JP3948975B2 - 高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物 - Google Patents

高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品分野や医療分野等における高圧蒸気殺菌処理の工程管理において、殺菌処理状態の確認に用いられる高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、缶飲料、レトルト食品や医療器具等を缶、パウチ等の包装体に充填後、高圧蒸気で一定時間加熱することにより殺菌処理することは、広く行われている。
そして、これらの殺菌処理工程において、内容物を充填した容器表面に、熱履歴により変色するインキ組成物をインクジェットプリンタ等で印刷し、印刷された文字や模様の色の変化により殺菌状態を確認することが提案されている。
【0003】
例えば、特開平4−1280号公報には、メチルイエロー(染料)と有機酸あるいはその塩類を含有する、インクジェットプリンタ(IJP)用湿熱変色性インキ組成物が開示されている。このインキ組成物は、メチルイエローが水に比較的溶けにくく、有機酸あるいはその塩の存在下では、可逆的に本来の黄色から赤色に変色することを利用するものである。すなわち、高圧蒸気殺菌処理条件下では、まず有機酸あるいはその塩がインキ被膜から溶出し、メチルイエローは赤色から黄色に戻るとともに、次いで水には難溶性のメチルイエロー自体が高温水には溶出するために、インキ被膜がさらに不可逆的に淡色化するものである。
しかしながら、有機酸あるいはその塩は温水にも容易に溶出するので、このインキ組成物により印刷されたインキ被膜は、生産ライン中で殺菌処理前の工程で使用される40〜50℃の温水や、潤滑水(スライダー)に触れただけで不可逆的に変色してしまうので、高圧蒸気殺菌処理表示用インキとしては実用に適うものではなかった。
【0004】
また、特開平8−3494号公報には、熱により昇華又は分解する染料を含有し、温度履歴により変色するインクジェットプリンタ用インキ組成物が開示されている。このインキ組成物は、熱あるいは高圧水蒸気によって染料が昇華揮散または分解することにより、色の変化として記録されることを利用するものである。
しかしながら、このインキ組成物を例えば缶に印字して高圧蒸気で加熱殺菌した場合に、染料が昇華せずにインキ被膜が変色しないことがあり、また変色が不明瞭であったり一様でなく、殺菌処理されたことをインキ被膜の変色により明確に表示することができるものではなかった。
【0005】
本発明者等は、さきに缶、パウチ等の容器自体に印字ないしマークを施して、高圧蒸気殺菌処理が行なわれたことを明確に表示することができる高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を開発し、特願2000−268903号として出願した。また、本発明者等は、内容物を充填した複数の容器をバスケットに収納して加熱殺菌処理を行うシステムの監視方法として、バスケットに取り付けた監視札に、加熱殺菌時の温度で不可逆的に変色する示温インキを塗布し、インキの変色を確認することによって必要な加熱処理が行なわれたことを画像検査装置により自動的に監視する方法を開発し、特願2000−319922号として出願した。
【0006】
上記インキ組成物は、容器内に充填される内容物が熱容量が大きく、それ自体で或る程度以上に熱を保持することのできる液体等である場合には有効であるが、内容物が熱容量の小さい固形物である場合や、複数の容器をバスケットに収納して殺菌処理をする際に、バスケットに取り付けた金属、タイル、プラスチック等により構成された表示板に印字ないしマークを施して殺菌処理の有無を表示させる場合には、殺菌処理後に印字やマークの消色が不充分となり、殺菌処理の有無を明確に確認することが困難となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、容器内に充填される内容物が熱容量の小さいものである場合や、加熱殺菌用バスケットに取り付けた表示板に印字ないしマークを施して必要な加熱処理が行なわれたことを確認する場合にも使用可能な、所定の加熱殺菌処理によりインキが消色することにより、画像検査装置によって加熱殺菌処理が行なわれたことを確認することのできる高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物、及び該インキ組成物により表示を施した高圧蒸気殺菌表示板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討した結果、高温蒸気殺菌表示用インキ組成物を構成するバインダー樹脂として耐湿熱性のある樹脂を使用し、特定の色素及び発色剤と組合わせることによって上記課題が解決されることを発見し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明はつぎのような構成をとるものである。
1.全組成物を基準として、(A)0.5〜5重量%のトリフェニルフタリド系色素、(B)0.4〜5重量%の有機アミン系発色剤、(C)20〜40重量%の軟化温度が80℃以上であるバインダー樹脂を含有することを特徴とする高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
2.さらに、(D)0.2〜2重量%のレベリング剤を含有することを特徴とする1に記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
3.(A)トリフェニルフタリド系色素がブロムフェノールブルーであることを特徴とする1又は2に記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
4.(B)有機アミン系発色剤が下記の一般式(1)で表されるものであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
【0009】
【化2】
Figure 0003948975
【0010】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C10のアリール基又は置換アリール基、もしくはC2〜C4のヒドロキシアルキル基を表す。)
【0011】
5.(B)有機アミン系発色剤がジエチルエタノールアミンであることを特徴とする4に記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
6.(D)レベリング剤がフッ素系レベリング剤であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
7.基板に1〜6のいずれかに記載された高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物により表示を施した高圧蒸気殺菌表示板。
8.基板がフッ素樹脂により構成されたものあることを特徴とする7に記載の高圧蒸気殺菌表示板。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明では、高温蒸気殺菌表示用インキ組成物を構成するバインダー樹脂として、軟化温度が80℃以上、好ましくは100℃以上の樹脂を使用する。バインダー樹脂の軟化温度が80℃より低いと、熱水耐性が不足し、色素保持性が不十分であり、100℃よりも低い湿熱処理でもインキ組成物の色が薄くなったり、消色してしまい、118℃で20分間といった高温蒸気殺菌処理が行なわれたことを確認するという、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0013】
また、バインダー樹脂の配合量は、全組成物を基準として20〜40重量%(以下、単に「%」と表記する)とする。バインダー樹脂の配合量が20%より少ないと、色素保持性が不十分となるので、少なくとも20%以上、好ましくは25%以上のバインダー樹脂を使用する。
一方、バインダー樹脂の配合量が40%を超えると、インキ組成物の粘度が高くなりすぎ、インクジェットプリンター(IJP)での印字やマーキングができなくなるという弊害が生じる。
【0014】
好ましいバインダー樹脂としては、ロジン変性エステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂(例えば、商品名テスポール類)、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、末端封鎖エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩酢ビ樹脂(例えば、UCC社ソリューションビニル類)、アクリル樹脂(例えば、商品名ヒタロイド、アクリロイド)、ウレタン変性アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記の末端封鎖エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂の末端にあるエポキシ基を、例えば石炭酸、クレゾール等のフェノール類;ビスフェノール類;有機酸類等の過剰の封鎖剤と、熱的にあるいはアルカリ金属塩、ルイス酸等の触媒の存在下に付加反応させることにより得られたものを使用することができる。
特に好適なバインダー樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂が挙げられる。本発明のインキ組成物でバインダー樹脂の種類や配合量を選定する際には、上記の条件を満たすとともに、25℃で測定したときのインキ組成物の粘度が6cpを超えないようにすることが好ましい。
【0015】
本発明の高温蒸気殺菌表示用インキ組成物を構成する色素としては、常温の水には難溶であり、熱水にはある程度溶解するものであれば使用できるが、初期の色調が濃く湿熱処理が進むにつれて次第に淡色化又は消色する色素が好適に使用される。
好ましい色素としては、トリフェニルメタンフタリド系色素が挙げられ、例えばブロムフェノールブルー、ブロムクレゾールグリーン、ブロムチモールブルー、クロルフェノールレッド等のスルホフタリド環を有する色素が使用される。特に好ましい色素としては、ブロムフェノールブルーが挙げられる。これらの色素は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、さらに本発明の目的に沿う範囲で他の一般的な塩基性染料、酸性染料等と併用することもできる。
【0016】
色素の配合量は、全組成物を基準として0.5〜5%とする。色素の量が0.5%より少ないとインキ組成物の色濃度が低くなり、レトルト殺菌が不十分(殺菌不良)の場合にも殺菌処理済と判定されるおそれがある。また、色素の量が5%を超えると、インキ組成物中に沈澱等が生じるために、IJP適性が不良となる。
色素は有機アミン系発色剤と組み合わせて使用することが好ましく、この場合には殺菌処理時の湿熱により発色剤である有機アミンが徐々に失なわれて初期の発色が薄くなるとともに、色素自体が溶出し消色する。したがって、湿熱による殺菌処理の途中の状態を表示することができる。例えば、本発明のインキ組成物は、100℃より低い温度では殺菌不良の状態であり、初期の色調を保持するが、100℃以上の湿熱処理にさらされると、温度・時間の履歴に応じて色濃度が薄くなるので、殺菌処理時の熱履歴の状態を把握することが可能となる。
【0017】
有機アミン系発色剤としては、下記の一般式(1)で表されるアミン類が好適に使用される。
【0018】
【化3】
Figure 0003948975
【0019】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C10のアリール基又は置換アリール基、もしくはC2〜C4のヒドロキシアルキル基を表す。)
【0020】
このような有機アミンとしては、エチルアミン、アンモニア、トリエチルアミンなどの脂肪族アミン類、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどのヒドロキシアミン類、アニリン、ベンジルアミン、ピリジン、モルホリンなどの芳香族ないし環式アミン類などが挙げられる。使用するアミン類の沸点には特に制限はないが、100〜360℃の沸点を有するアミンは、常温では系外に揮散せず加熱処理を受けることにより系外に揮散するので好ましい。
これらの有機アミンの中でもエタノールアミン類を使用することが好ましく、特にジエチルエタノールアミンが好適に使用される。
【0021】
有機アミン系発色剤の配合量は、全組成物を基準として0.4〜5%とする。
有機アミンの量が0.4%より少ないとインキ組成物の色濃度が低くなり、レトルト殺菌が不十分(殺菌不良)の場合にも殺菌処理済と判定されるおそれがある。また、有機アミンの量が5%を超えるとインキ組成物が乾燥不良となり、組成物の色が消え易くなってしまう。
【0022】
本発明の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を、複数の容器を収納し加熱殺菌処理を行なうバスケットに取り付ける、金属板、磁性板、タイル、プラスチック板等からなる表示板(監視札)に印字あるいはマーキングして使用する場合には、インキ組成物中にレベリング剤を配合することが好ましい。
このような各種材料からなる表示板は、表面特性が一様ではなくインキがはじかれ、CCDカメラ等を使用した自動画像検査装置により表示板に施された印字やマークを測定監視した場合には、誤作動を生じ生産に支障をきたすおそれがあるが、レベリング剤を配合することによって、このような問題点を解消することが可能となる。
【0023】
このようなレベリング剤としては、通常使用される界面活性剤、潤滑剤、モダーフロー等のレベリング剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が使用可能であるが、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を使用することが好ましい。特に、表示板としてテフロン(商品名)等のフッ素樹脂板を使用する場合には、フッ素系界面活性剤を使用することによって、均一な色濃度の印字やマークを施すことができるので好ましい。
【0024】
レベリング材の配合量は、全組成物を基準として0.2〜2%とすることが好ましい。
レベリング剤の量が0.2%よりも少ないと、フッ素樹脂やポリプロピレン等のプラスチック製の表示板上等では、印字やマークがちじれた状態となってしまう。また、他の表示板上では、印字やマークが薄く拡がった状態となってしまい、自動画像検査装置で測定監視する際に誤作動を生じる原因となる。一方、レベリング剤の量が2%を超えると、インキ組成物の本来の特性が損なわれてしまう。
【0025】
本発明の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物は、通常は上記の各成分や必要に応じ添加される他の成分を各種の溶剤に溶解又は分散させた溶液又は分散液として調製される。溶剤としては、例えば、アルコール類、エステル類、ケトン類、アルキレングリコールエーテル類、エーテル類、フラン類、芳香族炭化水素、塩素系、水等通常のものが使用される。これらは単独または混合して用いることができる。
【0026】
本発明の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物は、通常はIJPにより複数の容器を収納し加熱殺菌処理を行なうバスケット等に取り付ける表示板や、容器の表面に印字又はマーキングされるが、スタンプ、コーター等他の一般的な方法により適用してもよい。
本発明のインキ組成物は、導電性物質を配合しなくてもIJP用のインキ組成物として使用することができるが、IJPにより安定的に印字するために、導電性物質を適宜配合してもよい。
導電性物質としては、リチウム塩類、カリウム塩類、ナトリウム塩類などのアルカリ金属塩類、チオシアン酸塩類、有機酸及びその塩類等、通常のIJP用インキに用いられるものはいずれも使用することができるが、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属ヨウ化物を使用することが好ましい。これらは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
導電性物質のインキ組成物への配合量は、全組成物を基準として0.1〜5重量%とすることが好ましい。
【0027】
本発明の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物には、さらに、インキ被膜の特性、塗布適性等を補うために、可塑剤、界面活性剤、滑剤等の添加剤や、ロジン酸、脂肪酸、天然油脂等の変性剤等を添加してもよい。
本発明のインキ組成物では、上記した(A)特定の色素、(B)有機アミン系発色剤、及び(C)軟化温度が80℃以上であるバインダー樹脂を組み合わせて、特定の配合量で使用することによって、表示板や容器の表面に印刷したインキ被膜が、高圧蒸気による殺菌処理前には安定な色調を維持し、所定の殺菌処理後には淡黄色〜無色に退色し、殺菌処理が行われたことを明確に表示することが可能となる。
【0028】
インキ被膜の色が、殺菌処理の前後で有色から有色に変化する場合には、生産ラインで例えばCCDカメラ等を使用した自動画像検査装置等により殺菌状態を自動的に監視することは一般には困難であり、人間による目視判定が必要となる。本発明のインキ組成物では、殺菌処理の前後でインキ被膜の色が有色から無色ないしはきわめて淡い黄色に退色するので、自動画像検査装置等による自動監視が可能となり、生産効率を向上させることが可能となる。
本発明のインキ組成物は、複数の容器を収納し加熱殺菌処理を行なうバスケット等に取り付ける表示板や、熱容量の小さい内容物を収容した容器に好適に使用されるが、インキ組成物を構成する成分の種類や量を調整することによって、熱容量の大きい液体等を収容した容器等にも適用することができる。さらに、高圧蒸気殺菌処理後の缶飲料等の加温販売時の熱履歴表示用インキとして使用することも可能である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
また、以下の実施例及び比較例においてインキ組成物を構成する成分の配合量は、全組成物を基準として重量%で表示したものであり、インキ組成物の残量は溶剤である。
(実施例1)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂としてロジン変性マレイン酸樹脂(日立化成製「テスポール1151」:軟化点120℃)30%を溶解し、ついで(D)レベリング剤としてフッ素系界面活性剤であるユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0030】
(実施例2)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が3:7の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー1%及びブロムクレゾールグリーン1%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」10%及びロジン変性マレイン酸樹脂(日立化成製「テスポール1105」:軟化点134℃)20%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0031】
(実施例3)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が3:7の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」20%及び「テスポール1105」15%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0032】
(実施例4)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が3:7の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」15%及び末端基封鎖エポキシ樹脂(ジャパンエポキシ「#1004」相当:軟化点82℃)15%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0033】
(実施例5)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」35%を溶解し、ついで(D)レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤FZ2123(日本ユニカー製)1%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0034】
(実施例6)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」10%及び「テスポール1105」10%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0035】
(実施例7)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」30%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.1%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0036】
[評価]
上記各実施例で得られた高圧蒸気殺菌表示インキ組成物をインクジェットプリンター(IJP)を使用して、実施例1〜6についてはテフロン製の表示板に印字し乾燥した後、印字状態を確認した。また、印字した表示板を自動蒸気殺菌装置を使用して、所定の条件にて殺菌処理を行ない、消色状態を確認した。そして、次の基準により評価した結果を表1に記載した。尚、実施例7については、テフロン製の表示板に印字したところ、印字ドットがチジれてしまいうまく印字できなかったので、テフロン製の表示板の代わりに陶器製タイル板上に塗布した以外は、上記実施例と同様にして評価した。
(印字状態)
○:印字ドットが円形で均一になっており、マーク全体が十分な色濃度を保っている。
△:印字ドットがやや歪んだ状態であり、マーク全体がやや薄く見える。
×:印字ドットが極端にチジレており、マーク全体が薄く見える。
(高圧蒸気殺菌消色性)
所定の高圧蒸気殺菌装置にて、1)100℃−20分、2)110℃−20分、3)118℃−20分、及び4)90℃熱水浸漬−20分、の殺菌処理を行った後、インキ皮膜の色の変化をみた。
A:色が無色に消色しており、画像検査装置にて殺菌済み品として識別する。
B:やや色残りがあるが、画像検査装置にて殺菌済み品として識別する。
C:色残りがあり、画像検査装置にて殺菌不良品として識別する。
D:発色状態の色がほぼ保持されており、画像検査装置にて殺菌不良品として識別する。
【0037】
以下の、表1及び2において、インキ組成物を構成する各成分は次の略号により表記した。
(色素)
BPB:ブロムフェノールブルー
BCG:ブロムクレゾールグリーン
(有機アミン発色剤)
DEEA:ジエチルエタノールアミン
(バインダー樹脂)
テスポール1151 :ロジン変性マレイン酸樹脂テスポール1151
テスポール1105 :ロジン変性マレイン酸樹脂テスポール1105
末端封鎖1004:末端基封鎖エポキシ樹脂1004(ジャパンエポキシ「#1004」相当)
(レベリング剤)
D403:フッ素系界面活性剤ユニダイン403D(ダイキン製)
FZ2123:シリコーン系界面活性剤FZ2123(日本ユニカー製)
【0038】
【表1】
Figure 0003948975
【0039】
上記表1によれば、これらの実施例で得られたインキ組成物の印字状態は良好で、充分実用に耐えるものであった。
また、殺菌処理が不充分の場合には色残りがあり、自動画像検査装置で殺菌不良品として識別可能であった。
【0040】
(比較例1)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」15%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0041】
(比較例2)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として軟化温度が55℃の塩酢ビ樹脂VYES−4(UCC製)25%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
【0042】
(比較例3)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー2%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン1%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」43%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.1%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。このインキ組成物は、IJPで印字することが困難であった。
【0043】
(比較例4)
メタノール:メチルエチルケトン(MEK)が4:6の混合溶剤に、(A)色素としてブロムフェノールブルー0.3%、(B)有機アミン発色剤としてジエチルエタノールアミン0.8%、(C)バインダー樹脂として上記の「テスポール1151」30%を溶解し、ついで(D)レベリング剤として上記のユニダイン403D(ダイキン製)0.5%を添加し溶解させた後、1μmの濾紙にて濾過して高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物を得た。
これらの比較例で得られたインキ組成物を使用し、実施例1〜6と同様にして印字状態、及び高圧蒸気殺菌消色性について評価した結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
Figure 0003948975
【0045】
上記表2によれば、比較例で得られたインキ組成物は、印字状態が不良(比較例3)、不充分な殺菌処理により消色し自動画像検査装置で殺菌済み品として識別される(比較例1、2、4)等、実用に耐えないものであった。

Claims (8)

  1. 全組成物を基準として、(A)0.5〜5重量%のトリフェニルフタリド系色素、(B)0.4〜5重量%の有機アミン系発色剤、(C)20〜40重量%の軟化温度が80℃以上であるバインダー樹脂を含有することを特徴とする高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
  2. さらに、(D)0.2〜2重量%のレベリング剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
  3. (A)トリフェニルフタリド系色素がブロムフェノールブルーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
  4. (B)有機アミン系発色剤が下記の一般式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
    Figure 0003948975
    (式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C10のアリール基又は置換アリール基、もしくはC2〜C4のヒドロキシアルキル基を表す。)
  5. (B)有機アミン系発色剤がジエチルエタノールアミンであることを特徴とする請求項4に記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
  6. (D)レベリング剤がフッ素系レベリング剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物。
  7. 基板に請求項1〜6のいずれかに記載された高圧蒸気殺菌表示用インキ組成物により表示を施した高圧蒸気殺菌表示板。
  8. 基板がフッ素樹脂により構成されたものあることを特徴とする請求項7に記載の高圧蒸気殺菌表示板。
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