JP3947065B2 - 均一化レーザビーム照射装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、均一化レーザビーム照射装置に関し、特にレンズアレイを用いて1本のレーザビームを複数のビームに分割し、分割されたビームを共通の領域内に入射させて重ね合わせる均一化レーザビーム照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザビームは、種々の用途に用いられる。アモルファスシリコンの結晶化アニールやフォトリソグラフィにおいては、目的とする領域内で均一な強度分布を有するレーザビームが望まれる。レーザビームは本来可干渉性を有する。光路の異なるビームが重ね合わされると干渉が生じ、強度のうねり(スペックルパターン)が生じる。また、レーザビームは一般的にビーム断面内で強度が均一ではない。中央部の強度は高く、周辺部の強度は低い。
【0003】
均一な強度分布を有するレーザビームを形成する技術として、レンズアレイを用いる方法が知られている。レーザ光源から出射されたレーザビームをレンズアレイで複数のビームに分割し、分割された複数のレーザビームを被照射面上に重ね合わせることにより、強度分布を均一化することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−16851号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
干渉性のよいレーザビームをレンズアレイで均一化しようとする場合、分割されたレーザビームが重ね合わされる時に互いに干渉し、スペックルパターンを生じる場合がある。レーザ光源としてエキシマレーザを用いる場合には、その空間コヒーレンス長が短いため、スペックルパターンは生じにくい。ところが、空間コヒーレンス長の長いレーザ光源、例えばNd:YAG等の固体レーザを用いる場合には、スペックルパターンが生じやすい。
【0006】
フォトリソグラフィ用のステッパ等ではレンズアレイの前段のミラーを振動させ、複数ショットのパワー密度を積算することにより、干渉による強度のうねりの影響を排除している。ところが、この方法では、1ショットのみを照射する場合に、強度のうねりの影響を排除することはできない。
【0007】
本発明の目的は、複数のレーザビームを重ね合わせた時の干渉に起因する強度のうねりを低減させることが可能な均一化レーザビーム照射装置を提供することである。
【0008】
本発明の一観点によると、直線偏光されたレーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザビームが入射し、該レーザビームの進行方向と交差する第1の方向に配列した複数のレンズによって、入射したレーザビームを第1の方向に関して複数のビームに分割する第1のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイで分割された複数のレーザビームの経路のうち第1の方向に関して1つ置きの経路内に配置された1/2波長板を含み、前記第1のレンズアレイの相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光方向が相互に直交するように偏光状態を変化させる第1の偏光状態制御手段と、前記第1のレンズアレイによって分割された複数のビームを、被照射面上で重ね合わせる重ね合わせ光学系とを有し、前記第1のレンズアレイを構成する複数のレンズが、前記第1の方向と直交する第2の方向と平行な柱面を有するシリンドリカルレンズであり、前記第1のレンズアレイに入射するレーザビームの偏光方向が、該第2の方向から45°傾いており、前記1/2波長板のスロー軸またはファースト軸が該第2の方向と平行である均一化レーザビーム照射装置が提供される。
【0009】
相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光状態を相互に異ならせることにより、両者を重ね合わせた時の干渉による影響を軽減し、スペックルパターンの発生を抑制することができる
【0010】
【発明の実施の形態】
図1(A)に、本発明の実施例によるビーム均一化光学系の断面図を示す。Nd:YAGレーザやNd:YLFレーザ等の固体レーザ光源から出射されたレーザビーム1がレンズアレイ2に入射する。レンズアレイ2に入射するレーザビーム1は直線偏光されており、その直径はDである。レンズアレイ2の入射位置におけるレーザビーム1の強度分布は、例えばガウス分布で近似される。レーザビーム1の進行方向をZ軸とするXYZ直交座標系を導入する。レーザビーム1の偏光方向がX軸に平行であるとする。
【0011】
レンズアレイ2は、複数の凸シリンドリカルレンズで構成される。各シリンドリカルレンズは、Y軸に平行な母線からなる凸の柱面を有し、X軸方向にピッチhで相互に密接して配列されている。レーザビーム1は、レンズアレイ2によりZX面内において収束する複数のレーザビーム3に分割される。各レーザビーム3は、シリンドリカルレンズの焦点においてY軸に平行な直線上に集光され、その後ZX面内で発散する光線束になりコンデンサレンズ(重ね合わせ光学系)4に入射する。
【0012】
コンデンサレンズ4は、複数のレーザビーム3を、ホモジナイズ面5上の共通の被照射領域5Aに入射させる。強度分布の異なる複数のレーザビーム3がホモジナイズ面5上で重ね合わされることにより、強度分布を均一化することができる。
【0013】
レンズアレイ2とコンデンサレンズ4との間に、偏光状態制御素子6が配置されている。偏光状態制御素子6は、レンズアレイ2を構成するレンズを通過した複数のレーザビーム3の経路のうちX軸方向に関して1つ置きの経路内に配置された1/2波長板6Aにより構成される。図1(A)では、図の下から上に向かって各レンズに1から順番に番号を振ったとき、奇数番目のレンズを通過したレーザビームの経路内に1/2波長板6Aが配置されている。
【0014】
図1(B)に、偏光状態制御素子6の正面図を示す。Y軸方向に長い1/2波長板6AがX軸方向に4枚配列されている。各1/2波長板6Aの幅、及び相互に隣り合う1/2波長板6Aの間隔はレンズアレイ2のピッチhに等しい。各1/2波長板6Aのスロー軸6S及びファースト軸6Fは、X軸方向、すなわち入射するレーザビーム1の偏光方向から45°傾いている。このため、1/2波長板6Aを透過したレーザビームの偏光方向10Aは、Y軸に平行になる。これに対し、1/2波長板の間を通過したレーザビームの偏光方向10Bは、X軸に平行になる。
【0015】
図1(A)に戻って説明を続ける。X軸方向に隣り合う2つのレンズを通過したレーザビーム3の偏光方向が相互に直交するため、両者が重ね合わされたとしても干渉は生じない。
【0016】
レンズアレイ3によって分割された複数のレーザビームに干渉性がある場合には、スペックルパターンが生じる。レンズアレイ2により分割された複数のレーザビームのうち任意の2つのレーザビームが重ね合わされる時の両者の中心光線の成す角をα、レーザビームの波長をλとすると、スペックルパターンのピッチPは、
【0017】
【数1】
P=λ/(2×sin(α/2)) ・・・(1)
となる。
【0018】
着目するレーザビームの組み合わせにより、中心光線の成す角αが異なるため、種々のピッチPを有するスペックルパターンが形成される。偏光状態制御素子6が配置されていない場合には、相互に隣接するレーザビーム同士の組み合わせが最も多く、かつ干渉性が最も高いため、相互に隣接するレーザビームの中心光線の成す角αに基づくピッチPのスペックルパターンが最も強く現れる。図1に示した均一化光学系には偏光状態制御素子6が配置されているため、相互に隣接するレーザビームに起因するスペックルパターンは現れない。
【0019】
図1(A)では、レーザビーム3が収束されて、そのX軸方向の厚さが薄くなった位置に、偏光状態制御素子6が配置されている。このため、隣のレーザビームの通過経路内に1/2波長板6Aが侵入することなく、余裕をもって1/2波長板を配置することができる。1/2波長板6Aを、レーザビーム3の集光位置に配置すると、より大きな余裕を確保することができる。
【0020】
なお、1/2波長板の位置精度を高められる場合には、偏光状態制御素子6をレンズアレイ2の前方に配置してもよい。
【0021】
以下、レンズアレイ2を構成するレンズのうち間隔hだけ隔てて配置された2つのレンズを通過したレーザビームによる干渉について考察する。レーザビームの特性を表すパラメータの一つに、空間コヒーレンス長がある。空間コヒーレンス長は、同一ビーム内で互いに干渉の及ぶ最大長のことである。すなわち、空間コヒーレンス長よりも大きな間隔を有する2点を通過するビーム要素同士は互いに干渉性を有しない。逆に、空間コヒーレンス長よりも小さな間隔を有する2点を通過するビーム要素同士は、互いに干渉する。
【0022】
上述のように、偏光状態制御素子6を配置することにより、光路が相互に隣り合うレーザビーム同士の干渉を防止することができる。次に、レーザビームの光路1つ分を隔てて配置された2本のレーザビーム同士の干渉を防止する方法について説明する。
【0023】
レンズアレイ2を構成する複数のシリンドリカルレンズのX軸方向のピッチをhとし、レーザビームの空間コヒーレンス長をXcとする。間隔hだけ隔てて配置された2つのレンズの中心間距離は2hになるため、
【0024】
【数2】
Xc<2h ・・・(2)
を満たすとき、2つのレーザビームは干渉しない。
【0025】
焦点距離fの無収差レンズで集光できる最小のビームスポットをdとすると、下記の関係式が成立する。
【0026】
【数3】
d≒2.44λf/Xc ・・・(3)
また、集光できる最小のビームスポットをdとすると、レーザビームの品質指標M2は下記の式で定義される。
【0027】
【数4】
2=(π/4λ)dθ ・・・(4)
ここで、θは遠視野広がり角である。レンズアレイ2に入射するレーザビームの直径をDとすると、
【0028】
【数5】
θ≒D/f ・・・(5)
であることを考慮すると、
【0029】
【数6】
Xc≒0.61πfθ/M2=0.61πD/M2 ・・・(6)
が成立する。式(6)と干渉の生じない条件式(2)とから、
【0030】
【数7】
2>0.61πD/(2h) ・・・(7)
が得られる。従って、レーザビームの品質指標M2、ビーム径D、レンズアレイ2のピッチhが、条件式(7)を満足するように光学系を設計すると、レンズアレイ2の、間隔hを隔てて(中心間距離2h)配置された2つのシリンドリカルレンズを通過したレーザビーム同士の干渉を防止し、ホモジナイズ面5上のビーム照射領域の強度の均一性を高めることができる。
【0031】
なお、ビームの通過する2点の間隔が空間コヒーレンス長Xcを超えると、完全に干渉性がなくなるわけではなく、わずかながら干渉性が残る場合もある。従って、安全係数をκ>1として、
【0032】
【数8】
2>0.61κπD/(2h) ・・・(8)
を満足するように設計してもよい。
【0033】
例えば、レンズアレイ2に入射するレーザビームの直径Dを45mm、レンズアレイのピッチhを5mmとすると、式(8)からM2>8.63κが得られる。安全係数κを1.2とすると、M2>10.4になる。すなわち、品質指標M2が10.4よりも大きいレーザ光源を選択することにより、中心間距離2hのレーザビーム同士の干渉によるスペックルパターンの発生を防止することができる。
【0034】
逆に、品質指標M2が10のレーザ光源を使用し、安全係数κを1.2にすると、h>0.12Dになる。すなわち、レンズアレイ2を構成するシリンドリカルレンズを9本にして、レーザビームを9分割すれば、スペックルパターンの発生を防止することができる。レーザ光源から出射されるレーザビームの直径が5mmであり、それをテレスコープで8倍に拡大してビーム径を40mmにし、レンズアレイ2に入射させる場合には、h>4.8mmとすればよい。
【0035】
式(7)及び(8)では、レーザビームの品質指標M2の上限値が制限されない。ところが、品質指標M2が大きくなると、集光できる最小ビームスポットが大きくなってしまう。レーザビームを線状の領域に集光する場合には、集光される線状領域を細くすることができなくなる。集光される線状領域の幅をw、コンデンサレンズの焦点距離をfとすると、品質指標M2の上限が下記の式で規定される。
【0036】
【数9】
2≦(π/4λ)w(D/f) ・・・(9)
図2に、偏光状態制御素子6の他の構成例を示す。図1(B)では、偏光状態制御素子6を構成する1/2波長板6Aのスロー軸6S及びファースト軸6Fが、X軸から45°傾いていた。図2に示した偏光状態制御素子6では、1/2波長板6Aのスロー軸6SがY軸と平行であり、ファースト軸6FがX軸と平行である。その代わりに、レンズアレイ2に入射するレーザビーム1の偏光方向がX軸から45°傾いている。
【0037】
このため、1/2波長板6Aの間を通過したレーザビームの偏光方向10Bは、元のレーザビーム1の偏光方向の傾く方向と同じ方向に、X軸から45°傾く。1/2波長板6Aを通過したレーザビームの偏光方向10Aは、1/2波長板6Aの間を通過したレーザビームの偏光方向10Bとは反対向きに、X軸から45°傾く。このため、相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光方向は、相互に直交する。なお、ファースト軸6FがY軸と平行になるように配置してもよい。
【0038】
図2に示した1/2波長板6Aにおいては、スロー軸6Sまたはファースト軸6Fが1/2波長板6Aの長手方向と平行になるため、1/2波長板の製造が容易になる。
【0039】
上記実施例では、レンズアレイ2の相互に隣り合うレンズを通過したレーザビームの偏光方向を直交させた。偏光方向を直交させることにより、2つのレーザビームの干渉による影響をほぼ完全に排除することができる。2つのレーザビームの偏光方向が直交しない場合であっても、両者の偏光状態が異なっている場合には、両者の偏光状態が同一である場合に比べて、干渉による影響を軽減することができる。
【0040】
また、上記実施例では、レンズアレイ2を構成する複数のレンズを通過したレーザビームの経路のうちX軸方向に関して1つ置きに配置された経路内に1/2波長板6Aを配置した。相互に隣り合うレーザビームが最も干渉しやすいため、1つ置きに1/2波長板6Aを配置することにより、最も大きな効果が期待される。ただし、必ずしも1つ置きではなく、任意の一部のレンズを通過したレーザビームの経路内に1/2波長板を配置する場合でも、偏光状態制御素子を配置しない場合に比べて、干渉による影響を軽減することができるであろう。
【0041】
図3(A)及び(B)に、複数のレンズアレイを組み合わせたビーム均一化光学系(ビームホモジナイザ)の断面図を示す。レーザビームの進行方向をz軸とするxyz直交座標系を導入する。図3(A)は、yz面に平行な断面図、図3(B)は、xz面に平行な断面図を示す。
【0042】
図3(A)に示すように、等価な7本のシリンドリカルレンズが、各々の母線方向をx軸と平行にし、かつy軸方向に配列し、xy面に平行な仮想平面に沿ったシリンダアレイ45Aと45Bが構成されている。シリンダアレイ45A及び45Bの各シリンドリカルレンズの光軸面はxz面に平行である。ここで、光軸面とは、シリンドリカルレンズの面対称な結像系の対称面(シリンドリカルレンズの柱面の曲率中心線を含む結像系の対称面)を意味する。シリンダアレイ45Aは光の入射側(図の左方)に配置され、シリンダアレイ45Bは出射側(図の右方)に配置されている。
【0043】
図3(B)に示すように、等価な7本のシリンドリカルレンズが各々の母線方向をy軸と平行にし、かつx軸方向に配列し、xy面に平行な仮想平面に沿ったシリンダアレイ46Aと46Bが構成されている。シリンダアレイ46A及び46Bの各シリンドリカルレンズの光軸面はyz面に平行である。シリンダアレイ46Aはシリンダアレイ45Aの前方(図の左方)に配置され、シリンダアレイ46Bはシリンダアレイ45Aと45Bとの間に配置されている。シリンダアレイ45Aと45Bの対応するシリンドリカルレンズの光軸面は一致し、シリンダアレイ46Aと46Bの対応するシリンドリカルレンズの光軸面も一致する。
【0044】
レンズアレイ45Bの後方(図の右方)に、偏光状態制御素子45Cが配置されている。シリンダアレイ46Aと46Bとの間に、偏光状態制御素子46Cが配置されている。偏光状態制御素子45C及び46Cは、図1(A)及び(B)に示した偏光状態制御素子6、または図2に示した偏光状態制御素子6と同様の構成である。
【0045】
偏光状態制御素子45Cの後方に、コンデンサレンズ49が配置されている。コンデンサレンズ49の光軸は、z軸に平行である。
【0046】
図3(A)を参照して、yz面内に関する光線束の伝搬の様子を説明する。yz面内においては、シリンダアレイ46A及び46Bは単なる平板であるため、光線束の集束、発散に影響を与えない。また、yz面に平行な断面のx座標を固定して考えると、偏光状態制御素子46Cを通過したレーザビームの偏光状態は、y軸方向に関して一様である。
【0047】
シリンダアレイ46Aの左方からz軸に平行な光軸を有する平行光線束47がシリンダアレイ46Aに入射する。平行光線束47は、例えば曲線51yで示すように、中央部分で強く周辺部分で弱い光強度分布を有する。
【0048】
平行光線束47がシリンダアレイ46Aを透過し、シリンダアレイ45Aに入射する。入射光線束は、シリンダアレイ45Aにより各シリンドリカルレンズに対応した7つの集束光線束に分割される。図3(A)では、中央と両端の光線束のみを代表して示している。7つの集束光線束は、それぞれ曲線51ya〜51ygで示す光強度分布を有する。シリンダアレイ45Aによって集束された光線束は、シリンダアレイ45Bにより再度集束される。
【0049】
シリンダアレイ45Bにより集束した7つの集束光線束48は、偏光状態制御素子45Cによって偏光状態を制御され、集束レンズ49の前方で結像する。この結像位置は、コンデンサレンズ49の入射側焦点よりもレンズに近い。このため、コンデンサレンズ49を透過した7つの光線束はそれぞれ発散光線束となり、ホモジナイズ面50上において重なる。ホモジナイズ面50を照射する7つの光線束のy軸方向の光強度分布は、それぞれ光強度分布51ya〜51ygをy軸方向に引き伸ばした分布に等しい。光強度分布51yaと51yg、51ybと51yf、51ycと51yeは、それぞれy軸方向に関して反転させた関係を有するため、これらの光線束を重ね合わせた光強度分布は、実線52yで示すように均一な分布に近づく。
【0050】
また、偏光状態制御素子45Cが配置されているため、シリンダアレイ45A及び45Cの相互に隣り合うシリンドリカルレンズを通過したレーザビーム同士は干渉しない。このため、y軸方向に関するスペックルパターンの発生を防止することができる。
【0051】
図3(B)を参照して、xz面内に関する光線束の伝搬の様子を説明する。xz面内においては、シリンダアレイ45A及び45Bは単なる平板であるため、光線束の集束、発散に影響を与えない。平行光線束47がシリンダアレイ46Aに入射する。平行光線束47は、例えば曲線51xで示すように、中央部分で強く周辺部分で弱い光強度分布を有する。
【0052】
平行光線束47がシリンダアレイ46Aにより各シリンドリカルレンズに対応した7つの集束光線束に分割される。図3(B)では、中央と両端の光線束のみを代表して示している。7つの集束光線束は、それぞれ曲線51xa〜51xgで示す光強度分布を有する。
【0053】
各光線束は、偏光状態制御素子46Cによって偏光状態を制御され、シリンダアレイ46Bの前方で結像し、発散光線束となってシリンダアレイ46Bに入射する。シリンダアレイ46Bに入射した各光線束は、それぞれある出射角を持って出射し、コンデンサレンズ49に入射する。
【0054】
コンデンサレンズ49を透過した7つの光線束はそれぞれ集束光線束となり、ホモジナイズ面50上において重なる。ホモジナイズ面50を照射する7つの光線束のx軸方向の光強度分布は、図3(A)の場合と同様に実線52xで示すように均一な分布に近づく。また、偏光状態制御素子46Cが配置されているため、x軸方向に関するスペックルパターンの発生を防止することができる。
【0055】
ホモジナイズ面50上の光照射領域は、y軸方向に長く、x軸方向に短い線状の形状を有する。ホモジナイズ面50の位置に、被照射物の表面を配置することにより、その表面内のy軸方向に長い線状の領域を、ほぼ均一に照射することができる。
【0056】
シリンダアレイ46Aに入射するレーザビームの品質指標M2、ビーム径D、及び各シリンダアレイを構成するシリンドリカルレンズのピッチhが、上述の条件式(7)または(8)を満たす場合、間隔hだけ離れたレーザビーム同士の干渉性がなくなり、ホモジナイズ面50上における強度分布をより均一に近づけることができる。
【0057】
図4に、図3のホモジナイザを用いたレーザアニーリング装置の平面図を示す。レーザアニーリング装置は、処理チャンバ40、搬送チャンバ82、搬出入チャンバ83、84、レーザ光源71、ホモジナイザ72、CCDカメラ88、及びビデオモニタ89を含んで構成される。ホモジナイザ72は、図2に示したホモジナイザと同一のものである。処理チャンバ40には、ベローズ67、結合部材63、65、リニアガイド機構64及びリニアモータ66等を含む直動機構60が取り付けられている。直動機構60は、処理チャンバ60内に配置されたステージ44を並進移動させることができる。
【0058】
処理チャンバ40と搬送チャンバ82がゲートバルブ85を介して結合され、搬送チャンバ82と搬出入チャンバ83、及び搬送チャンバ82と搬出入チャンバ84が、それぞれゲートバルブ86及び87を介して結合されている。処理チャンバ40、搬出入チャンバ83及び84には、それぞれ真空ポンプ91、92及び93が取り付けられ、各チャンバの内部を真空排気することができる。
【0059】
搬送チャンバ82内には、搬送用ロボット94が収容されている。搬送用ロボット94は、処理チャンバ40、搬出入チャンバ83及び84の各チャンバ相互間で処理基板を移送する。
【0060】
処理チャンバ40の上面に、レーザビーム透過用の石英窓38が設けられている。なお、石英の代わりに、BK7等の可視光学ガラスを用いてもよい。連続発振したレーザ光源71から出力されたレーザビームがアッテネータ76を通ってホモジナイザ72に入射する。ホモジナイザ72は、レーザビームの断面形状を細長い形状にする。ホモジナイザ72を通過したレーザビームは、ビームの断面形状に対応した細長い石英窓38を透過し、処理チャンバ40内のステージ44上に保持された処理基板を照射する。基板の表面がホモジナイズ面に一致するように、ホモジナイザ72と処理基板との相対位置が調節されている。
【0061】
直動機構60によりステージ44が並進移動する方向は、石英窓38の長尺方向に直交する向きである。これにより、基板表面の広い領域にレーザビームを照射し、基板の表面上に形成されたアモルファス半導体膜を多結晶化することができる。基板表面はCCDカメラ88により撮影され、処理中の基板表面をビデオモニタ89で観察することができる。
【0062】
レーザ光源71及びホモジナイザ72が上述の条件式(7)または(8)を満たす場合、処理基板上におけるスペックルパターンの発生を防止し、形成された多結晶膜の品質を高めることができる。
【0063】
図4に示したレーザアニーリング装置は、アモルファス半導体の多結晶化のみならず、半導体膜に注入された不純物の活性化アニールにも使用することができる。
【0064】
次に、図5(A)及び(B)を参照して、他の実施例によるレーザビーム均一化光学系について説明する。
【0065】
図5(A)にレンズアレイ21の正面図を示し、図5(B)に偏光状態制御素子20の正面図を示す。レンズアレイ21及び偏光状態制御素子20は、それぞれ図1(A)に示したレンズアレイ2及び偏光状態制御素子6に代わるものである。
【0066】
図5(A)に示すように、X軸方向(列方向)及びY軸方向(行方向)に複数の凸レンズ21Aが配置されている。行方向及び列方向のピッチは共にhである。行列状に配置された複数の凸レンズ21Aが、1本のレーザビームを、ビーム断面がXY面内に行列状に配置された複数のレーザビームに分割する。
【0067】
図5(B)に示すように、偏光状態制御素子20に、レンズアレイ21の複数のレンズ21Aの各々に対応した単位領域が画定されている。行方向及び列方向に関して1つ置きの単位領域20A(図5(B)でハッチが付された単位領域)に、1/2波長板が配置されている。単位領域20Aを通過するレーザビームは、その偏光方向を90°旋回させる。その他の単位領域20Bを通過するレーザビームの偏光方向は変化しない。
【0068】
このため、行方向及び列方向に関して隣り合う単位領域を通過したレーザビームの偏光方向は相互に直交する。このため、両者の干渉を防止し、スペックルパターンの発生を防止することができる。
【0069】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、1つのレーザビームから分割された複数のレーザビームのうち相互に隣接する経路を進行するビームの偏光状態を異ならせることにより、両者の干渉を軽減させることができる。これにより、分割された複数のレーザビームを重ね合わせた時のスペックルパターンの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例によるレーザビーム均一化光学系の断面図、及びそれに用いられる偏光状態制御素子の正面図である。
【図2】 偏光状態制御素子の他の構成例を示す正面図である。
【図3】 他の実施例によるレーザビーム均一化光学系の断面図である。
【図4】 実施例によるレーザビーム均一化光学系を用いたレーザアニーリング装置の平面図である。
【図5】 (A)はレンズアレイの正面図、(B)は偏光状態制御素子の正面図である。
【符号の説明】
1、3 レーザビーム
2、21、45A、45B、46A、46B レンズアレイ
4、49 コンデンサレンズ
5、50 ホモジナイズ面
6、20、45C、46C 偏光状態制御素子
6A 1/2波長板
6S スロー軸
6F ファースト軸
10A、10B 偏光方向
38 石英窓
40 処理チャンバ
44 ステージ
60 直動機構
63、65 結合部材
64 リニアガイド機構
66 リニアモータ
67 ベローズ
71 レーザ光源
72 ホモジナイザ
76 アッテネータ
82 搬送チャンバ
83、84 搬出入チャンバ
85、86、87 ゲートバルブ
88 CCDカメラ
89 ビデオモニタ
91、92、93 真空ポンプ
94 搬送用ロボット

Claims (9)

  1. 直線偏光されたレーザビームを出射するレーザ光源と、
    前記レーザ光源から出射されたレーザビームが入射し、該レーザビームの進行方向と交差する第1の方向に配列した複数のレンズによって、入射したレーザビームを第1の方向に関して複数のビームに分割する第1のレンズアレイと、
    前記第1のレンズアレイで分割された複数のレーザビームの経路のうち第1の方向に関して1つ置きの経路内に配置された1/2波長板を含み、前記第1のレンズアレイの相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光方向が相互に直交するように偏光状態を変化させる第1の偏光状態制御手段と、
    前記第1のレンズアレイによって分割された複数のビームを、被照射面上で重ね合わせる重ね合わせ光学系と
    を有し、
    前記第1のレンズアレイを構成する複数のレンズが、前記第1の方向と直交する第2の方向と平行な柱面を有するシリンドリカルレンズであり、前記第1のレンズアレイに入射するレーザビームの偏光方向が、該第2の方向から45°傾いており、前記1/2波長板のスロー軸またはファースト軸が該第2の方向と平行である均一化レーザビーム照射装置。
  2. 前記第1のレンズアレイを構成する複数のレンズの各々が集光レンズであり、前記第1の偏光状態制御手段が、前記第1のレンズアレイの後方に配置されている請求項に記載の均一化レーザビーム照射装置。
  3. 前記レーザ光源が、品質指標Mのレーザビームを出射し、
    前記第1のレンズアレイに入射するレーザビームの直径をD、前記第1のレンズアレイを構成する複数のレンズの配列ピッチをhとしたとき、M>(0.61πD/(2h))を満足する請求項1または2に記載の均一化レーザビーム照射装置。
  4. レーザビームを出射するレーザ光源と、
    前記レーザ光源から出射されたレーザビームが入射し、該レーザビームの進行方向と交差する第1の方向に配列した複数のレンズによって、入射したレーザビームを第1の方向に関して複数のビームに分割する第1のレンズアレイと、
    前記第1のレンズアレイの、相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光状態が相互に異なるように、レーザビームの偏光状態を変える第1の偏光状態制御手段と、
    前記第1のレンズアレイによって分割された複数のビームを、被照射面上で重ね合わせる重ね合わせ光学系と
    を有し、
    前記第1の偏光状態制御手段が、前記第1のレンズアレイを構成する集光レンズによる集光位置に配置されている均一化レーザビーム照射装置。
  5. 前記レーザ光源が、品質指標Mのレーザビームを出射し、
    前記第1のレンズアレイに入射するレーザビームの直径をD、前記第1のレンズアレイを構成する複数のレンズの配列ピッチをhとしたとき、M>(0.61πD/(2h))を満足する請求項に記載の均一化レーザビーム照射装置。
  6. レーザビームを出射するレーザ光源と、
    前記レーザ光源から出射されたレーザビームが入射し、該レーザビームの進行方向と交差する第1の方向に配列した複数のレンズによって、入射したレーザビームを第1の方向に関して複数のビームに分割する第1のレンズアレイと、
    前記第1のレンズアレイの、相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光状態が相互に異なるように、レーザビームの偏光状態を変える第1の偏光状態制御手段と、
    前記第1のレンズアレイによって分割された複数のビームを、被照射面上で重ね合わせる重ね合わせ光学系と
    前記第1のレンズアレイにより分割された複数のレーザビームが入射し、前記第1の方向と直交する第2の方向に配列した複数のレンズによって、入射した複数のレーザビームの各々を、第2の方向に関して複数のビームに分割する第2のレンズアレイと、
    前記第2のレンズアレイの、相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光状態が相互に異なるように、レーザビームの偏光状態を変える第2の偏光状態制御手段と
    を有し、
    前記第1の偏光状態制御手段は、前記第1のレンズアレイによって分割されたレーザビームの経路のうち第1の方向に関して1つ置きの経路内に配置された1/2波長板を含み、前記第2の偏光状態制御手段は、前記第2のレンズアレイによって分割されたレーザビームの経路のうち第2の方向に関して1つ置きの経路内に配置された1/2波長板を含み、
    前記重ね合わせ光学系が、前記第2のレンズアレイによって分割された複数のビームを、被照射面上で重ね合わせる均一化レーザビーム照射装置。
  7. 前記レーザ光源が、品質指標Mのレーザビームを出射し、
    前記第1のレンズアレイに入射するレーザビームの直径をD、前記第1のレンズアレイを構成する複数のレンズの配列ピッチをhとしたとき、M>(0.61πD/(2h))を満足する請求項に記載の均一化レーザビーム照射装置。
  8. レーザビームを出射するレーザ光源と、
    前記レーザ光源から出射されたレーザビームが入射し、該レーザビームの進行方向と交差する第1の面の沿って行列状に配置された複数のレンズによって、入射したレーザビームを行方向及び列方向に関して複数のビームに分割するレンズアレイと、
    前記レンズアレイの、行方向及び列方向に相互に隣り合うレンズを通過した2本のレーザビームの偏光状態が相互に異なるように、レーザビームの偏光状態を変える偏光状態制御手段と、
    前記レンズアレイによって分割された複数のビームを、被照射面上で重ね合わせる重ね合わせ光学系と
    を有する均一化レーザビーム照射装置。
  9. 前記レーザ光源から出射されるレーザビームが直線偏光されており、
    前記偏光状態制御手段に、前記レンズアレイを構成する複数のレンズの各々に対応して行列状に配置された複数の単位領域が画定されており、行方向及び列方向に関して1つ置きの単位領域内に1/2波長板が配置されている請求項に記載の均一化レーザビーム照射装置。
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