表されるジカルボン酸が含まれ、例えばクエン酸、オキシ酪酸のようなヒドロキシル基等の官能基を持ったカルボン酸も使用可能である。
【0019】
しかし、高耐圧電解コンデンサ用にはカルボン酸やカルボン酸の塩よりもホウ酸などの無機酸又はその塩が好適である。このような電解質成分として使用可能な無機酸の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホウ酸、スルファミン酸等が含まれる。本発明の実施において電解質として無機酸又はその塩を使用すると、電解液の凝固点降下が期待でき、そのため電解液の低温特性の更なる向上に寄与することができる。
【0020】
さらに、上記したようなカルボン酸又は無機酸の塩としては、いろいろな塩を使用することができるけれども、適当な塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アルキルアンモニウム塩等が含まれる。このような塩のなかでも、アンモニウム塩を用いるのがより好ましい。
本発明では、電解液中のカルボン酸又はその塩は3〜30重量%、無機酸又はその塩は0.1〜15重量%の濃度がよい。
【0021】
さらに、本発明では、理由は明らかではないが、カルボン酸又はカルボン酸の塩と、無機酸又は無機酸の塩とを併用すると、それぞれを単独で用いる場合と比べて電解コンデンサの寿命が顕著に延長されるので、好適である。この併用する場合のカルボン酸又はその塩と無機酸又はその塩の濃度は、各々の単独の場合と同様の範囲内から適宜に選択される。
【0022】
本発明の電解液において使用する電解質の量は、電解液や最終的に得られるコンデンサに要求される特性、使用する溶媒の種類や組成及び量、使用する電解質の種類等の各種のファクタに応じて、最適な量を適宜決定することができる。
本発明では、要するに、20〜80重量%の有機溶媒と80〜20重量%の水とからなる水性混合溶媒と電解質を含む電解液を用いた電解コンデンサにおいて、ケース内に収容する電解液の量を前記の如く規定することを特徴とするものである。本発明の電解コンデンサの電解液は、上記したような特定の組成の電解液、従って、20〜80重量%の有機溶媒と80〜20重量%の水とからなる水性混合溶媒に電解質を含む電解液であれば特に限定されないが、好適にはカルボン酸、カルボン酸の塩、無機酸及び無機酸の塩からからなる群から選択される少なくとも1種の電解質を含み、さらに、好適な態様として、この電解液を安定化するために、これに限定されるわけではないが、例えば、下記▲1▼〜▲5▼から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことができる。(これらの詳細については並行して出願したのでそちらを参照されたい。)
▲1▼キレート化合物、
例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸一水和物(CyDTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(DTPA)、ジアミノプロパノール四酢酸(DPTA−OH)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)1/2水和物(EDDPO)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)等。
【0023】
このようなキレート化合物を含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善、耐食性の向上の効果を奏することができる。
▲2▼糖類、
例えば、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース等。
【0024】
このような糖類を含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解質カルボン酸の分解抑制と活性化の抑制、電解コンデンサの低温特性の改善の効果を奏することができる。
▲3▼ヒドロキシベンジルアルコール及び/又はLクルタミン酸二酢酸又はその塩。
【0025】
このような化合物を含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善の効果を奏することができる。
▲4▼ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン及びニトロアニソールからなる群から選択される少なくとも1種のニトロ化合物。
【0026】
このようなニトロ化合物を含むことにより、Alと水の反応時に発生する水素ガスの吸収、耐食性の向上の効果を奏することができる。
▲5▼グルコノラクトン。
グルコノラクトンを含むことにより、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制による長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善、耐食性の向上の効果を奏することができる。グルコノラクトンは▲1▼〜▲4▼の添加剤に併用すると特に好ましい。
【0027】
また、これらの添加剤のほかにも、アルミニウム電解コンデンサあるいはその他の電解コンデンサの分野で常用の添加剤をさらに添加してもよい。適当な常用の添加剤としては、例えば、マンニット、シランカップリング剤、水溶性シリコーン、高分子電解質などを挙げることができる。
電解液は、上記したような各種の成分を任意の順序で混合し、溶解することによって調製することができ、また、基本的には従来の技法をそのままあるいは変更して使用することができる。例えば、有機溶媒と水との混合物である水性混合溶媒を調製した後、得られた混合溶媒に電解質及び必要に応じて任意の添加剤を溶解することで簡単に調製することができる。
【0028】
本発明の電解コンデンサでは、電解液を電解コンデンサ素子の粗体積に対して体積比で0.55以上、さらには0.60以上、特に0.65以上含むようにする。それによって、電解液の局部的な液組成の変化が余分な電解液によって均一化され、液組成変化を防止し、高特性をより長く維持して、電解コンデンサの特性寿命を延長することができるので好適である。
【0029】
従来より、スペーサを間に挟んた電極を巻いて電解コンデンサ素子を形成し、その電極間に電解液を含浸させた後、ケースに収容し、密封して電解コンデンサを完成している。この従来の電解液の含浸では、電解液は電極間のスペースに含浸させれば足りるとの考えから、また余分な電解液が存在する不具合から、電解コンデンサ素子を巻いた中心部の空間や、電解コンデンサとケースの間の絶縁スペースには電解液はできるだけ存在しないようにしていた。
【0030】
図1、図2に電解コンデンサの構成例を示す。図1は電解コンデンサ全体の断面であり、1はコンデンサ素子、2はリード線、3は弾性封口体、4はケースである。リード線2付きのコンデンサ素子1をケースに収容し、弾性封口体3で蓋をした後、弾性封口体3の側部をケース4の外から締めつけて密封している。
図2は、コンデンサ素子1の一部展開図である。陽極箔11と陰極箔12を間に通常紙製のスペーサ13を挟んで巻いた円筒体の電極間に電解液を含浸して、コンデンサ素子1は製造される。図2において、スペーサ13は電極11,12の幅よりも上下に長い幅を有していて、コンデンサ素子1をケース4に収容するとき、電極11,12がケースとショートすることを防止している。このスペーサ13のケースとの絶縁用の部分13a、13b、及びコンデンサ素子1の中心部の空間14には、従来、電解液は積極的には含浸させられていなかった。または、余分な電解液は脱液されていた。これは電解液の含浸量がコンデンサの電気特性に対しては影響が殆んどないため余分な部分の電解液は不要であり、製造コストの削減などのため不都合と考えられたからである。
【0031】
本発明では、今回、これらのスペーサ13のケース絶縁用の部分13a、13bや円筒体中心部分14にも、積極的に電解液を収容させて、一種の溜とすることにより、本発明の電解液の組成の劣化(変動)を防止する。
この溜に余分に蓄えるべき電解液の量を正確に規定するためには、コンデンサ素子1の各成分、部材の形状、寸法などを正確に計算することが必要であるが、それは非常に困難であった。しかし、本発明の電解コンデンサの如く、水を20重量%以上含む溶媒を用いる特殊な電解液を用いる低比抵抗、低インピーダンスの電解コンデンサでは、電解コンデンサ素子の細部寸法なども自ずと一定の範囲に決まるために、電解液含浸前のコンデンサ素子1の粗体積(素子を円柱体とみなす)を基準に、電解液の体積比が0.55以上、好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.65以上になる量で含浸し、あるいはケース内に含めば、本発明の目的を達成できることを見出した。
【0032】
このように、本発明では、特殊な電解液の特性を有利に利用するために電解コンデンサの電極間距離を狭くすることが出発点となって、電極間のみならず、スペーサ13のケース絶縁用部分13a、13bや円筒体中心部分14に電解液を予備的に溜めることにより、特性の安定化、長期維持を可能にしたが、同じ観点から、従来のように電解液を実質的に電極間だけに含浸する場合にも、電極間距離を相応に長くして、上記の電解液体積比を満たすようにすれば、電解コンデンサの電気的特性は変化(低下)するが、電解コンデンサの特性の安定化は長時間保持できる(長寿命)ので、電解コンデンサの要求特性に応じてこの態様も採用できることも見出した。
【0033】
本発明のように、電解液中に水を20重量%以上含む溶媒を用いる低比抵抗、低インピーダンスの電解コンデンサにおいて、上記比率で電解液を用いることによって電解コンデンサの特性寿命が長くなることは従来知られていない。従来、電解液の保持量が多いと、コンデンサの組立時に封口部から余分な電解液がしみ出る、あるいはリード線にストレスがかかったとき封口ゴムのリード孔から電解液がしみ出る、といった不具合があるので、電解液は余分に保持しないように制御(含浸量制限または脱液など)しているのが実情である。しかも、本発明のように水が高濃度になると電極箔との反応も活発になるので、電解液の保持量は減らすべきと考えるのが普通であり、本発明は従来の知見と全く異なるものである。
【0034】
電解コンデンサ素子の体積は、巻回した素子の外形を円柱体とみなして、外径と高さ(長さ)から計算して求める。電解液の含浸比率を高めるためには巻芯空洞部、電極箔が存在してないセパレータのみの上下部にたっぷりと含浸させるようにすればよい。また、電解液の体積は含浸しまた収容した電解液の重量を密度で割って体積に換算して簡単に求めることができる。
【0035】
本発明の20重量%以上の水を用いる有機水混合溶媒を用いる電解液の系では、弾性封口体として気密性の高い、IIRゴム(各種の加硫ブチルゴム、特に過酸化物加硫ブチルゴム)、樹脂加硫ブチルゴム、EPT−IIRブレンドゴムを用い、あるいはガスバリヤ性の優れた材料を貼着した複合ゴムを用いると、電解液の組成変化をより有効に防止できるので、特性寿命を延長することができ、好適である。
【0036】
本発明の電解コンデンサは、常用の技法に従って製造することができる。例えば、表面を陽極酸化して誘電体化したアルミニウムから製作した陽極箔と、この陽極箔の誘電体化した面に対向するアルミニウム製の陰極箔と、陽極箔と陰極箔との問に介在するセパレータ(隔離紙)とから構成した捲回素子に電解液を含浸した後、その素子を適当なケ−ス内に収容し、弾性封口体を用いて密封することによって、アルミニウム電解コンデンサを製造することができる。また、電解液を含浸した電解コンデンサをケースに収容した後、ケース内あるいは含浸素子にさらに電解液を注入してコンデンサ内部の電解液量を多くしてから密封してもよい。得られるアルミニウム電解コンデンサにおいては、有機溶媒と水との混合溶媒による低インピーダンス化の効果、長寿命化の効果を達成することができる。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に説明する。言うまでもなく、ここに掲げた実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定しようとするものではない。
実施例1〜7
巻回構造のアルミニウム電解コンデンサを下記の手順に従って製造した。
【0038】
まず、アルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理し、陽極酸化して表面に酸化皮膜を形成し、その後電極引出し用リードタブを取りつけてアルミニウム陽極箔を作った。次に、別のアルミニウム箔にやはり電気化学的にエッチング処理を施した後、電極引出し用リードタブを収り付けてアルミニウム陰極箔を作った。続いて、陽極箔と陰極箔間にセパレータ(隔離紙)を挟んで巻回することにより、コンデンサ素子を作った。このようにして得られたコンデンサ素子は、外径8.5mmφ、巻芯部(中心の空洞部)の径1.5mmφ、素子長さ(円筒高さ)12mmであった。
【0039】
このコンデンサ素子に、下記の第1表に組成を示した電解液を含浸してから、有底アルミニウムケースに電極引出し用リードタブがケースの外に出るようにして収容し、このケースの開口を弾性封口体(IIR製)で密封して、巻回構造の電解コンデンサ(10WV−1000μF)を作製した。
本例で使用した電解液の30℃における比抵抗を測定したところ、下記の表1に記載のような測定値が得られた。また、作製した電解コンデンサについて、低温(−40℃)でのインピーダンス及び常温(20℃)でのインピーダンスを測定した後、それぞれの測定値との比として表されるインピーダンス比(Z比)を、異なる周波数:120Hz及び100kHzで測定した。下記の表1に記載のような測定値が得られた。さらに、各電解コンデンサの寿命特性を評価するため、容量、tanδ及び漏れ電流のそれぞれについて、初期値(コンデンサの作製直後の特性値)の測定を行った。
【0040】
下記の表1に記載のような測定値が得られた。(なお、この初期特性は電解液の含浸量を変えても変化しなかった。)
【0041】
【表1】
【0042】
実施例8〜10及び比較例1〜3
実施例1〜7と同様にして、ただし、電解液として実施例1と同じ液を用い、かつ電解コンデンサ素子体積に対する電解液の保持量を表2の如く変えて、電解コンデンサ(16WV,470μF)を作製し、その初期特性及び105℃、16V印加、3000時間後の特性を測定した。電解液の1保持量は、コンデンサ素子の巻芯空洞部も含めた素子の外形を円柱体として体積を計算し、含浸した電解液の重量から電解液の体積を計算し、算出した。
【0043】
結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
上記した表1に記載の結果から理解されるように、本発明の電解液の比抵抗は従来の一般の電解液のそれと比べて小さく、本発明の電解液を使用して作製した電解コンデンサは、従来の電解コンデンサに比べて低インピーダンスである。
また、表2に見られるように、電解液保持量が電解コンデンサ素子体積に対して0.5以下であると、折角の優れた電解コンデンサ特性の寿命が短いが、本発明により電解液保持量を電解コンデンサ素子体積に対して0.5を越えると、特性寿命延長が実現された。
【0046】
また、上記比較例及び実施例と同様にして、ただし電解液として実施例2〜7に示したような他の電解液を用いた場合にも、本発明により電解液保持量を電解コンデンサ素子体積に対して0.5を越えるようにすると電解コンデンサの特性寿命が延長された。
【0047】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、低インピーダンスでかつ、寿命特性が良好である電解コンデンサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解コンデンサの縦断面図。
【図2】電解コンデンサ素子の部分展開図。
【符号の説明】
1…コンデンサ素子
2…リード線
3…弾性封口体
4…ケース
11…陽極箔
12…陰極箔
13…スペーサ
13a、13b…スペーサのケースとの絶縁用部分
14…コンデンサ素子の中心部空間
Claims (5)
- 陽極箔と陰極箔の間にセパレータを挟んで巻いた捲回体の電極箔間に電解液を含浸して成るコンデンサ素子をケースに収容し密封してなる電解コンデンサにおいて、前記電解液が20〜80重量%の有機溶媒と80〜20重量%の水とから構成される溶媒中に電解質を含み、かつ、前記電解液が、前記捲回体の電極箔間に含浸されるとともに、前記捲回体の巻芯空隙部、及び / 又は前記捲回体の電極箔が存在しないセパレータのみの上下部、及び / 又は前記巻回体以外のケース内にも存在し、かつ、前記電解液が前記コンデンサ子の粗体積に対して0.55以上の比をなす量で含まれることを特徴とする電解コンデンサ。
- 前記電解液の比が0.65以上である請求項1記載の電解コンデンサ。
- 前記電解質が、カルボン酸、カルボン酸の塩、無機酸及び無機酸の塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1または2記載の電解コンデンサ。
- 前記電解液が、▲1▼キレート化合物、▲2▼糖類、▲3▼ヒドロキシベンジルアルコール及び/又はLクルタミン酸二酢酸又はその塩、▲4▼ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン及びニトロアニソールからなる群から選択される少なくとも1種のニトロ化合物、▲5▼グルコノラクトン、から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電解コンデンサ。
- アルミニウム電解コンデンサであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
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