JP2001319834A - アルミ電解コンデンサ、及びそれに用いるアルミ電解コンデンサ用電解液とその製造方法。 - Google Patents
アルミ電解コンデンサ、及びそれに用いるアルミ電解コンデンサ用電解液とその製造方法。Info
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Abstract
性の良好なアルミ電解コンデンサ、及びそれに用いるア
ルミ電解コンデンサ用電解液を提供する。 【解決手段】 本発明のアルミ電解コンデンサは、アミ
ノポリカルボン酸とアルミニウムとからなる水溶性の錯
体にリン酸イオンが結合した結合体を、水を主成分とす
る溶媒にアジピン酸またはその塩の少なくとも一種を溶
解した電解液とともに、コンデンサ素子内に含有してい
るので、低インピーダンス特性を有し、さらに、電解液
中のリン酸イオンを適正量に長時間にわたって保つこと
ができるので、放置後の電極箔の劣化を抑制することに
よって、アルミ電解コンデンサの放置特性が向上する。
また、初期の静電容量が向上する。
Description
ンサ及びそれに用いるアルミ電解コンデンサ用電解液と
その製造方法に関する。
のような構成を取っている。すなわち、帯状に形成され
た高純度のアルミニウム箔を化学的あるいは電気化学的
にエッチングを行って拡面処理するとともに、拡面処理
したアルミニウム箔をホウ酸アンモニウム水溶液等の化
成液中にて化成処理することによりアルミニウム箔の表
面に酸化皮膜層を形成させた陽極箔と、同じく高純度の
アルミニウム箔を拡面処理した陰極箔をセパレータを介
して巻回してコンデンサ素子が形成される。そしてこの
コンデンサ素子には駆動用の電解液が含浸され、金属製
の有底筒状の外装ケースに収納される。さらに外装ケー
スの開口端部は弾性ゴムよりなる封口体が収納され、さ
らに外装ケースの開口端部を絞り加工により封口を行
い、アルミ電解コンデンサを構成する。
ンサの、コンデンサ素子に含浸される電解液としては、
従来より、エチレングリコールを主溶媒とし、アジピン
酸、安息香酸などのアンモニウム塩を溶質とするもの、
または、γ−ブチロラクトンを主溶媒とし、フタル酸、
マレイン酸などの四級化環状アミジニウム塩を溶質とす
るもの等が知られている。
して、スイッチング電源の出力平滑回路などの電子機器
がある。このような用途においては、低インピーダンス
特性が要求されるが、電子機器の小型化が進むにつれ
て、アルミ電解コンデンサへの、この要求がさらに高い
ものとなってきている。このような低インピーダンス品
に対応できる比抵抗の低い電解液としては、四級化環状
アミジニウム塩を用いたものがあるが、比抵抗は80Ω
cm程度であり、この要求に対応するには十分でない。
多量に含有させて、電解液の比抵抗を60Ωcm以下に
低減する試みがあるが、つぎのような問題を有してい
る。すなわち、このようなアルミ電解コンデンサを放置
すると、静電容量が減少し、漏れ電流特性が劣化し、さ
らには、安全弁の開弁にいたることがあるという問題点
があり、このような負荷もしくは無負荷での長時間経過
後の特性である放置特性は、アルミ電解コンデンサの信
頼性に大きな影響を与えている。
解コンデンサを分析したところ、電解液のpHが高くな
っており、また、電極箔表面に溶質のアニオン成分が付
着していることが分かった。このことから、電極箔表面
のアルミニウムが溶質のアニオン成分と反応して電極箔
に付着し、さらに、アルミニウムが溶解して水酸化物等
となり、一部は溶質のアニオン成分と反応し、この際に
水素ガスが発生する。この反応がくり返されて、pHが
上昇し、電極箔の劣化、開弁にいたるということが明ら
かになった。
化の防止に効果があることはよく知られているが、十分
なものではない。これは、このリン酸を添加しても、添
加したリン酸は電解液中のアルミニウムと錯体を形成し
て電極箔に付着し、リン酸は電解液中から消失してしま
うことによるものである。さらに、添加量が多過ぎる
と、漏れ電流が増大するという問題もある。ところが、
リン酸イオンが消失する段階の適量残存している間は、
アルミ電解コンデンサの特性は良好に保たれる。
明にいたったもので、低インピーダンス特性を有し、か
つ、放置特性の良好なアルミ電解コンデンサ及びそれに
用いるアルミ電解コンデンサ用電解液とその製造方法を
提供することをその目的とする。
デンサは、アミノポリカルボン酸とアルミニウムとから
なる水溶性の錯体にリン酸イオンが結合した結合体を、
水を主成分とする溶媒とアジピン酸またはその塩の少な
くとも一種とともに、コンデンサ素子内に含有すること
を特徴とする。
らなる電極箔を巻回したコンデンサ素子に、アミノポリ
カルボン酸と、水溶液中でリン酸イオンを生成する化合
物とを添加し、水を主成分とする溶媒にアジピン酸また
はその塩の少なくとも一種を溶解した電解液を含浸して
生成されることを特徴とする。
て、コンデンサ素子中の電解液のリン酸根濃度を10〜
40000ppmに保持したことを特徴とする。
電解液は、水を主成分とする溶媒にアジピン酸またはそ
の塩の少なくとも一種を溶解した電解液であって、アミ
ノポリカルボン酸とアルミニウムとからなる水溶性の錯
体にリン酸イオンが結合した結合体を含有することを特
徴とする。
ン酸と、水溶液中でリン酸イオンを生成する化合物と
を、モル比でアミノポリカルボン酸:リン酸イオン=
1:20〜3:1となるように添加することにより生成
されることを特徴とする。
化合物を添加して、リン酸イオン濃度を0.002〜
0.04モル重量%としたことを特徴とする。
びアルミ電解コンデンサ用電解液において、水溶液中で
リン酸イオンを生成する化合物が、一般式(化2)で示
されるリン化合物又はこれらの塩もしくはこれらの縮合
体又はこれらの縮合体の塩であることを特徴とする。
電解コンデンサ用電解液において、溶媒中の水の含有率
が35〜100wt%であることを特徴とする。
電解コンデンサ用電解液において、電解液中のアジピン
酸またはその塩含有率が5〜23wt%であることを特
徴とする。
電解液の製造方法は、水を主成分とする溶媒にアジピン
酸またはその塩の少なくとも一種を溶解した電解液に、
アミノポリカルボン酸と、水溶液中でリン酸イオンを生
成する化合物と、水溶液中でアルミニウムイオンを生成
する化合物とを添加して、アミノポリカルボン酸とアル
ミニウムとからなる水溶性の錯体にリン酸イオンが結合
した結合体を形成することを特徴とする。
4 :R3 、R4 は、アルキル基、アリール基、フェニル
基、エーテル基)
は、アミノポリカルボン酸とアルミニウムとからなる水
溶性の錯体にリン酸イオンが結合した結合体を、水を主
成分とする溶媒とアジピン酸またはその塩の少なくとも
一種とともに、コンデンサ素子内に含有している。そし
て、この水溶性結合体は、アルミニウムからなる電極箔
を巻回したコンデンサ素子に、アミノポリカルボン酸
と、水溶液中でリン酸イオンを生成する化合物とを添加
し、水を主成分とする溶媒にアジピン酸またはその塩の
少なくとも一種を溶解した電解液を含浸して生成され
る。
造後、ある程度の期間常温で保管され、その後電子機器
に搭載されて使用されることになるが、本発明のアルミ
電解コンデンサは、この製造直後から使用の期間、電解
液に含有されたリン酸イオンが結合した水溶性のアルミ
ニウム錯体と、電解液中のリン酸イオンを、電解液のリ
ン酸根濃度にして10〜40000ppmに保持してい
る。ここでの電解液のリン酸根濃度とは、電解液中に含
有されるリン酸イオンになりうるリン酸基の濃度を示
す。したがって、通常pH調整等によって電解液中の化
合物のリン酸基をリン酸イオンにイオン化し、そのリン
酸イオンの濃度を測定することによって、リン酸根濃度
を測定する。
00wt%であり、65wt%以下では低温特性が良好
なので、好ましくは、35〜65wt%である。
基とカルボキシル基を複数有する化合物であって、アル
ミニウムと錯体を形成する。このアミノポリカルボン酸
としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、
グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ト
リエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジ
アミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレン
ジアミン三酢酸(HEDTA)、及びこれらの塩が挙げ
られる。これらの塩としては、アンモニウム塩、アルミ
ニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を用いることが
できる。これらのうちで好ましいのは、DTPA、GE
DTA、TTHAまたはこれらの塩である。また、アル
ミニウムと錯体を形成するものとしてクエン酸等が知ら
れているが、アミノポリカルボン酸以外では本発明の効
果は得られない。
る化合物(以下、リン酸生成性化合物)を添加する。こ
のリン酸生成性化合物として、一般式(化2)で示され
るリン化合物又はこれらの塩もしくはこれらの縮合体又
はこれらの縮合体の塩を挙げることができる。
下のものを挙げることができる。正リン酸、亜リン酸、
次亜リン酸、及びこれらの塩、これらの塩としては、ア
ンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カルシ
ウム塩、カリウム塩である。正リン酸及びこの塩は、水
溶液中で分解してリン酸イオンを生じる。また、亜リン
酸、次亜リン酸、及びこれらの塩は、水溶液中で分解し
て、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオンを生じ、その後
に酸化してリン酸イオンとなる。
ン酸ブチル、リン酸ジブチル等のリン酸化合物、1−ヒ
ドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノト
リメチレンホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホ
ン酸化合物等が挙げられる。また、メチルホスフィン
酸、ホスフィン酸ブチル等のホスフィン酸化合物が挙げ
られる。
れらの塩をあげることができる。ピロリン酸、トリポリ
リン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸、メ
タリン酸、ヘキサメタリン酸等の環状の縮合リン酸、又
はこのような鎖状、環状の縮合リン酸が結合したもので
ある。そして、これらの縮合リン酸の塩として、アンモ
ニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム
塩、カリウム塩等を用いることができる。
るか、もしくは、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオンを
生じ、その後に酸化してリン酸イオンとなる、リン酸生
成性化合物である。
ンを生ずる正リン酸またはその塩、縮合リン酸、または
リン酸化合物が好ましい。さらに、添加量に対して、比
較的速やかに、多くのリン酸イオンを生ずる正リン酸、
ピロリン酸、トリポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸、
またはその塩が好ましい。なお、これらの化合物以外で
も、水溶液中でリン酸イオンを生ずる物質であれば、本
発明の効果を得ることができる。
その塩の少なくとも一種を用いる。本発明の電解液が用
いられる低圧、低インピーダンス用途の電解液では、従
来より、ギ酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸また
はこれらの塩等が用いられてきたが、高電導度、高温安
定性を得るためには、アジピン酸またはその塩が好適で
ある。
塩、4級アンモニウム塩、またはアミン塩を用いること
ができる。第4級アンモニウム塩を構成する第4級アン
モニウムとしてはテトラアルキルアンモニウム(テトラ
メチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テト
ラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、
メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアン
モニウム等)、ピリジウム(1−メチルピリジウム、1
−エチルピリジウム、1,3−ジエチルピリジウム等)
が挙げられる。また、アミン塩を構成するアミンとして
は、一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピ
ルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、モノエタ
ノールアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエ
チルアミン、ジプロピルアミン、エチルメチルアミン、
ジフェニルアミン、ジエタノールアミン等)、三級アミ
ン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチル
アミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウン
デセン−7、トリエタノールアミン等)があげられる。
電解液中、5〜23wt%であり、好ましくは、8〜1
8wt%である。この範囲未満では、電導度が低下し、
この範囲を越えると、溶解性が低下する。
る溶媒を用いるものであるが、副溶媒として、プロトン
性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒、及びこれらの混合
物を用いることができる。プロトン性極性溶媒として
は、一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパ
ノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノー
ル、シクロペンタノール、ベンジルアルコール、等)、
多価アルコール及びオキシアルコール化合物類(エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メ
チルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,3−ブタンジ
オール、メトキシプロピレングリコール等)などがあげ
られる。非プロトン性極性溶媒としては、アミド系(N
−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルム
アミド、N−メチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホ
リックアミド等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、
δ−バレロラクトン等)、環状アミド類(N−メチル−
2−ピロリドン等)、カーボネート類(エチレンカーボ
ネート、プロピレンカーボネート等)、ニトリル類(ア
セトニトリル等)、オキシド類(ジメチルスルホキシド
等)、2−イミダゾリジノン系〔1,3−ジアルキル−
2−イミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダ
ゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノ
ン、1,3−ジ(n−プロピル)−2−イミダゾリジノ
ン等)、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジ
ノン(1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン
等)〕などが代表としてあげられる。
安定化する目的で、ニトロフェノール、ニトロ安息香
酸、ニトロアセトフェノン、ニトロベンジルアルコー
ル、2−(ニトロフェノキシ)エタノール、ニトロアニ
ソール、ニトロフェネトール、ニトロトルエン、ジニト
ロベンゼン等の芳香族ニトロ化合物を添加することがで
きる。
を目的として、電解液の耐電圧向上を図ることができる
非イオン性界面活性剤、多価アルコールと酸化エチレン
及び/または酸化プロピレンを付加重合して得られるポ
リオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物、ポ
リビニルアルコールを添加することもできる。
解液に、硼酸、多糖類(マンニット、ソルビット、ペン
タエリスリトールなど)、硼酸と多糖類との錯化合物、
コロイダルシリカ等を添加することによって、さらに耐
電圧の向上をはかることができる。
ルボン酸化合物等を添加することができる。
インピーダンスが低く、放置特性、すなわち、長期間に
わたる負荷、無負荷試験後の特性が良好で、さらに、初
期の静電容量も向上する。
アルミ電解コンデンサは、アミノポリカルボン酸とアル
ミニウムとからなる水溶性の錯体にリン酸イオンが結合
した結合体(以下、水溶性結合体)を、水を主成分とす
る溶媒にアジピン酸またはその塩の少なくとも一種を溶
解した電解液とともに、コンデンサ素子内に含有してい
るが、この水溶性結合体は、アミノポリカルボン酸とリ
ン酸生成性化合物を添加した水を主成分とする溶媒にア
ジピン酸またはその塩の少なくとも一種を溶解した電解
液をコンデンサ素子に含浸して生成される。このアルミ
電解コンデンサにおいては、コンデンサ素子中で、アミ
ノポリカルボン酸と、リン酸生成性化合物から生成され
たリン酸イオンと、アルミニウム電極箔表面のアルミニ
ウムの水和物や水酸化部から溶出したアルミニウムイオ
ンとが反応して、水溶性結合体が生成される。そして、
このように生成された水溶性結合体の一部は電極箔に付
着し、一部は電解液に溶解した状態で、コンデンサ素子
中に含有されることになる。なお、この水溶性結合体は
アルミニウムにアミノポリカルボン酸とリン酸イオンが
配位したキレート錯体であると考えられる。
ンデンサ用電解液には、水を主成分とする溶媒にアジピ
ン酸またはその塩の少なくとも一種を溶解した電解液
に、アミノポリカルボン酸と、リン酸生成性化合物と、
水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物、すな
わちアルミ電極箔表面に形成されたアルミニウムの水和
物や水酸化物等とが添加された状態となって、水溶性結
合体が形成され、含有される。したがって、本発明のア
ルミ電解コンデンサ用電解液は、電解液作成中にアミノ
ポリカルボン酸と、リン酸生成性化合物と、水溶液中で
アルミニウムイオンを生成する化合物とを添加しても得
ることができる。さらには、別途生成したこの水溶性結
合体を、電解液に添加しても得ることができる。
いては、電解液の比抵抗を低減することができるので、
アルミ電解コンデンサのインピーダンスを低減すること
ができる。さらに、水溶性結合体によって、電解液中の
リン酸イオンを適正量に長時間にわたって保つことがで
きるので、アルミ電解コンデンサの放置特性を良好に保
つことができる。すなわち、電解液中のリン酸イオンは
電極箔から溶出するアルミニウムと反応して減少してい
くが、そうなると、水溶性結合体がリン酸イオンを放出
して、電解液中のリン酸イオンを適正量に保つ作用をす
る。そして、この適正量のリン酸イオンはアルミニウム
の溶解、またアルミニウムの水酸化物等の生成を抑制し
て、電極箔の劣化を抑制するので、アルミ電解コンデン
サの放置特性が向上する。そして、電解液中のリン酸イ
オンと電解液中のアミノポリカルボン酸とアルミニウム
からなる水溶性の錯体に結合したリン酸イオンは、電解
液中のリン酸根として検出されるが、このリン酸根濃度
は10〜40000ppmに保持されている(電解液を
2mmol/lの希硝酸で1000倍に希釈して、pH
=2〜3にして、リン酸イオンをイオンクロマト分析で
定量した。)。
たのみでは、リン酸イオンはアルミニウムと反応して電
解液中から消失してしまうので、放置特性が劣化する。
また、多量に添加した場合はさらに漏れ電流特性が劣化
する。しかしながら、本発明のアルミ電解コンデンサに
おいては、電解液中に適正量のリン酸イオンが長期間経
過しても消失することなく存在して、良好な放置特性を
維持することができ、漏れ電流特性も劣化することな
く、良好である。
た。本発明のアルミ電解コンデンサを分解し、コンデン
サ素子に含浸された電解液を洗浄、除去した。その後、
このコンデンサ素子にリン酸イオンを含まない電解液を
含浸して電解コンデンサを作成したところ、この電解コ
ンデンサの放置特性は良好であった。そして、この電解
コンデンサの電解液からは10〜200ppmのリン酸
根が検出され、アルミニウムはほとんど検出されなかっ
た。すなわち、電極箔に付着した水溶性結合体が、リン
酸イオンを含まない電解液中にリン酸イオンを放出し、
その後も一定のリン酸イオンを長時間にわたって適正に
保つことによって、コンデンサの放置特性を向上させた
ものである。なお、電解液中で生成されるアルミニウム
錯体が水溶性でない、つまり難溶性または不溶性の場合
は、本発明のような電解液中のリン酸イオンを適正量に
保つ作用がないためと思われるが、本発明の効果を得る
ことはできない。
コンデンサにおいては、電解液のリン酸根を10〜40
000ppmに保持しているが、15000ppm以下
では比抵抗が低減するので、10〜15000ppmに
保持することが好ましい。また、85〜125℃、10
00〜2000時間放置の条件下では、10〜1000
0ppmに保持される。そして、20ppm以上ではさ
らに放置特性が安定し、5000ppm以下では比抵抗
が低減するので、この条件下では20〜5000ppm
に保持されることが好ましい。
リカルボン酸とリン酸生成性化合物は、電解液中のアミ
ノポリカルボン酸とリン酸イオンが、モル比にしてアミ
ノポリカルボン酸:リン酸イオン=1:20〜3:1で
ある。さらに、好ましくは、1:10〜1:1である。
アミノポリカルボン酸が、この比率より少ないと、アミ
ノポリカルボン酸がアルミニウムとリン酸イオンと反応
して水溶性結合体を形成しても、リン酸イオンが多い場
合には電解液中にリン酸イオンが多量に残存するので、
アルミ電解コンデンサの漏れ電流特性が低下する。ま
た、この比率より多いと、理由は定かではないが、アル
ミ電解コンデンサの放置特性が劣化する。
アルミ電解コンデンサ作成時に電極箔と反応して消費さ
れるので、電解液作成時に添加する量は0.002モル
重量%以上必要であり、また、0.04モル重量%以上
添加すると初期的な皮膜溶解が激しく、アルミ電解コン
デンサの放置特性は低下する。したがって、0.002
〜0.04モル重量%が好ましく、さらに好ましくは、
0.003〜0.03モル重量%である。
〜7(水溶液として50倍に希釈して測定)に維持され
ていることが判明した。これは、電解液中に保持された
リン酸イオンによって、アルミニウムの溶解が抑制さ
れ、したがって、電解質のアニオン成分がアルミニウム
と反応することが抑制されて、pHの上昇が抑制されて
いるものと思われる。
おいては、アミノポリカルボン酸の酸化皮膜を溶解する
作用によって、アルミ電解コンデンサの作成時に、陰極
箔の自然酸化皮膜が溶解されることによるものと思われ
るが、初期の静電容量が向上する。
ニウムと錯体を形成する、例えばクエン酸等を用いた場
合、常温付近の放置によって、コンデンサの開弁が発生
し、電解液のpHが上昇する。これは、常温付近では、
わずかに溶解したアルミニウムと電解質のアニオン成分
が反応してpHが上昇すると、クエン酸の錯体形成能力
が低下して、アルミニウムを放出する。そのため、放出
されたアルミニウムと電解質のアニオン成分が反応して
pHはさらに上昇し、pHが上昇するとアルミニウムの
溶解は著しくなり、その結果、電極箔の劣化、開弁がお
こるものと思われる。
媒とアジピン酸またはその塩とアミノポリカルボン酸と
リン酸生成性化合物の相乗作用により、従来にないイン
ピーダンスが低く、放置特性が良好なアルミ電解コンデ
ンサを実現することができる。
溶媒を用いているので、溶媒としてγ−ブチロラクトン
を用いた従来の低インピーダンスアルミ電解コンデンサ
用電解液より、封口ゴムを透過してのコンデンサ外部へ
の透散が遅く、長寿命を得ることができる。さらに、高
電圧使用などの規格外の使用によってコンデンサが故障
した際にも、溶媒に水が多量に含有されているので発火
が発生するなどの問題点がない。また、溶媒以外の成分
は、アジピン酸またはその塩、アミノポリカルボン酸、
リン酸生成性化合物であり、電解液を構成する成分は安
全性も高い。このように、耐環境性も良好である。
さらに具体的に説明する。
ータを介して巻回して形成する。陽極電極箔は、純度9
9.9%のアルミニウム箔を酸性溶液中で化学的あるい
は電気化学的にエッチングして拡面処理した後、アジピ
ン酸アンモニウムの水溶液中で化成処理を行い、その表
面に陽極酸化皮膜層を形成したものを用いる。陰極箔と
して、純度99.9%のアルミニウム箔をエッチングし
て拡面処理した箔を用いた。
アルミ電解コンデンサの駆動用の電解液を含浸する。こ
の電解液を含浸したコンデンサ素子を、有底筒状のアル
ミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開
口端部に、ブチルゴム製の封口体を挿入し、さらに外装
ケースの端部を絞り加工することによりアルミ電解コン
デンサの封口を行う。
を(表1)に示す。組成は、部で示した。また、従来例
として、γ−ブチロラクトン75部、フタル酸エチルジ
メチルイミダゾリニウム25部の電解液を用いた。比抵
抗は81Ωcmであった。
サの高温寿命試験を行った。アルミ電解コンデンサの定
格は、6.3WV−5600μFである。試験条件は、
105°C、定格電圧負荷、無負荷、1000時間及
び、60℃、無負荷、3000時間である。試験後の電
気的特性及び電解液中のリン酸根濃度(ppm)を(表
2)〜(表4)に示す。なお、開弁したアルミ電解コン
デンサについては、開弁直後の電解液中のリン酸根濃度
を測定した。また、リン酸根濃度の検出限界は、10p
pm未満であるので、これは<10で示した。また、従
来例の初期特性は、静電容量が5540μF、tanδ
が0.101、漏れ電流が13μAであった。
の正接、 LC:漏れ電流(μA)、ΔCap:静電容量変化率
(%) リン酸根:リン酸根濃度(ppm)
から分かるように、実施例の比抵抗は14〜67Ωcm
と、従来例の81Ωcmよりはるかに低く、初期のta
nδも0.047〜0.092と、従来例の0.101
より低い。また、静電容量は5640〜5750μF
と、従来例の5540μFより大きくなっている。
うに、実施例の1000〜3000時間経過後のリン酸
根濃度は、それぞれの試験条件で35〜4800ppm
であり、105℃、60℃の放置特性も良好であった。
すなわち、アミノポリカルボン酸としてDTPAを用い
た実施例1、3、5は、溶媒中の水の含有率が40〜8
5%であるが、各条件での放置後の漏れ電流は13〜4
0μAと安定している。さらに、DTPAを用い溶媒中
の水の含有率が60%で、アジピン酸アンモニウムの含
有量が10〜18部である実施例2〜4の各条件での放
置後の漏れ電流は14〜35μAと安定している。
例3、4は、それぞれ、電解液に、50ppm、100
00ppmのリン酸水素二アンモニウムを添加したが、
開弁にいたっており、さらに、開弁した時点での電解液
からはリン酸根が検出されない。このことは電解液中の
リン酸イオンが消失したことを示している。また、リン
酸水素二アンモニウムを1部添加した比較例4の初期の
漏れ電流は高い。
素二アンモニウムを添加しない比較例5においては、比
抵抗が80、tanδは0.108〜0.110と、比
抵抗、tanδ共に、従来品のレベルとしては最も低い
レベルにあるが開弁にいたっており、本発明によって、
従来例と比較しても分かるように、従来にない低tan
δ特性を有し、放置特性の良好なアルミ電解コンデンサ
を実現していることが分かる。
1:26である比較例1では、無負荷試験後の漏れ電流
が増大している。そして、アミノポリカルボン酸以外
の、アルミニウムと錯体を形成するクエン酸を用いた比
較例2は、105℃の放置特性は良好であるが、60℃
の放置特性は劣化している。なお、5000時間後には
開弁したことを確認している。また、コンデンサの電解
液の初期のpHは5.8であり、60℃の放置後のコン
デンサの電解液のpHは、7.8であった。これは、6
0℃ではアルミニウムの水酸化物等とアジピン酸が反応
して、アンモニウムが過剰となり、pHが上昇する。そ
うなると、クエン酸の錯体形成能力が低下し、クエン酸
添加の効果が低下する。しかしながら、105℃放置に
おいては、アンモニウムとアジピン酸が反応しても、ア
ンモニウムがガス化するのでそれほどpHが上昇せず、
クエン酸の錯体形成能力が維持されて、効果が維持され
ていることによるものと思われる。なお、放置後の静電
容量が上昇しているが、これはpHが上昇して、陽極箔
の酸化皮膜が溶解したためにおこったものと思われる。
ポリカルボン酸とアルミニウムとからなる水溶性の錯体
にリン酸イオンが結合した結合体を、水を主成分とする
溶媒にアジピン酸またはその塩の少なくとも一種を溶解
した電解液とともに、コンデンサ素子内に含有している
ので、電解液の比抵抗を低減することによって低インピ
ーダンス特性を図ることができ、さらに、電解液中のリ
ン酸イオンを適正量に長時間にわたって保つことがで
き、放置後の電極箔の劣化を抑制することによって、良
好な放置特性と、初期の静電容量の向上を図ることがで
きるアルミ電解コンデンサ及びそれに用いるアルミ電解
コンデンサ用電解液とその製造方法を提供することがで
きる。
Claims (13)
- 【請求項1】 アミノポリカルボン酸とアルミニウムと
からなる水溶性の錯体にリン酸イオンが結合した結合体
を、水を主成分とする溶媒とアジピン酸またはその塩の
少なくとも一種とともに、コンデンサ素子内に含有する
アルミ電解コンデンサ。 - 【請求項2】 請求項1記載の結合体が、アルミニウム
からなる電極箔を巻回したコンデンサ素子に、アミノポ
リカルボン酸と、水溶液中でリン酸イオンを生成する化
合物とを添加し、水を主成分とする溶媒にアジピン酸ま
たはその塩の少なくとも一種を溶解した電解液を含浸し
て生成されるアルミ電解コンデンサ。 - 【請求項3】 前記の水溶液中でリン酸イオンを生成す
る化合物が、一般式(化1)で示されるリン化合物又は
これらの塩もしくはこれらの縮合体又はこれらの縮合体
の塩である請求項2記載のアルミ電解コンデンサ。 - 【請求項4】 コンデンサ素子中の電解液のリン酸根濃
度を10〜40000ppmに保持した、請求項1記載
のアルミ電解コンデンサ。 - 【請求項5】 水を主成分とする溶媒にアジピン酸また
はその塩の少なくとも一種を溶解した電解液であって、
アミノポリカルボン酸とアルミニウムとからなる水溶性
の錯体にリン酸イオンが結合した結合体を含有するアル
ミ電解コンデンサ用電解液。 - 【請求項6】 請求項5記載の結合体が、アミノポリカ
ルボン酸と、水溶液中でリン酸イオンを生成する化合物
とを、モル比でアミノポリカルボン酸:リン酸イオン=
1:20〜3:1となるように添加することにより生成
されるアルミ電解コンデンサ用電解液。 - 【請求項7】 前記の水溶液中でリン酸イオンを生成す
る化合物が、一般式(化1)で示されるリン化合物又は
これらの塩もしくはこれらの縮合体又はこれらの縮合体
の塩である請求項6記載のアルミ電解コンデンサ用電解
液。 - 【請求項8】 水溶液中でリン酸イオンを生成する化合
物を添加して、リン酸イオン濃度を0.002〜0.0
4モル重量%とした請求項6記載のアルミ電解コンデン
サ用電解液。 - 【請求項9】 溶媒中の水の含有率が35〜100wt
%である、請求項1記載のアルミ電解コンデンサ。 - 【請求項10】 電解液のアジピン酸またはその塩の含
有率が5〜23wt%である、請求項1記載のアルミ電
解コンデンサ。 - 【請求項11】 溶媒中の水の含有率が35〜100w
t%である、請求項5記載のアルミ電解コンデンサ用電
解液。 - 【請求項12】 電解液のアジピン酸またはその塩の含
有率が5〜23wt%である、請求項5記載のアルミ電
解コンデンサ用電解液。 - 【請求項13】 水を主成分とする溶媒にアジピン酸ま
たはその塩の少なくとも一種を溶解した電解液に、アミ
ノポリカルボン酸と、水溶液中でリン酸イオンを生成す
る化合物と、水溶液中でアルミニウムイオンを生成する
化合物とを添加して、アミノポリカルボン酸とアルミニ
ウムとからなる水溶性の錯体にリン酸イオンが結合した
結合体を形成するアルミ電解コンデンサ用電解液の製造
方法。 【化1】 (式中、R1 、R2 は、−H、−OH、−R3 、−OR
4 :R3 、R4 は、アルキル基、アリール基、フェニル
基、エーテル基)
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2000089889A JP2001319834A (ja) | 2000-03-02 | 2000-03-28 | アルミ電解コンデンサ、及びそれに用いるアルミ電解コンデンサ用電解液とその製造方法。 |
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JP2000057837 | 2000-03-02 | ||
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Country | Link |
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JP (1) | JP2001319834A (ja) |
Citations (1)
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---|---|---|---|---|
JP2000173869A (ja) * | 1998-12-07 | 2000-06-23 | Rubycon Corp | 電解コンデンサ |
-
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- 2000-03-28 JP JP2000089889A patent/JP2001319834A/ja active Pending
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