JP3952829B2 - 排気管用球面継手 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の排気管に適用される排気管用球面継手の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、原動機に接続される排気管において、上流側排気(以下、上流側管)と下流側排気(以下、下流側管)とを接続する排気管用球面継手としては、特開2000−27640号公報に記載のものが知られている。
【0003】
この従来技術は、上流側管と下流側管のいずれか一方の接続端部に、他方の接続端部に向けて凸形の球状座面を有する凸形の接続フランジを設け、かつ、他方の接続端部に一方の接続端部に向けて凹形の球状座面を有する凹形の接続フランジを設け、これら2つの球状座面にそれぞれ摺接する球状シール面を備えたシール部材を前記2つの接続フランジ間に介装して2つの接続フランジを相対変位可能に結合し、前記各球状シール面の曲率中心を異なる位置に設定することにより、1つの継手の中に2つの球状シール面を持ちながら、シール部材の組み付け作業を簡単かつ効率よく行えるようにしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の管用球面継手にあっては、2つの摺動面を設けることによって、上流側管もしくは下流側管のうち原動側となる管の軸直方向の変位を従動側の管へ伝わりにくい構造とし、管軸直方向変位の伝達抑制性能の向上を図ろうとはしているものの、2つの摺動面を同一方向に向かって近接配置しているので、各球状シール面の曲率中心間距離が短く、実際には十分な伝達抑制性能が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、上流側排気管もしくは下流側排気管どちらか一方の管軸直方向変位を、他方へ伝えにくくするという優れた伝達抑制性能を発揮することができると共に、上流側排気管もしくは下流側排気管どちらか一方が他方から離れる方向の変位を、他方へ伝えにくくするという優れた効果も発揮することができる排気管用球面継手を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、車両の原動機に接続される排気管の一部を構成する上流側排気管と下流側排気管の双方の接続端部に設けた接続フランジと、これら2つの接続フランジと摺接するシール部材と、前記2つの接続フランジを相対変位可能に結合する結合手段と、を備えた排気管用球面継手において、前記2つの接続フランジは、互いに相手方の接続フランジ側に向けて凸形となる球状座面をそれぞれ有することを特徴とする。
【0007】
【発明の効果】
本発明では、双方の凸形による球状座面の曲率中心が、上流側排気管の接続フランジについては上流側に、また、下流側排気管の接続フランジについては下流側に、それぞれ分かれて存在するので、双方の球状座面の曲率中心が上流側または下流側の一方のみに存在するように2つの接続フランジの形状を設定した排気管用球面継手に比して、曲率中心間距離を大きくとることができる。
【0008】
よって、双方の球状座面の曲率中心間距離を大きくとることにより、上流側排気管もしくは下流側排気管どちらか一方の管軸直方向変位を、他方へ伝えにくくするという優れた伝達抑制性能を発揮することができると共に、上流側排気管もしくは下流側排気管どちらか一方が他方から離れる方向の変位を、他方へ伝えにくくするという優れた効果も発揮することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の排気管用球面継手を実現する実施の形態を、参考例と、第1実施例と、第2実施例とに基づいて説明する。
【0010】
参考例
まず、構成を説明する。図1は参考例の管用球面継手1を示す断面図である。図1において、2は上流側管、3は下流側管であり、前記下流側管3の接続端部における筒内径は、上流側管2の筒内径よりも大きくなるように拡径され、上流側から下流側へ流体が流れやすくしている。
【0011】
前記上流側管2の接続端部には、環状の接続フランジ4が周設されており、この接続フランジ4には、軸直方向対称位置にボルト貫通穴5,5が形成されている。このボルト貫通穴5,5には、上流側からボルト6,6が挿入され、このボルト6,6のボルト頭部と接続フランジ4との間には、ワッシャを介して弾性部材であるコイルスプリング7,7が介装されている。
【0012】
なお、ボルト6には、つば状のストッパ6aが形成されており、前記ボルト貫通穴5,5の内径は、ストッパ6a,6aが通り抜け可能な径を有している。また、このストッパ6a,6aを挟んだボルト6,6の先端側に雄ねじ部が形成されている。
【0013】
前記下流側管3の接続端部には、環状の接続フランジ8が周設されており、この接続フランジ8には、中心を挟んで対称となる2カ所にボルト貫通穴9,9が形成されている。このボルト貫通穴9,9と前記接続フランジ4のボルト貫通穴5,5とは、中心を挟んで対称となるそれぞれの位置で対応しており、この対応するそれぞれにボルト6,6が差し込まれている。
【0014】
前記ボルト貫通穴5,5に上流側(図中左側)から差し込まれたボルト6,6は、先端をボルト貫通穴9,9に貫通させ、この先端をナット22,22で締結されている。これらナット22,22のねじ込みは、ボルト6,6に設けられたストッパ6a,6aが接続フランジ8に当接することによって規制されている。
【0015】
上述したボルト6,6、ボルト貫通穴5,5、ボルト貫通穴9,9、コイルスプリング7,7およびナット22,22から、2つの接続フランジ4,8を相対変位可能に結合する結合手段10が構成されている。
【0016】
前記2つの接続フランジ4,8は、他方の接続フランジ側が凸形となる球状座面11,12を有している。前記球状座面11の曲率中心は接続フランジ4の上流側に位置し、一方、球状座面12の曲率中心は接続フランジ8の下流側に位置している。そして、各球状座面11,12の間にはシール部材13が介装されている。
【0017】
このシール部材13には、前記2つの球状座面11,12に対応した凹形の球状シール面16,17がそれぞれ形成されており、2つの球状座面11,12とそれぞれ摺接している。つまり、2つの球状座面11,12の形状は、シール部材16,17の形状とそれぞれ対応している。
【0018】
ちなみに、2つの球状座面11,12が、各球状シール面16,17の形状に対応するということは、互いに摺接する球状シール面と球状座面との曲率が同じであることを意味している。したがって、各球状シール面16,17の曲率中心は、各対応する接続フランジ4,8の各球状座面11,12の曲率中心と同じ位置に存在する。
【0019】
前記シール部材13は、図2に示すように、真球面の一部を環状に切り取った球状シール面を左右両側に形成したガスケット部13aと、このガスケット部13aの環状内面に装着される円筒部13bと、前記ガスケット部13aの環状外面に装着される円筒部13cとによって形成されている。
【0020】
前記円筒部13bと円筒部13cは、弾性圧縮状態で2つの接続フランジ4,8に挟み付けられるガスケット部13aの破損防止や、ガスケット部13aの球状シール面の変形防止という作用をもつだけでなく、エンジンの排気管継手として用いられる場合に、円筒部13bは高温排気の直撃によるガスケット部13aの熱劣化や熱老化の防止、前記円筒部13cはシール部材13の放熱という作用をもつ。
【0021】
前記シール部材13は、図に示すように、その外周側表面積が内周側表面積よりも大きくなるように形成されているので、主要な受熱面である円筒部13bの内周側表面積に比して、主要な放熱面である円筒部13cの外周側表面積を十分大きく取ることができる。よって、2つの摺動面が同一方向に向かって近接配置された従来例のシール部材(図3参照)と比較して、放熱性能、すなわち耐熱性能の点で有利である。
【0022】
次に、作用を説明する。
【0023】
[曲率中心間距離の比較]
参考例と従来例とを比較した時に、参考例の方が従来例よりも各曲率中心間距離が長くなることを図3に示す。図3は特開2000−27640号公報に記載された従来の排気管用球面継手を示す断面図である。
【0024】
図3において、各曲率中心O01,O02は、球状座面011,012の曲率半径R01,R02をもって定まっている。なお、曲率中心O,Oは、図1に示した参考例の各球状座面11,12の曲率半径R,Rをもって定まっている。
【0025】
すなわち、図3において、上流側管02のみに2つの中心を持つ従来例の場合、曲率中心間距離D01は2つの曲率中心O01,O02の間の距離となる。これに対し、上流側管と下流側管にそれぞれ中心を持つ参考例の場合、曲率中心間距離Dは曲率中心O,Oの間の距離となる。
【0026】
よって、一方の曲率中心O01,Oを同じ位置に設定した場合、参考例の曲率中心間距離Dの方が、従来例の曲率中心間距離D01より長くなることは明らかである。
【0027】
[曲率中心間距離と変位伝達抑制性能との関係]
次に、2つの球状シール面を1つの継手の中に有する管用球面継手において、上流側管もしくは下流側管のいずれか一方から他方へ伝達される管軸直方向変位の伝達抑制性能の指標として、2つの球状シール面の曲率中心間距離が有効であることを説明する。
【0028】
従来例および参考例を含め、2つの球状シール面を1つの継手の中に有する管用球面継手の場合、上流側管・下流側管の各球状座面で決まる曲率中心と、この球状座面に対応するシール側の各球状シール面の曲率中心との相対位置(距離)は、常に0であり、かつ、2つの球状座面の曲率中心間距離は一方の管に変位が発生しても不変であり、その距離はシール側の各球状シール面の曲率中心間距離に等しい。
【0029】
つまり、上流側管もしくは下流側管の一方を、変位を発生させる原因となる原動側管とし、他方を原動側管につられて変位させられる従動側管とすると、従動側管の位置は、この管の球状座面の曲率中心位置に対して相対位置(距離)が0であるこの球状座面と摺接するシール側の球状シール面の曲率中心位置に依存することとなる。
【0030】
この時、原動側管と摺接するシール側の球状シール面曲率中心の変位は、原動側の球状座面の曲率中心位置の変位で決まるとともに、従動側管と摺接するシール側の球状シール面曲率中心の変位は、従動側管の変位量と従動側支持構造の拘束条件によって決まるこの従動側管の支持構造にて発生する応力が、最も少ない位置で決まることとなる。
【0031】
すなわち、管軸直方向の変位の伝達抑制性能は、前記2つの球状シール面を1つの継手の中に有する管用球面継手の場合の条件を満たしながら、従動側管の拘束条件で決まる従動側管の変位ベクトルが如何なる向きであっても、2つの球状シール面曲率中心間の距離が長い時に、原動側管の単位変位量に対する従動側管の球状座面の曲率中心位置の変位量がより少ないことを証明できれば、良いということができる。
【0032】
それを証明している図が、図5〜図8である。図5は図4(イ)に示す従来例略図において、管02が軸直方向に変位した場合の模式図であり、図6は図4(イ)に示す従来例略図において、管03が軸直方向に変位した場合の模式図である。それに対し、図7は図4(ロ)に示す参考例略図において、管2が軸直方向に変位した場合の模式図であり、図8は図4(ロ)に示す参考例略図において、管3が軸直方向に変位した場合の模式図である。これらの模式図はいずれの場合も、2つの球状シール面曲率中心間の距離が長い程、原動側管の単位変位量に対する従動側管の変位量が小さいことを示しているため、図5を代表例として説明する。
【0033】
図4において、管02が管軸直方向にYだけ移動した場合、すなわち図4において曲率中心O01がO01'へYだけ変位した時、O02'はO01'からの距離がDの円弧上のどこかに存在する。その位置は、管03の拘束条件から定まるO02→O02'の変位ベクトルとの交点となる。よって、管03の拘束条件が同じ場合に、Dの距離が長い方が、O02の変位量が小さいことを証明できれば良い。
【0034】
図5は、O02の変位がどうなるかを、Dが長い場合と短い場合との違いをO02の変位前の位置を基準にして重ねて描いたものである。図5から明らかなように、O02の変位ベクトルの向きが同じであれば、距離Dが長い方が、より変位量が小さいことが分かる(O02'の比較の一例として、Dが短い時のO02'AとDが長いときのO02'Bとを比べると、O02'Bの方がよりO02に近い。)。
【0035】
また、図6から、上記は管03が変位した場合にも同じことがいえることが分かる。さらに、参考例についても、図7,図8から、曲率中心間距離Dが長い方が従動側管の変位量が小さいことは明らかである。
【0036】
以上の4つの例から、原動側管の軸直変位量に対する従動側管の変位量をできるだけ小さくするためには、曲率中心間距離Dを長くすることが有効であるといえる。別の言い方をすれば、原動側管の変位量に対する従動側管の変位量は曲率中心間距離Dに依存する。また、上記と同様な考え方により、原動側管の球状座面で決まる曲率中心が、従動側管の球状座面で決まる曲率中心に対し、離れるような方向の変位に対しても有効であることも解る。
【0037】
[曲率中心間距離の設定実例]
次に、参考例が従来例に対し、2つの球状シール面の曲率中心間距離を長くできる実例を示す。
【0038】
まず、継手各部の寸法を定義する。図9は従来例と参考例の各部の寸法を略図で示したものである。図において、2つの球状シール面のうち、一方に対し曲率半径が同じもしくは大きい方の曲率半径をRとし、このRをもつ球状シール面とは別の球状シール面の半径をrとする(つまり、R≧r)。さらに、両接続フランジの球状座面の軸直方向幅をH、2つの接続フランジで構成される軸方向幅をL、曲率半径Rをもつ接続フランジの軸方向幅をT、曲率半径Rをもつ接続フランジの球状座面の球状シール面と管中心軸の交点に対する曲率半径Rをもつ接続フランジ端面の距離をG、曲率半径rをもつ接続フランジの軸方向幅をt、曲率半径rをもつ接続フランジの球状座面の球状シール面と管中心軸の交点に対する曲率半径rをもつ接続フランジ端面の距離をgとする。
【0039】
この時、LとHは継手の大きさ等の制約から決まり、またT,t,G,gは球状シール面曲率半径R,rや管径、継手の大きさから定まることになる。また、Rとrは、継手としてのシール性、耐久性、許容折れ角および継手寸法等から設計上制約を受けるが、それらは継手の適用部位が同じであれば、従来例と参考例は前記制約条件が同じであると考えられるため、従来例と参考例の各部の寸法は、同じ記号の所は同じ寸法値となる。
【0040】
よって、従来例の曲率中心間距離をD参考例の曲率中心間距離をDとし、DとDを比較すると、下記(1)(3)の数式に示すように、参考例の方が曲率中心間距離を長くできる。つまりは従来例よりも変位の伝達抑制性能を確実に向上させることができる。
=R+L+g−r−G−T (1)
D=R+r+L−G−T−g−t (2)
D−D=2r−(2g+t)>0 (3)
(∵r>g+t)
【0041】
ここで、このことが現実的である理由を、一方の球状シール面円弧よりも内側に他方の球状シール面を配置し、この一方の球状シール面曲率半径以上の半径を他方の球状シール面曲率半径にもたせた、従来例の中では球状シール面曲率中心間距離を一番長く取ることができる図3の例を用いて以下に示す。
【0042】
従来例の球状シール面曲率中心間距離を長くするためには、大きく分けて以下の3つの方法がある。1つ目の方法は、図10に示したもので、従来例の元の曲率中心間距離D01参考例の球状シール面曲率中心間距離Dと同じにするために、曲率中心O01、曲率半径がR01で管02に設けられた球状座面011を、接続フランジの外寸法が変わらないように位置はそのままにしつつ球状シール面の曲率半径をR03と大きくし、曲率中心がO03となるような球状座面011aにすることによって、参考例の曲率中心間距離Dと同じ長さの曲率中心間距離D02を実現しようとしたものである。
【0043】
しかしこの方法で球状シール面曲率中心間距離を長距離化した場合、上記のようにシール性、耐久性、許容折れ角および継手寸法等から設計上の制約を受ける曲率半径がR03でも許容されるのであれば、図から明らかなように、参考例では、さらに長距離な球状シール面曲率中心間距離D+Dを持たせることができ、参考例の優位は変わらないといえる。
【0044】
2つ目の方法は、図11に示したもので、従来例のシール013を管軸方向の厚さを増やし、すなわちは管03に設けられた接続フランジ08の球状座面012の曲率半径はそのままに、曲率中心をO02からO04へと移動させるために球状座面位置を012'へ移動することにより、図10で示した参考例の曲率中心間距離Dと同じ長さをもつ球状シール面曲率中心間距離D03を従来例にて実現しようとしたものである。しかしながら、図から明らかなように、曲率中心間距離D03を実現させるには、接続フランジの外寸法が大きくなるというデメリットが発生する。また、別の見方として、設計上の制約が図の曲率中心距離D03を実現できる球状座面の位置012'を許容できるなら、参考例ではさらに長い曲率中心間距離を実現できることは明らかであり、従来例に対する参考例の優位は変わらない。
【0045】
そして、3つ目の方法は、図12に示したもので、従来例における管03に設けられる球状座面012の球状シール面曲率中心O02を、管02に設けられる球状座面011の球状シール面曲率中心O01から離すために、管03の球状座面の曲率半径をRのように小さくして球状座面を012"、球状シール面曲率中心をO05としたものである。しかし、図からも明らかなように、この方法では、接続フランジの外寸法が大きくなるだけでなく、フランジ08の管02寄りの管軸直端面位置よりも管03寄りに球状シール面曲率中心O05を配置させることは不可能である。そのため、球状シール面曲率中心間距離を長くしようとしても、図における球状シール面曲率中心間距離D04までしか長くすることができない。
【0046】
以上のことから、管軸直方向変位の伝達抑制性能向上には、従来例よりも参考例の方が現実的に優れている。
【0047】
次に、効果を説明する。
(1) 接続フランジ4,8が、互いに相手方の接続フランジ側に向けて凸形となる球状座面11,12をそれぞれ有するので、従来例よりも曲率中心間距離を長く設定することができ、この結果、上流側管2もしくは下流側管3どちらか一方の管軸直方向変位を、他方へ伝えにくくするという優れた伝達抑制性能を発揮することができると共に、上流側管2もしくは下流側管3どちらか一方が他方から離れる方向の変位を、他方へ伝えにくくするという優れた効果も発揮することができる。
(2) シート部材13の球状シール面16,17が、球状座面11,12に対応した凹形に形成されているので、密封機能をなす接触面積が広く確保され、高いシール性を達成することができる。
(3) シール材13の主要な受熱面である円筒部13bの内周側表面積に比して、主要な放熱面である円筒部13cの外周側表面積が十分大きく形成されているので、高い耐熱性能が得られる。
【0048】
(第実施例)
実施例は、参考例の管用球面継手1をエンジンEの排気管に適用した例である。
【0049】
すなわち、図13に示すように、自動車のエンジンEにおいて、燃焼加振力により発生するロール方向の振動に対する配置例であり、参考例の管用球面継手1をエンジンE(原動機)と消音器との間の排気管に接続し、2つの球状座面の各距離率中心を結んだ線の延長線を、エンジンEのロールセンタ点を通るように配置したものである。この配置例は、主にアイドル回転時やエンジン低回転時の振動形態に配慮したものである。
【0050】
作用を説明すると、上記の如く、参考例の管用球面継手1は、原動側管の軸直方向または従動側管から離れる方向の変位伝達抑制性能に優れている。
【0051】
よって、参考例の管用球面継手1の効果をより有効に利用するためには、原動側管の変位が管軸直方向または従動側管から離れる方向になるように配置する必要がある。
【0052】
これに対し、第実施例では、エンジンEのロール方向の動きが、原動側管に対し、軸直方向または従動側管から離れる方向の変位を与えるため、結果としてアイドル回転時やエンジン低回転時の排気系振動を効果的に低減することができる。
【0053】
以上説明したように、第実施例の排気管用球面継手にあっては、参考例の管用球面継手1をエンジンEの排気管に適用し、原動側排気管および従動側排気管の2つの接続フランジは、2つの球状座面の各曲率中心を結んだ線の延長線を、エンジンEのロールセンタ点を通るように設定したため、エンジンEのロール方向の動きが、原動側管に対し、軸直方向または従動側管から離れる方向の変位を与えるアイドル回転時やエンジン低回転時の排気系振動を効果的に低減することができる。
【0054】
(第実施例)
実施例は、第実施例と同様に、参考例の管用球面継手1をエンジンEの排気管に適用した例である。
【0055】
すなわち、図14に示すように、自動車のエンジンEにおいて、ピストン等の質量のあるものの並進方向運動によって発生する並進方向の慣性加振力による並進方向振動に対する配置例であり、参考例の管用球状継手1をエンジンE(原動機)と消音器との間の排気管に接続し、2つの球状座面の各曲率中心を結んだ線の延長線を、エンジンEの並進変位方向と垂直となるように配置したものである。この配置例は、主にエンジン高回転時の振動形態に配慮したものである。なお、ここでいう垂直とは、完全な垂直だけではなく、それに近似した角度も含む。
【0056】
作用を説明すると、第実施例では、図14から明らかなように、原動側管には管軸直方向の変位成分が入ることになるため、結果としてエンジン高回転時の排気系振動を効果的に低減することができる。
【0057】
以上説明したように、第実施例の排気管用球面継手にあっては、参考例の管用球面継手1をエンジンEの排気管に適用し、原動側排気管および従動側排気管の2つの接続フランジは、2つの球状座面の各曲率中心を結んだ線を、エンジンEの並進変位方向と垂直となるように設定したため、エンジンEの並進変位方向の動きにより、原動側が管軸直方向の変位となるエンジン高回転時の排気系振動を効果的に低減することができる。
【0058】
(他の実施例)
以上、本発明の管用球面継手を参考例と、第1実施例と、実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
例えば、シール部材13の外周にフィンを周設することによって、シール部材13の放熱(耐熱)効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例の管用球面継手を示す側面図である。
【図2】シール部材の側面断面図(イ)、正面図(ロ)である。
【図3】従来例と参考例の曲率中心間距離比較を示す説明図である。
【図4】従来例の構造略図(イ)、参考例の構造略図(ロ)である。
【図5】図4(イ)において管02が軸直方向に変位した場合の模式図である。
【図6】図4(イ)において管03が軸直方向に変位した場合の模式図である。
【図7】図4(ロ)において管2が軸直方向に変位した場合の模式図である。
【図8】図4(ロ)において管3が軸直方向に変位した場合の模式図である。
【図9】従来例の各部寸法略図(イ)、参考例の各部寸法略図(ロ)である。
【図10】従来例と参考例の球状シール面曲率中心間距離の長距離化困難性比較を示す説明図である。
【図11】従来例と参考例の球状シール面曲率中心間距離の長距離化困難性比較を示す説明図である。
【図12】従来例と参考例の球状シール面曲率中心間距離の長距離化困難性比較を示す説明図である。
【図13】第実施例の構成を示す模式図である。
【図14】第実施例の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 管用球面継手
2 上流側管
3 下流側管
4,8 接続フランジ
5,9 ボルト貫通穴
6 ボルト
7 コイルスプリング
10 結合手段
11,12 球状座面
13 シール部材
16,17 球状シール面

Claims (5)

  1. 車両の原動機に接続される排気管の一部を構成する上流側排気管と下流側排気管の双方の接続端部に設けた接続フランジと、
    これら2つの接続フランジと摺接するシール部材と、
    前記2つの接続フランジを相対変位可能に結合する結合手段と、
    を備えた排気管用球面継手において、
    前記2つの接続フランジは、互いに相手方の接続フランジ側に向けて凸形となる球状座面をそれぞれ有することを特徴とする排気管用球面継手。
  2. 請求項1に記載された排気管用球面継手において、
    前記シール部材は、前記2つの球状座面とそれぞれ対応する凹形の球状シール面を有することを特徴とする排気管用球面継手。
  3. 請求項1または請求項2に記載された排気管用球面継手において、
    前記シール部材は、その外周側表面積が内周側表面積よりも大きくなるように設定したことを特徴とする排気管用球面継手。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載された排気管用球面継手において
    前記上流側排気管および下流側排気管の2つの接続フランジは、2つの球状座面の各曲率中心を結んだ線の延長線を、前記原動機のロールセンタ点を通るように設定したことを特徴とする排気管用球面継手。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載された排気管用球面継手において
    前記上流側排気管および下流側排気管の2つの接続フランジは、2つの球状座面の各曲率中心を結んだ線の延長線を、前記原動機の並進変位方向と垂直となるように設定したことを特徴とする排気管用球面継手。
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