JP3635224B2 - 電解コンデンサ駆動用電解液及びこれを使用した電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサ駆動用電解液及びこれを使用した電解コンデンサ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサ用電解液とそれを使用した電解コンデンサに関する。さらに詳しく述べると、本発明は、低インピーダンス特性を有し、低温条件下でも良好な周波数特性を維持し、また、高温条件下でも電解液が安定で電極金属との反応が長時間にわたって抑制され、特性の経時変化が少なく、しかも低温から高温まで極めて安定なコンデンサ特性及び優れた寿命特性を示すことのできる電解コンデンサ駆動用電解液と、それを使用した電解コンデンサに関する。本発明の電解コンデンサは、アルミニウム電解コンデンサやその他の電解コンデンサとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサは、一般的な電気部品の一つであり、種々の電気・電子製品において、主として電源回路用や、ディジタル回路のノイズフィルター用に広く使用されている。コンデンサは、電解コンデンサとその他のコンデンサ(セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ等)に大別される。
【0003】
現在使用されている電解コンデンサにはいろいろな種類のものがあり、その一例を示すと、アルミニウム電解コンデンサ、湿式タンタル電解コンデンサなどである。なお、本発明は、どのような種類の電解コンデンサに適用しても顕著な効果を得ることができるのであるが、特に優れた効果を期待できるものはアルミニウム電解コンデンサであり、したがって、以下、この種の電解コンデンサを参照して本発明を説明することにする。
【0004】
従来のアルミニウム電解コンデンサは、典型的には、高純度アルミニウム箔をエッチングしてその表面積を増加させた後、そのアルミニウム箔の表面に陽極酸化によって皮膜を形成した陽極箔と、表面をエッチングした陰極箔を使用することによって製造することができる。次いで、得られた陽極箔と陰極箔とを対向して配置し、さらにそれらの箔の中間にセパレータ(隔離紙)を介在させて巻回した構造の素子となし、この素子を巻き取つた構造の素子に電解液を含浸する。電解液含浸後の素子をケース(一般にはアルミニウム製)に収容し、そして弾性封口体で密封して電解コンデンサが完成する。なお、電解コンデンサには、このような巻回構造以外のものもある。
【0005】
上述のような電解コンデンサにおいては、電解液の特性が電解コンデンサの性能を決定する大きな要因をなす。特に近年の電解コンデンサの小型化に伴い、陽極箔あるいは陰極箔はエッチシグ倍率の高いものが使用されるようになり、コンデンサ本体の抵抗率が大きくなっていることから、これに用いる電解液としては、抵抗率(比抵抗)の小さな高導電性のものが常に要求される。
【0006】
これまでの電解コンデンサの電解液は、エチレングリコール(EG)を主溶媒としてこれに水を約10重量%程度まで加えて構成した溶媒に、電解質としてアジピン酸、安息香酸等のカルボン酸又はそのアンモニウム塩を溶解したものが一般的である。このような電解液では、比抵抗は1.5Ω・m(150Ω・cm)程度である。
【0007】
一方、コンデンサにおいては、その性能を十分に発揮するため、インピーダンス(Z)を低下させることが絶えず求められている。インピーダンスは、種々の要因により決定されるものであり、例えば、コンデンサの電極面積が増加すればするほど低下し、そのため、大型コンデンサになればなるほど自ずと低インピーダンス化が図られる。また、セパレータを改良することで低インピーダンス化を図るアプローチもある。とは言え、特に小型のコンデンサにおいては、電解液の比抵抗がインピーダンスの大きな支配因子となっている。
【0008】
最近では、非プロトン系の有機溶媒、例えばGBL(γ−ブチロラクトン)等を使用した低比抵抗の電解液も開発されている(例えば、特開昭62−145713号公報、特開昭62−145714号公報及び特開昭62−145715号公報を参照されたい)。しかし、この非プロトン系電解液を用いたコンデンサは、比抵抗が1.0Ω・cm以下の電子伝導体を用いた固体コンデンサに比べると、インピーダンスがはるかに劣っている。
【0009】
また、アルミニウム電解コンデンサは、電解液を使用するために低温特性が悪く、100kHzにおける−40℃でのインピーダンスと20℃でのインピーダンスとの比:Z(−40℃)/Z(20℃)は約40と、かなり大きいのが実情である。このような現状に鑑みて、現在、低インピーダンスで、低い等価直列抵抗(E.S.R.)を有し、低温特性に優れかつ高温条件下でも特性の経時変化が小さいアルミニウム電解コンデンサを提供することが望まれている。
【0010】
さらに、アルミニウム電解コンデンサの電解液においてその溶媒の一部として用いられる水は、陽極箔や陰極箔を構成するアルミニウムにとって化学的に活性な物質であり、したがって、陽極箔や陰極箔と反応してコンデンサの特性を著しく低下させたり、反応の際に発生する水素ガスによって、コンデンサ内部の圧力が増大し、外観異常を引き起こしたりする。
【0011】
また、水の濃度が高い電解液は、化学的に活性で、アルミニウム電極やセパレータなど、電解液以外のコンデンサ構成要素(本願明細書では、このような構成要素を「コンデンサ素子」と呼ぶ)に対して、電解液中のイオンの攻撃が著しく大きくなるため、高温条件下ではコンデンサの安定性が著しく損なわれるという問題を抱えている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような従来の技術の問題点を解決することを目的としたもので、その第1の目的は、電解コンデンサが低インピーダンス、低E.S.R.でかつ低温条件下でもこれらの特性の変化が少ないという優れた特性と、高温条件下でも特性が非常に安定で経時変化が小さいという特性をあわせもつための電解コンデンサ駆動用電解液を提供するにある。
【0013】
また、本発明のもう1つの目的は、本発明の電解液を使用した電解コンデンサ、特にアルミニウム電解コンデンサを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その1つの面において、45〜90質量%の水を含有する1種もしくは複数種のプロトン系有機溶媒からなる溶媒と、ポリアクリルアミド又はその誘導体とを含むことを特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液にある。
また、本発明は、そのもう1つの面において、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液を含んでなる電解コンデンサにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、少なくとも、電解質と、それを溶解した溶媒とを含有する。電解質を溶解するための溶媒として、好ましくは、有機溶媒もしくは水−有機溶媒系の溶媒、すなわち、有機溶媒と水との混合物からなる水分濃度が高い溶媒が使用される。
【0016】
有機溶媒としては、プロトン系溶媒又は非プロトン系溶媒をそれぞれ単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。必要に応じて、プロトン系溶媒の1種以上と非プロトン系溶媒の1種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。適当なプロトン系溶媒として、例えば、アルコール化合物を挙げることができる。また、ここで有利に使用することのできるアルコール化合物の具体的な例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコール(グリコール)、グリセリン等の三価アルコールを挙げることができる。また、適当な非プロトン系溶媒としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン、その他の分子内分極化合物を挙げることができる。
【0017】
本発明の実施に当たって、プロトン系溶媒群と非プロトン系溶媒群の中から選択される1種以上を溶媒として使用する場合には、より具体的に説明すると、1種のプロトン系溶媒を使用してもよく、1種の非プロトン系溶媒を使用してもよく、複数種のプロトン系溶媒を使用してもよく、複数種の非プロトン系溶媒を使用してもよく、あるいは1種以上のプロトン系溶媒と1種以上の非プロトン系溶媒の混合系を使用してもよい。
【0018】
本発明の電解液では、溶媒として、上記したように有機溶媒の単独を使用する代りに、水−有機溶媒系の溶媒を使用することもできる。特に本発明の場合、好ましくは比較的に多量の水を併用するという点で従来の電解液とは区別される。本発明においては、このような水−有機溶媒系の溶媒を使用することで、溶媒の凝固点を低下させ、それにより低温での電解液の比抵抗特性を改善して、低温と常温での比抵抗の差が小さいことで示される良好な低温特性を実現することができる。
【0019】
さらに詳しく説明すると、有機溶媒としてエチレングリコールを使用した場合を例に挙げると、このプロトン系有機溶媒は、沸点が約198℃、融点は−約13℃である。コンデンサに要求される温度範囲は、一般的に−40℃〜85℃ないし105℃であることから、この溶媒を使用した電解液は、高温では特性に余裕があるが、低温では電解液の粘性の増大や凝固によって電気特性が著しく低下する。本発明においては、電解液において、温度特性が優れた有機溶媒を単独あるいは複数種の混合で使用する一方、凝固点が比較的高い有機溶媒を使用する場合には、水を添加して水−有機溶媒系の溶媒を使用することで、溶媒の凝固点を低下させて低温での電気特性を確保することができる。この水−有機溶媒系の電解液は、電解質の溶解能とイオンの移動度が非常に大きいので、従来の電解液より、遙かに低い比抵抗が実現できる。また、低温においては、溶媒の特性が改善されているので、低温と常温での比抵抗の差が小さい、という従来にはない画期的な特性を有する電解液となる。したがって、このような電解液を使用した電解コンデンサは、当然のことながら、電解液の特性を反映して、良好な温度特性を有することができる。
【0020】
電解液における、溶媒中の水の含有量は、特に制限は設けないが、溶媒において水が0〜90質量%(wt%)の範囲にあるのが好適である。有機溶媒のみで温度特性が良好な場合には水を添加しなくても良いが、特性の軽微な改良、または著しい改良が期待される場合には水を添加することが推奨される。このときの水の添加量は、有機溶媒により種々異なるので、下限は限定されるものでない。水の添加量が、90質量%以上になると電解液に、水の温度特性が大きく反映し、低温では凝固による著しい比抵抗の増大、高温では高い蒸気圧で電解液の飛散が起きるので、コンデンサに使用しても、温度に対して良好な特性が得られない。水を添加することによって電解液の特性改善を行う場合は、水−有機溶媒系の溶媒中における、より好適な水の含有量は30〜80質量%の範囲であり、最も好適な水の含有量は、45〜80質量%の範囲である。
【0021】
本発明の電解液では、それを上述のような有機溶媒もしくは水−有機溶媒系の溶媒を使用して調製するとともに、電解液の添加剤として、水溶性ポリマーであるポリアクリルアミド又はその誘導体を添加することが必須がある。ここで添加されるポリアクリルアミド又はその誘導体は、次のような一般式によって表すことができる。
【0022】
【化1】
Figure 0003635224
【0023】
上式において、Rは、同一もしくは異なっていてもよく、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基、例えばメチル基などを表し、そしてnは、正の整数であり、好ましくは、100〜2,000,000の分子量を与えるのに必要な整数である。式中のRがすべて水素原子であるのが好ましい。
【0024】
ポリアクリルアミド又はその誘導体は、水に非常によく溶ける高分子化合物である反面、有機溶媒には一般的に溶けにくい性質を有している。このポリアクリルアミド又はその誘導体を本発明に従い有機溶媒もしくは水−有機溶媒系の溶媒からなる電解液に添加した場合、今までの研究では全く予想されなかったことであるが、低温条件下でも良好な周波数特性を維持し、高温条件下でも電解液が安定で、電極金属との反応が長時間にわたって抑制され、よって、特性の経時変化が少なく、長寿命となる。実際、ポリアクリルアミドを添加していない電解液を使用した電解コンデンサの寿命は高々4,000〜5,000時間(105℃で)であるのに、ポリアクリルアミド又はその誘導体を添加した電解液を使用したコンデンサの場合、その寿命を実に8,000〜10,000時間程度(約2倍)に延長することができる。また、ポリアクリルアミド又はその誘導体を添加した電解液は、低温から高温まで極めて安定したコンデンサ特性を示し、アーレニウスの化学反応における温度加速条件2倍/10℃を十分に満足させることができる。
【0025】
上記したような顕著な効果は、ポリアクリルアミド又はその誘導体が電解液中のイオンを均一に分散させる作用を有することに大きく依存していると考えられる。この作用のため、反応が拡大する時に起こる電解液中のイオンの集中化を阻害でき、よって、高温条件下でも、長時間にわたって電解液の活性抑制と変質抑制を持続させることができる。また、低温条件下では、溶液の凝固温度を低下させて導電性を維持することができる。
【0026】
ポリアクリルアミド又はその誘導体の分子量は、上記したように、100〜2,000,000の範囲にあることが好ましい。すなわち、本発明の実施において、ポリアクリルアミド又はその誘導体は、所望とする効果などに応じて、比較的に低分子量のもの(オリゴマー)から高分子量のものまで幅広く使用することができる。例えば、分子量が約144のポリアクリルアミドの二量体やそれよりも高分子量の三量体なども有利に使用することができる。
【0027】
また、ポリアクリルアミド又はその誘導体の添加量は、所望とする効果などに応じて広く変更することができるというものの、通常、電解液の溶媒の全量を基準にして0.05〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2.0質量%の範囲である。10.0質量%程度の添加量は、電解液のゲル化を引き起こしたりするので、好ましくない。
【0028】
本発明の実施において、電解液にポリアクリルアミド又はその誘導体(以下、まとめて「ポリアクリルアミド」と記す)を含ませる方法は、特に限定されるものではなく、所期の効果が得られる限りにおいていろいろな方法を採用することができる。以下に、好適な方法のいくつかを説明する。
1.ポリアクリルアミドの直接添加
ポリアクリルアミドを電解液に直接添加することができる。水−有機溶媒系の溶媒を使用し、使用する溶媒中の水の比率が高いような場合には、固体のポリアクリルアミドを電解液に添加して、攪拌しながら溶解してもよい。
【0029】
2.ポリアクリルアミドの水溶液の添加
多くの場合に、ポリアクリルアミドを予め水に溶解して数%〜数十%の水溶液とした後、その水溶液を電解液に添加することができる。この方法は、ポリアクリルアミドを取り扱う場合の最も容易でかつ外部汚染や誤差を少なくする方法である。
【0030】
3.電解液の粘性に注意してポリアクリルアミドを添加
ポリアクリルアミドを電解液に溶解して使用する場合には、ポリアクリルアミドを添加することによって生じる電解液の粘性に注意する必要がある。本発明の対象としている電解液は低抵抗、すなわち、高導電性電解液であるので、導電性に関与するイオンの動きが溶液粘度の増大により妨げられることは好ましくない。また、ポリマーを含有した電解液においては、液中の電解質イオンとの相互作用によって、ポリマーの凝集現象(塩析)が生じる場合があるので、電解質とポリマーの溶解濃度には十分に考慮して溶液調製を行う必要がある。これらの理由から、電解液に添加するポリアクリルアミドの分子量と添加量には、上記したような適正範囲が存在する。
【0031】
4.分子量の小さいポリアクリルアミドの添加
水の比率が小さい水−有機溶媒系の溶媒を使用した電解液については、ポリアクリルアミドの分子量と溶解度の関係から、分子量の小さいポリアクリルアミドを添加するのが好適である。もちろん、水の比率が大きい水−有機溶媒系の溶媒を使用した電解液についても、この方法を採用することが可能である。
【0032】
5.ポリアクリルアミドのその他の添加方法
ポリアクリルアミドを、電解液を含浸する前のコンデンサ素子に予め含浸させるか塗布したり、素子を固定する接着剤に分散させてもよい。いずれの方法を採用しても、そのようなコンデンサ素子などと電解液との接触部から、ポリアクリルアミドが徐々に電解液中に移動(マイグレーション)することが可能である。また、電解液を含浸したコンデンサ素子をポリアクリルアミドの溶液に含浸するか、さもなければ、そのようなコンデンサ素子に外側からポリアクリルアミドの溶液を塗布することによって、ポリアクリルアミドを電解液に供給することも可能である。
【0033】
6.溶媒の溶解能を変更してポリアクリルアミドを溶解
ポリアクリルアミドを電解液に溶解する場合には、複数の溶媒を組み合わせて、その溶媒の溶解能を大きく変更した状態で溶解を行うこともできる。例えば、メタノール/エチレングリコール/水の3成分系の溶媒を使用した電解液がその一例である。
【0034】
7.界面活性剤の存在下でポリアクリルアミドを溶解
ポリアクリルアミドを電解液に溶解する場合には、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸塩のようなイオン性界面活性剤や、ポリエーテル誘導体のような非イオン性界面活性剤)などを添加すると効果的である。
8.多分散系のポリアクリルアミドの添加
分子量分布が広い、すなわち、多分散系のポリアクリルアミドを添加した時にも効果的である。また、多分散系のポリアクリルアミドは、電解液への溶解性が大である。
【0035】
9.ポリアクリルアミドのポリマー鎖の切断に依存
電解液に溶解しにくい分子量のポリアクリルアミドがコンデンサ素子中に予め供給され、さらにこのコンデンサ素子に電解液を含浸してコンデンサを作製する場合、ポリアクリルアミドは、電解液中に放置されることによって、ポリマー分子鎖が切断され、電解液に溶解されるようになる。この溶解は、電解液の溶媒(水が多いほどポリマー分子鎖は切れやすい)や電解質の種類、周囲温度(周囲温度が高いほどポリマー分子鎖は切れやすい)の影響を受ける。
【0036】
本発明の電解液における電解質としては、有機酸、特に好ましくはカルボン酸又はその塩、そして無機酸又はその塩が用いられる。これらの電解質成分は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電解質成分として使用可能なカルボン酸の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、p−ニトロ安息香酸、サリチル酸及び安息香酸に代表されるモノカルボン酸や、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸及びアゼライン酸に代表されるジカルボン酸が含まれ、例えばクエン酸、セバチン酸、オキシ酪酸などのようにヒドロキシル基等の官能基を持ったカルボン酸も使用可能である。もちろん、必要に応じて、このようなカルボン酸の誘導体を使用してもよい。
【0037】
また、同じく電解質成分として使用可能な無機酸の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホウ酸、スルファミン酸等が含まれる。必要に応じて、このような無機酸の誘導体を使用してもよい。
さらに、上記したようなカルボン酸又は無機酸の塩として、いろいろな一般的に知られた塩を使用することができる。適当な塩の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アルキルアンモニウム塩等が含まれる。このような塩のなかでも、アンモニウム塩を用いるのがより好ましい。
【0038】
さらに加えて、本発明の実施において電解質として無機酸又はその塩を使用すると、電解液の凝固点降下が期待でき、そのため電解液の低温特性の更なる向上に寄与することができる。また、無機酸又はその塩を使用すると、添加剤としてニトロ化合物を使用する場合に、そのニトロ化合物に由来する水素ガス吸収能力を長期間にわたって維持することができる。
【0039】
また、本発明者らの研究によると、このような無機酸又はその塩のような電解質を前記したカルボン酸又はその塩のような電解質に組み合わせて使用すると、それらを単独で使用した場合に比較して、電解コンデンサの寿命を顕著に延長することができる。さらに、従来の電解コンデンサでは、電導度などの問題から、無機酸系の電解質は主に中〜高電圧(160〜500ボルト)のタイプの電解コンデンサに使用されてきたが、本発明のように電解質の組み合わせ使用を行った場合、低電圧(160ボルト未満)のタイプの電解コンデンサにおいても有利に使用することができる。
【0040】
本発明の電解液において使用する電解質の量は、電解液や最終的に得られるコンデンサに要求される特性、使用する溶媒の種類や組成及び量、使用する電解質の種類等の各種のファクタに応じて、最適な量を適宜決定することができる。例えば、上記したように、無機酸系の電解質をカルボン酸系の組み合わせて使用するような場合に、混合電解質中における無機酸系の電解質の含有量は広い範囲で変更することができるというものの、通常、電解質の全量を基準にして約0.1〜15質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0041】
さらに、本発明の電解液には、
(1)キレート化合物、
(2)糖類、
(3)ヒドロキシベンジルアルコール及び(又は)L−グルタミン酸二酢酸又はその塩、及び
(4)グルコン酸及び(又は)グルコノラクトン、
(5)ニトロ化合物、
などの添加剤を必要に応じて添加するのが好ましい。これらの添加剤は、単独で使用してもよく、あるいは2種もしくはそれ以上の添加剤を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0042】
以下、それぞれの添加剤について、説明する。
(1)キレート化合物
キレート化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸一水和物(CyDTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(DTPA)、ジアミノプロパノール四酢酸(DPTA−OH)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)1/2水和物(EDDPO)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(EDTA−OH)等。キレート化合物は、一般的に、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。このようなキレート化合物は、低インピーダンスコンデンサのアルミニウム(Al)電極箔の水和反応の抑制によるコンデンサの長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善(溶媒が不凍状態に近い組成なので、常温と低温でのインピーダンスの変化が小さくなる)、耐蝕性の向上などの効果をもたらすことができる。
【0043】
(2)糖類
糖類、例えば、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース等。糖類は、一般的に、0.01〜5質量%の範囲で添加することが好ましい。このような糖類は、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制によるコンデンサの長寿命化、糖類の添加による電解質、例えばカルボン酸の分解や活性化の抑制、電解コンデンサの低温特性の改善(溶媒が不凍状態に近い組成なので、常温と低温でのインピーダンスの変化が小さくなる)などの効果をもたらすことができる。
【0044】
(3)ヒドロキシベンジルアルコール
ヒドロキシベンジルアルコール、例えば2−ヒドロキシベンジルアルコール、L−グルタミン酸二酢酸又はその塩等。この添加剤は、一般的に、0.01〜5質量%の範囲で添加することが好ましい。このような添加剤は、低インピーダンスコンデンサのAl電極箔の水和反応の抑制によるコンデンサの長寿命化、電解コンデンサの低温特性の改善(溶媒が不凍状態に近い組成なので、常温と低温でのインピーダンスの変化が小さくなる)などの効果をもたらすことができる。
【0045】
(4)グルコン酸及び(又は)グルコノラクトン
本発明の電解液は、必要に応じて、グルコン酸やグルコノラクトン等を単独もしくは組み合わせて含有することができる。この種の添加剤は、一般的に、0.01〜5質量%の範囲で添加することが好ましい。グルコン酸やグルコノラクトンは、それを本発明の電解液に追加して含ませた場合、電解コンデンサの長寿命化や低温特性の向上、そして優れた水素ガス吸収効果などという本発明の効果に追加して、耐蝕性の向上といった顕著な効果をさらにもたらすことができる。
【0046】
(5)ニトロ化合物
本発明の電解液は、必要に応じて、ニトロフェノール、例えばp−ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、例えばp−ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン、例えばp−ニトロアセトフェノン、ニトロアニソールなどの化合物群から選択される少なくとも1種のニトロ化合物を含有することができる。
【0047】
本発明では、上記したニトロ化合物群を使用した時に特に顕著な水素ガス吸収効果を得ることがでる。この効果は、本発明者らの経験から、それぞれのニトロ化合物に含まれる置換基が異なるタイミングで水素ガス吸収効果を奏することに大きな要因があるものと理解される。なお、ここで使用するニトロ化合物は、プリント基板の洗浄に際して使用されるハロゲン化炭化水素、例えばトリクロロエタンなどの作用により素子が腐食せしめられるのを抑制する作用(換言すると、ハロゲン捕捉作用)を合わせて有することができる。
【0048】
上記したニトロ化合物は、それを本発明の電解液に添加する場合、その電解液自体に本発明の効果に有効な特定の組成が採用されているので、単独で使用しても満足し得る水素ガス吸収効果、ハロゲン捕捉作用などを奏することができるけれども、2種もしくはそれ以上のニトロ化合物を組み合わせて使用したほうがさらに好ましい効果を期待することができる。一般的には、2種のニトロ化合物を混合して使用することが推奨される。また、ニトロ化合物は、通常、電解液の全量を基準にして0.01〜5質量%の量で添加して使用するのが好ましい。ニトロ化合物の添加量が0.01質量%を下回ると、所期の効果をほとんど得ることができず、反対に5質量%を上回っても、所期の効果のさらなる向上を期待することができず、場合によっては他の特性に対して悪影響がでることも考えられる。
【0049】
ニトロ化合物の使用についてさらに説明すると、アルミニウムと水の反応時に発生する水素ガスの吸収は、従来の技術のところで説明したようにニトロ化合物を単独で使用したのでは、使用する溶媒中の水の含有量が増加するにつれて吸収効果が低下する傾向にあり、また、この吸収効果の低下傾向は、電解液が高温環境下におかれた場合において顕著になる。ところが、このようなニトロ化合物の単独使用に由来して発生する問題は、本発明におけるように2種もしくはそれ以上のニトロ化合物を組み合わせて使用することにより、解消することができる。実際、本発明の電解液の場合、複数種のニトロ化合物の使用によって、高温放置下において、従来の単独使用よりもはるかに長期間にわたって、水素ガス吸収能力を維持することができた。
【0050】
また、水素ガスの吸収における本発明の優れた効果は、一緒に使用する電解質との関係においても確認することができた。従来の電解液では、1種類のニトロ化合物のみをカルボン酸系の電解質だけに、あるいは1種類のニトロ化合物のみを無機酸系の電解質だけに、それぞれ添加する手法が採用されてきた。しかし、溶媒中の水の含有量が多い場合、上記のような手法では満足し得る水素ガス吸収効果を得ることができず、また、カルボン酸系の電解質と無機酸系の電解質が混在するような電解液でも同様であったが、本発明の電解液の場合(1種類のニトロ化合物のみを使用)、驚くべきことに、このようなカルボン酸系/無機酸系混在電解液においても、従来の単独使用よりもはるかに長期間にわたって、水素ガス吸収能力を維持することができた。
【0051】
さらにまた、本発明の電解液は、上記した添加剤のほかにも、アルミニウム電解コンデンサあるいはその他の電解コンデンサの分野で常用の添加剤をさらに含有してもよい。適当な常用の添加剤としては、例えば、マンニット、シランカップリング剤、水溶性シリコーン、高分子電解質などを挙げることができる。
本発明の電解液は、上記したような各種の成分を任意の順序で混合し、溶解することによって調製することができ、また、基本的には従来の技法をそのままあるいは変更して使用することができる。例えば、有機溶媒と水との混合物である水分濃度が高い溶媒を調製した後、得られた溶媒に電解質、ポリアクリルアミド又はその誘導体及び必要に応じて任意の添加剤を溶解することで簡単に調製することができる。また、ポリアクリルアミド又はその誘導体は、前記したように、いろいろな方法を使用して電解液に導入することが可能であるので、本発明の実施は大きな自由度を有していることになる。
【0052】
本発明によれば、電解コンデンサ、好ましくは、対向して配置された陽極箔及び陰極箔と、それらの中間に介在せしめられた隔離紙とから形成されたコンデンサ素子と、本発明の電解液とを含んでなる電解コンデンサも提供される。
本発明の電解コンデンサは、さらに好ましくは、アルミニウム電解コンデンサであり、最も好ましくは、アルミニウム箔及び該アルミニウム箔の表面の陽極酸化膜からなる陽極箔と、アルミニウム箔からなる陰極箔とを、両者の表面が隔離紙を介して対向するように卷回して形成したコンデンサ素子、
本発明の電解液、
前記コンデンサ素子及び前記電解液を収容したケース、そして
前記ケースの開口部を密封した弾性封口体、
を含んでなるアルミニウム電解コンデンサである。
【0053】
本発明の電解コンデンサにおいては、本発明の電解液を使用していることから、多くの顕著な効果、例えば、有機溶媒もしくは有機溶媒と水との混合溶媒による低温特性の向上など、ポリアクリルアミド又はその誘導体の添加による長寿命化、低温域〜高温域における安定したコンデンサ特性など、そして特定の電解質の使用による水和反応抑制による長寿命化や低インピーダンス化など、を達成することができる。また、リフロー対応のチップコンデンサとしての特性も充分に具えている。
【0054】
本発明のアルミニウム電解コンデンサは、好ましくは、エッチングが施されたアルミニウム箔の表面が陽極酸化された陽極箔と、エッチングが施されたアルミニウム箔から成る陰極箔とを、両者の表面が隔離紙を介して対向するように卷回して形成したコンデンサ素子と電解液とがケース内に収容され、かつ前記コンデンサ素子が収容されたケースの開口部が弾性封口体で密封されているように構成される。
図1は、本発明の電解コンデンサの一例を示した断面図であり、また、図2は、図1に示した電解コンデンサのコンデンサ素子を、特に一部を厚さ方向に拡大して示した斜視図である。なお、図示の例は巻回構造を備えた電解コンデンサであるが、本発明の電解コンデンサは、本発明の範囲内においていかなる変更や改良も可能である。例えば、本発明の電解コンデンサは、それを構成している電極箔の両方に酸化膜を有するタイプの電解コンデンサ、表面にシランカップリング剤などの機能性物質を付した電極箔を有するタイプの電解コンデンサであってもよい。また、ここで言うまでもなく、巻回構造以外の電解コンデンサも包含する。
【0055】
図示の電解コンデンサ10は、アルミニウム電解コンデンサであり、電解液を含浸したコンデンサ素子1を金属製のケース4に収納し、さらにケース4の開口部を封口体3で閉塞した構造を有する。また、金属製のケースに収納されたコンデンサ素子1は、巻き取られたシート状積層体20の形をしている。積層体20は、図示のように、表面全体にアルミニウム酸化膜22を有するアルミニウム箔(陽極)21と、アルミニウム箔(陰極)23と、これらの電極の間に挟まれた第1のセパレータ(隔離紙)24と、第2のセパレータ(隔離紙)25とからなる。第1のセパレータ24と第2のセパレータ25は同一もしくは異なっていてもよい。コンデンサ素子1には電解液が含浸せしめられている。
【0056】
図1及び図2に示す電解コンデンサは、例えば、次のようにして製造することができる。最初に、高純度アルミニウム箔を原料としてして使用して、その表面をエッチングして表面積を増加させた後、そのアルミニウム箔の表面を陽極酸化して酸化皮膜を全面的に施した陽極箔と、表面をエッチングして表面積を増加させた状態の陰極箔を作製する。次いで、得られた陽極箔と陰極箔とを対向して配置し、さらにそれらの箔の中間にセパレータ(隔離紙)を介在させて積層体となし、この積層体を巻き取つた構造の素子、すなわち、コンデンサ素子、を作製する。引き続いて、得られたコンデンサ素子に電解液を含浸し、そして電解液含浸後のコンデンサ素子を上述のようにケース(一般にはアルミニウム製)に収納し、そしてケースの開口部を封口体で閉塞する。なお、封口体のリード線貫通孔には2本のリード線を挿入し、電解液の漏れがないように完全に密封する。
【0057】
本発明による電解コンデンサについてさらに説明すると、陽極箔及び陰極箔として用いられるアルミニウム箔は、好ましくは、純度99%以上の高純度のアルミニウム箔である。陽極箔は、好ましくは、アルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理した後、陽極酸化して表面に酸化皮膜を形成し、次いで、電極引き出し用リードタブを取り付けて形成することができる。また、陰極箔は、アルミニウム箔にエッチング処理を施した後、電極引き出し用リードタブを取り付けて形成することができる。
【0058】
上記のようにして形成した陽極箔と陰極箔とを、両者の表面を上記したような隔離紙を介して対向させつつ卷回することによって、コンデンサ素子を得ることができる。
コンデンサ素子の作製に使用する隔離紙は、特に限定されないというものの、好ましくは、天然に産出するセルロース材料、例えばマニラ麻や草木のパルプなどを原料として製造された紙である。このような隔離紙は、例えば、草木のパルプを原料として用い、この原料パルプを除塵工程、洗浄工程、叩解工程、抄紙工程等を経て製造された紙を有利に使用することができる。なお、合成繊維に由来する紙の使用も可能である。
【0059】
本発明の電解コンデンサにおいて用いられる封口体は、その材料が硬度が高くて適度のゴム弾性を有し、電解液不透過性であり、そして封口体としての気密性が良好である限り、いろいろな常用の材料から形成することができる。適当な封口体材料としては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレンターポリマー(EPT)、イソブチレン・イソプレンゴム(IIR)等の弾性ゴムを挙げることができる。また、気密性が高く、電解液が蒸気として透過してしまうようなことがないので、イソブチレン・イソプレンゴム(IIR)を使用することも好ましい。特に、より優れた耐熱性を有するIIR、例えば、イオウ加硫、キノイド加硫、樹脂加硫、過酸化物加硫等のIIRを使用することがさらに好ましい。
【0060】
さらに、本発明の実施に当たっては、上記したような封口体材料に代えて、気密性があり強度も十分に高い樹脂材料板(例えば、PTFE板などのようなフッ素樹脂板)と弾性ゴムを貼り合わせたハイブリッド材料も有利に使用することができる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に説明する。言うまでもなく、ここに掲げる実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定しようとするものではない。
実施例1
巻回構造のアルミニウム電解コンデンサを下記の手順に従って製造した。
【0062】
まず、アルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理し、表面に酸化皮膜を形成し、その後電極引出し用リードタブを取りつけてアルミニウム陽極箔を作った。次に、別のアルミニウム箔にやはり電気化学的にエッチング処理を施した後、電極引出し用リードタブを収り付けてアルミニウム陰極箔を作った。続いて、陽極箔と陰極箔間にセパレータ(隔離紙)を挟んで巻回することにより、コンデンサ素子を作った。そしてこのコンデンサ素子に、下記の第1表に組成を示した電解液を含浸してから、有底アルミニウムケースに電極引出し用リードタブがケースの外に出るようにして収容し、このケースの開口を弾性封口体で密封して、巻回構造の電解コンデンサ(10WV−1,000μF)を作製した。
【0063】
次いで、上記のようにして作製した電解コンデンサについて、低温(−40℃)でのインピーダンス及び常温(20℃)でのインピーダンスをそれぞれ周波数:120Hzで測定した後、それぞれの測定値の比として表されるインピーダンス比(Z比)を求めた。下記の第1表に記載のような測定値が得られた。
さらに、電解コンデンサの寿命特性を評価するため、容量、tanδ及び漏れ電流(L.C.、定格電圧10Vを印加して1分後の電流値)のそれぞれについて、初期特性(コンデンサの作製直後の特性値)と、負荷試験(105℃で定格電圧10Vを印加して3,000時間放置)後の特性値の測定を室温(25℃)で行った。なお、容量及びtanδはそれぞれ周波数:120Hzで測定した。下記の第1表に記載のような測定値が得られた。
実施例2〜8
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例の場合、使用する電解液の組成を下記の第1表に記載のように変更した。なお、実施例7のポリアクリルアミドの含有量は、コンデンサの試験の終了後にコンデンサを解体して、電解液中に溶解したポリアクリルアミドの量を測定することにより、溶媒に対して約0.05質量%であることが確認された。特性試験によって得られた結果を下記の第1表にまとめて記載する。
比較例1〜6
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例の場合、比較のため、使用する電解液の組成を下記の第1表に記載のように変更した。特性試験によって得られた結果を下記の第1表にまとめて記載する。
【0064】
【表1】
Figure 0003635224
【0065】
【表2】
Figure 0003635224
【0066】
【表3】
Figure 0003635224
【0067】
上記した第1表に記載の試験結果から理解されるように、比較例1,2及び4では、105℃、3,000時間で容量が大きく減少し、また、tanδが著しく増加した。これに対して、本発明に従いポリアクリルアミドを添加した実施例1,2及び4では、特性が非常に安定で、容量、tanδとも変化が小さく、したがって、良好な特性が維持された。
【0068】
さらに、比較例3、5及び6では、105℃、3,000時間で防爆弁が作動し、コンデンサの故障を生じた。これに対して、実施例3及び5〜8では、非常に良好な特性が確認された。
【0069】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の電解液を使用すると、低インピーダンス特性を有し、低温と常温でのインピーダンス比(Z比)で表される低温特性に優れ、低温条件下でも良好な周波数特性を維持し、高温条件下でも電解液が安定で電極金属との反応が長時間にわたって抑制され、経時変化が小さく長寿命である電解コンデンサ、特にアルミニウム電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電解コンデンサの1例を示した断面図である。
【図2】図1の電解コンデンサのコンデンサ素子の構成を示した斜視図である。
【符号の説明】
1…コンデンサ素子
2…リード線
3…封口体
4…ケース
10…電解コンデンサ
13…円柱状突起
14…カール

Claims (6)

  1. 45〜90質量%の水を含有する1種もしくは複数種のプロトン系有機溶媒からなる溶媒と、ポリアクリルアミド又はその誘導体とを含むことを特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液。
  2. 前記ポリアクリルアミド又はその誘導体の分子量が、100〜2,000,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
  3. 前記ポリアクリルアミド又はその誘導体が、該電解液の溶媒の全量を基準にして0.05〜5.0質量%の範囲で含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
  4. 前記溶媒と、カルボン酸又はその塩及び無機酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
  5. 記溶媒がさらに非プロトン系有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解液を含んでなることを特徴とする電解コンデンサ。
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