JP3951253B2 - 含油軸受 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、中央に軸受部を形成した環状の圧粉成形焼結金属体からなるところの、潤滑油を含浸させた軸受に関し、圧粉成形焼結金属体を、中央に軸受け部を形成したインナー部と、その周りに嵌合させたアウター部との結合構造とするとともに、インナー部には低粘度の潤滑油を、アウター部には高粘度の潤滑油を、それぞれ含浸させるという、両部材に対し、相互に異質の潤滑油を含浸させることにより含油軸受の耐久性を向上させることを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
圧粉成形焼結金属体中に含浸させた潤滑油成分を焼結金属体中に有効に保持させるための最新の技術としては、これまでに本出願人が開発したところの「焼結金属による軸受」(実公平6−29536号)が知られている。 これは軸受部を有する環状の内側圧粉成形焼結金属部体における一側に接合部を凸設し、同じく他側に接合部を凸出させた外側圧粉成形焼結金属部体よりなり、上記した各接合部で他方の焼結金属部体に接合すると共に、両環状部体間に潤滑成分貯留部を形成してなるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の技術による焼結含油軸受による場合においては、回転軸との摩擦により発熱した際に、金属の回転軸と圧粉成形焼結金属部体である軸受内に含浸されている潤滑油との相互の熱膨張係数の差異により、潤滑油の一部が軸受から外部に漏出することが多い。
【0004】
また含油軸受の特徴である多孔質組織は、潤滑油を摺動面に自動的・安定的かつ継続的に供給することができる利点を有する反面、回転軸の回転により発生する油圧によって潤滑油が油孔から逃げやすいという欠点を有する。 そのために始動初期のなじみ期はもちろん、定常期においても回転軸と軸受け部との間において軽度の金属接触が断続的に繰り返されて所謂混合潤滑状態の使用となるのが普通である。
【0005】
しかし含油軸受が音響機器に用いられる場合においては、僅かな摺動音をも敬遠されるために、軸受け部内面の油孔を少なくして油圧の逃げを抑え、流体潤滑に近い状態を得るべく配慮がなされているが、一方においてそのように軸受け部内面の油孔をはじめから少なくしておくと、回転軸の起動直後に所定の油膜厚に達してしまうために、かえって回転軸および軸受け部表面の微細な凹凸の平滑化をはかるための所謂なじみが不足し、軸回転の初期から定常期に入っても依然として前記した軽度の金属接触が断続的に繰り返される結果、電流値の変動を引き起こして所謂ワウの発生が問題視されており、あまり良好とはいえない。
【0006】
この場合、一定時間をかけた実機のならし運転をおこない、あるいは含油軸受の性能試験時に荷重を徐々に増加することにより、ある程度理想の状態に近づけることができることは解っているが、そのような過程を経ることは多大の手数と時間を要するばかりでなく、著しいコストの上昇を招くので実際的ではない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した従来技術の難点を解決し、回転軸の起動直後に若干の摩耗を伴って所謂なじみが速やかにおこなわれるとともに、なじみ後の摩擦係数が低く、しかもワウの発生のない理想の焼結含油軸受を提供するものであって、具体的には環状の圧粉成形焼結金属体であって、該圧粉成形焼結金属体は、中央に軸受部を形成したインナー部と、該インナー部の外周面側に、これと同心状に結合されたアウター部とからなり、しかもインナー部とアウター部には、インナー部には低粘度の潤滑油を、アウター部には高粘度の潤滑油を、それぞれ含浸させるという、相互に異質の潤滑油を含浸させてなることを特徴とした含油軸受に関する。
【0008】
【作用】
圧粉成形焼結金属体のインナー部とアウター部に、相互に異質の潤滑油を含浸させた場合においては、回転軸の回転初期にインナー部から低粘度の潤滑油が軸受け部内面に供給され、回転軸と軸受け部との間において軽度の金属接触が断続的に繰り返されて、所謂「なじみ」が速やかにおこなわれ、そのまま定常期に入った頃にはアウター部から高粘度の潤滑油がインナー部内に供給され、インナー部内の低粘度潤滑油と混合して本来予定する好ましい粘度の潤滑油となって、順次軸受け部に供給される。
【0009】
【実施例】
以下において本発明の具体的な内容を図面に基づいて説明すると、図1および図2には本発明の第1実施例が示されており、同図において1は、圧粉成形焼結金属体であるところの、インナー部2およびその外周面にこれと同心状に嵌合されたアウター部4とからなる2つの焼結体を同心状に結合させて構成した含油軸受をあらわす。 インナー部2は中心に軸受部3が形成されており、その外周面に対するアウター部4の結合は圧入あるいは2部材の一体化サイジング等の方法により結合される。 さらにインナー部2とアウター部4との結合端面には、断面V字状の溝部5が形成されている。
【0010】
またインナー部2をアウター部4の側面からアウター部内に圧入嵌合させるが、圧入に先立ってインナー部2には比較的低粘度の潤滑油が、またアウター部4には比較的高粘度の潤滑油が、それぞれ含浸される。 この場合上記した2種類の潤滑油は、同一銘柄であって粘度が異なるものであれば両者の混合による悪影響が全くないために最良である。さらに2つの潤滑油はインナー部2とアウター部4との2つの軸受の含油容積を考慮して、混合後の粘度がその含油軸受の定常的な運転のために最適となるように選択する必要があるが、上記した2種類の潤滑油は互いにその粘度差が大きい程効果的である。
【0011】
さらに図3には回転軸の起動初期における「なじみ」を促進し、しかも定常期に入って理想的な潤滑油による潤滑効果を得るばかりでなく、回転軸に対する自動的な調芯性を備えた本発明の第2実施例が示されている。 これは基本的には前記した第1実施例と同様に圧粉成形焼結金属体からなるインナー部12とアウター部15の2部材から構成されているものであるが、インナー部12は中心に軸受け部13を有するほか、その外周面に、その中央部を外方に向けて突出させるべく球体状に構成した球面部14を形成している。
【0012】
さらにアウター部15はその内周面側に、円周方向に連続させた凹部により透き間16が形成されており、インナー部12をアウター部15の側面から圧入して透き間16内に落ち着くように嵌合させるが、圧入に先立ってインナー部12には比較的低粘度の潤滑油が、またアウター部15には比較的高粘度の潤滑油が、それぞれ含浸される。 なおこの場合の圧粉成形焼結金属体に対する潤滑油の含浸方法については、例えば各部材を真空法または加熱法等の手法によって潤滑油を含浸させることができる。
【0013】
この場合におけるアウター部15の成形方法についての一例を挙げると、両端部を厚肉とし、その一端側を内径方向に、また他端側を反対側である外径方向に、それぞれ突出させた円筒状の圧粉成形結金属体を、その外径方向に突出させた大径側を先頭にして絞りダイに差し込み、さらに上パンチによって圧下サイジングすることにより、外径方向突出部を内径方向に転移させ、これによって両端部を共に内径側に突出させるように成形することができる。 またこの場合、アウター部15の突出部15aが大きく、球状のインナー部12を圧入させることが困難である場合には、図4のようにあらかじめインナー部12をアウター部15内に装入してから上方開口縁にテーパー部18aを有する下型ダイ18の、中央にコア20を垂直に立てた下パンチ19上にはめ込み、さらに中央に上記したコア20に対応するコア穴22を形成した上パンチ21により圧下サイジングして前記した他端側の外形方向突出部15aを内径側に反転突出させるようにすることもできる。
【0014】
このように構成すると、インナー部12とアウター部15との間に透き間16が形成され、この透き間16内に十分な潤滑油が貯溜される。
【0015】
圧粉成形焼結金属体からなるインナー部12とアウター部15とに、相互に異質の潤滑油を含浸させた場合、回転軸(図示省略)の回転初期にインナー部12から低粘度の潤滑油が軸受け部13内面に供給され、回転軸と軸受け部13との間において軽度の金属接触が断続的に繰り返されて、所謂「なじみ」が速やかにおこなわれ、そのまま定常期に入った頃にはアウター部15から高粘度の潤滑油がインナー部12内に供給され、インナー部12内の低粘度潤滑油と混合して本来予定する好ましい粘度の潤滑油となって、順次軸受け部13に供給される。
【0016】
すなわち従来の単一部材による含油軸受の場合には、初期なじみによって油孔が少なくなり、その結果油膜が多少厚めになるが、初期なじみ時と定常時の油膜厚との差は小さいため定常期になっても油膜厚さの僅かな変動によって回転軸と軸受け部の表面突起との接触が起こり、所謂ワウを生じるが、上記した本発明の含油軸受を使用した場合においては、回転軸の初期起動時には低粘度の潤滑油が軸受け部13の摺動面に供給される。 低粘度の潤滑油による油膜は薄いために回転軸および軸受け部の摺動面の突起のうち、その多くの部分が接触して平滑化される。 一方インナー部12に含浸されている潤滑油も回転軸の起動直後から含油軸受のポンプ作用により軸受内を循環し、外側のアウター部15に含浸されている高粘度の潤滑油も徐々にインナー部12に含浸された潤滑油中に次第に混入してゆき、やがて軸受の全体にわたって2種の潤滑油の均一な混合油が含浸された状態となる。
【0017】
この場合の混合油はその粘度が初期の「なじみ」の際におけるインナー部12から出された低粘度の潤滑油より粘度が高いために、同じ運転条件下での油膜の厚みも、初期なじみの時点に比べて厚くなり、機器の振動などにより多少油膜の厚みが変動したとしても、油膜厚より低い突起が接触するようなことがない。
【0018】
また回転軸に対する含油軸受11の取り付けに際し、双方の軸芯方向が完全に一致しない場合には、固定されたアウター部15に対してインナー部12の外周面側の球面部14が自在に摺動し、これによって回転軸の傾き具合に対応してインナー部12の軸芯方向が自由にかえられ、回転軸と含油軸受との接触面が常に平行かつ均等に接触する。
【0019】
【発明の効果】
本発明は上記した通り、圧粉成形焼結金属体のインナー部とアウター部に、インナー部には低粘度の潤滑油を、アウター部には高粘度の潤滑油を、それぞれ含浸させるという、相互に異質の潤滑油を含浸させるようにしたために、回転軸の回転初期にインナー部から低粘度の潤滑油が軸受け部内面に供給され、回転軸と軸受け部との間において軽度の金属接触が断続的に繰り返されて、所謂「なじみ」が速やかにおこなわれ、そのまま定常期に入った頃にはアウター部から高粘度の潤滑油がインナー部内に供給され、インナー部内の低粘度潤滑油と混合して本来予定する好ましい粘度の潤滑油となって、順次軸受け部に供給されるために、回転軸の起動直後に若干の摩耗を伴って所謂なじみが速やかにおこなわれるとともに、なじみ後の摩擦係数が低く、しかもワウの発生のない理想の焼結含油軸受を得ることができる。
【0020】
さらにインナー部と、該インナー部の外周面側に、これと同心状に結合されたアウター部とからなる含油軸受において、上記インナー部外周を球形とし、内周面中央に周方向に連続させた凹部により形成された透き間を設けたアウター部との間に空隙部を形成してなるものである場合においては、固定されたアウター部に対してインナー部の外周面側の球面部が自在に摺動することができ、これによって回転軸の傾きに対応してインナー部の軸芯方向が自由にかえられ、回転軸と含油軸受との接触面が常に平行かつ均等に接触して含油軸受の耐久性を著しく向上させることができ、しかも回転軸に対する軸受の部分的な片当り現象による発熱や焼付きを無くし、さらに偏摩耗を生じたりする不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例である含油軸受の側面拡大図。
【図2】 第1図に示した含油軸受の断面図。
【図3】 本発明の第2実施例であるところの、含油軸受の断面拡大図。
【図4】 本発明の第2実施例である含油軸受の加工のためのサイジング金型を用いた加工過程をあらわした説明図。
【符号の説明】
1 含油軸受
2 インナー部
3 軸受け部
4 アウター部
5 溝部
11 含油軸受
12 インナー部
13 軸受け部
14 球面部
15 アウター部
16 透き間
17 溝部
Claims (2)
- 環状の圧粉成形焼結金属体であって、該圧粉成形焼結金属体は、中央に軸受部を形成したインナー部と、該インナー部の外周面側に、これと同心状に結合されたアウター部とからなり、しかもインナー部には低粘度の潤滑油を、アウター部には高粘度の潤滑油を、それぞれ含浸させるという、両部材に対し相互に異質の潤滑油を含浸させてなることを特徴とした含油軸受。
- アウター部内周面中央には、周方向に連続させた凹部により透き間を形成するとともに、インナー部外周面を球形とし、該インナー部の球形面を上記アウター部内周側に嵌合させてアウター部の透き間との間に空隙部を形成してなるところの請求項1に記載の含油軸受。
Priority Applications (1)
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JP33552894A JP3951253B2 (ja) | 1994-12-21 | 1994-12-21 | 含油軸受 |
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JP33552894A JP3951253B2 (ja) | 1994-12-21 | 1994-12-21 | 含油軸受 |
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JPH08177861A JPH08177861A (ja) | 1996-07-12 |
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JP33552894A Expired - Lifetime JP3951253B2 (ja) | 1994-12-21 | 1994-12-21 | 含油軸受 |
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1994
- 1994-12-21 JP JP33552894A patent/JP3951253B2/ja not_active Expired - Lifetime
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