JP3950308B2 - 蒸気タービン内湿分除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気タービン内湿分除去装置に関し、特に、湿り蒸気中で運転される蒸気タービンの低圧部における水滴の除去に関する。
【0002】
【従来の技術】
蒸気タービンの低圧部最終部の翼列数段は、湿り蒸気中で運転されているため、蒸気中で水滴が発生し、この水滴による性能の劣化や、エロージョン発生が問題視されている。そのために、蒸気中の水滴の除去とエロージョン防止構造が種々考案されている。従来採用されている一般的な蒸気タービン内湿分除去装置を、図4〜6を用いて説明する。
【0003】
図4において、タービン静翼1自体を中空構造にして、その表面に小孔を多数穿孔することにより、静翼1の表面から中空内部を介して水滴を除去しようとする中空静翼が考案されている。
【0004】
また、タービン静翼1を固定している外周側の静翼リング2において、図5に詳細が示してあるように、隣接する静翼1の間のほぼ中央部分付近にスリット3を設け、静翼リング2の表面を流れる水膜をスリット3内に吸い込み、これをスリット3に連通したドレイン排出孔(図示せず)から翼通路外に排出する除去装置もある。
【0005】
さらに、周方向に連続する静翼リング2の上流側の側面にドレインキャッチャ4を設けて、蒸気流と共に飛散する水滴つまり湿分を捕捉する除去装置もある。このような種類の湿分除去装置を用いることにより、静翼1の下流に位置する動翼5に衝突する水滴の量を軽減し、動翼5のエロージョンを防止していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、静翼リング2にドレインキャッチャ4を設けた除去装置では、図6に示すように、上流側の動翼5の先端から飛散する水滴は、この動翼先端のチップリーケージジェットの影響により、動翼5の先端から真っ直ぐ下流方向へ流れてしまい(軌跡W’参照)、動翼5の先端より外側に設けられた静翼1のドレインキャッチャ4では、水滴を捕捉できないという問題点があった。
【0008】
従って、本発明は、上述した従来の技術の問題を解決するためになされたもので、簡単な構造で水滴除去効率を高め、翼性能を改善して、翼のエロージョンを軽減することのできる蒸気タービン内湿分除去装置を提供することを主な目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の主たる局面によれば、湿り蒸気中で作動する蒸気タービンのタービン静翼を固定している外周側の静翼リングの、蒸気の流れ方向の上流側の側面に、ドレインキャッチャを配設した蒸気タービン内湿分除去装置において、前記タービン静翼の上流側に位置するタービン動翼の先端に小ガイド部を設け、該小ガイド部の、ロータの中心からの最大外径r1は、静止系から突出しているフィンの先端の半径rfに対して、r1>rfである蒸気タービン内湿分除去装置が提供される。
【0011】
【作用】
タービン動翼の先端に小ガイド部を設けた蒸気タービン内湿分除去装置では、動翼先端から飛散する水滴が、この動翼先端のチップリーケージジェットの影響を受けることなく、遠心力により外側方向に飛ばされ、静翼リングに設けたドレインキャッチャにより捕捉される。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好適な実施の形態を、添付図面を参照しながら説明するが、図中、同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。
図1は、静翼リングにスリットを設けた蒸気タービン内湿分除去装置の概要を示す図である。この図において、本発明に係るスリット10は、タービン静翼1を固定している外周側の周方向に連続する静翼リング(図4参照)に設けられている。その設置位置は、隣接するタービン静翼1間の前縁側近傍の間で、この前縁に対してほぼ直交する方向すなわち静翼リングの円周方向に沿っている。
【0014】
スリット10のスリット幅tは、3mm以下が好ましい。また、隣接する翼前縁間のピッチPに対するスリット10のスリット長Lとの比は、L/P=0.5〜0.95が好ましい。さらに、タービン静翼1の翼弦長Cに対する翼前縁からスリット10の中心位置までの距離Xとの比は、X/C=−0.1〜0.1であるのが好ましい。ここで、X/Cがマイナスであるとは、スリット10の長手方向中心位置が隣接する翼前縁間を結ぶ線分に対して、翼間とは反対の外側方向に位置することを意味する。
【0015】
このようにスリット10を、隣接するタービン静翼1間の翼弦方向の中央部分付近に設けずに、それとほぼ直交する方向に設けることにより、静翼リング表面に付着した水滴が静翼内に発生する巻き上げ渦によって壁から離れる前に、即ち、その上流側において、このスリット10で捕捉する。捕捉された水滴は、図示しない排水通路を介して、より低圧の部分へと排出されるまた、上記のような諸条件を備えるスリット10では、さらに効率良く水滴を除去することができる。この点は、水滴の流れを調べる可視化実験においても確認することができた。
【0016】
次に、図2及び3を参照しながら、ドレインキャッチャを備える蒸気タービン内湿分除去装置を説明する。これらの図面を参照するに、タービン静翼1を固定している外周側の静翼リング2の、蒸気の流れ方向の上流側の側面には、釣り針状のドレインキャッチャ4が設けられている。これに対し、上流側に位置するタービン動翼5の先端に設けられたシュラウド6には、小ガイド部20が設けられている。
【0017】
小ガイド部20は、タービン動翼5の、蒸気の流れ方向下流側の側面に取り付けられている。その断面形状は、拡大図を参照するに、ほぼ長方形状である。また、小ガイド部20の、ロータ(図示せず)の中心からの最大の外径r1は、静止系から突出しているフィンの先端の半径rfに対して、r1>rfとなっている。これは、チップリーケージ中に含まれる水滴が、この小ガイド部20に確実に当たるようにするためである。
【0018】
なお、小ガイド部は、翼チップ部に取り付けることから強い遠心力が加わるため、翼の振動及び強度の観点より、その幅wと高さhとは、極力小さくすることが望ましい。また、図中の円弧形状Rは、小ガイド部20自身の強度の観点から、すなわち、応力集中を避けるために設けられたものである。さらに、この小ガイド部20は、図6に示すように、タービン動翼5(シュラウド6)の翼弦方向全体に亙って設けられている。
【0019】
このような小ガイド部20をタービン動翼5の先端のシュラウド6に設けることにより、動翼先端から飛散する水滴は、チップリーケージジェットの影響を受けることなく、遠心力の作用により外側に飛ばされ(軌跡W参照)、ドレインキャッチャ4により捕捉される。捕捉された水滴は、図示しない排水通路を介して、より低圧の部分へと排出される。
【0020】
なお、小ガイド部20の形状は、動翼先端から飛散する水滴の軌跡Wが遠心力の作用により外側に飛ばされることを補助できる形状であれば、どのような形状でもかまわない。また、小ガイド部20のシュラウド6への取付は、ボルト止め、ねじ止め、溶接など既知の如何なる手段を用いてもよい。なお、小ガイド部20の構造は、非常に単純であり、既存の蒸気タービンの動翼へ、容易に取り付けることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明に係る蒸気タービン内湿分除去装置は、湿り蒸気中で作動する蒸気タービンのタービン静翼を固定している外周側の静翼リングの、蒸気の流れ方向の上流側の側面に、ドレインキャッチャを配設した蒸気タービン内湿分除去装置において、前記タービン静翼の上流側に位置するタービン動翼の先端に小ガイド部を設け、該小ガイド部の、ロータの中心からの最大外径r1を、静止系から突出しているフィンの先端の半径rfに対して、r1>rfとしてあるので、動翼先端から飛散する水滴が、この動翼先端のチップリーケージジェットの影響を受けることなく、遠心力により外側方向に飛ばされ、静翼リングに設けたドレインキャッチャで捕捉することができ、水滴の除去効率を高め、翼性能を改善し、翼のエロージョンが軽減する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るスリットを備える蒸気タービン内湿分除去装置を示す概要図である。
【図2】 本発明に係る小ガイド部を備える蒸気タービン内湿分除去装置を示す概要図である。
【図3】 図2に示した小ガイド部を半径方向から見た、動翼先端のシュラウド形状を示す図である。
【図4】 従来の蒸気タービン内湿分除去装置を示す概要図である。
【図5】 従来のスリット位置を示すタービン静翼の断面図である。
【図6】 従来の水滴の軌跡を示す概要図である。
【符号の説明】
1…タービン静翼、2…静翼リング、3…スリット、4…ドレインキャッチャ、5…タービン動翼、6…シュラウド、10…スリット、20…小ガイド部、t…スリット幅、L…スリット長、P…翼前縁間のピッチ、X…翼前縁からスリットの中心位置までの距離、C…翼弦長、W,W’…水滴の軌跡、h…小チップ部の高さ、w…小チップ部の幅、r1…小チップ部の外径、rf…フィン先端までの半径、R…円弧形状。
Claims (3)
- 湿り蒸気中で作動する蒸気タービンのタービン静翼を固定している外周側の静翼リングの、蒸気の流れ方向の上流側の側面に、ドレインキャッチャを配設した蒸気タービン内湿分除去装置において、
前記タービン静翼の上流側に位置するタービン動翼の先端に小ガイド部を設け、
該小ガイド部の、ロータの中心からの最大外径r1は、静止系から突出しているフィンの先端の半径rfに対して、r1>rfである、蒸気タービン内湿分除去装置。 - 前記小ガイド部は、前記タービン動翼先端のシュラウドに設けられている請求項1に記載の蒸気タービン内湿分除去装置。
- 前記小ガイド部は、前記タービン動翼の、蒸気の流れ方向の下流側の側面に、前記タービン動翼の翼弦方向全体に亙って設けられている請求項1または2に記載の蒸気タービン内湿分除去装置。
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