JP3952512B2 - 架橋ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法 - Google Patents
架橋ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、架橋ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルアルコール(以下PVAと略称)やエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下EVOHと略称)よりなるフィルムは極めて優れたガスバリアー性を有しており、各種用途に使用されている。また、PVAやEVOHの架橋に関しては従来から種々の方法が提案されているが、多大な設備を必要とせず、高速度で工業的に有利に架橋させるうえでさまざまな問題があった。
【0003】
例えば、特開昭56−49734号公報には、PVA系重合体フィルムを水と接触させて、含水状態にて電子線を照射することにより架橋せしめる方法が提案されている。しかしながら、この方法の場合フィルムを電子線照射により架橋司能な含水率にせしめるためには、水中に長時間該フィルムを浸漬しなければならないため、作業工程が煩雑で、高速生産が困難であるという問題があった。
【0004】
また、特開昭55−277299号公報には、オレフィンとビニルエステルとの共重合体フィルムを架橋した後に、第1アルコール及び触媒と接触させることにより、ビニルエステルを加水分解させ、架橋したオレフィン−ビニルアルコール共重合体よりなるフィルムを得る方法が提案されているが、このためには膨大な加水分解の為の設備が必要となり、なおかつ加水分解反応のために生産速度が大きく制約を受けるという問題があった。
【0005】
更に、特開昭62−252409号公報には、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートを、PVAまたはEVOHに添加しフィルムとした後に、電子線を照射することにより架橋せしめる方法も提案されているが、高価な多官能性モノマーを多量に添加しなければならないという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、架橋したPVAまたはEVOHフィルムを、高速で容易にかつ経済的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、基材上にPVAまたはEVOHの溶液を塗布し、塗膜が膨潤状態である間に、電子線を照射して、該PVAまたはEVOHを架橋させた後、該PVAまたはEVOH塗膜を基材より剥離することを特徴とする、架橋ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法が提供される。
【0008】
すなわち、本発明者らは、基材上にPVAまたはEVOH溶液を塗布し、塗膜が膨潤状態である間に電子線を照射するとPVAまたはEVOHが溶易に架橋し、その後に該PVAまたはEVOH塗膜を剥がすことにより、短時間でかつ簡単な設備で架橋PVAまたはEVOHフィルムが得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明で使用される基材としては特に制限がなく、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの合成樹脂フィルムまたはシート、或いは、金属シート等が挙げられる。更に必要に応じてPVAまたはEVOH塗膜と、該フィルムまたはシートとの剥離性を改善するため、該フィルムまたはシートに離型剤処理を施すことも可能である。
【0010】
また、本発明で使用されるPVAとしては、ケン化度60モル%程度の部分ケン化品からケン化度99モル%以上の完全ケン化品までのものが好適に使用され、EVOHとしては、十分なガスバりアー性を付与するためビニルアルコール含有量が50モル%程度以上のものが好適に使用される。
【0011】
本発明の架橋ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法においては、まずPVAまたはEVOHをそれぞれ水または水/アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール)混合溶媒などの溶媒に溶解してPVAまたはEVOHの溶液を調製するが、市販されているPVAまたはEVOHの溶液をそのまま使用してもなんら差し支えない。この際に、架橋されたPVAまたはEVOHフィルムに柔軟性を付与するために、エチレングリコール、グリセリン等の可塑剤をあらかじめ溶液に添加することも可能である。ここでPVAまたはEVOHの溶液の濃度は1〜50重量%が好ましい。濃度が1重量%の場合は、溶媒の量がPVAまたはEVOHの量に比べて著しく多くなるため、電子線照射後の乾燥に膨大なエネルギーが必要となるので好ましくなく、濃度が50重量%を得える場合は溶液の粘度が非常に高くなり基材に対する塗布が困難となるので好ましくない。
【0012】
次いで、得られたPVAまたはEVOHの溶液をバーコーター、ナイフコーター、グラビアロール、リバースロールコーターなどの手段を用いて、基材上に塗布厚みが通常2〜200μとなるよう塗布する。塗布厚みが2μ以下では、高速度で均一な塗布が難しく、また基材との剥離工程において塗膜が著しく薄くなるため、基材との剥離が安定して行えなくなるので好ましくなく、200μ以上では、架橋後の乾燥を高速度で行うのが困難となるので好ましくない。
【0013】
次に、PVAまたはEVOHの塗膜が膨潤状態であるうちに電子線を照射する。この際APVAまたはEVOH塗膜は電子線の作用により架橋する。塗膜中に溶媒が残存していない場合は電子線を照射しても架橋しないので、塗膜が膨潤状態である間に電子線を照射する必要があるが、塗膜中の溶媒の含有率は通常10wt%程度以上必要である。
【0014】
また、電子線の照射量は、50Mrad以下が好ましい。照射量が50Mradを越えると、PVAまたはEVOHの分解が起こるので好ましくない。更に、フィルムのガスバリアー性を保つために、電子線照射後PVAまたはEVOH塗膜中に残存する溶媒を熱風乾燥炉などで除去することが望ましい。そして、架橋PVAまたはEVOH塗膜を基材より剥がし架橋PVAまたはEVOHフィルムを得ることができる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、評価は以下の方法によって行った。
〔ゲル分率(%)〕
架橋PVAフィルムについては95℃熱水中1時間、架橋EVOHフィルムについては80℃水/イソプロピルアルコール=1/1混合溶媒中に1時間浸漬した後、不溶部分の重量を測定しゲル分率を下式に基づいて算出した。
ゲル分率(%)=(不溶部分重量/塗膜重量)×100
〔酸素透過度(cc/m2・24H・atm〕
酸素バリアー性測定機(モコン社製)により架橋フィルムを23℃、50%R.H.の条件下で酸素過度を測定した。
【0016】
実施例1
60μのポリエチレンフィルムにケン化度88モル%のPVA20wt%水溶液をバーコーターを用いて、100μの厚み(ウェット)で塗布し、温風を吹き付け塗膜の含水率を10wt%に調整した後、直ちに電子線照射装置(キュアトロン:日新ハイボルテージ製)に導入して10Mrad(加速電圧:200KV)の電子線を照射してPVA塗膜を架橋させ、ドライヤーで残存水分を蒸発させた後塗膜を剥がして、架橋PVAフィルム(20μ)を得た。この間に要した時間は約10分であった。得られた架橋フィルムの性質を表1に示す。
【0017】
実施例2
電子線照射時のPVA塗膜の含水率を50wt%にした以外は実施例1と同様にして架橋PVAフィルム(20μ)を得た。この間に要した時間は約10分であった。得られた架橋フィルムの性質を表1に示す。
【0018】
実施例3
PVA水溶液の代わりにEVOH(ビニルアルコール含量68モル%)の水/イソプロピルアルコール=1/1混合溶媒の溶液を用い、電子線照射時の溶媒含有率を50wt%、電子線の照射量を40Mradにした以外は実施例1と同様にして架橋EVOHフィルム(20μ)を得た。この間に要した時間は約10分であった。得られた架橋フィルムの性質を表1に示す。
【0019】
比較例1
20μのPVAフィルムをイオン交換水中に1時間漬けフィルムの含水率を10wt%とした後、直ちに電子線照射装置(キュアトロン:日新ハイボルテージ製)に導入して、10Mrad(加速電圧:200KV)の電子線を照射しフィルムを架橋させた。次いで、ドライヤーで残存水分を蒸発させて架橋フィルムを作製した。この間に要した時間は60分以上であった。得られた架橋フィルムの性質を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
本発明の架橋PVAまたはEVOHフィルムの製造方法においては、PVAまたはEVOHを電子線照射で架橋可能な含水状態にするのに、溶液を基材上に塗布する方法を用いているため、従来のようにフィルムを製膜した後に水に浸漬する等の方法に比べ、簡易な設備で遥かに高速度の生産が可能である。また、本発明の方法で得られるPVA系フィルムは架橋により耐熱性が向上するので、従来、白化や“しわ”が発生するため使用できなかったレトルト食品の包装用途にも使用可能である。
Claims (1)
- 基材上にポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体の溶液を塗布し、塗膜が、該塗膜の溶媒含有率を10〜50wt%に調整した膨潤状態である間に、電子線を照射して、該ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体を架橋させ、ついで残存水分を蒸発させた後、該塗膜を該基材から剥離することを特徴とする、架橋ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
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