JP2004189992A - インクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物およびその製造方法ならびにインクジェット記録液組成物 - Google Patents

インクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物およびその製造方法ならびにインクジェット記録液組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】分散安定性、印字性、鮮明性、着色力、保存安定性などに優れた記録液を与えるインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を提供すること。
【解決手段】4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミドなどの芳香族アミンとそのスルホン化物との混合ジアゾ成分と、5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンまたはこれとそのスルホン化物との混合物をカップラーとしてカップリング反応させてなるインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用途に用いられるベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物およびその製造方法ならびにベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を着色剤とするインクジェット記録液組成物に関する。さらに詳細には、優れた分散安定性、印字性、鮮明性、着色力などを有するインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物およびそれを着色剤とするインクジェット記録液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録液としては、水系分散媒体に着色剤としての水溶性染料を溶解させたものが従来から使用されてきた(例えば、特許文献1参照)。染料を用いることで発色が良好で、色再現域の広い記録画像が得られるという長所がある反面、耐水性、耐光性など記録画像の耐久性に劣るという大きな短所がある。
【0003】
そこで、着色剤に顔料を用いることで記録画像の耐久性を改良しようとする試みがなされてきた(例えば、特許文献2参照)。しかし、顔料を用いたことにより記録画像の鮮明さが染料より劣り、さらに分散安定性が不十分な顔料を用いた記録液は凝集してしまい、印刷時にプリンターノズルでの吐出不良を起こすなどの問題がある。
【0004】
上記の問題点を解決するために、顔料を水系分散媒体へ安定に分散させるべく顔料の微細化が検討されている。インクジェット記録液用赤色顔料としては、一般的に、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドン系顔料)、C.I.ピグメントレッド254(DPP系顔料)などが用いられている(例えば、特許文献3参照)。しかし、これらの顔料は汎用品に用いるには非常に高価である。さらに、これらの顔料を微粒子化するためにはボールミル、ロールミルなどの強力な分散機を用いるため多大なエネルギーが必要であり、能率的、価格的にも生産効率が悪い。
【0005】
水性分散媒体への顔料の分散性を向上させる方法としては、顔料の粒子表面を改質してスルホン基などの親水性基を顔料粒子表面へ導入し、溶媒、分散媒体への濡れ性を向上させる親水化処理が一般的である(例えば、特許文献4、5参照)。
【0006】
しかしながら、顔料粒子は一次粒子の凝集体である二次粒子として存在するため、顔料粒子に対する既存の親水化処理では、顔料の二次粒子表面を親水化するに留まっている。このため凝集粒子内部の一次粒子表面まで親水化することは困難である。インクジェット記録液に求められる顔料の粒子径は一次粒子と同等、もしくはこれよりもさらに細かいため、記録液を製造するためには一次粒子程度まで微分散させる必要がある。その際、凝集していた顔料の二次粒子が砕かれ、微細化すると共に親水化されていない表面が現われてくる。つまり凝集粒子表面への親水化が十分であっても、インクジェット記録用途に使用するために、凝集粒子をさらに微細化した場合、このような親水化されていない表面があらわれるため、相対的に粒子の親水化度は低下し、十分な分散安定化効果が得られなくなるという問題がある。
【0007】
この問題を改善するため、表面親水化処理時の顔料分散を機械的に行う方法がある(例えば、特許文献6参照)。しかしこの方法では顔料を分散させるために多大なエネルギーが必要であり、効率的でない。さらに親水化処理により導入される親水基の量を制御することは難しく、過剰な親水化処理がなされた場合、顔料は水溶性染料化してしまい、顔料としての各種堅牢性を失う。このように親水化と堅牢性を両立させることは極めて困難である。
【0008】
さらに根本的な問題として、この親水化処理が適用できるのはカーボンブラック顔料またはフタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、DPP系顔料などに限られ、赤色顔料についていえば、その製造方法が特殊で高価であり、色相も限定されている顔料のみだということが挙げられる。
【0009】
【特許文献1】
特開昭53−61412号公報
【特許文献2】
特開平8−3468号公報
【特許文献3】
特開2001−2962号公報
【特許文献4】
特開2000−70704号公報
【特許文献5】
特開平8−283596号公報
【特許文献6】
特許第3271529号明細書
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
顔料表面親水化処理の大きな欠点として、アゾ顔料に代表され、幅広い色相を持ち、かつ汎用で安価な顔料に対してこの処理を行った場合、顔料は親水化処理剤の強力な酸化作用に耐えられず、色相が濁ったり、顔料としての各種物性に悪影響を受けてしまう。逆に顔料物性に悪影響を与えない程度の弱い親水化処理を行った場合、顔料を十分に親水化処理することができないため、そのような顔料を用いてインクジェット記録液を製造したとしても、発色性、分散安定性が不十分な記録液しか得られない。
【0011】
従って、本発明の目的は、種々の着色用途に有用であるとともに、インクジェット記録液に使用した場合に、分散安定性、印字性、鮮明性、着色力、保存安定性などに優れた記録液を与えるインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料製造時にジアゾ成分、カップラー成分のいずれか、または両方にスルホン化された成分を一部用いることで、顔料と染料の利点を併せ持ち、例えばインクジェット記録液に使用した場合に、分散安定性、印字性、鮮明性、着色力、分散安定性などに優れた記録液を与える顔料組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、主ジアゾ成分の下記一般式(I)で表される芳香族アミンのジアゾニウム塩と下記一般式(II)で表されるスルホン化芳香族アミンのジアゾニウム塩とを、カップラー成分の下記化学式(III)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンと、または上記のカップラー成分を主カップラー成分として下記一般式(IV)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物とともに、カップリング反応させて得られたものであることを特徴とするインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物およびその製造方法である。
【0014】
Figure 2004189992
(但し、上記式中のAはカルボアミド基(−CONR12)、スルホアミド基(−SO2NR12)、イミド基(−CONR1CO−)、ウレイレン基(−NR1CONR2−)またはカルボン酸エステル基(−COOR1)であり、イミド基とウレイレン基はベンゼン環に環状で結合している場合を含み、R1とR2は同じでも異なっていても良く、水素、アルキル基または置換基を有しても良いフェニル基を、Xは水素、メチル基またはメトキシ基を、Mはスルホン基と結合している水素、金属またはアミンをそれぞれ表し、x、yおよびzはそれぞれ1〜3の数、nは1〜9の数である。一般式(IV)中のスルホン基は芳香族環の任意の位置に置換されている。)
【0015】
また、本発明は、ジアゾ成分の上記一般式(I)で表される芳香族アミンのジアゾニウム塩と、主カップラー成分の上記化学式(III)で表される5−(3´−ヒドロキシ−2´−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンと上記一般式(IV)で表される5−(3´−ヒドロキシ−2´−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物とを、カップリングさせて得られたものであることを特徴とするインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物およびその製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に発明の実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
本発明のベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物は、従来の親水化処理方法で得られる顔料粒子表面が親水化処理されたものとは異なり、顔料分子自体が親水化処理されている点に特徴がある。
従来の顔料粒子表面親水化処理方法は、粒子表面のみを改質して親水化する方法であり、親水化すべき粒子表面をなるべく大きくするために処理前の顔料粒子を微細化する必要がある。しかし、いくら顔料粒子を微細化したとしても分子状態にまで微細化することは不可能である。また、親水化処理後の顔料粒子に対しては、実際の顔料分子骨格が化学反応によりスルホン化されたのか、それとも硫酸分子が顔料粒子にただ吸着しているだけなのかを判別することは困難である。さらに記録液を製造する際には、さらに顔料粒子は微分散化されるために凝集していた顔料粒子は砕かれ、親水化されていない表面が現われてくる。この表面は疎水性のままであるため、微分散すればするほど親水化の効果は相対的に弱くなってしまう。
【0017】
これに対し、本発明の前記一般式(II)または一般式(IV)で表される化合物を用いて製造された顔料組成物は、分子内に確実かつ化学的にスルホン基が導入されており、スルホン基による親水化効果を最大限に発揮することができる。
【0018】
前記一般式(I)および化学式(III)で表される化合物を用いたベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料と、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(IV)で表される化合物を用いた水溶性染料または前記一般式(II)で表される化合物と前記一般式(III)または(IV)で表される化合物を用いた水溶性染料とをカップリング反応によって同時に生成させて得られる本発明の顔料組成物は、顔料としての優れた着色力と各種堅牢性を有し、かつ水溶性染料としての優れた鮮明性、透明性と分散安定性を有し、両者の利点を有する顔料組成物である。
両者はカップリング反応と同時に互いに会合、吸着する。これによって互いの長所を兼ね備えた顔料組成物が生成する。さらにこの顔料組成物は顔料と染料の混合状態、つまり顔料粒子表面だけでなく、粒子内部も親水化された状態の顔料組成物である。このため微分散しても常に親水性基が粒子表面に存在するため、顔料組成物中の染料化した成分の効果により、分散媒体中へ容易に分散し、優れた分散安定化効果、鮮明な色相を発現する。
【0019】
本発明におけるインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物は、顔料の化学構造中にベンズイミダゾロン基をもち、その酸アミド結合が分子間水素結合に関与するため、通常のアゾ顔料よりも優れた各種堅牢性を示す。さらに前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物は、酸アミド基(カルボアミド基やスルホアミド基)を有することで、さらに優れた各種堅牢性を示す。そのような顔料の例を挙げると、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントバイオレット32などであり、このようなベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料とその製造方法自体は公知である。
【0020】
これらの顔料のジアゾ成分としては、具体的には、3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド、4−アミノ−3−メトキシ−6,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−2,5−ジメトキシ−N−メチルベンゼンスルホンアミド、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸ブチルなどが挙げられる。カップラー成分としては前記化学式(III)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンが用いられる。
【0021】
本発明では、(1)主ジアゾ成分の前記一般式(I)で表される芳香族アミンとその0.1〜50モル%を前記一般式(II)で表される化合物で置換して混合ジアゾ成分とし、これを常法によってジアゾ化して得られる混合ジアゾニウム塩と、カップラー成分の前記化学式(III)で表されるベンズイミダゾロン化合物とを、またはこれを主カップラー成分として、その0.1〜50モル%を前記一般式(IV)で表される化合物で置換した混合カップラー成分とを、また(2)上記の芳香族アミンのジアゾニウム塩と上記の混合カップラー成分とを、カップリングさせてベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を得ることを特徴としている。
【0022】
本発明で使用する前記一般式(I)で表される芳香族アミンとしては、例えば、4−アミノベンズアミド、3−アミノ−4−メトキシベンズアミド、3−アミノ−4−メチルベンズアミド、4−アミノベンズアニリド、3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド、3−アミノ−3′−クロル−4−メトキシ−2′−メチルベンズアニリド、3−アミノアセトアニリド、4−アミノアセトアニリド、3−アミノ−4−メトキシアセトアニリド、3−アミノ−4−エトキシ−N−メチルベンズアニリド、4′−アミノ−3′−メトキシ−6′−メチルベンズアニリド、4′−アミノ−2′,5′−ジメトキシベンズアニリド、4′−アミノ−2′,5′−ジエトキシベンズアニリド、3−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−2,5−ジメトキシ−N−メチルベンゼンスルホンアミド、3−アミノ−N−ブチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド、N−フェニル−4−アミノ−2,5−ジメトキシベンゼンスルホンアミド、3−アミノ−N,N−ジエチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド、2−アミノ−N−エチル−N−フェニルスルホンアミド、5−アミノベンズイミダゾロン、1−アミノ−3−ウレイドベンゼン、4−アミノフタルイミド、3−アミノフタルイミド、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸ブチル、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明で使用する前記一般式(II)および(IV)で表される化合物は、それぞれ前記一般式(I)、前記化学式(III)で表される化合物のスルホン化物およびその金属塩、アミン塩である。金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属などが、アミンとしては、例えば、アンモニア、ジメチルアミンなどの任意の炭素数のアルキル基を有する有機アミンおよびその4級アンモニウム塩などが挙げられる。
これらの前記一般式(II)及び(IV)で表される化合物は、それぞれ主ジアゾ成分および主カップラー成分の0.1〜50モル%の範囲で使用される。これらの化合物の使用量が0.1モル%未満である場合には、得られる顔料組成物は疎水性顔料としての物性が強く、本発明が目的とする効果が得られない。また、使用量が50モル%を超えると、得られる顔料組成物は水溶性染料としての物性が強くなりすぎ、顔料としての各種堅牢性を弱めてしまうため好ましくない。着色力と各種堅牢性などが利点である顔料としての物性と、鮮明性、透明性、分散安定性などが利点である水溶性染料としての物性を両立させるためのより効果的な使用量は、上記化合物の合計量が、全ジアゾ成分および全カップラー成分の合計中に占める量が0.1〜50モル%、好ましくは10〜40モル%、さらに好ましくは20〜30モル%である。
【0024】
本発明における顔料組成物の製造方法は、通常のアゾ顔料の製造方法が適用でき、特に限定されない。
ジアゾ化によって上記の芳香族アミンのジアゾニウム塩を得る方法は、通常のジアゾ化反応同様酸性雰囲気中で行われる。前記一般式(II)で表される親水化したジアゾ成分の場合は、これを予めアルカリに溶解し、上記のジアゾ成分の溶液へ注入する方法、このアルカリ溶液にアミンであるジアゾ成分を酸性塩として溶解注入する方法など通常のジアゾ成分の溶解方法が適用できる。
【0025】
カップラー成分の水懸濁液についても、カップラー成分をアルカリに溶解し、カップリング方法にあわせてpHを調整するなどの通常の製造方法を適用することができる。前記一般式(IV)で表される親水化したカップラー成分(アルカリ可溶である)を混合使用する場合は、主カップラー成分の溶解時に別々に投入しても、混合して投入しても良い。
【0026】
カップリング方法は、カップラー成分にジアゾ成分を注入する方法でも良いし、カップラー成分とジアゾ成分を同時に注入する方法でも良い。その際にいずれかの成分へ界面活性剤を添加して析出粒子を微分散化しても良い。またカップリング反応pHは、ジアゾ成分の安定性と反応性を加味して弱酸性から弱塩基性であることが好ましく、さらに好ましいpHは3〜10である。カップリング反応時のpH調整には、公知の緩衝溶液を使用して反応系のpHを安定化させることが好ましい。緩衝溶液としては、例えば、酢酸−酢酸ナトリウム系緩衝溶液、リン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム系緩衝溶液、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム系緩衝溶液などが挙げられ、反応pH条件にあわせて選択し使用すれば良い。これらのpH調製緩衝溶液は、カップリング反応時にジアゾ成分へ添加しても良いし、カップリング成分へ添加しても良い。またはpH調製緩衝溶液中へ両成分を同時に注入する方法でも良い。
【0027】
本発明のベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物は、その製造時におけるジアゾ成分溶液、カップラー成分溶液、カップリング反応物の水懸濁液の適当な各段階において、顔料組成物の用途適性を高めるため、さらなる各種処理を行っても良い。処理の例としては、親水基への金属塩処理、アミン塩処理、顔料組成物表面への樹脂処理、溶剤処理、顔料粒子調整のための加熱処理、pH調製剤の添加などが挙げられる。これらは通常の顔料製造時に行われる各種処理がそのまま適用できる。
【0028】
本発明の顔料組成物は、上記により得られた顔料組成物の水懸濁液から、フィルタープレスあるいは遠心濾過などの通常の濾過方法で取出すことができる。取出した顔料組成物の水ペーストは、そのままの状態で使用しても良いし、加熱乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥などの乾燥手段により乾物化することもできる。いずれの方法においても、通常の顔料濾過方法および乾燥方法と何ら変わることはない。
【0029】
尚、本発明の顔料組成物の製造に使用する前記一般式(II)および一般式(IV)で表される化合物は、それぞれ前記一般式(I)で表される芳香族アミンおよび化学式(III)で表される化合物(5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロン)を、通常のスルホン化方法を適用してスルホン化することで得ることができる。スルホン化方法としては、例えば、濃硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸などを用いる直接置換、あるいは亜硫酸塩、亜硫酸水素塩などを用いる間接置換などが挙げられる。
【0030】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。尚、文中に部または%とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0031】
実施例1
(ジアゾ成分の親水化)
4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド115.1部を濃硫酸152部に溶解し、120℃で5時間反応させた。得られた反応混合物を水酸化ナトリウム82部の水溶液820部に溶解し、弱アルカリ性の溶液とした。未反応物を濾過で除き、濾液を塩酸で中和し、濾過水洗して灰色の4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド−5−スルホン酸を得た。赤外分光光度計と蛍光X線分析によりスルホン化されたことを確認した。
【0032】
(顔料化)
4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド−5−スルホン酸46.6部を、水酸化ナトリウム9.0部の水溶液2300部に溶解し、これに濃塩酸143部を注入して酸性懸濁液とした。これに4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド80.6部を投入し、0℃で亜硝酸ナトリウム35.5部を加えてジアゾ化した。不溶物を濾過で除き、混合ジアゾニウム塩の酸性水溶液3750部を得た。
一方、5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロン161.2部を、水酸化ナトリウム60部の水溶液2300部に溶解し、水で希釈してカップラー成分の水溶液4000部を得た。また、炭酸ナトリウム7.0部と炭酸水素ナトリウム60.0部を水3750部に投入し、pH9の緩衝溶液を調製した。
上記混合ジアゾニウム塩の水溶液とカップラー成分の水溶液を緩衝溶液中へ約1時間かけて注入および混合してカップリング反応を行わせた。ジアゾ成分が残存していないことを確認した後、生成した顔料の水懸濁液をpH2に調整し、80℃で30分間加熱処理を行った。この顔料スラリーを濾過し、濾液のpHが弱酸性になるまで水洗し、鮮明な赤色のベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を固形分として279部含む水ペーストを得た。
【0033】
実施例2
(カップラー成分の親水化)
5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロン159.7部を発煙硫酸800部に溶解し、80℃で3時間反応させた。反応混合物を8000部の氷水中に注ぎ、析出した結晶を濾過および水洗して白色の5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物を得た。赤外分光光度計と蛍光X線分析によりスルホン化(n=1.3)されたことを確認した。
【0034】
(顔料化)
4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド115.2部を水2300部中に懸濁し、これに濃塩酸143部を注入して酸性懸濁液とした。この懸濁液に0℃で亜硝酸ナトリウム35.5部を加えてジアゾ化した。不溶物を濾過で除き、ジアゾニウム塩の酸性水溶液3750部を得た。
一方、5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロン112.8部と上記で得た5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物60.0部を、水酸化ナトリウム60部の水溶液2300部に溶解し、水で希釈して混合カップラー成分の水溶液4000部を得た。以下実施例1と同様にして、鮮明な赤色のベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を固形分として262部含む水ペーストを得た。
【0035】
実施例3
4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド−5−スルホン酸23.3部を、水酸化ナトリウム4.5部の水溶液2300部に溶解し、これに濃塩酸132部を注入して酸性懸濁液とした。これに4−アミノ−3−メトキシ−6−N−ジメチルベンゼンスルホンアミド97.9部を投入し、0℃で亜硝酸ナトリウム35.5部を加えてジアゾ化した。不溶物を濾過で除き、混合ジアゾニウム塩の酸性水溶液3750部を得た。
一方、5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロン137.0部と5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物30.0部を、水酸化ナトリウム60部の水溶液2300部に溶解し、希釈して混合カップラー成分の水溶液4000部を得た。また、炭酸ナトリウム7.0部と炭酸水素ナトリウム60.0部を水3750部に投入、溶解し、pH9の緩衝溶液を調製した。
上記混合ジアゾニウム塩の水溶液と混合カップラー成分の水溶液を緩衝溶液中へ約1時間かけて注入および混合してカップリング反応を行わせた。ジアゾ成分が残存していないことを確認した後、生成した顔料の水懸濁液をpH2に調整した後濾過し、濾液のpHが弱酸性になるまで水洗し、鮮明な赤色のベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を固形分として258部含む水ペーストを得た。
【0036】
比較例1
4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミド−5−スルホン酸を用いず、4−アミノ−3−メトキシ−6−N,N−ジメチルベンゼンスルホンアミドを115.2部用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、赤色のベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料を固形分として280部含む水ペーストを得た。
【0037】
実施例4〜6、比較例2
各実施例及び比較例の顔料組成物および顔料を用い、下記の配合処方の水系インクジェット記録液を作製し、評価を行った。
Figure 2004189992
上記配合物をガラスビーズ200gと混合し、ペイントコンディショナーにて3時間分散させた。得られた顔料分散液を1μmメンブランフィルターで濾過し、水系インクジェット記録液を作製した。この記録液の分散安定性および保存安定性と、印字性、鮮明性および着色力をこの記録液を充填したカートリッジをインクジェットプリンターに装着し、印字記録を行って評価した。評価結果を表1に示す。
【0038】
評価方法および評価基準は以下の通りである。
(分散安定性)
ペイントコンディショナーにて分散した顔料分散液をメンブランフィルターで濾過した際の、目詰まり具合および濾過性を判定した。
○:目詰まりなく、濾過性も良好
△:目詰まりが確認できるが、濾過性は良好
×:目詰まりが確認でき、濾過性も悪い
(印字性)
印字記録物のかすれ具合を目視により判定した。
○:問題なく印字記録されている
△:一部にかすれが見られる
×:かすれが目立つ
(鮮明性)
印字記録物の彩度を目視により判定した。
○:非常に鮮明
△:比較例より僅かに鮮明
×:くすんでいる
(着色力)
印字記録物の濃度を目視により判定した。
○:濃度感があり良好
△:比較例と同程度
×:濃度が低い
(保存安定性)
各インクジェット記録液をサンプル瓶に移し、50℃の恒温槽内に1ヶ月間静置し、顔料の沈降の状況を判定した。
○:均一な記録液
△:沈降が確認できる
×:大部分が沈降している
【0039】
Figure 2004189992
表1の結果から明確なように、本発明の顔料組成物を用いることで分散安定性、印字性、鮮明性、着色力、保存安定性に優れた水系インクジェット記録液を得ることができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明により、水系分散媒体への優れた分散安定性、印字性、鮮明性、着色力、保存安定性などを有する、インクジェット記録方式に適したベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を得ることができる。

Claims (9)

  1. 主ジアゾ成分の下記一般式(I)で表される芳香族アミンのジアゾニウム塩と下記一般式(II)で表されるスルホン化芳香族アミンのジアゾニウム塩とを、カップラー成分の下記化学式(III)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンと、または上記のカップラー成分を主カップラー成分として下記一般式(IV)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物とともに、カップリング反応させて得られたものであることを特徴とするインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物。
    Figure 2004189992
    (但し、上記式中のAはカルボアミド基(−CONR12)、スルホアミド基(−SO2NR12)、イミド基(−CONR1CO−)、ウレイレン基(−NR1CONR2−)またはカルボン酸エステル基(−COOR1)を表し、イミド基とウレイレン基はベンゼン環に環状で結合している場合を含み、R1とR2は同じでも異なっていても良く、水素、アルキル基または置換基を有しても良いフェニル基を、Xは水素、メチル基またはメトキシ基を、Mはスルホン基と結合している水素、金属またはアミンをそれぞれ表し、x、yおよびzはそれぞれ1〜3の数、nは1〜9の数である。一般式(IV)中のスルホン基は芳香族環の任意の位置に置換されている。)
  2. ジアゾ成分の下記一般式(I)で表される芳香族アミンのジアゾニウム塩と、主カップラー成分の下記化学式(III)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンと下記一般式(IV)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物とを、カップリングさせて得られたものであることを特徴とするインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物。
    Figure 2004189992
    (但し、上記式中のAはカルボアミド基(−CONR12)、スルホアミド基(−SO2NR12)、イミド基(−CONR1CO−)、ウレイレン基(−NR1CONR2−)またはカルボン酸エステル基(―COOR1)を表し、イミド基とウレイレン基はベンゼン環に環状で結合している場合を含み、R1とR2は同じでも異なっていても良く、水素、アルキル基または置換基を有しても良いフェニル基を、Xは水素、メチル基またはメトキシ基を、Mはスルホン基と結合している水素、金属またはアミンをそれぞれ表し、xおよびyはそれぞれ1〜3の数、nは1〜9の数である。一般式(IV)中のスルホン基は芳香族環の任意の位置に置換されている。)
  3. 全ジアゾ成分中の0.1〜50モル%が上記一般式(II)で表される化合物である請求項1に記載のインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物。
  4. 全カップラー成分中の0.1〜50モル%が上記一般式(IV)で表される化合物である請求項1または2に記載のインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物。
  5. 主ジアゾ成分の下記一般式(I)で表される芳香族アミンのジアゾニウム塩と下記一般式(II)で表されるスルホン化芳香族アミンのジアゾニウム塩とを、カップラー成分の下記化学式(III)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンと、または上記のカップラー成分を主カップラー成分として下記一般式(IV)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物とともに、カップリング反応させることを特徴とするインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物の製造方法。
    Figure 2004189992
    (但し、上記式中のAはカルボアミド基(−CONR12)、スルホアミド基(−SO2NR12)、イミド基(−CONR1CO−)、ウレイレン基(−NR1CONR2−)またはカルボン酸エステル基(―COOR1)を表し、イミド基とウレイレン基はベンゼン環に環状で結合している場合を含み、R1とR2は同じでも異なっていても良く、水素、アルキル基または置換基を有しても良いフェニル基を、Xは水素、メチル基またはメトキシ基を、Mはスルホン基と結合している水素、金属またはアミンをそれぞれ表し、x、yおよびzはそれぞれ1〜3の数、nは1〜9の数である。一般式(IV)中のスルホン基は芳香族環の任意の位置に置換されている。)
  6. ジアゾ成分の下記一般式(I)で表される芳香族アミンのジアゾニウム塩と、主カップラー成分の下記化学式(III)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンと下記一般式(IV)で表される5−(3′−ヒドロキシ−2′−ナフトイルアミノ)ベンズイミダゾロンのスルホン化物とを、カップリング反応させることを特徴とするインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物の製造方法。
    Figure 2004189992
    (但し、上記式中のAはカルボアミド基(−CONR12)、スルホアミド基(−SO2NR12)、イミド基(−CONR1CO−)、ウレイレン基(−NR1CONR2−)またはカルボン酸エステル基(―COOR1)を表し、イミド基とウレイレン基はベンゼン環に環状で結合している場合を含み、R1とR2は同じでも異なっていても良く、水素、アルキル基または置換基を有しても良いフェニル基を、Xは水素、メチル基またはメトキシ基を、Mはスルホン基と結合している水素、金属またはアミンをそれぞれ表し、xおよびyはそれぞれ1〜3の数、nは1〜9の数である。一般式(IV)中のスルホン基は芳香族環の任意の位置に置換されている。)
  7. 全ジアゾ成分中の0.1〜50モル%が上記一般式(II)で表される化合物であり、全カップラー成分中の0.1〜50モル%が上記一般式(IV)で表される化合物であり、且つこれらの化合物の合計量が全ジアゾ成分と全カップラー成分の合計中0.1〜50モル%である請求項5に記載のインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物の製造方法。
  8. 全カップラー成分中の0.1〜50モル%が上記一般式(IV)で表される化合物である請求項6に記載のインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物の製造方法。
  9. 請求項1または2に記載の、もしくは請求項5または6に記載の方法で得られるインクジェット記録用ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料組成物を着色剤とするインクジェット記録液組成物。
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