JP2004311518A - フェライト磁石およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】化学量論組成ならびに化学量論組成よりもBaO、あるいはBaOとSrOがわずかに過剰の組成領域でも優れた磁石特性を有するフェライト磁石およびその製造方法を提供する。
【解決手段】式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の単相からなり、この式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にある構成とし、焼結時、上記式で表されるマグネトプランバイトの単相を生成するように還元性雰囲気を制御する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト磁石およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライト磁石は様々な産業分野において使用されており、特に、最近の自動車の電装化およびIT化は、自動車部品用磁石の需要を増大させている。自動車部品に磁石を用いる場合は、部品の小型化、軽量化という命題が避けられないため、磁石特性に優れた磁石の使用が必要不可欠となり、例えば各種電装用モータに使用されるフェライト磁石についても磁石特性のより一層の向上が求められている。
【0003】
磁石特性に優れたフェライト磁石としては、マグネトプランバイト型(以下、M型と呼ぶ)結晶構造を有するものが従来より知られている。そして、このM型フェライト磁石に関する研究も数多く為されているが、現在実用化されているものは、式BaO・nFeで表されるBaフェライト磁石、ならびに式SrO・nFeで表されるSrフェライト磁石の二種類がある(各式中、nはAOに対するFeのモル比を表す。また、以下BaとSrをあわせてAと記載する)。なかんずく、Srフェライト磁石は高い磁石特性を発揮することが確認されている。この場合、M相を構成する成分中のAOに対するFeのモル比n(n=Fe/AO)の化学量論組成は6.0であるが、現在量産されているBaフェライト磁石やSrフェライト磁石は、化学量論組成よりも遥かにAOが過剰である組成領域、例えばnが5.2ないし5.6程度の組成領域が選択されている。この選択範囲よりもFeが多い組成領域ほど焼結性に乏しいことが知られている。磁石の残留磁束密度を高めるためには、nの値を大きくすることが好ましい。しかしながら、上記したよりもFeが多い組成領域の磁石を作製しようとすれば、焼結温度を高く設定しなければならず、著しい結晶成長を伴ってしまう。これは磁石特性の内、保磁力の大幅な低下を招く。
また、磁石特性を向上させるため、あるいは焼結性を改善するために、例えばSiO、CaCO、Al、Cr等の添加物を1〜3mass%程度加えることも多い。
【0004】
上記(n=5.2〜5.6)のようなAO過剰の組成領域では、当然のことながら原料となる高価なACOが多量に必要となり、その分原材料の価格が高くなるため工業上問題が大きい。逆に、Fe組成を大きくすればするほど残留磁束密度を大きくできる可能性があるが、上述した焼結性の問題がある。
高性能な磁石を得たい場合、保磁力、残留磁束密度とも大きくする必要があり、焼結密度を上げること、均一で微細な結晶粒を得ることが重要になる。高い焼結密度を得るためには高温で焼結する必要があるが、その場合、結晶粒が成長してしまうため、この方法は現実的でない。上述したように、焼結性を改善するために、例えばSiO、CaCO、Al、Cr等の添加物が使用されている。この他、同じく焼結性を改善するために、希土類元素の酸化物を添加するという報告(例えば、特許文献1参照)もある。
【0005】
さらに磁気異方性を大きくする目的で、希土類元素だけでなく同時にコバルトを添加した磁気記録材料が報告されている(例えば、特許文献2参照)。希土類元素の添加は焼結性を向上させるものの、希土類元素には+3価のイオンとなるものが多く、これらがM相中のA2+のサイトに固溶してM相中のイオンバランスを崩す原因となる。しかしながら、M相中のFe3+サイトにCo2+を固溶させることにより、上記イオンバランスの崩れを軽減してM相を安定化させることも可能となった。その後、同様にLaとCoを添加したフェライト磁石および磁気記録材料の特許が権利化されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。しかしながら、高価なコバルトを併用しているため原材料の価格はさらに高くなってしまう。膜として使用する磁気記録材料はともかく、バルクとして使用する磁石の場合、工業上問題である。
【0006】
【特許文献1】
特公昭29−5139号公報
【特許文献2】
特開昭62−119760号公報
【特許文献3】
特開平10−149910号公報
【特許文献4】
特開平11−154604号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、Baフェライト磁石やSrフェライト磁石において、AOに対するFeのモル比nが5.2ないし5.6程度の組成領域にて量産されている。これよりもnが大きい領域から化学量論組成であるn=6.0付近になると、フェライト磁石の焼結性が著しく低下するためである。さらには、n>6となる組成領域では、マグネトプランバイト相の単相にはならないと一般的にいわれている。
例えば、モル比nが5.6よりも大きい組成領域を選択し、通常に用いられている温度(1150℃程度)で焼結すると、十分に焼結密度を上げることは難しい。さらに、モル比nが6.0よりも大きい組成領域を選択すれば、フェライト磁石中にFe相等の異相が残留し、十分な磁石特性を得ることはできない。他方、低い焼結性を補うために高温で焼結すると、焼結密度は高くなるものの、結晶粒が大きく成長して磁石特性の低下を招いてしまう。従って、従来のBaフェライト磁石やSrフェライト磁石では、化学量論組成よりも遥かにAOが過剰である組成領域、例えばnが5.2ないし5.6程度の組成領域で生産されている。すなわち、従来一般のフェライト磁石は、高価なAOを過剰に含む組成となっており、その分、製品価格が高くなる、という問題があった。
【0008】
また、コバルトを添加したフェライト磁石は、その磁石特性については比較的良好であるけれども、材料として高価なコバルトを使用するため製品価格が高くなる。
【0009】
本発明は上記のような従来技術の現状を考慮して為されたものであり、その課題は、化学量論組成付近の領域でも良好な磁石特性を有する、安価なフェライト磁石とその製造方法とを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究を行った結果、希土類元素を少量添加すると共に、仮焼時あるいは焼結時、適切な還元性雰囲気となるように酸素濃度を制御することによって、n=6.0を含む化学量論組成付近の領域であっても、一般的に選択されている焼結温度にて十分に焼結が進行し、結晶成長もさほど促進されないことを見出した。また、適切な還元性雰囲気となるように酸素濃度を制御すること、ならびにマグネシウムを添加することにより、Co等を添加しなくても、希土類イオンと電気的なバランスを保てること見出した。さらには、このように電気的なバランスを保てる結果、Fe相やAO相の残留を抑制できることも見出した。
また、一般的にSrフェライト磁石の方がBaフェライト磁石よりも磁石特性が高いが、Sr2+に比べてBa2+のイオン半径が大きく、かつFe3+に比べてMg2+のイオン半径が大きいため、Mg2+を含有させる場合は、M型結晶構造を安定させる上で、Baフェライト磁石、あるいはBaフェライトとSrフェライトの固溶体とした磁石の方がSrフェライト磁石よりも有利であることを見出した。
【0011】
本発明は、上記した知見に基づいてなされたもので、請求項1に係る発明のフェライト磁石は、式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるM型結晶構造の単相からなり、この式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にあることを特徴とする。
このように構成したフェライト磁石においては、n=6.0を含む化学量論組成付近の領域であっても、雰囲気酸素濃度を適切に制御しつつ焼結を行うことと、Mg2+を含有させることによりM型単相の均一微細な結晶組織が得られ、磁石特性が向上する。しかも、Fe過剰の組成領域となっているので、高価なバリウム原料、なかんずくバリウム原料よりもさらに高価なストロンチウム原料の使用量が減少する。
請求項2に係るフェライト磁石は、請求項1において、厳密に2ny=xを満足するようにR量とMgO量を含有させることを特徴とする。
これにより、M型結晶構造中のイオンバランスが完全に保たれ、結晶構造の安定性という意味においても、磁石特性上においても最も好ましい。
請求項3に係るフェライト磁石は、請求項1または2において、SiO:0.01〜0.5mass%、CaCO:0.01〜1.0mass%、Al:0.01〜2.0mass%、Cr:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする。
本発明では、上記の微量成分をさらに含有することにより、フェライト磁石の磁石特性および焼結反応性を向上させることができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、フェライト磁石の製造方法であり、ACO、Fe、RならびにMgOの各原料粉末を秤量、混合し、還元性雰囲気下で仮焼することにより得られた粉末を湿式成形あるいは乾式成形して成型体となし、還元性雰囲気下で焼結させることにより、式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の単相を形成することを特徴とする。なおこの式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にある。
このように請求項4に係るフェライト磁石の製造方法は、仮焼時あるいは焼結時、結晶粒成長が促進しない程度の比較的低い温度においても十分焼結が進行するように還元性雰囲気に制御することを特徴とする。さらには、含有しているMg2+と+3価の希土類元素イオンとによって、M型結晶構造中のイオンバランスが保たれる。
本発明のフェライト磁石は、本来大気中で仮焼あるいは焼結する場合、焼結しづらく、M相の単相にはならない組成を選択している。しかしながら、上述したように還元性雰囲気下で焼結することと、原子価制御手法を取り入れることの両方によってはじめて、焼結を促進することができるだけでなくM相の単相が得られることを見出した。
請求項5に係る発明は、フェライト磁石の製造方法であり、ACO、Fe、RならびにMgOの各原料粉末を秤量、混合し、大気中で仮焼して得られた粉末を湿式成形あるいは乾式成形して成型体となし、還元性雰囲気下で焼結させることにより、式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の単相を形成することを特徴とする。なおこの式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にある。
このように仮焼時の雰囲気条件については制御が容易な大気中で行なうことも可能である。
請求項6に係るフェライト磁石の製造方法は、請求項4または5において、希土類元素の原料として、ミッシュメタルを使用することを特徴とする。
本発明では、希土類元素の原料としてミッシュメタルを使用することにより、フェライト磁石を安価に製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のフェライト磁石は、上記したように式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の単相からなり、この式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にあることを特徴とする。本発明のフェライト磁石では、AOに対するFeのモル比nが化学量論組成(n=6)か、化学量論組成に近い領域となっている。このようにnを化学量論組成かそれに近く設定したのは、高い残留磁束密度を得るためである。ただし、nが6.0よりも大きくなると、希土類元素の添加および焼結時の雰囲気酸素濃度の制御によっても、FeやAO相等が残留しやすくなり、結果として保磁力が低下してしまう。他方、nが5.7より小さい場合には、高い残留磁束密度が得られる効果が小さく、また、過剰のバリウム原料およびストロンチウム原料を必要として磁石の製品価格が高くなる。従って、このnを上記した範囲、5.7≦n≦6.0に設定することにより、高い残留磁束密度と高い保磁力とを確保することができる。
【0014】
本発明のフェライト磁石において、希土類元素であるRは、焼結性を向上させるために役立つ。これらの希土類元素Rは、あまり少ないとその効果が小さく、逆に多すぎると電気的なイオンバランスが崩れてしまうので、その含有量は、モル比で上記した範囲、0<x≦0.6とする。これらの希土類元素としては例えばCe、La、Nd等である。
【0015】
本発明のフェライト磁石は、希土類元素から選択されるRとのイオンバランスを保つためにMg2+を含有し、これは磁石特性の向上にも役立つ。上記した希土類元素の含有量と対応させる必要があり、0<x≦0.05とする。ところで、Mg2+は従来イオンバランスを保つために使用されていたコバルトよりも安価であり、フェライト磁石の製品価格を高騰させることはない。
【0016】
また、本フェライト磁石は、SiO:0.01〜0.5mass%、CaCO:0.01〜1.0mass%、Al:0.01〜2.0mass%、Cr:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有する構成としてもよい。これら成分は、何れも磁石特性の向上ならびに焼結性の改善に寄与することが従来より知られており、これら成分の微量添加により、磁石特性のより一層の向上ならびに焼結性のより一層の改善を図ることができる。
【0017】
フェライトの焼結が進行するのは、600℃付近からトップ温度域にかけてである。従って、雰囲気酸素濃度の制御は、600℃より高温側の昇温過程、トップ温度保持過程および冷却過程のうちの600℃付近より高温側の温度域である。一方、昇温時の室温から600℃付近までの温度域では、粉末成形体中に含まれるバインダー等の有機物を燃焼および飛散させるために、酸素濃度は高い方が望ましい。
昇温過程からトップ温度域にかけて雰囲気酸素濃度を制御するのは、nが6.0であるかまたは6.0に近く、本来は焼結しづらい組成のフェライトの焼結を促進するためである。すなわち、雰囲気を適切な還元性に保つと、このような組成では形成し難い酸素イオンの原子空孔の形成が促進される。酸素イオンは他の金属イオンよりもイオンのサイズが大きく、この酸素イオンの原子空孔がフェライト中に多量に形成されることにより、この原子空孔を媒体として他の金属イオンの拡散が促進され、結果として焼結がより容易に進行する。
トップ温度域から冷却過程にかけて雰囲気酸素濃度を制御するのは、無用な酸化還元反応を防止し、M相の単相をキープするためである。フェライト中に含有させた希土類イオン(例えば、Ce3+)やMg2+、あるいは鉄酸化物の価数を安定させ、電気的なイオンバランスを保つためである。
おおよそ500℃よりも低い温度域では、フェライト中の酸化還元反応が進行しないため、冷却過程での雰囲気酸素濃度の制御は、500℃までの温度域で行えば十分である。
【0018】
本発明のフェライト磁石を製造するには、酸化鉄、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、希土類元素等の原料粉末を秤量した後、均一に混合し、続いて、この混合粉末を仮焼および微粉砕し、その後、成形および焼結を行う。
酸化鉄の原料粉末としては、純粋な酸化鉄の粉末の他、製鉄所における鋼板の酸洗い工程にて排出される鉄錆びを回収した酸化鉄粉末を使用することができる。この回収した酸化鉄粉末中には酸化鉄以外の成分として、Ca、Si、Cl、S、P等が存在する。これらの成分の大半は、フェライト磁石製造の際の仮焼および焼結工程での加熱により燃焼、飛散するが、少量がフェライト磁石中に残留する。他方、Feと格子定数の近いMn、Cr、Ni、Co、V等は、製鉄所の精錬行程を経た後においても鉄鋼中に含まれており、従って、これら元素もまた、酸化鉄原料経由でフェライト磁石中に混入してくる。しかし、上記した元素のうちMn、Cr等の元素は少量であればフェライト磁石中に存在しても問題がなく、一方、CaおよびSiについては、磁石特性の向上のため、上記したように積極的に活用することができる。
【0019】
本発明のフェライト磁石の製造では、希土類元素の原料としてミッシュメタルを使用することができる。ミッシュメタルとは、希土類元素の混合物であって、例えばCe(40〜50mass%)、La(20〜40mass%)、Pr、Nd等を含有し、単一元素に分離精製せずとも、混合物のまま希土類元素原料として使用することができる。希土類元素はその地殻中での存在率が低いだけでなく、ランタノイドやアクチノイド等は互いの化学的性質が類似しているために分離精製が困難であり、よって分離精製に要する費用も高い。そこで、本発明のフェライト磁石の原料としてミッシュメタルを使用することにより、フェライト磁石の製造に要する費用を削減することができる。
【0020】
上記仮焼を行う際の温度は1000〜1400℃の範囲で選択することができる。この仮焼は、大気中で行ってもよいが、上記した焼結時と同様に、還元性雰囲気で行ってもよい。仮焼を還元性雰囲気で行う場合は、実質的にM相が形成される。
【0021】
仮焼後の微粉砕は、湿式にて行うことができる。この場合、平均の破砕粒径が0.5〜1.2μmの範囲となるようにかつ均一な粒径となるように微粉砕するのが望ましい。この微粉砕時に、所望によりSiO、CaCO、Al、Cr等の微量成分を添加することができる。また、上記した希土類元素および酸化マグネシウムの原料粉末は、この仮焼粉末に対して添加してもよい。
【0022】
仮焼後の成形は、スラリー状として湿式にて成形してもよいし、乾燥後に乾式にて成形してもよい。この場合、磁場中で成形してもよく、その磁場としては、400〜1200kA/m程度が選択される。
【0023】
本発明のフェライト磁石の製造方法の特徴は、焼結時の雰囲気酸素濃度を還元性に制御することである。これは、nが6.0に近く本来は焼結反応性が低い組成のフェライト磁石の焼結を促進するためである。すなわち、雰囲気を還元性に保つと、該組成では形成し難い酸素イオンの原子空孔の形成が促進される。そして、酸素イオンは他の金属イオンよりもイオン半径が大いため、酸素イオンの原子空孔がフェライト中に多量に形成された場合、この原子空孔を媒体として他の金属イオンの拡散が促進し、結果として焼結がより容易に進行する。このように雰囲気酸素濃度を制御することにより、nが6.0に近い場合であっても、一般的に行われている1150℃程度の焼結温度で十分に焼結を進行させることができる。該温度での焼結では結晶粒の過度の成長は生じず、また焼結は十分に進行するためFeやAOが残留することも、M相以外の異相が形成されることもない。雰囲気酸素濃度の制御は、窒素ガス、窒素と水素との混合ガス等を流して行うことができる。
【0024】
【実施例】
以下の例で本発明をより詳細に説明するが、これらの例は本発明をある特定の態様に制限することを意図しない。
【0025】
所定量のBaCO、SrCO、Fe、MgO、希土類元素の酸化物の各原料粉末を配合し、湿式にて混合した。そして、この混合粉末を1300℃で2時間、大気中または窒素流入により雰囲気酸素分圧を制御して還元性とした雰囲気中で仮焼した。仮焼後、0.3mass%のSiO、0.3mass%のCaCOおよび0.5mass%のAlを添加し、アトライターにより湿式粉砕して平均粒径0.7μmの粉末を得た。
次に、得られた粉末を800kA/mの磁場中で湿式成形し、300℃で乾燥した後、1150℃のピーク温度で1時間、大気中または窒素流入により雰囲気酸素分圧を制御して還元性とした雰囲気中で焼結し、表1に示す本発明試料(フェライト磁石)1〜5と比較試料(フェライト磁石)1〜3とを作製した。
そして、得られたフェライト磁石の組成を分析して、上記式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]中のM、x、yおよびnを評価し、併せて上記式で表される主相のモル比nを評価した。ここでM、x(A)、y(Mg)およびnの評価には蛍光X線法を、主相の評価にはX線回折法をそれぞれ用いた。結果を表1に示す。
【表1】
Figure 2004311518
1)M中のBaが占める割合を示すmass%
2)希土類元素としてミッシュメタルを使用
【0026】
次いで、得られたフェライト磁石の最大エネルギー積(BH)max、残留磁束密度Br、および保磁力Hcを磁気磁束計によって測定した。磁石特性の測定結果、ならびに仮焼時および焼結時の雰囲気を表2に示す(表中“制御”とあるのは還元性雰囲気を意味する。)。
【表2】
Figure 2004311518
【0027】
本発明のフェライト磁石(実施冷1〜5)はいずれも、希土類元素を添加したこと、および雰囲気酸素分圧を還元性に保持したことにより焼結が促進され、マグネトプランバイト相の単相が得られた。また、Mg2+の添加により、フェライト相中のイオンバランスは保たれていた。
それに対して、比較例1のフェライト磁石は、大気中で焼結したことにより焼結が十分に進行せず多量の非磁性相が形成され、Mg2+を含有しないためにフェライト相中のイオンバランスが保たれておらず磁石特性が低かった。また、比較例2のフェライト磁石はCe等の希土類元素を含有しないため焼結が不十分でM型の単相は得られず、また磁石特性も劣っている。さらに比較例3のフェライト磁石は、Feのモル比nが大きすぎるため焼結が十分に進行せずに非磁性相が多量に形成された。
また、比較試料3のフェライト磁石は、本発明試料1〜5程ではないものの、最大エネルギー積、残留磁束密度および保磁力ともに良好な特性が得られている。しかしながら、AOが多すぎるため、本願の目的とするところの、原材料の安価なフェライト磁石という範疇からは逸脱する。
【0028】
【発明の効果】
本発明のフェライト磁石は、希土類元素を添加すると共に、焼結時の雰囲気酸素分圧を還元性に制御することにより、Feのモル比nが化学量論組成である6.0に近い組成を有することができる。また、Mg2+を添加することにより、マグネトプランバイト相中のイオンバランスを保つことができる。該フェライト磁石は良好な磁石特性を示し、また原料として高価な材料を大量に使用しないため安価でもある。

Claims (6)

  1. 式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の単相からなり、この式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にあることを特徴とするフェライト磁石。
  2. 上記式において、2ny=xを満足するようにR量とMgO量を含有させることを特徴とする請求項1記載のフェライト磁石。
  3. SiO:0.01〜0.5mass%、CaCO:0.01〜1.0mass%、Al:0.01〜2.0mass%、Cr:0.01〜2.0mass%のうちの少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト磁石。
  4. ACO、Fe、RならびにMgOの各原料粉末を秤量、混合し、還元性雰囲気下で仮焼することにより得られた粉末を湿式成形あるいは乾式成形して成形体となし、還元性雰囲気下で焼結させることにより、式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の単相を形成することを特徴とするフェライト磁石の製造方法(なおこの式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にある。)。
  5. ACO、Fe、RならびにMgOの各原料粉末を秤量、混合し、大気中で仮焼して得られた粉末を、湿式成形あるいは乾式成形して成形体とし、還元性雰囲気下で焼結させることにより、式(A1−x)O・n[(Fe3+ 1−yMg2+ ]で表されるマグネトプランバイト型結晶構造の単相を形成することを特徴とするフェライト磁石の製造方法(なおこの式において、AはBaおよびSrから選択される少なくとも一種であってBaを必ず含み、Rは希土類元素から選択される少なくとも一種であり、x、yおよびnはモル比を表し、それぞれが、0<x≦0.6、0<y≦0.05、5.7≦n≦6.0の範囲にある。).
  6. 希土類元素の原料として、ミッシュメタルを使用することを特徴とする請求項4または5に記載のフェライト磁石の製造方法。
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