JP2020105310A - 水性インクジェットインキ及びインクジェット印刷物の製造方法 - Google Patents

水性インクジェットインキ及びインクジェット印刷物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乾燥性、印刷物の画像品質、及び、印刷物の耐擦過性に優れ、更に分散安定性及び吐出安定性にも優れた、C.I.ピグメントレッド185を含む水性インクジェットインキを提供することにある。また、プラスチック基材等の非浸透性基材に対しても、上記特性に加え、密着性や色再現性にも優れた印刷物が得られる、C.I.ピグメントレッド185を含む水性インクジェットインキを提供することにある。【解決手段】C.I.ピグメントレッド185、酸価が1〜80mgKOH/gであるバインダー樹脂(a−1)、界面活性剤、及び、水溶性有機溶剤を含有し、1気圧下における沸点が240℃以上である水溶性有機溶剤の含有量が、前記インクジェットインキ全量に対し8質量%以下である、インクジェットインキである。【選択図】なし

Description

本発明は、着色剤として、C.I.ピグメントレッド185を含む水性インクジェット
インキ、及び前記水性インクジェットインキを用いるインクジェット印刷物の製造方法に
関する。
印刷の小ロット化やニーズの多様化に伴い、デジタル印刷方式の普及が急速に進んでい
る。デジタル印刷方式では、版を必要としないことから、小ロット対応、コストの削減、
印刷装置の小型化が実現可能である。
デジタル印刷方式の一種であるインクジェット印刷方式とは、記録媒体に対してインク
ジェットヘッドからインキの微小液滴を飛翔及び着弾させて、前記記録媒体上に画像や文
字(以下総称して「印刷物」ともいう)を形成する方式である。他のデジタル印刷方式と
比べて、印刷装置のサイズ及びコスト、印刷時のランニングコスト、フルカラー化の容易
性など面で優れており、近年では産業印刷用途においても利用が進んでいる。
インクジェット印刷方式に使用されるインキとしては、油系、溶剤系、活性エネルギー
線硬化系、水系など多岐に渡る。これまで、産業印刷用途では、溶剤系や活性エネルギー
線硬化系のインキが使用されてきた。しかし近年の、環境や人に対する有害性への配慮・
対応といった点から、水系インキの需要が高まっている。
また近年では、インクジェット印刷方式の用途拡大の要望の中で、産業印刷用途に加え
て、紙器、ラベル、包装フィルムといったパッケージ用途への展開が求められている。そ
の場合、コート紙やアート紙のような低浸透性の基材、及び、ポリプロピレンフィルムや
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような非浸透性の基材に対して、色再
現性や画像品質が高く、実使用に耐えられる特性を有する印刷物の形成が要求されること
になる。
特にパッケージ用途では、販売促進用デザイン、企業のコーポレートカラー、新興国の
ナショナルカラー等として、レッド色の色再現性が求められることが多い。一般にレッド
色は、イエロー色とマゼンタ色との重ね合わせによって形成されるが、レッド領域の色再
現性を更に高めるために、オレンジ色やレッド色の特色インキを設定する試みが行われて
きた(特許文献1〜3参照)。
しかしながら特色インキの採用は、印刷装置のサイズやコストを低減する観点からすれ
ば好ましい方策とはいえない。従って、プロセスカラーであるイエロー、シアン、マゼン
タの3色で、いかに色再現性を高めるかが非常に重要となる。
一般に、インキに使用される着色剤として、染料及び顔料が知られているが、パッケー
ジ用途において求められる特性を考慮すると、印刷物の耐光性や耐湿性などに優れる顔料
が好適に選択される。また、顔料にも様々な種類があり、その中の一種に、発色性、耐光
性、耐薬品性等のバランスに優れた顔料であるベンズイミダゾロン顔料がある。更に、プ
ロセスカラーであるマゼンタ色を呈するベンズイミダゾロン顔料も種々知られており、そ
の一種であるC.I.ピグメントレッド185は、これまでにもインクジェットインキ用
途において、しばしば検討されている(特許文献4〜5参照)。
例えば特許文献4には、擬1次元結晶性カラー有機顔料であるC.I.ピグメントレッ
ド185を含み、更に、水溶性有機溶剤、界面活性剤、水溶性樹脂を含む、水系のインク
ジェットインキが開示されている。しかしながら前記特許文献4において、好適に使用で
きるとされている水溶性樹脂の酸価は90〜130である。本発明者らが、市販されてい
るC.I.ピグメントレッド185と、酸価90程度の樹脂とを併用した水系のインクジ
ェットインキを作製し評価したところ、分散安定性に劣ってしまうことが判明した。分散
安定性を付与するには、特許文献4記載のように、C.I.ピグメントレッド185を擬
1次元結晶化する必要があると考えられるが、設備やコストなど製造上の負荷が大きく、
好ましい方法とはいえない。加えて、実施例に記載されているインク組成物には、沸点が
高い水溶性有機溶剤である、テトラプロピレングリコールやトリエチレングリコールモノ
ブチルエーテルが、総量として10質量%含まれていることから、パッケージ用途で使用
される、低浸透性の基材や非浸透性の基材に印刷した場合、乾燥性、画像品質や耐擦過性
に劣った印刷物となってしまうことが容易に予想される。
また特許文献5には、C.I.ピグメントレッド185と、C.I.ピグメントレッド
122とが、アニオン性基含有樹脂で被覆された顔料分散液、及び、前記顔料分散液を含
む水性記録液(インクジェットインキ)が開示されている。しかしながら前記特許文献5
内には、水性インクジェットインキや、前記水性インクジェットインキによって形成され
る印刷物の特性を向上させるために、C.I.ピグメントレッド185と好適に組み合わ
せられる材料に関する記載は存在しない。また実施例に記載されている水性記録液にはバ
インダー樹脂が含まれていないうえ、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが、1
0質量%含まれており、上記特許文献4の実施例記載のインク組成物と同様、低浸透性の
基材や非浸透性の基材に印刷した場合、乾燥性、画像品質や耐擦過性に劣った印刷物とな
る恐れが高い。
特開2004−276397号公報 特開2015−199849号公報 国際公開第2017/61507号 特開2003−12982号公報 特開2006−57044号公報
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、乾燥性、印刷物
の画像品質、及び、印刷物の耐性(耐擦過性)に優れ、更に分散安定性及び吐出安定性に
も優れた、C.I.ピグメントレッド185を含む水性インクジェットインキを提供する
ことにある。また本発明の更なる目的は、プラスチック基材等の非浸透性基材に対しても
、上記特性に加え、密着性や色再現性にも優れた印刷物が得られる、C.I.ピグメント
レッド185を含む水性インクジェットインキを提供することにある。
本発明者らが、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の酸価を有するバ
インダー樹脂と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、C.I.ピグメントレッド185と
を併用し、更に、特定の沸点を有する水溶性有機溶剤の含有量を限定することで、上記の
課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、着色剤、バインダー樹脂(A)、界面活性剤、及び、水溶性有機溶
剤を含有する水性インクジェットインキであって、
前記着色剤が、C.I.ピグメントレッド185を含み、
前記バインダー樹脂(A)が、酸価が1〜80mgKOH/gであるバインダー樹脂(
a−1)を含み、
1気圧下における沸点が240℃以上である水溶性有機溶剤の含有量が、前記インクジ
ェットインキ全量に対し8質量%以下である、水性インクジェットインキに関する。
また本発明は、前記バインダー樹脂(a−1)が、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹
脂、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂、及び、オレフィン樹脂からなる群から
選択される少なくとも1種である、上記水性インクジェットインキに関する。
また本発明は、前記水溶性有機溶剤が、炭素数2〜5のアルカンジオールを含有する、
上記水性インクジェットインキに関する。
また本発明は、前記界面活性剤が、HLB値が0〜5である界面活性剤を含有する、上
記水性インクジェットインキに関する。
また本発明は、前記界面活性剤が、HLB値が6〜18である界面活性剤を含有する、
上記水性インクジェットインキに関する。
また本発明は、鎖状アミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び、環状カルバメート系溶剤
の配合量の総量が、水性インクジェットインキ全量に対して3質量%以下である、上記水
性インクジェットインキに関する。
また本発明は、25℃におけるpKa値が2以下、または、10以上である含窒素化合
物(ただし、鎖状アミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び、環状カルバメート系溶剤は除
く)の含有量の総量が、前記インクジェットインキ全量に対し1質量%以下である、上記
水性インクジェットインキに関する。
また本発明は、上記水性インクジェットインキを、インクジェットヘッドから吐出して
、非浸透性基材に付与する、インクジェット印刷物の製造方法に関する。
本発明により、乾燥性、印刷物の画像品質、及び、印刷物の耐性(耐擦過性)に優れ、
更に分散安定性及び吐出安定性にも優れた、C.I.ピグメントレッド185を含む水性
インクジェットインキを提供することが可能となった。また、プラスチック基材等の非浸
透性基材に対しても、上記特性に加え、密着性や色再現性にも優れた印刷物が得られる、
C.I.ピグメントレッド185を含む水性インクジェットインキを提供することが可能
となった。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明の水性インクジェットインキ(以下、単
に「水性インキ」「インキ」ともいう)について説明する。なお、本明細書において「水
性媒体」とは、少なくとも水を含む液体からなる媒体を意味する。
本発明の水性インキに含まれるC.I.ピグメントレッド185は、以下の構造を有し
、発色性や耐光性に優れる顔料として知られている。
上記構造の通り、C.I.ピグメントレッド185は分子構造中にイソインドリン構造
、アゾ基などを含み、多くの窒素原子や酸素原子を有する。また、ナフトール構造や芳香
環構造も存在するため、水素結合やπ相互作用といった分子間相互作用が非常に強いと考
えられる。
水性インキでは一般に、顔料は分散された状態で水性媒体中に存在する。しかしながら
、C.I.ピグメントレッド185のように分子間相互作用が強い顔料は、水性インキ中
の微妙なバランスの変化によって、分散状態が破壊されやすい。特にインクジェットイン
キの場合、インクジェットヘッドから安定的に吐出するために、粘度、表面張力、pH等
の物性値をコントロールする必要があり、使用できる材料が限定されることから、上記バ
ランスの調整は特に難しいものとなる。すなわち、C.I.ピグメントレッド185を含
む水性インクジェットインキにおいて、好適な分散状態の維持と、インクジェットインキ
としての特性との両立は、当業者にとっての大きな課題といえる。
例えば、記録媒体上での濡れ広がりを確保し、画像品質に優れた印刷物を得るため、水
性インクジェットインキでは揮発性の低い高沸点溶剤が使用されることが多い。しかしな
がら、後述する非浸透性基材等に印刷した場合は、水性インキの液滴が前記記録媒体上に
長時間残存しやすく、前記インキ液滴同士の合一が起きることで、にじみや濃淡ムラが発
生する恐れがある。また、印刷物中に残存する高沸点溶剤によって、印刷物の耐擦過性が
悪化する可能性もある。
上記問題を解決すべく、例えば、揮発性の高い溶剤を併用する、あるいは、揮発性の低
い高沸点溶剤の量を減らすといった方策が考えられる。しかしながら、揮発性の高い溶剤
は一般に、顔料の分散状態を破壊しやすいため、C.I.ピグメントレッド185のよう
な分子間相互作用が強い顔料との併用は難しい。また、記録媒体上で十分に濡れ広がる前
に乾燥してしまい白抜けの原因となる、インクジェットヘッドのノズル面で乾燥固化して
しまい、吐出曲がりや不吐出が発生する、といった問題も発生しうる。
また、印刷物の耐擦過性向上を目的として、水性インクジェットインキにバインダー樹
脂が添加されることがある。しかしながら、バインダー樹脂中に存在する酸基等が、顔料
中の極性基や前記顔料の分散に寄与する材料と相互作用を起こし、分散状態を破壊する可
能性がある。特に上記の通り、C.I.ピグメントレッド185は分子構造中に多くの窒
素原子や酸素原子を含むため、分散安定性が悪化する恐れが高い。またバインダー樹脂を
含むインキは、ノズル面で乾燥固化しやすく、吐出安定性も低下しやすい。
そこで本発明者らが鋭意検討した結果、特定の酸価を有するバインダー樹脂と、界面活
性剤と、水溶性有機溶剤とを併用し、更に、特定の沸点を有する水溶性有機溶剤の含有量
を限定することで、分散安定性、吐出安定性、乾燥性、印刷物の画像品質、及び、印刷物
の耐擦過性の全てが両立した水性インクジェットインキとなることを見出した。その理由
は定かではないが、以下が考えられる。
まず本発明の水性インキは、酸価が小さく、インキの主成分である水との親和性が小さ
いバインダー樹脂(a−1)を含む。そのため、記録媒体上に水性インキの液滴が着弾し
た後、乾燥する過程で、前記バインダー樹脂(a−1)が速やかに気液界面に移動すると
考えられる。また記録媒体上でのインキ液滴の乾燥に伴い、水溶性有機溶剤の存在比率が
高まると、前記バインダー樹脂(a−1)が前記水溶性有機溶剤に溶解し、前記気液界面
において局所的な増粘または成膜を引き起こす。その結果、インキ液滴同士のにじみや濃
淡ムラが抑制し、画像品質が向上すると考えられる。
また、バインダー樹脂(a−1)が有する酸価を規定し、前記バインダー樹脂(a−1
)中の酸基の量を制限することで、C.I.ピグメントレッド185の分散状態の維持を
図っている。
一方で、酸価が小さいバインダー樹脂(a−1)は、いったん成膜すると、水性媒体の
存在下であっても、容易には元の状態に戻らない。印刷物の耐擦過性向上の観点では好適
なことであるが、その一方で、インクジェットヘッドのノズル面でインキが成膜してしま
うと、ノズルの少なくとも一部を閉塞してしまい、しかも成膜前の状態に戻すことが難し
いことから、吐出安定性の悪化を引き起こす恐れがある。そこで本発明では、更に界面活
性剤を併用することで、この問題の解決を図っている。一般に界面活性剤は、分子中に疎
水性基と親水性基とを有している。本発明のインキでは、バインダー樹脂(a−1)と界
面活性剤分子中の疎水性基とが、また、水と前記界面活性剤分子中の親水性基とが、それ
ぞれ親和すると考えられるため、インクジェットヘッド内のインキ中では、バインダー樹
脂(a−1)が界面活性剤によって保護されたような状態となり、前記バインダー樹脂(
a−1)の成膜が抑制されていると考えられる。一方、記録媒体に着弾したインキ液滴中
では、乾燥に伴うインキ中の構成材料の存在比の変化の影響を受け、界面活性剤が、記録
媒体とインキとが形成する固液界面に移動すると考えられる。その結果、記録媒体上でイ
ンキ液滴が速やかに濡れ広がり、上記バインダー樹脂(a−1)による増粘または成膜の
効果と相まって、印刷物の画像品質、乾燥性に優れたインキとなると考えられる。
加えて、本発明の水性インクジェットインキでは、1気圧下における沸点が240℃以
上である水溶性有機溶剤(以下では「高沸点有機溶剤」ともいう)を含んでも良いが、含
む場合には前記水性インクジェットインキ全量に対し8質量%以下であり、含まないこと
が好ましい。一般に高沸点有機溶剤は、水素結合を形成しうる官能基を多数有する、及び
/または、分子量が大きい化合物である。そのため、高沸点有機溶剤とC.I.ピグメン
トレッド185とが水素結合を形成し、また、C.I.ピグメントレッド185の分散に
寄与する材料が前記高沸点有機溶剤と優先的に相互作用を起こすことで、顔料の分散状態
が破壊される恐れがある。また、高沸点有機溶剤は容易には乾燥しないため、印刷後の印
刷物中に長期間残留し、乾燥性、耐擦過性や、画像品質の悪化につながることも懸念され
る。上記考察に基づき、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、1気圧下における沸点が24
0℃以上である水溶性有機溶剤の量を8質量%以下に制限することで、分散安定性、乾燥
性、印刷物の耐擦過性や画像品質の悪化が防止できることを見出した。
以上のように、C.I.ピグメントレッド185を含みながらも、分散安定性、吐出安
定性、乾燥性、印刷物の画像品質、及び、印刷物の耐擦過性の全てが両立した水性インク
ジェットインキを得るためには、本発明の構成が不可欠であると考えられる。
続いて以下に本発明の水性インクジェットインキを構成する各成分について説明する。
<C.I.ピグメントレッド185>
本発明の水性インクジェットインキは、着色剤としてC.I.ピグメントレッド185
を含む。上記の通り、C.I.ピグメントレッド185は、発色性や耐光性に優れており
、マゼンタ色を有するインキ及びレッド色を有するインキと併用することで、色再現性に
優れた印刷物が得られる。
色再現性に優れた印刷物を得る観点から、本発明の水性インキ中に含まれるC.I.ピ
グメントレッド185の含有量は、前記水性インキ全量に対し0.5〜10質量%である
ことが好ましく、1〜9質量%であることがより好ましく、2〜8質量%であることが特
に好ましい。
本発明では、色再現性に優れた印刷物を得る観点から、C.I.ピグメントレッド18
5以外の顔料を併用してもよい。
前記C.I.ピグメントレッド185以外の顔料として、オレンジ顔料、マゼンタ顔料
、バイオレット顔料等が好適に使用でき、レッド領域の色再現性に優れた印刷物が得られ
る点から、マゼンタ顔料及び/またはバイオレット顔料を含むことが特に好適である。な
お、前記C.I.ピグメントレッド185以外の顔料として、マゼンタ顔料及び/または
バイオレット顔料を使用する場合、その配合量は、C.I.ピグメントレッド185の配
合量に対して10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることが
特に好ましい。
C.I.ピグメントレッド185とともに使用できるオレンジ顔料を例示すると、C.
I.ピグメントオレンジ13、16、17、22、24、34、36、38、40、43
、51、60、62、64、71、72、73などが挙げられる。中でも、C.I.ピグ
メントレッド185の分散状態が破壊されにくく、また前記C.I.ピグメントレッド1
85と混合した際の色再現性に優れる点から、C.I.ピグメントオレンジ36、38、
43、60、62、64、及び、72からなる群から選択される1種以上が好ましく使用
できる。
また、C.I.ピグメントレッド185とともに使用できるマゼンタ有機顔料を例示す
ると、C.I.ピグメントレッド5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48
(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122、146、14
7、150、202、207、209、238、242、254、255、266、26
9、282などが挙げられる。中でも、C.I.ピグメントレッド185の分散状態が破
壊されにくく、また前記C.I.ピグメントレッド185と混合した際の色再現性に優れ
る点から、C.I.ピグメントレッド122、150、202、209、及び、282か
らなる群から選択される1種以上が好ましく使用できる。
また、C.I.ピグメントレッド185とともに使用できるバイオレット顔料を例示す
ると、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、42、4
3、50などが挙げられる。中でも、C.I.ピグメントレッド185の分散状態が破壊
されにくく、また前記C.I.ピグメントレッド185と混合した際の色再現性に優れる
点から、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、及び、42からなる群から
選択される1種以上が好ましく使用できる。
上記で例示及び選択した顔料の中でも、ベンズイミダゾロン顔料、キナクリドン顔料、
ジオキサジン顔料からなる群より選択される1種以上が好適に選択される。いずれの顔料
も、芳香環構造やC.I.ピグメントレッド185と類似した部分構造を有しているため
、C.I.ピグメントレッド185の分散状態を破壊しにくく、分散安定性に優れた水性
インキが得られるためである。またこれらの顔料は、印刷物の色再現性の観点からも好適
である。
なお上記で例示及び選択した顔料は、単独で使用してもよいし、2種類以上の顔料を併
用してもよい。また、前記2種類以上の顔料は固溶体を形成していてもよく、その場合、
キナクリドン顔料を含む固溶体を使用することが、分散安定性や、印刷物の色再現性向上
の観点から好ましい。本発明において好適に使用できる固溶体の具体例として、C.I.
ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体、C.I
.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体、C.
I.ピグメントレッド209とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体、C
.I.ピグメントレッド282とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体、
C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド146とを含む固溶体、C
.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド150とを含む固溶体、C.
I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド254とを含む固溶体、C.I
.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド269とを含む固溶体などを挙げ
ることができる。
<顔料分散樹脂>
C.I.ピグメントレッド185を含む顔料を水性インクジェットインキ中で安定的に
分散保持する方法として、(1)顔料表面の少なくとも一部を顔料分散樹脂によって被覆
する方法、(2)水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させる方法
、(3)顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散樹脂や界面活性剤なし
でインキ中に分散する方法(自己分散顔料)などを挙げることができる。
本発明の水性インクジェットインキは、上記のうち(1)の方法、すなわち、顔料分散
樹脂を用いる方法が好適に選択される。これは、樹脂を構成する重合性単量体組成や分子
量を選定・検討することにより、顔料に対する顔料分散樹脂の被覆能や前記顔料分散樹脂
の電荷を容易に調整できるため、微細な顔料に対しても分散安定性を付与することが可能
となり、更には吐出安定性、発色性、及び色再現性に優れた印刷物が得られるためである
上記顔料分散樹脂の種類は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル
樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、オレフィンマレイン酸樹脂、ウレタン
樹脂、エステル樹脂(多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体)などを使用するこ
とができるが、これらに限定されない。中でも、材料選択性の大きさや合成の容易さの点
で、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び、エステル樹脂からなる
群より選択される1種以上を使用することが好ましい。また、水性インキの分散安定性及
び吐出安定性が良化する観点から、後述するバインダー樹脂(A)と同種の樹脂を使用す
ることが好適である。
上記の顔料分散樹脂は、既知の方法により合成することも、市販品を使用することもで
きる。またその構造についても特に制限なく、例えばランダム構造、ブロック構造、櫛形
構造、星型構造等を有する樹脂が利用できる。更に、顔料分散樹脂として、水溶性樹脂を
選択してもよいし、水不溶性樹脂を選択してもよい。なお「水不溶性樹脂」とは、対象と
なる顔料分散樹脂の、25℃・1質量%水混合液が、肉眼で見て透明でないものを指す。
本発明において、顔料分散樹脂として水溶性樹脂を用いる場合、その酸価が50〜45
0mgKOH/gであることが好ましく、100〜400mgKOH/gであることがよ
り好ましい。特に好ましくは150〜350mgKOH/gである。酸価を上記の範囲内
とすることで、顔料の分散安定性を保つことが可能でありインクジェットヘッドから安定
して吐出することが可能となる。また、インクジェットヘッド上での吐出安定性を維持す
ることが可能となる。更に顔料分散樹脂の水に対する溶解性が確保できるうえ、顔料分散
樹脂間での相互作用が好適なものとなることで、顔料分散液の粘度を抑えることができる
点からも好ましい。
一方、顔料分散樹脂として水不溶性樹脂を用いる場合、その酸価は0〜100mgKO
H/gであることが好ましく、5〜90mgKOH/gであることがより好ましく、10
〜80mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が前記範囲内であれば、乾燥性や
耐擦過性に優れた印刷物が得られる。
なお本明細書における樹脂の酸価は既知の装置、例えば京都電子工業社製AT−610
を用いて、電位差滴定法により測定することができる。
本発明の水性インクジェットインキでは、顔料に対する吸着能を向上させ分散安定性を
確保するという観点から、顔料分散樹脂に芳香族基を導入することが好ましい。特に本発
明の場合、C.I.ピグメントレッド185に含まれる芳香環構造と、顔料分散樹脂中に
含まれる芳香環構造が相互作用することにより、前記C.I.ピグメントレッド185に
対する顔料分散樹脂の吸着能力が著しく向上する。その結果、顔料の微細分散を実施した
としても、長期に渡って、水性インキの分散安定性、吐出安定性、印刷物の色再現性を確
保することが可能となるためである。なお、芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基
、アントリル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、アニシル基などが挙げられるが、
これらに限定されない。中でもフェニル基やトリル基が、分散安定性を十分に確保できる
面から好ましい。
C.I.ピグメントレッド185を含むインキの分散安定性、印刷品質、乾燥性の両立
の観点から、芳香環を含有する単量体の含有量は、顔料分散樹脂全量に対し5〜75質量
%であることが好ましく、5〜65質量%であることがより好ましく、10〜50質量%
であることが更により好ましい。
また、芳香族基に加えて、顔料分散樹脂に炭素数8〜36のアルキル基を導入すること
が特に好適である。アルキル基の炭素数を8〜36とすることにより、顔料分散液の低粘
度化、C.I.ピグメントレッド185を含むインキの分散安定性の向上、及び、吐出安
定化を実現できるためである。なおアルキル基の炭素数として、より好ましくは炭素数1
0〜30であり、更に好ましくは炭素数12〜24である。またアルキル基は炭素数8〜
36の範囲であれば、直鎖状及び分岐鎖状のいずれも使用することができるが、直鎖状の
ものが好ましい。直鎖状のアルキル基としてはエチルヘキシル基(C8)、ラウリル基(
C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C16)、ステアリル基(C18)、アラキル
基(C20)、ベヘニル基(C22)、リグノセリル基(C24)、セロトイル基(C26)、モ
ンタニル基(C28)、メリッシル基(C30)、ドトリアコンタニル基(C32)、テトラト
リアコンタニル基(C34)、ヘキサトリアコンタニル基(C36)などが挙げられる。
炭素数8〜36のアルキル鎖を含有する単量体の含有量は、顔料分散液の低粘度化と印
刷物の耐擦過性とを両立させる観点から、顔料分散樹脂全量に対し5〜60質量%である
ことが好ましく、10〜55質量%であることがより好ましく、15〜50質量%である
ことが特に好ましい。
なお、顔料分散樹脂として水溶性樹脂を用いる場合、水性インキへの溶解度を上げるた
め、樹脂中の酸基が塩基で中和されていることが好ましい。塩基の添加量が過剰かどうか
は、例えば顔料分散樹脂の10質量%水溶液を作製し、前記水溶液のpHを測定すること
により確認することができる。C.I.ピグメントレッド185を含むインキの分散安定
性を向上させるという観点から、前記水溶液のpHが7〜11であることが好ましく、7
.5〜10.5であることがより好ましい。
上記の、顔料分散樹脂を中和するための塩基としては、トリエチルアミン、モノエタノ
ールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタ
ノール、ジエチルアミノエタノール、アミノメチルプロパノールなどの有機アミン系溶剤
、アンモニア水、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金
属の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなど
のアルカリ金属の炭酸塩などを挙げることができるが、これらに限定されない。
顔料分散樹脂として水溶性樹脂を用いる場合、その重量平均分子量は、1,000〜5
0,000の範囲であることが好ましく、5,000〜40,000の範囲であることが
より好ましく、10,000〜35,000の範囲であることが更に好ましく、15,0
00〜30,000の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲である
ことにより、C.I.ピグメントレッド185が水中で安定的に分散し、また水性インキ
に適用した際の粘度調整などが行いやすい。重量平均分子量が1,000以上であると、
水性インキ中に添加されている水溶性有機溶剤に対して顔料分散樹脂が溶解しにくくなる
ために、C.I.ピグメントレッド185に対する顔料分散樹脂の吸着が強まり、分散安
定性が向上する。重量平均分子量が50,000以下であると、分散時の粘度が低く抑え
られるとともに、インキの分散安定性やインクジェットヘッドからの吐出安定性が向上し
、長期にわたって安定な印刷が可能になる。
顔料分散樹脂の配合量は、顔料の配合量に対して1〜100質量%であることが好まし
い。顔料分散樹脂の比率を上記範囲内とすることで、顔料分散液の粘度を抑え、水性イン
クジェットインキの分散安定性・吐出安定性が良化する。顔料と顔料分散樹脂の比率とし
てより好ましくは2〜50質量%であり、特に好ましくは4〜45質量%である。
<分散助剤>
本発明の水性インクジェットインキでは、C.I.ピグメントレッド185の分散安定
性及び吐出安定性を著しく向上させるとともに、顔料の微細分散が可能となることで印刷
物の色再現性もまた向上する観点から、上述した分散手法のうち(1)または(2)の方
法を選択する際に、分散助剤を併用してもよい。分散助剤は、顔料に対する、顔料分散樹
脂または界面活性剤の吸着率の向上に寄与する材料である。本発明では、分散助剤として
従来既知の材料を任意に使用でき、特に、色素誘導体と言われる化合物が好適に使用でき
る。色素誘導体とは、有機色素分子内に置換基を導入した化合物であり、前記有機色素と
して、モノアゾ系色素、ジスアゾ系色素、ポリアゾ系色素、アントラキノン系色素、イソ
インドリノン系色素、イソインドリン系色素、キナクリドン系色素、キノフタロン系色素
、ジオキサジン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スレン系色素、チオインジゴ系色
素、ナフタロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素
、ベンズイミダゾロン系色素、金属錯体系色素などが挙げられる。なお上記「色素」は、
顔料及び染料の総称である。
本発明において好適に使用できる色素誘導体として、例えば下記一般式(1)〜(3)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(1):
一般式(1)中、Pはn 1 価の有機色素残基であり、n 1 は1以上の整数、Z 1
スルホン酸基、またはカルボキシル基を表す。n 1 は1〜5であることが好ましく、よ
り好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2、最も好ましくは1である。また、Z 1
スルホン酸基であることが好ましい。
一般式(2):
一般式(2)中、Pはn 2 価の有機色素残基であり、n 2 は1以上の整数、Z 2
SO3 -またはCOO-を、Z 3 は、アルカリ金属カチオン、NH4 +、第1級アンモニウム
カチオン、第2級アンモニウムカチオン、第3級アンモニウムカチオン、または第4級ア
ンモニウムカチオンを表す。n 2 は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜
3、更に好ましくは1〜2、最も好ましくは1である。
一般式(3):
一般式(3)中、Pはn 3 価の有機色素残基であり、n 3 は1以上の整数、R 1
下記一般式(4)で表される有機基を表す。n 3 は1〜5であることが好ましく、より
好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2、最も好ましくは1である。
一般式(4):
一般式(4)中、R 2 は(m+1)価の有機残基を示し、mは1以上の整数、R 3
水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表す。R 2 は炭素数1
〜10のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基である。
またR 3 は全て水素原子であることが好ましい。
なお、上記一般式(1)〜(3)において、有機色素残基(P)の構造は、必ずしもC
.I.ピグメントレッド185の構造と一致する必要はないが、少なくとも、前記C.I
.ピグメントレッド185の部分構造を有している、すなわち、前記有機色素残基(P)
が、モノアゾ系色素残基、または、ベンズイミダゾロン系色素残基であることが好ましい
。これにより、C.I.ピグメントレッド185と吸着しやすくなり、分散安定性向上の
効果が発現しやすくなる。
また、上記一般式(4)で表される色素誘導体を使用する場合、芳香環構造を有する顔
料分散樹脂と併用すると、C.I.ピグメントレッド185を微細化することが可能とな
り、且つ粒度分布を狭くすることができる。その結果、水性インキ内に含まれる粗大粒子
の量が著しく少なくなることから、インクジェットヘッドからの吐出安定性の向上や、分
散安定性の向上が実現できる。また、色再現性等に優れた印刷物を得ることが可能となる
本発明で分散助剤を使用する場合、その配合量は、C.I.ピグメントレッド185の
配合量に対して0.1〜10質量%とすることが好ましく、0.5〜5質量%とすること
が特に好ましい。0.1質量%以上とすることで、C.I.ピグメントレッド185に対
する添加比率が十分な量となり、分散安定性、吐出安定性や印刷物の色再現性が向上する
。また10質量%以下とすることで、顔料微細化が必要以上に進むことがなくなるため、
分散安定性が向上するとともに、印刷物の耐光性の悪化を防止できる。
<バインダー樹脂(A)>
本発明の水性インクジェットインキでは、印刷物の耐擦過性向上のため、バインダー樹
脂(A)を用いる。なお、前記バインダー樹脂(A)として2種類以上の樹脂を併用して
もよいが、その場合、前記2種類以上の樹脂のうち少なくとも1種類は、後述するバイン
ダー樹脂(a−1)である。
本明細書における「バインダー樹脂」とは、印刷物の層(印刷層、インキ層)を記録媒
体に結着させるために使用される樹脂である。後述するように、本発明のインキは顔料分
散樹脂を含んでもよいが、前記顔料分散樹脂とバインダー樹脂とは、顔料に対する吸着率
によって区別される。すなわち、顔料に対する吸着率が、配合量全量に対し50質量%以
上である樹脂を顔料分散樹脂、50質量%未満である樹脂をバインダー樹脂と判断する。
なお、水性インキ中に存在する樹脂が、本明細書におけるバインダー樹脂であるかどう
かを確認する方法として、顔料に対する吸着率を測定する方法がある。例えば、必要に応
じて水で希釈した水性インキに遠心分離処理を施し(例えば、30,000rpmで4時
間)、顔料と上澄み液とに分離する。そして、前記上澄み液に含まれる固形分を測定した
とき、前記固形分が、水性インキ中に含まれる樹脂全量に対して50質量%よりも大きけ
れば、前記樹脂をバインダー樹脂であると判断する。
水性インキ用のバインダー樹脂の形態として、一般に水溶性樹脂と樹脂微粒子とが知ら
れており、本発明ではどちらかを選択して用いてもよいし、両者を組み合わせて使用して
もよい。例えば樹脂微粒子は、水溶性樹脂と比較して高分子量であり、印刷物の耐擦過性
を高めることができるうえ、印刷物の画像品質にも優れる。また、バインダー樹脂として
水溶性樹脂を使用した水性インクジェットインキは、吐出安定性に優れる。なお本明細書
において「水溶性樹脂」とは、上述した水不溶性樹脂ではないもの、すなわち、対象とな
る樹脂の25℃・1質量%水混合液が、肉眼で見て透明であるものを指す。
上記の通り、本発明のインクジェットインキは、バインダー樹脂(A)として、酸価が
1〜80mgKOH/gであるバインダー樹脂(a−1)を含む。また、C.I.ピグメ
ントレッド185の分散安定性を確保し、更に、速やかに気液界面に移動することで画像
品質に優れた印刷物が得られるという観点から、3〜60mgKOH/gであることが好
ましく、特に好ましくは5〜40mgKOH/gである。なおバインダー樹脂(a−1)
の酸価は、上記顔料分散樹脂の酸価と同様に測定することができる。
本発明で用いられるバインダー樹脂(A)の種類としてアクリル樹脂、スチレンアクリ
ル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビ
ニル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、エステル樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられる。中
でも、分散安定性及び吐出安定性に優れたインキが得られるという観点から、バインダー
樹脂(a−1)が、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン・ア
クリル複合樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を使用す
ることが好ましい。また一般に、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂、オレフィ
ン樹脂はガラス転移温度が低いため、プラスチック基材を始めとした非浸透性基材に対す
る密着性や画像品質の観点から、好適に選択される。
バインダー樹脂(A)のガラス転移温度は、要求される特性に応じて、例えば以下のよ
うに選択できる。具体的には、吐出安定性や印刷物の耐擦過性を向上させ、乾燥性や耐ブ
ロッキング(印刷後の記録媒体を重ねた際、印刷層が別の記録媒体に貼りつく現象)性に
も優れたインキを得るためには、前記ガラス転移温度は60〜140℃であることが好ま
しく、70〜135℃であることがより好ましく、80〜130℃であることが特に好ま
しい。
一方で、本発明のインキを、プラスチック基材を始めとした非浸透性基材に対して使用
する場合は、画像品質や密着性の観点から、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂
、及びオレフィン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂、並びに/あるいは、ガ
ラス転移温度が−120〜45℃(好ましくは−80〜25℃であり、より好ましくは−
60〜15℃である)であるアクリル樹脂、及びスチレンアクリル樹脂からなる群から選
択される1種以上の樹脂を用いることが好ましい。
ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定した値であり、例えば以下
のように測定できる。樹脂を乾固したサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、
該アルミニウムパンを試験容器としてDSC測定装置(例えば、島津製作所社製DSC−
60Plus)内のホルダーにセットする。そして5℃/分の昇温条件にて測定を行い、
得られたDSCチャートから読み取ったベースラインシフトの温度を、本明細書における
ガラス転移温度とする。
更に、プラスチック基材に対する密着性、印刷物の耐擦過性、及び、耐ブロッキング性
の観点から、バインダー樹脂(a−1)として、オレフィン樹脂と、アクリル樹脂、スチ
レンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びウレタン・アクリル複合樹脂から選択される1種
以上の樹脂とを含むことが好適である。
バインダー樹脂(A)は、既知の方法により合成することも、市販品を使用することも
できる。またその構造についても特に制限なく、例えばランダム構造、ブロック構造、櫛
形構造、星型構造等を有する樹脂が利用できる。
本発明におけるバインダー樹脂(a−1)として水溶性樹脂を使用する場合、その重量
平均分子量は、インクジェットノズルからの吐出安定性を確保し、様々な記録媒体に対し
て、優れた密着性や耐擦過性を有する印刷物が得られるという観点から、5,000〜5
0,000であることが好ましく、8,000〜45,000であることがより好ましく
、10,000〜40,000であることが更に好ましい。
本発明におけるバインダー樹脂(a−1)の重量平均分子量は、常法によって測定でき
る。例えば、東ソー社製TSKgelカラムと、RI検出器とを装備したGPC測定装置
(東ソー社製HLC−8120GPC)を用い、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリ
スチレン換算値を、本明細書における重量平均分子量とする。
インキ全量に対するバインダー樹脂(A)の含有量は、固形分換算で1〜15質量%で
あることが好ましく、2〜12質量%であることがより好ましく、4〜10質量%である
ことが更に好ましい。バインダー樹脂(A)の量を上記範囲内とすることで、分散安定性
や吐出安定性が低下することなく、印刷物の耐擦過性、乾燥性、更には画像品質に優れた
インキを得ることができる。
また、分散安定性や吐出安定性に優れ、更にはプラスチック基材に対する密着性や画像
品質にも優れるインキが得られるという観点から、バインダー樹脂(a−1)の含有量は
、バインダー樹脂(A)全量に対し20〜100質量%であることが好ましく、より好ま
しくは35〜100質量%であり、特に好ましくは50〜100質量%である。
<界面活性剤>
本発明では、バインダー樹脂(a−1)と組み合わせて使用することで、吐出安定性、
印刷物の画像品質、及び、乾燥性に優れた水性インクジェットインキが得られるという観
点から、界面活性剤を1種以上含む。一般に界面活性剤として、アセチレンジオール系、
アセチレンアルコール系、シロキサン系、アクリル系、フッ素系、ポリオキシアルキレン
系等、用途に合わせて様々なものが知られているが、本発明の水性インクジェットインキ
は、アセチレンジオール系及び/またはシロキサン系の界面活性剤を含むことが好ましく
、シロキサン系の界面活性剤を含むことが特に好ましい。アセチレンジオール系界面活性
剤及びシロキサン系界面活性剤は、記録媒体に着弾した後の水性インキ液滴中で、前記液
滴中に存在するC.I.ピグメントレッド185の影響を受けることなく、速やかに界面
に配向すると考えられる。その結果、非浸透性基材上であっても水性インキの濡れ性の向
上、及び、前記インキ液滴の速やかな平滑化が実現でき、乾燥性の向上に加え、液滴同士
のにじみや濃淡ムラが少ない、画像品質に優れた印刷物を得ることが可能となる。またシ
ロキサン系界面活性剤を使用した場合、上記に加えて、印刷物の耐擦過性もまた向上する
。特に本発明では、詳細は不明ながら、上記特性の向上に加え、吐出安定性にも優れた水
性インキが得られることから、アセチレンジオール系界面活性剤と、シロキサン系界面活
性剤とを併用することが好適である。
本発明で用いられるアセチレンジオール系界面活性剤として、例えば、2,4,7,9
−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6
−ドデシン−5,8−ジオール、ヘキサデカ−8−イン−7,10−ジオール、6,9−
ジメチル−テトラデカ−7−イン−6,9−ジオール、7,10−ジメチルヘキサデカ−
8−イン−7,10−ジオール、及び、そのエチレンオキサイド及び/またはプロピレン
オキサイド付加物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また本発明で好適に使用できるシロキサン系界面活性剤として、例えば、1個以上のエ
チレンオキサイド基及び/または1個以上のプロピレンオキサイド基を、ポリジメチルシ
ロキサン鎖の側鎖及び/または両末端に有するシロキサン系界面活性剤が挙げられる。具
体的には、東レ・ダウコーニング社製の8032ADDITIVE、FZ−2104、F
Z−2120、FZ−2122、FZ−2162、FZ−2164、FZ−2166、F
Z−2404、FZ−7001、FZ−7002、FZ−7006、L−7001、L−
7002、SF8427、SF8428、SH3748、SH3749、SH3771M
、SH3772M、SH3773M、SH3775M、SH8400、ビックケミー社製
のBYK−331、BYK−333、BYK−345、BYK−346、BYK−347
、BYK−348、BYK−349、BYK−UV3500、BYK−UV3510、B
YK−UV3530、BYK−UV3570、エボニック社製のTEGOWet250、
TEGOWet260、TEGOWet270、TEGOWet280、TEGOGli
de410、TEGOGlide432、TEGOGlide435、TEGOGlid
e440、TEGOGlide450、信越化学工業社製のKF−351A、KF−35
2A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−640
、KF−642、KF−643、KF−644、KF−945、KF−6011、KF−
6012、KF−6015、KF−6017、KF−6020、KF−6204、X−2
2−4515、日信化学工業社のシルフェイスSAGシリーズ等が挙げられる。
また本発明で好適に使用できるポリオキシアルキレン系界面活性剤として、例えば、下
記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
一般式(1):

R−O−(EO)m−(PO)n−H
上記一般式(1)において、Rは、炭素数8〜22であるアルキル基、炭素数8〜22
であるアルケニル基、炭素数8〜22であるアルキルカルボニル基、または、炭素数8〜
22であるアルケニルカルボニル基を表す。なお上記Rは、分岐構造であってもよい。ま
た、EOはエチレンオキサイド基を、POはプロピレンオキサイド基を表す。mはEOの
平均付加モル数を示し、2〜50の数であり、nはPOの平均付加モル数を示し、0〜5
0の数である。なおnが0でない場合、(EO)mと(PO)nの付加順序は問わず、付
加はブロックでもランダムでもよい。
本発明で使用される界面活性剤は、分子中で疎水性基と親水性基とに分かれて存在して
いることが好適である。そのため、上記に例示した界面活性剤の中でも、親水性であるエ
チレンオキサイド基を有しているものが特に好適に選択される。
また、バインダー樹脂(a−1)との親和性を高め、分散安定性及び吐出安定性に優れ
たインキが得られるとともに、にじみや濃淡ムラのない画像品質に優れた印刷物が得られ
るという観点から、HLB値が0〜5である界面活性剤を使用することが好適であり、前
記HLB値が0〜4である界面活性剤を含むことが特に好適である。
特に、分散安定性や吐出安定性に加え、プラスチック基材等の非浸透性基材上で、イン
キ液滴同士のにじみや濃淡ムラの少ない、優れた画像品質を有する印刷物が得られる観点
から、HLB値が0〜5(好ましくは0〜4)である界面活性剤と、HLB値が6〜18
(好ましくは7〜18、特に好ましくは8〜16)である界面活性剤とを併用することが
好ましい。
なお、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値とは
、材料の親水・疎水性を表すパラメータの一つであり、小さいほど疎水性が高く、大きい
ほど親水性が高いことを表す。化学構造からHLB値を算出する方法は種々知られており
、また実測する方法も様々知られているが、本発明では、アセチレンジオール系界面活性
剤やポリオキシアルキレン系界面活性剤のように、化合物の構造が明確に分かる場合は、
グリフィン法を用いてHLB値の算出を行う。なおグリフィン法とは、対象の材料の分子
構造と分子量を用いて、下記式(2)を用いてHLB値を算出する方法である。
式(2):

HLB値=20×(親水性部分の分子量の総和)÷(材料の分子量)
一方、シロキサン系界面活性剤のように、構造不明の化合物が含まれる場合は、例えば
「界面活性剤便覧」(西一郎ら編、産業図書株式会社、1960年)のp.324に記載
されている以下方法によって、界面活性剤のHLB値を実験的に求めることができる。具
体的には、界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させたのち、前記溶解液を25
℃下で攪拌しながら、2質量%フェノール水溶液で滴定し、液が混濁したところを終点と
する。終点までに要した前記フェノール水溶液の量をA(mL)としたとき、下記式(3
)によってHLB値が算出できる。
式(3):

HLB値=0.89×A+1.11
本発明のインクジェットインキにおける界面活性剤(B)の含有量は、インキ全量に対
して0.2〜4質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜2質量%である。
<水溶性有機溶剤>
本発明の水性インクジェットインキは、水溶性有機溶剤を含む。本発明では、水溶性有
機溶剤として、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ポリアルキレングリコー
ル系溶剤等を好適に使用できる。なお本明細書における「水溶性有機溶剤」とは、25℃
・1気圧下において、水に対する溶解度が5g/100gH 2 O以上であり、かつ、液
体であるものを指す。また、後述するpH調整剤のうち、前記条件を満たすものは、水溶
性有機溶剤にも含めるものとする。
なお上記の通り、本発明の水性インクジェットインキは、1気圧下における沸点が24
0℃以上である水溶性有機溶剤の含有量が、水性インクジェットインキ全量に対し8質量
%以下である(0質量%であってもよい)。特に、プラスチック基材等の非浸透性基材に
対して、優れた乾燥性、画像品質、耐擦過性を有する印刷物を得るという観点から、1気
圧下における沸点が240℃以上である水溶性有機溶剤の含有量は5質量%以下である(
0質量%であってもよい)ことがより好ましく、2質量%以下である(0質量%であって
もよい)ことが更に好ましく、1質量%以下である(0質量%であってもよい)ことが特
に好ましい。
なお、1気圧下での沸点は、DSC(示差走査熱量分析)などの熱分析装置を用いるこ
とで測定できる。
1気圧下における沸点が240℃以上である水溶性有機溶剤を例示すると、グリセリン
、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレング
リコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチ
レングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ト
リプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、2−ピロリドン、ε−カプロラ
クトン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレン
グリコール600等が挙げられる。
本発明で用いられる水溶性有機溶剤は、1気圧下における沸点の加重平均値が100〜
235℃であることが好ましく、120〜210℃であることが更に好ましく、120〜
195℃であることが特に好ましい。また、プラスチック基材等の非浸透性基材に対する
画像品質を考慮すれば、120〜180℃であることが特に好適である。水溶性有機溶剤
の1気圧下における沸点の加重平均値が100℃以上であれば、インクジェットヘッドか
らの吐出安定性が良化する。また加重平均値が235℃以下であれば、記録媒体上で乾燥
不良を起こすことなく、また残存した水溶性有機溶剤によって、水性インキ液滴同士のに
じみ等を引き起こすことがなくなり画像品質が良化するうえ、プラスチック基材を始めと
した非浸透性基材に対する密着性や、印刷物の耐擦過性も向上する。なお、上記沸点の加
重平均値の算出には、上記の1気圧下での沸点が240℃以上である水溶性有機溶剤も含
めるものとする。また、上記1気圧下における沸点の加重平均値は、それぞれの水溶性有
機溶剤について算出した、1気圧下での沸点と、水溶性有機溶剤全量に対する質量割合と
の乗算値を、足し合わせることで得られる値である。
また、水溶性有機溶剤の沸点の加重平均値を上記範囲に収める観点から、1気圧下にお
ける沸点が100〜220℃である水溶性有機溶剤の配合量が、インキ中の水溶性有機溶
剤全量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより
好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。
本発明で好適に用いられる水溶性有機溶剤を例示すると、
1価アルコール系溶剤として、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1
−ブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、イソブタノール、3−メトキシ−1−
ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等が、
2価アルコール系溶剤(ジオール系溶剤)として、エチレングリコール、1,2−プロ
パンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジ
オール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、
1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2
−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、
3−メチル−1,3−ブタンジオール等が、
3価以上のアルコール系溶剤(ポリオール系溶剤)として、1,2,4−ブタントリオ
ール、ジグリセリン等が、
グリコールエーテル系溶剤として、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレン
グリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレン
グリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレ
ングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル
、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエ
ーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブ
チルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール
モノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコール
ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチ
ルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコ
ールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコ
ールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチ
レングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル
、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエー
テル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチ
ルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチ
ルエーテル等が、
ポリアルキレングリコール系溶剤として、ジプロピレングリコール等が、
鎖状アミド系溶剤として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル−β−メ
トキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−
ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオ
ンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β
−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオ
ンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β
−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N
,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシ
プロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミド等が、
環状アミド系溶剤として、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等が、
環状カルバメート系溶剤として、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2
−オキサゾリジノン等が、
それぞれ挙げられるが、これらに限定されない。
本発明で用いられる水溶性有機溶剤は、画像品質及び乾燥性に優れる印刷物が得られ、
バインダー樹脂(a−1)や界面活性剤との相溶性に優れ、更には、前記水溶性有機溶剤
自体の粘度が低く吐出安定性にも優れた水性インキが得られるという観点から、水酸基を
1個または2個有する水溶性有機溶剤が好適に選択される。中でも、詳細は不明ながら、
C.I.ピグメントレッド185の分散安定性に悪影響を及ぼしにくいという観点から、
水酸基を2個有する水溶性有機溶剤、すなわち、ジオール系溶剤が特に好適に選択される
またジオール系溶剤の中でも、少なくとも炭素数2〜5のアルカンジオールを1種以上
使用することが好ましく、より好ましくは炭素数3〜4のアルカンジオールであり、特に
好ましくは炭素数3のアルカンジオールである。
本発明で用いられる水溶性有機溶剤の含有量は、インクジェットインキ全量に対し1〜
30質量%であることが好ましい。またインクジェットヘッド上で吐出安定性を確保し、
非浸透性機材であっても優れた密着性、乾燥性、画像品質を有する印刷物が得られるとい
う観点から、3〜27質量%以下であることがより好ましく、5〜25質量%以下である
ことが特に好ましい。
<水>
本発明の水性インクジェットインキに含まれる水は、種々のイオンを含有する一般の水
ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。またその含有量は、イ
ンキ全質量中20〜90質量%の範囲であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明の水性インクジェットインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値
を持つインキとするためにpH調整剤を添加することができる。pH調整剤として利用で
きる化合物として、例えば、
アルカノールアミンとして、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエ
タノール、アミノメチルプロパノールなどが、
その他の含窒素化合物として、アンモニア水、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ト
リエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、尿素、ピペリジンなどが、
アルカリ金属の水酸化物として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
などが、
アルカリ金属の炭酸塩として、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、
炭酸カリウムなどが、
酸性化合物として、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハ
ク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グル
タミン酸などが、
それぞれ挙げられるが、これらに限定されない。上記のpH調整剤は単独で用いてもよい
し、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の配合量は、水性インクジェットインキ全量に対し0.01〜5質量%であ
ることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましく、0.2〜1.5質量%
であることが最も好ましい。
また本発明の水性インクジェットインキは、上記の成分の他に、所望の物性値を持つイ
ンキとするために、消泡剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などの添加剤を必要に
応じて適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量は、インキの全質量に対し
て、0.01〜10質量%が好適である。
なお、本発明の水性インクジェットインキは重合性単量体を実質的に含まないことが好
ましい。
<含窒素化合物のpKa値>
上記の通り、本発明の水性インクジェットインキには、水溶性有機溶剤及び/またはp
H調整剤として、含窒素化合物が使用できる。一方で、使用する含窒素化合物によっては
、C.I.ピグメントレッド185の分散安定性や吐出安定性に悪影響を及ぼす可能性が
あることから、本発明においては、その量を制限することが好適である。
具体的には、鎖状アミド系溶剤、環状アミド系溶剤、環状カルバメート系溶剤の配合量
の総量を、水性インクジェットインキ全量に対して3質量%以下(0質量%であってもよ
い)とすることが好ましく、1質量%以下(0質量%であってもよい)とすることが更に
好ましい。詳細な理由は不明ながら、これらの化合物を大量に配合すると、分散安定性や
吐出安定性が悪化する傾向がある。
また、前記以外の化合物であっても、25℃におけるpKa値が2以下(好ましくは、
前記pKa値が4以下)、または、10以上(好ましくは、前記pKa値が9.5以上)
である含窒素化合物は、その配合量の総量を、水性インクジェットインキ全量に対して3
質量%以下(0質量%であってもよい)とすることが好ましく、1質量%以下(0質量%
であってもよい)とすることが特に好ましい。これらの化合物は酸性または塩基性が強く
、やはり分散安定性や吐出安定性に悪影響を及ぼす恐れがあるためである。
なお、本発明のpKa値は既知の方法、例えば電位差滴定法によって測定できる。また
、25℃におけるpKa値が2以下である含窒素化合物の例として、尿素(pKa値=0
.2)が挙げられ、また、25℃におけるpKa値が10以上である含窒素化合物の例と
して、シクロヘキシルアミン(pKa値=10.6)、モノエチルアミン(pKa値=1
0.7)、ジエチルアミン(pKa値=11.0)、トリエチルアミン(pKa値=10
.7)、ピペリジン(pKa値=11.2)が挙げられる。
<水性インクジェットインキの製造方法>
上記したような成分からなる本発明の水性インクジェットインキは、既知の方法によっ
て製造できる。特に、分散安定性及び吐出安定性に優れたインキが得られる点から、C.
I.ピグメントレッド185を含む顔料分散液をあらかじめ製造したのち、前記顔料分散
液、バインダー樹脂(a−1)、界面活性剤等を混合する、という製造方法が好適に選択
される。以下に本発明の水性インクジェットインキの製造方法の例を説明するが、上記の
通り、前記製造方法は以下に限定されるものではない。
(1)顔料分散液の製造
(1−1)水溶性の顔料分散樹脂を用いて分散処理する方法
顔料分散樹脂として水溶性樹脂を用いる場合、前記顔料分散樹脂と水と、必要に応じて
水溶性有機溶剤とを混合・攪拌し、顔料分散樹脂水溶液を作製する。前記顔料分散樹脂水
溶液に、C.I.ピグメントレッド185を添加し、混合・攪拌(プレミキシング)した
後、分散機を用いて分散処理を行う。その後、必要に応じて遠心分離、濾過や、固形分の
調整を行い、顔料分散液を得る。
(1−2)水不溶性の顔料分散樹脂を用いて分散処理する方法
また、水不溶性樹脂である顔料分散樹脂により被覆された、C.I.ピグメントレッド
185の分散液を製造する場合、あらかじめ、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に顔料
分散樹脂を溶解させ、必要に応じて前記顔料分散樹脂を中和した、顔料分散樹脂溶液を作
製する。前記顔料分散樹脂溶液に、C.I.ピグメントレッド185と、水とを添加し、
混合・攪拌(プレミキシング)した後、分散機を用いて分散処理を行う。その後、減圧蒸
留により前記有機溶媒を留去し、必要に応じて、遠心分離、濾過や、固形分の調整を行い
、顔料分散液を得る。
上記方法(1−1)及び(1−2)において、C.I.ピグメントレッド185の分散
処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよいが、
例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザーなどが挙げ
られる。上記の中でもビーズミルが好ましく使用され、具体的にはスーパーミル、サンド
グラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル
などの商品名で市販されている。
上記方法(1−1)及び(1−2)において、顔料分散液の粒度分布を制御する方法と
して、上記に挙げた分散機の粉砕メディアのサイズを調整すること、粉砕メディアの材質
を変更すること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、攪拌部材(アジテータ)の形
状を変更すること、分散処理時間を長くすること、分散処理後フィルターや遠心分離機な
どで分級すること、及びこれらの手法の組み合わせが挙げられる。顔料を好適な粒度範囲
に収めるためには、上記分散機の粉砕メディアの直径を0.1〜3mmとすることが好ま
しい。また粉砕メディアの材質として、ガラス、ジルコン、ジルコニア、チタニアが好ま
しく用いられる。
(1−3)顔料分散樹脂を用いて摩砕混練処理する方法
更に本発明では、以下に示す、摩砕混練処理による方法も好適に利用できる。C.I.
ピグメントレッド185、顔料分散樹脂、水溶性有機溶剤、無機塩を、混練機により混練
したのち、得られた混合物に水を添加し、混合・攪拌する。そして、遠心分離、濾過、洗
浄によって、無機塩、及び、必要に応じて水溶性有機溶剤を除去し、更に固形分の調整を
行い、顔料分散液を得る。
上記方法(1−3)において使用される混練機は、一般に使用される分散機ならいかな
るものでもよいが、高粘度の混合物が混練でき、微細な顔料を含む顔料分散液となること
で、画像品質や色再現性に優れる印刷物が得られる点から、ニーダーまたはトリミックス
が好ましく使用される。なお、混練時の温度を調整することで、得られる顔料分散液の粒
度分布を制御することができる。
また前記無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリ
ウム、硫酸カリウム等が好適に使用できる。
(2)水性インクジェットインキの調製
上記で得られた顔料分散液に、バインダー樹脂(a−1)、界面活性剤、水溶性有機溶
剤、水、及び必要に応じて上記で挙げたpH調整剤やその他の添加剤を加え、攪拌・混合
する。なお、必要に応じて前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱しながら攪拌・混合
してもよい。
(3)粗大粒子の除去
上記混合物に含まれる粗大粒子を、濾過分離、遠心分離などの手法により除去し、水性
インクジェットインキとする。濾過分離の方法としては、既知の方法を適宜用いることが
できるが、フィルターを使用する場合、その開孔径は、好ましくは0.3〜5μm、より
好ましくは0.5〜3μmである。また濾過を行う際は、フィルターは単独種を用いても
、複数種を併用してもよい。
<水性インクジェットインキの特性>
本発明の水性インクジェットインキは、25℃における粘度を3〜20mPa・sに調
整することが好ましい。この粘度領域であれば、通常の4〜10KHzの周波数を有する
ヘッドから10〜70KHzの高周波数のヘッドにおいて、安定した吐出特性を示す。特
に、25℃における粘度を4〜10mPa・sとすることで、600dpi以上の設計解
像度を有するインクジェットヘッドに対して用いても、安定的に吐出させることができる
。なお、上記粘度は常法により測定することができる。具体的にはE型粘度計(東機産業
社製TVE25L型粘度計)を用い、インキ1mLを使用して測定することができる。
また、安定的に吐出できる水性インクジェットインキにするとともに、画像品質に優れ
た印刷物が得られる点から、本発明の水性インクジェットインキは、25℃における静的
表面張力が18〜35mN/mであることが好ましく、20〜32mN/mであることが
特に好ましい。なお、静的表面張力は25℃の環境下において、Wilhelmy法によ
り測定された表面張力を指し、例えば協和界面科学社製CBVP−Zを用い、白金プレー
トを使用して測定できる。
更に、記録媒体に着弾した後、速やかに界面活性剤が配向し、記録媒体上で好適な濡れ
性を得ることで優れた画像品質を得るという観点から、本発明のインクジェットインキは
、最大泡圧法による、10ミリ秒における動的表面張力が26〜36mN/mであること
が好ましく、より好ましくは28〜36mN/mであり、特に好ましくは30〜36mN
/mである。なお、本明細書における動的表面張力は、例えばKruss社製バブルプレ
ッシャー動的表面張力計BP100を用いて、25℃環境下で測定できる。
本発明の水性インクジェットインキは、優れた発色性を有する印刷物を得るために、顔
料の平均二次粒子径(D50)を40〜500nmとすることが好ましく、より好ましく
は50〜400nmであり、特に好ましくは60〜300nmである。平均二次粒子径を
上記好適な範囲内に収めるためには、上記のように顔料分散処理工程を制御すればよい。
なお、顔料の平均二次粒子径(D50)とは、粒度分布測定機(例えばマイクロトラック
・ベル社製マイクロトラックUPAEX−150)を用い、動的光散乱法によって測定さ
れるメジアン径を表す。
<水性インクジェットインキのセット>
本発明の水性インクジェットインキは単色で使用してもよいが、用途に合わせて複数の
色を組み合わせた水性インクジェットインキのセットとして使用することもできる。中で
も、イエローインキ及び/またはマゼンタインキと組み合わせて使用することで、特にレ
ッド領域の色再現性に優れた印刷物を得ることができる。また、ブラックインキを追加す
ることで黒色感を向上させ、文字などの視認性を上げることができる。更に、白色以外の
記録媒体へ印刷を行う際には、ホワイトインキを併用することで鮮明な画像を得ることが
できる。
<インキ−前処理液セット>
本発明の水性インクジェットインキは、凝集剤を含む前処理液と組み合わせ、インキ−
前処理液セットの形態で使用することもできる。凝集剤を含む前処理液を記録媒体上に付
与することで、水性インクジェットインキ中に含まれる固体成分を意図的に凝集させる層
(インキ凝集層)を形成することができる。そして前記インキ凝集層上に水性インクジェ
ットインキを着弾させることで、インキ液滴間のにじみや色ムラを防止し、印刷物の画像
品質を著しく向上させることができる。更に、前処理液に使用する材料によっては、印刷
物の密着性、耐擦過性、耐ブロッキング性もまた向上できる。
本明細書における「凝集剤」とは、水性インクジェットインキに含まれる、顔料や樹脂
微粒子の分散状態を破壊し凝集させる、及び/または、水溶性樹脂を不溶化し前記水性イ
ンクジェットインキを増粘させることができる成分を意味する。本発明の水性インクジェ
ットインキと組み合わせる前処理液に使用する凝集剤としては、画像品質を著しく向上で
きる観点から、金属塩及びカチオン性高分子化合物から選ばれる1種以上を含むことが好
ましい。中でも、優れた画像品質を得るという観点から、前記凝集剤として金属塩を使用
することが好ましく、Ca 2+ 、Mg 2+ 、Zn 2+ 、Al 3+ からなる群から選択され
る多価金属イオンの塩を含むことが特に好ましい。なお、凝集剤として金属塩を使用する
場合、その含有量は、前処理液全量に対し、2〜30質量%であることが好ましく、3〜
25質量%であることが特に好ましい。
その他前処理液には、有機溶剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤などを適宜
に添加することができる。それぞれ、具体的に使用できる材料は、上記水性インクジェッ
トインキの場合と同様である。
なお、前処理液の静的表面張力は、本発明の水性インクジェットインキと組み合わせて
使用した際に、画像品質に優れた印刷物が得られるという観点から、20〜45mN/m
であることが好ましく、23〜40mN/mであることがより好ましい。特に好ましくは
25〜37mN/mである。なお前処理液の静的表面張力は、水性インクジェットインキ
の静的表面張力と同様の方法で測定できる。
<インクジェット記録方法>
本発明の水性インクジェットインキは、インクジェットヘッドから吐出して記録媒体上
に付与する記録方法に使用される。
前記インクジェット記録方法におけるパス方式として、記録媒体に対しインクジェット
インキを1回だけ吐出して記録するシングルパス方式、及び、前記記録媒体の搬送方向と
直行する方向に、短尺のシャトルヘッドを往復走査させながら吐出・記録を行うシリアル
方式、のどちらを採用してもよい。ただし、シリアル方式の場合、前記インクジェットヘ
ッドの動きを加味して吐出タイミングを調整する必要があり、着弾位置のずれが生じやす
い。そのため、本発明の水性インクジェットインキを印刷する際は、シングルパス方式、
特に、固定されたインクジェットヘッドの下部に記録媒体を通過させるパス方式が好まし
く用いられる。
インキを吐出する方式にも特に制限は無く、既知の方式、例えば、ピエゾ素子の振動圧
力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、インキを加熱して気泡を形
成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット[登録商標])方
式等が利用できる。
また、インクジェットヘッドから吐出されるインキの液滴量は、乾燥負荷の軽減効果が
大きく、また色再現性やその他の画像品質の向上という点からも、0.2〜30ピコリッ
トルであることが好ましく、1〜20ピコリットルであることがより好ましい。
本発明の水性インクジェットインキを、インクジェット印刷方式により記録媒体上に付
与した後、前記記録媒体上のインキの乾燥機構を備えていることが好ましい。前記乾燥機
構で用いられる乾燥方法として、加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線(例えば波長700〜
2500nmの赤外線)乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法などが挙げられる。
本発明では、インキ中の液体成分の突沸を防止し、色再現性や画像品質に優れた印刷物
を得る観点から、加熱乾燥法を採用する場合は乾燥温度を35〜100℃とすることが、
また熱風乾燥法を採用する場合は熱風温度を50〜250℃とすることが、それぞれ好ま
しい。また同様の観点から、赤外線乾燥法を採用する場合は、赤外線照射に用いる赤外線
の全出力の積算値の50%以上が、700〜1500nmの波長領域に存在することが好
ましい。
また上記乾燥方法は、単独で用いてもよいし、複数を続けて使用してもよいし、同時に
併用してもよい。例えば加熱乾燥法と熱風乾燥法を併用することで、それぞれを単独で使
用したときよりも素早く、インキを乾燥させることができる。
<記録媒体>
本発明のインキを印刷する記録媒体は、特に限定されるものではなく、既知のものを任
意に使用できる。中でも、非浸透性基材または難浸透性基材が好適であり、特に非浸透性
基材に対して好適に使用できる。なお本明細書では、記録媒体の浸透性は、動的走査吸液
計によって測定される吸水量によって判断するものとする。具体的には、下記方法によっ
て測定される、接触時間100msecにおける純水の吸水量が、1g/m 2 未満であ
る記録媒体を「非浸透性基材」とし、1〜10g/m 2 である記録媒体を「難浸透性基
材」とする。
記録媒体の吸水量は、例えば以下の条件で測定できる。動的走査吸液計として、熊谷理
機工業社製KM500winを使用し、23℃・50%RHの条件下、15〜20cm角
程度にした記録媒体を用いて、以下に示す条件で、純水の転移量を測定する。
・測定方法:螺旋走査(Spiral Method)
・測定開始半径:20mm
・測定終了半径:60mm
・接触時間:10〜1,000msec
・サンプリング点数:19(接触時間の平方根に対してほぼ等間隔になるよう測定)
・走査間隔:7mm
・回転テーブルの速度切替角度:86.3度
・ヘッドボックス条件:幅5mm、スリット幅1mm
非浸透性基材または難浸透性基材の例として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタ
レート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニ
ルアルコールの様なプラスチック基材、コート紙、アート紙、キャスト紙のような塗工紙
基材、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタンの様な金属基材、ガラス基材などが挙げら
れる。上記の基材は印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良
いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、これらの記録媒体の2種以
上を互いに張り合わせたものでも良い。更に印字面の反対側に剥離粘着層などを設けても
良く、また印字後、印字面に粘着層などを設けても良い。また本発明のインクジェット記
録方法で使用される記録媒体の形状は、ロール状でも枚葉状でもよい。
なお、本発明の水性インクジェットインキの濡れ性を向上し、画像品質や乾燥性を向上
させ、また、印刷物表面が均一化するため耐擦過性や密着性もまた向上できるため、上記
に例示した非浸透性基材または難浸透性基材に対し、コロナ処理やプラズマ処理といった
表面改質方法を施すことも好ましい。
<コーティング処理>
本発明のインキセットを用いて作製した印刷物は、必要に応じて、印刷面をコーティン
グ処理してもよい。前記コーティング処理の具体例として、コーティング用組成物の塗工
・印刷や、ドライラミネート法、無溶剤ラミネート法、押出しラミネート法などによるラ
ミネート加工などが挙げられ、いずれかを選択してもよいし、両者を組み合わせても良い
なお、コーティング用組成物を塗工・印刷することによって印刷物にコーティング処理
を施す場合、その塗工・印刷方法として、インクジェット印刷のように記録媒体に対して
非接触で印刷する方式と、記録媒体に対し前記コーティング用組成物を当接させて印刷す
る方式のどちらを採用してもよい。また、コーティング用組成物を記録媒体に対して非接
触で印刷する方式を選択する場合、前記コーティング用組成物として、本発明の水性イン
クジェットインキから顔料を除外した、実質的に着色剤成分を含まないインキ(クリアイ
ンキ)を使用することが好適である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の記載に
おいて、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%
」を表す。
<顔料分散樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4
部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体として
アクリル酸30部、スチレン35部、ラウリルメタクリレート35部、及び、重合開始剤
としてV−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った
。滴下終了後、110℃で3時間反応させた後、V−601を0.6部添加し、更に11
0℃で1時間反応を継続した。その後、反応系を室温まで冷却した後、ジメチルアミノエ
タノールを39部添加して中和したのち、水を100部添加した。その後、混合溶液を1
00℃以上に加熱してブタノールを留去したのち、水を用いて固形分が30%になるよう
に調整することで、顔料分散樹脂1の水溶液(固形分30%)を得た。なお、上記に記載
した方法で測定した、顔料分散樹脂1の重量平均分子量は16,000、酸価は230で
あった。
<顔料分散樹脂2の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルエチルケトン
95部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱し、重合性単量体とし
てスチレン70部、アクリル酸5部、メチルメタクリレート10部、ポリプロピレングリ
コールメタクリレート(日油社製ブレンマーPP−500)15部、及び、重合開始剤と
してV−65(和光純薬製)3.5部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行った
。滴下終了後、80℃で1時間反応させた後、V−65を0.7部添加し、更に80℃で
4時間反応を継続した。その後、メチルエチルケトン25部を加え、反応系を常温まで冷
却したのち、メチルエチルケトンを用いて固形分が30%になるように調整することで、
顔料分散樹脂2のメチルエチルケトン溶液(固形分30%)を得た。なお、上記に記載し
た方法で測定した、顔料分散樹脂2の重量平均分子量は26,000、酸価は30であっ
た。
<顔料分散樹脂3の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ジエチレングリコー
ル100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量
体としてアクリル酸20部、ベンジルメタクリレート60部、メトキシポリエチレングリ
コールメタクリレート(日油社製ブレンマーPME−1000)20部、及び、重合開始
剤としてパーブチルO(日油社製)5部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行っ
た。滴下終了後、110℃で1時間反応させた後、反応系を室温まで冷却し、ジエチレン
グリコールを加えて固形分が30%になるように調整することで、顔料分散樹脂3のジエ
チレングリコール溶液(固形分30%)を得た。なお、上記に記載した方法で測定した、
顔料分散樹脂3の重量平均分子量は13,000、酸価は155であった。
<分散助剤1の製造例>
特開2017−21091号明細書の段落番号0180〜0181に記載された方法に
従い、ベンズイミダゾロン系色素誘導体である、分散助剤1を得た。
<レッド顔料分散液1の製造例>
攪拌器を備えた混合容器に、クラリアント社製NOVOPERM CARMINE H
F4C(C.I.ピグメントレッド185)20部と、顔料分散樹脂1の水性化溶液(固
形分30%)20部と、水60部とを、順次投入したのち、プレミキシングを行った。そ
の後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した、容積0.6Lのダイノ
ーミルを用いて本分散を行うことで、レッド顔料分散液1(顔料濃度20%)を得た。
<レッド顔料分散液2の製造例>
攪拌器を備えた混合容器に、クラリアント社製NOVOPERM CARMINE H
F4C(C.I.ピグメントレッド185)20部と、顔料分散樹脂1の水性化溶液(固
形分30%)20部と、上記で製造した分散助剤1を0.8部と、水59.2部とを、順
次投入したのち、プレミキシングを行った。その後、直径0.5mmのジルコニアビーズ
1800gを充填した、容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行うことで、レッ
ド顔料分散液2(顔料濃度20%)を得た。
<レッド顔料分散液3の製造例>
攪拌器を備えた混合容器に、顔料分散樹脂2のメチルエチルケトン溶液(固形分30%
)20部と、メチルエチルケトン8部とを投入したのち、攪拌しながら、水50部と、ジ
メチルアミノエタノール0.3部とを更に投入し、30分間攪拌した。次いで、クラリア
ント社製NOVOPERM CARMINE HF4C(C.I.ピグメントレッド18
5)を20部加え、プレミキシングを行った。その後、直径0.5mmのジルコニアビー
ズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行った。次いで、
得られた分散液を取り出し、水を15部加えたのち、エバポレータを用いて、メチルエチ
ルケトンを減圧留去した。その後、固形分濃度が26%になるように調整することで、レ
ッド顔料分散液3(顔料濃度20%)を得た。
<レッド顔料分散液4の製造例>
クラリアント社製NOVOPERM CARMINE HF4C(C.I.ピグメント
レッド185)25部と、塩化ナトリウム125部と、顔料分散樹脂3のジエチレングリ
コール溶液29.部と、ジエチレングリコール4.9部とを、ステンレス製ニーダーに投
入したのち、80℃で3時間、混練処理を行った。この混合物を、あらかじめ水716部
が添加された、攪拌器を備えた混合容器に投入したのち、約40℃に加熱しながら1時間
攪拌し、スラリー混合物を得た。その後、濾過及び水洗を繰り返すことで、塩化ナトリウ
ム及びジエチレングリコールを除去し、更に減圧下で水の一部を留去し、また必要に応じ
て水を加え、固形分濃度が27%になるように調整することで、レッド顔料分散液5(顔
料濃度20%)を得た。
<レッド顔料分散液5の製造例>
クラリアント社製NOVOPERM CARMINE HF4C(C.I.ピグメント
レッド185)25部と、塩化ナトリウム125部と、東洋アドレ社製セラマー1608
(オレフィンマレイン酸樹脂)8.8部と、ジエチレングリコール15.2部とを、ステ
ンレス製ニーダーに投入したのち、80℃で3時間、混練処理を行った。この混合物を、
あらかじめ水726部が添加された、攪拌器を備えた混合容器に投入したのち、約40℃
に加熱しながら1時間攪拌し、スラリー混合物を得た。その後、濾過及び水洗を繰り返す
ことで、塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去し、更に減圧下で水の一部を留
去し、また必要に応じて水を加え、固形分濃度が27%になるように調整することで、レ
ッド顔料分散液5(顔料濃度20%)を得た。
<マゼンタ顔料分散液1〜2、バイオレット顔料分散液1の製造例、>
以下に示す顔料を使用した以外は、上記レッド顔料分散液1と同様にして、マゼンタ顔
料分散液1〜2、及び、バイオレット顔料分散液1(いずれも顔料濃度20%)を得た。
・マゼンタ顔料分散液1:Ink Jet Magenta E−S
(クラリアント社製C.I.ピグメントレッド122)
・マゼンタ顔料分散液2:Cinquasia Magenta K 4535
(BASF社製C.I.ピグメントレッド202)
・バイオレット顔料分散液1:Cromophtal Violet L 5805
(BASF社製C.I.ピグメントバイオレット23)
<バインダー樹脂1〜8(水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレンアクリル樹脂)の製造例

ブタノールに滴下した混合物の構成(重合性単量体の種類・量、及び、V−601の量
)、110℃で3時間反応させた後に添加したV−601の量、及び、中和に使用したジ
メチルアミノエタノールの量を、表1記載のように変更した以外は、上記顔料分散樹脂1
と同様の操作によって、水溶性アクリル樹脂、または、水溶性スチレンアクリル樹脂であ
る、バインダー樹脂1〜8の水溶液(固形分30%)を得た。
なお表1には、バインダー樹脂1〜8の酸価、ガラス転移温度、重量平均分子量も記載
した。また、表1に記載された重合性単量体の略称は、以下の通りである。
・St:スチレン
・MAA:メタクリル酸
・MMA:メチルメタクリレート
・BA:ブチルアクリレート
・STMA:ステアリルメタクリレート
<バインダー樹脂9〜11(スチレンアクリル樹脂微粒子)の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、水40部、及び、界
面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬製)0.2部を仕込み、界面活性剤
水溶液を作成した。また別の混合容器に、重合性単量体としてブチルアクリレート69部
、スチレン30部、メタクリル酸1部、界面活性剤としてアクアロンKH−10を1.8
部、及び、水51.2部を投入し、よく混合してエマルジョン前駆体を作製した。
作製したエマルジョン前駆体のうちの1.5部を、界面活性剤水溶液を含む反応容器に
添加し、よく混合した。次いで、前記反応容器内を60℃に昇温し、窒素ガスで置換した
後、過硫酸カリウム5%水溶液1部と、無水重亜硫酸ナトリウム1%水溶液0.2部とを
添加し、反応容器内を60℃に保持したまま、重合反応を開始した。60℃で5分間反応
させた後、上記エマルジョン前駆体の残分(151.5部)、過硫酸カリウム5%水溶液
9部、及び、無水重亜硫酸ナトリウム1%水溶液1.8部を、1.5時間かけて滴下し、
その後更に2時間反応を継続した。その後、反応系を30℃まで冷却したのち、ジエチル
アミノエタノールを添加して混合溶液のpHを8.5とし、更に水を用いて固形分が30
%になるように調整することで、スチレンメタクリル樹脂微粒子である、バインダー樹脂
9の水分散液(固形分30%)を得た。
また、重合性単量体を表2記載のように変更した以外は、上記バインダー樹脂9と同様
の操作によって、スチレンアクリル樹脂微粒子である、バインダー樹脂10〜11の水分
散液(固形分30%)を得た。
なお表2には、バインダー樹脂9〜11の酸価、ガラス転移温度も記載した。また、表
2に記載された重合性単量体の略称のうち、表1に記載されていない材料の略称は以下の
通りである。
・PME−400:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油社製ブレ
ンマーPME−400)
<バインダー樹脂12(スチレンアクリル樹脂微粒子)〜13(アクリル樹脂微粒子)の
製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トルエン20部、重
合性単量体としてメタクリル酸7.5部、メチルメタクリレート7.5部、重合開始剤と
して2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.9部、及び、2−(ドデシルチオカルボ
ノチオイルチオ)−イソ酪酸3.6部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を75
℃に加熱し、3時間重合反応を行うことで、メタクリル酸とメチルメタクリレートとから
なる共重合体(Aブロック)を得た。
上記重合反応の終了後、反応系を室温まで冷却したのち、反応容器に、トルエン60部
、及び、重合性単量体として、メチルメタクリレート15部、スチレン10部、ブチルア
クリレート45部、ラウリルメタクリレート15部を投入し、窒素ガスで置換した。そし
て、反応容器内を75℃に加熱し、3時間重合反応を行うことで、前記Aブロックに、メ
チルメタクリレート、スチレン、ブチルアクリレート、ラウリルメタクリレートからなる
共重合体(Bブロック)が付加したA−Bブロック重合体(バインダー樹脂12)を得た

その後、反応系を常温まで冷却したのち、反応容器に、ジメチルアミノエタノールを9
.3部添加して中和したのち、水を200部添加した。次いで、混合溶液を加熱してトル
エンを留去したのち、水を用いて固形分が30%になるように調整することで、スチレン
(メタ)アクリル樹脂微粒子である、バインダー樹脂12の水分散液(固形分30%)を
得た。
また、重合性単量体を表3記載のように変更した以外は、上記バインダー樹脂12と同
様の操作によって、アクリル樹脂微粒子である、バインダー樹脂13の水分散液(固形分
30%)を得た。
なお表3には、バインダー樹脂12〜の酸価、ガラス転移温度、重量平均分子量も記載
した。また、表3に記載された重合性単量体の略称のうち、表1〜2に記載されていない
材料の略称は以下の通りである。
・LMA:ラウリルメタクリレート
<バインダー樹脂14〜16(水溶性ウレタン樹脂)の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、重合性単量体として
ポリプロピレングリコール(分子量1,000)43.5部、イソホロンジイソシアネー
ト44.5部、及び、ジブチル錫ジラウレート0.007部を仕込み、窒素ガスで置換し
たのち、反応容器内を100℃に加熱し、5時間重合反応を行った。反応系を60℃程度
まで冷却した後、メチルエチルケトン150部、ジメチロールプロピオン酸9.0部、及
び、ネオペンチルグリコール3部を添加し、反応容器内を80℃に加熱したのち、重合反
応を行った。その後、反応系を室温まで冷却した後、メタノール20部を添加し、反応を
停止させた。次いで、水を添加し、更に水酸化カリウム水溶液を攪拌しながら添加し、中
和した。そして、減圧下で混合溶液を加熱してメチルエチルケトン及び未反応のメタノー
ルを留去したのち、水を用いて固形分が10%になるように調整することで、ウレタン水
溶性樹脂である、バインダー樹脂14の水溶液(固形分10%)を得た。
また、重合性単量体を表4記載のように変更した以外は、上記バインダー樹脂14と同
様の操作によって、ウレタン水溶性樹脂である、バインダー樹脂15〜16の水分散液(
固形分10%)を得た。
なお表4には、バインダー樹脂14〜16の酸価、重量平均分子量も記載した。また、
表4に記載された重合性単量体の略称は、以下の通りである。
・PPG1000:ポリプロピレングリコール(分子量1,000)
・PTMG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2,000)

・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・DMPA:ジメチロールプロピオン酸
・NPG:ネオペンチルグリコール
<バインダー樹脂17〜18(ウレタン樹脂微粒子)の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルエチルケトン
150部、及び、重合性単量体としてポリプロピレングリコール(分子量2,000)3
4.3部、イソホロンジイソシアネート22.7部、ヘキサメチレンジイソシアネート1
7.2部、ジメチロールプロピオン酸23.9部を仕込み、窒素ガスで置換したのち、反
応容器内を80℃に加熱し、6時間重合反応を行った。次いで、更にトリメチロールプロ
パン1.9部を添加し、80℃で反応を継続した。その後、反応系を室温まで冷却した後
、水を添加し、更に水酸化カリウム水溶液を攪拌しながら添加し、中和した。そして、減
圧下で混合溶液を加熱してメチルエチルケトンを留去したのち、水を用いて固形分が20
%になるように調整することで、ウレタン樹脂微粒子である、バインダー樹脂17の水分
散液(固形分20%)を得た。
また、重合性単量体を表5記載のように変更した以外は、上記バインダー樹脂17と同
様の操作によって、ウレタン樹脂微粒子である、バインダー樹脂18の水分散液(固形分
10%)を得た。
なお表5には、バインダー樹脂17〜18の酸価も記載した。また、表5に記載された
重合性単量体の略称のうち、表4に記載されていない材料の略称は以下の通りである。
・PPG2000:ポリプロピレングリコール(分子量2,000)
・PC(HD)2000:1,6−ヘキサンジオールを主骨格としたポリカーボネー
トジオール(分子量2,000)
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
・TMP:トリメチロールプロパン
<バインダー樹脂19(ウレタン・アクリル複合樹脂微粒子)、20〜21(オレフィン
樹脂微粒子)>
以下に記載したインキの製造例において、上記バインダー樹脂1〜18に加えて、市販
品である、下記ウレタン・アクリル複合樹脂微粒子、及び、下記オレフィン樹脂微粒子を
、バインダー樹脂19〜21として使用した。
・バインダー樹脂19:ユリアーノW600(荒川化学工業社製ウレタン・アクリル
複合樹脂微粒子、固形分35%(イソプロピルアルコール5%含有)、酸価20
mgKOH/g、ガラス転移温度−55℃)
・バインダー樹脂20:アウローレンAE−301(日本製紙社製、固形分30%、
酸価25mgKOH/g、融点70℃)
・バインダー樹脂21:ZE−1224(星光PMC社製、固形分30%、酸価50
mgKOH/g、融点70℃)
<水性インクジェットインキ1〜84の製造例>
下記記載の材料をディスパーで攪拌を行いながら混合容器へ順次投入し、十分に均一に
なるまで攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、水性イン
クジェットインキ1を得た:
・レッド顔料分散液1(顔料濃度20%) 7.5部
・バインダー樹脂1の水溶液(固形分30%) 16.7部
・1,2−プロパンジオール 15部
・サーフィノール420 1部
・プロキセルGXL 0.05部
・イオン交換水 59.75部
また、下記表6に記載の材料を使用する以外は水性インクジェットインキ1と同様の方
法により、水性インクジェットインキ2〜84を得た。
なお、表6に記載された材料は以下の通りである
(水溶性有機溶剤)
・IPA:イソプロピルアルコール(沸点:83℃)
・MFG:プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:120℃)
・1,2−PD:1,2−プロパンジオール(沸点:188℃)
・1,2−BD:1,2−ブタンジオール(沸点:192℃)
・1,2−HD:1,2−ヘキサンジオール(沸点:223℃)
・iPDG:ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(沸点:207℃)
・DMPA:N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド(沸点:215℃)
・DMTG:トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃)
・BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:231℃)
・DEG:ジエチレングリコール(沸点:244℃)
・2−PY:2−ピロリドン(沸点:245℃)
・GY:グリセリン(沸点:290℃)
(界面活性剤)
・S.104:サーフィノール104(日信化学工業社製アセチレンジオール系界面
活性剤、HLB値:3.0)
・S.440:サーフィノール420(日信化学工業社製アセチレンジオール系界面
活性剤、HLB値:4.0)
・S.465:サーフィノール465(日信化学工業社製アセチレンジオール系界面
活性剤、HLB値:13.2)
・TW280:TEGO Wet 280(エボニック社製シロキサン系界面活性剤
、HLB値:3.5)
・TG432:TEGO Glide 432(エボニック社製シロキサン系界面活
性剤、HLB値:7.5)
・BYK347:BYK−347(ビックケミー社製シロキサン系界面活性剤、HL
B値:8.6)
・TG440:TEGO Glide 440(エボニック社製シロキサン系界面活
性剤、HLB値:13.5)
・S−202:ノニオンS−202(日油社製ポリオキシアルキレン系界面活性剤、
上記一般式(1)において、Rがセチル基、mが10、nが0である化合物、H
LB値:4.9)
・P−210:ノニオンP−210(日油社製ポリオキシアルキレン系界面活性剤、
上記一般式(1)において、Rがステアリル基、mが2、nが0である化合物、
HLB値:12.9)
・E750:エマレックス750(日本エマルジョン社製ポリオキシアルキレン系界
面活性剤、上記一般式(1)において、Rがラウリル基、mが50、nが0であ
る化合物、HLB値:15.6)
(pH調整剤)
・28%NH 3 :28%アンモニア水(アンモニアのpKa値:9.3)
・DMAE:ジメチルアミノエタノール(pKa値:9.9、沸点:133℃)
・CHA:シクロヘキシルアミン(pKa値:10.6、沸点:134℃)
(その他)
・プロキセルGXL:アーチケミカルズ社製1,2−ベンゾイソチアゾール−3−オ
ン溶液(防腐剤)
[実施例1〜77(インクジェットインキ1〜77)、比較例1〜7(インクジェットイ
ンキ78〜84)]
上記で製造した水性インクジェットインキ1〜84について、以下に示す評価1〜5を
実施した。評価結果は表7に示すとおりであった。
<評価1:分散安定性の評価>
上記で製造した水性インクジェットインキ1〜84の平均二次粒子径(D50)を、マ
イクロトラック・ベル社製マイクロトラックUPAEX−150を用い、25℃下で測定
した。このインキを70℃の恒温機に保存し、所定期間経時促進させた後、再度25℃下
でD50を測定し、経時前後での変化を確認することで、分散安定性を評価した。評価基
準は下記のとおりとし、評価基準値2〜3を実用可能領域とした。
3:2週間保存後の粘度変化率が±5%未満であった
2:1週間保存後の粘度変化率が±5%未満であったが、2週間保存後の粘度変化率
が±5%以上であった
1:1週間保存後の粘度変化率が±5%以上であった
<評価2:吐出安定性(待機吐出性)の評価>
記録媒体を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B−QA(京セラ
社製、設計解像度600dpi)を設置し、上記で製造した水性インクジェットインキ1
〜84をそれぞれ充填した。ノズルチェックパターンを印刷し、ノズル抜けがないことを
確認したのち、25℃の環境下で所定時間待機させた。その後、再度ノズルチェックパタ
ーンを印刷しノズル抜け本数をカウントすることで、吐出安定性(待機吐出性)を評価し
た。評価基準は下記のとおりとし、評価基準値2〜4を実用可能領域とした。
4:3時間待機させた後であっても、ノズル抜けが全くなかった
3:2時間待機させた後であってもノズル抜けが全くなかったが、3時間待機させた
後に、ノズル抜けが1本以上発生していた
2:1時間待機させた後であってもノズル抜けが全くなかったが、2時間待機させた
後に、ノズル抜けが1本以上発生していた
1:1時間待機させた後に、ノズル抜けが1本以上発生していた
<評価3:乾燥性の評価>
評価2で使用したインクジェット印刷装置に、上記で製造した水性インクジェットイン
キ1〜84をそれぞれ充填した後、ドロップボリューム12pLで、三井化学東セロ社製
OPU−1(2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ20μm)上にベタ画像(印字率1
00%)を印刷し、10秒以内に印刷物を50℃エアオーブンに投入した。そして、所定
時間ごとに印刷物を取り出し、表面を指で擦ってインキが取れるかどうかを目視観察する
ことで、乾燥性を評価した。評価基準は以下の通りとし、評価基準値2〜4を実用可能領
域とした。
4:乾燥時間30秒後に印刷物を指で擦っても、印刷面のインキが取れなかった
3:乾燥時間30秒後に印刷物を指で擦ると印刷面のインキが取れたが、45秒後に
擦っても印刷面のインキは取れなかった
2:乾燥時間45秒後に印刷物を指で擦ると印刷面のインキが取れたが、1分後に擦
っても印刷面のインキは取れなかった
1:乾燥時間1分後でも乾燥せず、印刷物を指で擦ると印刷面のインキが取れた
<評価4:耐擦過性の評価>
評価2で使用したインクジェット印刷装置に、上記で製造した水性インクジェットイン
キ1〜84をそれぞれ充填した後、ドロップボリューム12pLで、王子製紙社製OKト
ップコート+(コート紙、坪量104.7g/m 2 )上にベタ画像(印字率100%)
を印刷し、10秒以内に印刷物を70℃エアオーブンに投入した。1分間乾燥させた後に
印刷物をオーブンから取り出し、試験用白綿布(カナキン3号)で200gの加重をかけ
ながら所定回数擦り、インキが取れるかどうかを目視観察することで、耐擦過性を評価し
た。評価基準は以下の通りとし、評価基準値2〜3を実用可能領域とした
3:20回擦っても、印刷面の傷やインキの剥がれは見られなかった
2:10回擦っても、印刷面の傷やインキの剥がれは見られなかったが、20回擦る
と、印刷面の傷やインキの剥がれが見られた
1:10回擦ったところで、印刷面の傷やインキの剥がれが見られた
<評価5:画像品質(コート紙)の評価>
評価2で使用したインクジェット印刷装置に、上記で製造した水性インクジェットイン
キ1〜84をそれぞれ充填した後、ドロップボリューム12pLで、王子製紙社製OKト
ップコート+(コート紙、坪量104.7g/m 2 )上に、印字率10〜80%の間で
、10%ごとに印字率を変えた階調パッチ画像を印刷し、10秒以内に印刷物を70℃エ
アオーブンに投入した。1分間乾燥させた後に印刷物をオーブンから取り出し、濃淡ムラ
の有無を目視観察することで、コート紙に対する画像品質の評価を行った。評価基準は以
下の通りとし、評価基準値2〜4を実用可能領域とした
4:いずれの印字率においても濃淡ムラが見られなかった
3:印字率70%以下では濃淡ムラが見られなかった
2:印字率60%以下では濃淡ムラが見られなかった
1:印字率60%において明らかに濃淡ムラが見られた
評価の結果、酸価が1〜80mgKOH/gであるバインダー樹脂と、界面活性剤と、
水溶性有機溶剤とを含み、更に、沸点が240℃以上である水溶性有機溶剤の含有量が8
質量%以下である水性インクジェットインキ1〜77では、分散安定性、吐出安定性、乾
燥性、印刷物の耐擦過性、及び、画像品質の全てにおいて、実用可能な品質を有している
ことが確認された。
また、使用する界面活性剤の種類を変えて評価を行った水性インクジェットインキ35
〜43、48〜52のうち、前記界面活性剤としてシロキサン系界面活性剤を含む2種類
以上を併用し、かつ、前記2種類以上の界面活性剤のうち1種のHLB値が0〜5、もう
1種のHLB値が6〜18である、水性インクジェットインキ50、52は、吐出安定性
が4レベル、コート紙に対する画像品質が3レベルであり、前記界面活性剤を単独で使用
した場合と比較して、特段に優れることが確認された。
水性インクジェットインキ70〜74は、水溶性有機溶剤やpH調整剤として、含窒素
化合物を使用した例である。評価の結果、塩基性化合物を使用しなかった水性インクジェ
ットインキ61と比較して、水性インクジェットインキ72〜74では、分散安定性や吐
出安定性が悪化することが判明した。これらの水性インクジェットインキでは、鎖状アミ
ド系溶剤であるN,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、環状アミド系溶剤で
ある2−ピロリドン、または、pKa値が10以上であるシクロヘキシルアミンを使用し
ており、詳細な理由は不明ながら、これらの含窒素化合物の配合量を減らすことで、本発
明の効果が好適に発現できることが確認された。
上記に対して、酸価が0mgKOH/gであるバインダー樹脂を使用した水性インクジ
ェットインキ79(比較例2)では、吐出安定性に劣ることが、また、酸価が80mgK
OH/gよりも大きいバインダー樹脂を使用した水性インクジェットインキ78、80(
比較例1、3)では、分散安定性に劣ることが、それぞれ確認された。バインダー樹脂の
酸価が小さすぎる場合、界面活性剤を併用したとしても、インクジェットヘッドのノズル
面の閉塞を防ぐことができず、逆に酸価が大きすぎる場合は、前記バインダー樹脂中の酸
基が、C.I.ピグメントレッド185や顔料分散樹脂と相互作用を起こし、分散状態が
破壊されると考えられる。
一方で、水性インクジェットインキ81(比較例4)のようにバインダー樹脂を使用し
なかった場合は、分散安定性や吐出安定性は良化するものの、耐擦過性や画像品質に著し
く劣った印刷物となってしまう。また、水性インクジェットインキ82(比較例5)のよ
うに界面活性剤を使用しなかった場合は、インキ中でのバインダー樹脂(a−1)の成膜
抑制ができず、吐出安定性に劣ったインキとなってしまうと考えられる。更に、沸点が2
40℃以上である、ジエチレングリコールやグリセリンの含有量を10質量%とした水性
インクジェットインキ83、84(比較例6、7)では、乾燥性及び耐擦過性の悪化が確
認された。高沸点溶剤が印刷後の印刷物中に長期間残留し、乾燥性や耐擦過性の悪化につ
ながったと考えられる。
[実施例78〜150、比較例8〜11]
上記で説明したように、プラスチック基材を始めとした非浸透性基材に対して使用する
場合、ガラス転移温度が45℃以下であるバインダー樹脂(a−1)を含むことが好適で
ある。そこで、前記条件を満たすバインダー樹脂を含む水性インキ(ただし81は比較例
であり、バインダー樹脂は入っていない)のうち、水性インクジェットインキ1〜6、1
1〜77、81〜84については、以下に示す評価6〜7も行い、非浸透性基材に対する
画像品質や密着性を評価した。なお結果は、表8に示すとおりであった。
<評価6:画像品質(フィルム)の評価>
記録媒体として三井化学東セロ社製OPU−1(2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚
さ20μm)を使用した以外は、上記評価5と同様の方法及び評価基準にて、フィルムに
対する画像品質の評価を行った。
<評価7:密着性の評価>
評価2で使用したインクジェット印刷装置に、上記で製造した水性インクジェットイン
キ1〜6、11〜77、81〜84をそれぞれ充填した後、ドロップボリューム12pL
で、三井化学東セロ社製OPU−1(2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ20μm)
上にベタ画像(印字率100%)を印刷し、10秒以内に印刷物を70℃エアオーブンに
投入した。1分間乾燥させた後に印刷物をオーブンから取り出し、前記印刷物の表面にニ
チバン社製セロハンテープ(幅18mm)を指の腹でしっかりと貼りつけた。そして、セ
ロハンテープの先端を持ち、45度の角度を保ちながら瞬間的に引張り剥がした後、印刷
物の表面を目視で観察することで、密着性の評価を行った。評価基準は下記のとおりとし
、評価基準値2〜4を実用可能領域とした。
4:セロハンテープを貼りつけた面積に対して剥離した面積の割合が10%未満であ
った
3:セロハンテープを貼りつけた面積に対して剥離した面積の割合が10%以上20
%未満であった
2:セロハンテープを貼りつけた面積に対して剥離した面積の割合が20%以上30
%未満であった
1:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が30%以上であった
評価の結果、水性インクジェットインキ1〜6、11〜77(実施例78〜150)は
いずれも、ポリプロピレンフィルムに対する画像品質や密着性に優れることが確認された
。中でも、バインダー樹脂(A)の種類を変えて評価を行った、水性インクジェットイン
キ2、11〜23のうち、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂、または、オレフ
ィン樹脂を使用した、水性インクジェットインキ17〜23では、前記フィルムに対する
画像品質の評価基準値が3、密着性の評価基準値が3〜4と、他の樹脂を使用したインキ
と比べて、特に優れる品質を有することが確認された。
一方、水性インクジェットインキ81〜84(比較例8〜11)は、前記フィルムに対
する画像品質の評価基準値が1と、実用上問題があるレベルであることが確認された。以
上の結果は、本発明の構成を有する水性インクジェットインキ、特に、上記から選択され
るバインダー樹脂を含む水性インクジェットインキが、ポリプロピレンフィルム等の非浸
透性基材に対する画像品質や密着性にも優れることを示すものである。

Claims (8)

  1. 着色剤、バインダー樹脂(A)、界面活性剤、及び、水溶性有機溶剤を含有する水性イ
    ンクジェットインキであって、
    前記着色剤が、C.I.ピグメントレッド185を含み、
    前記バインダー樹脂(A)が、酸価が1〜80mgKOH/gであるバインダー樹脂(
    a−1)を含み、
    1気圧下における沸点が240℃以上である水溶性有機溶剤の含有量が、前記インクジ
    ェットインキ全量に対し8質量%以下である、水性インクジェットインキ。
  2. 前記バインダー樹脂(a−1)が、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹
    脂、ウレタン・アクリル複合樹脂、及び、オレフィン樹脂からなる群から選択される少な
    くとも1種である、請求項1に記載の水性インクジェットインキ。
  3. 前記水溶性有機溶剤が、炭素数2〜5のアルカンジオールを含有する、請求項1または
    2に記載の水性インクジェットインキ。
  4. 前記界面活性剤が、HLB値が0〜5である界面活性剤を含有する、請求項1〜3いず
    れかに記載の水性インクジェットインキ。
  5. 前記界面活性剤が、HLB値が6〜18である界面活性剤を含有する、請求項1〜4い
    ずれかに記載の水性インクジェットインキ。
  6. 鎖状アミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び、環状カルバメート系溶剤の配合量の総量
    が、水性インクジェットインキ全量に対して3質量%以下である、請求項1〜5いずれか
    に記載の水性インクジェットインキ。
  7. 25℃におけるpKa値が2以下、または、10以上である含窒素化合物(ただし、鎖
    状アミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び、環状カルバメート系溶剤は除く)の含有量の
    総量が、前記インクジェットインキ全量に対し1質量%以下である、請求項1〜6いずれ
    かに記載の水性インクジェットインキ。
  8. 請求項1〜7いずれかに記載の水性インクジェットインキを、インクジェットヘッドか
    ら吐出して、非浸透性基材に付与する、インクジェット印刷物の製造方法。
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