JP3951184B2 - フェライト磁石 - Google Patents
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Description
また、上記した焼結性の問題は、SiO2、CaCO3、Al2O3、Cr2O3等の添加や希土類元素の酸化物の添加によっても、根本的に解決できない状況にあった。
また、コバルトを添加したフェライト磁石は、その磁石特性については比較的良好であるけれども、材料として高価なコバルトを使用するため製造費用が高騰する。
さらに、W型フェライトでは、磁石特性に問題がある上、製造性にも問題があり、M型フェライトに代えて用いるまでには到らない。
本発明は上記のような従来技術の現状を考慮して為されたものであり、その課題は、化学量論組成よりもFe2O3過剰の組成領域でも優れた磁石特性を有する、安価なフェライト磁石とその製造方法とを提供することにある。
本発明は上記のような従来技術の現状を考慮して為されたものであり、その課題は、化学量論組成よりもFe2O3過剰の組成領域でも優れた磁石特性を有する、安価なフェライト磁石を提供することにある。
磁石特性のうち高い保磁力を実現するには、主相であるマグネトプランバイト相(M相)が100%以上占めることが好ましい。ただし、M相の単相が得られなくとも、残りの異相のうち良好な磁気特性を示すW型フェライト相もしくはマグネタイト相がその多くを占めた場合、M相がモル比で80%を下回らない限りは、保磁力が劣化しないことを新たに見出した。特にW型相の残留磁束密度が高いために、M型単相の場合よりもわずかではあるが残留磁束密度は高くなることも新たに見出した。したがって、該M相はモル比で80%まで許容することができる。ただし、M相と、主にW相もしくはマグネタイト相から成る副相とは、共に平均結晶粒径が1.6μm以下の均一微細な結晶粒で、かつ均一に分散した組織になっていることが好ましい。また、異相としてX型フェライト、Y型フェライト、Z型フェライト、およびFe2O3等が多く生成した場合には、磁石特性が低下してしまう。したがって、そうはならないように秤量組成、仮焼時の雰囲気酸素濃度、微粉砕粒径、ならびに焼結時の雰囲気酸素濃度は、いずれも厳密に制御する必要がある。
本発明は、上記した知見に基づいてなされたもので、本発明に係るフェライト磁石は、式(A1-xRx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y)2O3]で表されるM型結晶構造の主相がモル比で83%以上を占めることを特徴とする。また、残りの副相は、少なくとも式 AFe2+ 2Fe3+ 16 O27 で表されるW型フェライト相を含み、所望により式Fe3O4で表されるマグネタイト相を含んでもよい。なお、前記式(A 1-x R x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y ) 2 O 3 ]において、AはSrとBaから選択される少なくとも一種であり、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.53、0.02<y≦0.04、6.3<n≦6.6の範囲にある。
このように構成したフェライト磁石においては、Fe2O3過剰の組成領域であってもM型フェライト相の主相が得られる。このとき、組成と焼成時の雰囲気酸素濃度、粉砕粒径等の製造方法を最適化することによって、6.3<n≦6.6の範囲にある式(A1-xRx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y)2O3]で表されるM相(主相)と、このM相より著しくFe2O3の比率の高いW相、もしくはマグネタイト相(副相)とが得られる。このM型フェライト相と副相とが均一微細(好ましくは、1.6μm以下)に混合した結晶組織が得られた場合、M型フェライト単相の場合と比較して、保磁力はほとんど低下せず、逆に副相にW型フェライト相を含む場合、わずかではあるが残留磁束密度は高くなる。しかも、Fe2O3過剰の組成領域となっているので、高価なSrやBa原料の使用量が削減し、さらには高価なCo原料が不要になる。
現在工業化されているSrフェライトとBaフェライトを比べると、Srフェライトの方が高い磁石特性を有している。また、バリウム原料の方がストロンチウム原料よりも安価である。さらに、Sr2+イオンに比べ、Ba2+イオンはイオン半径が大きく、また、Fe3+イオンよりもMg2+イオンの方がイオン半径が大きい。そのためSrフェライトよりもBaフェライトの方が、希土類金属イオンとMg2+イオンを含有したM相の結晶構造が安定である。
本フェライト磁石は、上記基本構成のフェライト磁石において、厳密に2ny=xを満足するようにR2O3量とMgO量を含有させるようにしてもよい。これによりM型結晶構造中のイオンバランスが完全に保たれ、結晶構造の安定性という意味においても、磁石特性上においても最も好ましい。
本フェライト磁石は、上記基本構成において、SiO2:0.01〜0.5mass%、CaCO3:0.01〜1.0mass%、Al2O3:0.01〜2.0mass%、Cr2O3:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有するようにしてもよい。このように構成した場合は、これらの微量成分をさらに含有することにより、フェライト磁石の磁石特性および焼結反応性を向上させることができる。
M相と混在するW相は、一般的には上述したように式 AFe2+ 2Fe3+ 16 O27 で表される。しかしながら、実際には、非化学量論組成にて表記して、AO・2(FeO)・n’(Fe2O3)と表すことができ、モル比n’は8前後の値がとり得る。そしてn’=8の場合が化学量論組成で表記した AFe2+ 2Fe3+ 16 O27 となる。したがって、本発明のフェライト磁石にてM相と混在するW相は、AO・2(FeO)・n’(Fe2O3)と表記した場合、モル比n’にて8程度の範囲にあればよい。ここで、このW型フェライトの結晶構造中のFe2+が占有するサイトの一部に、Mg2+が置換していてもかまわない。また、このときのn’の値は、Fe2O3とAOの組成と、焼結時の雰囲気酸素濃度によって決まる。
このように本発明に係るフェライト磁石の製造方法は仮焼時あるいは焼結時、還元性雰囲気下で制御することを特徴とする。ここにおいて含有させたMg2+と、もともと含有している+3価の希土類元素イオンとによって、M型結晶構造中のイオンバランスが保たれる。
本フェライト磁石は、本来大気中で仮焼あるいは焼結する場合、焼結しづらい組成であるにもかかわらず、上述したように還元性雰囲気中で焼結することと、原子価制御手法を取り入れることの両方によってはじめて、焼結を促進することができるだけでなくM型フェライト相と副相との均一微細な混合結晶組織が得られるようになる。さらには、副相としてはX型フェライト、Y型フェライト、Z型フェライトあるいはFe2O3等ではなく、W型フェライトもしくはマグネタイトが優先的に生成されるようになる。
本発明に係るフェライト磁石の製造方法の他の一つは、ACO3、Fe2O3、R2O3ならびにMgOの各原料粉末を秤量、混合し、大気中で仮焼して得られた粉末を成形して成形体とし、還元性雰囲気下で焼結させることにより、式(A1-xRx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y)2O3]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の主相をモル比で83%以上を生成させると共に、副相として式 AFe 2+ 2 Fe 3+ 16 O 27 で表されるW型フェライト相もしくはマグネタイト相を生成させることを特徴とする。(なお、この式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.53、0.02<y≦0.04、6.3<n≦6.6の範囲にある。)
本製造方法は、上記した二つの製造方法において、希土類元素の原料として、ミッシュメタルを使用することができる。
また、本フェライト磁石は、SiO2:0.01〜0.5mass%、CaCO3:0.01〜1.0mass%、Al2O3:0.01〜2.0mass%、Cr2O3:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有する構成としてもよい。これら成分は、何れも磁石特性の向上並びに焼結性の改善に寄与することが従来より知られており、これら成分の微量添加により、磁石特性のより一層の向上並びに焼結性のより一層の改善を図ることができる。
昇温過程からトップ温度域にかけて雰囲気酸素濃度を制御するのは、nが6.0より大きくて、本来は焼結しづらい組成のフェライトの焼結を促進するためである。即ち、雰囲気を適切な還元性に保つと、このような組成では形成し難い酸素イオンの原子空孔の形成が促進される。酸素イオンは他の金属イオンよりもイオンのサイズが大きく、この酸素イオンの原子空孔がフェライト中に多量に形成されることにより、この原子空孔を媒体として他の金属イオンの拡散が促進され、結果として焼結がより容易に進行する。
おおよそ500℃よりも低い温度域では、フェライト中の酸化還元反応が進行しないため、冷却過程での雰囲気酸素濃度の制御は、500℃までの温度域で行えば十分である。
本発明の磁石を構成するM相は、式(A1-xRx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y)2O3]において、6.3<n≦6.6の範囲である。しかしながら、n>6.6となるように、各原料粉末を秤量してもよい。例えば、n=6.7となるように秤量して、本発明の磁石の製造方法にて作製した場合、例えばn=6.6の上記式で表されるM相(主相)が90%、AFe2+ 2Fe3+ 16O27 で表されるW相(副相)が10%からなる混合結晶組織が生成する。M相におけるnの値は焼結時における各金属イオンの拡散速度、焼結温度や冷却速度、あるいは雰囲気酸素濃度にも依存する。したがって、これらの製造条件の違いにより、例えばn=6.6の上記式で表されるM相(主相)が83%、AFe2+ 2Fe3+ 16O27 で表されるW相もしくはFe3O4(副相)が17%からなる混合結晶組織が生成することもある。
仮焼後の微粉砕は、湿式にて行うことができる。この場合、平均の破砕粒径が0.5〜1.2μmの範囲となるようにかつ均一な粒径となるように微粉砕するのが望ましい。この微粉砕時に、所望によりSiO2、CaCO3、Al2O3、Cr2O3等の微量成分を添加することができる。また、上記した希土類元素の原料粉末は、この仮焼粉末に対して添加してもよい。
仮焼後の成形は、スラリー状として湿式にて成形してもよいし、乾燥後に乾式にて成形してもよい。この場合、磁場中で成形してもよく、その磁場としては、400〜1200kA/m程度が選択される。
次に、得られた微細粉末を800kA/mの磁場中で湿式成形し、300℃で乾燥した後、1150℃で1時間、大気中または窒素流入により酸素濃度を制御した雰囲気中で焼結し、表1に示す参考試料1〜3と、本発明試料4〜6と比較試料1〜3とを製作した。
また、得られたフェライト磁石の最大エネルギー積(BH)max、残留磁束密度Br、および保磁力Hcを磁気磁束計によって測定した。結果を表2に示す。(表中「制御」とあるのは還元性雰囲気を意味する。)
これに対して、比較試料1のフェライト磁石は、大気中で焼結したことにより焼結が十分に進行せず、Mg2+を含有しないためにフェライト相中のイオンバランスが崩れている。また、比較試料2のフェライト磁石は、Ce等の希土類イオンを含有しないため、焼結が不十分である。さらに比較試料3のフェライト磁石は、SrOに対するFe2O3のモル比nが大きすぎるため、焼結が十分に進行していない。これらのことより、比較試料1〜3のフェライト磁石はいずれも、M相とW相以外に、Fe2O3等の未反応相が多く残留しているとともに、最大エネルギー積、残留磁束密度および保磁力ともに本発明のフェライト磁石に比べて低くなっている。
Claims (5)
- 式(A1-xRx)O・n[(Fe3+ 1-yMg2+ y)2O3]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の主相と少なくとも式 AFe 2+ 2 Fe 3+ 16 O 27 で表されるW型フェライト相を含む副相とからなり、前記主相がモル比で83%以上を占め、前記式(A 1-x R x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y ) 2 O 3 ]において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0.25<x≦0.53、0.02<y≦0.04、6.3<n≦6.6の範囲にあることを特徴とするフェライト磁石。
- 前記式(A 1-x R x )O・n[(Fe 3+ 1-y Mg 2+ y ) 2 O 3 ]において、2ny=xを満足するようにR2O3量とMgO量とを含有させることを特徴とする請求項1に記載のフェライト磁石。
- 前記副相が、マグネタイト相を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト磁石。
- SiO2:0.01〜0.5mass%、CaCO3:0.01〜1.0mass%、Al2O3:0.01〜2.0mass%、Cr2O3:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフェライト磁石。
- 前記主相と前記副相とは共に平均結晶粒径が1.6μm以下の結晶粒を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のフェライト磁石。
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