JP3951184B2 - フェライト磁石 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネトプランバイト型結晶構造の主相を有するフェライト磁石に関する。
フェライト磁石は様々な産業分野において使用されており、特に、最近の自動車の電装化およびIT化は、自動車部品用磁石の需要を増大させている。自動車部品に磁石を用いる場合は、部品の小型化、軽量化という命題が避けられないため、磁石特性に優れた磁石の使用が必要不可欠となり、例えば各種電装用モータに使用されるフェライト磁石についても磁石特性のより一層の向上が求められている。
磁石特性に優れたフェライト磁石としては、マグネトプランバイト型(以下、M型と呼ぶ)結晶構造を有するものが従来より知られている。そして、このM型フェライト磁石に関する研究も数多く為されているが、現在実用化されているものは、式SrO・nFe23で表されるSrフェライト磁石、並びに式BaO・nFe23で表されるBaフェライト磁石の二種類に集約される(各式中、nはSrOまたはBa0に対するFe23のモル比を表す。以下、SrとBaとを合せてAと記載する)。なかんずく、Srフェライト磁石は高い磁石特性を発揮することが確認されている。この場合、M相を構成する成分中のAOに対するFe23のモル比n(n=Fe23/AO)の化学量論組成は6.0であるが、現在量産されているSrフェライト磁石やBaフェライト磁石は、化学量論組成よりも遥かにAOが過剰である組成領域、例えばnが5.2ないし5.6程度の組成領域が選択されている。
上記のごとくAOに対するFe23のモル比nとして5.2乃至5.6程度を選択している理由は、前記した選択範囲よりもFe23が多い組成領域ほど焼結性が悪化し、所望の焼結密度を得ることが困難になるためである。すなわち、モル比nが5.6よりも大きい組成領域を選択し、通常に用いられている温度(1150℃程度)で焼結すると、十分に焼結密度を上げることは難しくなる。他方、低い焼結性を補うために高温で焼結すると、焼結密度は高くなるものの、結晶粒が大きく成長して磁石特性特に保磁力の大幅な低下を招いてしまう。さらに、モル比nが6.0よりも大きい組成領域を選択すれば、フェライト磁石中にFe23相等の異相が残留し、十分な磁石特性を得ることはできない。また、モル比が6よりも大きい組成領域では、マグネトプランバイト相の単相にはならないと一般的にいわれている。
高性能な磁石を得たい場合、保磁力、残留磁束密度とも大きくする必要があり、焼結密度を上げること、均一で微細な結晶粒を得ることが重要になる。高い焼結密度を得るためには高温で焼結する必要があるが、その場合は、上記したように結晶粒が成長してしまうため、この方法は現実的でない。この焼結性を改善するために、例えば、SiO2、CaCO3、Al23、Cr23等の添加物を1〜3mass%程度加えることがある。この他、同じく焼結性を改善するために、希土類元素の酸化物を添加するという報告(例えば、特許文献1参照)もある。
さらに磁気異方性を大きくする目的で、希土類元素だけでなく同時にコバルトを添加した磁気記録材料が報告されている(例えば、特許文献2参照)。希土類元素の添加は焼結性を向上させるものの、希土類元素には+3価のイオンとなるものが多く、これらがM相中のSr2+またはBa2+のサイトに固溶してM相中のイオンバランスを崩す原因となる。しかしながら、M相中のFe3+サイトにCo2+を固溶させることにより、前記イオンバランスの崩れを軽減してM相を安定化させることも可能となった。その後、全く同じ技術思想にて、LaとCoを添加したフェライト磁石および磁気記録材料の特許が開発されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。しかしながら、高価なコバルトを併用しているため原材料の価格はさらに高くなってしまう。膜として使用する磁気記録材料はともかく、バルクとして使用する磁石の場合は、この原材料価格が大きなコスト負担となってしまう。
これに対して本発明者は、Fe23過剰の組成領域であっても、希土類元素を少量添加すると共に雰囲気酸素濃度を制御して焼結することによって、一般的に選択されている焼結温度にて十分に焼結が進行し、M型結晶構造単相の均一微細な結晶が得られることを見出し、既に特願2003−83115号および特願2003−99405号にて明らかにしている。これによれば、Co等高価な元素を添加しなくても、希土類イオンと電気的なバランスを保て、優れた磁石特性が実現できる。
なお、上述したM型フェライト磁石の他、AOとFe23の混合比で、n=6よりもはるかに多くFe23を混ぜて大気中、あるいは酸素濃度を低くした還元雰囲気中で焼結すると、W型、U型、X型、Y型およびZ型という、M型と同じく六方晶系の結晶構造をとり得ることが一般的に知られている。これらの内、式AFe2+ 2Fe3+ 16 27で表されるW型は、良好な磁石特性を示す可能性が指摘され(例えば、特許文献5参照)、近年、このW型フェライト磁石に関する研究もなされるようになってきている。ここで、非化学量論組成にて表記すると、AO・2(FeO)・n’(Fe23)と表すことができ、モル比:n’は8前後が選択される(n’=8の場合が化学量論組成である)。M型フェライトに比べて飽和磁束密度がおおよそ10%高いことが知られているが、逆に保磁力が低い。また、W型の単一相にすることが非常に難しく、未だに実用化されていないのが実状である。このように、非常に不安定で単一相にできないため、W型フェライトの主相に、副相としてM型フェライトを5〜30%含んだ磁気記録媒体も提案されている(例えば、特許文献6参照)。
特公昭29−5139号公報 特開昭62−119760号公報 特開平10−149910号公報 特開平11−154604号公報 特開平9−260124号公報 特開平2−249127号公報
上述したように、従来一般のフェライト磁石では、焼結性の制約から化学量論組成よりも遥かにAO過剰の組成領域(n=5.2〜5.6)でしかフェライト磁石を製造できず、高価な原料(ACO3)が多量に必要になる分、製品価格が高くなる、という問題があった。
また、上記した焼結性の問題は、SiO2、CaCO3、Al23、Cr23等の添加や希土類元素の酸化物の添加によっても、根本的に解決できない状況にあった。
また、コバルトを添加したフェライト磁石は、その磁石特性については比較的良好であるけれども、材料として高価なコバルトを使用するため製造費用が高騰する。
さらに、W型フェライトでは、磁石特性に問題がある上、製造性にも問題があり、M型フェライトに代えて用いるまでには到らない。
本発明は上記のような従来技術の現状を考慮して為されたものであり、その課題は、化学量論組成よりもFe23過剰の組成領域でも優れた磁石特性を有する、安価なフェライト磁石とその製造方法とを提供することにある。
本発明は上記のような従来技術の現状を考慮して為されたものであり、その課題は、化学量論組成よりもFe23過剰の組成領域でも優れた磁石特性を有する、安価なフェライト磁石を提供することにある。
上記したように、本発明者は、従来一般のBaフェライトやSrフェライトよりも著しく高い残留密度を得るためFe23過剰の組成領域を選択し、かつ、希土類元素を少量添加すると共に雰囲気酸素濃度を制御して焼結することで、優れた磁石特性を示すM型単相のフェライト磁石を実現した。その後、さらに鋭意研究を行った結果、以下の結論を見出した。
磁石特性のうち高い保磁力を実現するには、主相であるマグネトプランバイト相(M相)が100%以上占めることが好ましい。ただし、M相の単相が得られなくとも、残りの異相のうち良好な磁気特性を示すW型フェライト相もしくはマグネタイト相がその多くを占めた場合、M相がモル比で80%を下回らない限りは、保磁力が劣化しないことを新たに見出した。特にW型相の残留磁束密度が高いために、M型単相の場合よりもわずかではあるが残留磁束密度は高くなることも新たに見出した。したがって、該M相はモル比で80%まで許容することができる。ただし、M相と、主にW相もしくはマグネタイト相から成る副相とは、共に平均結晶粒径が1.6μm以下の均一微細な結晶粒で、かつ均一に分散した組織になっていることが好ましい。また、異相としてX型フェライト、Y型フェライト、Z型フェライト、およびFe23等が多く生成した場合には、磁石特性が低下してしまう。したがって、そうはならないように秤量組成、仮焼時の雰囲気酸素濃度、微粉砕粒径、ならびに焼結時の雰囲気酸素濃度は、いずれも厳密に制御する必要がある。
本発明は、上記した知見に基づいてなされたもので、本発明に係るフェライト磁石は、式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]で表されるM型結晶構造の主相がモル比で83%以上を占めることを特徴とする。また、残りの副相は、少なくとも式 AFe2+ 2Fe3+ 16 27 で表されるW型フェライト相を含み、所望により式Fe34で表されるマグネタイト相を含んでもよい。なお、前記式(A 1-x x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y 2 3 において、AはSrとBaから選択される少なくとも一種であり、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.530.02<y≦0.046.3<n≦6.6の範囲にある。
このように構成したフェライト磁石においては、Fe23過剰の組成領域であってもM型フェライト相の主相が得られる。このとき、組成と焼成時の雰囲気酸素濃度、粉砕粒径等の製造方法を最適化することによって、6.3<n≦6.6の範囲にある式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]で表されるM相(主相)と、このM相より著しくFe23の比率の高いW相、もしくはマグネタイト相(副相)とが得られる。このM型フェライト相と副相とが均一微細(好ましくは、1.6μm以下)に混合した結晶組織が得られた場合、M型フェライト単相の場合と比較して、保磁力はほとんど低下せず、逆に副相にW型フェライト相を含む場合、わずかではあるが残留磁束密度は高くなる。しかも、Fe23過剰の組成領域となっているので、高価なSrやBa原料の使用量が削減し、さらには高価なCo原料が不要になる。
現在工業化されているSrフェライトとBaフェライトを比べると、Srフェライトの方が高い磁石特性を有している。また、バリウム原料の方がストロンチウム原料よりも安価である。さらに、Sr2+イオンに比べ、Ba2+イオンはイオン半径が大きく、また、Fe3+イオンよりもMg2+イオンの方がイオン半径が大きい。そのためSrフェライトよりもBaフェライトの方が、希土類金属イオンとMg2+イオンを含有したM相の結晶構造が安定である。
本フェライト磁石は、上記基本構成のフェライト磁石において、厳密に2ny=xを満足するようにR23量とMgO量を含有させるようにしてもよい。これによりM型結晶構造中のイオンバランスが完全に保たれ、結晶構造の安定性という意味においても、磁石特性上においても最も好ましい。
本フェライト磁石は、上記基本構成において、SiO2:0.01〜0.5mass%、CaCO3:0.01〜1.0mass%、Al23:0.01〜2.0mass%、Cr23:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有するようにしてもよい。このように構成した場合は、これらの微量成分をさらに含有することにより、フェライト磁石の磁石特性および焼結反応性を向上させることができる。
M相と混在するW相は、一般的には上述したように式 AFe2+ 2Fe3+ 16 27 で表される。しかしながら、実際には、非化学量論組成にて表記して、AO・2(FeO)・n’(Fe23)と表すことができ、モル比n’は8前後の値がとり得る。そしてn’=の場合が化学量論組成で表記した AFe2+ 2Fe3+ 16 27 となる。したがって、本発明のフェライト磁石にてM相と混在するW相は、AO・2(FeO)・n’(Fe23)と表記した場合、モル比n’にて8程度の範囲にあればよい。ここで、このW型フェライトの結晶構造中のFe2+が占有するサイトの一部に、Mg2+が置換していてもかまわない。また、このときのn’の値は、Fe23とAOの組成と、焼結時の雰囲気酸素濃度によって決まる。
本発明に係るフェライト磁石の製造方法の一つは、ACO3、Fe23、R23ならびにMgOの各原料粉末を秤量、混合し、還元性雰囲気下で仮焼して得られた粉末を成形して成形体とし、該成形体を還元性雰囲気下で焼結させることにより、式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の主相をモル比で83%以上生成させると共に、副相として式 AFe 2+ 2 Fe 3+ 16 27 で表されるW型フェライト相もしくはマグネタイト相を生成させることを特徴とする。(なお、式(A 1-x x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y 2 3 において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.530.02<y≦0.046.3<n≦6.6の範囲にある。)
このように本発明に係るフェライト磁石の製造方法は仮焼時あるいは焼結時、還元性雰囲気下で制御することを特徴とする。ここにおいて含有させたMg2+と、もともと含有している+3価の希土類元素イオンとによって、M型結晶構造中のイオンバランスが保たれる。
本フェライト磁石は、本来大気中で仮焼あるいは焼結する場合、焼結しづらい組成であるにもかかわらず、上述したように還元性雰囲気中で焼結することと、原子価制御手法を取り入れることの両方によってはじめて、焼結を促進することができるだけでなくM型フェライト相と副相との均一微細な混合結晶組織が得られるようになる。さらには、副相としてはX型フェライト、Y型フェライト、Z型フェライトあるいはFe23等ではなく、W型フェライトもしくはマグネタイトが優先的に生成されるようになる。
本発明に係るフェライト磁石の製造方法の他の一つは、ACO3、Fe23、R23ならびにMgOの各原料粉末を秤量、混合し、大気中で仮焼して得られた粉末を成形して成形体とし、還元性雰囲気下で焼結させることにより、式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の主相をモル比で83%以上を生成させると共に、副相として式 AFe 2+ 2 Fe 3+ 16 27 で表されるW型フェライト相もしくはマグネタイト相を生成させることを特徴とする。(なお、この式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.530.02<y≦0.046.3<n≦6.6の範囲にある。)
本製造方法は、上記した二つの製造方法において、希土類元素の原料として、ミッシュメタルを使用することができる。
本発明に係るフェライト磁石によれば、化学量論組成よりもFe23過剰の組成領域(6.3<n≦6.6)でも極めて優れた磁石特性が得られ、高価なBaCO3やSrCO3の使用を削減できる分、製品価格の低減を達成できる。
本発明のフェライト磁石は、上記したように式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]で表されるM型結晶構造の主相がモル比で83%以上を占めることを特徴とする。また、残りの副相は、少なくとも式 AFe2+ 2Fe3+ 1627 で表されるW型フェライト相を含み、所望により式Fe34で表されるマグネタイト相を含んでもよい。前記式(A 1-x x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y 2 3 において、AはSrとBaから選択される少なくとも一種であり、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.530.02<y≦0.046.3<n≦6.6の範囲にあることを特徴とする。
本発明のフェライト磁石では、AOに対するFe23のモル比nが化学量論組成(n=6)よりも大きく、Fe23過剰の組成領域となっている。このようにnを化学量論組成である6.0よりも大きく設定したのは、高い残留磁束密度を得るためである。ただし、nが6.6よりも大きくなると、希土類元素の添加および焼結時の雰囲気酸素濃度の制御によっても、Fe23等が残留しやすくなり、結果として保磁力が低下してしまう。したがって、このnを上記した範囲、6.3<n≦6.6に設定することにより、高い残留磁束密度と高い保磁力とを確保することができる。
本発明のフェライト磁石において、希土類元素であるRは、焼結性を向上させるために役立つ。これらの希土類元素Rは、あまり少ないとその効果が小さく、逆に多すぎると電気的なイオンバランスが崩れてしまうので、その含有量は、モル比で上記した範囲、0<x≦0.6とする。これらの希土類元素としては例えばCe、La、Nd等である。
また、本フェライト磁石は、SiO2:0.01〜0.5mass%、CaCO3:0.01〜1.0mass%、Al23:0.01〜2.0mass%、Cr23:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有する構成としてもよい。これら成分は、何れも磁石特性の向上並びに焼結性の改善に寄与することが従来より知られており、これら成分の微量添加により、磁石特性のより一層の向上並びに焼結性のより一層の改善を図ることができる。
本発明のフェライト磁石は、希土類元素から選択されるAとのイオンバランスを保つために、Mg2+を含有し、これらは磁石特性の向上に役立つ。また、Mg2+は従来イオンバランスを保つために使用されていたコバルトよりも安価であり、フェライト磁石の製品価格が低くなる。
フェライトの焼結が進行するのは、600℃付近からトップ温度域にかけてである。したがって、雰囲気酸素濃度の制御は、600℃より高温側の昇温過程、トップ温度保持過程および冷却過程のうちの600℃付近より高温側の温度域である。一方、昇温時の室温から600℃付近までの温度域では、粉末成形体中に含まれるバインダー等の有機物を燃焼および飛散させるために、酸素濃度は高い方が望ましい。
昇温過程からトップ温度域にかけて雰囲気酸素濃度を制御するのは、nが6.0より大きくて、本来は焼結しづらい組成のフェライトの焼結を促進するためである。即ち、雰囲気を適切な還元性に保つと、このような組成では形成し難い酸素イオンの原子空孔の形成が促進される。酸素イオンは他の金属イオンよりもイオンのサイズが大きく、この酸素イオンの原子空孔がフェライト中に多量に形成されることにより、この原子空孔を媒体として他の金属イオンの拡散が促進され、結果として焼結がより容易に進行する。
おおよそ500℃よりも低い温度域では、フェライト中の酸化還元反応が進行しないため、冷却過程での雰囲気酸素濃度の制御は、500℃までの温度域で行えば十分である。
本発明のフェライト磁石を製造するには、酸化鉄、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酸化マグネシウム、希土類酸化物等の原料粉末を秤量した後、均一に混合し、続いて、この混合粉末を仮焼および微粉砕し、その後、成形および焼結を行う。
本発明の磁石を構成するM相は、式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]において、6.3<n≦6.6の範囲である。しかしながら、n>6.6となるように、各原料粉末を秤量してもよい。例えば、n=6.7となるように秤量して、本発明の磁石の製造方法にて作製した場合、例えばn=6.6の上記式で表されるM相(主相)が90%、AFe2+ 2Fe3+ 1627 で表されるW相(副相)が10%からなる混合結晶組織が生成する。M相におけるnの値は焼結時における各金属イオンの拡散速度、焼結温度や冷却速度、あるいは雰囲気酸素濃度にも依存する。したがって、これらの製造条件の違いにより、例えばn=6.6の上記式で表されるM相(主相)が83%、AFe2+ 2Fe3+ 1627 で表されるW相もしくはFe34(副相)が17%からなる混合結晶組織が生成することもある。
上記仮焼を行う際の温度は1000〜1400℃の範囲で選択することができる。この仮焼は、大気中で行ってもよいが、上記した焼結時と同様に、還元性雰囲気で行ってもよい。仮焼を還元性雰囲気で行う場合は、実質的にM相が形成される。
仮焼後の微粉砕は、湿式にて行うことができる。この場合、平均の破砕粒径が0.5〜1.2μmの範囲となるようにかつ均一な粒径となるように微粉砕するのが望ましい。この微粉砕時に、所望によりSiO2、CaCO3、Al23、Cr23等の微量成分を添加することができる。また、上記した希土類元素の原料粉末は、この仮焼粉末に対して添加してもよい。
仮焼後の成形は、スラリー状として湿式にて成形してもよいし、乾燥後に乾式にて成形してもよい。この場合、磁場中で成形してもよく、その磁場としては、400〜1200kA/m程度が選択される。
成形体の焼結に際しては、一般的に行われている1150℃程度の焼結温度を選択する。該温度での焼結では結晶粒の過度の成長は生じず、また焼結は十分に進行するため非磁性相が多量に形成されることもない。この焼結に際してはまた、上記したように雰囲気酸素濃度を厳密に制御して、焼結の進行を促進する。雰囲気酸素分圧の制御は、窒素ガス、窒素と水素との混合ガス等を流して行うことができる。
所定量のACO3、Fe23、MgO、希土類元素の酸化物の各原料粉末を配合し、湿式にて混合した。そして、この混合粉末を1300℃で2時間、大気中または窒素流入により酸素濃度を制御した雰囲気中で仮焼した。仮焼後、0.2mass%のSiO2、0.3mass%のCaCO3および0.5mass%のAl23を添加し、アトライターにより湿式粉砕して平均粒径0.7μmの微細粉末を得た。
次に、得られた微細粉末を800kA/mの磁場中で湿式成形し、300℃で乾燥した後、1150℃で1時間、大気中または窒素流入により酸素濃度を制御した雰囲気中で焼結し、表1に示す参考試料1〜3と、本発明試料4〜6と比較試料1〜3とを製作した。
そして、得られたフェライト磁石の組成を分析して、前記式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]中のx、yおよびnを評価し、併せて前記式で表される主相の含有量(モル比)を評価した。ここで、x(A)、y(Mg)およびnの評価には蛍光X線法を、主相のモル比と副相の同定にはX線回折法をそれぞれ用いた。結果を表1に示す。
また、得られたフェライト磁石の最大エネルギー積(BH)max、残留磁束密度Br、および保磁力Hcを磁気磁束計によって測定した。結果を表2に示す。(表中「制御」とあるのは還元性雰囲気を意味する。)
Figure 0003951184
Figure 0003951184
表1および表2に示す結果より、本発明のフェライト磁石(本発明試料4〜6)はいずれも、希土類金属イオンとMg2+イオンを添加したこと、および雰囲気酸素濃度を適切な還元性に制御したことにより焼結が促進され、主相のモル比が83%以上で、残りはW型フェライト相もしくはマグネタイト相である。Fe23等の未反応相は確認されない。その結果、最大エネルギー積、残留磁束密度および保磁力ともに、優れた値が得られている。
これに対して、比較試料1のフェライト磁石は、大気中で焼結したことにより焼結が十分に進行せず、Mg2+を含有しないためにフェライト相中のイオンバランスが崩れている。また、比較試料2のフェライト磁石は、Ce等の希土類イオンを含有しないため、焼結が不十分である。さらに比較試料3のフェライト磁石は、SrOに対するFe23のモル比nが大きすぎるため、焼結が十分に進行していない。これらのことより、比較試料1〜3のフェライト磁石はいずれも、M相とW相以外に、Fe23等の未反応相が多く残留しているとともに、最大エネルギー積、残留磁束密度および保磁力ともに本発明のフェライト磁石に比べて低くなっている。

Claims (5)

  1. 式(A1-xx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y23]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の主相と少なくとも式 AFe 2+ 2 Fe 3+ 16 27 で表されるW型フェライト相を含む副相とからなり、前記主相がモル比で83%以上を占め、前記式(A 1-x x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y 2 3 ]において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.530.02<y≦0.046.3<n≦6.6の範囲にあることを特徴とするフェライト磁石。
  2. 前記式(A 1-x x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y 2 3 において、2ny=xを満足するようにR23量とMgO量とを含有させることを特徴とする請求項1に記載のフェライト磁石。
  3. 前記副相が、マグネタイト相を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト磁石。
  4. SiO2:0.01〜0.5mass%、CaCO3:0.01〜1.0mass%、Al23:0.01〜2.0mass%、Cr23:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフェライト磁石。
  5. 前記主相と前記副相とは共に平均結晶粒径が1.6μm以下の結晶粒を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のフェライト磁石。
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