JP3949883B2 - 光重合性組成物及び光重合性平版印刷版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光重合性組成物及び光重合性平版印刷版に関し、特に、長波長領域の光に対して高感度を示す光重合性組成物及び光重合性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光重合性組成物の露光による画像形成方法として、例えば、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤、或いは更に有機高分子結合材等からなる光重合性組成物の層を支持体表面に形成し、画像露光して露光部のエチレン性不飽和化合物を重合、硬化させた後、非露光部を溶解除去することにより硬化レリーフ画像を形成する方法、露光により光重合性組成物層の支持体への接着強度に変化を起こさせた後、支持体を剥離することにより画像を形成する方法、及び、光重合性組成物層の光によるトナー付着性の変化を利用した画像形成方法等の各種の方法が知られており、その光重合開始剤としては、いずれも、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンジルケトン、或いはミヒラーケトン等の、400nm以下の紫外線領域を中心とした短波長の光に対して感応し得るものが用いられていた。
【0003】
一方、近年、画像形成技術の発展に伴い、可視領域の光に対して高感度を示す感光性材料が強く要請され、例えば、アルゴンイオンレーザーの488nmの発振ビームを用いたレーザー製版方式に対応して500nm前後迄感度域を拡げた光重合性組成物が多数提案され、更に、He−Neレーザーや半導体レーザーを用いたレーザー製版方式や、フルカラー画像の複製技法に対応して600nmを越える長波長領域の光に対する光重合性組成物の研究も活発化している。
【0004】
例えば特開昭62−143044号公報には、ラジカル発生剤として陽イオン染料−ボーレート陰イオン錯体を含む光硬化性組成物が開示され、陽イオン染料−ボーレート錯体の例示の中にはλmaxが740nmにあるインドール系のシアニン染料とボーレート陰イオン錯体の例も示されている。
しかしながら、通常、光重合開始剤の活性ラジカル発生能力は、500nm以上、とりわけ600nmを越えた波長の光に対しては、光励起エネルギーの低下に伴って急激に感応性が減少することが知られており、このような長波長領域の光に対して従来より提案されている光重合性組成物は、いずれも感度的に満足できるものではなく、加えて、白色蛍光灯下における取扱時に光重合反応が進行し、安定した品質のものが得られ難いという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、従って、本発明は、可視領域、ひいては近赤外線領域等の長波長領域の光に対して高感度を示すと共に、紫外線領域の光に対しては感応せず、白色蛍光灯下における取扱性に優れた光重合性組成物、及び光重合性平版印刷版を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリメチン鎖を介して複素環の複素原子が結合された構造を基本構造とする色素であって、該ポリメチン鎖上に特定の置換基を有する色素を含有させた光重合性組成物が前記目的を達成できることを見い出し本発明を完成したものであって、即ち、本発明は、下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有してなる光重合性組成物、及び、支持体表面に該光重合性組成物の層が形成されてなる光重合性平版印刷、を要旨とする。
(A)エチレン性不飽和化合物
(B)ポリメチン鎖を介して複素環の複素原子が結合された構造を基本構造とする色素であって、(B−1)ポリメチン鎖上に、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合を有する置換基を有する色素、又は(B−2)ポリメチン鎖上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成している色素
(C)光重合開始剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の光重合性組成物を構成する(A)成分のエチレン性不飽和化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けたときに、後述する(C)成分の光重合開始剤の作用により付加重合し、場合により架橋、硬化するようなエチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び、主鎖又は側鎖にこのような二重結合を有する重合体を言う。尚、ここで言う単量体の意味するところは、いわゆる重合体に相対する概念であって、狭義の単量体以外にも、二量体、三量体、その他オリゴマーをも包含するものである。
【0008】
それらの単量体としては、具体的には、例えば、(1) アクリル酸、メタクリル酸(尚、この両者を纏めて「(メタ)アクリル酸」と言うことがある。)等の不飽和カルボン酸類、(2) これらのアルキルエステル類、(3) エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及び同様のイタコネート、クロトネート、マレエート等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル類、(4) ヒドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等の芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル類、(5) エチレングリコールと(メタ)アクリル酸とフタル酸との縮合物、ジエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とマレイン酸との縮合物、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸とテレフタル酸との縮合物、ブタンジオールとグリセリンと(メタ)アクリル酸とアジピン酸との縮合物等のポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸と多価カルボン酸との縮合物類、(6) トリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートとの付加反応物等のウレタン(メタ)アクリレート類、(7) ポリイソシアネート化合物と水酸基含有ビニル化合物との付加反応物等のビニルウレタン類、(8) 多価エポキシ化合物とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートとの付加反応物等のエポキシ(メタ)アクリレート類、(9) エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類、(10)フタル酸ジアリル等のアリルエステル類、(11)ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物、(12)(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等の(メタ)アクリロイル基含有燐酸エステル類、等が挙げられる。
【0009】
又、重合体としては、具体的には、例えば、主鎖に二重結合を有するものとして、(1) 不飽和ジカルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル類、(2) 不飽和ジカルボン酸とジアミン化合物との重縮合反応により得られるポリアミド類等、側鎖に二重結合を有するものとして、(3) イタコン酸、エチリデンマロン酸、プロピリデンコハク酸等とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル類、(4) イタコン酸、エチリデンマロン酸、プロピリデンコハク酸等とジアミン化合物との重縮合反応により得られるポリアミド類、(5) ポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエピクロルヒドリン等の側鎖にヒドロキシル基やハロゲン化メチル基等の如き反応活性な官能基を有する重合体と不飽和カルボン酸との反応により得られる重合体、等が挙げられる。
【0010】
本発明の光重合性組成物を構成する(B)成分の色素は、ポリメチン鎖を介して複素原子が結合された構造を基本構造とする色素であって、(B−1)ポリメチン鎖上に、色素構造中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合を有する置換基を有する色素であるか、又は(B−2)ポリメチン鎖上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成している色素である。尚、「色素分子中で共鳴する」とは、換言すれば「色素の発色団と共鳴する」ことを意味する。本発明の色素は該置換基又は環状構造を有することによって色素分子中の発色団のπ電子系が広がり、吸収ピークを通常20nm以上長波長側へシフトさせ、特に波長域700〜1300nmの近赤外線領域の吸収効率を向上させ得るものである。これらの近赤外線吸収色素は、前記波長域の光を効率よく吸収し、その光励起エネルギーを後述する(C)成分の光重合開始剤に伝え、該光重合開始剤を分解し、(A)成分の前記エチレン性不飽和化合物の重合を誘起する活性ラジカルを発生させる増感機能を有する一方、紫外線領域の光は殆ど吸収しないか、吸収しても実質的に感応せず、白色蛍光灯に含まれるような弱い紫外線によっては組成物を変成させる作用のない化合物である。
【0011】
本発明において、これらの色素としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等の複素原子がポリメチン(−CH=)n 鎖で結合された構造を基本構造とするものであり、代表的には、その複素原子が複素環を形成し、ポリメチン鎖を介して複素環が結合された構造を基本構造とする広義の所謂シアニン系色素、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、シアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等、及び、ポリメチン鎖を介して非環式複素原子が結合された構造の所謂ポリメチン系色素等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、ピリリウム系、チアピリリウム系等のシアニン系色素、及びポリメチン系色素が好ましい。
【0012】
本発明においては、前記シアニン系色素の中で、キノリン系色素としては、特に、下記一般式(Ia) 、(Ib)、又は(Ic)で表されるものが好ましい。
【0013】
【化7】
【0014】
〔式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)中、R1 及びR2 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、L1 は(1)置換基として、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合を有する置換基を少なくとも有するトリ、ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基を示すか、又は(2)該ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成する。該ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環、シクロアルケノン環、又はシクロアルケンジオン環を形成していてもよく、キノリン環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。Xa - は対アニオンを示す。〕
【0015】
ここで、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)中のR1 及びR2 がアルキル基であるときの炭素数は、通常1〜15、好ましくは1〜10、アルケニル基、アルキニル基であるときの炭素数は、通常2〜15、好ましくは2〜10であり、フェニル基も含めたそれらの置換基としては、炭素数が通常1〜15、好ましくは1〜10のアルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシ基、又はフェニル基等が挙げられ、L1 における前記エーテル結合を有する置換基以外の置換基としては、同上炭素数のアルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、キノリン環における置換基としては、同上炭素数のアルキル基、同上炭素数のアルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0016】
又、インドール系、及びベンゾチアゾール系色素としては、特に、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
【0017】
【化8】
【0018】
〔式(II)中、Y1 及びY2 は各々独立して、ジアルキルメチレン基又は硫黄原子を示し、R3 及びR4 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、L2 は(1)置換基として、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合を有する置換基を少なくとも有するトリ、ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基を示すか、又は(2)該ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成する。該ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環、シクロアルケノン環、又はシクロアルケンジオン環を形成していてもよく、縮合ベンゼン環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。Xa - は対アニオンを示す。〕
【0019】
ここで、式(II)中のR3 及びR4 がアルキル基であるときの炭素数は、通常1〜15、好ましくは1〜10、アルケニル基、アルキニル基であるときの炭素数は、通常2〜15、好ましくは2〜10であり、フェニル基も含めたそれらの置換基としては、炭素数が通常1〜15、好ましくは1〜10のアルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシ基、又はフェニル基等が挙げられ、L2 における前記エーテル結合で置換された置換基以外の置換基としては、同上炭素数のアルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、縮合ベンゼン環における置換基としては、同上炭素数のアルキル基、同上炭素数のアルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0020】
又、ピリリウム系、及びチアピリリウム系色素としては、特に、下記一般式(IIIa)、(IIIb)、又は(IIIc)で表されるものが好ましい。
【0021】
【化9】
【0022】
〔式(IIIa)、(IIIb)、及び(IIIc)中、Z1 及びZ2 は各々独立して、酸素原子又は硫黄原子を示し、R5 、R6 、R7 、及びR8 は各々独立して、水素原子又はアルキル基、又は、R5 とR7 、及びR6 とR8 が互いに連結して炭素数5又は6のシクロアルケン環を形成していてもよく、L3 は(1)置換基として、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合を有する置換基を少なくとも有するモノ、トリ、ペンタ、又はヘプタメチン基を示すか、又は(2)該ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成する。該トリ、ペンタ、又はヘプタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環、シクロアルケノン環、又はシクロアルケンジオン環を形成していてもよく、ピリリウム環及びチアピリリウム環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。Xa - は対アニオンを示す。〕
【0023】
ここで、式(IIIa)、(IIIb)、及び(IIIc)中のR5 、R6 、R7 、及びR8 がアルキル基であるときの炭素数は、通常1〜15、好ましくは1〜10であり、L3 における前記エーテル結合で置換された置換基以外の置換基としては、同上炭素数のアルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、ピリリウム環及びチアピリリウム環における置換基としては、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0024】
又、ポリメチン系色素としては、特に、下記一般式(IV)で表されるものが好ましい。
【0025】
【化10】
【0026】
〔式(IV)中、R9 、R10、R11、及びR12は各々独立して、アルキル基を示し、R13及びR14は各々独立して、置換基を有していてもよいアリール基、フリル基、又はチエニル基を示し、L4は(1)置換基として、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で置換された置換基を少なくとも有するモノ、トリ、ペンタ、又はヘプタメチン基を示すか、又は(2)該ペンタ、ヘプタ、ノナ、又はウンデカメチン基上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成する。該トリ、ペンタ、又はヘプタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環、シクロアルケノン環、又はシクロアルケンジオン環を形成していてもよく、キノン環及びベンゼン環は置換基を有していてもよい。Xa - は対アニオンを示す。〕
【0027】
ここで、式(IV)中のR9 、R10、R11、及びR12のアルキル基の炭素数は、通常1〜15、好ましくは1〜10、R13及びR14がアリール基であるときの炭素数は、通常6〜20、好ましくは6〜15であり、R13及びR14として具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基等が挙げられ、それらの置換基としては、同上炭素数のアルキル基、同上炭素数のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、L4 における前記エーテル結合で置換された置換基以外の置換基としては、同上炭素数のアルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、キノン環及びベンゼン環における置換基としては、同上炭素数のアルキル基、同上炭素数のアルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0028】
尚、前記一般式(Ia 〜c)、(II)、(IIIa 〜c)、及び(IV)における対アニオンXa - としては、具体的には、例えば、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4 - 、PF6 - 、SbF6 - 、AsF6 - 、及び、BF4 - 、BCl4 - 等の無機硼素酸等の無機酸アニオン、並びに、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、酢酸、及び、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等の有機基を有する有機硼素酸等の有機酸アニオンを挙げることができる。
【0029】
以上の前記一般式(Ia 〜c)で表されるキノリン系、前記一般式(II)で表されるインドール系又はベンゾチアゾール系、前記一般式(IIIa 〜c)で表されるピリリウム系又はチアピリリウム系等のシアニン系色素、及び前記一般式(IV)で表されるポリメチン系色素の中で、本発明においては、前記一般式(II)で表されるインドール系又はベンゾチアゾール系色素が特に好ましい。
【0030】
又、前記各式におけるL1 、L2 、L3 、及びL4 を含めたポリメチン鎖として、波長域700〜850nmに対してはヘプタメチン鎖であるものが、波長域850〜950nmに対してはノナメチン鎖であるものが、波長域950〜1300nmに対してはウンデカメチン鎖であるものが、それぞれ好ましい。
【0031】
本発明において、(B)成分の前記色素は、(B−1)ポリメチン鎖上に、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合を有する置換基を少なくとも有する構造のものであるか、又は(B−2)ポリメチン鎖上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成しているものであることが必須である。(B−1)の場合その共鳴機構は、例えば、ノナメチン鎖を介して窒素原子が結合している構造の色素を例にとると、下式の如くなる。
【0032】
【化7】
【0033】
(B−2)の場合、その共鳴機構は、例えばノナメタン鎖を介して窒素原子が結合している構造の色素を例にとると、下式の如くなる。
【0034】
【化8】
【0035】
本発明において、前記(B−1)の場合のポリメチン鎖上のエーテル結合を有する置換基としては、具体的には、下記一般式(Va)で表されるものが挙げられる。
【0036】
【化13】
【0037】
〔式(Va)中、W1 は、酸素原子を示し、Ra は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。〕
【0038】
ここで、式(Va)中のRa がアルキル基であるときの炭素数は、通常1〜15、好ましくは1〜10、アリール基であるときの炭素数は、通常6〜20、好ましくは6〜15、複素環であるときの炭素数は、通常2〜15、好ましくは2〜10であり、それらの置換基としては、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数が1〜5のアルコキシ基或いはチオアルコキシ基、炭素数が2〜5のアシル基、炭素数が2〜5のアシルオキシ基、炭素数が2〜5のアルコキシカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、イソシアナート基或いはイソチオシアナート基、オキソ基或いはチオキソ基、炭素数が2〜5の複素環基、水酸基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
尚、上記一般式(Va)で表わされる基が、ポリメチン鎖を介して、色素のポリメチン鎖に連結していてもよい。
【0039】
前記一般式(Va)で表されるものの中で、Ra がフェニル基であるもの、及び、Ra が複素環基である下記一般式(Vb)で表されるものが好ましい。
【0040】
【化14】
【0041】
〔式(Vb)中、W1 は、酸素原子を示し、W2 は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、又はジアルキルメチレン基を示し、W1 とW2 とは同一であっても異なっていてもよく、複素環は4〜6員環であり、置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合環を形成していてもよい。〕
【0042】
更に、前記一般式(Vb)で表されるものの中の下記一般式(Vc)、(Vd)、及び(Ve)で表されるものが好ましく、下記一般式(Vc)で表されるものが特に好ましい。
【0043】
【化9】
【0044】
〔式(Vc)中、W1 は、酸素原子を示し、W 1 とW 2 は同一であっても異なっていてもよく、Rb は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基或いはチオアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、又は水素原子を示す。〕
【0045】
【化10】
【0046】
〔式(Vd)中、W1 は、酸素原子を示し、W 1 とW 2 は同一であっても異なっていてもよく、Rc は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、又は水素原子を示す。〕
【0047】
【化17】
【0048】
〔式(Ve)中、W1 は、酸素原子を示し、W2 は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、又はジアルキルメチレン基を示し、W1 とW2 とは同一であっても異なっていてもよく、縮合環は芳香族炭化水素環を示す。〕
【0049】
ここで、式(Vc)、(Vd)、及び(Ve)中のRb 、及びRc がアルキル基であるときの炭素数は1〜5、アルコキシ基或いはチオアルコキシ基であるときの炭素数は1〜5、アリール基であるときの炭素数は6〜10、複素環基であるときの炭素数は2〜5であり、式(Ve)中のW2 がジアルキルメチレン基であるときの炭素数は3〜15である。
【0050】
尚、本発明における前記色素としては、ポリメチン鎖上のエーテル結合で置換された置換基が、別のエーテル結合又はチオエーテル結合を介して、直接に又は更に2価の結合基を介する等して、同種又は異種の色素のポリメチン鎖と結合した架橋構造を採るものであってもよい。本発明において前記(B−2)の場合の具体的なポリメチン鎖上のエーテル環状構造又はチオエーテル環状構造としては、下記一般式(VIa)が挙げられ
【0051】
【化18】
【0052】
〔式(VIa)中、W3は、酸素原子を示し、W3を含む複素環は置換基を有していてもよい5又は6員環を表わし、Rdは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアミノ基又はハロゲン原子を示す。〕
W3を含む複素環が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜5のアリキル基、炭素数2〜5のアシルオキシ基、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、アミノ基、炭素数2〜5の複素環基、水酸基、又はハロゲン原子等が挙げられる。前記一般式で表わされるものの中で、下記一般式(VIb)又は(VIc)で表わされるものが好ましい。
【0053】
【化19】
【0054】
〔式(VIb)及び(VIc)中、Reは水素原子、アルキル基又はアリール基を表わし、Reは、同一でも異なっていてもよい。〕
ここで、式(VIa)、(VIb)、(VIc)中のRd及びReがアルキル基であるときの炭素数は1〜5、アリール基である時の炭素数は6〜10である。
【0055】
又、本発明における(B)成分の前記色素は、例えば、N.Narayanan et al. "Near-Infrared Dyes for High Technology Applications" S.Daehne,U.R.Genger,O.S.Wolfbeis 編(Kluwer Academic Publishers出版)に記載されている方法、具体的には、例えば、塩素原子を置換基として有するポリメチン鎖を介して複素環が結合された構造の色素と、相当するアルコールのナトリウム塩化合物との反応等により、合成することができる。
【0056】
以上の内、ポリメチン鎖上に、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で置換された置換基を少なくとも有する構造のシアニン系色素、及びポリメチン系色素の具体例を以下に示す。尚、以下の具体例中、Aは、エーテル結合で置換された置換基を示し、Xa - は対アニオンを示す。
【0057】
【化20】
【0058】
【化21】
【0059】
【化22】
【0060】
【化23】
【0061】
【化24】
【0062】
【化25】
【0063】
【化26】
【0064】
【化27】
【0065】
尚、前記具体例において、Aのエーテル結合又はチオエーテル結合で置換された置換基は、具体的には、以下に示すものである。。
【0066】
【化11】
【0067】
又、前記具体例において、対アニオンXa - は、具体的には、Cl- 、Br-、I- 、ClO4 - 、PF6 - 、BF4 - 、p−トルエンスルホン酸、又は1−ナフタレンスルホン酸である。又、ポリメチン鎖上の置換基が共鳴してオキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成しているシアニン系色素及びポリメチン系色素の具体例は、前記式(I−1)〜(I−3)、(II−1)〜(II−3)、(II−10)、(III−2)、(III−11)、(III−13)〜(III−14)、(III−20)、(IV−1)〜(IV−6)における
【0068】
【化12】
【0069】
尚、長波長領域の光に対し高感度で、紫外線領域の光に対する感応性が低い点で、(B)成分の色素は、前記(B−1)であるのが好ましい。
本発明の光重合性組成物を構成する(C)成分の光重合開始剤は、(B)成分の前記色素との共存下で光照射されたときに、活性ラジカルを発生するラジカル発生剤であって、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特許第2764769号等の各公報、及び、Kunz,Martin "Rad Tech'98.Proceeding April 19-22,1998,Chicago" 等に記載される有機硼素酸塩、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載されるチタノセン化合物、特公平6−29285号公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び、ジアリールヨードニウム塩、有機過酸化物等が挙げられ、本発明においては、ハロゲン化炭化水素誘導体、及び有機硼素酸塩が好ましい。
【0070】
ここで、ハロゲン化炭化水素誘導体としては、好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられ、中でも、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が経時安定性に優れ好ましい。
【0071】
又、その他のハロゲン化炭化水素誘導体としては、例えば、特開昭53−133428号公報、特開昭62−58241号公報、独国特許第3337024号明細書、M.P.Hutt,E.F.Flslager,L.M.Werbel "Jurnal of Heterocyclic Chemistry" Vol.7,No.3(1970)等に記載されるものが挙げられる。
【0072】
又、有機硼素酸塩としては、特に、下記一般式(VI)で表されるものが好ましい。
【0073】
【化30】
【0074】
〔式(VI)中、R15、R16、R17、及びR18は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は複素環基を示し、これらは互いに連結して環状構造を形成していてもよく、これらのうち少なくとも一つは置換基を有していてもよいアルキル基である。Xb + は対カチオンである。〕
【0075】
ここで、式(VI)中のR15、R16、R17、及びR18がアルキル基であるときの炭素数は通常1〜15、好ましくは1〜5、アルケニル基、アルキニル基であるときの炭素数は通常2〜15、好ましくは2〜5、アリール基であるときの炭素数は通常6〜20、好ましくは6〜15、複素環基であるときの炭素数は通常4〜20、好ましくは4〜15であり、それらにおける置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0076】
これらの式(VI)で表される有機硼素塩の有機硼素アニオンとしては、具体的には、例えば、n−ブチル−メチル−ジフェニル硼素アニオン、n−ブチル−トリフェニル硼素アニオン、n−ブチル−トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(p−メトキシフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(p−フルオロフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(m−フルオロフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(2,6−ジフルオロフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(p−クロロフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(トリフルオロフェニル)硼素アニオン、n−ブチル−トリス(2,6−ジフルオロ−3−ピロリルフェニル)−硼素アニオン、n−ブチル−トリス(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−硼素アニオン等が挙げられる。
【0077】
又、対カチオンXb + としては、例えば、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン等のオニウム化合物、及び、ピリリウムカチオン、チアピリリウムカチオン、インドリウムカチオン等を挙げることができるが、テトラアルキルアンモニウム等の有機アンモニウムカチオンが好ましい。
【0078】
上記の(C)成分の中では、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物、又は有機硼素酸塩を使用する場合、特に高感度で好ましい。
本発明において、前記(B)成分の色素と前記(C)成分の光重合開始剤としての有機硼素酸塩を光重合性組成物中に存在させるには、前記色素の色素カチオンと適宜選択した対アニオンとの塩と、前記有機硼素酸塩の有機硼素アニオンと適宜選択した対カチオンとの塩とを配合する通常の方法の他、前記色素の色素カチオンと前記有機硼素酸塩の有機硼素アニオンとで形成された塩を配合する方法も採ることができ、本発明においては、この後者方法が好適である。
【0079】
本発明の光重合性組成物は、前記(A)成分のエチレン性不飽和化合物、前記(B)成分の色素、及び前記(C)成分の光重合開始剤を含有するが、前記(A)成分の光重合性組成物全体に占める割合は、後述する他の成分の含有もあって、20〜80重量%であるのが好ましく、30〜70重量%であるのが特に好ましい。又、前記(A)成分100重量部に対して、前記(B)成分と(C)成分との合計量が0.1〜30重量部であるのが好ましく、0.5〜20重量部であるのが特に好ましい。
【0080】
そして、前記(B)成分と前記(C)成分との割合は、(B):(C)が重量比で1:20乃至10:1の範囲であるのが好ましく、1:8乃至4:1の範囲であるのが特に好ましい。尚、前述のように、(B)成分における色素カチオンと(C)成分における有機硼素アニオンとで形成された塩を用いる場合は、前記(A)成分100重量部に対して、(B)成分と(C)成分との合計量として0.1〜30重量部であるのが好ましく、0.5〜20重量部であるのが特に好ましい。
【0081】
尚、本発明の光重合性組成物には、前記成分以外に、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、マレイミド等の単独又は共重合体、並びに、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、アセチルセルロース等の有機高分子物質が結合材として、前記(A)成分のエチレン性不飽和化合物100重量部に対して10〜500重量部、特には20〜200重量部の範囲で含有されているのが好ましい。
【0082】
その他、必要に応じて、各種添加剤、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の熱重合防止剤が2重量部以下、有機又は無機の染顔料からなる着色剤が50重量部以下、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、トリエチレングリコールジカプリレート等の可塑剤が40重量部以下、三級アミン、チオール等の感度改善剤が5重量部以下、トリアリールメタン、ビスアリールメタン、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、並びに、その部分骨格としてラクトン、ラクタム、スルトン、スピロピラン構造を形成させた化合物等の色素ロイコ体等の色素前駆体が10重量部以下の各範囲で添加されていてもよい。
【0083】
本発明の前記光重合性組成物の感光材料としての使用形態は、使用目的に応じて、例えば、無溶媒で又は適当な溶媒で希釈して支持体表面に塗布し、乾燥させた形態、或いは更にその上に酸素遮断のためのオーバーコート層を設けた形態、異相媒体中に小滴分散させて複数種の感光材として多層に塗布した形態、マイクロカプセル中に内包させて支持体上に塗布した形態等を採り得るが、本発明の光重合性組成物は、該組成物を適当な溶媒に溶解した溶液として支持体表面に塗布した後、加熱、乾燥することにより、支持体表面に本発明の光重合性組成物の層が形成された光重合性平版印刷版としての使用形態が好適である。
【0084】
ここで、その溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶媒、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶媒、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶媒、或いはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。溶媒の使用割合は、光重合性組成物の総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0085】
又、その塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布量は用途により異なるが、乾燥膜厚として、通常、0.3〜7μm、好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは1〜3μmの範囲とする。尚、その際の乾燥温度としては、例えば、60〜170℃程度、好ましくは70〜150℃程度、乾燥時間としては、例えば、5秒〜10分間程度、好ましくは10秒〜5分間程度が採られる。
【0086】
尚、通常、前記光重合性組成物層の上には、酸素による重合禁止作用を防止するために、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、セルロース等の酸素遮断層が設けられる。
【0087】
又、その支持体としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、紙、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等が挙げられる。中で、好ましいのはアルミニウム板であり、塩酸又は硝酸溶液中での電解エッチング又はブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶液中での陽極酸化処理、及び必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されたアルミニウム板がより好ましい。又、支持体表面の粗さとしては、JIS B0601に規定される平均粗さRa で、通常、0.3〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.8μm程度とする。
【0088】
本発明の平版印刷版の光重合性組成物層を画像露光する光源としては、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等のレーザー光源が挙げられるが、特に、600nm以上の可視光線から近赤外線レーザー光線を発生する光源が好ましく、例えば、ルビーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等の固体レーザーを挙げることができ、特に、小型で長寿命な半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。これらの光源により、通常、走査露光した後、現像液にて現像し画像が形成される。
【0089】
本発明の光重合性組成物は、700〜1300nmの近赤外線領域の範囲で、例えば、半導体レーザーを用いて108 W/m2 以上の高密度光強度で露光した場合、102 W/m2 以下の低密度光強度で露光して場合に比して5倍以上、好ましくは10倍以上の感度を示し、そして、この感度の差により、通常の白色蛍光灯下におけるセーフライト性(作業適性)を発現させることができる。
【0090】
本発明の前記光重合性平版印刷版を画像露光した感光体の現像に用いる現像液としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物の0.1〜5重量%程度の水溶液からなるアルカリ現像液を用いる。中で、無機アルカリ塩である珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリ金属の珪酸塩が好ましい。
【0091】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
参考例1
砂目立て処理及び陽極酸化処理を施したアルミニウム板(厚さ0.24mm)を支持体として用い、該アルミニウム板支持体表面に、(A)成分としてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部、(B)成分として下記式のインドール系のシアニン系色素5重量部、(C)成分として2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン5重量部、及び高分子結合材として、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(モル比70/20/10、重量平均分子量50000)100重量部とを、メチルセロソルブ1400重量部に室温で10分間攪拌して調液した塗布液をワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥させて膜厚2μmの光重合性組成物層を形成し、更にその上に、ポリビニルアルコール水溶液を塗布し、80℃で2分間乾燥させて膜厚3μmのオーバーコート層を形成して光重合性平版印刷版を作製した。
【0093】
【化31】
【0094】
得られた光重合性平版印刷版を、直径7cmのアルミニウム製回転ドラムに、光重合性組成物層が外側になるように固定した後、830nm、30mWの半導体レーザー(アプライドテクノ社製)のビームを20μmに集光したビームスポットを用いて、500〜1000rpmの各種回転数にて走査露光し、次いで、アルカリ現像液(コニカ社製ネガ現像液「SDN−21」の8倍希釈液)を用いて現像することにより走査線画像を形成させた。線画像が形成される露光ドラムの最高回転数が高い程、高感度であることとなるが、本実施例では、最高回転数700rpmであった。
【0095】
又、一方、400ルクスの光強度の白色蛍光灯(三菱電機社製36W白色蛍光灯「ネオルミスーパーFLR40S−W/M/36」)下に10分間放置した平版印刷版と、放置しない平版印刷版とを、前記と同様の現像処理を施した後、現像インキ(富士写真フィルム工業社製「PI−2」)を用いてインキ盛りを行ったが、放置の有無にかかわらず、インキの付着は全く認められず、白色蛍光灯による光重合性組成物層の溶解性の低下に差が生じていないことが確認された。
【0096】
参考例2
(C)成分として、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを用いた外は、参考例1と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は700rpmであった。
【0097】
参考例3
(C)成分として、n−ブチル−トリフェニル硼素アニオンとテトラn−ブチルアンモニウムカチオンとの塩の有機硼素酸塩を用いた外は、参考例1と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は800rpmであった。
【0098】
参考例4
(B)成分として、下記式のインドール系のシアニン系色素を用いた外は、参考例3と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は600rpmであった。
【0099】
【化32】
【0100】
比較例1
(B)成分として、参考例1で用いたインドール系のシアニン系色素におけるチオエーテル結合で置換された置換基を有さないシアニン系色素のみを用いた外は、参考例1と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は400rpm以下であった。尚、光重合性組成物層中にはシアニン系色素の結晶粒子による塗布欠陥が見られた。
【0101】
比較例2
(B)成分として、参考例4で用いたシアニン系色素におけるチオエーテル結合で置換された置換基を有さないシアニン系色素のみを用いた外は、参考例1と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は400rpm以下であった。尚、光重合性組成物層中にはシアニン系色素の結晶粒子による塗布欠陥が見られた。
【0102】
実施例5
砂目立て処理及び陽極酸化処理を施したアルミニウム板(厚さ0.24mm)を支持体として用い、該アルミニウム板支持体表面に、(A)成分としてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部、(B)成分として下記式のシアニン系色素5重量部、(C)成分として2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン5重量部、及び高分子結合材として、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(モル比90/10、重量平均分子量50000)100重量部とを、メチルセロソルブ700重量部及びシクロヘキサノン700重量部に攪拌して調液した塗布液をワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥させて膜厚2μmの光重合性組成物層を形成し、更にその上に、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドン90:10重合比で含有する水溶液を塗布し、80℃で2分間乾燥させて膜厚3μmのオーバーコート層を形成して光重合性平版印刷版を作製した。
【0103】
【化33】
得られた光重合性平版印刷版を、直径7cmのアルミニウム製回転ドラムに、光重合性組成物層が外側になるように固定した後、830nm、30mWの半導体レーザー(アプライドテクノ社製)のビームを20μmに集光したビームスポットを用いて、500〜1000rpmの各種回転数にて走査露光し、次いで、アルカリ現像液(コニカ社製ネガ現像液「SDN−21」の8倍希釈液)を用いて現像することにより走査線画像を形成させた。線画像が形成される露光ドラムの最高回転数が高い程、高感度であることとなるが、本実施例では、最高回転数650rpmであった。
【0104】
又、一方、200ルクスの光強度の白色蛍光灯(三菱電機社製36W白色蛍光灯「ネオルミスーパーFLR40S−W/M/36」)下に10分間放置した平版印刷版と、放置しない平版印刷版とを、前記と同様の現像処理を施した後、現像インキ(富士写真フィルム工業社製「PI−2」)を用いてインキ盛りを行ったが、放置の有無にかかわらず、インキの付着は全く認められず、白色蛍光灯による光重合性組成物層の溶解性の低下に差が生じていないことが確認された。
【0105】
実施例6
(C)成分として、2−(p−iso−プロピルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを用いた外は、実施例5と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は650rpmであった。
【0106】
実施例7
(C)成分として、n−ブチル−トリス(m−フルオロフェニル)硼素アニオンとテトラn−ブチルアンモニウムカチオンとの塩の有機硼素酸塩を用いた外は、実施例5と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は500rpmであった。
【0107】
実施例8
(B)成分として、下記式のシアニン系色素を用いた外は、実施例7と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は600rpmであった。
【0108】
【化34】
【0109】
比較例3
(B)成分として、実施例5で用いたシアニン系色素におけるポリメチン鎖上に置換基を有さないシアニン系色素のみを用いた外は、実施例5と同様にして、光重合性平版印刷版を作製し現像したところ、露光ドラムの最高回転数は200rpm以下であった。尚、光重合性組成物層中にはシアニン系色素の結晶粒子による塗布欠陥が見られた。
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、可視領域、ひいては近赤外線領域等の長波長領域の光に対して高感度を示すと共に、紫外線領域の光に対しては感応性が低く、白色蛍光灯下における取扱性に優れる光重合性組成物、及び光重合性平版印刷版を提供することができる。更に、本発明の光重合性組成物は、溶媒に対する溶解性に優れるので、溶液としての支持体表面への塗布による光重合性組成物層の形成を効率的に行うことができ、生産性の優れた平版印刷版を提供することができる。
Claims (12)
- 下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有してなることを特徴とする光重合性組成物。
(A)エチレン性不飽和化合物
(B)ポリメチン鎖を介して複素環の複素原子が結合された構造を基本構造とする色素であって、(B−1)ポリメチン鎖上に、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合を有する置換基を有する色素、又は(B−2)ポリメチン鎖上に少なくとも2つの置換基を有し、該2つの置換基が、色素分子中で共鳴して、オキソニウムカチオンを生じるエーテル結合で結合されて環状構造を形成している色素
(C)光重合開始剤。 - (B)成分の色素が、ポリメチン鎖を介して複素環が結合された構造を基本構造とするシアニン系色素である請求項1に記載の光重合性組成物。
- (B)成分のシアニン系色素が下記一般式(II)で表される近赤外線吸収色素である請求項2に記載の光重合性組成物。
- (B)成分のシアニン系色素が下記一般式(II−2)で表される近赤外線吸収色素である請求項2に記載の光重合性組成物。
- 式(VIa)におけるW3が酸素原子であり、W3を含む複素環は置換基を有していてもよい6員環を表わすことを特徴とする請求項8に記載の光重合性組成物。
- (C)成分の光重合開始剤が、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物、又は有機硼素酸塩である請求項1乃至9のいずれかに記載の光重合性組成物。
- (B)成分の色素と(C)成分の光重合開始剤が、(B)成分の色素の色素カチオンと(C)成分の有機硼素酸塩の有機硼素アニオンとで形成された塩である請求項1乃至10のいずれかに記載の光重合性組成物。
- 支持体表面に、請求項1乃至11のいずれかに記載の光重合性組成物の層が形成されてなることを特徴とする光重合性平版印刷版。
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