JP3291684B2 - 熱履歴表示インキ組成物及び該組成物による表示を有する包装体 - Google Patents

熱履歴表示インキ組成物及び該組成物による表示を有する包装体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱履歴及び時間の
経過を累積的かつ不可逆的に表示することのできる熱履
歴表示インキ組成物、及び該組成物による表示を有する
包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、缶飲料、レトルト食品や薬品等の
保存又は有効期限等を表示するために、表示物の色調変
化を利用する熱履歴表示インキは種々提案されている。
例えば、特公平6−53868号公報には、耐熱性染料
と感熱性染料を含み、所定の時間高温を受けたときに感
熱性染料が分解されて変色する熱変色性のインク組成物
が記載されているが、このインク組成物は116℃以上
の温度で15〜30分間加温されたときにはじめて変色
するものであり、100℃以下の温度で1〜3月間の時
間経過を明確に表示できるものではない。
【0003】また、特公昭64−2906号公報には、
pHの変化に応じて変色する可変色素と水酸化ナトリウ
ム等の無機アルカリ性物質を共存させ、無機アルカリ性
物質が空気中の炭酸ガスと反応しpHが低下することに
より変色することを利用したタイムインジケーターが記
載されているが、このものではインジケーターを缶等に
付着させる前でも炭酸ガスとの反応が進むために、使用
直前まで空気を遮断して保存する必要があった。また、
温度による変化を反映することはできず、熱履歴を明確
に表示するものではなかった。
【0004】さらに、特開昭61−12783号公報に
は、酸塩基指示薬とpH変化を与える溶融性化合物とを
含有してなる可逆性示温材が記載されているが、この示
温材はこれらの物質を封入することによって可逆性を持
たせたものであり、単にその時々の温度を示すものであ
って、熱履歴を経時的に表示するものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、自動販売機やコ
ンビニエンスストアの普及等商品の流通形態の変化に伴
って、缶飲料はレトルト食品等を自動販売機や店頭で加
温して販売することが広く行われるようになっている。
このような販売形態をとる商品では、単に製造後の経過
時間だけではなく、商品が製造後どのような熱履歴を受
けたか、すなわち商品の熱履歴及び時間の経過を簡単な
方法で累積的かつ不可逆的に把握し、商品の消費期限等
品質管理を行うことが必要である。しかしながら、上記
従来のタイムインジケーターではこのような要求を全て
満たすものは存在しない。したがって本発明の目的は、
これら従来技術の問題点を解消し、簡単かつ明確に商品
が製造後に受けた熱履歴及び時間の経過を累積し、不可
逆的に表示することのできる熱履歴表示インキ組成物を
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明では上記課題を解
決するために、揮発性有機アミン及びpHの変化により
変色する染料ならびにバインダー樹脂を熱履歴表示イン
キ組成物中に含有させることによって、時間と温度の経
過を累積して不可逆的に表示することのできる熱履歴表
示インキ組成物を得るものである。この熱履歴表示イン
キ組成物では、自動販売機や店頭での加熱によって有機
アミンが揮発し、組成物中のpHが低下することによっ
て染料が変色し、時間の経過と熱履歴を累積して不可逆
的に表示するものである。したがって、本発明の熱履歴
表示インキ組成物は、例えばインクジェット印刷や塗布
等により飲料やレトルト食品等を収納した包装体表面に
適用することによって、目視により該容器の時間の経過
と熱履歴を簡単かつ明確に把握することができるもので
ある。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明で使用する揮発性有機アミ
ンとしては、沸点が100〜360℃の有機アミンであ
ればいずれも使用することができる。好ましい有機アミ
ンとしては、次の一般式(1)で示される脂肪族有機ア
ミンが挙げられる。
【0008】
【化2】
【0009】本発明で使用される脂肪族アミンとして
は、具体的には例えばn−ジブチルアミン、n−トリブ
チルアミン、ジイソブチルアミン、ジアミルアミン、ト
リアミルアミン、n−ヘプチルアミン、2−エチルヘキ
シルアミン、ジオクチルアミン、ジエチレントリアミ
ン、テトラエチレンペンタミン、シクロヘキシルアミン
等が挙げられる。脂肪族アミンのなかでも、上記一般式
(1)においてR1 、R2 、R3 の少なくとも1つがR
4 −OHであるアルカノールアミン類を使用した場合に
は、該アミンの臭いが少ないので特に好ましい。好適な
アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールア
ミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エ
チルモノエタノールアミン、n−ブチルモノエタノール
アミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノー
ルアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルジエ
タノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、ト
リイソプロパノールアミン等が挙げられる。これらの揮
発性アミンは、時間の経過及び熱履歴の程度に応じて熱
履歴表示インキ組成物から揮発し、該組成物のpHが低
下することになる。揮発性有機アミンの配合量は、全組
成物を基準として約0.03〜20重量%であり、使用
する染料の濃度や要求される変色時間に応じてこの範囲
内で適宜選択する。アミンがこれより多いと皮膜の乾燥
性が充分とならず、また少ないと発色が充分ではなくな
る。
【0010】本発明で使用するpHの変化により変色す
る染料としては、pH3〜10の範囲で変色するものは
いずれも使用することができるが、好ましいものとして
は、pH9以下で変色し、初期色相と変色完了後の色差
△Eが20以上であるもので、且つ加温して保存及び販
売されるときに、そのときの熱で昇華しない染料が挙げ
られる。このような染料を使用した場合には、組成物の
変色を目視により簡単に判定することができるととも
に、単一染料で3色の色相変化が可能であることから、
例えば1〜2か月経過時等、中間時点の経過を識別する
ことが可能となる。
【0011】このような染料としては、ラクトン又はス
ルホフタレイン環構造を有するトリフェニルメタン系染
料から選択されたものであり、かつ少なくとも1個のフ
ェノール性水酸基を有するものが挙げられる。トリフェ
ニルメタン系染料は一般に空気で酸化され易いが、ラク
トン又はスルホフタレイン環を有する上記特定構造のも
のは熱酸化に対して安定であり、単一染料で3色の色相
変化が可能である。また染料は、融点が130℃以上、
好ましくは170℃以上のものから選択されるのが望ま
しい。これより融点が低いと加温経時中に昇華し易くな
ったり、酸化等化学的変化を受けやすくなる。このよう
な染料の具体例としては、例えばブロモクレゾールグリ
ーン、ブロモフェノールブルー、ブロモクロロフェノー
ルブルー、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブ
ルー、クレゾールレッド、ブロモクレゾールパープル、
クロロフェノールレッド、キシレノールオレンジ、p−
キシレノールブルー、フェノールスルホフタレイン、キ
シレノールオレンジ、キシレノールブルー、チモールブ
ルー、m−クレゾールパープル等のトリフェニルメタン
系染料が挙げられる。これらは単独または2種以上を混
合使用してもさしつかえない。これらの染料の熱履歴表
示インキ組成物への配合量は、全組成物を基準として約
0.1〜10重量%、好ましくは約0.5〜5.0重量
%である。また、これらの色調を補う目的で、他の染料
を本発明の染料の初期色調を損なわない範囲で添加する
ことができる。例えばメチルレッド、アシッドレッド
2、モルダンレッド3等があげられる。
【0012】本発明の熱履歴表示インキ組成物に使用さ
れるバインダー樹脂としては、組成物の缶等の基体への
付着性と、組成物のタック性を確保できるものであれ
ば、特に制限はなく、通常バインダー樹脂として用いら
れるものはいずれも使用できる。好ましいバインダー樹
脂としては、例えばアクリル樹脂、アミノ樹脂、エポキ
シ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニ
ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、塩酢ビ樹脂
及びアルキッド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単
独で又は2種以上を適宜組合わせて使用することがで
き、またこれらの樹脂の共重合体を使用してもよい。ま
た、これらの樹脂皮膜の特性、塗布適性を補うための添
加剤を加えることも可能である。例えばレベリング剤、
界面活性剤等があげられる。また、これらのバインダー
樹脂に混合してロジン酸、脂肪酸、天然油脂等の変性剤
等を用いてもよい。バインダー樹脂の配合量は、熱履歴
表示インキ組成物全体の約1.0〜30重量%、好まし
くは約2〜20重量%である。
【0013】本発明の熱履歴表示インキ組成物は、通常
は上記の各成分や必要に応じ添加される他の成分を各種
の溶剤に溶解又は分散させた溶液又は分散液として調製
される。得られた組成物は、飲料やレトルト食品、薬品
等を収納した缶やプラスチックボトル、プラスチック製
パウチ、紙容器等の容器の表面、あるいはその他流通及
び販売時の熱履歴の管理を必要とする種々包装体等の表
面に、インクジェットプリンター、スタンプ、コーター
等通常のマーキング方法によって適用される。本発明の
インキ組成物は、これを塗布したラベルの形で食品ある
いは包装体に貼着使用することもできる。溶剤として
は、例えば、アルコール類、エステル類、ケトン類、ア
ルキレングリコールエーテル類、エーテル類、フラン
類、芳香族炭化水素、塩素系、水等通常のものが使用さ
れる。これらは単独または混合して用いることができ
る。
【0014】本発明の熱履歴表示インキ組成物には、上
記各成分のほかに、例えばインクジェットプリンター用
インキとして使用する際に帯電性を付与する導電性付与
物質や、可塑剤、助色剤等他の配合剤を適宜配合するこ
とも可能である。
【0015】
【実施例】次に実施例により本発明を説明するが、以下
の実施例は本発明を限定するものではない。 (実施例1〜5)表1に記載した有機アミン、染料、樹
脂の配合割合に従い、溶剤に溶解させ充分に攪拌混合さ
せる。混合溶解させたインキ組成物を1μmのフィルタ
ーを用いて濾過し、1μm以上の粒子を除去して実施例
1〜5の熱履歴表示インキ組成物を調製した。以下の表
において、有機アミン及び染料の配合量は全組成物中の
重量%により表示する。また、MEKはメチルエチルケ
トン、MeOHはメタノール、ACはアセトン、THF
はテトラヒドロフラン、TEAはトリエタノールアミ
ン、DEAはジエタノールアミン、DEEAはジエチル
エタノールアミン、DBEAはジブチルエタノールアミ
ンを表す。
【0016】
【表1】
【0017】(実施例6〜10)同様の手順で、表2に
記載した有機アミン、染料、樹脂の配合割合に従い、実
施例6〜10の熱履歴表示インキ組成物を調製した。
【0018】
【表2】
【0019】これらのインキを金属板上に3〜4μmと
なるように塗布し乾燥後、室温にて長期間保存しておい
たが、これらのインキ皮膜は保存後も初期の色調を維持
していた。またこれらのインキ皮膜は90℃で3ヶ月以
上加熱を続けても変色完了時の色調を保っており、昇華
により減色等の変化は生じなかった。これら実施例のイ
ンキをインクジェットプリンターにより缶体へ塗布して
みたところ鮮明な表示マークが得られた。次にインキの
塗布された缶体を恒温槽に入れ所定の温度で保存した。
加熱温度に対する変色経過期間、および色調を表1及び
表2に示した。実施例1〜10の各々のインキ組成物は
温度×時間の積算に従って明瞭な3色変化を示し、初期
色相と変色完了時の色差が20以上あることが分かっ
た。経時の経過を色の違いによって目視で判別すること
が可能であった。色差の測定は日本電色(株)製Σ80
色差計を用いて行った。
【0020】(実施例11)実施例1のインキ組成物を
用いて果汁飲料の詰められたPETボトルにマーキング
し箱詰めした後、タイ国に船で輸送し、現地の倉庫で夏
場5ヶ月間保存し、再度船で国内に戻し、マークの色調
を調査した。ボトルにマークを施してから約7.5ヶ月
経過していた。マークの色調は黄緑色に変化し色差は6
8であり、55℃の温度で約2.5ヶ月の保存に相当す
る熱履歴を受けたことがわかった。因みに詰められてい
た果汁はかなり褐変していた。
【0021】(実施例12)沖縄にて生産されたバナナ
に実施例5のインキ組成物によりマークの施されたラベ
ルを貼着しカートンケースに詰め、出荷まで1週間に間
ビニールシートを被せ屋外に置いておいた。その後最上
段に積まれたカートン内のバナナに貼着されたラベルの
色調を調査したところ、ラベルは青緑色に変化してお
り、カートン内のバナナは表皮がやや黒ずみ一部傷んで
いたものがあった。色差が28であったことから、この
バナナは55℃で約3日に相当する熱履歴を受けていた
ことがわかった。
【0022】(比較例1〜6)比較例として、表3に示
した成分以外は実施例1の樹脂及び溶剤を用いて調製し
たインキ組成物の変色性を調べたところ、染料や有機ア
ミンの添加量が少なかったり、有機アミンの沸点が低か
ったり、染料のpH変色域が高い染料等の場合、いずれ
も本発明の目的を満足するものは得られなかった。
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】本発明の温度時間履歴により変色する熱
履歴表示インキ組成物は、初期色調と変色完了時の色調
の色差が大きく且つ3色の色変化を示すことから、保存
の経過期間を明瞭に判別することが出来る。また染料と
有機アミンの種類と添加量との組合せを適宜変えること
で、種々の保存条件に容易に合わせることが出来るもの
であり、実用的価値の高い発明である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−3494(JP,A) 特開 昭56−131684(JP,A) 特開 昭61−12783(JP,A) 特開 平10−281894(JP,A) 特開 平11−189741(JP,A) 特開 平11−106693(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 11/00 - 11/20 C09K 3/00 C09K 9/00 C09D 5/26

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式(1)で表される沸点が1
    00〜360℃の揮発性有機アミン;及び少なくとも1
    個以上のフェノール性水酸基を有するラクトン又はスル
    ホフタレイン環構造を有するトリフェニルメタン系染料
    から選択された、pH9以下で変色し初期色相と変色完
    了後の色差が20以上であるpHの変化により変色する
    染料;ならびにバインダー樹脂を含有する、時間と温度
    の経過を累積し不可逆的に表示する熱履歴表示インキ組
    成物において、全組成物を基準として0.03〜20重
    量%の揮発性有機アミン及び0.1〜10重量%の染料
    を含有することを特徴とする熱履歴表示インキ組成物。 【化1】 式中、R 、R 及びR はそれぞれ水素、炭素
    数1〜8のアルキル基もしくはR −OHで表されるヒ
    ドロキシルアルキル基を表し、R は炭素数1〜5のア
    ルキレン基を表す。
  2. 【請求項2】 バインダー樹脂がアクリル樹脂、アミノ
    樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹
    脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹
    脂、塩酢ビ樹脂、及びアルキッド樹脂から選ばれたもの
    であることを特徴とする請求項1に記載の熱履歴表示イ
    ンキ組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載された熱履歴表示
    インキ組成物による表示を有する包装体。
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